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特許7343941超音波複合振動装置および半導体装置の製造装置
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  • 特許-超音波複合振動装置および半導体装置の製造装置 図1
  • 特許-超音波複合振動装置および半導体装置の製造装置 図2
  • 特許-超音波複合振動装置および半導体装置の製造装置 図3
  • 特許-超音波複合振動装置および半導体装置の製造装置 図4
  • 特許-超音波複合振動装置および半導体装置の製造装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】超音波複合振動装置および半導体装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/02 20060101AFI20230906BHJP
   H01L 21/607 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B06B1/02 K
H01L21/607 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022563239
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021023117
(87)【国際公開番号】W WO2022264386
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 光
(72)【発明者】
【氏名】淺見 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】宮田 義大
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288351(JP,A)
【文献】特開2007-129181(JP,A)
【文献】特開2010-010510(JP,A)
【文献】特開2003-152012(JP,A)
【文献】特開平9-084367(JP,A)
【文献】特開2001-239405(JP,A)
【文献】特開平3-073207(JP,A)
【文献】特開2018-149598(JP,A)
【文献】特開平9-093963(JP,A)
【文献】特開2004-283792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/02
H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波複合振動装置であって、
縦振動および捩り振動を発生させる振動子を有した基端部と、
前記基端部より大きな断面積を有する拡大部と、前記拡大部より小さな断面積を有する先端部と、が基端側から先端側に向かって直線状に並んでおり、
前記拡大部に、前記捩り振動の節が位置し、前記超音波複合振動装置の基端面および先端面に、前記縦振動の腹および前記捩り振動の腹が位置し、
前記拡大部の軸方向位置および軸方向寸法は、前記縦振動の共振周波数と、前記捩り振動の共振周波数が、ほぼ同じとなる位置および寸法に設定されている、
ことを特徴とする超音波複合振動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波複合振動装置であって、
前記拡大部の前記先端側の端面から前記先端部の前記先端側端面までの軸方向寸法が、前記捩り振動の1/4波長の奇数倍である、ことを特徴とする請求項1記載の超音波複合振動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波複合振動装置であって、
前記先端部には、軸方向に進むにつれて周方向にも進む傾斜状のスリットが形成されている、ことを特徴とする超音波複合振動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波複合振動装置と、
前記先端部に取り付けられ、ワイヤが挿通されるキャピラリと、
を備え、前記振動子を、前記縦振動の共振周波数および前記捩り振動の共振周波数とほぼ同じ駆動周波数で駆動する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、対象物を振動加工(接合、切削、研磨等)するための超音波加工機に用いられる超音波複合振動装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から対象物を振動加工するために、縦振動および捩り振動を発生させる超音波複合振動装置が提案されている。しかし、従来の超音波複合振動装置の多くは、縦振動の共振周波数と捩り振動の共振周波数とが互いに大きく異なっており、一つまたは近接した周波数で二つの振動を同時に発生させることができなかった。
【0003】
そこで、一部では、一つまたは近接した周波数で、縦振動および捩り振動を生じさせることも提案されている。例えば、特許文献1には、段付き部を有するとともに電歪振動子を有する振動体と、段付き部を有するとともに振動素子を有さない振動体と、を組み合わせて、一つの超音波複合装置を構成する技術が開示されている。この特許文献1では、各振動体において、縦振動の腹から段付き部までの距離を調整することで、縦振動の共振周波数と、捩り振動の共振周波数と、を一致または近接させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-288351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、段付き部が捩り振動の腹になるように調整している。しかし、通常、段付き部においては、振動の減衰が生じやすいこともあり、当該段付き部を捩り振動の腹にすることは難しい。また、特許文献1では、二つの振動体を組み合わせて、一つの超音波複合装置を構成している。したがって、超音波複合装置全体としては、二つの段付き部や、二つの振動体の接合面を有するため、その挙動が複雑であり、寸法や周波数の調整が難しい。
【0006】
そこで、本明細書では、より簡易な構成でありながら、縦振動および捩り振動を一つまたは近接した周波数で発生させることができる超音波複合装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する超音波複合振動装置は、超音波複合振動装置であって、縦振動および捩り振動を発生させる振動子を有した基端部と、前記基端部より大きな断面積を有する拡大部と、前記拡大部より小さな断面積を有する先端部と、が基端側から先端側に向かって直線状に並んでおり、前記拡大部に、前記捩り振動の節が位置し、前記超音波複合振動装置の基端面および先端面に、前記縦振動の腹および前記捩り振動の腹が位置し、前記拡大部の軸方向位置および軸方向寸法は、前記縦振動の共振周波数と、前記捩り振動の共振周波数が、ほぼ同じとなる位置および寸法に設定されている、ことを特徴とする。
【0008】
この場合、前記拡大部の前記先端側の端面から前記先端部の前記先端側端面までの軸方向寸法が、前記捩り振動の1/4波長の奇数倍であってもよい。
【0009】
また、前記先端部には、軸方向に進むにつれて周方向にも進む傾斜スリットが形成されていてもよい。
【0010】
また、本明細書で開示する半導体装置の製造装置は、上述した超音波複合振動装置と、前記先端部に取り付けられ、ワイヤが挿通されるキャピラリと、を備え、前記振動子を、前記縦振動の共振周波数および前記捩り振動の共振周波数とほぼ同じ駆動周波数で駆動する。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示する技術によれば、簡易な構成でありながら、縦振動および捩り振動を一つまたは近接した周波数で発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】半導体装置の製造装置の構成を示す図である。
図2】超音波ホーンとして機能する超音波複合振動装置の斜視図である。
図3】超音波複合振動装置の側面図および振動の波形を示す図である。
図4】拡大部の軸方向寸法と共振周波数との相関を示すグラフである。
図5】他の超音波複合振動装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して超音波複合振動装置50およびこれを搭載した半導体装置の製造装置10の構成について説明する。図1は、超音波複合振動装置50を搭載した製造装置10の構成を示す図である。
【0014】
製造装置10は、対象物30に設けられた二つの電極間をワイヤ26で接続することで半導体装置を製造するワイヤボンディング装置である。対象物30は、例えば、半導体チップがマウントされたリードフレームである。通常、半導体チップおよびリードフレームには、それぞれ、電極が設けられており、これら電極をワイヤ26で電気的に接続することで、半導体装置が製造される。
【0015】
製造装置10は、XYステージ20により水平方向に移動可能なボンディングヘッド12を有する。このボンディングヘッド12には、超音波ホーン16およびカメラ22が、垂直方向に移動可能に取り付けられている。超音波ホーン16は、ホーンホルダ14を介してボンディングヘッド12に取り付けられている。超音波ホーン16は、縦振動および捩り振動を発生させキャピラリに伝達する超音波複合振動装置50である。キャピラリ18は、超音波ホーン16の末端に取り付けられるとともに、ワイヤ26が挿通される筒状部材である。縦振動および捩り振動が、このキャピラリ18を介して、ワイヤ26に伝達される。さらに、キャピラリ18の上方には、キャピラリ18とともに移動し、ワイヤ26を挟持するクランパ19が設けられている。
【0016】
カメラ22は、必要に応じて、対象物30を撮像する。コントローラ32は、このカメラ22で撮像された画像に基づいて、キャピラリ18の対象物30に対する位置を特定し、キャピラリ18の位置決めを行う。ボンディングヘッド12には、さらに、ワイヤ26が巻回されたスプール24が設けられており、必要に応じて、ワイヤ26がスプール24から繰り出される。コントローラ32は、製造装置10を構成する各部の駆動を制御する。例えば、コントローラ32は、超音波ホーン16(すなわち超音波複合振動装置50)に設けられた振動子58に、所定周波数の交流電圧を印加し、所定周波数の振動を発生させる。なお、こうした製造装置10の構成は、一例であり、後に詳説する超音波複合振動装置50は、他の構成の振動加工機に組み込まれてもよい。
【0017】
次に、製造装置10に搭載された超音波複合振動装置50の構成について説明する。図2は、超音波複合振動装置50の斜視図である。また、図3は、超音波複合振動装置50の概略側面図である。なお、図3の上段において、実線WVaは、縦振動の波形を、一点鎖線WVbは、捩り振動の波形を、それぞれ示している。また、説明を簡単にするために、図3において、超音波複合振動装置50は、単純化して図示している。したがって、図3では、キャピラリ18の取り付け部やフランジ51の図示は省略されている。
【0018】
超音波複合振動装置50は、上述した通り、超音波ホーン16として機能するもので、その末端には、キャピラリ18が取り付けられている。この超音波複合振動装置50は、その基端側から末端側にかけて、基端部52、拡大部54、先端部56が、一直線状に並んでいる。基端部52および先端部56は、ほぼ同径の丸棒状である。基端部52は、さらに、振動子58と、振動子58と拡大部54との間に介在する中継部60と、に大別される。振動子58は、電圧信号を受けて、縦振動および捩り振動を発生させる振動発生源である。この振動子58は、例えば、交流電圧を受けて振動するチタン酸ジルコン酸鉛(通称PZT)を有し、PZTを金属のブロックではさみ、ボルトで締め付け圧力をかけたボルト締めランジュバン型振動子(通称BLT又はBL振動子)である。本例の振動子58は、縦振動を発生させるPZT素子に加え、分極方向を変えることで捩り振動を発生さえるPZT素子も有している。したがって、振動子58は、縦振動および捩り振動の双方を発生させることができる。
【0019】
拡大部54は、基端部52および先端部56よりも大径となる部分である。この拡大部54の直径D2は、先端部56の直径D1よりも大きければ特に限定されない。ただし、拡大部54の直径D2が大きいほど、捩り振動の減衰効果が高まり、拡大部54が、捩り振動の節になりやすくなる。そこで、拡大部54の直径D2は、例えば、先端部56の直径D1の1.5倍以上としてもよい。また、拡大部54の軸方向寸法Wは、縦振動の共振周波数Faおよび捩り振動の共振周波数Fbが、一致または近接するように設定されるが、これについては、後述する。拡大部54および中継部60の間には、フランジ51が設けられている。このフランジ51は、超音波複合振動装置50を、ホーンホルダ14に取り付ける際に利用される。
【0020】
先端部56は、基端部52とほぼ同径の丸棒状であり、この先端部56の末端には、キャピラリ18が取り付けられる。先端部56の軸方向寸法L3は、特に限定されないが、通常、軸方向寸法L3は、捩り振動の1/4波長の奇数倍とほぼ同じになる。これは、拡大部54が捩り振動の節になり、先端部56の末端が、捩り振動の腹になるように、先端部56で生じる捩り振動の波長λbおよび位相が自動的に調整されるためである。したがって、捩り振動の波長をλbとした場合、L3≒λb/4×(2n+1)となる。さらに、図3の上段に示すように、本例では、超音波複合振動装置50の基端面50aおよび先端面50bに、縦振動および捩り振動の腹が位置するように、それぞれの波長λa,λbを設定している。
【0021】
次に、拡大部54の軸方向寸法Wおよび振動子58の駆動周波数F1の設定について説明する。振動子58の軸方向寸法L1、中継部60の軸方向寸法L2、および、超音波複合振動装置50の軸方向寸法Lallを一定とした場合、拡大部54の軸方向寸法Wを変化させることで、超音波複合振動装置50の固有振動数が変化し、縦振動の共振周波数Faおよび捩り振動の共振周波数Fbが変化する。図4は、拡大部54の軸方向寸法Wと、共振周波数Fa,Fbと、の相関を示すグラフである。図4において、横軸は、拡大部54の軸方向寸法Wを、縦軸は、共振周波数を示している。また、図4において、実線は、縦振動の共振周波数Faを、一点鎖線は、捩り振動の共振周波数Fbをそれぞれ示している。
【0022】
図4の例では、縦振動の共振周波数Faは、軸方向寸法Wの増加に比例して、低下していく。一方、捩り振動の共振周波数Fbは、軸方向寸法Wの増加に比例して、増加していく。そして、軸方向寸法Wが、所定の値W1のとき、縦振動の共振周波数Faおよび捩り振動の共振周波数Fbは一致しており、Fa=Fb=F1となっている。
【0023】
本例では、拡大部54の軸方向寸法Wを、このFa=Fb=F1となるときの軸方向寸法W1としている。すなわち、W=W1としている。また、超音波複合振動装置50を駆動する際、振動子58に印加する交流電圧の周波数、すなわち、駆動周波数を、F1としている。これにより、単一の周波数F1で、縦振動および捩り振動の共振を発生させることができ、超音波複合振動装置50の駆動制御を簡易化できる。
【0024】
なお、図4では、共振周波数Fa,Fbが、軸方向寸法Wに比例する例を挙げていが、共振周波数Fa,Fbと軸方向寸法Wとの相関関係は、超音波複合振動装置50の形状や材質、振動子58の特性等に応じて、適宜、異なる。そのため、軸方向寸法Wおよび駆動周波数F1は、超音波複合振動装置50の設計段階において、実験またはシミュレーションにより特定する。
【0025】
また、本例では、超音波複合振動装置50の先端を縦振動および捩り振動の腹としているため、超音波複合振動装置50の先端、すなわち、キャピラリ18の取付部において、大きな縦振動および捩り振動を得ることができる。結果として、キャピラリ18を面状に超音波振動させることができ、ワイヤボンディングの加工効率を向上できる。
【0026】
なお、これまで説明では、WおよびL3=Wall-L1-L2-Wの値を変更することで、Fa=Fb=F1となる駆動周波数F1を特定している。しかし、共振周波数Fa,Fbは、拡大部54の軸方向寸法Wではなく、拡大部54の軸方向位置によっても変化する。したがって、駆動周波数F1を特定するために、拡大部54の軸方向位置を変化させてもよい。
【0027】
例えば、超音波複合振動装置50の基端面50aから拡大部54の先端側端面までの距離をPyとし、振動子58の軸方向寸法L1、超音波複合振動装置50の軸方向寸法Lallおよび拡大部54の軸方向寸法Wを一定に保つ場合を考える。この場合、中継部60の軸方向寸法L2は、L2=Py-W-L1となり、先端部56の軸方向寸法L3は、L3=Lall-Pyとなる。つまり、中継部60および先端部56の軸方向寸法L2,L3が、拡大部54の軸方向位置Pyに応じて変化する。そして、これらの寸法L2,L3が変更されることで、超音波複合振動装置50の固有振動数が変化し、共振周波数Fa,Fbが変化する。したがって、超音波複合振動装置50を設計する際、拡大部54の軸方向寸法Wではなく、拡大部54の軸方向位置Pyを変更して、適切な拡大部54の位置および駆動周波数F1を特定してもよい。なお、この場合、拡大部54の軸方向寸法Wの値は、特に限定されないが、例えば、捩り振動の波長λbの1/4倍程度としてもよい。すなわち、W≒λb/4としてもよい。
【0028】
いずれにしても、本例において、超音波複合振動装置50に設けられる拡大部54は、一つだけである。そのため、駆動周波数F1=Fa=Fbを特定するために、変更すべきパラメータの数を抑えることができる。結果として、超音波複合振動装置50の最適な寸法および駆動周波数を容易に特定できる。
【0029】
また、これまでの説明では、振動子58で発生した縦振動を、そのまま、縦振動として先端に伝達している。しかし、先端部56に、縦振動の一部を捩り振動に変換する振動変換部を設けてもよい。例えば、図5に示すように、先端部56の周面に、軸方向に進むにつれて周方向にも進む傾斜状のスリット64を設け、これにより、縦振動の一部を捩り振動に変換してもよい。かかる構成とすることで、先端部56の末端、ひいては、キャピラリ18に、捩り振動をより確実に作用させることができる。また、超音波複合振動装置50の断面形状も円形に限らず、他の形状、例えば、矩形等でもよい。
【0030】
また、これまでの説明では、超音波複合振動装置50を、ワイヤボンディング装置に組み込んでいるが、本明細書で開示した超音波複合振動装置50は、ワイヤボンディング装置に限らず、他の超音波加工機、例えば、超音波溶接装置等に組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 製造装置、12 ボンディングヘッド、14 ホーンホルダ、16 超音波ホーン、18 キャピラリ、19 クランパ、20 XYステージ、22 カメラ、24 スプール、26 ワイヤ、30 対象物、32 コントローラ、50 超音波複合振動装置、52 基端部、54 拡大部、56 先端部、58 振動子、60 中継部、64 スリット。
図1
図2
図3
図4
図5