(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ピンチ
(51)【国際特許分類】
D06F 55/00 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
D06F55/00 Z
D06F55/00 L
(21)【出願番号】P 2020044088
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000100850
【氏名又は名称】株式会社アイセン
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】別府 正士
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-105408(JP,A)
【文献】特開2001-190896(JP,A)
【文献】特開平09-028990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被挟持物を挟持可能な挟持部を一端側に設けた一対の挟持部材を、それらの長手方向中間部位の回動支点部周りで開閉自在に連結し、前記両挟持部材を挟持状態に付勢する付勢部材を設け、前記両挟持部材を設置対象箇所に吊下げ支持する可撓性の吊下げ紐状体を設けてあるピンチであって、
一方の前記挟持部材における前記回動支点部よりも他端側部位には、前記吊下げ紐状体の一端部を止着する止着部が設けられ、他方の前記挟持部材の内側面における前記回動支点部よりも他端側部位には、前記吊下げ紐状体の中間部を
他方の前記挟持部材の内側において鈍角の湾曲状態で移動自在に案内
すると共に前記吊下げ紐状体における前記中間部より他端部側の部位を他方の前記挟持部材の内側面に沿って上方に導出する湾曲案内部が設けられ、前記湾曲案内部は、一方の前記挟持部材の前記止着部に対して、他方の前記挟持部材の他端側に偏位した位置に設けられているピンチ。
【請求項2】
被挟持物を挟持可能な挟持部を一端側に設けた一対の挟持部材を、それらの長手方向中間部位の回動支点部周りで開閉自在に連結し、前記両挟持部材を挟持状態に付勢する付勢部材を設け、前記両挟持部材を設置対象箇所に吊下げ支持する可撓性の吊下げ紐状体を設けてあるピンチであって、
一方の前記挟持部材における前記回動支点部よりも他端側部位には、前記吊下げ紐状体の一端部を止着する止着部が設けられ、他方の前記挟持部材の内側面における前記回動支点部よりも他端側部位には、前記吊下げ紐状体の中間部を鈍角の湾曲状態で移動自在に案内する湾曲案内部が設けられ、前記湾曲案内部は、一方の前記挟持部材の前記止着部に対して、他方の前記挟持部材の他端側に偏位した位置に設けられ、
前記吊下げ紐状体は、樹脂製の帯状体から構成され、前記吊下げ紐状体の一端部は、それの両帯状面が上下方向に向く姿勢で前記止着部に止着され、前記吊下げ紐状体の中間部は、一方の帯状面が他方の前記挟持部材の内側面と対面する状態で前記湾曲案内部に挿通されているピンチ。
【請求項3】
前記湾曲案内部には、前記吊下げ紐状体の中間部を他方の前記挟持部材の内側面の幅内に規制した状態で移動自在に案内する挿通案内路が形成されている請求項1又は2記載のピンチ。
【請求項4】
前記両挟持部材の挟持部には、挟持方向から噛合する複数対の凹凸部が波状に形成され、前記回動支点部に最も近い奥側の一対の前記凹凸部は、挟持状態で接触する強挟持部に構成され、奥側以外の前記凹凸部は、挟持状態で対向面間に隙間のある非接触の弱挟持部に構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載のピンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物干しハンガー等に用いられるピンチで、詳しくは、被挟持物を挟持可能な挟持部を一端側に設けた一対の挟持部材を、それらの長手方向中間部位の回動支点部周りで開閉自在に連結し、前記両挟持部材を挟持状態に付勢する付勢部材を設け、前記両挟持部材を設置対象箇所に吊下げ支持する吊下げ紐状体を設けてあるピンチに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のピンチとして、被挟持物である洗濯物の取り込みを素早く行うことを目的として開発されたピンチが存在する。例えば、特許文献1の
図3に開示されているピンチでは、一方の挟持部材の把持部となる他端部に、吊下げ紐状体を構成する可撓性の吊下げ紐状体の一端部が止着され、他方の挟持部材の把持部となる他端部には、吊下げ紐状体の中間部を移動自在に挿通する貫通孔が形成されている。この貫通孔を通過した吊下げ紐状体の他端側は、他方の挟持部材の外側面に沿って上方の設置対象箇所に導出され、吊下げ紐状体の中間部は、貫通孔の挿通部位において略「く」の字状に屈曲される。
【0003】
そして、干した洗濯物を取り込む際、両挟持部材の挟持部に挟持されている洗濯物を把持して下方に引っ張ると、吊下げ紐状体に対して両挟持部材全体が下方に移動する。この移動に伴って、一方の挟持部材には、両挟持部材の他端部間の間隔を狭める方向への力が加わる。これにより、両挟持部材の挟持部での挟持力が弱くなり、洗濯物を把持した状態での下方への引張操作のみで取り込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のピンチでは、吊下げ紐状体の中間部は、他方の挟持部材における貫通孔の挿通部位において略「く」の字状に急激に屈曲されるため、この貫通孔の挿通部位での吊下げ紐状体の移動抵抗が大きくなり、洗濯物の下方への引張操作に大きな力を要する。その結果、両吊下げ紐状体の挟持部での挟持力が弱くなっていない段階で、洗濯物を無理やり引っ張ることになり、ピンチの破損や洗濯物の損傷を招来する可能性がある。
しかも、他方の挟持部材の貫通孔を通過した吊下げ紐状体の他端側は、他方の挟持部材の把持部の外側面に沿って上方の設置対象箇所に導出されるため、両吊下げ紐状体の把持部を摘まんでピンチを開き操作する際に、吊下げ紐状体が指先に触れて開き操作の邪魔になり易い。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、被挟持物を小さな引張操作力で素早く取り込むことができ、しかも、被挟持物を挟持する場合の開き操作を吊下げ紐状体に邪魔されることなく容易に行うことのできるピンチを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、被挟持物を挟持可能な挟持部を一端側に設けた一対の挟持部材を、それらの長手方向中間部位の回動支点部周りで開閉自在に連結し、前記両挟持部材を挟持状態に付勢する付勢部材を設け、前記両挟持部材を設置対象箇所に吊下げ支持する可撓性の吊下げ紐状体を設けてあるピンチであって、
一方の前記挟持部材における前記回動支点部よりも他端側部位には、前記吊下げ紐状体の一端部を止着する止着部が設けられ、他方の前記挟持部材の内側面における前記回動支点部よりも他端側部位には、前記吊下げ紐状体の中間部を鈍角の湾曲状態で移動自在に案内する湾曲案内部が設けられ、前記湾曲案内部は、一方の前記挟持部材の前記止着部に対して、他方の前記挟持部材の他端側に偏位した位置に設けられている点にある。
【0008】
上記構成によれば、一方の挟持部材の止着部に止着された吊下げ紐状体の中間部は、他方の挟持部材の内側面に設けられた湾曲案内部において、鈍角の湾曲状態で移動自在に案内されるので、この湾曲案内部での吊下げ紐状体の移動抵抗を減少することができる。しかも、湾曲案内部は、一方の挟持部材の止着部に対して、他方の挟持部材の他端側に偏位した位置に設けられているので、吊下げ紐状体の中間部がより大きな鈍角で滑らかに湾曲し、湾曲案内部での吊下げ紐状体の移動抵抗をさらに減少することができる。それ故に、干した洗濯物等の被挟持物を取り込む際、被挟持物を下方への小さな引張操作力で素早く取り込むことができる。
さらに、湾曲案内部は、他方の挟持部材の内側面に設けられているので、両挟持部材の他端側の把持部を摘まんでピンチを開き操作する際、吊下げ紐状体が指先に触れることがなく、ピンチの開き操作を吊下げ紐状体に邪魔されることなく容易に行うことができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記湾曲案内部には、前記吊下げ紐状体の中間部を他方の前記挟持部材の内側面の幅内に規制した状態で移動自在に案内する挿通案内路が形成されている点にある。
【0010】
上記構成によれば、湾曲案内部の挿通案内路に挿通された吊下げ紐状体の中間部は、他方の挟持部材の内側面の幅内に規制された状態で移動案内されるので、吊下げ紐状体の中間部が挟持部材の幅方向外方に飛び出すことがなく、ピンチの取り扱いを容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記吊下げ紐状体は、樹脂製の帯状体から構成され、前記吊下げ紐状体の一端部は、それの両帯状面が上下方向に向く姿勢で前記止着部に止着され、前記吊下げ紐状体の中間部は、一方の帯状面が他方の前記挟持部材の内側面と対面する状態で前記湾曲案内部に挿通されている点にある。
【0012】
上記構成によれば、吊下げ紐状体を構成する樹脂製の帯状体の厚み方向の撓み変形を利用して、吊下げ紐状体の中間部を大きな鈍角で滑らかに湾曲させることができ、湾曲案内部の構造の簡素化を図りながら吊下げ紐状体の移動抵抗を減少することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記両挟持部材の挟持部には、挟持方向から噛合する複数対の凹凸部が波状に形成され、前記回動支点部に最も近い奥側の一対の前記凹凸部は、挟持状態で接触する強挟持部に構成され、奥側以外の前記凹凸部は、挟持状態で対向面間に隙間のある非接触の弱挟持部に構成されている点にある。
【0014】
上記構成によれば、強挟持部を構成する奥側の一対の凹凸部と、弱挟持部を構成する奥側以外の凹凸部とにより、被挟持物を抜け落ちの無い状態で確実に挟持することができる。しかも、被挟持物を下方に引張操作して取り込む際、吊下げ紐状体に対する両挟持部材の下方への移動に伴って、両挟持部材の挟持部での挟持力が弱くなり、被挟持物の被挟持部位が強挟持部を構成する奥側の一対の凹凸部を通過する。この通過により被挟持物の挟持力が大きく低下する。そのため、全ての凹凸部が強挟持部に構成されている場合、或いは、先端側の一対の凹凸部が強挟持部に構成されている場合に比較して、両挟持部材の挟持部から被挟持物の被挟持部位が抜け出すとき、凹凸部の強い噛合に起因する被挟持物の繊維ほつれ等の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ピンチの左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)
【
図3】一方の挟持部材の側面図(a)、縦断面図(b)、正面図(c)、平面図(d)
【
図4】他方の挟持部材の側面図(a)、縦断面図(b)、正面図(c)、平面図(d)
【
図5】吊下げ紐状体の平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)
【
図6】ピンチに吊下げられた被挟持物の取り込み説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2は、物干しハンガーに用いられるピンチPを示す。このピンチPは、洗濯物等の被挟持物D(
図6参照)を挟持可能な挟持部1を一端側に設けた一対の挟持部材2,3を備える。この一対の挟持部材2,3は、それらの長手方向中間部位の回動支点部4周りで開閉自在に連結されている。さらに、両挟持部材2,3を挟持状態に弾性力で付勢する付勢部材5と、両挟持部材2,3を物干しハンガーの物干し枠Aの設置対象箇所に設けた吊り部材B等に吊下げ支持する可撓性の吊下げ紐状体6と、を備える。
【0017】
両挟持部材2,3は、
図1~
図4に示すように、細長い略長方形状の挟持基板2A,3Aと、それの幅方向の両側縁に連続する一対の挟持側板2B,3Bと、を備え、ポリプロピレン等の樹脂で横断面略「コ」の字状に一体成形されている。
図2、
図3に示すように、一方の挟持部材2における挟持部1側寄りの中間部位で、且つ、幅方向に等間隔を置いた三箇所には、円弧状の回動支点突起4aと、円弧状の回動支点凹部4bと、を備えた回動支点板4Aが設けられている。幅方向両側の回動支点板4Aは、一方の挟持部材2の両挟持側板2Bに一体形成され、幅方向中央の回動支点板4Aは、挟持基板2Aの内側面に一体形成されている。
図2、
図4に示すように、他方の挟持部材3における挟持部1側寄りの中間部位で、且つ、幅方向に等間隔を置いた三箇所には、一方の挟持部材2の回動支点凹部4bと回動自在に嵌合する円弧状の回動支点突起4aと、一方の挟持部材2の回動支点突起4aと回動自在に嵌合する円弧状の回動支点凹部4bと、を備えた回動支点板4Aが設けられている。幅方向両側の回動支点板4Aは、他方の挟持部材3の両挟持側板3Bに一体形成され、幅方向中央の回動支点板4Aは、挟持基板3Aの内側面に一体形成されている。
そして、回動支点部4は、一方の挟持部材2の三つの回動支点板4Aと他方の挟持部材3の三つの回動支点板4Aとをもって構成されている。
【0018】
付勢部材5は、
図1、
図2に示すように、円周方向の一箇所が切断された円環状の鋼線製のバネ材5Aから構成されている。両挟持部材2,3の各挟持基板2A,3Aにおける回動支点部4よりも他端側部位には、バネ材5Aの中間部位が貫通する細長い長方形状のバネ装着孔5Bが形成されている。また、両挟持部材2,3の各挟持基板2A,3Aの外側面における回動支点部4よりも一端側部位で、且つ、挟持部1を構成する後述の複数対の凹凸部1A,1Bのうち、回動支点部4に最も近い奥側の一対の凹凸部1A,1Bの対応する部位には、バネ材5Aの両端部が係合保持されるバネ係合装着部5Cが外方に開口する状態で形成されている。
【0019】
そして、本願発明のピンチPでは、
図1、
図2に示すように、一方の挟持部材2の挟持基板2Aにおける回動支点部4よりも他端側部位に、吊下げ紐状体6の一端部を止着する止着部7が設けられている。他方の挟持部材3の挟持基板3Aの内側面における回動支点部4よりも他端側部位には、吊下げ紐状体6の中間部を鈍角の湾曲状態で移動自在に案内する湾曲案内部8が設けられている。湾曲案内部8は、一方の挟持部材2の止着部7に対して、他方の挟持部材3の他端側に偏位した位置に設けられている。
【0020】
上述のように、一方の挟持部材2の止着部7に止着された吊下げ紐状体6の中間部は、他方の挟持部材3の内側面に設けられた湾曲案内部8において、鈍角の湾曲状態で移動自在に案内されるので、この湾曲案内部8での吊下げ紐状体6の移動抵抗を減少することができる。しかも、湾曲案内部8は、一方の挟持部材2の止着部7に対して、他方の挟持部材3の他端側に偏位した位置に設けられているので、吊下げ紐状体6の中間部がより大きな鈍角で滑らかに湾曲し、湾曲案内部8での吊下げ紐状体6の移動抵抗をさらに減少することができる。
【0021】
そのため、
図6に示すように、干した洗濯物等の被挟持物Dを取り込む際、両挟持部材2,3の挟持部1に挟持されている被挟持物Dを把持して下方に引っ張ると、吊下げ紐状体6に対して両挟持部材2,3が下方にスムーズに移動する。このスムーズな移動に伴って、一方の挟持部材2には、両挟持部材2,3の把持部となる他端部間の間隔を狭める方向への力が加わる。これにより、両挟持部材2,3の挟持部1での挟持力が弱くなり、被挟持物Dを把持した状態での下方への引張操作のみで取り込むことができる。それ故に、被挟持物Dを下方への小さな引張操作力で素早く取り込むことができる。
さらに、湾曲案内部8は、他方の挟持部材3の内側面に設けられているので、両吊下げ紐状体6の他端側の把持部を摘まんでピンチPを開き操作する際に、吊下げ紐状体6が指先に触れることがなく、ピンチPの開き操作を吊下げ紐状体6に邪魔されることなく容易に行うことができる。
【0022】
吊下げ紐状体6は、
図2、
図5に示すように、ジュラコン(POM)やナイロ等の柔軟性、弾力性に優れた摺動抵抗の小さな樹脂製の帯状体から構成されている。吊下げ紐状体6の一端部は、それの両帯状面6a、6bが上下方向に向く姿勢で一方の挟持部材2の止着部7に止着されている。また、吊下げ紐状体6の中間部は、一方の帯状面6bが他方の挟持部材3の内側面と対面する状態で湾曲案内部8に挿通されている。
【0023】
吊下げ紐状体6を構成する樹脂製の帯状体の厚み方向の撓み変形を利用して、吊下げ紐状体6の中間部を大きな鈍角で滑らかに湾曲させることができ、湾曲案内部8の構造の簡素化を図りながら吊下げ紐状体6の移動抵抗を減少することができる。
【0024】
止着部7は、
図2、
図3に示すように、吊下げ紐状体6の帯状部6Aが挿入自在な挿通口7Aと、この挿通口7Aに対して一方の挟持部材2の外面側から吊下げ紐状体6を挿入したとき、吊下げ紐状体6の帯状部6Aの基端に形成された矩形状の係合片6Bが入り込み状態で係合する係合凹部7Bとを、一方の挟持部材2の挟持基板2Aに形成することにより構成されている。また、挿通口7Aの内面には、吊下げ紐状体6の係合片6Bが係合凹部7Bに係合したとき、吊下げ紐状体6の帯状部6Aの基端側に貫通形成された係止孔6c(
図5参照)に係合する抜止め突起7cが形成されている。
吊下げ紐状体6の係合片6Bの厚みは、
図2に示すように、挟持部材2の係合凹部7Bの深さと同一又は略同一に設定されている。そのため、吊下げ紐状体6の係合片6Bが挟持部材2の係合凹部7Bに係合したとき、係合片6Bの外側面と吊下げ紐状体6の外側面とが面一又は略面一に構成されている。
【0025】
湾曲案内部8は、
図2、
図4に示すように、他方の挟持部材3の両挟持側板3Bにおける他端側の対抗面間に、通路形成板8Bを一体に架設して構成されている。この通路形成板8Bは、挟持部材3の挟持基板3Aの内側面との間で吊下げ紐状体6の帯状部6Aの先端に形成された円筒状の連結部6Dが通過可能な挿通案内路8Aを形成する。
挿通案内路8Aに吊下げ紐状体6の帯状部6Aを挿通した状態では、帯状部6Aの移動範囲は、両挟持側板3Bの対向面間及び挟持基板3Aと通路形成板8Bとの対向面間に規制される。これにより、吊下げ紐状体6の帯状部6Aは、他方の挟持部材3の内側面の幅内に規制された状態で移動自在に案内されるので、吊下げ紐状体6の中間部が挟持部材3の幅方向外方に飛び出すことがなく、ピンチPの取り扱いを容易に行うことができる。
【0026】
両挟持部材2,3の挟持部1には、
図2~
図4に示すように、挟持方向から噛合する複数対(本実施形態では3対)の凹凸部1A,1Bが波状に形成されている。そのうち、回動支点部4に最も近い奥側の1対の凹凸部1A,1Bは、挟持状態で接触する強挟持部に構成されている。最奥側以外の2対の凹凸部1A,1Bは、挟持状態で対向面間に隙間1aのある非接触の弱挟持部に構成されている。
【0027】
そして、強挟持部を構成する奥側の一対の凹凸部1A,1Bと、弱挟持部を構成する奥側以外の凹凸部1A,1Bにより、被挟持物Dを抜け落ちの無い状態で確実に挟持することができる。しかも、被挟持物Dを下方に引張操作して取り込む際、吊下げ紐状体6に対する両挟持部材2,3の下方に移動に伴って、両吊下げ紐状体6の挟持部1での挟持力が弱くなり、さらに、被挟持物Dの被挟持部位が奥側の一対の凹凸部1A,1Bを通過する。この通過により被挟持物Dの挟持力が大きく低下する。そのため、全ての凹凸部1A,1Bが強挟持部に構成されている場合、或いは、先端側の一対の凹凸部1A,1Bが強挟持部に構成されている場合に比較して、両挟持部材2,3の挟持部1から被挟持物Dの被挟持部位が抜け出すとき、凹凸部1A,1Bの強い噛合に起因する被挟持物Dの繊維ほつれ等の損傷を抑制することができる。
【0028】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、両挟持部材2,3の挟持部1に、挟持方向から噛合する波形状の3対の凹凸部1A,1Bを設けたが、凹凸部1A,1Bは、2対又は4対以上であってもよい。
【0029】
(2)上述の実施形態では、付勢部材5を、円環状のバネ材5Aから構成したが、円環状とは形状の異なるバネ材5Aから構成してもよい。要するに、付勢部材5としては、両挟持部材2,3を挟持状態に弾性力で付勢するものであればよい。
【0030】
(3)一方の挟持部材2の設けられる止着部7としては、吊下げ紐状体6の一端部を止着することのできるものであれば、如何なる構造のものも用いることができる。
【0031】
(4)他方の挟持部材3の内側面に設けられる湾曲案内部8としては、吊下げ紐状体6の中間部を鈍角の湾曲状態で移動自在に案内することのできるものであれば、如何なる構造のものも用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 挟持部
1A 凹部
1B 凸部
2 一方の挟持部材
3 他方の挟持部材
4 回動支点部
5 付勢部材
6 吊下げ紐状体
6a 帯状面
6b 帯状面
7 止着部
8 湾曲案内部
8A 挿通案内路
D 被挟持物