(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】位置制御装置、位置制御方法、位置制御プログラムおよびボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2022575023
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001395
(87)【国際公開番号】W WO2022153518
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-25304(JP,A)
【文献】特開平5-180622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージに載置された対象物に対して作業を行うツール部と、
前記ステージまたは前記対象物に設定された基準指標を撮像して第1画像を出力する第1撮像ユニットと、
前記基準指標を撮像して第2画像を出力する第2撮像ユニットと、
前記ツール部、前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットを支持するヘッド部と、
前記第1画像に写り込んだ前記基準指標の像である第1指標像と前記第2画像に写り込んだ前記基準指標の像である第2指標像に基づいて前記基準指標の三次元座標を算出する算出部と、
前記三次元座標に基づいて前記ツール部を前記対象物に対して接近または離隔させる駆動制御部と
を備える位置制御装置。
【請求項2】
前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットは、前記ステージのステージ面に平行な平面が焦点面となるように、それぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置されている請求項1に記載の位置制御装置。
【請求項3】
前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットのそれぞれの物体側光学系は、テレセントリックである請求項2に記載の位置制御装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記第1指標像の座標と前記第2指標像の座標のペアを、予め用意された変換テーブルを参照することにより、前記三次元座標へ変換する請求項2または3に記載の位置制御装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記第1画像および前記第2画像に対して台形像を矩形像に変換する台形補正処理を行い、前記台形補正処理後の前記第1指標像と前記第2指標像の位置ずれ量に基づいて前記三次元座標を算出する請求項2または3に記載の位置制御装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記第1画像に写り込んだ2つ以上の前記第1指標像と前記第2画像に写り込んだ2つ以上の前記第2指標像に基づいて前記ステージに対する前記対象物の設置誤差を算出し、
前記駆動制御部は、前記設置誤差を加味して前記ツール部を前記対象物に接近させる請求項1から5のいずれか1項に記載の位置制御装置。
【請求項7】
前記ツール部は、前記駆動制御部の制御により前記対象物へ向けて前記ヘッド部から繰り出され、
前記算出部は、前記ツール部が前記ヘッド部から繰り出された場合に、前記第1撮像ユニットが出力する第3画像に写り込んだ、前記ツール部に設けられた第1確認指標の像である第3指標像と、前記第2撮像ユニットが出力する第4画像に写り込んだ、前記ツール部に設けられた第2確認指標の像である第4指標像に基づいて、前記ツール部の前記ヘッド部に対する組付誤差を算出し、
前記駆動制御部は、前記組付誤差を加味して前記ツール部を前記対象物に接近させる請求項1から6のいずれか1項に記載の位置制御装置。
【請求項8】
ステージまたは前記ステージに載置された対象物に設定された基準指標を、ヘッド部に支持されている第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させる撮像ステップと、
前記第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ前記基準指標の像である第1指標像と前記第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ前記基準指標の像である第2指標像に基づいて前記基準指標の三次元座標を算出する算出ステップと、
前記ヘッド部に支持され前記対象物に対して作業を行うツール部を、前記三次元座標に基づいて前記対象物に対して接近または離隔させる駆動ステップと
を有する位置制御方法。
【請求項9】
ステージまたは前記ステージに載置された対象物に設定された基準指標を、ヘッド部に支持されている第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させる撮像ステップと、
前記第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ前記基準指標の像である第1指標像と前記第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ前記基準指標の像である第2指標像に基づいて前記基準指標の三次元座標を算出する算出ステップと、
前記ヘッド部に支持され前記対象物に対して作業を行うツール部を、前記三次元座標に基づいて前記対象物に対して接近または離隔させる駆動ステップと
をコンピュータに実行させる位置制御プログラム。
【請求項10】
ステージに載置された基板の搭載領域に対して半導体チップをボンディングするボンディングツールと、
前記ステージまたは前記基板に設定された基準指標を撮像して第1画像を出力する第1撮像ユニットと、
前記基準指標を撮像して第2画像を出力する第2撮像ユニットと、
前記ボンディングツール、前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットを支持するヘッド部と、
前記第1画像に写り込んだ前記基準指標の像である第1指標像と前記第2画像に写り込んだ前記基準指標の像である第2指標像に基づいて前記基準指標の三次元座標を算出する算出部と、
前記三次元座標に基づいて前記半導体チップを保持する前記ボンディングツールを前記搭載領域に対して接近または離隔させる駆動制御部と
を備えるボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置制御装置、位置制御方法、位置制御プログラムおよびボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばダイボンダなど半導体チップの製造時に利用される装置においては、まず、ダイパッドなどの作業対象物を真上からカメラで撮像してその位置を確認する。そして、カメラを退避させてからボンディングツールなどのツールを支持するヘッド部を当該作業対象の真上に移動させ、ボンディング等の作業を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位置確認と作業をシーケンシャルに実行する場合には、時間を要するばかりか、位置確認と作業の間に熱の影響等によって計測した位置にずれが生じる場合がある。また、ヘッド部とは別の構造体に撮像ユニットを装着すると、計測誤差を生じる要因が増大する。一方で、従来の撮像ユニットをヘッド部のツール脇に配設すると、その視野の狭さから、作業対象物を観察することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ヘッド部に対する対象物の精確な三次元座標計測を実現すると共に、対象物の三次元座標計測から作業の実行までのリードタイムを短縮できる位置制御装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様における位置制御装置は、ステージに載置された対象物に対して作業を行うツール部と、ステージまたは対象物に設定された基準指標を撮像して第1画像を出力する第1撮像ユニットと、基準指標を撮像して第2画像を出力する第2撮像ユニットと、ツール部、第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットを支持するヘッド部と、第1画像に写り込んだ基準指標の像である第1指標像と第2画像に写り込んだ基準指標の像である第2指標像に基づいて基準指標の三次元座標を算出する算出部と、三次元座標に基づいてツール部を対象物に対して接近または離隔させる駆動制御部とを備える。
【0007】
また、本発明の第2の態様における位置制御方法は、ステージまたはステージに載置された対象物に設定された基準指標を、ヘッド部に支持されている第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させる撮像ステップと、第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ基準指標の像である第1指標像と第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ基準指標の像である第2指標像に基づいて基準指標の三次元座標を算出する算出ステップと、ヘッド部に支持され対象物に対して作業を行うツール部を、三次元座標に基づいて対象物に対して接近または離隔させる駆動ステップとを有する。
【0008】
また、本発明の第3の態様における位置制御プログラムは、ステージまたはステージに載置された対象物に設定された基準指標を、ヘッド部に支持されている第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させる撮像ステップと、第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ基準指標の像である第1指標像と第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ基準指標の像である第2指標像に基づいて基準指標の三次元座標を算出する算出ステップと、ヘッド部に支持され対象物に対して作業を行うツール部を、三次元座標に基づいて対象物に対して接近または離隔させる駆動ステップとをコンピュータに実行させる。
【0009】
また、本発明の第4の態様におけるボンディング装置は、ステージに載置された基板の搭載領域に対して半導体チップをボンディングするボンディングツールと、ステージまたは基板に設定された基準指標を撮像して第1画像を出力する第1撮像ユニットと、基準指標を撮像して第2画像を出力する第2撮像ユニットと、ボンディングツール、第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットを支持するヘッド部と、第1画像に写り込んだ基準指標の像である第1指標像と第2画像に写り込んだ基準指標の像である第2指標像に基づいて基準指標の三次元座標を算出する算出部と、三次元座標に基づいて半導体チップを保持するボンディングツールを搭載領域に対して接近または離隔させる駆動制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ヘッド部に対する対象物の精確な三次元座標計測を実現すると共に、対象物の三次元座標計測から作業の実行までのリードタイムを短縮できる位置制御装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るダイボンダの要部を模式的に示す斜視図である。
【
図3】シャインプルーフ光学系を説明するための説明図である。
【
図4】三次元座標の算出原理を説明するための説明図である。
【
図5】演算処理部の処理手順を説明するフロー図である。
【
図6】一つのダイパッドに対して2つの指標を設けた場合の中心座標の算出を説明する図である。
【
図7】ボンディングツールの先端部に確認指標を設けた様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るダイボンダ100の要部を模式的に示す斜視図である。ダイボンダ100は、位置制御装置が組み込まれた半導体製造装置の一例であり、半導体チップ310をリードフレーム330のダイパッド320へ載置して接着するボンディング装置である。リードフレーム330は、ステージ220に載置される基板の一例であり、ダイパッド320は、基板がリードフレーム330である場合の、半導体チップ310を載置する載置領域である。
【0014】
ダイボンダ100は、主に、ヘッド部110、ボンディングツール120、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140を備える。ヘッド部110は、ボンディングツール120、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140を支持し、ヘッド駆動モータ150によって平面方向へ移動可能である。平面方向は、図示するように、X軸方向とY軸方向で定められる水平方向であり、架台210に載置されたステージ220の移動方向でもある。
【0015】
ボンディングツール120は、先端部に半導体チップ310を吸着し、ステージ220に載置されたリードフレーム330のダイパッド320に載置し、加圧/加熱して接着する。ボンディングツール120は、ツール駆動モータ160によって、ヘッド部110に対して高さ方向へ移動可能である。高さ方向は、図示するように、平面方向に直交するZ軸方向である。
【0016】
第1撮像ユニット130は、ボンディングツール120の下方に位置するリードフレーム330を撮像するための撮像ユニットであり、第1光学系131と第1撮像素子132を備える。具体的には後述するが、第1撮像ユニット130は、光軸をボンディングツール120の下方に向けてヘッド部110に斜設されている。第1光学系131と第1撮像素子132は、ステージ220のステージ面に平行な平面が焦点面となるようにシャインプルーフ条件を満たして配置されている。
【0017】
第2撮像ユニット140は、ボンディングツール120の下方に位置するリードフレーム330を撮像するための撮像ユニットであり、第2光学系141と第2撮像素子142を備える。具体的には後述するが、第2撮像ユニット140は、ボンディングツール120に対して第1撮像ユニット130とは反対側に、光軸をボンディングツール120の下方に向けてヘッド部110に斜設されている。第2光学系141と第2撮像素子142は、ステージ220のステージ面に平行な平面が焦点面となるようにシャインプルーフ条件を満たして配置されている。
【0018】
XYZ座標系は、ヘッド部110の基準位置を原点とする空間座標系である。ダイボンダ100は、リードフレーム330に設けられた指標321を第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140によって撮像し、それらの像から指標321の三次元座標(XR,YR,ZR)を算出する。指標321は、リファレンスマークとしての基準指標である。基準指標は、専用に設けられるリファレンスマークの他、作業対象上に観察し得る配線パターン、溝、エッジなど、安定的に三次元座標を算出できる対象であればよい。
【0019】
リードフレーム330表面において、指標321に対するダイパッド320の相対位置は既知である。したがって、ダイボンダ100は、指標321の三次元座標(XR,YR,ZR)からダイパッド320の中心座標(XT,YT,ZT)を導出することができる。なお、本実施形態においては、ダイパッド320と指標321はリードフレーム330の同一平面上に設けられていることを想定しているので、ZR=ZTである。ダイボンダ100は、ダイパッド320の中心座標(XT,YT,ZT)を接近目標としてヘッド部110およびボンディングツール120を駆動し、半導体チップ310を当該座標へ搬送する。
【0020】
図2は、ダイボンダ100のシステム構成図である。ダイボンダ100の制御システムは、主に、演算処理部170、記憶部180、入出力デバイス190、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140、ヘッド駆動モータ150、ツール駆動モータ160によって構成される。演算処理部170は、ダイボンダ100の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。演算処理部170は、記憶部180に記憶された位置制御プログラムを読み出して、位置制御に関する様々な処理を実行する。
【0021】
記憶部180は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)によって構成されている。記憶部180は、ダイボンダ100の制御や処理を実行するプログラムの他にも、制御や演算に用いられる様々なパラメータ値、関数、ルックアップテーブル等を記憶し得る。記憶部180は、特に、変換テーブル181を記憶している。変換テーブル181は、具体的には後述するが、第1指標像の座標値と第2指標像の座標値を入力すると、指標321の三次元座標(XR,YR,ZR)へ変換するルックアップテーブルである。ここで、第1指標像は、第1撮像ユニット130が出力する第1画像に写り込んだ指標321の像であり、第2指標像は、第2撮像ユニット140が出力する第2画像に写り込んだ指標321の像である。
【0022】
入出力デバイス190は、例えばキーボード、マウス、表示モニタを含み、ユーザによるメニュー操作を受け付けたり、ユーザへ情報を提示したりするデバイスである。例えば、演算処理部170は、入出力デバイス190の一つである表示モニタへ、第1画像と第2画像を並べて表示してもよい。
【0023】
第1撮像ユニット130は、演算処理部170から撮像要求信号を受けて撮像を実行し、第1撮像素子132が出力した第1画像を画像信号として演算処理部170へ送信する。同様に、第2撮像ユニット140は、演算処理部170から撮像要求信号を受けて撮像を実行し、第2撮像素子142が出力した第2画像を画像信号として演算処理部170へ送信する。
【0024】
ヘッド駆動モータ150は、演算処理部170から駆動信号を受けてヘッド部110をXY方向へ移動させる。ツール駆動モータ160は、演算処理部170から駆動信号を受けてボンディングツール120をZ方向へ移動させる。
【0025】
演算処理部170は、位置制御プログラムが指示する処理に応じて様々な演算を実行する機能演算部としての役割も担う。演算処理部170は、画像取得部171、算出部172、駆動制御部173として機能し得る。画像取得部171は、第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140へ撮像要求信号を送信し、第1画像の画像信号および第2画像の画像信号を取得する。
【0026】
算出部172は、第1画像に写り込んだ指標321の像である第1指標像と第2画像に写り込んだ指標321の像である第2指標像に基づいて指標321の三次元座標(XR,YR,ZR)を算出する。具体的には、変換テーブル181を用いて三次元座標(XR,YR,ZR)を得る。駆動制御部173は、ヘッド駆動モータ150を駆動する駆動信号、およびツール駆動モータ160を駆動する駆動信号を生成し、それぞれのモータへ送信する。例えば、算出部172が指標321の三次元座標(XR,YR,ZR)からダイパッド320の中心座標(XT,YT,ZT)を算出すると、ボンディングツール120を(XT,YT,ZT)へ接近させる駆動信号を生成し、ツール駆動モータ160へ送信する。
【0027】
図3は、第1撮像ユニット130に採用されているシャインプルーフ光学系を説明するための説明図である。第2撮像ユニット140にも同様のシャインプルーフ光学系が採用されているが、ここでは代表して第1撮像ユニット130のシャインプルーフ光学系について説明する。
【0028】
図3において、平面S
1は、ステージ220のステージ面に対して平行に配置されるダイパッド320を予定焦点面である。仮想面S
2は、物側レンズ群131aと像側レンズ群131bを構成群とする第1光学系131の主平面を含む平面である。平面S
3は、第1撮像素子132の受光面を含む平面である。本実施形態においてシャインプルーフ光学系は、シャインプルーフ条件を満たして配置されている第1光学系131と第1撮像素子132を含む。シャインプルーフ条件を満たす配置とは、平面S
1、仮想面S
2、仮想面S
3が共通の直線P上で互いに交差する配置である。
【0029】
なお、
図3は、シャインプルーフ条件をわかりやすく説明するために、物側レンズ群131aとダイパッド320を接近させて示しているが、実際には
図1に示すように互いに離間している。ボンディングツール120は、ダイパッド320の上部空間において、第1撮像ユニット130と干渉することなくZ軸方向へ移動することができる。
【0030】
絞り133は、物側レンズ群131aと像側レンズ群131bの間に配置され、通過する光束を制限する。絞り133の径により、被写界深度DPを調整することができる。したがって、例えば半導体チップ310を保持するボンディングツール120の先端部が被写界深度DP内まで接近すると、第1撮像ユニット130は、半導体チップ310とリードフレーム330面を共に合焦状態で撮像することができる。
【0031】
第1撮像ユニット130は、以上のようにシャインプルーフ条件を満たしているので、リードフレーム330上に設けられた指標321が第1撮像ユニット130の視野に収まっている限り、指標321を合焦状態で撮像することができる。また、指標321とダイパッド320を共に合焦状態で一画像に撮像することもできる。
【0032】
第2撮像ユニット140は、第1撮像ユニット130と同様の構成を備え、ボンディングツール120の中心軸を含むYZ平面に対して対称にヘッド部110に配設されている。したがって、第2撮像ユニット140も第1撮像ユニット130と同様に、リードフレーム330上に設けられた指標321が第2撮像ユニット140の視野に収まっている限り、指標321を合焦状態で撮像することができる。また、指標321とダイパッド320を共に合焦状態で一画像に撮像することもできる。
【0033】
本実施形態においては、物側レンズ群131aおよび像側レンズ群131bにより両側テレセントリックを実現している。これにより観察対象を撮像素子上に一定の倍率で結像させることができるので、三次元座標の算出には都合が良い。特にシャインプルーフ光学系においては、直線P側に存在する観察対象も直線Pから遠い側に存在する観察対象も結像面では同倍率となる物側テレセントリックであることが望ましい。
【0034】
図4は、指標321の三次元座標(X
R,Y
R,Z
R)の算出原理を説明するための説明図である。特に、変換テーブル181を生成する手順を説明する図である。変換テーブル181は、リードフレーム330と同じ厚さを有するチャート400をボンディングツール120直下のステージ220上に載置し、これを撮像した第1撮像ユニット130の第1画像と第2撮像ユニット140の第2画像を用いて生成される。
【0035】
チャート400の表面には、複数のドット410が設定された間隔でマトリックス状に印刷されている。このようなチャート400を、ヘッド部110の高さをZ=h1、h2、h3…に調整し、それぞれの高さで撮像を実行して第1画像と第2画像のペアを得る。
【0036】
第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140はシャインプルーフ光学系を採用するので、得られるチャート像400’は、全面が合焦状態でありながら、それぞれが互いに逆向きの台形に歪んでいる。画像座標系として横軸をx軸、縦軸をy軸とすると、第1画像と第2画像で互いに対応するドット像410’の座標は、(x1k,y1k)、(x2k,y2k)のように算出される。
【0037】
チャート400のそれぞれのドット410についてステージ220上での座標(Xk,Yk)は既知であり、高さhk=ZKは撮像時に調整されるので、各ドット410の三次元座標(Xk,Yk,ZK)は、撮影時には確定される。そして、高さhkで撮像された第1画像と第2画像の各ドット像410’の座標(x1k,y1k)、(x2k,y2k)が算出されるので、それぞれのドット410とその像であるドット像410’の間で座標の対応関係を取得することができる。すなわち、撮像を実行した高さごとに、離散的に、三次元座標(Xk,Yk,ZK)と二次元座標(x1k,y1k)、(x2k,y2k)の対応関係を取得することができる。このような対応関係を変換テーブル181に記述する。
【0038】
このように記述され、生成された変換テーブル181は、三次元座標(Xk,Yk,ZK)と二次元座標(x1k,y1k)、(x2k,y2k)の対応関係を示すデータの集合体であり、ルックアップテーブルとして利用し得る。つまり、変換テーブル181を参照すれば、第1指標像の座標値(x1R,y1R)と第2指標像の座標値(x2R,y2R)を指標321の三次元座標(XR,YR,ZR)へ変換することができる。なお、算出された(x1R,y1R)と(x2R,y2R)の組み合わせが変換テーブル181に存在しない場合には、変換テーブル181に存在する周辺座標で補間処理を行えばよい。
【0039】
また、ルックアップテーブル形式の変換テーブル181に限らず、他の手法を用いて第1指標像の座標値(x1R,y1R)と第2指標像の座標値(x2R,y2R)を指標321の三次元座標(XR,YR,ZR)へ変換してもよい。例えば、チャート400を用いて事前に得られた三次元座標(Xk,Yk,ZK)と二次元座標(x1k,y1k)、(x2k,y2k)の対応関係から多項式近時関数を求めておき、これにより(x1R,y1R)と(x2R,y2R)から(XR,YR,ZR)へ変換してもよい。このように、実測データに基づいて生成されるルックアップテーブルや多項式近時関数等を用いる場合には、実測データにレンズの収差や撮像ユニットの取付け誤差などの構成要素に起因する誤差要因が吸収されるので、より精度の高い三次元座標の算出を期待できる。
【0040】
一方で、実測データによらず、シャインプルーフの幾何条件や、2つの撮像素子間で規定される基線長等を用いて、算術的に変換式を求めてもよい。例えば、光学系や撮像素子の傾き角等の物理量をパラメータとする、台形像を矩形像へ変換する変換行列を定めておき、第1画像と第2画像に対してこの変換行列により台形補正を行う。そして、台形補正を行った2つの画像をステレオ画像として、互いの像の位置ずれ量から観察対象の三次元座標を算出する。このような手法によれば、チャート等を用いた事前の実測データの取得が省ける点において都合が良い。
【0041】
次に、ダイボンダ100による一連のボンディング処理について説明する。
図5は、演算処理部170の処理手順を説明するフロー図である。ここでは、ボンディングツール120が半導体チップ310を吸着した状態から、半導体チップ310をダイパッド320へ接着して退避するまでの処理について説明する。
【0042】
駆動制御部173は、ステップS101で、ヘッド部110を基準位置へ移動させる駆動信号をヘッド駆動モータ150へ送信する。ヘッド駆動モータ150は、駆動信号を受けて、ヘッド部110を基準位置へ移動させる。ここで、基準位置は、これから半導体チップ310を載置する対象であるダイパッド320の直上にボンディングツール120が位置すると想定される初期位置である。
【0043】
ヘッド部110が基準位置に到達したら、画像取得部171は、ステップS102で、第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140へ撮像要求信号を送信し、第1画像データと第2画像データを取得する。画像取得部171は、取得した画像データを算出部へ引き渡す。
【0044】
算出部172は、ステップS103で、画像取得部171から受け取った第1画像データの第1画像から第1指標像の座標(x1R,y1R)を、第2画像データの第2画像から第2指標像の座標(x2R,y2R)を抽出する。そして、ステップS104へ進み、算出部172は、変換テーブル181を参照して(x1R,y1R)と(x2R,y2R)のペアに対応する三次元座標(XR,YR,ZR)を得る。さらに、ステップS105で、指標321に対するダイパッド320の相対位置の情報を利用して、接近目標であるダイパッド320の中心座標(XT,YT,ZT)を算出する。
【0045】
接近目標が定まると、駆動制御部173は、ステップS106で、水平位置の誤差を調整すべく、ヘッド駆動モータ150へ駆動信号を送信する。これにより、ボンディングツール120の中心は、水平面において(XT,YT)へ配置される。次に、駆動制御部173は、ステップS107で、算出されたZ=ZTに基づきボンディングツール120を吸着している半導体チップ310がダイパッド320上に載置されるまで、ボンディングツール120をダイパッド320へ接近させる。ここで、算出されたZTから、ボンディングツール120の降下量は精確に把握されているので、駆動制御部173は、半導体チップ310がダイパッド320と接触する直前まで高速でボンディングツール120を降下させてもよい。
【0046】
半導体チップ310をダイパッド320へ載置したら、演算処理部170は、ステップS108で、半導体チップ310をダイパッド320へ接着するボンディング処理を実行する。ボンディング処理が完了したら、駆動制御部173は、ステップS109で、ボンディングツール120を上昇させ、接着した半導体チップ310から退避して、一連の処理を終了する。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、これから半導体チップ310を載置する対象であるダイパッド320の直上付近にボンディングツール120が位置するようにヘッド部110を移動させ、その位置で指標321を撮像する。指標321は作業対象であるダイパッド320の近傍に配置されており、指標321に対するダイパッド320の相対位置は既知であるので、指標321の三次元座標が算出でき次第直ちにダイパッド320に対して作業を実行することができる。すなわち、従来技術のように、位置確認と作業をシーケンシャルに実行する必要がないので、計測誤差を抑制し、三次元座標計測から作業実行までのリードタイムを短縮することができる。
【0048】
なお、本実施形態のように基準指標(指標321)と作業対象(ダイパッド320)が別体である場合には、これらがそれぞれの撮像ユニットにおける同一視野内に収まることが好ましい。すなわち、第1画像および第2画像のそれぞれに両者が共に写り込むように近接して配置されていることが好ましい。この程度に近接していればヘッド部110の水平移動は微小量に抑えられるので、リードタイムをより短縮することができる。なお、本実施形態においては、基準指標としての指標321はリードフレーム330の表面に設けられているが、作業対象が同一視野内に収まる程度に近接しているのであれば、基準指標は、ステージ220上に設けられていてもよい。また、ツール部が作業を行う作業対象そのものに基準指標が設けられている場合は、その三次元座標を直接的に作業目標とすることができるので、さらに都合がよい。
【0049】
次に、いくつかの変形例について説明する。上記の実施例においては、リードフレーム330は、ステージ220上に正しく設置されていることを前提とした。しかし、実際には、Z軸周りに微小量回転した状態で設置されてしまうこともある。このような設置誤差が存在すると、指標321に対するダイパッド320の相対位置が既知であっても、指標321の三次元座標(XR,YR,ZR)からダイパッド320の中心座標(XT,YT,ZT)を正しく算出することができない。そこで、リードフレーム330上に一つのダイパッド320に対して2つ以上の指標を設ける。
【0050】
図6は、一つのダイパッド320に対して2つの指標を設けた場合の中心座標の算出を説明する図である。図示するように、例えば、リードフレーム330上にダイパッド320を挟んで対角上に指標A321aと指標B321bの2つの指標がそれぞれ設けられている場合には、第1画像には指標A321aと指標B321bの2つの指標像が写り込み、同様に第2画像にも指標A321aと指標B321bの2つの指標像が写り込む。算出部172は、第1画像に写り込んだ指標A321aの指標像の座標と、第2画像に写り込んだ指標A321aの指標像の座標のペアから指標A321aの三次元座標(X
RA,Y
RA,Z
RA)を算出する。同様に、第1画像に写り込んだ指標B321bの指標像の座標と、第2画像に写り込んだ指標B321bの指標像の座標のペアから指標B321bの三次元座標(X
RB,Y
RB,Z
RB)を算出する。
【0051】
指標A321aと指標B321bの相対座標は既知であることから、これら2つの三次元座標が算出されれば、Z軸周りの回転量θを把握することができる。Z軸周りの回転量θはステージ220に対するリードフレーム330の設置誤差であるので、算出部172は、この設置誤差を加味して中心座標(XT,YT,ZT)を算出することができる。すなわち、駆動制御部173は、ボンディングツール120をダイパッド320へ接近させることができる。
【0052】
さらに変形例を説明する。上記の実施例においては、ボンディングツール120は、ヘッド部110に対して誤差なく組付けられていることを前提とした。しかし、実際には、組付誤差が生じている場合もある。このような組付誤差が存在すると、ダイパッド320の中心座標(XT,YT,ZT)を正しく算出できても、半導体チップ310は想定位置からずれて配置されてしまう。そこで、ボンディングツール120の先端部に2つの確認指標を設けておき、これらの確認指標が第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140の被写界深度に進入した時点で撮像を実行し、その像に基づいてボンディングツール120の組付誤差を把握する。
【0053】
図7は、ボンディングツール120の先端部に第1確認指標121と第2確認指標122が設けられている様子を示す。第1確認指標121は、ボンディングツール120の先端部側面のうち第1撮像ユニット130側に設けられ、第2確認指標122は、同じく先端部側面のうち第2撮像ユニット140側に設けられている。ボンディングツール120が降下されて先端部がダイパッド320へ近づくと、第1確認指標121は、第1撮像ユニット130の視界かつ被写界深度内に進入し、第2確認指標122は、第2撮像ユニット140の視界かつ被写界深度内に進入する。その時点でボンディングツール120の降下を一旦させ、第1撮像ユニット130により第1確認指標121の撮像を、第2撮像ユニット140により第2確認指標122の撮像を実行させる。
【0054】
算出部112は、第1画像から第1確認指標121の指標像の座標(x1A,y1A)を抽出する。同様に、第2画像から第2確認指標122の指標像の座標(x2B,y2B)を抽出する。ただし、第1画像には第2確認指標122の指標像は写り込まないので、その座標(x1B,y1B)を抽出することはできない。同様に、第2画像には第1確認指標121の指標像は写り込まないので、その座標(x2A,y2A)を抽出することはできない。
【0055】
ここで、ボンディングツール120の先端部において第1確認指標121と第2確認指標122の相対位置は既知である。したがって、第1確認指標121の指標像について抽出された(x1A,y1A)と仮の(x2A,y2A)のペアから変換される三次元座標(XA,YA,ZA)と、第2確認指標122の指標像について抽出された(x2B,y2B)と仮の(x1B,y1B)のペアから変換される三次元座標(XB,YB,ZB)の差が既知の相対位置となるように(XA,YA,ZA)と(XB,YB,ZB)の組み合わせを探索する。条件を満たす三次元座標が見つかれば、それらを第1確認指標121と第2確認指標122の三次元座標に決定する。
【0056】
このように第1確認指標121と第2確認指標122の三次元座標が得られれば、ボンディングツール120の先端部の座標も精確に算出することができる。したがって、ボンディングツール120がヘッド部110に対して多少の誤差を含んで組付けられていたとしても、その誤差を修正して、半導体チップ310をダイパッド320へ精度よく載置することができる。
【0057】
以上、ダイボンダ100を例として本実施形態を説明したが、本実施形態に係る三次元座標の算出手法や構成を適用し得る位置制御装置はダイボンダに限らない。例えば、フリップチップボンダやワイヤボンダにも適用し得る。ワイヤボンダに適用する場合には、ステージに載置された対象物に対して作業を行うツール部は、キャピラリ等となる。さらには、ウェハを半導体チップに小片化するダイサ等に適用することもできる。また、ボンディングツール等のツール部が、対象物に接近する場合に限らず、対象物から離隔する場合もあり得る。例えば、ツール部が対象物の表面を掘穿した後に特定箇所に接触しないようにツール部を退避させる作業を行う場合には、駆動制御部はツール部を対象物から離隔させる。
【符号の説明】
【0058】
100…ダイボンダ、110…ヘッド部、120…ボンディングツール、121…第1確認指標、122…第2確認指標、130…第1撮像ユニット、131…第1光学系、131a…物側レンズ群、131b…像側レンズ群、132…第1撮像素子、133…絞り、140…第2撮像ユニット、141…第2光学系、142…第2撮像素子、150…ヘッド駆動モータ、160…ツール駆動モータ、170…演算処理部、171…画像取得部、172…算出部、173…駆動制御部、180…記憶部、181…変換テーブル、190…入出力デバイス、210…架台、220…ステージ、310…半導体チップ、320…ダイパッド、321…指標、330…リードフレーム、400…チャート、400’…チャート像、410…ドット、410’…ドット像