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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/10 20060101AFI20230906BHJP
   E03D 1/26 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A47K13/10
E03D1/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019134878
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021016633
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雄志
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-76852(JP,A)
【文献】特開2007-268211(JP,A)
【文献】実開昭63-158633(JP,U)
【文献】特開2005-68818(JP,A)
【文献】特開平8-280580(JP,A)
【文献】中国特許第105299119(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/10
E03D 1/00-9/16
F16F 7/00-7/14
A47C 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ンパー効果を生じさせる昇降装置であって、
定部材と、
記固定部材に対して上下方向に昇降移動可能に構成される可動部材と、
前記可動部材を上方に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記可動部材は、被挟持部材を備え、
前記固定部材は、前記上下方向に直交する左右方向から前記被挟持部材を挟持し、下方にいくにしたがって前記被挟持部材を挟持する幅が狭くなる挟持部材を備え
昇降装置。
【請求項2】
一対の前記付勢部材を備え、
前記被挟持部材は、前記左右方向において、前記固定部材の中央部に配置され、
前記一対の付勢部材は、前記左右方向において、その間に前記被挟持部材が位置するように配置される、
請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記可動部材は可動プレートを備え、
前記固定部材は固定プレートを備え、
前記固定プレートは、内部に所定の空間が形成されて前記挟持部材を配置し、前記可動プレートが配置される側が開放するように構成され、
前記可動部材が上端位置に移動したときに、前記可動プレートの下方における前記固定プレートの開放する部分を隠すカバーを備える、
請求項1または請求項2に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付対象物の固定部に対して可動部が昇降移動するときにダンパー効果を生じさせる昇降装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定部に対して可動部が昇降移動可能に構成される取付対象物に設けられて、取付対象物の固定部に対して可動部が昇降移動するときにダンパー効果(減衰効果)を生じさせる昇降装置に関する技術は公知となっている。
前記取付対象物には、例えば、洋式便器がある。このとき、固定部は、洋式便器の便器本体として構成され、可動部は、洋式便器の便座、弁蓋、およびタンク等の装着体で構成される。
【0003】
このような取付対象物(洋式便器)に設けられる昇降装置としては、取付対象物の固定部(便器本体)に固定される固定部材と、取付対象物の可動部(装着体)に固定されて固定部材に対して昇降移動可能に構成される可動部材と、可動部材が昇降移動するときにダンパー効果を生じさせるエアーダンパーと、を備えるものがある。洋式便器の通常の使用状態では、洋式便器の装着体は下端位置に配置され、昇降装置の可動部材は下端位置に位置する。また、洋式便器の便器本体と装着体との間を清掃する際には、洋式便器の装着体が上方に引上げられ、昇降装置の可動部材は上端位置に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-268211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記昇降装置では、可動部材が昇降移動するときの動作を安定させつつダンパー効果をより高めることが求められる場合がある。もっとも、可動部材が昇降移動するときの動作を安定させつつダンパー効果を高めるためには、エアーダンパーのシリンダーの容量が大きくなり装置構成が大型化するという問題があった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、装置構成が大型化することなく、可動部材が昇降移動するときの動作を安定させつつダンパー効果をより高める構成とすることができる昇降装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、ンパー効果を生じさせる昇降装置であって、定部材と、記固定部材に対して上下方向に昇降移動可能に構成される可動部材と、前記可動部材を上方に付勢する付勢部材と、を備え、前記固定部材は、前記上下方向に直交する左右方向から前記被挟持部材を挟持し、下方にいくにしたがって前記被挟持部材を挟持する幅が狭くなる挟持部材を備えものである。
【0009】
請求項2においては、一対の前記付勢部材を備え、前記被挟持部材は、前記左右方向において、前記固定部材の中央部に配置され、前記一対の付勢部材は、前記左右方向において、その間に前記被挟持部材が位置するように配置されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記可動部材は可動プレートを備え、前記固定部材は固定プレートを備え、前記固定プレートは、内部に所定の空間が形成されて前記挟持部材を配置し、前記可動プレートが配置される側が開放するように構成され、前記可動部材が上端位置に移動したときに、前記可動プレートの下方における前記固定プレートの開放する部分を隠すカバーを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、装置構成が大型化することなく、可動部材が昇降移動するときの動作を安定させつつダンパー効果をより高める構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態係る昇降装置が取付けられる取付対象物を示す側面図。
図2】同じく昇降装置を示す斜視図。
図3】同じく昇降装置の内部構造を示す正面図。
図4】同じく昇降装置を示す背面図。
図5】同じく昇降装置の固定部材を示す分解斜視図。
図6】同じく昇降装置の可動部材を示す分解斜視図。
図7】同じく昇降装置の可動部材が上端位置の状態を示す側面断面図。
図8】同じく昇降装置の可動部材が下端位置の状態を示す側面断面図。
図9】同じく昇降装置を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態に係る昇降装置1について、図1から図9を用いて説明する。
【0014】
昇降装置1は、取付対象物に設けられて、取付対象物の固定部に対して可動部が昇降移動するときにダンパー効果(減衰効果)を生じさせる。
図1乃至図4に示すように、昇降装置1は、固定部材2と、可動部材3と、一対の付勢部材4と、を備える。可動部材3は、下端位置(下降側端部位置)と上端位置(上昇側端部位置)との間で上下方向に移動可能(昇降移動可能)に固定部材2に設けられる(図7または図8参照)。付勢部材4は、可動部材3を固定部材2に対して離間する方向(上方)に付勢する。付勢部材4は、コイルスプリングで構成される。
【0015】
取付対象物は、固定部と可動部とを備え、固定部に対して可動部が昇降可能に構成される。以下において、取付対象物は、洋式便器100であるものとして説明する。このとき、固定部は、洋式便器100の便器本体101として構成される。可動部は、洋式便器100の便座、弁蓋、およびタンク等の装着体102で構成される。洋式便器100では、通常の使用状態では、装着体102は下端位置に配置され昇降装置1の可動部材3は下端位置に位置する。また、洋式便器100では、便器本体101と装着体102との間を清掃する際には、装着体102が上方に引上げられ、昇降装置1の可動部材3は上端位置に位置する。
なお、可動部は、洋式便器100の仕様に応じて、便座のみで装着体102を構成すること、便座および弁蓋で装着体102を構成すること、また、便座およびタンクで装着体102を構成することもできる。また、取付対象物は、洋式便器100であることに限定されず、例えば、OA機器の本体(固定部)に対して蓋体(可動部)が昇降するもの等、固定部材2に対して可動部材3が昇降可能に構成されるものを広く含むものとする。
【0016】
図1乃至図5図7、または図8に示すように、昇降装置1の固定部材2は、洋式便器100の便器本体101(取付対象物の固定部)に固定される。固定部材2は、固定プレート10と、天板20と、ベース30と、一対の挟持部材40と、を備える。
【0017】
固定プレート10は、洋式便器100の便器本体101にビス等で取付けられて固定される。固定プレート10は、金属素材の板状の部材を折曲げ加工されて構成される。固定プレート10は、側面視略L字状に構成される。固定プレート10は、下部11と本体部12とを備える。
固定プレート10の下部11は、固定プレート10の下部において前方に突出する部分で構成される。固定プレート10の下部11は、洋式便器100の便器本体101に取付けられる部分として構成される。固定プレート10の下部11は、前方に折曲げられて上部に底部が形成され、当該上部の底部から下方に折曲げられ縦板部が形成され、さらに縦板部から前方に折曲げられて下方の底部が形成されて、段差状に構成される。固定プレート10の下部11は、切欠部15を有する。固定プレート10の下部11の切欠部15は、下部11の上部の底部と縦板部と下部の底部とに渡ってくり抜かれるように形成され、固定プレート10の左右中央部に配置される。
【0018】
固定プレート10の本体部12は、上部の上方に突出する部分で構成される。固定プレート10の本体部12は、内部に所定の空間が形成されるように略箱状に構成される。固定プレート10の本体部12では、背面部の両側が前方に折曲げられて一対の側面部が形成され、側面部の両側から中央方向に折曲げられて一対の正面部が形成される。固定プレート10の本体部12では、両正面部はそれぞれの端部が所定の間隔を空けて向合うように構成されて、本体部12の前部の一部が上端から下端に亘って開放する。
【0019】
固定プレート10の本体部12は、背面部に係止凹部13を備える。固定プレート10の本体部12の係止凹部13は、背面部の内側(本体部12の内部側)が凹状に形成されて構成される。固定プレート10の本体部12の係止凹部13は、下方において左右一対、上方において左右一対それぞれ配置される。固定プレート10の本体部12の下側の係止凹部13を下側係止凹部13Lと称し、固定プレート10の本体部12の上側の係止凹部を上側係止凹部13Uと称する。
固定プレート10の本体部12の一対の下側係止凹部13Lは、可動部材3の上下の移動方向と直交するように配置される。固定プレート10の本体部12の一対の上側係止凹部13Uは、可動部材3の上下の移動方向と直交するように配置される。固定プレート10の本体部12の左方の下側係止凹部13Lと左方の上側係止凹部13Uは、可動部材3の上下の移動方向と平行するように配置される。固定プレート10の本体部12の右方の下側係止凹部13Lと右方の上側係止凹部13Uは、可動部材3の上下の移動方向と平行するように配置される。
【0020】
固定プレート10の本体部12は、係止孔14を有する。固定プレート10の本体部12の係止孔14は、本体部12の側面部の上部を貫通するように構成される。
【0021】
天板20は、板状の部材であり、固定プレート10の本体部12の上端部に取付けられる。天板20が固定プレート10に取付けられることによって、固定プレート10の本体部12の上端において開口する部分が閉じられる。天板20は、4個の貫通孔21と、左右一対のアーム部22とを有する。
【0022】
天板20の貫通孔21は、天板20の中央部近傍において天板20を貫通するように構成される。
天板20のアーム部22は、左右の端部からそれぞれ下方に延出し、その下端部の外側がかぎ状に構成される。天板20のアーム部22の下端部が固定プレート10の本体部12の係止孔14に係止されることによって、天板20が固定プレート10(本体部12)に取付けられる。
【0023】
ベース30は、固定プレート10の本体部12内の下方に配置され、固定プレート10の下部11に取付けられる。ベース30は、基部31と、左右一対の突出部32と、壁部33と、を有する。
ベース30の基部31は、固定プレート10の下部11の上方に配置され、固定プレート10の下部11にビス等で取付けられて固定される。ベース30の基部31の中央部には上下方向に貫通する中空状のスペースが形成される。
ベース30の突出部32は、基部31の左右端部から上方に突出する。ベース30の突出部32は、固定プレート10の本体部12の両側内に配置される。ベース30の突出部32には、付勢部材4の下部が挿入される。
ベース30の壁部33は、突出部32の前部に連接され、基部31から若干のスペースを空けるようにして基部31の前方に配置される。
【0024】
挟持部材40は、可動部材3が上下方向に移動しているとき、後述する被挟持部材70を挟持した状態とする。挟持部材40は、被挟持部材70を挟持することによって、可動部材3が上下方向に移動(昇降移動)するときにダンパー効果を生じさせる。挟持部材40は、金属素材の棒状の部材を折曲げ加工されて構成される。挟持部材40は、弾性変形可能な棒バネで構成される。挟持部材40は、被挟持部材70を挟持する左右一対の挟持体41と、前左右の挟持体41同士をそれぞれの上端部で連結する連結体42と、を有し、正面視略逆U字状に構成される。挟持部材40の挟持体41は、挟持体41同士の間隔が下方に比べて上方が左右方向に若干広くなるように構成される。挟持部材40は、可動部材3が上下方向に移動するときに若干左右方向外側に膨らむように弾性変形しながら被挟持部材70を挟持体41で挟持する。
【0025】
一対の挟持部材40は、固定プレート10の本体部12内において前後に並べて配置される。挟持部材40は、取付対象物からみて(前方からみて)固定プレート10の本体部12の左右中央部に配置される。
挟持部材40の挟持体41は、上方に行くに従って左右方向外側になるように傾斜して配置される。挟持部材40の挟持体41は、可動部材3の移動方向(上下方向)に沿って固定プレート10の本体部12の下端部近傍から上端部に亘り、挟持体41のそれぞれの上端部が天板20のそれぞれの貫通孔21に挿通され、挟持体41のそれぞれの下端部(先端部)がベース30の基部31における中央部のスペースに配置される。
【0026】
挟持部材40の挟持体41は、被挟持部材70を挟持した状態で、可動部材3が上下方向に移動可能な程度の挟持力(弾性力)を有する。また、挟持部材40の挟持体41は、可動部材3が下端に位置する状態からはダンパー効果を生じさせつつ作業者によって洋式便器100の装着体102を引上げることができ、また、可動部材3が上端位置する状態からはダンパー効果を生じさせつつ作業者によって洋式便器100の装着体102を押下げることができる程度の挟持力(弾性力)を有する。
【0027】
なお、挟持部材40は、金属素材の板状の部材で構成することもできる。また、挟持部材40は、連結体42を有さず、一対の挟持体41を別体として構成することもできる。
【0028】
図1乃至図4、または図6乃至図8に示すように、可動部材3は、洋式便器100の装着体102に(取付対象物の可動部)に固定される。
可動部材3は、スライダ50と、可動プレート60と、被挟持部材70と、カバー80と、を備える。
【0029】
スライダ50は、固定プレート10の本体部12内に配置されて、固定プレート10に対して上下方向に移動可能に構成される。スライダ50は、略立方体状に構成され、左右一対の筒部51と、切欠部52と、ピン配置孔53と、前後一対の上部貫通孔54と、四個の下部貫通孔55と、を備える。
【0030】
スライダ50の筒部51は、下方に開口する。そして、付勢部材4の上部が筒部51の下方の開口から筒部51を通ってスライダ50の内部に挿入され、付勢部材4の上端部がスライダ50の上板部の内側の面に当接する。このようにして、スライダ50は、付勢部材4によって上方に付勢される。
【0031】
スライダ50の切欠部52は、被挟持部材70が配置される部分である。スライダ50の切欠部52は、スライダ50の左右中央部に配置される。スライダ50の底面部側と上面部側とを若干残した状態で前側面が切欠かれるようにして形成される。
【0032】
スライダ50のピン配置孔53は、切欠部52内に配置される後述する被挟持部材70のピン72の一端部(ピン72の後部)が挿入される。スライダ50のピン配置孔53は、切欠部52内の後面に形成される貫通孔で構成される。
【0033】
スライダ50の一対の上部貫通孔54は、スライダ50の上面部の左右中央部(切欠部52の上方の面)において前後に並べて配置される。スライダ50の上部貫通孔54は、スライダ50の上面部を貫通し、左右方向に長い長丸状に構成される。
【0034】
スライダ50の四個の下部貫通孔55は、スライダ50の下面部の左右中央部(切欠部52の下方の面)において前後左右に並べて配置される。スライダ50の下部貫通孔55は、スライダ50の下面部を貫通し、左右方向に長い長丸状に構成される。
【0035】
可動プレート60は、スライダ50の前面に固定されて、スライダ50の上下方向の移動とともに上下方向に移動可能に構成される。可動プレート60は、洋式便器100の装着体102にビス等で取付けられて固定される。可動プレート60は、金属素材の板状の部材を折曲げ加工されて構成される。可動プレート60は、側面視略L字状に構成される。可動プレート60は、上部61と、前部62と、ピン配置孔63と、を備える。
【0036】
可動プレート60の上部61は、上部の上方に突出する部分で構成される。可動プレート60の上部61は、スライダ50に固定される部分として構成される。可動プレート60の上部61は、固定プレート10の本体部12内の前方側に配置される。
可動プレート60の前部62は、下部の前方に突出する部分で構成される。可動プレート60の前部62は、固定プレート10の前部において開放する部分から前方に突出する。可動プレート60の前部62は、洋式便器100の装着体102に取付けられる部分として構成される。
可動プレート60のピン配置孔63は、切欠部52内に配置される後述する被挟持部材70のピン72の他端部が挿入される。可動プレート60のピン配置孔63は、上部61の左右中央部に形成される貫通孔で構成される。
【0037】
被挟持部材70は、スライダ50の切欠部52内に配置されて、可動部材3が上下方向に移動したときにスライダ50とともに上下方向に移動する。被挟持部材70は、可動部材3が上下方向に移動しているとき、挟持部材40によって挟持された状態とされる。挟持部材40は、取付対象物からみて(前方からみて)固定プレート10の本体部12の左右中央部またはスライダ50の左右中央部に配置される。
被挟持部材70は、ローラ71と、ピン72と、を備える。
【0038】
被挟持部材70のローラ71は、円柱状の部材である。被挟持部材70のピン72は棒状の部材であり、ローラ71の中心孔に貫装される。被挟持部材70のローラ71は、その周面に二個の保持溝73を有する。被挟持部材70のローラ71における二個の保持溝73は、前後に並ぶように形成される。被挟持部材70のローラ71の保持溝73は、挟持部材40の挟持体41が配置されて、可動部材3が上下方向に移動しているときにおいても挟持部材40の挟持体41が被挟持部材70を挟持した状態を保持する。被挟持部材70のローラ71の前方の保持溝73には、前方の挟持部材40の挟持体41が配置され、後方の保持溝73には、後方の挟持部材40の挟持体41が配置される。
被挟持部材70のピン72の前部は、可動プレート60の上部61におけるピン配置孔63に挿入され、ピン72の後部は、スライダ50のピン配置孔53に挿入される。このようにして、被挟持部材70は、可動部材3が上下方向に移動したときにスライダ50および可動プレートとともに上下方向に移動する。
【0039】
カバー80は、可動部材3が下端位置に移動したときに、固定プレート10の本体部12から下方に延出し、固定プレート10の下部11の切欠部15内に配置されて、切欠部15よりも後方の空間(昇降装置1の下方の空間)を隠す。また、カバー80は、可動部材3が上端位置に移動したときに、可動プレート60の前部62の下方における固定プレート10の本体部12の前方の開放する部分(本体部12内の空間)を隠す。
カバー80は、金属素材の板状の部材であり、遮蔽部81と、一対の支持部82と、を備える。
遮蔽部81は、ベース30の基部31と壁部33との間のスペースに配置される。遮蔽部81は、可動部材3が下端位置に移動したときに、固定プレート10の下部11の切欠部15内に配置され、切欠部15よりも後方の空間(昇降装置1の下方の空間)を隠す部分として構成される。遮蔽部81は、可動部材3が上端位置に移動したときに、固定プレート10の本体部12内に配置され、可動プレート60の前部62の下方における固定プレート10の本体部12の前方の開放する部分(本体部12内の空間)を隠す。
【0040】
一対の支持部82は、遮蔽部81の上端から上方に延出する。一対の支持部82は、互いに所定の間隔(被挟持部材70のピン72の直径よりも若干大きい間隔)を空けて配置され、その上端部が互いに向き合う方向(中央側)に延出して構成される。一対の支持部82間には被挟持部材70のピン72の前部が配置され、支持部82の上端部が被挟持部材70のピン72に当接することによってカバー80が被挟持部材70にぶら下がるように構成されて、カバー80は、可動プレート60の上下方向の移動とともに上下方向に移動可能とされる。支持部82は、固定プレート10の本体部12の後方に配置され、スライダ50の前方に配置され、被挟持部材70のローラ71の前方に配置される。
【0041】
また、スライダ50は、左右一対のストッパ90を備える。ストッパ90は、可動部材3が下端位置または上端位置に配置された状態を一時的に保持する。ストッパ90は、スライダ50の背面部の左右に配置される。ストッパ90は、台部91と突出片92とを有する。
ストッパ90の突出片92は、台部91から後方に突出し、側面視で山形状に形成される。ストッパ90は、スライダ50の背面部に形成される凹部に台部91の前方側の一部分が配置され、スライダ50の背面部から後方に突出片92が突出するように配置される。ストッパ90は、バネ部材(不図示)によってストッパ90を後方(固定プレート10側)に付勢される。バネ部材は、ストッパ90の台部91の前面とスライダ50の前記凹部内の後面との間に配置される。
ストッパ90の突出片92は、可動部材3が下端位置に位置するときには、固定プレート10の本体部12の下側係止凹部13Lに係止されて、可動部材3が下端位置に配置された状態を保持する。ストッパ90の突出片92は、可動部材3が上端位置に位置するときには、固定プレート10の本体部12の上側係止凹部13Uに係止されて、可動部材3が上端位置に配置された状態を保持する。
【0042】
ストッパ90のバネ部材は、可動部材3が下端位置する状態からは、作業者によって洋式便器100の装着体102を引上げた際にストッパ90の突出片92が固定プレート10の下側係止凹部13L内から脱落するようにストッパ90を固定プレート10側に付勢する程度の付勢力を有する。
ストッパ90のバネ部材は、可動部材3が上端位置する状態からは、洋式便器100の装着体102の重さや少々の衝撃等で可動部材3が下方に移動しないようにストッパ90の突出片92が固定プレート10の上側係止凹部13U内に配置された状態となるように、また、作業者によって洋式便器100の装着体102を押下げた際にストッパ90の突出片92が固定プレート10の上側係止凹部13U内から脱落するようにストッパ90を固定プレート10側に付勢する程度の付勢力を有する。
【0043】
なお、ストッパ90がバネ部材によって付勢される構成ではなく、ストッパ90(ストッパ90全体またはストッパ90の突出片92)が樹脂素材等によって弾性変形可能に構成されて、固定プレート10の下側係止凹部13Lまたは上側係止凹部13Uに係止され、また、可動部材3が上方または下方に移動するときに固定プレート10の下側係止凹部13Lまたは上側係止凹部13Uから脱落する構成とすることもできる。
【0044】
図7または図8に示すように、このように構成される昇降装置1では、下端位置から上方に可動部材3を移動させるとき、作業者によって洋式便器100の装着体102を引上げた際に、スライダ50のストッパ90の突出片92が固定プレート10の下側係止凹部13L内から脱落し、挟持部材40に挟持された状態で被挟持部材70(ローラ71及びピン72)、スライダ50、および可動プレート60等が上方に移動する。そして、スライダ50のストッパ90の突出片92が固定プレート10の上側係止凹部13Uに係止されて、可動部材3が上端位置に位置する状態とされる。
また、昇降装置1は、上端位置から下方に可動部材3を移動させるとき、作業者によって洋式便器100の装着体102を押下げた際に、スライダ50のストッパ90の突出片92が固定プレート10の上側係止凹部13U内から脱落し、挟持部材40に挟持された状態で被挟持部材70(ローラ71及びピン72)、スライダ50、および可動プレート60等が下方に移動する。そして、スライダ50のストッパ90の突出片92が固定プレート10の下側係止凹部13Lに係止されて、可動部材3が下端位置に位置する状態とされる。
【0045】
以上のように、挟持部材40は、挟持体41同士の間隔が下方に比べて上方が左右方向に若干広くなるように構成されることから、可動部材3(被挟持部材70)が下方に移動するに従って、挟持体41による被挟持部材70を挟持する力が増幅し、また、可動部材3(被挟持部材70)が上方に移動するに従って、挟持体41による被挟持部材70を挟持する力が減衰する。このように構成されることから、簡易な構成で、可動部材3が下方に移動するにしたがって挟持部材40の挟持体41によるダンパー効果が高くなる構成とすることができる。
【0046】
以上のように、被挟持部材70は、取付対象物側(前方からみて)からみて固定プレート10の本体部12の左右中央部またはスライダ50の左右中央部に配置されることから、エアーダンパーを備える構成のものに比べて装置構成が大型化することなく、可動部材3の昇降移動するときの動作を安定させつつ、ダンパー効果をより高める構成とすることができる。また、このように構成することによって、被挟持部材70が左右(二個)に配置されるものに比べて、部品点数を削減することができる。
【0047】
一対の付勢部材4は、付勢部材4の下部がベース30の左右の突出部32内に挿入され、付勢部材4の上部がスライダ50の左右の筒部51内に挿入されて、取付対象物からみて(前方からみて)、挟持部材40および被挟持部材70の左右外側に配置されて、スライダ50を上方に付勢する。このように構成することによって、可動部材3の上方への移動を補助しつつ、可動部材3の上方への移動動作安定させることができる。またこのように構成することによって、一個の付勢部材4によって可動部材3の上方への移動を同様に補助する場合に比べて、小型の一対の付勢部材4を採用して昇降装置1を薄型に構成することができる。
【0048】
以上のように、カバー80の遮蔽部81は、可動部材3が下端位置に移動したときに、昇降装置1の下方の空間を隠すことから、可動部材3が下端位置に位置した状態で、昇降装置1の下方の空間に異物が入込むことを防止することがでる。
また、カバー80の遮蔽部81は、可動部材3が上端位置に移動したときに、固定プレート10の本体部12内に配置されることから、可動部材3が上端位置に移動した状態では、昇降装置1の下方の空間の作業を容易に行うことができる。
【0049】
以上のように、カバー80の遮蔽部81は、可動部材3が上端位置に移動したときに、可動プレート60の前部62の下方における固定プレート10の本体部12の前方の開放する部分(本体部12内の空間)を隠すことから、可動部材3が上端位置に位置した状態で、固定プレート10の本体部12内に異物が入込むことを防止することができる。またこのとこから、カバー80の遮蔽部81は、可動部材3が上端位置に位置した状態で、固定プレート10の本体部12内に配置された挟持部材40が露出することを防止することができ、例えば、挟持部材40に異物が挟まれること等を防止することができる。また例えば、可動部材3が上端位置に位置した状態で、固定プレート10の本体部12内に人の指などが容易に進入することを防ぐこともできる。
【0050】
以上のように、被挟持部材70は、可動部材3が昇降するときに挟持部材40の一対の挟持体41によって挟持されるローラ71を備えることから、可動部材3を昇降移動させるときの動作をスムーズに行うことができる構成のものを簡易な構成で実現することができる。
【0051】
以上のように、可動部材3が下端位置または上端位置に配置された状態を一時的に保持するストッパ90を備えることから、意図せずに可動部材3が下端位置または上端位置に移動して、取付対象物の可動部が意図しない昇降位置に配置されることを防止することができる。
【0052】
また以上のように、固定プレート10は係止凹部13を備え、ストッパ90は固定プレート10の係止凹部13に係止される突出片92を備えることから、可動部材3が下端位置または上端位置に配置された状態を一時的に保持することができる構成を簡易な構成で実現することができる。
【0053】
以上のように、被挟持部材70のローラ71は保持溝73を備え、挟持部材40の挟持体41が保持溝73に配置された状態で被挟持部材70のローラ71を挟持することから、可動部材3を上方または下方に移動させて下端位置から上端位置または上端位置から下端位置に可動部材3を位置させるときに、挟持部材40がローラ71を挟持した状態を確実に保持することができる。
【0054】
なお、昇降装置1では、挟持部材40の挟持体41の素材や形状等の仕様を適宜変更することによって、洋式便器100(取付対象物)の仕様に応じて挟持部材40の挟持体41の挟持力を調節することができる。
例えば、挟持部材40の挟持体41の挟持力を強くして可動部材3が上下移動するときのダンパー効果を高めたい場合には、挟持部材40の挟持体41をより硬質な素材で構成すること、また、挟持部材40の挟持体41をより太い径のもので構成することもできる。また例えば、可動部材3が上端位置から下方に移動するときに下方に行くに従って挟持部材40の挟持体41の挟持力を強くしたい場合には、挟持部材40の挟持体41同士の間隔が上方に比べて下方の方がより狭くなるように構成する。また、挟持部材40の挟持体41を略V字状に構成すること、また、挟持部材40の挟持体41をクランク状に構成することもできる。また、挟持部材40の挟持体41によるダンパー効果をより強くしたい場合には、三個以上の挟持部材40を備える構成とし、また、挟持部材40の挟持体41によるダンパー効果を弱くしたい場合には、一個の挟持部材40を備える構成とすることもできる。
【0055】
図9に示すように、可動プレート60のピン配置孔63は、上下方向に長く構成することもできる。
このように構成される昇降装置1では、下端位置から上方に可動部材3を移動させるとき、作業者によって洋式便器100の装着体102を引上げた際に、可動プレート60が上方に移動しても、可動プレート60のピン配置孔63の下端が被挟持部材70のローラ71に当接するまで被挟持部材70およびスライダ50は上方に移動しない。また、上端位置から下方に可動部材3を移動させるとき、作業者によって洋式便器100の装着体102を押下げた際に、可動プレート60が下方に移動しても、可動プレート60のピン配置孔63の上端が被挟持部材70のローラ71に当接するまで被挟持部材70およびスライダ50は下方に移動しない。
このように構成することによって、可動部材3の昇降移動するときに、可動プレート60のピン配置孔63の上下方向の長さの長さ分、可動部材3の昇降移動するときに被挟持部材70によるダンパー効果を生じさせるタイミングを遅らせることができる。
なお、可動プレート60のピン配置孔63の上下方向の長さは、仕様に応じて任意の長さに構成することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 昇降装置
2 固定部材
3 可動部材
4 付勢部材
10 固定プレート
20 天板
30 ベース
40 挟持部材
41 挟持体
50 スライダ
60 可動プレート
70 被挟持部材
71 ローラ
80 カバー
90 ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9