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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】グラフェン材料の生産
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/86 20130101AFI20230906BHJP
   C01B 32/19 20170101ALI20230906BHJP
   C25B 1/01 20210101ALI20230906BHJP
   C25B 1/21 20060101ALI20230906BHJP
   H01G 11/02 20130101ALI20230906BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20230906BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20230906BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20230906BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20230906BHJP
【FI】
H01G11/86
C01B32/19
C25B1/01 A
C25B1/21
H01G11/02
H01G11/26
H01G11/36
H01G11/46
H01G11/62
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020534588
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086698
(87)【国際公開番号】W WO2019122379
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】1721817.3
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505395858
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】エジグ,アンディネット
(72)【発明者】
【氏名】ドライフェ,ロバート・エイ・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】キンロック,イアン・エイ
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0157772(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0329560(US,A1)
【文献】特表2016-534958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00-11/86
C01B 32/19
C25B 1/01
C25B 1/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルにおいて、100nm未満の厚さを有する、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を生産するための方法であって、該セルは、
(a)グラファイトの正極;
(b)負極;および
(c)インターカレート用のアニオンと金属カチオンとを含む電解質
を含み、該金属は、ルテニウム、マンガン、イリジウム、スズ、および銀から選択され;該方法は、該セルに電流を通して、該グラファイトの正極にアニオンをインターカレートする工程を含み、それにより、該グラファイトの正極が剥離して、該金属カチオンが、対応する金属酸化物の形態で電着して、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造が生産される、上記方法。
【請求項2】
前記金属カチオンが、ルテニウム、マンガン、およびイリジウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種より多くの金属カチオンを使用して、それにより、混合金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を生産する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ルテニウムおよびマンガンが使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記インターカレート用のアニオンが、硫酸塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記100nm未満の厚さを有する、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造が、酸化グラフェンを実質的に含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
グラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を含む組成物であって、前記グラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造は、基底面上に堆積した金属酸化物ナノ構造を有し、
前記グラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造は、酸化グラフェンを実質的に含まない、上記組成物。
【請求項8】
前記金属酸化物が、酸化ルテニウム、酸化マンガン、酸化イリジウム、酸化スズ、および酸化銀から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物が、酸化ルテニウム、酸化マンガン、および酸化イリジウムから選択され、場合により酸化ルテニウムおよび酸化イリジウムから選択される、請求項またはに記載の組成物。
【請求項10】
1種より多くの金属酸化物が堆積されてる、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項~10のいずれか一項に記載の組成物を含む電極を有するスーパーキャパシタ。
【請求項12】
前記電極が、100nm未満の厚さを有する、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を含み、該金属酸化物は、酸化ルテニウムを含む、請求項11に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項13】
前記電極が、100nm未満の厚さを有する、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を含み、該金属酸化物は、酸化ルテニウムおよび酸化マンガンを含む、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項14】
前記スーパーキャパシタが、重硫酸ジエチルメチルアンモニウムを含む電解質を有る、請求項12または13に記載のスーパーキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月22日付けで出願されたGB1721817.3の優先権を主張し、その内容および要素はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、金属酸化物を堆積させたグラフェン材料、ならびに電極および触媒としてのこれらの材料の使用に関する。本発明はさらに、金属酸化物を堆積させたグラフェン材料を含む電極を有するスーパーキャパシタに関する。本発明はさらに、プロトン性イオン液体およびスーパーキャパシタにおけるその使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
グラフェンは、2004年にマンチェスター大学でAndre GeimおよびKonstantin Novoselovによって発見され、単離され、特徴付けられた。グラフェンは、その純粋な形態で、炭素原子が六角形の格子状に並んだ単層である。
【0004】
グラフェンは、これまで試験されたなかで最も強い材料である。グラフェンは、熱と電気の両方を伝導し、透明である。これらの稀な特性のために、グラフェンは、科学的および技術的の両面で極めて関心が高く、グラフェンおよび関連材料は、様々な革新的な技術において早くも用途が見出されている。
【0005】
グラフェンの発見は、グラフェンの作製および使用方法に加えて、官能化グラフェン材料および多数の2次元ヘテロ構造を調査する多数の調査プログラムをもたらした。
グラフェン生産のための方法としては、ボトムアップおよびトップダウン合成アプローチの両方が挙げられ、どちらの方法もそれ自体の利益と欠点を有する。例えば、化学蒸着は、比較的高品質のグラフェンを生産するが、収量が低く、一方でグラファイトの化学剥離は、大量のほぼ電気絶縁性の単分子層酸化グラフェン(GO)を生産する。グラファイトの溶液剥離(solution exfoliation)は、純粋なグラフェンプレートレットを典型的には1パーセント未満の収量で生産する。
【0006】
水溶液中での電気化学剥離を介したグラフェンの生産は、拡張性、再現性およびコストの妥当性に関して非常に魅力的と考えられているが、とりわけ特にアノードの剥離プロセス中にグラフェンが酸化しやすい傾向があり、それにより比較的低い導電率を有する材料が生じるため、生成物の品質および特性の制御は問題であることが多い。これは、例えば電池技術のような電気的な用途における電気化学的に剥離したグラフェンの使用を制限する場合がある。
【0007】
また、いわゆる官能化グラフェン材料の関心も高まっている。これらは、例えば置換基の形態で化学的官能性を有する2次元の炭素ベースの材料である。これらは、不活性の場合もあれば、または反応性の場合もあり、用途に合わせるためのグラフェンの電気的および/または物理的特性の変更または微調整に有用であり得る。
【0008】
第6回ナノ構造国際会議(International Conference on Nanostructures)に帰属する会議論文において、Dizaji A Kらは、グラファイトロッドカソードを使用したグラフェン/銅粒子ナノコンポジット調製物の明らかな1工程の電気化学的方法を記載している。電解質は、脱イオン水中に1000ppmのCuOおよび1000ppmのNHClを含有していた。このメカニズムは理解されていないが、電解質のカチオンがグラファイトカソードの中間層スペースの間にインターカレートされており、それらのカチオンの還元により還元/堆積が起こるという仮説が立てられる、と著者は特記している。記載された剥離は、インターカレーションに起因する内部応力に起因する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Dizaji A Kらの第6回ナノ構造国際会議(International Conference on Nanostructures)に帰属する会議論文
【発明の概要】
【0010】
本発明は、金属酸化物を堆積させたグラフェン材料、ならびに電極および電極触媒としてのこれらの材料の使用に関する。本発明は、グラファイトのアノード剥離によってこれらの材料を生産するための簡単な電気化学的方法、新規の金属酸化物で修飾されたグラフェン材料、ならびにこのような材料を含む電極およびセルを提供する。本発明はさらに、金属酸化物を堆積させたグラフェン材料の使用を提供する。
【0011】
本発明者らは、単金属酸化物および混合金属酸化物を含む特定の金属酸化物で修飾されたグラフェンシートは、望ましい電気化学特性を有し、それにより、2つの用途例を挙げるとすれば、電池技術および触媒作用において、それらが有用なものになり得ることを見出した。
【0012】
重要なことに、本発明の方法は、剥離プロセスに金属塩を用いることによる一段階のアノードプロセス(anodic process)におけるグラフェンのin situでの電気化学剥離および修飾を提供する。好適な塩としては、容易に入手可能であり、廉価であり、取り扱いが容易な塩が挙げられる。本発明者らは、得られた生成物が、比較的低いレベルの酸化グラフェンの特徴を有しており、それによって多くの用途にとって特性を改善し、また、金属酸化物生成物で修飾された表面を有しており、それによって生成物の電気化学特性を変更し、一部の場合においてキャパシタンスを劇的に改善することを見出した。
【0013】
本発明者らは、塩濃度の制御が、修飾の程度を制御するのに使用できることを示し、これは、生成物の特性を調整するのに有用であり得る。
本発明の方法を使用して、本発明者らは、従来の電気化学的に剥離したグラフェンのキャパシタンス値より有意に高いキャパシタンス値を有する金属酸化物で修飾されたシートを生産した。
【0014】
本発明は、電気化学セルにおける、100nm未満の厚さを有する、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を生産するための方法であって、セルは、
(a)グラファイトの正極(positive electrode);
(b)負極(negative electrode);および
(c)金属カチオンとインターカレート用のアニオンとを含む電解質
を含み、本方法は、セルに電流を通して、グラファイトの正極にアニオンをインターカレートする工程を含み、それにより、グラファイトの正極が剥離して、金属イオンが、対応する金属酸化物の形態で電着して、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造が生産される、上記方法に関する。
【0015】
好適には、カチオンは、金属のカチオンであって、その金属の酸化物が、酸素発生のための電極触媒として使用するのに好適であるものである。好適には、カチオンは、コバルト、鉄、およびニッケルから選択される金属のカチオンではない。
【0016】
カチオンは、ルテニウム、マンガン、イリジウム、バナジウム、チタン、スズ、および銀から選択される金属のカチオンであってもよい。
第1の形態において、本発明は、電気化学セルにおける、100nm未満の厚さを有する、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を生産するための方法であって、セルは、
(a)グラファイトの正極;
(b)負極;および
(c)インターカレート用のアニオンと金属カチオンとを含む電解質
を含み、金属は、ルテニウム、マンガン、イリジウム、スズ、および銀から選択され;
本方法は、セルに電流を流して、グラファイトの正極にアニオンをインターカレートする工程を含み、それにより、グラファイトの正極が剥離して、金属イオンが、対応する金属酸化物の形態で電着して、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造が生産される、上記方法を提供することができる。
【0017】
好適には、負極も、グラファイトである。例えば、負極は、グラファイトロッドを含んでいてもよい。
好適には、電解質は、水溶液である。言い換えれば、好適には、電解質は、塩の水溶液である。電解質は、新生のグラフェン表面上へと対応する金属酸化物として電着するための金属カチオンと、グラファイトのアノードにインターカレートして剥離を引き起こすための、インターカレート用のアニオンとを含む。
【0018】
本方法は、生産されたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレットを単離する工程を含み得る。これらは、あらゆる好適なプロセスによって収集することができる。例えば、電解質溶液をろ過して、生成物を回収することができ、生成物は、例えば水で数回洗浄されてもよい。生産は、使用またはさらなる処理のために、例えばDMF中に再度分散させてもよい。超音波処理は、再分散を助けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
金属カチオン
電解質は、金属塩を含む。一部の場合において、例えば、本発明の一部の実施態様である混合酸化物で修飾された生成物を生産するためには、1種より多くの塩が使用される。好適には、金属塩は、溶解させて、水溶液として提供され、電解質として使用される。
【0020】
塩のカチオン成分は、電気化学的プロセス中、金属酸化物の形態で、新生のグラフェン表面上に電着される。以下に代表的な反応を示す。
【0021】
【化1】
【0022】
いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、本発明者らは、アノードにおける正にバイアスされた電圧が、水の酸化に伴い金属カチオン化学種の酸化を引き起こすという仮説を立てている。金属カチオンは、その酸化状態が高いほど、水と反応して、対応する金属酸化物を形成し、新生のグラフェン層および/または電極表面上に電着すると考えられる。この反応は、アノードでの又はその近傍で、水の酸化の反応性生成物とグラフェンまたはグラファイトとの反応を防ぐかまたは低減し、それにより生成物の炭素構造の酸化を低減すると考えられる。
【0023】
一部の場合において、電解質は、ルテニウム、マンガン、イリジウム、スズ、および銀から選択される金属のカチオンを含む。これらの金属の安定な塩の酸化状態は、当業界において公知である。例えば、電解質は、Ru(III)、Mn(II)、Ir(III)、Sn(II)、およびAg(I)から選択されるカチオンを含み得る。他所で記載されるように、バナジウムおよびチタンも使用することができる。これらの金属の安定な塩の酸化状態は、当業界において公知である。その例は、Ti(II)、Ti(IV)、V(II)、V(III)、V(IV)、およびV(V)から選択することができる。好適な対イオンは当業者に明らかであると予想され、その例としては、例えば、塩化イオンおよび硝酸イオンが挙げられる。
【0024】
一部の場合において、電解質としては、ルテニウム、マンガン、およびイリジウム;例えばRu(III)、Mn(II)、またはIr(III)から選択される金属のカチオンが挙げられる。一部の場合において、金属は、ルテニウムである。一部の場合において、金属は、マンガンである。一部の場合において、金属は、イリジウムである。
【0025】
金属カチオンの混合物も使用することができ、一部の場合では好ましい場合がある。本発明者らは、混合酸化物生成物が可能であり、少なくとも一部のケースでは、驚くべき優れた電子特性を有することを実証した。一部の場合において、電解質は、ルテニウム、マンガン、イリジウム、スズ、および銀から選択される金属のカチオンである、少なくとも2種のカチオン種を含み得る。例えば、電解質は、Ru(III)、Mn(II)、Ir(III)、Sn(II)、およびAg(I)から独立して選択される2種のカチオンを含み得る。一部の場合において、電解質としては、ルテニウム、マンガン、およびイリジウム;例えばRu(III)、Mn(II)、またはIr(III)のカチオンから選択される2つのカチオン種が挙げられる。一部の場合において、金属の少なくとも1つは、ルテニウムである。一部の場合において、金属の少なくとも1つは、マンガンである。
【0026】
例えば、電解質は、ルテニウムのカチオンおよびマンガンのカチオン、例えば、Ru(III)およびMn(II)を含み得る。
本明細書に記載されるように、本発明者らは、金属酸化物として堆積させようとする金属イオンの濃度を制御することによって、グラフェン表面上の修飾の程度を制御できることを観察した。したがって、金属酸化物として堆積させようとする金属イオンの濃度は、プロセスの望ましい生成物に合わせて変更できることが理解されるであろう。
【0027】
一部の実施態様において、金属酸化物として堆積させようとする金属イオンの濃度は、5~50mM、例えば5~35mM、例えば5~25mM、例えば10~25mM、例えば15~25mMである。一部の場合において、その濃度は、約7mMである。一部の場合において、その濃度は、約10mMである。一部の場合において、その濃度は、約15mMである。一部の場合において、その濃度は、約20mMである。一部の場合において、その濃度は、それより高く、例えば、約25mMであるか、またはさらに約30mMである。
【0028】
本発明者らは、約20mMが特に有効な濃度であることを見出した。したがって、15mMから25mMの範囲が好ましいであろう。
一部の場合において、1種より多くの金属イオンを使用して、混合金属酸化物構造が生産される。例えば、ルテニウムおよびマンガンを、本明細書において例示されたように使用することができる。そのような場合、前の段落に記載の値は、金属酸化物として堆積させようとする金属イオンの濃度の組合せを指すことが理解されるであろう。2種の金属が使用される場合、比率は、約1:1であってもよく、または比率は、変更されてもよい。例えば、一部の実施態様において、ルテニウムイオンの濃度は、約10mMであり、マンガンイオンの濃度は、約10mMである。
【0029】
インターカレート用のアニオン
電解質は、グラファイトの作用電極にインターカレートして材料を剥離させるのに好適なアニオンをさらに含む。好適なアニオンは、当業界において公知であり、例えば、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み入れられるWO2015/158711[1]に記載のものが挙げられる。アニオンとしては、スルホン酸および硫酸から誘導されたアニオン、例えば硫酸モノエステルを挙げることができる。
【0030】
一部の実施態様において、電解質は、硫酸アニオンを含む。言い換えれば、電解質は、硫酸塩を含み得る。
アニオンは、酸化物として堆積させようとする金属種のカチオンの対イオンの形態で、または別の塩として提供されてもよい。別の塩としてインターカレート用のアニオンを提供することは、酸化物の電着のための金属カチオンの濃度とインターカレート用のアニオンの濃度とを独立して変更することを可能にする。好適な対イオンとしては、金属および非金属対イオンの両方が挙げられる。一部は、Fengら[2]に記載されており、その内容全体、特定には例示された塩の形態の開示は参照により組み入れられる。一部の場合において、対イオンは、ナトリウムである。
【0031】
例えば、電解質は、硫酸塩、例えば硫酸ナトリウム、およびさらなる金属塩を含むことができ、硫酸イオンはプロセス中にインターカレートされる化学種として作用する。
インターカレート用のアニオンに好適な濃度は、セルの構成および操作に応じて様々であってもよく、好適な濃度の選択は、当業者の権限の範囲内である。濃度は、2.5M未満、例えば2M未満、例えば1M未満であり得る。例えば、濃度は、0.1~2.5M、0.1~1.5Mまたは0.1~1Mであり得る。一部の場合において、濃度は、0.1~1M、例えば0.3~1Mである。本明細書に記載される例において、したがって一部の実施態様において、濃度は、約0.5Mである。
【0032】
さらなる形態において、本発明は、グラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を含む組成物であって、前記グラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造は、基底面上に堆積した金属酸化物ナノ構造を有する、上記組成物を提供することができる。
【0033】
一部の場合において、金属酸化物は、酸化ルテニウム、酸化マンガン、酸化イリジウム、酸化スズ、および酸化銀から選択される単一金属の酸化物である。例えば、金属酸化物は、酸化ルテニウム、酸化マンガン、および酸化イリジウムから選択することができる。
【0034】
さらなる形態において、1種より多くの金属酸化物が堆積される。これは、混合金属酸化物と称することもできる。金属酸化物は、独立して、本明細書に記載されるあらゆる金属酸化物であり得る。一部の場合において、金属酸化物は、酸化ルテニウムおよび酸化マンガン(酸化マンガン(II、III))である。
【0035】
本発明の一部の方法および組成物において、100nm未満の厚さを有する、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造は、酸化グラフェンを実質的に含まない。言い換えれば、従来のアノード剥離方法と比較して、金属を含ませることにより、酸化グラフェンの特徴が少ない生成物の剥離が生じる。
【0036】
これらの材料は、スーパーキャパシタデバイスにおける電極材料として有用であり得る。
したがって、さらなる形態において、本発明は、本明細書に記載される組成物を含む電極を有するスーパーキャパシタを提供することができる。
【0037】
一部の場合において、電極は、100nm未満の厚さを有する、金属酸化物を堆積させたグラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を含み、金属酸化物は、酸化ルテニウムを含む。
【0038】
一部の場合において、スーパーキャパシタは、重硫酸ジエチルメチルアンモニウムを含む電解質を有する。これは、好適には有機溶媒中で、例えばアセトニトリル中で提供される。好適な濃度は、セルの構成および/または意図した使用によって決めることができる。一部の場合において、重硫酸ジエチルメチルアンモニウムの濃度は、0.1~1.5M、例えば0.5~1.5Mである。重硫酸ジエチルメチルアンモニウムの濃度は、約1Mであり得る。
【0039】
さらなる形態において、本発明は、重硫酸ジエチルメチルアンモニウムを提供し、場合によって、重硫酸ジエチルメチルアンモニウムは、有機溶媒、好適には非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリル中の溶液として提供される。一部の場合において、濃度は、前記の段落に記載される通りである。本発明はさらに、電気化学セルにおける電解質中の重硫酸ジエチルメチルアンモニウムの使用を提供し、場合によって電気化学セルは、スーパーキャパシタである。
【0040】
本発明は、記載された形態および好ましい特徴の組合せを含むが、このような組合せが明らかに容認できないかまたは明示的に回避される場合を除く。
【0041】
定義およびさらなる詳細
グラフェン
グラフェンという用語は、当業界において、時には純粋なグラフェン(pristine graphene)とも呼ばれる単分子層グラフェンと、数層のグラフェンの両方を指すものとして従来使用される。本出願において、用語「グラフェン」は、理想的には1~10層のグラフェン層からなる材料であって、好ましくは生成物中の層の数の分布が制御されているものを記載するために使用される。
【0042】
一部の場合において、本明細書に記載される電気化学的方法は、より厚い材料(すなわち10層より多くの炭素層を有する材料)を有効に生産する。材料の「グラフェン様」の特性は、連続体であってもよく、10層より多くの層を有する生成物が生産され、1~10層のグラフェン層を有するグラフェンと同じまたは類似の特性を有し得る。これらの材料は、本明細書では、グラファイトナノプレートレットおよびグラファイトナノプレートレット構造と称される。言い換えれば、本方法を用いて、100nm未満の厚さ、より好ましくは50nm未満の厚さ、より好ましくは20nm未満の厚さ、より好ましくは10nm未満の厚さを有するグラファイトナノプレートレット構造を作製することもできる。生産されたグラフェンフレークのサイズは、望ましい形態に応じて、ナノメートルレベルからミリメートルレベルまでにわたり変更することができる。
【0043】
グラフェンの対応する「バルクの」材料は、グラファイトである。これは、典型的には、数千層のグラフェンからなる。
一部の実施態様において、生産された材料は、最大で10層までの層を有するグラフェンである。生産されたグラフェンは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10層の層を有していてもよい。生産された材料が、酸化グラフェンを実質的に含まないことが好ましい場合がある。「実質的に含まない」は、酸化グラフェンが、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満であることを意味する。
【0044】
修飾されたグラフェン
修飾されたグラフェンという用語、およびそれに関連する、修飾されたグラファイトナノプレートレットという用語は、本明細書において、層表面上に金属酸化物を堆積させたグラフェン(および/またはナノプレートレット)を記載するために使用される。金属酸化物は、電気化学剥離プロセス中に電着される。文脈上明らかにそうではないことを指示している場合を除いて、金属酸化物という用語は、単一金属の酸化物と混合金属酸化物の両方を指すことが理解されるであろう。
【0045】
本明細書に記載されるように、堆積した金属酸化物の量は、電解質中の金属イオンの濃度を調節することによって制御することができる。堆積した金属酸化物の形態は、堆積の程度(これは、金属イオンの濃度によって制御できる)および酸化物または金属酸化物の性質により変化し得ることが理解されるであろう。得られる形態としては、ナノ粒子、ナノウィスカー、層状のハニカム、および花弁のような構造が挙げられる。堆積した金属酸化物の構造は、グラフェン表面にわたり均一に拡がっていてもよいし、または表面上に集合体の形態で配置されていてもよい。
【0046】
一部の実施態様において、金属酸化物は、MnOであり、堆積した構造は、ハニカム状の層状構造である。厚さは、1.5nm~2.5nmであり得る。一部の実施態様において、厚さは、約2nmである。
【0047】
一部の実施態様において、金属酸化物は、RuOであり、堆積した構造は、金属酸化物ナノ粒子である。RuOナノ粒子の平均サイズは、1.5nm~2.5nmであり得る。一部の実施態様において、RuOナノ粒子の平均サイズは、約2nmである。
【0048】
実施態様において、グラフェンは、RuOと、酸化マンガン(II、III)であると考えられる酸化マンガンとの組合せ(組合せは、本明細書では混合酸化物と称される)で修飾され、堆積した構造は、酸化マンガンのハニカム構造と、ハニカム構造から成長するロッドおよびプレート型のRuOナノ構造である。
【0049】
優先日時点において、本発明者らは、RuOとMnOとの組合せで修飾される「混合酸化物」グラフェンを考えた。さらなる研究に基づき(以下で論じられるように)、「混合酸化物」グラフェンは、RuOと、酸化マンガン(II、III)であるMnとの組合せで修飾されることが現在理解されている。
【0050】
電極
本発明の方法において、グラファイトのアノードが剥離される。したがって、本発明の方法は、グラファイトの正極を使用する。言い換えれば、正極は、グラファイトを含む。グラファイトは、あらゆる好適な形態で提供することができる。例えば、グラファイトは、ロッド、グラファイトホイル、または粉末として提供されてもよく、これらは、ポリマー支持体、またはメッシュにおいて複合材料として提供されてもよい。一部の場合において、正極は、前もって拡張させたグラファイトを含むが、これは必須ではない。言い換えれば、正極は、少なくともある程度、0.335nmより大きい層間距離を有するグラファイトを含んでいてもよい。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも5%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも10%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも15%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも20%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも25%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも30%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも40%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも50%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも60%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも70%は、0.335nmより大きい間隔を有する。一部の場合において、グラファイト層の少なくとも80%は、0.335nmより大きい間隔を有する。
【0051】
0.335nmより大きい層間距離は、例えば、0.35nmより大きくてもよいし、例えば0.37nmより大きくてもよいし、例えば0.40nmより大きくてもよいし、例えば0.45nmより大きくてもよい。
【0052】
グラファイトを前もって拡張させる方法は、当業界において公知であり、例えば、非常に低温の液体(-100℃未満)、続いて溶媒、例えばエタノールなどのアルコールにグラファイトを浸漬することを含む。本明細書に記載される例において、グラファイトホイル作用電極は、液体窒素に30秒浸漬すること、その後、無水エタノールに移すことによって前もって拡張された。
【0053】
カソード(負極)は、グラファイトの材料でもよいし、または別の材料でもよい。例えば、負極は、グラファイトロッドであり得る。
参照電極を使用してもよい。
【0054】
剥離セル
セルは、剥離のためのグラファイト正極と、グラファイト材料または別の材料であり得る負極と、電解質とを含有する。H型電気化学セルを使用してもよい。好適には、電気化学セルは、分離されたアノード区画およびカソード区画を提供するように構成される。例えば、アノードおよびカソードは、ガラスフリットによって分離されていてもよい。対電極(カソード)において水の還元により連続的に生成する水酸化物イオンは金属と反応し得るが、このような電気化学セルは、剥離したグラフェンサンプルの金属水酸化物による汚染を潜在的に防止する。また、新生の剥離したグラフェンのすべての官能化について、カソードで生成した金属水酸化物からの物理的な混合物によるものではなく、アノードでの金属酸化物の同時堆積によるものであることを確実にする。
【0055】
まとめると、本発明者らは、グラファイトの電気化学剥離中の特定の金属カチオンの使用は、電極として、また電極触媒として使用するために有用であり得る金属酸化物で修飾された材料を生産するのに使用できることを示した。有利なことに、一部の場合において、生成物の酸化グラフェンの特徴は少ない。2種の金属の酸化物で修飾されたグラフェン生成物は、均一に成長したRuOおよびMn(元はRuO-MnOであると考えられていた)の構造で修飾されており、これは、スーパーキャパシタのための効率的な電極(500F・g-1)および水分解のための効率的な電極触媒(1.4V)であることが見出された。
【0056】
以下、本発明の原理を例示する実施態様および実験を、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、(A)0.5MのNaSO(水溶液)中の20mMのRuCl、0.5MのNaSO(水溶液)中の20mMのMn(NOならびに0.5MのNaSO(水溶液)中の10mMのRuClおよび10mMのMn(NOの混合物中でのグラファイトの電気化学剥離によって得られたグラフェンサンプルで得られたサーベイスキャンXPスペクトルを示す。(B)、(C)、および(D)は、それぞれO1s、Mn3sおよびC1s領域における高分解能XPスペクトルである。全てのピーク位置は、C1sシグナルの結合エネルギーを285eVに設定することによって電荷で補正した。
図2図2は、0.5MのNaSO(水溶液)中の20mMのMn(NO中でのグラファイトの電気化学剥離によって得られたMnO官能化グラフェンサンプルの(A)SEM、(B)AFM、(C)および(D)TEM画像を示す。(B)の差し込み図は、選択された領域の高さのプロファイルを示す。
図3図3は、(A)RuO官能化グラフェンのSEM画像、(B)および(C)RuO官能化グラフェンのTEM画像を示す。RuO官能化サンプルを、0.5MのNaSO(水溶液)中の20mMのRuCl中でのグラファイトの電気化学剥離によって得た。
図4図4は、(A)および(B)Mn-RuO官能化グラフェンのSEM画像、(C)、(D)、および(E)Mn-RuO官能化グラフェンのTEM画像を示す。グラフェン-Mn-RuO官能化サンプルを、0.5MのNaSO(水溶液)中の10mMのRuClおよび10mMのMn(NO中でのグラファイトの電気化学剥離によって得た。
図5図5は、指定された電極で構成された対称的なコインセルを使用した1.0MのHSO(水溶液)における20mV・s-1で記録されたサイクリックボルタモグラムを示す。電圧を、0.0V(初期電位)から0.8Vの間スキャンし、(B)は、指定された電極におけるスキャン速度の関数としての重量に対するキャパシタンスであり、(C)は、温度を空気中10℃/分の速度で40℃から1000℃に高めることによって指定されたサンプルで記録されたTGAトレースである。差し込み図は、開回路電位で得られたナイキストを示す。(D)1.0MのHSO中での5000サイクル後におけるG-Mn-RuO電極のキャパシタンス保持率。差し込み図は、周波数の範囲にわたる正規化された仮想キャパシタンスを示す。(E)10mV・s-1、-0.7V~1.9Vにおける指定された電極での0.1MのKOH(水溶液)中における1600rpmで記録されたRDE分極曲線、および(F)1.5Vで得られたナイキストプロット対RHE。測定は、100mHz~100kHzの周波数範囲で、5mVの振幅で行われた。
図6図6は、G-Mn-RuO電極で構成された対称的なコインセルを使用したアセトニトリル中の1.0M[dema][HSO](赤色)およびアセトニトリル中の1.0M[TEA][BF](黒色)における20mV・s-1で記録されたサイクリックボルタモグラムを示す。電圧を0.0V(初期電位)から2.0Vの間スキャンし、(B)は、G-Mn-RuO電極における、アセトニトリル中の1.0M[dema][HSO]中における、150、75、60、50、30、20、10mV・s-1(上から下へ)で記録されたCVである。(C)は、指定された電極におけるスキャン速度の関数としての重量に対するキャパシタンスであり、(D)は、アセトニトリル中の1.0M[dema][HSO]中においてG-Mn-RuOで得られた充放電曲線である。
【0058】
注:優先日時点では、本発明者らは、グラフェンはMnO-RuOで官能化されると考えていた。しかしながら、本発明者らはそれ以降に、グラフェンがMn-RuOで官能化されることを見出した。図面の説明は、この理解の改善を表す。
【実施例
【0059】
以下、本発明の形態および実施態様を添付の図面を参照しながら説明する。さらなる形態および実施態様は、当業者には明らかであると予想される。このテキストで述べられた全ての文書は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0060】
本発明者らは、グラフェンの電気化学剥離中において剥離溶液中に特定の金属塩を含ませることにより、その金属の酸化物で修飾された剥離したグラフェンシートが生じることを見出した。以下の実施例は、これらに限定されないが、このプロセスにおけるMnおよびRu塩の使用およびそれぞれの金属酸化物で修飾されたグラフェンシート生成物を説明する。本発明者らはまた、ここに記載されない追加の実験で、同時の剥離および修飾も観察した。これらの実験は、Ir、SnおよびAg塩を含み、結果としてIrO、SnO、およびAgOで修飾された生成物が生じる。
【0061】
このプロセスはまた、混合金属酸化物で修飾されたグラフェンシートを生産するのに使用することもできる。以下、これに限定されないが、導電性グラフェン支持体上に電着した2種の金属の酸化物(例えば、Mn-RuO)の生産について述べる。
【0062】
望ましい金属酸化物(1種または2種の金属の酸化物)のローディングは、電気化学剥離中に塩の濃度を変えることによって制御することができる。
有利には、生成物は、慣例的なアノードで生産された「グラフェン」生成物より、酸化グラフェンの特徴が少なくてもよい。例えば、本発明者らは、ルテニウムまたはイリジウムが使用される場合、酸化レベルが低いことを実証した。言い換えれば、一部の実施態様において、本発明は、電気化学セルにおける、100nm未満の厚さを有する、グラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造を生産するための方法であって、セルは、(a)グラファイトの正極;(b)負極;および(c)インターカレート用のアニオンと、ルテニウムおよびイリジウムから選択される金属のカチオンとを含む電解質を含み、本方法は、セルに電流を通して、グラファイトの正極にアニオンをインターカレートする工程を含み、それにより、グラファイトの正極が剥離して、グラフェンおよび/またはグラファイトナノプレートレット構造が生産される、上記方法を提供することができる。本明細書に記載される場合、生成物は、金属酸化物の堆積で修飾されている。金属酸化物ナノ構造は、表面上に堆積される。生成物は、得られたままの修飾された形態で使用してもよいし、またはさらに加工してもよい。
【0063】
本材料は、例えば電極として、または電極触媒として使用するための電気化学的用途において有用性をもたらす。その目的のために、本発明者らは、スーパーキャパシタコインセルを作製した。その詳細は後述する。本材料は、水分解のための電極触媒として有用であり得る。
【0064】
材料および試薬
無水硫酸ナトリウム、塩化ルテニウム(III)(99.9%)および硝酸マンガン(II)水和物(99.9%)を、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から得た。全ての電気化学測定を、オートラボ(Autolab)ポテンシオスタットモデル(PGSTAT302N、メトローム・オートラボ(Metrohm Autolab)、オランダ)または電源のいずれかを使用して実行した。グラファイトホイル(>99%)を、ジーグラファイト社(Gee Graphite Ltd)(英国)から得た。ポリ(テトラフルオロエチレン)で作製されたオムニポア(Omnipore)メンブレンフィルター(JVWP01300)を使用し、孔サイズは0.1μmであった。超純水(18.2MΩ・cmの抵抗率)を、Milli-Q水精製システムから得た。
【0065】
剥離した生成物の特徴付け
1800ライン/mmの回折格子および100×対物で、3.32mWの出力で作動する532nmの励起レーザーを備えたレニショー(Renishaw)のinVia顕微鏡を使用して、ラマンスペクトルを得た。ラマン測定のためのサンプルは、Si/SiOウェーハ上に分散液(DMF中)をドロップコーティングし、次いでホットプレート上で、150℃で乾燥して、溶媒を蒸発させることによって調製した。AFM分析のために、複合材料(例えばグラフェン-MnO)分散液を、Si/SiO基板上にスプレーコーティングし、これを真空オーブン中、80℃で乾燥した。SEM分析を、FEI Quanta 650 FEG環境走査型電子顕微鏡を使用して行った。(S)TEMは、200kVで作動するFEI Talos F200Xおよび80kVで作動するFEI Titan G2 60-300によって行われた。(S)TEMのためのサンプルは、乾燥した複合材料サンプルをDMF溶液に数秒分散させ、次いでTEM格子上にドロップキャスティングすることによって調製された。グラフェン分散液の濃度を、モデルDH-2000-BAL(オーシャンオプティクス(Ocean Optics))を使用したUV-vis分光法で測定した。X線光電子分光法(XPS)を、モノクロメーターのAl KαX線源(E=1486.6eV、10mA放出)を備えたKratos Axis Ultra DLD分光計を使用して実行した。X線回折(XRD)を、40kVおよび30mAで作動するCu Kα放射線(λ=0.154nm)を備えたフィリップス(Philips)のX’pert PRO回折計で実行した。
【0066】
金属カチオンの存在下におけるグラファイトの電気化学剥離
アノード区画中のグラファイトホイル作用電極(液体窒素中に30秒浸漬し、続いて無水エタノールに移すことによって前もって拡張した)、およびカソード区画中のグラファイトロッド対電極からなるH型電気化学セルを使用した。電気化学セルを多孔質ガラスフリットによって分離し、区画を7cm分離した(図1Bの差し込み図)。超純水中に0.5MのNaSOおよび様々な濃度のRu(III)塩またはMn(II)塩(7、20、30mM)を溶解させることによって、電解質を調製した。一部の場合において、剥離溶液は、10mMのRuCl(水溶液)、10mMのMn(NO(水溶液)および0.5MのNaSO(水溶液)を含有する。電源を使用してグラファイトホイル(アノード区画)に+20Vを適用することによって、グラファイトの電気化学剥離および官能化を行った。20.0Vが最適な電圧であった。この値未満だと、剥離の収量がそれより低かった。剥離した生成物を水で数回洗浄し、次いで20分超音波処理することによってDMF中に再度分散した。
【0067】
図1Aは、20mMのMn(NO、20mMのRuClの存在下で、または2種の塩(10mMのMn(NOおよび10mMのRuCl)の混合物中で剥離したグラフェンサンプルにつき得られたサーベイスキャンXPスペクトルを示す。広範なスキャンにおけるC1sおよびO1sに伴うMnまたはRu(またはその両方)のシグナルのいずれかの存在は、それらそれぞれの金属種でのグラフェンの官能化の確証になる。20mMのMn(NOの存在下で剥離したグラファイトサンプルから得られたO1sの詳細な検査から、Mn酸化物の特徴的な結合エネルギー位置における新しい酸素ピークの形成が示される。さらに、Mn3sのスプリット幅は、4.9eVであり、これは、MnO構造と一致する。
【0068】
類似の方式で、20mMのRuClの存在下で剥離したグラフェンサンプルのEDX分析は、RuOの形成を示す。またXPS分析からのRu(5.2%)とO(12%)との原子濃度比も、EDXデータから引き出された結論を裏付ける。興味深いことに、RuOで官能化されたグラフェンの高分解能C1sスペクトルは、MnOで官能化されたグラフェンまたは対照サンプルと比較した場合、いかなる表面酸化も存在しないことを示す(図1D)。これは、RuOが、電気化学剥離中のグラファイトの酸化に対する保護層として作用することを示唆する。RuOは、酸素発生に関して明白に最良の電極触媒であるため、RuO表面での水の酸化は、炭素表面を攻撃するヒドロキシルラジカルを有意に形成することなく、起こり得る。イリジウムを使用した場合も類似の作用が記録された。
【0069】
いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、本発明者らは、グラフェンの酸化がないことは、水の酸化のための良好な電極触媒である金属酸化物を有する金属カチオンの使用によると考えている。
【0070】
10mMのMn(NOおよび10mMのRuClの存在下で剥離されたグラフェンサンプルのXPSデータの分析は、Ru酸化物とMn酸化物の両方の取込みを示した(図1Aの黒色の実線)。サーベイスキャンからのC、O、Ru、およびMnの原子濃度は、それぞれ65、19、7.7、および8.3%であった。これは、複合構造中のRuOの量が、MnOの量に対するモル比の範囲内であったことを示す。粉末X線回折データは、MnOまたはRuO構造のいずれかと関連する回折パターンが存在しないことを示し、これは、酸化物が高度に無定形の構造であったことを示す。優先日時点で、本発明者らは、Mn酸化物はMnOであると考えていた。
しかしながら、それ以降に本発明者らは、Mn3S高分解能XPSスペクトルのスプリット幅から、10mMのMn(NOおよび10mMのRuClの存在下で剥離したグラフェンサンプルのMnの酸化状態を決定した。スプリット幅は5.4eVであり、これはMn酸化物構造が実際にはMnであることを示す[3]。EDXによるハイブリッドグラフェン-酸化物構造のバルクの化学的組成物の検査によれば、それぞれ6%、9%、29.6%、および55.4%のMn、Ru、OおよびCが示される。これは、複合酸化物の化学構造が、Mn-RuOであることを示す。またEDX組成は、複合材料中のRuOの量が、Mnの量より50%多いことも示唆するが、XPS分析から得られた組成は、複合構造が、Mnと比較して2倍のRuの量を含有していたことを示した。
【0071】
図2は、20mMのMn(NOおよび0.5MのNaSOの存在下で得られたグラフェンサンプルのSEM、AFM、およびTEM画像を示す。グラフェン表面の大部分を、相互連結した層状のハニカムのような構造の薄層でコーティングした(図2A、2C~D)。AFMは、層状のハニカムMnO構造の厚さが1nmから2nmの間で変動し、一方でグラフェンの厚さも1nmから2.5nmの間であったことを示した(図2B)。加えて、いくつかの大きい半球状のナノウィスカー構造もグラフェン表面を覆っていた。これらの大きい構造はカールした花のようであり、MnOの花弁のような形の層からなっていた。
【0072】
それに対して、RuOは、個別の厚いナノ粒子を形成し、ナノ構造の多くが、グラフェンシート上での凝集を示す(図3A~B)。一部の場所で、RuOナノ構造は、約2nmの平均粒度でグラフェンシート上に散在的に分布している(図3C)。
【0073】
RuOおよびMnOの組合せで修飾されたグラフェンは、個別のナノ構造で修飾されたグラフェンの形態と異なる形態を示した。SEMおよびTEM画像は、RuOナノ構造が、ロッドおよびプレート型の構造で、MnOハニカム構造の内部で成長することを示す(図4)。ナノロッドの平均長さは、0.5μmであり、その直径は、0.1μmである。EDXマッピングは、酸化物構造がグラフェンシートにわたり均一に分布していることを示した。局所構造、例えばMn/Ru比率は、場所に応じて変動し得る。
【0074】
ラマン分光法は、MnOナノ構造を有する官能化グラフェンの形成を示した。約630cm-1でのMn-O伸縮モードに沿って典型的なグラフェンのDバンド、Gバンド、および2Dバンドが見られた。粉末X線回折(XRD)データは、グラファイト構造による回折ピークの他にも弱い特徴を示した。Mn(NOの場合、β-MnO構造の(101)、(111)、(211)面に相当する37.3、43.0、および57.0°で顕著なピークの一群が見出された。これらのピークに加えて、グラファイト(002)ピークの低い方の角度の尾部に幅広な特徴がある。この新たに出現したピークは、δ-MnO構造の(002)面に相当する。MnOに比べて、RuClの存在下で剥離したグラフェンの場合、幅広な特徴だけが、RuOの(101)面に相当する34.9°に出現した。Mn(NOおよびRuClの混合物から得られたグラフェンの場合、RuOと類似の回折パターンが見出されたが、最も顕著なピークは36.7°に出現した。ピークの位置はRuO(101)とβ-MnO(101)との間にあり、これらの構造は同じ対称性(P4/mnm)を有する一方で、これは、サンプル中に混合酸化物相が存在することを示す。
【0075】
金属酸化物で修飾されたグラフェンのキャパシタンス
官能化グラフェンのキャパシタンスの挙動を、サイクリックボルタンメトリー、電気化学インピーダンス分光法(EIS)、およびガルバノスタットの充放電曲線を使用して評価し、官能化されていない電気化学的に剥離したグラフェン(対照)と比較した。図5Aは、対照、20mMのMn(NO(G-MnO)、20mMのRuCl(G-RuO)で、ならびに脱酸素した1.0MのHSO(水溶液)中の10mMのMn(NOおよび10mMのRuCl(G-MnO/RuO)の混合物中で官能化されたグラフェンで得られたCVを示す。グラフェン-金属酸化物複合電極での、CV曲線における長方形の形状およびガルバノスタットの充放電における三角形の曲線は、それらの迅速で可逆的な疑似的なキャパシタンスの性質を示す。
【0076】
示した通り、CVの幅は、電極がEEG(電子的に剥離したグラフェン)から官能化グラフェンに変化するときに顕著に増加した。EEGの平均キャパシタンスは、40F・g-1であり、これは、G-MnOの場合は約100F・g-1に、G-RuOの場合は210F・g-1に増加したことから、金属酸化物は、それらの疑似的なキャパシタンスの挙動により全体のキャパシタンスに寄与することが実証される。キャパシタンスは、グラフェンへのRuOのローディングが増加するにつれて増加した。TGAは、剥離中に7mM、20mM、および30mMのRuClを使用することにより、それぞれ16%、27%、および38%のRuOのローディングが生じたことを示した(TGA曲線における約300℃~750℃での重量損失は、グラファイト炭素の分解が原因である)。
【0077】
対応するキャパシタンス値は、RuOのローディングを16%から27%に増加させたところほぼ2倍となった(7mMのRuClにおいて140F・g-1および20mMのRuClにおいて230F・g-1)。RuOの高いローディングでは(38%)、そのスペシフィックキャパシタンスは、より低いスキャン速度で27%のローディングよりわずかに高かったが、そのキャパシタンスは、高いスキャン速度(ν)では同じになる。これは、20mMのRuClが、グラフェンの同時の電気化学剥離および官能化中に、スーパーキャパシタ用途にとって最適なRuOローディングを生じることを実証する。
【0078】
しかし、グラフェン、RuO、およびMn(G-Mn-RuO)からなる複合サンプルは、520F・g-1を超える通常と異なるキャパシタンスを示し、これは、G-RuO電極の最も良い性能の約2倍である。本発明者らは、3つの成分の間で相乗効果があるという仮説を立てており、それにおいて、グラフェンは、フィルムの伝導率における全体的な強化に寄与することが考えられ、一方で電着プロセスは、高い表面積のMnおよびRu酸化物の堆積を生じ得ると考えられる。
【0079】
G-Mn-RuOの金属酸化物ローディング(合計の金属酸化物のローディングは、~42%であった)は、G-RuO(30mMのRuCl)のローディングに匹敵する。しかしながら、G-MnO-RuO電極の直列抵抗は、G-RuOの10分の1未満であった(20mMのRuClの場合の4.5Ωおよび30mMのRuClの場合の10Ωと比較して、G-Mn-RuOは0.8Ωであった)。2種の金属の酸化物の内部抵抗における減少は、10A・g-1で得られた放電曲線において、抵抗低下における減少(G-MnO-RuOでは0.05V、それに対してG-RuOでは0.15V)によって反映される。
【0080】
さらに、G-Mn-RuOにおける電荷移動の抵抗は、30mMのRuClを使用して得られた電極における17Ωと比較して0.3Ωであったことから、全体的な疑似的なキャパシタンスに寄与する酸化還元反応が、G-Mn-RuOにおける場合よりずっと速いことが示される。これはまた、緩和時間定数(τ)を分析する場合にも当てはまり、緩和時間定数は、貯蔵されたエネルギーおよび力を効率的に送達するのに必要な時間を示す定数である。τはまた、デバイスにおいて抵抗性またはキャパシタンスの挙動が主となっている場合、周波数範囲を確認するのにも使用することができる。G-Mn-RuOの場合、1秒のτが得られ、G-RuO電極の場合、6秒のτが得られたが、これは、G-MnO-RuOにおける抵抗性損失が、G-RuOと比較して最小であることを示す。また、水素および酸素発生反応に対するそれらの電極触媒活性と比較して、各成分間の相乗的な相互作用は、より明らかであった。
【0081】
G-Mn-RuO電極は、G-RuOまたはG-MnOと比較した場合、アルカリ性媒体中での両方の反応において一層強化された触媒活性を示した:すなわちH発生反応(HER)は-0.06Vで起こり、O発生反応(OER)は1.37Vで起こる。これは、G-RuOにおける1.6Vに対して、1.43Vの全体的な水分解電位をもたらす(これは、熱力学的電位である1.23Vに近い)。またG-Mn-RuOにおけるOERのRCTも、G-RuOのRCTの10分の1であったことから、OERの反応速度が、2種の金属酸化物-グラフェン複合材料において、より速いことが実証される。
【0082】
電極としての材料の使用
電極の調製
DMF中に剥離した生成物を分散させる前、MnOで官能化されたグラフェン(G-MnO)の場合は250℃、およびRuOで官能化されたグラフェン(G-RuO)の場合は120℃で、2時間、粉末を空気下でアニールした。次いで分散されたインクを、シリンジポンプディスペンサー(ニューエラポンプシステムズ(New Era Pump Systems, Inc)、ニューヨーク州)を10mL・時間-1の速度で使用して、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜でろ過した。次いで膜を、真空オーブン中、100℃で一晩乾燥させた。シンメトリックな活性材料を用いた標準的なCR2032コインセルハードウェア中にコインセルアセンブリを調製した。2つのシンメトリックな膜を、集電装置と接触する活性材料を背中合わせで積層することによって、セルを組み立てた。数滴の脱酸素した1MのHSO(水溶液)を添加して電極を満たし、その後、液圧式の圧着機(MSK-160D)を使用してコインセルをシールした。StollerおよびRuoff[4]によって確立された最良の実施方法を使用してスペシフィックキャパシタンスを計算した。
【0083】
直径5mmのグラッシーカーボン(GC)回転ディスク作用電極、飽和カロメル参照電極、およびPtメッシュ対電極(面積5cm)からなる3電極セルを、水素および酸素発生反応測定に使用した。5mgの望ましい粉末(G-MnO、G-RuO、またはG-Mn-RuO)の混合物を1mLのN,N’-ジメチルホルムアミドおよび50μLのナフィオン(Nafion)(登録商標)(5%、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich))中で20分間超音波処理することによって、望ましい電極触媒インクを調製した。10μLの上記の溶液をドロップコーティングすることによってGC電極を改変し、次いでこれを空気中、室温で乾燥させた。N雰囲気下において、脱酸素した0.1MのKOH(水溶液)を使用して、10mV・s-1で、1600rpmでGC電極を回転させながら、分極曲線を得た。
【0084】
電解質
酸化ルテニウムの電荷蓄積メカニズムは、酸化物の急速なプロトン付加に基づく。金属中心(Ru4+、Ru3+、Ru2+)における連続した電子移動は、酸化物におけるOからOHへの相互変換についてのプロトン移動でによって平衡化される。一般的に、RuOは、水性の酸性媒体中で作動する場合、ほとんどの高表面積の炭素ベースの電極より一層高いキャパシタンスを有する。しかしながら、有機電解質の場合のようにプロトン源の非存在下において、そのキャパシタンスは、ほとんどの炭素ベースの電極より顕著に低い。これは、プロトン源の欠如によってその疑似的なキャパシタンスが達成しがたいことに起因しており、全体のキャパシタンスは、電気的二重層から得られるのみである。結果として、電極材料としてRuOを採用するスーパーキャパシタデバイスは、低いエネルギー密度の問題がある。
【0085】
本発明者らは、ここで記載されたルテニウム単独および混合酸化物で修飾された材料を使用した本発明者らのセル設計でこの問題に取り組んだ。本発明者らは、電解質中にプロトン源を供給するために、プロトン性イオン液体(PIL)の設計によってこれを行った。PILは、電解質として使用するための溶媒中に供給されてもよい。これは、RuO、例えば本発明のRuO修飾材料を含む電極を有するセルで使用することができ、また、プロトン移動メカニズムが関与する他のセルで使用することができる。
【0086】
このイオン液体は、重硫酸ジエチルメチルアンモニウム([dema][HSO])である。これは、ブレンステッド酸(ジエチルメチルアミン)からブレンステッド塩基(硫酸)へのプロトン移動により形成される。これは、室温で粘性の液体である。
【0087】
【化2】
【0088】
重硫酸ジエチルメチルアンモニウム([dema][HSO])は、文献の方法[5]を使用して合成してもよく、その場合、硫酸は、ジエチルメチルアミンに滴下される(塩基:酸のモル比はそれぞれ1.05:1.0)。塩基に酸を添加する間、Ar雰囲気下、氷槽中で混合物を撹拌した。得られた無色粘性の液体を、真空オーブン中、100℃で乾燥させた。
【0089】
ここで留意すべきは、このPIL構造は、充放電プロセス中に負極と正極でRuOの疑似的なキャパシタンス(pseudocapacitance)が達成可能になるように、カチオンとアニオンの両方でプロトンを含有することである。このPILをアセトニトリル(1.0Mの濃度)中に溶解させ、G-MnO-RuOのシンメトリックな電極を有するセル中の電解質として使用した。キャパシタンスをアセトニトリル中の1.0M[TEA][BF]と比較した(図6)。[dema][HSO]を含有する電解質を使用して測定された電流は、同じνで[TEA][BF]を使用して測定された電流より有意に高かったことから、PILが、金属酸化物の酸化還元反応のためのHを供給していることことが示される。
【0090】
これは、プロトンを含有しない電解質のキャパシタンス([TEA][BF]、5mV・s-1において50F・g-1)より5倍高い(5mV・s-1において287F・g-1)スペシフィックキャパシタンス(specific capacitance)をもたらした。さらに、CVおよび充放電曲線の形状は、この新規の電解質に関してキャパシタンスの挙動に期待される応答を示した。これらのデータは、PILベースの電解質が、金属-酸化物電極ベースのセルにおけるプロトン源として有用であり得ることを実証する。
【0091】
前述の説明、または特許請求の範囲、または添付の図面で開示された特徴は、それらの具体的な形態で表され、または開示された機能を実行するための手段または開示された結果を得るための方法もしくはプロセスに関して表され、これらは必要に応じて、別々に、またはこのような特徴のあらゆる組合せで、本発明をそれらの多様な形態で実現するために利用することができる。
【0092】
本発明を上述した例示的な実施態様と共に説明したが、この開示を考慮して、多くの等価な改変およびバリエーションが当業者には明らかであると予想される。したがって、上記に記載された本発明の例示的な実施態様は、例示的であり、限定ではないとみなされる。記載された実施態様への様々な変更が、本発明の本質および範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0093】
あらゆる疑義を回避するために言えば、本明細書で提供されるあらゆる理論上の説明は、読者の理解を改善する目的で提供される。本発明者らは、これらの理論上の説明のいずれに拘束されることも望まない。
【0094】
本明細書において使用されるいずれの章の見出しも、単に系統化する目的のためであり、記載された主題を限定するものとして解釈されないものとする。
特許請求の範囲を含む本明細書にわたり、文脈上別の意味で解釈すべき場合を除き、言葉「含む(comprise)」および「包含する」、ならびに「含む(comprises)」、「含むこと」、および「包含すること」などの変化形態は、述べられた整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の包含を示すと理解され、他のいずれの整数もしくは工程または整数もしくは工程の群も除外されない。
【0095】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。範囲は、本明細書において「およその(約)」一方の具体的な値から、および/または「およその(約)」他方の具体的な値として表すことができる。このような範囲が表される場合、別の実施態様は、一方の具体的な値から、および/または他方の具体的な値を含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、具体的な値は、別の実施態様を構成することが理解されると予想される。用語「約」は、数値に関して、選択の余地を残しており、例えば±10%を意味する。
【0096】
参考文献
本発明および本発明が関連する最先端技術をより詳細に説明および開示するために、多数の出版物が上記で引用されている。以下に、これらの参考文献の完全な引用を提供する。これらの参考文献のそれぞれの全体が、本明細書に組み入れられる。
[1]WO2015/158711
[2]Parvez, Z.S. Wu, R.J. Li, X.J. Liu, R. Graf, X.L. Feng, K. Mullen, Exfoliation of Graphite into Graphene in Aqueous Solutions of Inorganic Salts, J. Am. Chem. Soc. 136(16) (2014) 6083-6091.
[3]Chigane, M.; Ishikawa, M.; Manganese oxide thin film preparation by potentiostatic electrolyses and electrochromism,M. J. Electrochem. Soc. 147(6) (2000), 2246-2251.
[4]M.D. Stoller, R.S. Ruoff, Best practice methods forのためにdetermining an electrode material's performance forのためにultracapacitors, Energ & Environ Sc. 3(9) (2010) 1294-1301.
[5]Zhang, S. G.; Miran, M. S.; Ikoma, A.; Dokko, K.; Watanabe, M. J. Am. Chem. Soc. 136(5) (2014) 1690-1693.
“One-step Electrochemical Synthesis of Graphene/Metal Particle Nanocomposite” Dizaji et al., 6th Int. Conf. Nanostructures March 2016.
図1
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図4
図5
図6