(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】適応可能な多機能ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/10 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
B25J15/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021143253
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】10202008588S
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】521388519
【氏名又は名称】ビラリント プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Viralint Pte Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ソン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】クンダプラ パラメスワラ シュリニヴァス
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08936290(US,B1)
【文献】国際公開第2019/175675(WO,A1)
【文献】特開2016-203264(JP,A)
【文献】特開2014-151371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能ロボットハンドであって、
取り換え可能であり、標準化された極性のあるインターフェースを介して外部のコマンドインターフェースに動作可能に接続され
た支持部と、
気密に封じられ、スナップ式の極性のあるコネクタを介して前記ロボットハンドの前記支持部に動作可能に接続された少なくとも5つの取り換え可能な指ユニットと、
前記指の機械的動作を操るために複数のコマンドを使用して通信インターフェースを介して前記多機能ロボットハンドをインテリジェントに制御することと、
実行すべきタスクに応じて前記ロボット指ユニットの先端部に選択的に一体化された圧力センサ、温度センサ、又は変位センサなどの一式のセンサと、
物体の把持に役立つように前記支持部に動作可能に接続された親指ユニットと、
垂直軸線を中心にして前記支持部に対して選択的に回転可能であるように前記支持部に動作可能に接続され
た人差し指ユニットと、
洗浄ユニットとして機能するように前記支持部に動作可能に接続され
た中指ユニットと、
物体を移動させるためにピックアンドプレース機構として機能するように前記支持部に動作可能に接続され
た薬指ユニットと、
双方向に回転するツールとして機能するように前記支持部に動作可能に接続され
た小指ユニットと、
エンコーダと一体化され、前記ロボットハンド
の前記支持部に動作可能に取り付けられ、回転運動を必要とする特定のタスクの遂行を可能にする双方向モータと、
選択的に動作することによって複数のタスクを実行するように前記支持部に動作可能に接続された少なくとも5つの交換可能な指ユニットであって、該指ユニットの各々の指ユニットに割り当てられたタスクを、標準化されたインターフェースから受信される複数のコマンドを通じて独立に制御することができるように構成された、少なくとも5つの交換可能な指ユニットと
を含む
、多機能ロボットハンド。
【請求項2】
物体の把持力のフィードバック及び制御を可能にするために、前記親指ユニットに、ゴム製パッド内の圧力センサが適切に一体化されている、請求項1に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項3】
前記人差し指ユニットには、洗浄ブラシが指先端部の一方側に取り付けられ、溶液送出孔を有するゴム製パッドが前記指先端部の他方側に取り付けられている、請求項1に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項4】
前記中指ユニットには、脱イオン空気送出部と併せて指先端部にゴム製パッドが機能可能に取り付けられている、請求項1に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項5】
前記ゴム製パッドに、送出される空気の温度を制御するために温度センサが一体化されている、請求項4に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項6】
前記薬指ユニットに、物体を所定の場所からピックアップして別の場所に配置するために吸引カップが機能可能に取り付けられている、請求項1に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項7】
前記小指ユニットに、密封パッケージのホイルカバーを除去して内部の物体を露出させるうえで助けとなるように、エンコーダを結合させた双方向モータが機能可能に一体化されている、請求項1に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項8】
前記双方向モータに一体化された前記エンコーダからの位置情報が、
前記ホイルカバーに係合しながらの双方向の回転を含む所定の動作を開始及び終了させるために利用される、請求項7に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項9】
前記ロボットハンドの前記支持部に動作可能に取り付けられた前記双方向モータに、所定の回転タスクを実行するために物体の周囲に物体の直径又は外形にかかわりなく把持力を動的に作用させるようにプログラムすることができる回転グリッパが、動作可能に一体化されている、請求項1に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項10】
多機能ロボットハンドであって、
取り換え可能であり、標準化された極性のあるインターフェースを介して外部のコマンドインターフェースに動作可能に接続され
た支持部と、
気密に封じられ、スナップ式の極性のあるコネクタを介して前記ロボットハンドの前記支持部に動作可能に接続された少なくとも5つの取り換え可能な指ユニットと、
前記指の機械的動作を操るために複数のコマンドを使用して通信インターフェースを介して前記多機能ロボットハンドをインテリジェントに制御することと、
実行すべきタスクに応じて前記ロボット指ユニットの先端部に選択的に一体化された圧力センサ、温度センサ、又は変位センサなどの一式のセンサと、
物体の把持に役立つように前記支持部に動作可能に接続された親指ユニットと、
物体の把持に役立つように前記支持部に動作可能に接続され
た人差し指ユニットと、
物体の把持に役立つように前記支持部に動作可能に接続され
た中指ユニットと、
物体の把持に役立つように前記支持部に動作可能に接続され
た薬指ユニットと、
物体の把持に役立つように前記支持部に動作可能に接続され
た小指ユニットと、
物体の位置特定、整列、及び検査などの特定のタスクを遂行可能にするために前記ロボットハンドの手のひら又は前記支持部に動作可能に取り付けられた高解像度カメラと
、
前記小指ユニットの双方向の回転を可能にする、前記小指ユニットに一体化されたモータと、
を含
み、
前記小指ユニットは、容器を覆うブリスタホイルに係合し、前記モータが通電されると、前記小指ユニットは前記容器から前記ブリスタホイルを剥がす方向に回転するように構成された、多機能ロボットハンド。
【請求項11】
前記ロボットハンドの前記支持部は、物体を検査の目的でその場に保持することを可能にするためのバキュームが動作可能に一体化された台座を備える、請求項10に記載
の多機能ロボットハンド。
【請求項12】
多機能ロボットハンドの少なくとも2つの指によって保持された容器の密封カバーを取り除くための方法であって、
前記ロボットハンドの支持部に搭載されたインテリジェントなカメラを使用して前記容器を覆うブリスタホイルの位置を特定するステップと、
モータが一体化された指ユニットを動かして、前記ブリスタホイルに適切に係合させるステップと、
前記指ユニットを所定の位置に向かって移動させると同時に、前記モータを前記ブリスタホイルを前記容器から剥がす方向に回転させるステップと、
前記ブリスタホイルが完全に取り除かれ、前記容器に保持された物体が露出する前記所定の位置への到達時に、前記指ユニットの移動を停止させるステップと、
前記指ユニットを別の位置まで移動させ、前記ブリスタホイルを廃棄するステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記容器は、指先端部に配置されたゴム製パッドに一体化された圧力センサの助けによって最適な把持力を有する前記ロボットハンドの指ユニットによって適切に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記多機能ロボットハンドは、容器のキャップに係合するように前記支持部に適切に取り付けられた回転グリッパ
を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記回転グリッパに、位置のフィードバックのためのエンコーダが適切に一体化された双方向モータが結合している、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のタスクを処理及び実行することができる交換可能なツールとして設計された各々の指ユニットを備えている相互接続された多機能ロボットハンドの組を使用して物体を処理するための装置及び方法に関する。ロボットハンドは、反復タスクを実行するプロセスの学習及び改善を装置にとって可能にする人工知能を内蔵したコンピュータ制御システムを使用して操作される。本発明は、より具体的には、多機能ロボットハンドの指ユニット及び手のひらを操作して、容器の蓋又はキャップを開けること、コンタクトレンズパッケージの上部カバーを剥がすこと、眼科用レンズ又はコンタクトレンズをピックアップし、撮像システムによってレンズを検査して特性を判定するために台座上に位置決めすること、並びに検査後のレンズを取り出し、特性判定の結果に基づいて分類すること、などの繊細なタスクを実行するためのシステム及び方法に関する。レンズ容器を高温又は低温の脱イオン空気で洗浄し、物体又はその容器をブラッシングし、生理食塩水又は他の種類の溶液を制御された速度で送出するための追加の選択肢により、ロボットハンドは、眼科用レンズ製造産業のための典型的な品質管理プロセスにおける展開のための汎用システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの自動タスク、特には繊細で取扱いに注意が必要な物体間の相互作用が存在する自動タスクは、エンドエフェクタグリッパを備えたロボットハンドの複数の指ユニットの共同作業を必要とする。物体の洗浄、ピックアップ、及び配置、液体の送出、把持及び回転、並びに殺菌機能のための柔軟な移動度及び内蔵された特徴により、ロボットハンドは、人間の配置に適さない環境におけるさまざまなタスクを実行するための動作に特に適している。そのようなタスクを試みる現時点において開示されている技術の大部分は、タスクを実行するために手作業による検査又は人間の介入の多数の段階並びに多数の機械式マニピュレータの使用を必要とし、プロセスの最中にエラーが持ち込まれる可能性が高い。先行技術の限界として、別個のプラットフォームに取り付けられる専用のマニピュレータ、製造又は品質管理プロセスへの展開前の時間のかかる再構成プロセスが挙げられる。
【0003】
ローカル又は共通の話し言葉でやり取りをする能力を有する人間との対話のために特に製作された装置又はシステムを備えるヒューマノイドロボットが、直接対話が必要とされる場合に好ましいかもしれない。音声コマンド及び音声命令の理解が必要とされない場合、ヒューマノイドは過剰であり、かなりの空間も占有する。さらに、複数の場所へのロボットの物理的な移動が必要とされない場合、ヒューマノイドは、空間の制約及び関連する安全性の問題ゆえに、好ましくない。
【発明の概要】
【0004】
多機能ロボットハンドの実現が、ソフトコンタクトレンズ又は眼科用レンズなどの物体を取り扱うための省スペースかつ効率的なシステムに向けた重要なステップである。本発明においては、器用でないグリッパによる製造物の手動操作から、実行されるタスクの種類に応じて器用さの程度が選択される高度に器用なロボットハンド操作への切替えが目的である。特には、品質管理業務において実行される一連のタスクに合わせたハンドの設計が、インテリジェントなAIベースの撮像システムの助けによってコンタクトレンズを検査し、その後にコンタクトレンズを特性による分類に従って予め割り当てられたボトル又は容器に仕分けるために、少なくとも5つの指ユニットを有する2つのロボットハンドを設計することによって研究される。
【0005】
本発明では、撮像システムと連携して、コンタクトレンズホルダ又はブリスタパックを覆うホイルを穏やかに剥がした後に、ブリスタパッケージ内の生理食塩水に浮遊するコンタクトレンズを取り出すタスクを実行し、コンタクトレンズの品質検査を実行し、その後に撮像システムによって決定された特性に基づいてレンズを異なる容器に仕分けることができる一対の高度に器用な多指のロボットハンドが提案される。一対のロボットハンドの各々の指ユニットは、これらに限られるわけではないが、モータを使用してカバーホイルを剥がすこと、コンタクトレンズをレンズホルダから検査ステーションへと取り出すこと、レンズホルダの内容物を空にして洗浄すること、生理食塩水又は他の液体(必要な場合)を送出すること、及び検査後のレンズを取り出して仕分けすることを含む少なくとも単一のタスクに専用であり、容器のキャップを緩め、若しくは締めるためのロボットハンドの手のひら領域に取り付けられた追加のツール、物体又はツールの細かい整列のための小型カメラ、及び検査のために物体を位置させるための台座である。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、多機能ロボットハンドアセンブリは、少なくとも5つの指が取り付けられたハンド構造に接続されたベース構造を含む。指は、異なるタスクを実行するためのロボットハンドの互換性を助けるために、既知の組合せにて電気的に、空気圧に関して、液体送出管でベース構造へと動作可能に接続される。
【0007】
本発明の別の態様は、親指と人差し指とを組み合わせて、コンタクトレンズのブリスタパッケージなどの小さな物体を把持して、回転モータが取り付けられた別のロボットハンドが、モータのシャフトをパッケージを覆うブリスタホイルのエッジに係合させて、回転運動を使用してホイルを剥がすことを可能にするための指ユニットを含む一対の多機能ロボットハンドに関する。これらのロボット指の各々は、撮像システムによって検査される物体の検出、位置特定、及び移動を支援するために撮像システムにネットワーク接続される制御システムによって制御される。撮像システム並びにその関連の照明モジュール及び制御システムの詳細は、本発明の範囲外であるため説明しない。
【0008】
本発明の別の態様は、レンズホルダからコンタクトレンズをピックアップし、検査のためにコンタクトレンズをプラットフォーム又は台座へと移動させるために帯電防止吸引パッドが適切に一体化された指を含む多機能ロボット右手に関する。別のロボット指に、物体及び物体ホルダを洗浄及び滅菌する目的で、高温又は低温の空気あるいは任意の他の種類の無毒のガスを吹き付けるために、空気ジェットバルブが適切に一体化される。帯電防止ブラシが適切に一体化された別の指が、洗浄を補助し、溶液ディスペンサを組み込んだ後続の指が、液体を送出するタスクを実行する。別の指に、必要に応じて回転運動を含むタスクを実行するように動作する小型モータが一体化される。例えば、モータシャフトをブリスタホイルに係合させて、レンズホルダ又は容器から剥がす。
【0009】
本発明の別の態様は、特定のタスクに割り当てられたすべての指が交換可能な一組のロボットハンドに関する。
【0010】
本発明の別の態様は、指の一部分を複数の向きを達成するために特定の角度だけ回転させることを可能にするエンコーダによる位置フィードバックを有するモータが一体化されたロボットハンドの少なくとも1つの指に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、プロセスフローのさまざまな段階において繊細かつ静電気に影響されやすい物体を安全に取り扱うことを可能にするために、帯電防止圧力センサが組み込まれたロボットハンドの少なくとも1つの指に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、エンコーダが組み込まれ、ロボットハンドの少なくとも1つの指に取り付けられ、位置フィードバックによる物体の精密な位置決めを可能にする電動又は空気圧X-Y変位機構に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、容器のナット、ボルト、キャップ、及び蓋を緩め、あるいは締めることを可能にするために、把持マニピュレータと組み合わせられたロボットハンドの手のひらに適切に一体化された内蔵エンコーダを有する回転モータを含むロボット装置に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、さまざまなタスクを実行するときの衝突回避の目的で、近接センサ及び適切に配置された赤外線(IR)センサが取り付けられた一対のロボットハンドに関する。
【0015】
本発明は、とりわけ作業場所が有毒であり、汚れており、油まみれであり、さらには静電荷に影響されやすい場合に、繊細なタスクを実行するために、高価かつ時間のかかる構成の変更を必要とすることなく、個々の指及びハンドのタスクを容易に交換する追加の機能と共に、さまざまな移動度で物体を操作するための多機能ロボットハンドの実現を可能にする。
【0016】
本発明を展開することができる他の製造用途として、携帯電話機のガラスの欠陥の検査、冠動脈バイパス移植及び血管形成の関連用品の製造、手術中の手術室、倉庫及び郵便サービスでの仕分け及び保管が挙げられる。
【0017】
本発明について、他の構成も可能であり、したがって、添付の図面の詳細を、本発明の上述の説明の一般性を奪うものと理解してはならないことを、当業者であれば理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記の特徴及び利点は、添付の図面と併せて、本発明を実施するための最良の形態の以下の詳細な説明から容易に明らかになる。
【
図1】第1の実施形態による本発明の構成を示している。
【
図2】典型的な空のコンタクトレンズブリスタパックの等角図である。
【
図3】コンタクトレンズを収容している気密に封じられたブリスタパッケージの等角図であり、ロボット右手モータシャフトがブリスタホイルのエッジに係合している。
【
図4】ブリスタホイルが剥がされ、コンタクトレンズが露出したブリスタパッケージの等角図である。
【
図5】第1の実施形態による多機能ロボット右手の甲の斜視図である。
【
図5a】第1の実施形態による多機能ロボット右手の(手のひらを示す)別の斜視図である。
【
図6】第1の実施形態による多機能ロボット右手人差し指ユニットの側面図である。
【
図7】第1の実施形態による多機能ロボット右手中指ユニットの側面図である。
【
図8】第1の実施形態による多機能ロボット右薬指ユニットの側面図である。
【
図9】第1の実施形態による多機能ロボット右手小指ユニットの側面図である。
【
図10】第2の実施形態による多機能ロボット右手の斜視図である。
【
図11】第1の実施形態による多機能ロボットの左手の別の斜視図である。
【
図12】第1の実施形態によるコンタクトレンズの検査及び特性評価のプロセスにおける工程を示すフロー図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下で、本発明の例示的な実施形態による多機能ロボットハンド、交換可能なロボット指ユニット、及びロボット装置を、添付の図面を参照して説明する。異なる図面において、同一又は類似の部材及び部品には同じ参照番号が与えられていることに、留意することが重要である。
【0020】
図1に示されるように、第1の実施形態による多機能ロボットハンド20及び40は、各々のハンドに5つの指ユニットを含む。小型モータ25が、交換可能なシャフト30と共に、ロボット右手20の小指ユニットに一体化されている。第2の多機能ロボットハンド40は、カメラ10と、光学レンズ12と、照明モジュール15とを備える撮像システム18の下方に物体を配置して位置決めするためのマニピュレータとして機能する。ロボットハンドは、ロボット左手40に関して
図1に示されているように、スナップ式有極コネクタ42を介して迅速に交換できるように設計されている。2つの多機能ロボットハンドは、撮像システムと共に、さまざまな環境において複雑なタスクを実行するために同期して動作する。多機能ロボットハンドは、気密に設計されているがゆえに、例えばクリーンルーム、有毒、高温、又は多湿の職場、外科処置術のための手術室、ヒューマノイド、食品包装産業、製薬及びガラス産業、などに展開することが可能である。
【0021】
図1に示されるシステム及び方法は、人間の相互作用を必要とせずにコンタクトレンズホルダ50からブリスタホイル65を剥がすことに関し、ロボット左手40は、物体(例えば、コンタクトレンズ容器50)を把持し、撮像システムのカメラ10の下方に位置決めするために使用される。撮像システム18は、ブリスタホイル65のエッジを検出し、その位置をロボット右手20に伝達し、ロボット右手20が、多機能ロボット左手40によって保持されたブリスタパック50のブリスタホイル65に係合するようにモータシャフト30を移動させる。
【0022】
図2が、パッケージを覆うブリスタホイルが存在しない空のブリスタシェル50である。
【0023】
図3が、モータ25のモータシャフト30が位置65においてブリスタホイル60のエッジに係合している等角図である。既に説明したように、モータは、多機能ロボット右手の小指に適切に一体化され、
図1の撮像システム18の助けを借りてブリスタホイルのエッジ65に正確に係合し、その後に、
図3におけるシャフト30が、時計回りの方向又は剥離方向に回転させられる一方で、多機能ロボット右手が方向28に同期して移動させられ、このプロセスにおいて、ブリスタホイルがブリスタパック又はシェル50の上面から剥がされる。
【0024】
図4が、途中まで完了したブリスタホイルの剥離のプロセスを示しており、モータ25がブリスタパックの反対側の端部に位置し、コンタクトレンズ70が露出している。次のステップ(図示せず)において、モータ25は、ブリスタホイル60がブリスタパック50から完全に取り外され、その後廃棄されるまで、シャフト30を回転させ続ける。
【0025】
図5及び
図5aが、本発明の第1の実施形態による多機能ロボット右手の背面及び正面からの斜視図をそれぞれ示しており、5つの指気密ユニット、すなわち親指80、第1の指ユニット又は人差し指ユニット83、第2の指ユニット又は中指ユニット90、第3の指ユニット又は薬指ユニット95、並びに第4の指ユニット又は小指ユニット20を含んでいる。支持部98が、5つの指ユニットを駆動し、駆動部22を介して外部インターフェースに相互接続される。外部インターフェースは、いくつか例を挙げると、ヒューマノイドアーム又は自動マニピュレータを含むことができる。インターフェースにおいて受信されたコマンドは、続いて、5つの指ユニット、並びにモータ、エアジェット、ブラシ、溶液ディスペンサ、X及びY変位駆動装置、ボトルオープナ、などの5つの指ユニットのそれぞれの特徴を操作すると共に、指に組み込まれた多数のセンサを監視して、圧力、温度、及び位置データを読み取るために、支持部98に伝達される。部位22は、外部制御システムへの独自のインターロックインターフェースを介して、ロボット右手の通信のために空気圧、電気、及び双方向コンピュータインターフェースを導く役に立つ。容易な互換性、適応性、及びスケーラビリティのために適切に設計される。
【0026】
本発明の第1の実施形態における5つの指ユニットは、触覚センサ、ホール効果センサ、圧力センサ、及び温度計などの特定の特徴を備え、それらをさまざまなタスクに適用するように設計される。また、ロボットフィンガユニットは、ロボットハンドの構成をさまざまな用途に合わせて迅速に変更できるように、機械的、電気的、及び空気圧制御のための標準化されたインターフェースによってモジュール式に設計される。
【0027】
本発明の第1の実施形態によれば、
図5aを参照すると、親指80は、物体を把持することを可能にするために表面が粗いが柔軟であるゴムアダプタ82を備えて設計される。ロボット右手の人差し指ユニット83には、一方側におけるゴム製グリッパ84及び電気制御バルブ(図示せず)を介して溶液を送出するための開口部86に加えて、他方側に、物体の洗浄及びブラッシングに役立つブラシ85(
図5)も一体化されている。中指ユニット90は、ゴム製グリッパ87と、電気制御式の空気圧バルブ(図示せず)を介して清浄な脱イオン空気を吹き付けて物体の洗浄及び乾燥を可能にするための開口部88とからなる。ロボット右手の薬指ユニット95には、物体を所定の位置からピックアップして、それらを複数の位置に配置するために適した吸引カップ92が一体化されている。小指ユニット20には、複数のタスクを実行するために、交換可能なシャフト又はツール30を有する小型モータ25が組み込まれている。回転グリッパ40が、ねじ、ナット、及びボトルからのキャップを緩め、若しくは締めるために利用することができ、あるいは把持及び回転運動を必要とする任意の他のタスクに利用することができるロボット右手98の手のひら領域に一体化されている。
【0028】
図6が、ロボット右手の人差し指ユニット83の側面図である。図示のように、人差し指ユニットの先端には、可撓性樹脂から作られたゴム製パッド84、洗浄の目的で管81を介して溶液の微細なジェットを噴霧するための小さな開口部86、及び物体をこするためのブラシ85が組み込まれている。ジェットは、コンピュータによって作動するバルブ(図示せず)によって制御される。人差し指ユニット83の指先は、ブラシ85を元の位置から180度回転させることができるように、軸線A1に沿って関節82の周りを回転可能となるように設計されている。
【0029】
図7が、ロボット右手の中指ユニット90の側面図である。図示のように、中指ユニットの先端にも、可撓性樹脂から作られたゴム製パッド87、及び空気圧チューブ96を介して空気ジェットバルブ(図示せず)に接続された小さな開口部88が組み込まれている。空気ジェットは、物体へと高温又は低温の脱イオン化空気をもたらして静電荷を除去するように制御されてよく、次の処理ステップに先立って物体を洗浄し、乾燥させるように制御されてもよい。
【0030】
図8が、ロボット右手の薬指ユニット95の側面図である。これは、物体を別の場所に移動させる必要があるときに、吸引パッド92を使用して物体をピックアップするために使用される。例えば、薬指ユニット95は、
図8の吸引カップ92を使用して
図4のコンタクトレンズ70をピックアップし、
図11の台座44上に配置することができ、その後に、
図11のロボット左手は、コンタクトレンズの検査のために
図1の撮像システム18の下方に適切に位置でき、次いで、コンタクトレンズ70を
図11の台座44からピックアップし、容器又はトレイなどの別の場所に配置するために、
図8のロボットの右手の指ユニット95へと提示される。吸引圧力は、コンピュータ制御バルブ(図示せず)を介して管89によって
図8の92に生成される。
【0031】
図9において、ロボット右手の小指ユニット20の側面図が、基部に適切に一体化された小型モータ25を示している。交換可能なロータ又はツールビットが、複数のタスクの遂行を可能にする。
【0032】
本発明の第2の実施形態において、
図5aが、ボトルキャップを緩めたり、あるいは締めたりできるように、時計回り方向及び反時計回り方向の両方の回転動作を力及びトルクの制御と組み合わせて提供する多機能ロボット右手の手のひら領域に適切に一体化された構成可能なボトルオープナ40を示している。ボトルオープナ40の設計は、異なる多数の形態のボトルキャップ外形に対応するような設計である。ボトルキャップを開ける方法が、
図10に示されており、ボトル104のボトルキャップ105に、ロボット右手領域98に取り付けられた
図5aの回転具40が係合する。この特徴は、物体を保持して回転させるために回転運動をグリッパとの組合せにおいて必要とする任意のタスクに適用することができる。他の用途として、ナット又はボルトを緩め、あるいは締めること、などが挙げられる。
【0033】
図11に、本発明の第3の実施形態が示されている。
図11は、
図1に40によって示されるように、主に物体の把持及び位置決めに使用される多機能ロボットの左手の構成を示している。手のひらが、必要に応じて精密な整列及び追跡を可能にするために、随意によるカメラ43を備えている。さらに、
図1の撮像システム18による検査のために、
図5aのロボット右手薬指ユニット95の
図5aの吸引カップ92によって配置されたコンタクトレンズを保持及び提示するために、手のひら領域に台座44(
図11)を収容することができる。品質検査の特徴は、これらに限られるわけではないが、裂け目などの欠陥、気泡及び汚染物質、直径及びレンズの厚さなどの寸法測定値、並びに屈折力の検出を含むことができる。指ユニット41、46、47、48、及び49の先端のゴム製パッドは、特定のプロセスによって必要とされるとおりに、ホール効果センサ、バイオメトリックセンサ、及び他の随意によるセンサを含むことができる。互いの能力を密接に連携させて動作するロボット右手及びロボット左手は、関連技術においては実現不可能であるさまざまなプロセスを自動化する極めて重要な能力を追加する。
【0034】
本発明の第4の実施形態においては、ガラス検査産業において実施可能な構成が説明される。
図11のロボット左手カメラ43を、ロボット右手の
図1の撮像システムユニット18との連携において、ガラス物体(例えば、携帯電話機の画面又はベゼルのガラス)を欠陥及び寸法について検査して、ガラスが不良であるかどうかを判定するために利用することができる。
【0035】
本発明の第5の実施形態においては、一構成を、精度及び衛生が極めて重要かつ必須である外科関連用品の製造産業において実施することができる。関連用品として、これらに限られるわけではないが、心胸郭用の器具、繊細な顕微手術用の心臓弁、などを挙げることができる。製造後に、同じ一組のロボットを使用して、顧客への発送前に、製造された製品を検査するための品質保証プロセスを実施することができる。
【0036】
本発明の第6の実施形態においては、ロボットハンドを所定の一式の規則に従って分類及び仕分けを行う目的で封筒、箱、及び容器などのパッケージに印刷された情報を読み取って解釈するように適応させた構成を、実現することができる。例えば、多機能ロボットハンドは、郵便部門及び倉庫業においてパッケージを郵便番号に従って分類及び仕分けするように適応可能であってよい。
【0037】
人工知能が組み込まれた多機能ロボットハンドは、人間の介入を必要とせずに、ロボットハンド全体を異なる構成のロボットハンドに交換し、あるいは特定の一組のロボット指ユニットを交換することによって、自身の構成を変更することができる。この特徴は、新たな用途に合わせた動作が必要とされる場合や、同じ用途においてプロセスの変更を実施する必要がある場合に、ロボットハンド自身によるロボットハンドのスケーリング及び適応を可能にする。標準化されたインターフェース(
図5及び
図5aの22並びに
図11の42)を介して達成される互換性及び相互運用可能な機能は、ロボットハンドの構成変更を簡単にし、先行技術においては不可能であった同一又は異なる動作条件下の新たなプロセスにおける迅速かつ容易な展開を可能にする。
【0038】
図12を参照すると、ブリスタパック内のコンタクトレンズを取り出して検査するプロセスのフローが、100で始まる。ステップ102において、
図1のブリスタパック45が、パッケージの輪郭を識別し、
図1のブリスタホイル65のエッジの位置を特定するために、
図1の撮像システム18の下方に提示される。
図12のステップ104において決定された位置情報は、ステップ106においてコンピュータシステム(図示せず)に伝達され、コンピュータシステムは、
図1のロボット右手20に対して、
図1のモータシャフト30を
図1のブリスタホイル65に係合させるように指示する。ステップ108において、ホイルの係合が完了する。完了していない場合、プロセスはステップ106において再開し、ホイルの係合のプロセスが再び試みられる。ステップ110において、
図1のモータ30が時計回りの方向に回転し始めると同時に、モータアセンブリがブリスタの後端に向かって動かされ、このプロセスにおいて、
図1のブリスタホイル65が、
図1のブリスタパック50の上面から完全に取り外されるまで剥がされる。ロボット右手の次のステップ112において、ブリスタホイルは廃棄され、ロボット右手は次のステップ114に移動する。ステップ114において、撮像システムは、
図1の撮像システム18によってレンズを検査するために、ロボット右手に対して、
図1のブリスタパック50からコンタクトレンズをピックアップし、
図11の台座44上に配置するように命令する。撮像システムは、一連の規則に基づいてコンタクトレンズの特徴を明らかにし、ステップ115における結果をロボット右手に伝達し、次いでロボット右手は、台座からコンタクトレンズをピックアップする。結果は、ステップ115において統合され、116において伝達され、その後にステップ117において分類が行われる。コンタクトレンズは、
図11の台座44からピックアップされ、ステップ118における決定に基づいて異なる容器、すなわち容器120~124に入れられる。容器の種類の数が、品質保証システムの構成に基づいてさまざまであってよいことに、留意することが重要である。プロセスは、ステップ119においてロボット左手の空のブリスタを廃棄した後に、ステップ126で終了する。
【0039】
多機能ロボットハンド及びその関連の指ユニットの独自の設計は、物体の把持、保持、洗浄、ブラッシング、提供、ピックアップ、及び配置、並びに多数のさまざまな容器のキャップの開閉を含むすべての可能な動作及び運動を実現可能にし、品質検査のプロセスだけでなく、精度、信頼性、一貫性、及び衛生が極めて重要である製造プロセスにおける展開も可能にする。
【0040】
以上、本発明の実施形態による多機能ロボットハンドを説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その精神を逸脱しない範囲内で適宜に行われるさまざまな変更を含むことができる。