(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】固定および適応フィルタ処理を用いるフォトプレチスモグラム(PPG)からの呼吸
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20230906BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61B5/08 ZDM
A61B5/02 310A
(21)【出願番号】P 2021137077
(22)【出願日】2021-08-25
(62)【分割の表示】P 2019046529の分割
【原出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507005296
【氏名又は名称】ノニン・メディカル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス イ-.ダーニン
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531629(JP,A)
【文献】特表2016-514991(JP,A)
【文献】特表2005-535359(JP,A)
【文献】特表2015-521075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/02 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトプレチスモグラム(PPG)信号を生成することが可能なデバイスの出力から被験者の呼吸数を決定するためのシステムであって、
前記PPG信号をサンプリングするための一つ以上のハードウェアベースのプロセッサと、
前記サンプリングされたPPG信号をフィルタ処理するための第一の高域通過フィルタと、
前記第一の高域通過フィルタからの出力を受信し、第二の選択周波数で前記出力をフィルタ処理するための、前記第一の高域通過フィルタと直列に結合された第二の高域通過フィルタと、
前記第二の高域通過フィルタからの出力を受信し、前記PPG信号の
DC変調波形(DC信号)、振幅変調波形(pM信号)および周波数変調波形(pT信号)の各々の成分の中心周波数を
β値の範囲にわたって決定するための複数の帯域通過フィルタであって
、βは、前記呼吸数を決定するための、前記中心周波数からの、脈拍数に対する呼吸数の割合である、複数の帯域通過フィルタと、
を含
み、
前記一つ以上のハードウェアベースのプロセッサのうちの少なくとも一つは、βのスペクトル概算を決定するようにさらに構成される、
システム。
【請求項2】
前記第二の高域通過フィルタからの出力を受信し、前記PPG信号における前記呼吸数の影響によって引き起こされる呼吸時間間隔を決定するために、前記PPG信号の少なくとも選択された部分のポジティブ(立上り)エッジゼロ交差およびネガティブ(立下り)エッジゼロ交差を補間するためのゼロ交差フィルタと、
前記呼吸数の概算を導出するために、前記ポジティブエッジゼロ交差および前記ネガティブエッジゼロ交差に対する前記呼吸時間間隔の平均を決定するための中央値フィルタと、
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記中央値フィルタは、個々に平均化する前に、前記ポジティブエッジゼロ交差および前記ネガティブエッジゼロ交差の双方に対して呼吸数を計算するのに基づいて、前記呼吸数の前記概算を導出するようにさらに構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記呼吸時間間隔は、補間されたゼロ交差間の差として決定されるものである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記一つ以上のハードウェアベースのプロセッサは、前記PPG信号の成分を、
前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号に分離するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
あるパルスから次のパルスへ所定の割合を超えて変化するスルーレートを有する前記pM信号および前記pT信号における信号の影響を低減、または信号を排除するためにスルーレートフィルタをさらに含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記所定の割合は、±25%である、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記一つ以上のハードウェアベースのプロセッサは、前記被験者の心拍数に基づいて選択された周波数で、前記pMおよび前記pT信号の前記PPG信号をサンプリングするためのものである、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記一つ以上のハードウェアベースのプロセッサは、選択された実時間周波数で前記DC信号の前記PPG信号をサンプリングするためのものである、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記一つ以上のハードウェアベースのプロセッサは、前記PPG信号から前記被験者の脈拍数を決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の帯域通過フィルタのうちの連続的なものの中心周波数は、βのインクリメントステップサイズに基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
βの前記インクリメントステップサイズは、0.05である、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の帯域通過フィルタは、13個の帯域通過フィルタを含む、請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第一の高域通過フィルタ、前記第二の高域通過フィルタおよび前記帯域通過フィルタのうちの少なくとも一つは、デジタルフィルタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
フォトプレチスモグラム(PPG)信号を生成することが可能なデバイスの出力から被験者の呼吸数を決定するための方法であって、
第一の選択周波数で前記PPG信号をサンプリングすることと、
第一の高域通過フィルタで前記PPG信号をフィルタ処理することと、
前記第一の高域通過フィルタからの出力を受信し、第二の高域通過フィルタで第二の選択周波数で前記出力をフィルタ処理することと、
前記第二の高域通過フィルタからの出力を受信し、複数の帯域通過フィルタに基づいて、前記第二の高域通過フィルタからの前記出力から受信された前記PPG信号の
DC変調波形(DC信号)、振幅変調波形(pM信号)および周波数変調波形(pT信号)の各々の成分の中心周波数を
β値の範囲にわたって決定すること
であって、βは、前記呼吸数を決定するための前記PPG信号の前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々の成分の前記中心周波数からの、脈拍数に対する呼吸数の割合である、ことと、
βの値のスペクトル概算を決定すること
と、
を含む、方法。
【請求項16】
前記PPG信号の少なくとも選択された部分の前記第二の高域通過フィルタからの出力を受信することと、前記PPG信号における前記呼吸数の影響によって引き起こされる呼吸時間間隔を決定するために、前記選択された部分のポジティブ(立上り)エッジゼロ交差およびネガティブ(立下り)エッジゼロ交差を補間することと、
前記呼吸数の概算を導出するために、前記ポジティブエッジゼロ交差および前記ネガティブエッジゼロ交差に対する前記呼吸時間間隔の平均を決定することと、
をさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記呼吸数の前記概算を導出することは、個々に平均化する前に、前記ポジティブエッジゼロ交差および前記ネガティブエッジゼロ交差の双方に対して、呼吸数を計算することに基づく、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
補間されたゼロ交差間の差として、前記呼吸時間間隔を決定することをさらに含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記PPG信号を、DC変調波形(DC信号)、振幅変調波形(pM信号)および周波数変調波形(pT)に分離することをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項20】
β値の範囲にわたって、前記複数の帯域通過フィルタを用いて、前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々の中心周波数を決定することをさらに含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々に対して、
各帯域通過フィルタからの信号に対して、平均二乗平均平方根(RMS)振幅を計算することと、
各帯域通過フィルタに対して、前記平均RMS振幅の総和を正規化することと、
前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号型の各々に従って、前記平均RMS振幅値を均等化することと、
各信号型に対して、βのスペクトル概算を計算することと、
をさらに含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々に対して融合されたスペクトルを計算することをさらに含み、
前記方法は、
前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々に対して前記RMS振幅値を平均化することと、
融合された振幅値を正規化することと、
βのスペクトル概算を計算することと、
を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
応答表面に対する入力として、前記融合されたスペクトルからの前記複数の帯域通過フィルタの出力の最大値、4つの決定されたβの概算(β
DC、β
pT、β
pMおよびβ
MAX,AVG)、4ビート平均心拍数<HR
4>の各々を用いることと、
前記応答表面の出力からβの伝達関数の概算(β
XF)を決定することと、
をさらに含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記PPG信号における前記呼吸数の影響によって引き起こされる周波数変調値を決定し、前記波形に基づくさらなるβ値(β
WF)を決定するために、前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の処理された値の各々に対してゼロ交差を決定することと、
前記β
WF値を
フィードバックすることと、
β
XFおよびβ
WFの単純平均値を決定することと、
前記被験者の前記呼吸数の精度を向上するために、前記単純平均を用いることと、
をさらに含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
フォトプレチスモグラム(PPG)信号を生成することが可能なデバイスの出力から被験者の呼吸数を決定することであって、前記決定は、
第一の選択周波数で前記PPG信号をサンプリングすることと、
第一の高域通過フィルタで前記PPG信号をフィルタ処理することと、
前記第一の高域通過フィルタからの出力を受信し、第二の高域通過フィルタで第二の選択周波数で前記出力をフィルタ処理することと、
前記第二の高域通過フィルタからの出力を受信し、複数の帯域通過フィルタに基づいて、前記第二の高域通過フィルタの前記出力から受信された前記PPG信号の
DC変調波形(DC信号)、振幅変調波形(pM信号)および周波数変調波形(pT信号)の各々の成分の中心周波数を
β値の範囲にわたって決定すること
であって、βは、前記呼吸数を決定するための前記PPG信号の前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々の成分の前記中心周波数からの、脈拍数に対する呼吸数の割合である、ことと、
βの値のスペクトル概算を決定すること
と、
を含む、
決定することを含む動作を、マシンの一つ以上のハードウェアベースのプロセッサによって実行されたときに、前記マシンに実施させる命令を含み、非一時的信号を有する有形コンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記被験者の呼吸数を決定することは、前記PPG信号を、DC変調波形(DC信号)、振幅変調波形(pM信号)および周波数変調波形(pT)を含む信号に分離することをさらに含む、請求項
25に記載の有形コンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記被験者の呼吸数を決定することは、前記複数の帯域通過フィルタを用いて、β値の範囲にわたって、前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々の中心周波数を決定することをさらに含む、請求項
26に記載の有形コンピュータ可読媒体。
【請求項28】
前記被験者の呼吸数を決定することは、前記DC信号、前記pM信号、前記pT信号の各々に対して、
各帯域通過フィルタからの信号に対して、平均二乗平均平方根(RMS)振幅を計算することと、
各帯域通過フィルタに対して、前記平均RMS振幅の総和を正規化することと、
前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号型の各々に従って、前記平均RMS振幅値を均等化することと、
各信号型に対して、βのスペクトル概算を計算することと、
をさらに含む、請求項
27に記載の有形コンピュータ可読媒体。
【請求項29】
前記被験者の呼吸数を決定することは、前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々に対して融合されたスペクトルを計算することをさらに含み、前記被験者の呼吸数を決定することは、
前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の各々に対して前記RMS振幅値を平均化することと、
融合された振幅値を正規化することと、
βのスペクトル概算を計算することと、
を含む、請求項
28に記載の有形コンピュータ可読媒体。
【請求項30】
前記被験者の呼吸数を決定することは、
応答表面に対する入力として、前記融合されたスペクトルからの前記複数の帯域通過フィルタの出力の最大値、4つの決定されたβの概算(β
DC、β
pT、β
pMおよびβ
MAX,AVG)、4ビート平均心拍数<HR
4>の各々を用いることと、
前記応答表面の出力からβの伝達関数の概算(β
XF)を決定することと、
をさらに含む、請求項
29に記載の有形コンピュータ可読媒体。
【請求項31】
前記被験者の呼吸数を決定することは、
前記波形の前記ゼロ交差に基づくさらなるβ値(β
WF)をパルス時間で決定するために、前記DC信号、前記pM信号および前記pT信号の処理された値の各々に対してゼロ交差を決定することと、
前記β
WF値を
フィードバックすることと、
β
XFおよびβ
WFの単純平均値を決定することと、
前記被験者の前記呼吸数の精度を向上するために、前記単純平均を用いることと、
をさらに含む、請求項
30に記載の有形コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される本発明の主題は、フォトプレチスモグラム(PPG)の形式で出力を生成するパルスオキシメータなどの光ベースの生理学的センサデバイスから、被験者(例えば、ヒト患者)の呼吸数を導出することに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の様々な生物学的パラメータまたは環境パラメータを監視または測定するために、光信号の伝送に依存する広範囲のデバイスが存在している。例えば、様々な形式の血液オキシメトリ(酸素測定)デバイスは、患者の一つ以上の生物学的パラメータまたは環境パラメータの測定で、信号の伝送および受信を利用する。
【0003】
血液オキシメトリデバイスまたはパルスオキシメータは、血管を含む人体器官もしくは組織における血液の酸素飽和レベル、または組織もしくは機関の酸素代謝を監視、または測定するためによく用いられる。光オキシメータの一実施例は、“Single Channel Pulse Oximeter”と題された、米国特許登録番号33,643に開示される。パルスオキシメトリは、被験者の心拍数とともに、被験者の血液内の酸素レベルを測定するために用いられる技術である。指パルスオキシメータは、被験者の血液酸素レベルにおける変化を迅速に検出するための技術を備える。これらのデバイスは、また、脈拍数、器官もしくは組織内の血流量を決定するため、または他の生物学的もしくは環境パラメータを監視、測定することがしばしば可能であり、そのために用いられる。
【0004】
血液オキシメトリデバイスは、患者の血液酸素化レベルおよび血液量もしくは脈拍数などの一つ以上の生物学的もしくは環境パラメータを決定するために、組織もしくは器官を通って伝送されるか、または組織もしくは器官から反射される一つ以上の周波数の一つ以上の信号の構成成分のレベルを測定する。
【0005】
さらに、呼吸は、被験者の動物(例えば、ヒト)の胸膜腔内の胸内圧を変化させることによって、心臓周期に影響を及ぼす。胸内圧は、胸壁と肺との間の圧力である。心臓は、肺の間の胸腔内にあるため、呼吸中の吸入および吐出による部分的な圧力は、大静脈における圧力に影響する。したがって、呼吸が心臓周期に影響を及ぼすため、PPGは、吸入および吐出された息の呼吸周期によって生じる信号成分を含む。結果として、PPG信号は、一分毎の呼吸(BPM)で被験者の呼吸数を決定するために抽出され得る情報を含む。
【0006】
血液オキシメトリデバイスは、また、直接接続されるデバイス、すなわち、患者に直接接続されて、所望の情報を直接表示するか、情報を直接記録するデバイスとして、または、リモートデバイス、すなわち、患者に取り付けられ、リモートディスプレイに測定値を伝送し、監視するデバイスとしてか、またはデータ収集デバイスとして、構成され得る。
【0007】
血液オキシメトリデバイスは、赤色または近赤外範囲といった周波数範囲で放射光を放射することによって、血液酸素レベル、脈拍数、血流量を測定し、ここで、組織もしくは器官を通る放射の伝送、または組織もしくは器官からの放射の反射は、組織もしくは器官内の血液の酸素飽和レベルおよび量によって測定可能な程度に影響を及ぼされる。組織もしくは器官を通って伝送されるか、または組織もしくは器官から反射される信号レベルの測定は、その後、組織もしくは器官内の酸素飽和レベルの測定または指示を提供し得る。伝送されるか、または反射された信号は、異なる周波数であり得、これは、血液の様々なパラメータ、要因または成分によって測定可能な程度に異なる方法または量で典型的に影響を受ける。
【0008】
伝送されるか、反射された信号によって表されるパラメータは、受信された信号に関連するか、または関連のない様々なパラメータによって表され得る。例えば、血液酸素化もしくは血流を例えば測定するために組織もしくは器官を通って伝送されるか、または組織もしくは器官から反射される信号は、組織もしくは器官内の定常状態の血液量に起因する、定常もしくは“DC”成分と、生体の心臓の鼓動に起因する組織もしくは器官を通って流れる血流の時間的に変化する量を示す、時変もしくは“AC”成分と、を有し得る。各信号成分は、異なる情報を提供し得、さらなる情報を生成または決定するためにともに用いられ得る情報を提供し得る。必要とされるのは、PPGからの日付を用いて被験者(例えば、ヒト患者)の呼吸数を迅速かつ正確に決定するための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】心臓パルスのPPGの無変調信号を図示する。
【
図1B】二回の完全な呼吸周期を通して、呼吸に起因する
図1AのPPGの様々な変調を図示する。
【
図1C】二回の完全な呼吸周期を通して、呼吸に起因する
図1AのPPGの様々な変調を図示する。
【
図1D】二回の完全な呼吸周期を通して、呼吸に起因する
図1AのPPGの様々な変調を図示する。
【
図2A】3つの基本信号(DC、pTおよびpM)の各々に対するフロントエンド処理法を図示する。
【
図2B】3つの基本信号(DC、pTおよびpM)の各々に対するフロントエンド処理法を図示する。
【
図2C】3つの基本信号(DC、pTおよびpM)の各々に対するフロントエンド処理法を図示する。
【
図3】周波数変調信号から呼吸を予備的に決定するための固定フィルタアルゴリズムを図示する。
【
図4】二つの単一パルス長にわたって得られる連続DC平均信号を図示する。
【
図5A】13個の帯域通過フィルタの各々に対して、βの関数として、信号値の強度H(β)のプロットを図示する。
【
図5B】開示された主題の適応フィルタ処理実施形態に従う、29タップの各々に対して、β=0から開始する、13個の線形位相帯域通過フィルタの各々からの出力に対する正規化強度のプロットを図示する。
【
図6A】3つの基本信号の各々に対して適応フィルタアルゴリズムを用いて、呼吸数を決定するためのさらなる動作を図示する。
【
図6B】3つの基本信号の各々に対して適応フィルタアルゴリズムを用いて、呼吸数を決定するためのさらなる動作を図示する。
【
図6C】3つの基本信号の各々に対して適応フィルタアルゴリズムを用いて、呼吸数を決定するためのさらなる動作を図示する。
【
図7A】本明細書に記述された適応フィルタのスペクトル校正のための試験プロトコルで用いられる例示的グラフを図示する。
【
図7B】本明細書に記述された適応フィルタのスペクトル校正のための試験プロトコルで用いられる例示的グラフを図示する。
【
図8A】βの真値に対してプロットされた、
図6Bおよび
図6Cを参照して論じられたような、3つの信号の平均に加えて、基本信号の各々に対するスペクトルのうちの個別の一つを図示する。
【
図8B】βの真値に対してプロットされた、
図6Bおよび
図6Cを参照して論じられたような、3つの信号の平均に加えて、基本信号の各々に対するスペクトルのうちの個別の一つを図示する。
【
図8C】βの真値に対してプロットされた、
図6Bおよび
図6Cを参照して論じられたような、3つの信号の平均に加えて、基本信号の各々に対するスペクトルのうちの個別の一つを図示する。
【
図8D】βの真値に対してプロットされた、
図6Bおよび
図6Cを参照して論じられたような、3つの信号の平均に加えて、基本信号の各々に対するスペクトルのうちの個別の一つを図示する。
【
図9A】
図8Aから
図8Cを参照して図示されたような、3つの基本スペクトルを平均化する前のスペクトル均等化の影響を図示する。
【
図9B】
図8Aから
図8Cを参照して図示されたような、3つの基本スペクトルを平均化する前のスペクトル均等化の影響を図示する。
【
図10A】βの二次表面応答関数および結果として生じる伝達関数概算を展開するために、多数の入力を用いることに基づく、適応フィルタアルゴリズムによって決定される、βの精度の向上におけるさらなる詳細を提供する。
【
図10B】βの実際の値の解像度の非線形補正を生成するためのβの合成スペクトルおよび時間ドメイン概算を図示する。
【
図11A】パルス時間での動的βの概算で波形の実施例を図示する。
【
図11B】パルス時間での動的βの概算で波形の実施例を図示する。
【
図11C】パルス時間での動的βの概算で波形の実施例を図示する。
【
図12】本明細書で論じられる方法のうちの任意の一つ以上をマシンに実施させるための命令の集合が実行され得る、コンピューティングシステムの例示的一形態におけるマシンの簡略化されたブロック図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記で論じられたように、呼吸周期中の胸腔内圧における変動は、PPG信号に対する変調を引き起こす。
図1Aから
図1Dにおいては、被験者に結合されたパルスオキシメータからサンプリングされた様々な信号が図示される。
図1Aにおいては、PPG波形101は、無変調心臓パルスとして図示される。PPG波形101は、被験者の呼吸(例えば、呼吸数)から影響を受けていない試験の下での、被験者からの心臓パルスの予期される応答信号である。PPG波形101は、一定の心拍数に対して、連続的に繰り返している。
【0011】
図1Bから
図1Dをここで参照すると、呼吸に起因する
図1AのPPGの様々な変調が、二回の完全な呼吸周期を通じて図示される。
図1Bから
図1Dの変調されたPPG波形は、被験者の指における血液量の変動によって生じるものを図示する。したがって、変調されたPPG波形は、本明細書で参照される3つの基本信号を表す。3つの基本信号は、以下に詳細に記述されるように、様々な技術に従って処理される。
【0012】
例えば、
図1Bは、基本ベースライン波形105によって変調されたPPGのDC変調波形103を図示する。PPGのDC変調は、心臓への血液の静脈還流における変動によって引き起こされる。DC変調波形103は、本明細書では、DC信号と代替的に呼ばれることがある。呼吸がなくても、マイヤー(Mayer)波に起因するPPGのDC変調がなお存在することを、当業者はまた認識するだろう。マイヤー波は、適切な血圧を維持するために、脳に血圧情報を中継する血管内の様々な受容体によって引き起こされる動脈圧における周期的変動である。マイヤー波は、約0.1Hzの周波数(例えば、約10秒の周期)を有する。マイヤー波によって引き起こされるこの低周波“雑音”は、PPG波形から実際の呼吸数(RR)を抽出するために、デジタルもしくはアナログ高域通過フィルタ処理(または、双方の組み合わせ)によって軽減されるか、排除されなければならない信号のうちの一つである。
【0013】
図1Cは、二回の呼吸周期の各々によって変調される心臓パルスの振幅変調波形107を図示する。パルス振幅における変動は、1回拍出量における変動によって引き起こされ、本明細書では、p-maxまたはpM信号と呼ばれる。
【0014】
図1Dは、パルス時間における変動によって変調される周波数変調心臓パルス波形109を図示する。このように、PPGのパルス長は、パルス時間(呼吸に起因する心拍数における変動)に従って変化する。パルス時間は、典型的には、吸入中に増加し、吐出し中に減少する。心拍数における変動は、呼吸性洞性不整脈(RSA)として本技術分野で周知であり、迷走神経によって調節される。迷走神経は、被験者の心臓、肺および消化管を制御するための自律神経系の一部で調節する。したがって、パルス時間に起因する周波数変調における変動は、パルス時間またはpT信号と本明細書では呼ばれる。
【0015】
これらの3つの基本信号DC、pMおよびpTの全ては、被験者(例えば、患者)の実際の呼吸数を抽出するために、実質的に同時に用いられる。これらの3つの基本信号の信号対雑音比(SNR)は、被験者によって大きく変化することがある。例えば、ある被験者は、3つ全ての信号に対して高いSNRを有し得る。他の被験者に対しては、3つの信号のうちの1つだけが呼吸数を抽出するほど十分に高いSNRを有し得る。個体数のうちのわずかな割合に対しては、3つの信号のいずれも高いSNRを有さない。したがって、3つの基本信号の各々を考慮することによって、全てまたはほぼ全ての被験者に対して、真の呼吸数が抽出されることができる。
【0016】
本明細書で提示される本発明の主題の様々な実施形態は、時間ドメインにおける信号のゼロ交差を考える。以下に詳細に論じられるように、3つの基本信号の各々のSNRは、時間依存性信号に対して調整された適応フィルタを用いることによって、増加または最大化される。結果として、信号のおおよその周波数について決定が行われる。その後、信号に対して時間でほぼ整合されるフィルタを信号が通される。信号に対して時間でフィルタ幅を整合することによって、SNRは、増加または最大化される。例えば、フィルタのサンプリングウインドウが広すぎる場合、過剰な雑音が導入される。幅が小さすぎる場合、信号は、時間内に分解されることができない。
【0017】
呼吸数の抽出で用いられるキーとなるパラメータは、ベータ(β)である。βは、脈拍数でサンプリングされるときの呼吸周波数として定義され、以下の式で与えられる。
【数1】
したがって、式(1)によって示されるように、βは、(実時間とは対照的な)パルス時間における呼吸数の周波数である。3つの信号のフロントエンド処理の最初の動作後、
図2Aから
図2Cを参照して以下に記述されるように、本明細書に記述された残り全てのフィルタ処理は、パルス時間で(すなわち、被験者の脈拍数に関連付けられて)実施される。
【0018】
基本信号は、連続的とは対照的な離散的にサンプリングされるため、ナイキスト(Nyquist)サンプリング基準を適用する。当業者には周知のように、ナイキスト周波数は、任意の離散的信号処理システムのサンプリング周波数の半分であり、信号エイリアシングは、ナイキスト周波数よりも高い周波数で生じる。本明細書に記述されたような3つの基本信号(pT、pMおよびDC)の各々に対する最終的なサンプリングレートは、心拍数の2倍(2×)であり、これは、理論上、情報内容が、β=1.0の値まで補足されることができることを意味する。しかしながら、3つの基本信号の各々によって搬送される情報内容は、心拍数のたった1倍(1×)でのサンプリングに本質的に等価であるため、有効なナイキスト周波数(それを超えるとエイリアシングが生じる)は、β=0.5であり、心拍数の半分を超える呼吸数は測定されることができない。ヒト被験者における自発的呼吸のために、心拍数は、典型的には、呼吸数の4倍(4×)から5倍(5×)であり、心拍数の半分未満の呼吸数を検出することに対する制限は、実用上重要な制限ではない。
【0019】
ここで、
図2Aから
図2Cを参照すると、3つの基本信号(DC、pTおよびpM)の各々に対するフロントエンド処理法が図示される。
【0020】
図2Aにおいては、201でDCデジタル信号フィルタ処理法200が開始し、ここで、DC信号は、203で選択された実時間周波数でサンプリングされる。一実施形態においては、サンプリング周波数は75Hzである。この実施形態においては、75Hzのサンプリング周波数は、現在市販の標準的なパルスオキシメトリデバイスと適合するために選択されたものである。75Hzのサンプリング周波数を用いる一つの目的は、高解像度のPPG波形特性を提供することである。特に、パルスオキシメータが被験者に結合される(例えば、オキシメータは、被験者の指または耳に結合される)とき、最初の突入が記録される。突入は、典型的には、約100ミリ秒続き、PPGが最も迅速に変化している領域を画定する。それとは関係なく、より高い周波数とより低い周波数との双方を含む、多くの他のサンプリング周波数が用いられ得ることを当業者は理解するだろう。
【0021】
205で、低域通過フィルタは、心臓パルスに起因する高周波信号のほとんどを排除し、被験者の呼吸によって引き起こされる低周波信号を主として通過させる。
【0022】
207で、205から受信された信号は、第一の高域通過フィルタを通される。一実施形態においては、第一の高域通過フィルタは、入力データの平滑化をもたらすために、指数関数型平均化機能を有し得る。このような型の高域通過フィルタは、本技術分野で周知である(例えば、DCブロッカーなど)。この実施形態は、また、p値が0.00の高域通過フィルタを用い得る。
【0023】
p値に関して、与えられたデジタル信号X[n]に対しては(ここで、nはサンプル数である)、本明細書で記述された様々な実施形態で用いられる高域通過フィルタ値D[n](通常DCブロッカーと呼ばれる)は、数式によって与えられるように、p値によって分類されることができる。
【数2】
【0024】
ここで、パラメータpは、0<p<1の条件を満足する。
【0025】
対応するZドメイン伝達関数H(Z)は、その後、以下の式によって与えられる。
【数3】
【0026】
ここで、Z=1(DC)に位置するゼロおよびZ=pに位置する極を有する。
【0027】
p値に対するさらなる決定が以下により詳細に記述される。デジタルフィルタ処理技術が使用される場合、本明細書に記述されるフィルタ処理ステップの各々に対してデータを平滑化するために、様々な種類の技術が用いられ得ることを当業者は認識するだろう。例えば、より高次の多項式フィッテイング、z伝達関数、パルス伝達関数、移動平均関数などが本技術分野で周知である。
【0028】
209で、第一の高域通過フィルタの出力は、一度に1パルスにわたって平均化される。この実施形態においては、パルスは、2回の心拍(HR)パルスのサンプリングパルス時間周波数にわたって、一度に1/2パルスだけシフトされる。パルスシフト技術は、以下の
図4を参照してより詳細に記述される。
【0029】
211で、209で出力された結果として生じる信号が、例えば、0.50のp値を有する第二の高域通過フィルタを通される。DC0のフロントエンド処理された信号は、213でDCデジタル信号フィルタ処理法200から出力される。様々な実施形態においては、DC信号で用いられるp=0値以外の全ては、被験者の個体数にわたるSNRを増加または最大化するために経験的に決定されることができる。1パルスにわたって平均化することと組み合わせられるとき、DCに対するp=0値は、βのみに依存し、実際の周波数には依存しない、伝達関数を生成するという非常に独特の特性を有する。
【0030】
二回の高域通過フィルタ処理ステップは、
図1Bを参照して上記で論じられたマイヤー波に起因する周波数を低減または排除するのに役立ち、呼吸数に関連する周波数を通過させるために選択的に選ばれる。高域通過フィルタの各々は、異なる種類の平均化関数または異なる値を有する同一種の平均化関数を使用し得る。
【0031】
図2Bにおいては、pT信号フィルタ処理法230が図示される。
図2Cにおいては、pM信号フィルタ処理法250が図示される。pTおよびpM信号の各々は、心拍数の一倍(1×HR)で本質的に決定される。すなわち、pTおよびpM信号のうちのただ一つの値は、各パルスから獲得されることができる、つまり、pTおよびpM信号において、より高い周波数の情報は、起こりえないという意味では、pTおよびpM信号は、本質的に1×HRである。
【0032】
図2Bおよび
図2Cを同時に参照すると、pT信号処理およびpM信号処理の各々は、それぞれ231、151で開始し、ここで、それぞれの信号は、選択された周波数のパルス時間周波数でサンプリングされる。一実施形態においては、周波数は、心拍数に等価である(F
s=1×HR)ように選択される。心拍数は、合成パルスオキシメータ信号から容易に決定され、心拍数の周波数(1×HR)でサンプリングされ得る。あるパルスから次のパルスへ所定の割合を超えて変化するスルーレートを有する信号を排除するために、信号は、その後、235でスルーレートフィルタを通される。例えば、パルス毎に±25%を超えて変化するパルスからの信号を低減するか、排除するために、あるパルスから次のパルスへの約±25%のスルーレートが、スルーレートフィルタに対して選択され得る。
【0033】
237で、信号は、第一の高域通過フィルタを通過する。一実施形態においては、第一の高域通過フィルタは、0.95のp値を有する。一実施形態においては、前述の動作の全てが1×HRで実行される。動作239で、信号はアップサンプリングされる。アップサンプリングは、βが0.5に近づくにつれて波形に生じるであろうアーチファクト(位相感度に起因する鼓動の影響)を低減する。増加したサンプリング周波数は、したがって、適切な位相情報を補足し、位相に起因して起こり得る問題を低減するか、または排除する。特定の例示的一実施形態においては、信号は、2×HRで、周波数の約2倍までアップサンプリングされる。アップサンプリングされた周波数は、その後、241で第二の高域通過フィルタに送られる。一実施形態においては、第二の高域通過フィルタは、0.50のp値を有する。
【0034】
pT0およびpM0のフロントエンド処理された信号は、それぞれ、243、263でのデジタル信号フィルタ処理法230、250からの出力である。
【0035】
DC
0、pT
0およびpM
0の3つのフロントエンド処理された信号に加えて、
図10Aを参照して以下に論じられる、その後の処理で用いられる第四の基本入力は、4ビートの平均心拍数<HR
4>である。4ビートの平均心拍数は、239、259で用いられるアップサンプリングされた2(HR)周波数から推定される。本明細書に提供された開示を読解し、理解すると、第四の基本入力は、同様に他の値になるように選択され得ることを当業者は認識するだろう。例えば、第四の基本入力は、心拍数の別の整数値となるように選択され得る。
【0036】
この点の後、全てのさらなる信号処理が、実時間ではなくパルス時間で実施される。パルス時間で全てのさらなる計算を実施することによって、より少数の帯域通過フィルタが、用いられることができる。なぜなら、合計の計算範囲は、パルス時間計算に依存することによって迅速に決定されるからである。関心のある信号帯域幅は、その後、パルス時間計算を用いることによって自動的に決定される。
【0037】
図2Aから
図2Cの各々における2つの高域通過フィルタの使用を当業者は認識した。二極高域通過フィルタを使用することは、マイヤー波および他の源によって引き起こされる低周波雑音を顕著に低減または排除するのに役立つ。
【0038】
図3をここで参照すると、固定フィルタアルゴリズム300が図示される。301で、pT
0処理された信号は、303でゼロ交差のために処理される。
図1Dを再度参照すると、周波数変調されたpT信号のみが周波数における任意の顕著な変動を有するだろうことを当業者は認識するだろう。したがって、固定フィルタアルゴリズム300は、pT信号のみ、結果として、同様にフロントエンド処理されたpT
0信号のみに適用可能である。なぜなら、各々は、ゼロ交差の変動する周波数を有するからである。
【0039】
図3を続けて参照すると、pT
0処理された信号は、例えば、信号のポジティブ(立上り)エッジおよびネガティブ(立下り)エッジの双方を考慮することによって、303でゼロ交差に対して、例えば、補間されたゼロ交差フィルタを用いて処理される。補間されたゼロ交差間の距離は周期を示し、結果として、周期に基づいて呼吸数を示す。
【0040】
305、307で、ポジティブおよびネガティブゼロ交差の補間が決定され、呼吸数の中央値がポジティブおよびネガティブエッジの各々に対して計算される。中央値の計算は、中央値フィルタの適用で考えられることができる。
【0041】
一実施形態においては、ポジティブゼロ交差に基づき、3回の呼吸から9回の呼吸を考えることから決定される呼吸数の中央値周期は、式(2)によって与えられる。
【数4】
【0042】
ネガティブゼロ交差に基づく呼吸数の中央値周期は、式(3)によって与えられる。
【数5】
【0043】
この実施形態においては、3回の呼吸の最小値は、被験者の呼吸パターンにおける外れ値を排除し、結果として被験者の呼吸における呼吸毎の変動によって引き起こされる雑音を低減することによって、決定された呼吸数の精度を向上するために用いられる。9回の呼吸の最大値は、ほとんどの被験者で被験者の実際の呼吸数と一致する呼吸数の矛盾のない中央値を提供することとして、経験的に決定された。さらなる実験的測定は、被験者の中には極めて一貫した脈拍数を有する人がいることを決定した。脈拍数は、3ミリ秒ほどの短さおよび60m秒ほどの長さで、2乗平均平方根(RMS)変動内で観察された。しかしながら、本明細書で記述される本発明の主題は、個体数全体に適用可能であることに基づいて確立された。
【0044】
式(2)および式(3)は、典型的には、わずかに異なる結果を生み出す。なぜなら、双方の位相は、わずかに異なり、デューティ周期が変化するからである。
【0045】
ポジティブゼロ交差間の呼吸時間に基づく、1分毎の平均呼吸BPM
Pは、式(4)によって与えられる。
【数6】
【0046】
類似の方法で、ポジティブゼロ交差間の呼吸時間に基づく、1分毎の平均呼吸BPM
Nは、式(5)によって与えられる。
【数7】
【0047】
1分毎の呼吸の平均数BPMは、その後、式(6)に従って、1分毎のポジティブ平均呼吸BPM
P、BPM
Nの単純平均として決定される。
【数8】
【0048】
上記に図示されるようにゼロ交差を処理して計算することによって概算の呼吸数を決定することによって、この実施形態に従う、被験者の呼吸数を最初に表示するための最初の時間は、4つのポジティブエッジおよび4つのネガティブエッジのみの後に生じる。その後、ほとんどの被験者で呼吸数を表示するための時間は、約15秒である。さらに、計算の必要条件は非常に限定される。例えば、限定された計算速度を有するプロセッサは、被験者の呼吸数の最初の概算を決定して表示するために、上記に図示された計算を容易に実施することができる。しかしながら、呼吸数の概算は、例えば、以下に適応フィルタ処理技術を参照して記述されるように、さらに複雑な方法からそれほど変更がなくても、なお正確である。
【0049】
図2Aについて上記で論じられたように、
図4は、二つのパルス長にわたって連続するDC平均が如何にして計算されるかを決定するための方法400を図示する。第一のパルス401および第二のパルス403は、それぞれ、第一のハーフパルス時間401A、403Aと、第二のハーフパルス時間401B、403Bとに時間で分割される。サンプル数Nの総計Sは、各ハーフパルスに対して図示され、一度に1/2パルスの分だけシフトされる。したがって、第一のパルス401の第一のハーフはサンプルの総数N
1Bを有し、サンプルの総数N
1Bは、第一のパルス全体のサンプルの総数N
1の1/2であり、以下の式として計算される。
【数9】
【0050】
同様に、第一のパルス401の第二のハーフはサンプルの総数N
1Bを有し、サンプルの総数N
1Bは、第一のパルス全体のサンプルの総数N
1の1/2であり、以下の式として計算される。
【数10】
【0051】
第二のパルス403に対して同様の計算が行われ、各和は、一度に1/2パルスの分だけシフトされる。他の分数量にわたって特許性のない1/2パルス部分ではないパルスの他の部分が決定され、計算されることができることを当業者は即座に認識するだろう。
【0052】
この情報から、あらかじめ定義されたパルス数にわたって、周期Tにおける各時間tに対して連続関数<F>として決定される連続DC平均は、以下の式で計算される。
【数11】
【0053】
サンプリングされた離散的値に対して、脈拍数の二倍で
図4に図示された1/2パルスインクリメント範囲405、407、409の各々に対する平均DC信号は、以下の式として各1/2パルスインクリメントに対して計算されることができる。
【数12】
【0054】
したがって、<DC>0は、第一のパルス全体にわたってサンプル数によって分割されるハーフパルスの総和の平均として計算され、<DC>1は、そのパルス範囲にわたるサンプル数によって分割される、第一のパルスの第二のハーフと第二のパルスの第一のハーフとのハーフパルスの総和の平均として計算され、<DC>2は、第二のパルス全体にわたるサンプル数によってハーフパルス総和の平均として計算される。
【0055】
結果として、心拍数の二倍で、PPGに対するDC
0の平均信号411が決定されることができる。
図2Aを参照して図示され、上述された高域通過フィルタ処理と組み合わせると、結果として生じる伝達関数は、実時間周波数に依存しない。結果として生じる伝達関数はβのみに依存する。したがって、実時間心拍数の任意の影響は排除され、全ての計算が純粋にパルス時間で決定される。
【0056】
図5Aおよび
図5Bをここで参照すると、本発明の主題の適応フィルタ処理構成要素が図示される。一実施形態においては、13個の帯域通過フィルタが使用される。一つの帯域通過フィルタは、0.00から0.60のβの各値に対して、0.05のステップサイズでインクリメントされる。0.60のβ値が選択される最大値である。なぜなら、さもないと、β=0.5を大きく超えるとエイリアシングが生じるからである。上述されたように、ナイキスト周波数を超える任意の周波数成分は、エイリアシングエラーに直面し得る。エイリアシングエラーは、以下の
図9Aおよび
図9Bを参照して図示され、論じられる。
【0057】
図5Bのグラフ530は、29タップ(例えば、±14+ゼロポイントでのサンプル)の各々に対して、β=0で開始する、13個の線形位相帯域通過フィルタの各々からの出力に対して正規化された強度のプロットを図示する。帯域通過フィルタの各々は、適応フィルタに対して絶えず実行し、与えられた信号に対してβの実際の値の概算見積もりを提供する。適切な値のβを選択することによって、以下により詳細に記述されるように、一つ以上の帯域通過フィルタから、正確な適応フィルタが選択されることができる。結果として、帯域通過フィルタは、周波数ドメインにおいてβの適切な値を決定するのに役立つ。最大の信号強度が単一の帯域通過フィルタに対してβの与えられた値について見つけられると、選択された帯域通過フィルタからのスペクトル出力は、PPG波形から現実のゼロ交差をその後決定するために、帯域幅を広げるために、(β
―0.05およびβ
+0.05における)二つの最も近接した帯域通過フィルタの出力に加算される。当業者によって理解されるように、スペクトル出力の追加は、そのフィルタが“線形位相”であるために、可能な作業である。結果として、全ての周波数は、13個の帯域通過フィルタの各々にわたって同一の位相遅れを見出す。
【0058】
より少数またはより多数の帯域通過フィルタが信号の中心周波数を見つけるために使用され得ることを当業者は認識するだろう。より少数の帯域通過フィルタは、精度の面で多少の犠牲を払えば、計算速度を増加させる。より少数の帯域通過フィルタは、また、
図5Aにおける効果を有するだろう。なぜなら、隣接する帯域通過フィルタと各帯域通過フィルタの重複が減らされるからである。しかしながら、実際の臨床試験に基づいて、より多数の帯域通過フィルタは、計算時間を増加させるが、精度において付随する向上を必ずしも結果として生じるものではない。PPGから導出された呼吸数の計算値の臨床比較の結果は、以下の
図7Aから
図9について図示され、論じられる。
【0059】
図5を再度参照すると、グラフ500は、13個の帯域通過フィルタの各々に対して、βの関数として信号値H(β)の強度のプロットを図示する。Hの値は、0.05のインクリメントでβ=0.00から0.60に対する中心周波数の様々な値を図示する。Hは、βと帯域通過フィルタにおけるタップ数nの双方の関数として決定される(脈拍数でサンプリングされるとき呼吸周波数としてβが定義されることを思い出されたい)。H[n,β]は、以下の式から決定されることができる。
【数13】
【0060】
コサイン2乗窓関数は、任意またはほとんどのスペクトル漏れを減少または排除するために、式(7)によって利用されることを当業者は認識するだろう。
【0061】
この実施形態においては、各帯域通過フィルタは、2型(奇数/反対称性)線形位相フィルタである。上述されたように、各帯域通過フィルタは、心拍数の二倍で29タップを有する。つまり、14.5パルスにわたって伸び、全ての周波数で同一の位相遅延を有する。線形位相フィルタである、またはほぼ線形位相フィルタであることにより、帯域通過フィルタは、同一の位相遅延を各々有するため、帯域通過フィルタの各々からの出力は、直接加算されることができる。直接出力を加算することが可能であることは、以下により詳細に論じられるように、かなりの計算時間を節約することができる。
【0062】
図6Aから
図6Cは、適応フィルタアルゴリズムを用いて呼吸数を決定するためのさらなる動作を図示する。
図6Aに図示されるように、3つの基本信号DC
0、pT
0およびpM
0の各々は、13個の帯域通過フィルタBP
iの各々に個別に入力され、ここで、この実施形態においては、I=13である(3つの基本信号DC
0、pT
0およびpM
0は、
図2Aから
図2Cを参照して上述されたことを思い出されたい)。
【0063】
図Bの方法600をここで参照すると、3つの基本信号の各々に対して、601で、各フィルタBP
iから出力される平均化されたRMS振幅A
iが計算される。A
iの各計算値に対する和は、その後、603で、さらなる処理のために1.0に正規化される。605で、A
i値の各々は、3つの基本信号型に従って均等化される。その後、二次補間が実施され、3つの基本信号型の各々に対してβ
MAXを計算する。結果として、方法600は、3つの基本信号型の各々に対して、βのどの値でピーク応答が存在するかを決定する。3つの基本信号型の各々に対して、β
MAXに対して決定され、計算された値は、その後、さらなる処理のために、融合スペクトルに組み合わせられる。
【0064】
図6Cの方法630は、融合スペクトルに対するβ
MAX値を計算する。631で、A
iの均等化された値は、3つの基本信号型の各々に対して均等化される。融合振幅値は、633で最大値“1”に対して正規化される。β
MAX,AVGの計算値は、635で、融合スペクトルからの二次補間を用いて計算される。
【0065】
図6Bおよび
図6Cの方法600、630から、以下の
図10Aおよび
図10Bを参照して図示され、記述されるように、4つの新しい入力がさらなる処理のために生成される。生成される4つの新しい入力は、3つの基本信号型β
DC、β
pT、β
pMに基づいたβ
MAXの定量である。第四の入力β
MAX,AVGは、3つの基本信号型β
DC、β
pT、β
pMからのβ
MAXの値とともに、平均化されたスペクトルに対して、帯域通過フィルタによって測定された最大RMS振幅に基づくβのスペクトル概算である。
【0066】
方法を適用する一実施例として、3つの基本信号(pT、pMおよびDC)の各々に対して、また、融合スペクトルに対しても均等化スペクトルが存在し、その各々は、13個の帯域通過フィルタで構成される。それらの4つのスペクトルの各々に対して、βMAXは、以下のように、ハーフパルス毎に計算される。
・最大のRMS振幅を有する帯域通過フィルタを見つける。例えば、β=0.20で帯域通過フィルタが最大RMS振幅を有する場合、βの値は0.2に近く、これは、0.05のステップで量子化された一次概算である。
・最大RMS振幅および二つの最近接帯域通過フィルタ(この実施例においては、帯域通過フィルタおよび二つの最近接フィルタは、0.15、0.20および0.25である)のRMS振幅も利用することで、RMS振幅の二次補間は、ピークRMS振幅の実際の位置を見積もるために実施され、そこから、その後、βの精緻化された概算が計算される(例えば、この実施例においてはβMAX=0.22であり、これは、二次概算である。)
【0067】
本発明の主題の検証のために、
図3の固定フィルタ処理アルゴリズムおよび
図6Aから
図6Cの適応フィルタ処理アルゴリズムの最初のステップの双方から、計算されたβの値は、試験下で被験者の実際の呼吸数を正確に表しているか否かの判定が行われた。
図7Aを参照すると、時間の関数として、1分毎の呼吸(BPM)を図示する呼吸数グラフ700が図示される。最初の20分間703の間、線701は、被験者の通常の呼吸数をBPMで示す。しかしながら、最後の期間705の間、20分から45分まで、被験者は、1分毎に5回から40回の音を生成するために変化するメトロームと一致するように呼吸することを求められた。最後の期間705の間の被験者の呼吸数は、線707によって図示される。
【0068】
図7Bの時間依存スペクトルグラフ730は、被験者からの吐出し中の二酸化炭素(CO
2)値のカプノグラフ測定から得られるβの真の値の一例を図示する。時間依存スペクトルグラフ730のβ値は、時間の関数として13個の離散的な帯域通過フィルタの振幅の各々を図示し、帯域通過フィルタの振幅の二次補間によって決定されたものである。グラフ730の縦軸は、13個の帯域通過フィルタの各々からの出力を示す(0.05で中間メモリを有する0.00から0.60まで)。各帯域通過フィルタのグレイスケール振幅は、グラフ730の右側の“Amp”スケールによって示される。より軽い値の振幅は、時間に対して、呼吸数に対するβの中心ピーク値を示す。グラフは連続的なプロットを示すように見なされるが、時間間隔毎に各帯域通過フィルタに対して単一の垂直線のみが実際には存在する。結果として、グラフ700、730は、本明細書に記述されたアルゴリズムをトレーニングするために用いられることができる。したがって、高域通過フィルタ処理は、マイヤー波を低減するが、p値があまりにも低く設定される場合、信号は、また低減される。結果として、p値は、SNRを最大化するように選択される。
【0069】
図8Aから
図8Dは、一人の被験者に対する基本信号の各々に対するスペクトルの個別の例を図示し、βの真の値に対してプロットされた
図6Bおよび
図6Cを参照して論じられたような3つの信号の平均を加えたものである。例えば、
図8Aは、横軸上に示されたβの真の値に対して、回帰直線801によって比較された縦軸上の13個の帯域通過フィルタ値0.00から0.60までの各々に対するDC基本信号の強度グラフを図示する。
図8Bは、横軸上のβの真の値に対して回帰直線803によって比較された、縦軸上の13個の帯域通過フィルタ値の各々に対するpT基本信号の強度グラフを図示する。
図8Cは、横軸上のβの真の値に対して回帰直線805によって比較された縦軸上の13個の帯域通過フィルタ値の各々に対するpM基本信号の強度グラフを図示する。最後に、
図8Dは、横軸上のβの真の値に対して回帰直線807によって比較された、縦軸上の13個の帯域通過フィルタ値の各々に対する3つの基本信号スペクトルの各々の平均スペクトルの強度グラフを図示する。
【0070】
当業者は、縦軸上の約0.05から0.10で、回帰直線801、803、805、807からの幾らかの逸脱を検出するだろう。これらの逸脱は、
図1Bを参照して上記で論じられたマイヤー波によって引き起こされる。マイヤー波の強度レベルは、被験者毎に猛烈に変化することがある。結果として、マイヤー波からの任意の影響を低減または排除することは、
図2Aから
図2Cを参照して上述されたように、二極高域通過フィルタを適用する理由のうちの少なくとも一つである。ある被験者から別の被験者へのマイヤー波における強度値の変動(例えば、被験者バイアス)は、低減または排除されるだろう。
【0071】
図9Aおよび
図9Bは、
図8Aから
図8Cを参照して図示された3つの基本スペクトルを平均化する前の、スペクトル均等化の影響を図示する。
図9Aは、被験者の平均スペクトルに対して、真のβと帯域通過フィルタ出力を比較する回帰直線901を図示する。
図9Bは、被験者の平均均等化スペクトルに対して、真のβと帯域通過フィルタ出力を比較する回帰直線903を図示する。したがって、
図9Aおよび
図9Bの右側上の強度スケールを参照すると、β=0.4における振幅は、
図9Bの被験者の平均均等化スペクトルにおいて、非常に高い強度値である。したがって、平均スペクトルを均等化することは、真のβに対して、計算されたβの精度をさらに向上させる。
【0072】
当業者は、また、約0.5のβ値のスペクトルにおいて“t字形”の広がりに気づくだろう。広がりは、本明細書で記述されるようにエイリアシングの影響に起因する。しかしながら、ほとんどのヒト被験者に関して本明細書にまた記述されるように、典型的な呼吸数は、心拍数の1/2よりもかなり小さい。したがって、エイリアシングの影響は、もしあるとしても、与えられた被験者に対して、βの値を計算する上で滅多に影響を及ぼさない。
【0073】
図10Aは、二次表面応答関数1003を展開するために、多数の入力1001を用いることに基づいて、適応フィルタアルゴリズムによって決定されるようなβの精度を増加させる上でのさらなる詳細を提供する。二次表面応答関数1003の出力は、その後、1005で、βの伝達関数概算β
XFを決定するために用いられる。この実施形態においては、全ての入力および出力は、心拍数の二倍に等しい周波数F
sでパルス時間でサンプリングされた時間の関数である。
【0074】
入力1001は、
図6Cを参照して図示され、記述されたような、融合スペクトルから13個の帯域通過フィルタの出力の“M”値(M
0.00からM
0.06)の正規化された融合スペクトル振幅を含む。βの4つの異なる概算(β
DC、β
pT、β
pMおよびβ
MAX,AVG)および4ビート平均心拍数<HR
4>。
【0075】
入力1001は、二次表面応答関数1003に対する入力である。一実施形態においては、45個の条件(直前に記述された18個の入力要素に基づく)が、二次表面応答関数1003の出力を計算するために用いられ、その出力は、βの伝達関数概算βXF、1005である。決定された伝達関数概算βXFは、適応フィルタを選択するための信号の中央値βを示す。
【0076】
二次表面応答関数1003を再度参照すると、18個の入力値に基づいて、190個の要素が計算されることができることを当業者は認識するだろう。例えば、2つの要素の入力i
1およびi
2のみを考えると、表面応答関数は、一次関数i
1+i
2を含むだろう。二次応答関数は、i
1+i
2、i
1×i
2、i
1
2、i
2
2を含むだろう。このように、応答表面法(RSM)は、一般的に、多数の入力変数と、一つ以上の結果の応答変数との間の関係を考える。RSMは、最適な応答関数を概算するための実験計画で用いられることができる。より多数またはより少数の要素が、βの所望の精度に依存して使用され得ることを当業者はさらに認識するだろう。動的なβの概算と波形の実施例は、以下の
図11Aから
図11Cを参照して記述され、図示される。
【0077】
図10Bにおいては、βのスペクトルおよび時間ドメイン概算は、βの実際の値の解像度の非線形補正を生成するために組み合わせられる。
図11Aから
図11Cを同時に参照すると、βの伝達関数概算β
XF(1005)は、1009で、βの概算値β
ESTを決定するために最初に用いられる。1011で、β
ESTの現在の値は、以下の
図11Aから
図11Cで記述され、図示されるように、選択された帯域通過フィルタ出力と組み合わせられる。全ての3つの基本信号DC、pTおよびpMからの波形のゼロ交差は、波形に基づいたさらなるβ値、β
WFを決定するために用いられる。波形に基づいた新しい概算β
WFは、その後、1013でフィードバックされる。新しいβ
EST値は、βの元の伝達関数概算β
XFと、βの波形概算値β
WFとの単純平均として、1007で計算される。したがって、新しいβの概算は、以下の式として決定される。
【数14】
【0078】
特定の例示的一実施形態においては、波形に基づいた新しい概算β
WFが、その後1013で(例えば、第一の概算β
XFの約15パルス後)フィートバックされると、“ループ”がやがて継続して実行する。1015で、信号の融合が生じ、ここで、予測される呼吸数pRRが、
図11Aから
図11Cを参照して記述され、図示されるように、3つの信号DC、pTおよびpMの各々に対して決定されるように、呼吸数の中央値として決定される。
【0079】
図11Aから
図11Cは、パルス時間で動的βの概算(ebeta)と波形の実施例を図示する。
図11Aは、DC波形に基づいて変化するβの概算1103とDC波形1101のプロットを図示する。
図11Bは、pT波形に基づいて変化するβの概算1107とpT波形1105のプロットを図示する。また、
図11Cは、DC波形に基づいて変化するβの概算1111とpM波形1109のプロットを図示する。
【0080】
一実施形態においては、本明細書に記述された本発明の主題の様々な態様に従って、βの概算が決定されるとき、二つの最近接とともに、概算に最も近い帯域通過フィルタ(すなわち、合計3つの帯域通過フィルタ)が、与えられた信号型に対する波形を処理するのに用いられる。ゼロ交差(ポジティブエッジゼロ交差およびネガティブエッジゼロ交差の双方を考える)は、その後、被験者の呼吸数を決定するために用いられ得る。3つの基本信号を考えると、実際のゼロ交差は、βの実際の値のさらなる概算を今なお提供することができる。組み合わせられたβの概算(伝達関数+フィードバック)は、単独で用いられる値のいずれよりも性能が良好である。
図10Bを参照して上述されたように、ゼロ交差から決定されたこのβの概算は、βの向上した(より正確な)概算を提供するために、1013(
図10B)でフィートバックされ得る。したがって、アクティブなフィードバックループ1013は、βの実際の値の連続的に更新する概算を提供する。3つの波形の実際のβの値の継続的に更新する概算に基づく、3つの信号の融合は、全体の信号対雑音比を最大化することによって、最良の適応フィルタの選択を可能とし、それによって、より高レベルの精度を提供する。
【0081】
βの正確な値およびその結果としての呼吸数が、迅速かつ高精度に決定されることができることは、臨床試験が示してきた。例えば、
図3を参照して記述され、図示された固定(非適応)フィルタアルゴリズムを用いて、1分毎の呼吸(BPM)での呼吸数の正確な決定は、約15秒で高精度に決定されることできる。特定の被験者のために必要とされる(例えば、より高精度なBPMの値のための臨床的必要条件に起因するか、または本明細書に記述されたように被験者が幾らかの“雑音”要因を有し得る場合)とき、BPMのさらにより正確な概算は、本明細書に記述された適応フィルタ処理法によって決定されることができる。より高精度なレベルのBPMのために、本明細書で記述される適応フィルタ処理法は、約45秒で決定されることができる。さらに、適応フィルタ処理アルゴリズムの全てのステップは、与えられた被験者に対して必要とされる精度レベルによっては、必ずしも用いられる必要がないことを当業者は認識するだろう。
【0082】
[例示的マシンアーキテクチャおよびマシン可読記憶媒体]
図12をここで参照すると、本明細書で論じられる方法のうちの任意の一つ以上をマシンに実施させるための命令が実行され得るコンピュータシステム1200の一実施例におけるマシンに例示的一実施形態が拡張する。代替的な例示的実施形態においては、マシンは、スタンドアロンデバイスとして動作するか、または他のマシンに接続され(例えば、ネットワーク接続され)てもよい。ネットワーク化された展開においては、マシンは、サーバ・クライアントネットワーク環境におけるサーバもしくはクライアントマシン、または、ピア・ツー・ピア(もしくは分散)ネットワーク環境におけるピアマシンとしての性能で動作し得る。マシンは、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、ウェブ機器、ネットワークルータ、スイッチもしくはブリッジ、またはそのマシンによって行われる動作を明示する命令(シーケンシャルもしくはその他)を実行することが可能な任意のマシンであり得る。さらに、単一のマシンのみが図示されているが、用語“マシン”は、また、本明細書で論じられた方法のうちの任意の一つ以上を実施するために、一組(もしくは複数組)の命令を個々にもしくは協働して実行するマシンの任意の集合を含むものとして解釈されるべきである。
【0083】
コンピュータシステム1200は、プロセッサ1201(例えば、ハードウェアベースのマイクロプロセッサもしくは埋込型ハードウェアベースのプロセッサ、ハードウェアベースの中央処理装置(CPU)、ハードウェアベースのグラフィクス処理ユニット(GPU)またはその様々な組み合わせ)、メインメモリ1203ならびに静的メモリ1205を含み、これらは、バス1207を介して相互に通信する。コンピュータシステム1200は、ビデオディスプレイユニット1209(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)もしくはブラウン管(CRT))をさらに含み得る。コンピュータシステム1200は、また、英数字入力デバイス1211(例えば、キーボード)、ユーザインタフェース(UI)ナビゲーションデバイス1213(例えば、マウス)、ディスクドライブユニット1215、信号生成デバイス1217(例えば、スピーカ)およびネットワークインタフェースデバイス1219を含む。
【0084】
[マシン可読媒体]
ディスクドライブユニット1215は、非一時的マシン可読媒体1221を含み、これには、本明細書に記述された方法または機能のうちの任意の一つ以上によって具現化するか、または用いられる一つ以上の組の命令およびデータ構造(例えば、ソフトウェア1223)が格納される。ソフトウェア1223は、また、コンピュータシステム1200によるその実行中に、メインメモリ1203内、またはプロセッサ1201内に、完全もしくは少なくとも部分的に常駐し得る。メインメモリ1203およびプロセッサ1201は、また、マシン可読媒体を構成する。
【0085】
非一時的マシン可読媒体1221は、単一の媒体であるように例示的一実施形態においては図示されているが、用語“マシン可読媒体”は、一つ以上の命令を格納する単一媒体または複数の媒体(例えば、集中型もしくは分散型データベース、または関連付けられたキャッシュおよびサーバ)を含み得る。用語“非一時的マシン可読媒体”は、また、マシンによる実行のために命令を格納し、エンコードし、もしくは搬送することが可能であり、本発明の方法のうちの任意の一つ以上をマシンに実施させ、またはこのような命令によって用いられるか、もしくはこのような命令に関連付けられたデータ構造を格納し、エンコードし、もしくは搬送することが可能な任意の有形媒体を含むものとして解釈されるべきである。用語“非一時的マシン可読媒体”は、したがって、ソリッドステートメモリならびに光学および磁気媒体を含むが、そのいずれにも限定はされないものとして解釈されるべきである。マシン可読媒体の具体的な実施例は、例示として半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROMおよびフラッシュメモリデバイス)、内部ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む不揮発性メモリを含む。
【0086】
[伝送媒体]
ソフトウェア1223は、多数の既知の伝送プロトコル(例えば、HTTP)のうちの任意のものを使用するネットワークインタフェースデバイス1219を介して、伝送媒体を使用して通信ネットワーク1225上でさらに伝送、または受信され得る。通信ネットワークの実施例は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、携帯電話ネットワーク、単純従来型電話(POTS)ネットワーク、無線データネットワーク(例えば、WiFiおよびWiMaxネットワーク)を含む。用語“伝送媒体”は、マシンによる実行のために命令を格納し、エンコードし、または搬送することが可能な任意の無形媒体を含むものとして解釈されるべきであり、このようなソフトウェアの通信を容易にするためにデジタルもしくはアナログ通信信号または他の無形媒体を含む。
【0087】
本明細書に提供される開示された本発明の主題には、特定の主題のセンサ校正システムの様々な実施形態を記述する様々なシステムおよび方法の図面が含まれる。したがって、上記の記述は、開示された本発明の主題を具現化する例示的実施例、デバイス、システムおよび方法を含む。記述においては、説明する目的で、本発明の主題の様々な実施形態の理解を提供するために、多数の特定の詳細事項が説明された。しかしながら、本発明の主題の様々な実施形態は、これらの特定の詳細事項なしでも実施され得ることが当業者には明らかであろう。さらに、既知の構造、材料および技術は、例示された様々な実施形態を不明瞭にしないように、詳細には図示されていない。例えば、本明細書に記述されたフィルタ処理アルゴリズムの各々は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはその様々な組み合わせで実現されることができることを当業者は認識するだろう。また、様々なフィルタは、デジタルフィルタに加えアナログフィルタ、または二つの組み合わせとすることができる。
【0088】
本開示に従い、コンポーネント、プロセスステップおよび/またはデータ構造は、様々な種類のオペレーティングシステム、プログラミング言語、コンピューティングプラットフォーム、コンピュータプログラムおよび/または汎用マシンを用いて実装されてもよい。さらに、ハードワイヤードデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)などといった、汎用ではない、または本質的なデバイスも、本明細書に開示された概念の範囲から逸脱することなく用いられてもよいことを当業者は認識するだろう。例えば、本明細書に記述されたフィルタのうちの一つ以上は、FPGAデバイスで実現されることができることを当業者は認識するだろう。また、本明細書に記述されるように、様々な実施形態は、メモリデバイスなどのコンピュータ可読媒体上に格納された一組のコンピュータ命令として明白に具現化され得る。
【0089】
本明細書で用いられるように、用語“または(or)”は、包括的、または排他的意味で解釈され得る。さらに、本明細書に論じられた様々な例示的実施形態は、βの概算を決定するための具体的な方法に焦点を当てているが、提供された開示を読解および理解すると当業者によって他の実施形態が理解されるだろう。さらに、本明細書に提供された開示の読解および理解によって、本明細書に提供された技術および実施例の様々な組み合わせは、様々な組み合わせにおいて全て適用され得ることを当業者は容易に理解するだろう。
【0090】
様々な実施形態は個別に論じられたが、これらの個別の実施形態は、独立した技術または設計として考えられることが意図されていない。上記に示されたように、様々な部分の各々は、相互に関連付けられてもよく、各々は、個別に、または、本明細書に論じられた他の特定のセンサ校正システム実施形態と組み合わせて用いられ得る。
【0091】
結果として、本明細書に提供された開示の読解および理解によって、当業者には明らかであるように、多くの改変および変形が行われることができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法およびデバイスは、前述から当業者に明らかであろう。幾つかの実施形態のうちの一部分および特徴は、他の実施形態に含まれてもよいし、他の実施形態のものに対して置換されてもよい。このような改変および変形は、添付された「特許請求の範囲」内にあることが意図される。したがって、本開示は、添付された「特許請求の範囲」の用語によってのみ限定され、その「特許請求の範囲」の均等物の全範囲にも権利が付与される。本明細書で用いられた用語は、特定の実施形態を記述する目的のみのためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0092】
「要約書」は、技術的開示の特性を読者が迅速に確認することができるように提供される。「要約書」は、「特許請求の範囲」を解釈または限定するために用いられないことを理解した上で提出される。さらに、前述の「発明を実施するための形態」においては、本開示を効率化する目的で単一の実施形態において様々な特徴がグループ化され得ることが理解され得る。この開示方法は、「特許請求の範囲」を限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、以下の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」に組み入れられ、各々の請求項は、個別の実施形態として、それ自体独立している。