IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジ電機工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両情報制御装置 図1
  • 特許-車両情報制御装置 図2
  • 特許-車両情報制御装置 図3
  • 特許-車両情報制御装置 図4
  • 特許-車両情報制御装置 図5
  • 特許-車両情報制御装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】車両情報制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
B60R11/02 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023074764
(22)【出願日】2023-04-28
【審査請求日】2023-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596078256
【氏名又は名称】フジ電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】垂水 伸行
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-244955(JP,A)
【文献】特開2010-026071(JP,A)
【文献】特開2012-167515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載表示装置における走行中の視聴や操作の制限を解除可能とする車両情報制御装置において、
前記車両走行中における前記視聴や操作中に表示部にメッセージが表示される条件が成立した場合、当該メッセージが表示される起因となるシステムエラー情報を、前記メッセージを非表示とする情報に書き換えて送信する情報書き換え信号送信部を備えており、
前記システムエラー情報は、前記条件の成立時に前記車載表示装置がエラー認識することにより生成されるものであり、
当該車両情報制御装置は前記車載表示装置および車両ECUそれぞれに信号線を介して接続されており、
前記情報書き換え信号送信部は、前記車載表示装置において前記システムエラー情報から書き換えられた情報を前記車両ECUに送信する機能も備えており、
前記情報書き換え信号送信部が前記車両ECUに前記システムエラー情報を書き換えた信号を送信することによって前記メッセージが非表示とされるようになっており、
前記車載表示装置において、走行中の前記視聴や操作が可能となるモードから制限されるモードへの切り換え要求が生じた際、前記システムエラー情報が消去されるまで、前記車載表示装置に、純正に基づく信号であって、前記システムエラー情報を、前記メッセージを非表示とする情報に書き換えるための信号を送信することを特徴とする車両情報制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両情報制御装置において、
前記システムエラー情報が消去されるまでの期間中、前記モードの切り換え期間中である旨を報知する報知手段を備え、当該期間中はモードの切り換え操作が無効とされる構成となっていることを特徴とする車両情報制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両情報制御装置に係る。特に、本発明は、車両走行中に車載表示装置の視聴や操作を行っている際の情報制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において運転を行わない助手席や後部座席の同乗者が車両走行中にテレビ視聴を可能にするためのテレビキャンセラーが提案されている。従来の一般的なテレビキャンセラーは、特許文献1にも開示されているように、車載ナビゲーション装置に対して送信している車速信号に代えて、車両が停止(停車)していることを模擬する模擬信号を送信することにより、車両走行中であるにも拘わらず、車両が停止していると車載ナビゲーション装置に判断させ、これによって、車両走行中のテレビ視聴を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-244955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明の発明者らは、前述した従来のテレビキャンセラーに代えて、CAN等の通信プロトコルにおけるデータ変換によって車両走行中のテレビ視聴(DVD、HDMI(登録商標)、VTR、外部入力等も含む)やナビゲーション操作等を可能にするテレビキャンセラーの開発を進めている。このようにデータ変換によって車両走行中のテレビ視聴やナビゲーション操作を可能にする手段の例としては、車載ナビゲーション装置(以下、車載表示装置という場合もある)に送信される車速パルスの変調、車速パルスのパルス回数の変更、車速パルスの切断、これらの併用等が挙げられる。以下、この車両走行中のテレビ視聴を可能にする状態をテレビモードと呼ぶこととし、走行中の視聴や操作が制限される純正状態をノーマルモードと呼ぶこととする。
【0005】
しかしながら、この種のテレビキャンセラーにあっては、テレビモードでの走行中において特定の条件を満たした場合に表示部にメッセージが表示されてしまうことがあった。このメッセージは、イグニッションキーをOFF(スタートスイッチの押し込み操作によるOFFも含む)するまで消えない場合があるだけではなく、一部使用できない機能も存在する。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、テレビモードでの走行中に表示部にメッセージが表示されてしまうことを回避する、または、当該メッセージが表示された場合にこの表示を解除することができる車両情報制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車載表示装置における走行中の視聴や操作の制限を解除可能とする車両情報制御装置を前提とする。そして、この車両情報制御装置は、前記車両走行中における前記視聴や操作中(前述したテレビモード中)に表示部にメッセージが表示される条件が成立した場合、当該メッセージが表示される起因となるシステムエラー情報を、前記メッセージを非表示とする情報に書き換えて送信する情報書き換え信号送信部を備えており、前記システムエラー情報は、前記条件の成立時に前記車載表示装置がエラー認識することにより生成されるものであり、当該車両情報制御装置は前記車載表示装置および車両ECUそれぞれに信号線を介して接続されており、前記情報書き換え信号送信部は、前記車載表示装置において前記システムエラー情報から書き換えられた情報を前記車両ECUに送信する機能も備えており、前記情報書き換え信号送信部が前記車両ECUに前記システムエラー情報を書き換えた信号を送信することによって前記メッセージが非表示とされるようになっており、前記車載表示装置において、走行中の前記視聴や操作が可能となるモードから制限されるモードへの切り換え要求が生じた際、前記システムエラー情報が消去されるまで、前記車載表示装置に、純正に基づく信号であって、前記システムエラー情報を、前記メッセージを非表示とする情報に書き換えるための信号を送信することを特徴とする。
【0008】
この特定事項によれば、メッセージが表示される条件が成立した場合、情報書き換え信号送信部によって、システムエラー情報が、メッセージを非表示とする情報に書き換えられることになる。このため、表示部にメッセージが表示されてしまうことを回避する、または、当該メッセージが表示された場合にこの表示を解除することができ、一部使用できなかった機能が使用できるようになる。
【0010】
また、表示部にメッセージが表示される条件が成立した場合、情報書き換え信号送信部から信号(メッセージを非表示とする情報に書き換えるための信号:この信号としては例えば車速パルスが挙げられるが車速パルスに限定されるものではない)が車載表示装置に送信される。これにより、車載表示装置ではエラー認識が解除されることになる。そして、情報書き換え信号送信部が、システムエラー情報から書き換えられた情報を車両ECUに送信することにより表示部にメッセージが表示されてしまうことが回避される、または、当該メッセージが表示された場合にこの表示が解除される。
【0012】
また、メッセージを非表示とするための処理動作中に、乗員からの要求に応じてモードを切り換えた場合、前記処理動作が完了していなければ表示部にメッセージが表示されてしまう可能性がある。これに対し、本解決手段では、システムエラー情報が消去されるまで、当該システムエラー情報を、メッセージを非表示とする情報に書き換えるための信号を送信していることにより、表示部にメッセージが表示されてしまうことを確実に阻止できる。
【0013】
また、前記システムエラー情報が消去されるまでの期間中、前記モードの切り換え期間中である旨を報知する報知手段を備え、当該期間中はモードの切り換え操作が無効とされる構成となっている。
【0014】
システムエラー情報が消去されるまでの期間中に、走行中の視聴や操作が可能となるモードから制限されるモードへの切り換え要求に応じてモードを切り換えた場合、システムエラー情報を消去する処理動作が完了していなければ表示部にメッセージが表示されてしまう可能性がある。本解決手段では、この点に鑑み、システムエラー情報が消去されるまでの期間中に、モードの切り換え要求が生じた際、モードの切り換え期間中である旨を乗員に報知すると共に、当該期間中はモードの切り換え操作を無効にしている。これにより、表示部にメッセージが表示されてしまうことを確実に阻止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、車両走行中における車載表示装置の視聴や操作中(テレビモード中)に表示部にメッセージが表示される条件が成立した場合、情報書き換え信号送信部から送信される信号によって、システムエラー情報を、メッセージを非表示とする情報に書き換えることにより、表示部にメッセージを表示させないようにすることができる。これにより、一部使用できなかった機能が使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る車両情報制御装置を含む車載オーディオシステム全体の概略構成を示すブロック図である。
図2】データ処理の手順のメインルーチンを示すフローチャート図である。
図3】第1データ処理の手順を示すフローチャート図である。
図4】第2データ処理の手順を示すフローチャート図である。
図5】テレビモード中にナビゲーションを可能にする車載オーディオシステム全体の概略構成の第1の例を示すブロック図である。
図6】テレビモード中にナビゲーションを可能にする車載オーディオシステム全体の概略構成の第2の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車内通信の形態としてCAN-BUS(Controller Area Network-BUS)通信を採用した場合について説明する。尚、車内通信の形態としては、CAN-BUS通信に限らず、AVC-LAN(Audio Visual Communication-Local Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等を採用してもよい。
【0018】
図1は、本実施形態に係る車両情報制御装置3を含む車載オーディオシステム1全体の概略構成を示すブロック図である。車載オーディオシステム1は、車両ECU2、車両情報制御装置3、および、車載表示装置(ディスプレイオーディオとも呼ばれる)4が信号線によって接続された構成となっている。尚、この図1は、車両情報制御装置3を含む車載オーディオシステム1のうち、車両走行中であっても車載表示装置4の視聴や操作を可能にするための構成および本発明における特徴部分の構成を抜粋して示している。
【0019】
図1に示すように、車両ECU2、車両情報制御装置3、および、車載表示装置4の接続状態としては、車両ECU2と車両情報制御装置3とが、CAN信号線L1,L2および信号線L7によって接続され、車両ECU2から車両情報制御装置3への信号の送信または送受信が可能となっている。また、車両情報制御装置3と車載表示装置4とが、CAN信号線L3,L4および信号線L8によって接続され、車両情報制御装置3から車載表示装置4への信号の送信または送受信が可能となっている。信号線L7,L8としてはアナログ信号線であってもよいしデジタル信号線であってもよい。
【0020】
(車両ECU)
車両ECU2は車両を制御するコンピュータである。一般的に、1台の車両には複数の車両ECUが搭載されており、図1における車両ECU2はこれら複数の車両ECUの集合に相当する。車両ECU2は、各種信号の送信部としてCAN信号送信部21および車速信号送信部22を備えている。
【0021】
CAN信号送信部21は、CAN信号線L1,L2によって車両情報制御装置3に接続されており、各種車両情報をデジタル信号によって車両ECU2から車両情報制御装置3へ送信または送受信が可能な構成となっている。尚、CAN-BUS上には車両を制御するための様々な車両ECUが接続されているため、CAN-BUS上の通信データには車両のあらゆる情報が含まれている。例えば、車両に搭載された各種制御装置がそれぞれどのような動作状態であるのかといった情報等が含まれている。
【0022】
車速信号送信部22は、車速信号(車速パルス)を車両ECU2から車両情報制御装置3へ送信が可能な構成となっている。この車速信号の送信経路としては信号線L7である。尚、CAN信号線L1,L2を使用するようにしてもよい。
【0023】
(車両情報制御装置)
車両情報制御装置3は、車両ECU2から送信または送受信された信号に応じて、車載表示装置4の走行中の視聴や操作を可能にする条件を満たすための情報(テレビモードでの情報)や自車両の位置認識のための情報(ノーマルモードでの情報)を車載表示装置4に送信または送受信する装置である。
【0024】
また、車両情報制御装置3には、LEDスイッチ6が信号線L9によって接続されている。LEDスイッチ6は、車室内に設置され、乗員によって操作されるスイッチであって、車両情報制御装置3を含む車載オーディオシステム1のモードをテレビモードとノーマルモードとの間で切り換えるためのものである。尚、LEDスイッチ6に代えてステアリングスイッチの操作によってテレビモードとノーマルモードが切り換えられる構成となっていてもよい。
【0025】
テレビモードでの走行中において特定の条件を満たした場合(例えば所定速度以上で所定距離走行した場合)に表示部(以下、メータパネルという場合もある)にメッセージが表示される。(車載表示装置4のエラー認識に伴うメッセージの表示)。このメッセージは、イグニッションキーをOFF(スタートスイッチの押し込み操作によるOFFも含む)するまで消えない場合があるため、車両の特定の機能が不能とされる状況を招いてしまうことがあった。この特定の機能の例としては、車両走行に関わる支援機能等が挙げられるが、その他の種々の機能が不能とされる可能性もある。
【0026】
本実施形態は、このメッセージが表示されないようにする(または一旦表示されたメッセージを短時間のうちに消去する)と共に、特定の機能が不能となる状況を回避(または特定の機能が可能となるように復帰)できるようにしたものである。
【0027】
車両情報制御装置3は、内蔵されたROM等の記憶媒体に記憶された制御プログラムによって実現される機能部として、信号送受信部31、信号制御部32、LEDスイッチ信号入出力部33、情報書き換え信号送信部34を備えている。以下、これら各部の機能の概略について説明する。
【0028】
信号送受信部31は、車両ECU2のCAN信号送信部21から送信された各種車両情報をCAN信号線L1,L2を介して受信すると共に車速信号送信部22からの車速パルスの情報を信号線L7を介して受信可能となっている。また、この信号送受信部31は、車両情報制御装置3を含む車載オーディオシステム1のモードがテレビモードであった場合に、車両ECU2から受けた信号(例えばパーキングブレーキ信号)に対し、車載表示装置4での走行中の視聴や操作を可能にする信号に変換して車載表示装置4に出力する。尚、パーキングブレーキ信号はCAN通信によって受信されるものに限らず、パーキングブレーキ信号発生機を備えさせ該パーキングブレーキ信号発生機からのアナログ信号として受信されるものであってもよい。
【0029】
信号制御部32は、テレビモードでの走行中において特定の条件を満たした場合(例えば所定速度以上で所定距離走行した場合)であって、テレビモードからノーマルモードへの切り換え要求が生じた際、車速信号送信部22から信号送受信部31を経て受けた車速パルスの情報の遮断を解除する機能を備えている。つまり、この場合、車速パルスの情報を車載表示装置4に所定時間出力する処理を実施する。この車速パルスの情報が本発明でいう「純正に基づく信号」に相当する。
【0030】
LEDスイッチ信号入出力部33は、LEDスイッチ6からの操作情報が入力される。例えば、車両情報制御装置3を含む車載オーディオシステム1のモードがノーマルモードであった場合にLEDスイッチ6が操作された場合には、LEDスイッチ信号入出力部33にLEDスイッチ信号が入力されることでテレビモードに切り換えられる。一方、車両情報制御装置3を含む車載オーディオシステム1のモードがテレビモードであった場合にLEDスイッチ6が操作された場合には、LEDスイッチ信号入出力部33にLEDスイッチ信号が入力されることでノーマルモードに切り換えられることになる。
【0031】
情報書き換え信号送信部34は、前述したテレビモードでの走行中において特定の条件を満たした場合(例えば所定速度以上で所定距離走行した場合)であってメータパネル上にメッセージが表示されてしまう状況において、テレビモードからノーマルモードへの切り換え要求が生じた際、車両ECU2から受けた車速パルスを車載表示装置4に所定時間送信する機能を備えている。前述した如く信号制御部32は、テレビモードでの走行中において特定の条件を満たした場合であって、テレビモードからノーマルモードへの切り換え要求が生じた際、車速信号送信部22から受けた車速パルスの情報の遮断を解除する機能を備えているため、この処理に従って、情報書き換え信号送信部34は、車両ECU2から受けた車速パルスを車載表示装置4に所定時間送信することになる。前記特定の条件を満たしたことの判定は、車両の走行情報を取得することによって行われる。例えば車両ECU2から車両の走行情報を取得することによって行われる。また、前記特定の条件を満たした旨の情報が信号制御部32および情報書き換え信号送信部34に入力されるようになっていてもよい。例えばこの情報が車両ECU2から入力されるようになっていてもよい。
【0032】
前述のメッセージが表示される状況にあっては、システム上におけるエラーデータとしてフラグが立つ状態となる。以下、この状態をエラーbit「1」の状態と呼ぶ。このエラーbit「1」の状態の情報が本発明でいうシステムエラー情報に相当する。このようにエラーbit「1」の状態にあっては、情報書き換え信号送信部34が車両ECU2から受けた車速パルスを車載表示装置4に所定時間送信することにより、車載表示装置4は、前記特定の条件を満たしていない状態であると認識する(システム上でエラーが発生していないと認識する)ことになり、システム上におけるエラーデータとしてフラグが下りた状態に切り換わる。以下、この状態をエラーbit「0」の状態と呼ぶ。エラーbit「0」の状態に書き換えることが本発明でいうメッセージを非表示とする情報への書き換えに相当する。また、前記所定時間は、エラーbitが「1」から「0」に切り換わる時間に相当し、本発明でいう「システムエラー情報が消去されるまで」の時間に相当する。
【0033】
また、情報書き換え信号送信部34は、テレビモードでの走行中において前記特定の条件を満たした場合、エラーbitを書き換えることによってエラーbit「0」の状態となった情報を車両ECU2に送信する機能も備えている。この機能が本発明でいう「メッセージが表示される起因となるシステムエラー情報を、メッセージを非表示とする情報に書き換えて送信する」機能に相当する。これにより、メータパネル上にメッセージが表示されないことになる。これにより、乗員の違和感を招いてしまうことがなくなる。また、メータパネルの視認性を良好に維持できる。一部使用できなかった機能が使用できるようになる。また、この書き換えられたエラーbit「0」の状態となった情報を車両ECU2に送信する状態は、前述した車載表示装置4への車速パルスの送信(ノーマルモードへの切り換え要求が生じた際の車速パルスの送信)よってエラーbit「0」の状態となるまで継続されるようになっている。
【0034】
ここで、エラーbit「1」の状態からエラーbit「0」の状態に切り換わるタイミングとしては、前記特定の条件を満たした場合であってメータパネル上にメッセージが表示される前段階としてもよいし、前記特定の条件を満たした場合であってメータパネル上にメッセージが表示されたタイミングであってもよい。前者の場合には、メータパネル上にメッセージが表示されないことになる。後者の場合には、メータパネル上にメッセージが一旦表示されるものの、その後、短時間のうちにメッセージの表示が解除されることになる。
【0035】
また、エラーbit「1」の状態からエラーbit「0」の状態への切り換え処理にはある程度の時間を要するため、この切り換え処理が完了する前(エラーbit「0」の情報が車両ECU2に送信されることにより、メータパネル上にメッセージが表示されない状態となる前)に乗員によるLEDスイッチ6の操作によってノーマルモードへの切り換え要求がなされた場合に、その操作を有効にしてノーマルモードに切り換えてしまうとメッセージが表示されてしまう可能性がある。これは、車載表示装置4の内部にエラー情報が残っているためである。
【0036】
そこで、本実施形態では、このタイミングでノーマルモードへの切り換え要求がなされた場合、前述したエラーbitの書き換え処理を保持しつつ、情報書き換え信号送信部34が車速パルスを車載表示装置4に所定時間送信する動作を実行し、エラーbit「1」の状態が発生しなくなった時点で、このエラーbitに対する制御(書き換え処理)を解除するようにしている。また、このエラーbitに対する制御の期間中はLEDスイッチ6の操作を無効にしている。これにより、ノーマルモードに切り換わった際にメッセージが表示されてしまうことを回避できるようにしている。
【0037】
尚、この処理の実行中には、乗員に対するモード切り換え実行中である旨の情報の提供が行われている。具体的には、前述した特定の条件を満たした際(メータパネルにメッセージが表示されてしまう条件を満たした際)、LEDスイッチ6によるノーマルモードへの切り換え操作がなされた場合に、後述するエラーbitの書き換え処理が完了するまでの間(エラーbitを書き換え、当該書き換えた情報が車両ECU2に送信されてメッセージが表示されない状態となるまでの間)、乗員に対してモード切り換え実行中である旨の情報を提供する。例えば、LEDスイッチ6に点灯動作を行わせるための信号や点灯色を変更するための信号を当該LEDスイッチ6に送信したり、車載表示装置4のディスプレイ42上にモード切り換え実行中である旨の画像の表示を行わせるための信号を当該ディスプレイ42に送信したりする。また、車載スピーカ等によってモード切り換え実行中である旨の音声情報を提供するようになっていてもよい。これらの場合、LEDスイッチ6、ディスプレイ42、車載スピーカ等それぞれが本発明でいう報知手段に相当することになる。
【0038】
(車載ナビゲーション装置)
車載表示装置4は、ナビゲーション部41、ディスプレイ42、テレビチューナ43、車速信号受信部44等を備えている。
【0039】
ナビゲーション部41は、乗員が車載表示装置4を操作することによって設定された目的地に向けての経路を設定する公知のナビゲーション機能を有する。ディスプレイ42は、設定された経路の地図情報の表示やテレビ視聴時のテレビ画像の表示を行う。テレビチューナ43は、図示しないテレビアンテナと接続されており、当該テレビアンテナによって受信された複数のテレビ放送波の中からユーザの選択に応じて、目的の放送局のチャンネルを選局し、選局されたテレビ放送波に基づいた放送内容を示す画像データをディスプレイ42に送信する。車速信号受信部44は、車速信号線L8によって車速パルス信号を受信可能となっている。
【0040】
(処理動作の手順)
次に、本実施形態に係る車載オーディオシステム1における処理動作の手順を図2図4のフローチャートに沿って説明する。図2は車載オーディオシステム1におけるデータ処理の手順のメインルーチンを示すフローチャートである。このフローチャートは、車両の走行中において所定の時間間隔を存して繰り返して実行される。また、図3図2のステップST2において実行される第1データ処理(テレビモードでのデータ処理)の手順を示すフローチャート図である。図4図2のステップST4において実行される第2データ処理(ノーマルモードでのデータ処理)の手順を示すフローチャート図である。
【0041】
先ず、図2を用いてメインルーチンについて説明する。車両の走行中にあっては、先ず、ステップST1で現在のモードがテレビモードであるか否かが判定される。現在のモードがテレビモードでなくステップST1でNO判定された場合には、そのままリターンされる。これは、テレビモードでない場合、前述したメッセージが表示されてしまうことはないためである。
【0042】
現在のモードがテレビモードでありステップST1でYES判定された場合には、ステップST2に移り、図3を用いて以下で説明する第1データ処理(エラーbitの書き換え、および、その情報の車両ECU2への送信)が実行される。この第1データ処理が終了した後、ステップST3に移り、モードをノーマルモードに切り換える操作(乗員によるLEDスイッチ6の操作)が行われたか否かを判定する。
【0043】
モードをノーマルモードに切り換える操作が行われ、ステップST3でYES判定された場合には、ステップST4に移り、図4を用いて以下で説明する第2データ処理(車載表示装置4によるナビゲーションを可能にしながらも、メッセージが表示されない状態となるまでのモード遷移の無効処理)が実行される。この第2データ処理が終了した後、ステップST5に移り、モードがノーマルモードに切り換えられ、リターンされることになる。
【0044】
次に、図3を用いて第1データ処理について説明する。この第1データ処理では、先ず、ステップST11において、車両ECU2側のデータであるCAN1データ値の書き換えが行われ、そのCAN1データ値が車載表示装置4側に送信される。このCAN1データ値は、車載表示装置4でのテレビ視聴を可能にするためのデータであって例えばパーキングブレーキ信号等である。その後、ステップST12に移り、車速情報の送信を遮断する(テレビモードの継続)。これにより、車載表示装置4でのテレビ視聴を継続する。
【0045】
その後、ステップST13に移り、前述したメータパネルにメッセージが表示されてしまう条件が成立したか否かが判定される。この条件が成立しておらず、ステップST13でNO判定された場合には、メッセージが表示される状況にはないとしてそのままリターンされる。
【0046】
一方、前記条件が成立し、ステップST13でYES判定された場合には、ステップST14に移り、車載表示装置4ではエラーbit「1」の状態からエラーbit「0」の状態となり(エラーbitが書き換えられ)、この情報が車両ECU2に送信される。
【0047】
次に、図4を用いて第2データ処理について説明する。この第2データ処理では、先ず、ステップST21において、情報書き換え信号送信部34が車速パルスを車載表示装置4に所定時間送信する動作を開始し、この動作を開始することに伴うエラーbitを「0」の状態とするための処理が実施されていること(データ処理モードの実行中であること)を乗員に対して報知するための表示動作を行う。例えば、前述したLEDスイッチ6の点灯動作や点灯色の変更動作や車載表示装置4のディスプレイ42上にモード切り換え実行中である旨の画像の表示が行われる。また、音声による情報の提供であってもよい。
【0048】
ステップST22では、このデータ処理モードの実行中であることに起因してモード遷移が無効とされる。つまり、データ処理モードの実行中には、乗員によるLEDスイッチ6の操作が無効とされる。
【0049】
ステップST23では、CAN1データ値が書き換えられることなく(スルーされて)、車載表示装置4側に送信される。このCAN1データは、車載表示装置4でのナビゲーションを可能にするためのデータである。その後、ステップST24に移り、車速信号線L8による車速情報(車両ECU2から送られてくる車速パルス)の送信を行う。これにより、車載表示装置4でのナビゲーションが可能となる。
【0050】
その後、ステップST25では、前述した車載表示装置4への車速パルスの出力に起因にして車載表示装置4側のエラーbitが「0」の状態となっているか否かを判定する。つまり、メッセージが表示されない状況となっているか否かを判定する。エラーbitが「0」の状態となっておらず、ステップST25でNO判定された場合には、このままノーマルモードに移行した場合にはメッセージが表示されてしまうとして、ステップST21に戻る。
【0051】
一方、ステップST25でYES判定された場合には、このままノーマルモードに移行してもメッセージは表示されないとして、ノーマルモードに移行し、リターンされる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、テレビモードでの走行中において特定の条件を満たした場合であっても、エラーbitの書き換え処理によってメータパネル上にメッセージが表示されないようにすることができ、乗員の違和感を招いてしまうことがなくなる。また、メータパネルの視認性を良好に維持できる。また、メッセージが表示に伴って一部使用できなかった機能が使用できるようになる。
【0053】
また、本実施形態では、システムエラー情報が消去されるまで(エラーbitが「0」の状態となるまで)の期間中に、モードの切り換え要求が生じた際、モードの切り換え期間中である旨を乗員に報知すると共に、当該期間中はモードの切り換え操作を無効にしている。これにより、メータパネルにメッセージが表示されてしまうことを確実に阻止できる。
【0054】
-テレビモード中にナビゲーションを可能にする例-
次に、前述した実施形態の構成に加えて、テレビモード中にナビゲーションを可能にする例について説明する。図5は第1の例を示すブロック図であり、図6は第2の例を示すブロック図である。
【0055】
図5に示すものにあっては、車速パルス発生装置5が信号線L10,L11によって車両ECU2および車載表示装置4に接続されている。この車速パルス発生装置5と車両ECU2および車載表示装置4との接続形態としては、アナログ信号線によるものであってもよいし、CAN信号線によるものであってもよい。車速パルス発生装置5は、テレビモードである際、車両停止情報を表すパルス波形を含むように車速パルスを変調させ、この情報を車載表示装置4に向けて送信することにより、車両停止情報(車両停止情報を表すパルス波形)が含まれていることに起因する車載表示装置4の視聴や操作を可能にしている。
【0056】
ここで、車両走行中の視聴や操作を可能にするための信号処理について簡単に説明する。車速パルス発生装置5からの車速信号は、車速パルスとして生成されるものであり、車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形として生成される。ノーマルモードである場合には、車速信号は、変換および変調されることなく車載表示装置4に送信される。これにより、車載表示装置4では、この車速信号を利用することによる自車両の位置の更新が可能であり、車載表示装置4が認識する自車両の位置が実際の位置からずれてしまうことが抑制され、自車両の位置認識の精度が十分に得られる。尚、車速信号は、車速に応じてパルス幅、パルス周期、Duty比が変化するものである。
【0057】
一方、テレビモードである場合には、車速信号は、変換および変調され、車載表示装置4に送信される。ここで変調された車速信号としては車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形として生成されている。そして、例えば車速情報を表すパルス波形の時間長さと、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとの比が約1:2に設定されたものとなっている。この比はこれに限定されるものではない。このような車速パルスの変調により、車両走行中にテレビ視聴が可能となる。その他の構成および動作は前述した実施形態のものと同様である。
【0058】
図6に示すものは、車速パルス発生装置5と同機能を備えた車速パルス発生部35を車両情報制御装置3に内蔵させた構成となっている。本例の場合、車両情報制御装置3が、車速パルス発生部35からの車速パルスが車載表示装置4に送信可能となっている。その他の構成および動作は前述した実施形態のものと同様である。
【0059】
図5および図6で示した各例にあっても前述した実施形態の場合と同様の効果(テレビモードでの走行中において特定の条件を満たした場合であってもメータパネル上にメッセージが表示されないこと等)を奏することができる。
【0060】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態および前記各例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0061】
例えば前記実施形態および前記各例では、第2データ処理にあっては、エラーbit「0」の情報が車両ECU2に送信されたことに伴う処理が実施されていることに伴う遅延処理(LEDスイッチ6の操作を無効とする処理)および当該処理が実施されていることを乗員に対して報知するための表示動作を行うようにしていた。これはデータ処理モードに所定の時間を要するためであるが、このデータ処理モードに要する時間が短時間である場合には、これら遅延処理や乗員に対する報知を不要とすることもできる。また、データ処理モードに所定の時間を要する場合であっても、遅延処理を行い乗員に対する報知を実施しないようにしてもよい。尚、このデータ処理モードに要する時間(前記所定時間)としては固定された時間には限定されず、処理内容に応じて変動する場合もある。この場合、その処理時間を把握し、それに応じて遅延処理や乗員に対する報知を行う時間も変更されることになる。
【0062】
また、前記実施形態および前記各例では、車載表示装置4がテレビチューナ43を備えていることにより車載表示装置4によるテレビ視聴を可能にする車載オーディオシステム1に本発明に係る車両情報制御装置3を適用した場合について説明した。本発明に係る車両情報制御装置3はこれに限らず、外部入力(HDMI等のインタフェースを利用した外部入力)によって映像を視聴可能な構成とされた車載オーディオシステム1に対して適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、テレビモードでの走行中にメータパネル上にメッセージが表示されてしまうことを回避できる車両情報制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
2 車両ECU
3 車両情報制御装置
34 情報書き換え信号送信部
4 車載表示装置
【要約】
【課題】テレビモードでの走行中に表示部にメッセージが表示されてしまうことを回避する、または、当該メッセージが表示された場合にこの表示を解除することができる車両情報制御装置を提供する。
【解決手段】テレビモードでの走行中に表示部にメッセージが表示される条件が成立した際、エラーbitを「0」にし、特定の条件が成立した際にノーマルモード遷移後は、車両ECU2の車速バルスを車載表示装置4にエラーbitが「0」になるまで送信することで、メッセージを非表示にすることができる。メッセージが表示されることに伴う使用不可の機能も一部使用可能となる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6