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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】火災報知設備及び防災設備
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20230906BHJP
   G08B 31/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B31/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018227168
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020087389
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2018215860
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0061783(US,A1)
【文献】特開2003-067861(JP,A)
【文献】特開2012-043373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G08B17/00-31/00
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域に火災を検知する複数の火災検知器設置し、前記火災検知器を受信盤接続して火災を監視する火災報知設備であって
前記火災検知器の設置台数前記監視領域における非火災報の発生履歴により設定された前記火災検知器の故障率に基づき、前記火災検知器の稼働時間に応じた非火災報発生台数を予測する予測手段と、
前記予測手段で予測した前記非火災報発生台数に基づいた報知を行う報知手段と、
を備えたことを特徴とする火災報知設備
【請求項2】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記予測手段は、
非火災報発生割合を、前記火災検知器所定の非火災報発生台数を所定の非火災報発生件数で割った値として求め、
前記火災検知器の故障率を、前記監視領域における過去の非火災報の平均発生間隔の逆数と前記非火災報発生割合を掛け合わせた値を過去の実績における前記火災検知器の設置台数で割った値として求め、
前記非火災報発生台数を、前記火災検知器の設置台数、前記火災検知器の故障率、及び前記火災検知器の稼働時間を掛け合わせた値として予測することを特徴とする火災報知設備
【請求項3】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記予測手段は、
所定時期ごとの前記火災検知器の設置台数を加算した累積設置台数を管理しており、
前記累積設置台数に含まれる所定時期ごとの設置台数に対応した非火災報発生台数の総和を、前記累積設置台数の非火災報発生台数として予測することを特徴とする火災報知設備
【請求項4】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記報知手段は、前記予測手段で予測した前記非火災報発生台数に基づいて、所定の非火災報発生のリスクが高まった旨を表示して前記火災検知器の点検又は交換を促すことを特徴とする火災報知設備
【請求項5】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記火災検知器は固有のアドレスが設定され、
前記受信盤は、前記アドレスを指定して前記火災検知器との間で信号を送受信することを特徴とする火災報知設備。

【請求項6】
監視領域に所定の異常を検知する複数の検知器を設置し、前記検知器を受信盤接続して前記異常を監視する防災設備であって
前記検知器の設置台数、過去の実績により設定された前記検知器の故障率、及び前記過去の実績により設定された前記検知器の所定の誤報発生割合に基づき、前記検知器の稼働時間に応じた誤報発生台数を予測する予測手段と、
前記予測手段で予測した前記誤報発生台数に基づき報知を行う報知手段と、
を備え、
前記誤報発生割合を、前記検知器の所定の誤報発生台数を所定の誤報発生件数で割った値として求め、
前記検知器の故障率を、前記監視領域における過去の誤報の平均発生間隔の逆数と前記誤報発生割合を掛け合わせた値を過去の実績における前記検知器の設置台数で割った値として求め、
前記誤報発生台数を、前記検知器の設置台数、前記検知器の故障率、及び前記検知器の稼働時間を掛け合わせた値として予測することを特徴とする防災設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設置した火災検知器を防災受信盤に接続してトンネル内の火災を監視する火災報知設備及び監視領域における異常を検知器により監視する防災設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。このような非常用施設は、トンネル長手方向に所定間隔で設置された火災検知器が防災受信盤から引き出された信号線に接続され、トンネル内で発生する火災を監視している。
【0003】
火災検知器は左右の両方向に検知エリアを持ち、透光性窓を介してトンネル内で発生する火災炎からの放射線、例えば赤外線を監視しており、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器との検知エリアが相互補完的に重なるように、例えば、25m間隔、或いは50m間隔で連続的に配置されている。
【0004】
車両事故等に伴いトンネル内で火災が発生した場合、火災検知器からの火災検知信号を受信して防災受信盤は火災警報を出力すると共に、トンネル進入口に設置された電光掲示板等により侵入禁止警報を行い、トンネル内に走行中の車両を進入させないようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-147373号公報
【文献】特開2016-128796号公報
【文献】特開2002-246962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような火災検知器により火災を監視している火災報知設備にあっては、頻発する火災検知器の非火災報によるトンネル侵入禁止警報が問題となっている。このうち非火災報の原因が判明した場合には、非火災報の原因を解消する修理等の対応をとることで解決可能であるが、調査を行っても対応困難な非火災報が存在しており、稼働時間が長くなるほど対応困難な非火災報が発生しやすくなる傾向は見られるが、対応困難な非火災報の発生を予測することが困難であり、非火災報による侵入禁止警報の問題が依然として残されている。
【0007】
また、監視領域の火災を火災感知器により監視する一般的な防災設備においても、トンネル非常用設備における対応困難な非火災報と同様に、対応困難な非火災報による誤報で不要な混乱を招くという問題が生じており、その解決が課題として残されている。
【0008】
本発明は、対応困難な非火災報によるトンネル侵入禁止警報を抑制防止する火災報知設備及び対応困難な誤報による警報を抑制防止する防災設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
火災報知設備
本発明は、監視領域に火災を検知する複数の火災検知器設置し、火災検知器を受信盤接続して火災を監視する火災報知設備であって
火災検知器の設置台数監視領域における非火災報の発生履歴により設定された火災検知器の故障率基づき、火災検知器の稼働時間に応じた非火災報発生台数を予測する予測手段と、
予測手段で予測した非火災報発生台数に基づいた報知を行う報知手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
(故障率、非火災報発生割合、非火災報発生台数)
予測手段は、
非火災報発生割合を、火災検知器所定の非火災報発生台数を所定の非火災報発生件数で割った値として求め、
火災検知器の故障率を、監視領域における過去の非火災報の平均発生間隔の逆数と非火災報発生割合を掛け合わせた値を過去の実績における火災検知器の設置台数で割った値として求め、
非火災報発生台数を、火災検知器の設置台数、火災検知器の故障率、及び火災検知器の稼働時間を掛け合わせた値として予測する。
【0011】
(累積設置台数の非火災報発生予測)
予測手段は、
所定時期ごとに増加する火災検知器の設置台数を加算した累積設置台数を管理しており、
累積設置台数に含まれる所定時期ごとの設置台数に対応した非火災報発生台数の総和を、累積設置台数の非火災報発生台数として予測する。
【0012】
(非火災報発生リスクの表示)
報知手段は、予測手段で予測した非火災報発生台数に基づいて、所定の非火災報発生のリスクが高まった旨を表示して火災検知器の点検又は交換を促す。
【0013】
(R型設備)
監視領域に設置された火災検知器は固有のアドレスが設定され
受信盤はアドレスを指定して火災検知器との間で信号を送受信する。
【0014】
(防災設備)
本発明の別の形態にあっては、監視領域に所定の異常を検知する複数の検知器を設置し、検知器を受信盤接続して異常を監視する防災設備であって
検知器の設置台数、過去の実績により設定された検知器の故障率、及び過去の実績により設定された検知器の誤報発生割合に基づき、検知器の稼働時間に応じた誤報発生台数を予測する予測手段と、
予測手段で予測した誤報発生台数に基づき報知を行う報知手段と、
を備え、
誤報発生割合を、検知器の所定の誤報発生台数を所定の誤報発生件数で割った値として求め、
検知器の故障率を、監視領域における過去の誤報の平均発生間隔の逆数と誤報発生割合を掛け合わせた値を過去の実績における検知器の設置台数で割った値として求め、
誤報発生台数を、検知器の設置台数、検知器の故障率、及び検知器の稼働時間を掛け合わせた値として予測することを特徴とする。

【発明の効果】
【0015】
(基本的な効果)
本発明は、トンネル長手方向に火災を検知する火災検知器を所定間隔で設置し、火災検知器を受信盤からの信号回線に接続して火災を監視するトンネル非常用設備に於いて、火災検知器の設置台数、過去の実績により設定された火災検知器の故障率、に基づき、火災検知器の稼働時間に応じた非火災報発生台数を予測する予測手段と、予測手段で予測した非火災報発生台数に基づき報知を行う報知手段とが設けられたため、過去の実績に基づき火災検知器の稼働時間に対する所定の、例えば対応困難な非火災報を発生する非火災報発生台数が定数的に予測され、非火災報発生台数の予測結果に基づき必要とする対処が可能となり、非火災報の発生リスクを低減し、非火災報発生時のトンネル進入禁止警報を防止できる。
【0016】
また、非火災報発生が予測できるため、トンネル非常用設備の維持管理が容易にでき、火災検知器の交換時期も予測できるため、火災検知器の交換を含む設備の維持に係る計画を適切に立案して実行することができ、更に、火災検知器の保証期間を伸ばすことができる。
【0017】
また、非火災報発生の予測は、ワイブル曲線や複雑な計算に基づく信頼性工学計算を行わなくても良い簡易な故障予測モデルであるため、高い実用性が得られる。
【0018】
(故障率、非火災報発生割合、非火災報発生台数の効果)
また、トンネルの故障率として過去のトンネルにおける非火災報の平均発生間隔の逆数として求め、過去の実績により設定された火災検知器の所定の非火災報発生割合として、火災検知器の所定の非火災報発生台数を所定の非火災報発生件数で割った値として求め、火災検知器の故障率を、トンネルの故障率と非火災報発生割合を掛け合わせた値を過去の実績における前記火災検知器の台数で割った値として求め、非火災報発生台数を、設置台数、火災検知器の故障率、及び稼働時間を掛け合わせた値として予測するようにしたため、過去の実績として過去のトンネルにおける非火災報の平均発生間隔、所定の非火災報発生台数及び所定の非火災報発生件数を取得することで、火災検知器の故障率を求め、火災検知器の故障率、設置台数及び稼働時間を掛け合わせるといった簡単な計算により火災検知器の所定の非火災報発生台数を適確に予測して対処できる。
【0019】
例えば、過去の実績からトンネルに設置したN台の火災検知器がY1、Y2,・・・Ynの年間隔でn回故障したとすると、トンネルの平均故障間隔MTBFは、
MTBF=(Y1+Y2+・・・+Yn)/n
で求まり、トンネルの故障率λ’は、
λ’=1/MTBF
で求まる。
【0020】
また、火災検知器の非火災報発生割合Pは、
P=(非火災報発生台数Np)/(非火災報発生件数K)
として求まる。
火災検知器の故障率λは、
λ=(トンネルの故障率λ’・非火災報発生割合P)/
過去の実績における前記火災検知器の台数N’
として求まる。
【0021】
その結果、稼働時間をtとすると、火災検知器の所定の非火災報発生台数xは、
x=λ・N・t
として簡単に求めることができる。
【0022】
(累積設置台数の非火災報発生予測による効果)
また、予測手段は、年単位に増加する火災検知器の設置台数を加算した累積設置台数を管理しており、累積設置台数に含まれる年別の設置台数に対応した非火災報発生台数の総和を、累積設置台数の非火災報発生台数として予測する。
【0023】
火災検知器が設置されたトンネルを含む自動車専用道路は、全線開通までに年数がかかり、その間は一部区間が完成して利用を開始しており、その結果、火災検知器の設置台数は例えば年単位に増加することから、予測手段は、年別の累積設置台数を管理し、年別の累積設置台数に対する非火災報発生台数を予測する必要がある。
【0024】
年別の累積設置台数に対する非火災報発生台数の予測は、累積設置台数に含まれる年別の設置台数の各々につき、異なる稼働年数(稼働時間)により非火災報発生台数を求め、これらの総和を累積設置台数に対する非火災報発生台数として予測する。
【0025】
例えば、設置台数が1年目に300台、2年目に600台、3年目に900台と年毎に300台ずつ増加している場合、例えば、3年目の累積設置台数900台に対する非火災報発生台数は、稼働期間3年の300台、稼働期間2年の300台、及び、稼働期間1年の300台の各々につき非火災報発生台数を求め、これらの総和を累積設置台数900台に対する非火災報発生台数として予測する。
【0026】
(非火災報発生リスクの表示の効果)
また、報知手段は、予測手段で予測した非火災報発生台数に基づいて、所定の非火災報発生のリスクが高まった旨を表示して火災検知器の点検又は交換を促すようにしたため、予測手段で予測した非火災報発生台数が所定値に達する稼動時間に近付いて所定の非火災報発生のリスクが高まったときに、火災検知装置の点検計画や交換計画を立案して対処することで、所定の非火災報が発生するリスクを低減可能とする。
【0027】
(R型設備の効果)
また、トンネル内に設置された火災検知器は固有のアドレスが設定され、受信盤はアドレスを指定して火災検知器との間で信号を送受信するようにしたため、受信盤からトンネル内に引き出された信号回線に複数の火災検知器を接続して火災を監視することでき、受信盤に火災検知器を信号回線により個別に接続するP型設備に比べ信号回線数が低減し、また、受信盤で火災検知器の例えばアナログ検知値を取得して火災判断を行うことが可能となる。
【0028】
(防災設備の効果)
本発明の別の形態にあっては、監視領域に所定の異常を検知する複数の検知器を設置し、検知器を受信盤からの信号回線に接続して異常を監視する防災設備に於いて、
検知器の設置台数、過去の実績により設定された検知器の故障率、及び過去の実績により設定された検知器の誤報発生割合に基づき、検知器の稼働時間に応じた誤報発生台数を予測する予測手段と、予測手段で予測した誤報発生台数に基づき報知を行う報知手段とが設けられたため、トンネル非常用設備以外の一般的な火災感知器やガス漏れ検知器で異常を監視する防災設備についても、過去の実績に基づき火災感知器やガス漏れ検知器等の検知器の稼働時間に対する所定の誤報を発生する誤報発生台数が定数的に予測され、誤報発生台数の予測結果に基づく交換や点検といった必要とする対処が可能となり、不測の混乱を引き起こす対応困難な誤報を抑制防止することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】トンネル非常用設備の概要を示した説明図
図2図1の中央監視センターに設けられた管理サーバの機能構成を示したブロック図
図3】非火災報発生台数の予測を行うトンネル非常用設備の火災検知器の設置状況と予測結果を一覧で示した説明図
図4図3の年別の設置台数に対する年別の非火災報発生台数の予測値の詳細を一覧で示した説明図
図5】過去の故障実績を入力して故障率と非火災報発生割合を求める非火災報予測画面を示した説明図
図6】経過年数10年の累積設置台数に基づく非火災報発生台数と非火災報発生件数の予測結果が表示された非火災報予測画面を示した説明図
図7図6の予測結果に基づく非火災報の発生リスクがグラフ表示された非火災報予測画面を示した説明図
図8】トンネル平面図を用いて経過年数の累積設置台数に基づく非火災報発生件数の予測結果が表示された非火災報予測画面を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
[トンネル非常用設備]
図1はトンネル非常用設備の概要を示した説明図である。
【0031】
(実施形態の基本的概念)
本実施形態によるトンネル非常用設備は、トンネル長手方向に火災を検知する火災検知器14を所定間隔で設置し、火災検知器14を受信盤として機能する防災受信盤10からの信号回線12に接続して火災を監視する。
【0032】
トンネル非常用設備として設置された火災検知器14は、運用中に対応困難な非火災報を発生する場合があり、本実施形態は、例えば管理サーバ36に設けられた予測部の機能により、火災検知器14の設置台数N、過去の実績により設定された火災検知器14の故障率λ、及び過去の実績により設定された火災検知器14の非火災報発生割合Pに基づき、火災検知器14の稼働時間t、例えば稼働年数に応じた非火災報発生台数x、即ち年度毎の非火災報発生台数xを予測し、報知部の機能により予測部で予測した非火災報発生台数xに基づき火災判断の閾値や回数を変更して火災検知器14の非火災報を抑制するように対処するものである。
【0033】
例えば、新規に運用を開始する自動車専用道路のトンネルに設置されている所定の設置台数Nの火災検知器14を対象に、例えば稼働年数毎に対応困難な非火災報を発生する非火災報発生台数xが定数的に予測され、運用中に火災検知器14が対応困難な非火災報を発生するリスクを知り、リスクが高まる稼働年数に近付いたときに、火災検知器14の点検強化や交換計画の立案といった対処を可能とし、対応困難な非火災報によりトンネル通行禁止警報が頻発することを抑制防止することを可能とする。
【0034】
ここで、非火災報発生台数を予測する対象は、例えば、特定の自動車専用道路のトンネルに設置されている火災検知器14であり、且つ、同じ製造メーカの火災検知器14とする。例えば特定の自動車専用道路のトンネルに設置されている火災検知器14の総台数が9000台であり、製造メーカがA社、B社、C社の3社であり、それぞれの設置台数が3000台ずつであったとすると、A社の3000台、B社の3000台、C社の3000台に分けて、各社の設置台数3000台の例えば稼働年数毎の故障原因の不明な非火災報発生台数を予測する。
【0035】
この場合の予測に使用される過去の実績に基づく火災検知器の故障率λと非火災報発生割合Pは、各社が過去に設置している火災検知器の非火災報発生の実績に応じて求めた値を使用する。
【0036】
これによって自動車専用道路を管理運用する企業体は、運用管理を開始している自動車専用道路の路線毎に、製造メーカ毎の火災検知器の設置台数Nと稼働年数(稼働時間t)に基づき、運用を開始した場合の各年度毎の非火災報発生台数xを予測し、非火災報の発生によりトンネル進入禁止警報を出してしまうリスクを認識し、このリスクが高まったときに点検強化や交換計画の立案等を行ってリスクを低減することが可能となる。
【0037】
また、企業体による自動車専用道路の建設と運用は、全線開通までにある程度の年数がかかり、その間に、一部区間の工事が完了して運用を開始している。このため管理対象となる自動車専用道路に設置される火災検知器14の設置台数は最初の区間運用を開始したときから全線開通までの間、年度が進むにつれて設置台数が増加し、年度毎の累積設置台数が増して行く。
【0038】
この場合の火災検知器14の非火災報発生台数は、年度毎に増加する累積設置台数を対象に予測する必要があり、累積設置台数に含まれる異なる年度の設置台数の各々につき、異なる稼動年数(稼働時間)により非火災報発生台数を求め、これらの総和を累積設置台数に対する非火災報発生台数として予測する。
【0039】
(トンネル非常用設備の概要)
図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築され、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bは避難連絡坑2でつながっている。
【0040】
上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って例えば50メートル間隔で火災検知器14が設置されている。火災検知器14は左右50メートルとなる両側に検知エリアを相互に重複して設定し、火災による炎を検知して火災発報する。
【0041】
なお、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、監視員通路の壁面に沿って例えば50メートル間隔で消火栓設備の消火栓装置、水噴霧設備の自動弁装置等が設置されている。
【0042】
上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに設置された火災検知器14は、監視センター等に設置された防災受信盤10から引き出された信号回線12に接続され、R型火災監視設備として信号のやり取りを行う。
【0043】
R型火災監視設備にあっては、火災検知器14に固有のアドレスが設定されており、防災受信盤10は所定周期毎にアドレスを順次指定した呼出信号の送信を繰り返しており、火災検知器14は自己アドレスを指定した呼出信号を受信すると、火災検出情報や障害情報等を含む応答信号を送信する。防災受信盤10は火災検知器14からの応答信号により火災を判断すると、所定の火災警報動作を行う。
【0044】
また、R型火災監視設備は、火災検知器14側で火災を判断して火災検出情報を防災受信盤10に送信して火災警報を出力させる方式と、火災検知器14では火災判断を行わず、アナログ的に検知された火災検知信号を防災受信盤10に送信し、防災受信盤10で火災を判断して火災警報を出力させる方式があり、本実施形態は何れか一方の方式を使用する。
【0045】
またトンネルの非常用設備としては、これ以外に、消火ポンプ設備16、換気設備18、警報表示板設備20、ラジオ再放送設備22、TV監視設備24及び照明設備26、IG子局設備28等が設けられており、IG子局設備28がデータ伝送回線で接続する点を除き、それ以外の設備は信号回線群15により防災受信盤10に個別に接続している。
【0046】
換気設備18は、トンネル内の天井側に設置しているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。
【0047】
警報表示板設備20は、トンネル入口に設置された電光掲示板にトンネル進入禁止警報を表示して知らせ、また、トンネル内の利用者に対して、トンネル内の火災発生や水噴霧開始等を電光表示板に表示して知らせる設備である。
【0048】
ラジオ再放送設備22は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。TV監視設備24は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。照明設備26はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。
【0049】
IG子局設備28は、防災受信盤10と遠方管理を行う中央監視センタ-32の情報機器を、ネットワーク30を経由して結ぶ通信設備である。
【0050】
中央監視センター32には、プロキシサーバ34、管理サーバ36及び管理端末38等が設けられる。プロキシサーバ34はネットワーク30とセンター内のLAN回線40を接続し、LAN回線40には管理サーバ36と管理端末38が接続されている。プロキシサーバ34はネットワーク30とLAN回線40との間のプロトコル変換により相互にパケット信号を送受信する。
【0051】
管理サーバ36はネットワーク30を介して接続されたトンネル監視センターの防災受信盤10の監視情報を受信して火災警報、障害警報等の警報出力や必要とする管理情報の表示を行う。
【0052】
また、管理サーバ36は図示のトンネルを含む複数のトンネルを管理対象としており、各トンネルに設置された防災受信盤10に通信接続して全体的な管理処理を行っている。管理端末38はクライアントとして機能し、監視サーバ36にアクセスしてトンネル管理情報を利用することができる。
【0053】
本実施形態にあっては、中央管理センター32に設けた管理サーバ36に、予測手段として機能する予測部と、報知部が設けられている。
【0054】
[管理サーバ]
図2図1の中央監視センターに設けられた管理サーバの機能構成を示したブロック図である。
【0055】
図2に示すように、管理サーバ36には、通信制御部42、サーバ制御部44、タッチパネル付きのディスプレイ46、キーボード、マウス等の操作部48及び記憶部50が設けられ、例えばCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路で構成される。
【0056】
サーバ制御部44にはCPUによるプログラムの実行により実現される機能として、管理制御部52、予測部54及び報知部56が設けられる。管理制御部52は管理対象とする複数のトンネルに設置された防災受信盤10からの監視情報を取得して必要とする管理情報の生成、表示、記憶、通報といった処理制御を行う。
【0057】
予測部54は予測手段して機能し、中央監視センター32で管理しているトンネルに設置された火災検知器14の設置台数N、過去の実績により設定された火災検知器14の故障率λ、及び過去の実績により設定された火災検知器14の対応困難な非火災報発生割合Pに基づき、火災検知器14の稼働時間tに応じた非火災報発生台数xを予測する制御を行う。
【0058】
また、報知部56は、予測部54で予測した非火災報発生台数xが所定値に達する稼動時間に近付いたときに、対応困難な非火災報発生のリスクが高まった旨を報知し、火災検知器14の点検計画や交換計画を立案して対処することで、対応困難な非火災報が発生するリスクを低減可能とする制御を行う。
【0059】
[非火災報発生台数の予測]
予測部54は、管理対象としているトンネルに設置している火災検知器14の過去の故障実績に基づき、次式により火災検知器14の非火災報発生台数xを予測する。
x=λ・N・t (式1)
λ=(λ’・P)/N’ (式1’)
ここで、
λ’:トンネルの故障率(件/hr)
P :非火災報1件あたりの非火災報出力台数(台/件)
N’:λ’の算出に用いたトンネルにおける火災検知器14の設置台数(台)
λ :火災検知器14の故障率(/hr)
N :火災検知器14の設置台数(台)
t :火災検知器14の稼働時間(hr)
を意味する。
【0060】
(トンネルの故障率λ’)
トンネルの故障率λ’は、トンネルに火災検知器14を設置してから1又は複数回の対応困難な非火災報が発生する平均故障間隔MTBFの逆数として次式により求められる。
λ’=1/MTBF (式2)
例えば、トンネルの過去の故障実績として、設置から6.8年で対応困難な非火災報が発生し、その後、4.1年で再度対応困難な非火災報が発生していたとすると、平均故障間隔MTBFは、
MTBF=(6.8年+4.1年)/2回=5.5年/1回
となる。このときの平均故障間隔MTBFを時間で表すと、5.5年/1回=48,180hr/1回であることからトンネルの故障率λ’は、
λ’=1/48,180=0.000022(件/hr)
となる。
【0061】
(非火災報1件あたりの非火災報出力台数P)
非火災報1件あたりの非火災報出力台数Pは、非火災報発生件数K当りの非火災報発生台数Npであり、次式で与えられる。
P=(非火災報発生台数Np)/(非火災報発生件数K) (式3)
【0062】

例えば、過去の故障実績から
非火災報発生台数Np=3台
非火災報発生件数K=3件
であったとすると、
P=3台/3件=1台/件
が求まる。
【0063】
なお、非火災報発生台数Npと非火災報発生件数Kは基本的に同じ値となるが、一度の非火災報発生時に複数の火災検知器14で非火災報が発生した場合は、非火災報発生台数Npが非火災報発生件数Kより大きい値となる。
【0064】
(火災検知器14の故障率λ)
このように過去の実績に基づき前記(式2)及び(式3)から
λ’=0.000022(件/hr)
P=1(台/件)
が求められ、また例えば、トンネルの故障率λ’の算出に用いたトンネルにおける火災検知器の設置台数=3421台
であったとすると、火災検知器14の故障率λは前記(式1’)に基づき
λ={0.000022(件/hr)/1(台/件)}/3421台
=6.6・(10-9
が求まる。
【0065】
(非火災報発生台数の予測)
このように過去の実績に基づき前記(式1’)から
λ=6.6・(10-9
が求められたならば、特定の自動車専用道路のトンネルに設置しているN台の火災検知器14を対象に、前記(式1)に基づき、その稼働時間tに対する非火災報発生台数xを予測することできる。
【0066】
(非火災報発生台数の予測例)
図3は非火災報発生台数の予測を行うトンネル非常用設備の火災検知器の設置状況と予測結果を一覧で示した説明図、図4図3の経過年別の設置台数に対する年別の非火災報発生台数の予測値の詳細を一覧で示した説明図である。
【0067】
図3に示すように、予測対象設備は、1年目から10年目の累積設置台数に示すように、年毎に火災検知器14の設置台数が300台ずつ増加している。
【0068】
このため各年の非火災報発生台数をx1,x2,・・・・x10とすると、各年の稼働時間は300台毎に異なり、稼働時間の異なる300台毎の非火災報発生台数を求め、これらの総和を求めることになる。
【0069】
まず1年目は設置台数N=300台で稼働時間t=1年間=8760hrであることから、1年目の非火災報発生台数x1は、
x1=6.6・(10-9)・(300台)・(8760hr)
=0.0173
となり、小数点以下第二位以下を四捨五入すると
x1≒0.0
となる。
【0070】
2年目の非火災報発生台数は、累積設置台数が600台で稼動期間は300台が1年間、残り300台が2年間となることから、2年目の非火災報発生台数x2は、
x2=6.6・(10-9)・(300台)・(8760hr)
+6.6・(10-9)・(300台)・(17520hr)
=0.0519≒0.1
となる。これは
x2=x1+2・x1=3・x1
となり、x1の級数として表現できる。
【0071】
従って、3~10年目の非火災報発生台数x3~x10は次付で与えられる。
x3 = 6・x1=0.1048≒0.1
x4 =10・x1=0.1730≒0.2
x5 =15・x1=0.2595≒0.3
x6 =21・x1=0.3633≒0.4
x7 =28・x1=0.4844≒0.5
x8 =36・x1=0.6288≒0.6
x9 =45・x1=0.7785≒0.8
x10=55・x1=0.9515≒1.0
【0072】
図4は非火災報発生台数x1~x10を総和として求める場合の各経過年の設置台数に対する年度別非火災報発生台数を2元的に表示している。例えば1年目については、
N=300台、
λ=0.000022(hr/1回)
P=0.00030(/件)
とし、1~10年度の稼働時間t1~t10を
t1=8760hr
t2=17520hr
t3=26280hr
・・・
t10=87600hr
として前記(式1)から1~10年目の年度別非火災報発生台数0.0017~0.0173を算出している。同様にして、2~10年目についても、1~10年目の年度別非火災報発生台数を算出している。
【0073】
このようにして求めた1~10年目の年度別非火災報発生台数を経過年1~10年(列方向)について各々加算して総和を求めると、これが1~10年度の非火災報発生台数x1~x10の値となる。
【0074】
(非火災報生件数)
このように予測された1~10年度の非火災報発生台数x1~x10は、0~1の間の小数値をもつことで非火災報の発生度合(尤度)を示す軟判定値となるが、非火災報発生予測リスクを明確に示すためには、0,1の硬判定値とすることが望ましいことから、図4に示すように、非火災報発生台数x1~x10を小数点以下を四捨五入した整数値を非火災報発生件数Kxとする。
【0075】
その結果、1~7年目は非火災報発生件数Kx=0件であるが、8~10年目は非火災報発生件数Kx=1件となり、7年目に入る前に、非火災報発生を抑制防止するための対処が必要になることが分かる。
【0076】
(当初から設置台数が固定された場合)
図3にあっては、経過年数に応じて火災検知器の設置台数が増加する場合の非火災報発生台数の予測を例にとっているが、全線開通により運用を開始する自動車専用道路については、図3における累積設置台数を当初の設置台数に固定した状態で、1~10年目の非火災報発生台数を予測して対処することになる。
【0077】
[管理サーバによる非火災報発生予測の処理]
図5は過去の故障実績を入力して故障率と非火災報発生割合を求める非火災報予測画面を示した説明図、図6は経過年数10年の累積設置台数に基づく非火災報発生台数と非火災報発生件数の予測結果が表示された非火災報予測画面を示した説明図、図7図6の予測結果に基づく非火災報の発生リスクがグラフ表示された非火災報予測画面を示した説明図、図8はトンネル平面図を用いて経過年数の累積設置台数に基づく非火災報発生件数の予測結果が表示された非火災報予測画面を示した説明図である。
【0078】
図2に示した管理サーバ36のサーバ制御部44に設けた予測部54は、火災検知器14の非火災報発生台数の予測処理を開始すると図5に示す非火災報予測画面60-1をディスプレイ46に表示する。
【0079】
図5の非火災報予測画面60-1は、過去の実績に基づく火災検知器14の故障率λと非火災報発生割合Pの算出に使用する。非火災報予測画面60-1の上部には、対象路線選択部62と対象メーカ選択部64が設けられ、右側の三角印で示すダイヤログを開くことで、対象路線として例えば「〇〇自動車道」が選択され、また、対象メーカとして例えば「A社」が選択される。
【0080】
管理サーバ36は、運用管理している自動車専用道路毎に、トンネルに設置された火災検知器14のメーカ毎の設置台数、非火災報発生台数Np、非火災報発生件数K等の道路管理情報を記憶管理しており、対象路線及び対象メーカが選択されると、その下の非火災報発生実績66に、設置台数68として「3241」台が表示され、また、非火災報の1~6回の発生回数に対する故障間隔70-1~70-6の内、過去の実績に基づき1回目の故障間隔70-1に「6.8」年が表示され、また、2回目の故障間隔70-2に「4.1」年が表示され、更に、非火災報発生台数72として「3」台、非火災報発生件数74として「3」件が表示される。
【0081】
なお、非火災報発生実績66による設置台数68、故障間隔70-1~70-6、非火災報発生台数72、及び非火災報発生件数74は利用者がキーボード等の操作部48により手入力することもできる。
【0082】
非火災報発生実績66による設置台数、故障間隔、非火災報発生台数、及び非火災報発生件数の設定が確認できたならば、利用者が予測実行釦76をタッチ操作すると前記(式2)(式3)による故障率λと非火災報発生割合Pの演算が実行され、故障率78及び非火災報発生割合80に演算結果として例えば「0.000022」、「0.003」が表示される。
【0083】
続いて利用者が「NEXT」釦82-1をタッチ操作すると図6の非火災報予測画面60-2に遷移する。図6の非火災報予測画面60-2には、予測結果84として、経過年と累積設置台数に対応して前記(式1)に基づき図4に示した算出結果から得られた非火災報発生台数と非火災報発生件数が一覧表示される。
【0084】
一覧表示された予測結果84の中で、非火災報発生件数が1件となる欄は、斜線で示す所定の背景色を表示することでリスク領域86として示され、非火災報発生のリスクが高くなっていることを強調表示する。
【0085】
利用者が非火災予測画面60-2の「NEXT」釦82-2をタッチ操作すると図7の非火災報予測画面60-3に遷移する。図7の非火災報予測画面60-3は、横軸を稼働年数とし、縦軸を非火災報発生台数と非火災報発生件数としたグラフ88が表示される。
【0086】
グラフ88には、図6の非火災報予測画面60-2に示した予測結果84による非火災報発生台数xが点線で示され、非火災報発生件数Kxが実線で示される。点線の非火災報発生台数xは1~10年の稼働年数の増加に応じて0.0~1.0と非線形に増加し、非火災報発生のリスクが稼働年数に応じて増加していく様子が把握できる。
【0087】
また、実線の非火災報発生件数Kxは、7年目までは0件であるが、7年目から8年目の間で1件に増加し、非火災報の発生リスクが7~8年目に増加することが分かる。
【0088】
また、非火災報予測画面60-3の下側には、予告対処ガイダンス90として、7年目から非火災報の発生リスクが高まる点と、点検強化と火災検知器を交換する交換計画の策定を促す表示を行い、利用者に対処を促す。
【0089】
なお、図5図7に示した管理サーバ36における非火災報予測画面60-1~60-3の表示は一例であり、これに限定されず、必要に応じて適宜の表示とすることができる。
【0090】
一方、図8の非火災報予測画面60-4は、上り線トンネル94と下り線トンネル96の平面図の中に設置区間A~Dに分ける。例えば、A区間は検知器150台を設置してから9年目が経過した場所であり、B区間は検知器150台を設置してから6年目が経過した場所であり、C区間は検知器150台を設置してから3年目が経過した場所であり、D区間は検知器300台を設置してから3年目が経過した場所である。あらかじめトンネル地図と火災検知器の設置場所を紐付けられている。
【0091】
地図の下に、経過年、設置台数及び非火災報予測台数を含む非火災報予測情報98を表示している。このような表示により、トンネル内の設置区画と非火災報予測台数の関係を視覚的に把握することができる。
【0092】
[防災設備の検知器誤報予測]
本発明による他の実施形態にあっては、監視領域に所定の異常を検知する複数の検知器を設置し、検知器を受信盤からの信号回線に接続して異常を監視する防災設備について、監視領域に設置している検知器を対象に誤報発生の予測を行う。
【0093】
このような防災設備は、例えば、監視領域に火災感知器が設置された火災報知設備があり、図2の監視サーバ36に設けられた予測部54と報知部56の機能が火災受信機の制御部に設けられる。
【0094】
火災受信機からの信号回線には、伝送機能を備え且つ固有のアドレスが設定されたアナログ火災感知器が接続され、アナログ火災感知器から煙濃度又は温度のアナログ検出データを火災受信機に送信して火災を判断するR型火災報知設備を対象とする。
【0095】
火災受信機の制御部に設けられた予測部54は、火災感知器の設置台数N、過去の実績により設定された火災感知器の故障率λ、及び過去の実績により設定された火災感知器の誤報発生割合Pに基づき、火災感知器の稼働時間に応じた誤報発生台数xを予測する。
【0096】
また火災受信機の制御部に設けられた報知部56は、予測部54で予測した火災感知器の誤報発生台数xに基づき火災感知器の誤報を抑制するための対処として、点検の強化、火災感知器の交換計画の立案等の対処を利用者に促す旨の表示を行う。
【0097】
なお、検知器の誤報発生を予測する防災設備としては、火災報知設備以外に、ガス漏れ警報器によりガス漏れを監視するガス漏れ監視設備、盗難センサにより侵入者を検知して警報するセキュリティ設備等についても、同様に適用することができる。
【0098】
[定期試験時の反応時間の変化による故障判定]
上記の実施形態は、トンネルに設置した火災検知器の誤報発生台数xを、
x=Σ(λ・t・N)
として予測するものであるが、定期試験時等の火災検知器の反応時間を取り込んだ故障判定を行うようにしても良い。これは時間がかかる程に故障発生台数が上昇するという要素を取り込んだ判定となる。
【0099】
即ち、ある処理を行う標準時間STに対する反応時間RTの割合(RT/ST)をΣ(λ・t・N)に取込み、誤報発生台数xを
x=Σ{λ・t・N・Σ(RT/ST)}
により予測する。
【0100】
[本発明の変形例]
(管理サーバの非火災報予測)
上記の実施形態は、自動車専用道路を運用管理する企業体の管理サーバに火災検知器の非火災報発生を予測して対処する予測部と報知部を設けているが、これに限定されず、例えば、火災検知器の製造メーカが保有するサーバ等に予測部と報知部を設けて、自社の設置済みの火災検知器に対する非火災報発生を予測してリスク管理を行うようにしても良い。
【0101】
また、図1に示したトンネルに設置された防災受信盤10と通信接続していない適宜のパーソナルコンピュータやタブレット等の情報端末に、非火災報発生を予測して対処する予測部と報知部を設けても良い。
【0102】
非火災報発生台数を予測するタイミングとして、年ごと、定期試験時、検知器の交換等を行った時など適宜に行って良い。
【0103】
所定の非火災報として、対応困難な非火災報だけでなく、原因毎に非火災報を集計し、所定の原因毎に非火災報発生台数を予測しても良い。
【0104】
上記の実施形態は、年度ごとに累積設置台数をカウントしたが、火災検知器の設置工事時期ごとに累積設置台数をカウントしても良い。この構成とすればより正確な非火災報発生予測が可能となる。さらに、トンネル地図と火災検知器の設置場所を紐付け、工事時期ごとに非火災報発生件数を予測して地図と同時に表示するようにしても良い。この構成によれば工事時期の古さと火災検知器の台数から、トンネルの内どの部分に対処が必要なのか判断する助けとすることができる。
【0105】
(火災検知器の内部情報取得)
また、防災受信盤は火災検知器の内部情報を取得するようにしても良い。防災受信盤による内部情報の取得のタイミングは、例えば、通信試験等の試験時のような定常的なタイミングや当該区画における非火災報発生台数が所定値を上回ったとき等の非定常なタイミングのいずれで行っても良い。
【0106】
火災検知器の内部情報はシリアル番号、定期試験結果、火災判定履歴等の種々の情報である。
【0107】
火災検知器は複数の条件を満たすことにより火災を検出して発報するが、火災判定履歴等の内部情報の取得とその確認により、発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数を火災検知器ごとに把握可能となる。発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数が多い火災感知器については、対応困難な非火災報についても発生が高くなると予測される。
【0108】
定常的なタイミングで内部情報を取得する場合、火災検知器の故障率に補正を加えるために用いる。所定期間における発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数が所定値を上回る感知器については、火災検知器の故障率λに1以上の補正値αを乗算する。
【0109】
所定期間における発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数が所定値を上回らない場合、火災検知器の故障率λに1以下の補正値βを乗算する。
【0110】
所定期間における発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数が所定値を上回る火災検知器と、上回らない火災検知器による非火災報発生台数を加算した値が当該トンネルにおける非火災報発生台数x’となる。
x’=α・λ・N1・t+β・λ・N2・t
N=N1+N2
ここで、
N1 :所定期間における発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数が所定値を上回る火災検知器14の設置台数(台)。
N2 :所定期間における発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数が所定値を上回らなかった火災検知器14の設置台数(台)。
【0111】
このように補正を加えた非火災報発生台数予測式を用いることにより、設置されている火災検知器の状態に応じた非火災報発生台数予測が可能となる。
【0112】
また、補正値α、βの補正要件として、所定期間における発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数のみならず、シリアル番号から製造ロットによる補正や、定期試験結果による補正を行うようにしても良い。
【0113】
また、非定常的なタイミングで内部情報を取得する場合、交換や点検を優先すべき火災検知器の抽出に用いる。つまり、所定期間における発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数が所定値以上の火災検知器についてアドレスを表示する、またはトンネル地図上に所定期間における発報に至らなかったが発報するためのいくつかの条件を満たした回数に応じて色等の表示形態を変化させて表示させる。
【0114】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0115】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:防災受信盤
12:信号回線
14:火災検知器
16:消火ポンプ設備
18:換気設備
20:警報表示板設備
22:ラジオ再放送設備
24:TV監視設備
26:照明設備
28:IG子局設備
30:ネットワーク
32:中央監視センター
34:プロキシサーバ
36:管理サーバ
38:管理端末
40:LAN回線
42:通信制御部
44:サーバ制御部
46:ディスプレイ
48:操作部
50:記憶部
52:管理制御部
54:予測部
56:報知部
60-1~60-3:非火災報予測画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8