(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】デュアルソレノイド制御弁を有する燃料噴射器
(51)【国際特許分類】
F02M 61/10 20060101AFI20230906BHJP
F02M 47/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
F02M61/10 A
F02M61/10 D
F02M61/10 F
F02M61/10 G
F02M47/00 C
F02M47/00 E
(21)【出願番号】P 2018236202
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サナ・マームード
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エム・キャンピオン
(72)【発明者】
【氏名】リーフェン・ワン
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-239735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0246561(US,A1)
【文献】特開2008-280985(JP,A)
【文献】特開2001-193594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/10
F02M 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射器(26、128)であって、
燃料入口(66)と、少なくとも1つのオリフィス(82)とを含む噴射器本体(36)と、
前記燃料入口から前記少なくとも1つのオリフィスまでの燃料の第1の流れを流体的にブロックするように選択的に可動な第1のチェック弁部材(70、156)と、
前記燃料入口から前記少なくとも1つのオリフィスまでの燃料の第2の流れを流体的にブロックするように選択的に可動な第2のチェック弁部材(72、168)と、
前記燃料入口と前記少なくとも1つのオリフィスとを流体連結するために前記第1のチェック弁部材または前記第1のチェック弁部材および前記第2のチェック弁部材の両方を選択的に移動させるように構成された制御弁アセンブリ(114)と、を備え
、
前記第1のチェック弁部材は前記少なくとも1つのオリフィスに隣接し、前記第2のチェック弁部材は前記第1のチェック弁部材および前記少なくとも1つのオリフィスを取り囲む、燃料噴射器(26、128)。
【請求項2】
前記第1のチェック弁部材の第1の基端部(84、158)において前記噴射器本体内に形成され、燃料入口およびドレン出口(68)の少なくとも一方と選択的に連結可能である、第1の制御室(74、178)と、
前記第2のチェック弁部材の第2の基端部(88、170)において前記噴射器本体内に形成され、燃料入口およびドレン出口の少なくとも一方と選択的に連結可能である、第2の制御室(76、182)と、をさらに備える、請求項1に記載の燃料噴射器。
【請求項3】
前記制御弁アセンブリが、
前記第1の制御室を前記ドレン出口からブロックするように、または前記第1の制御室と前記ドレン出口とを流体連結するように選択的に構成された第1の制御弁(116)と、
前記第2の制御室を前記ドレン出口からブロックするように、または前記第2の制御室と前記ドレン出口とを流体連結するように選択的に構成された第2の制御室(118)とを備える、請求項2に記載の燃料噴射器。
【請求項4】
前記第2のチェック弁部材(72)が、ボア(92)を含み、前記第1のチェック弁部材(70)が前記ボア内に配設されている、請求項1に記載の燃料噴射器。
【請求項5】
燃料の前記第1の流れの流量が、前記第1のチェック弁部材と前記ボアとの間の隙間(94)によって少なくとも部分的に決定される、請求項4に記載の燃料噴射器。
【請求項6】
前記第1のチェック弁部材(156)が、前記第2のチェック弁部材(168)に隣接してかつそれから離間して配設されている、請求項1に記載の燃料噴射器。
【請求項7】
第1のノズル室(100、150)であって、前記少なくとも1つのオリフィスが前記第1のノズル室に流体連結され、前記第1のチェック弁部材が前記第1のノズル室内に配設されている、第1のノズル室(100、150)と、
第2のノズル室(106、152)であって、前記第2のチェック弁部材が前記第2ノズル室内に配設されている、第2のノズル室(106、152)と、をさらに含む、請求項1に記載の燃料噴射器。
【請求項8】
前記第1のチェック弁部材が、
前記少なくとも1つのオリフィスへの燃料の前記第1の流れを流体的にブロックするためにノズルシート(102、186)と接触している第1の閉位置と、
前記少なくとも1つのオリフィスへの燃料の第1の流れを許容するために前記ノズルシートから離接する第1の開位置との間で可動である、請求項7に記載の燃料噴射器。
【請求項9】
前記第2のチェック弁部材が、
前記少なくとも1つのオリフィスへの燃料の前記第2の流れを流体的にブロックするために前記ノズルシート(108、192)と接触している第2の閉位置と、
前記少なくとも1つのオリフィスへの燃料の前記第2の流れを許容するために前記ノズルシートから離接する第2の開位置と間で可動である、請求項8に記載の燃料噴射器。
【請求項10】
燃料システム(20)であって、
コモンレール(28)と;
燃料の源(22)と、
前記源から前記コモンレールへ燃料を供給するように構成された燃料ポンプ(24)と、
前記コモンレールに流体連結され
、前記コモンレールから燃料を受け取るように構成された燃料噴射器(26、128)であって、
燃料入口(66)およびドレン出口(68)を含む噴射器本体(36)と、
前記噴射器本体内に配設され、少なくとも1つのオリフィス(82)を含むノズル室(100、150)と、
前記燃料入口から前記少なくとも1つのオリフィスへの燃料の第1の流れを流体的にブロックするように選択的に可動な第1のチェック弁部材(70、156)と、
前記燃料入口から前記少なくとも1つのオリフィスへの燃料の第2の流れを流体的にブロックするように選択的に可動な第2のチェック弁部材(72、168)と、
前記第1のチェック弁部材の第1の基端部(84、158)に配設され、前
記ドレン出口に連結可能である第1の制御室(74、178)と、
前記第2のチェック弁部材の第2の基端部(88、170)に配設され、前
記ドレン出口に連結可能である第2の制御室(76、182)と、
前記第1の制御室と前記ドレン出口とを選択的に流体連結するように構成された第1の制御弁(116)と、
前記第2の制御室と前記ドレン出口とを選択的に流体連結するように構成された第2の制御弁(118)と、を含む燃料噴射器(26、128)と、
前記第1の制御弁および前記第2の制御弁と通信し、かつ前記燃料入口を前記少なくとも1つのオリフィスに流体連結するために前記第1のチェック弁部材または前記第1のチェック弁部材と前記第2のチェック弁部材の両方を選択的に動作させるように構成されたコントローラ(30)とを含
み、
前記第1のチェック弁部材は前記少なくとも1つのオリフィスに隣接し、前記第2のチェック弁部材は前記第1のチェック弁部材および前記少なくとも1つのオリフィスを取り囲む、燃料システム(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、燃料噴射器に関し、より詳しくは、デュアルソレノイド制御弁を有する燃料噴射器に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンは、エンジン内の燃料燃焼の副産物として排ガスを生成する。エンジン排ガスは、とりわけ、未燃燃料、ばい煙のような粒子状物質、並びに一酸化炭素および窒素酸化物(NOx)などのガスを含む。規制エミッションコントロール要件に準拠するためには、エンジン排出ガス中の未燃燃料、ばい煙、NOxおよび他のガスの量を減らすことが望ましい。これらの量は、燃焼室内の排気ガスの温度に少なくとも部分的に依存する。
【0003】
燃焼室内の排気ガス温度は、各燃焼サイクル中の燃料供給のタイミング、速度、および継続時間を調整することによって制御することができる。多くのエンジンは、燃焼室に燃料を供給する燃料噴射器を含む。従来の燃料噴射器は、1つまたは複数のオリフィスを含み、そこを通って各燃焼サイクル中に燃料が燃焼室に噴射される。チェック弁は、オリフィスを通る燃料の流れを許容またはブロックするために使用される。したがって、燃料噴射器のチェック弁の動作を制御することによって、燃料噴射のタイミング、流量、および継続時間を制御することができる。
【0004】
2007年8月27日に付与されたLehtonenの米国特許第6,439,193B2号(「`193特許」)およびコモンレール燃料噴射システムに適用可能な噴射弁装置を開示している。`193特許は、特に、燃焼室への燃料の過度の噴射を防止することによって、噴射手順を制御する改良方法を提供することを意図している。`193特許の燃料噴射器は、動作可能に直列に連結された2つのニードル弁を含む。第1のニードル弁はコモンレールの供給圧力に連結されており、第2のニードル弁がエンジンのシリンダへの燃料噴射を制御する前に常に開くように仕組まれている。`193特許は、直列に動作する2つの弁の存在のせいで、噴射器からの燃料の漏れの可能性、または両方の弁の開位置での燃料漏れの可能性が実質的に低減されることを開示している。
【0005】
`193特許は、燃料噴射プロセスに対してより強化された制御を提供することを意図する燃料噴射器を開示しているが、`193特許の燃料噴射器は、燃焼中にNOxまたは未燃燃料の発生を未だ依然適切に制御できないことがある。特に、`193特許の燃料噴射器は燃料の漏れを低減するのに補助するが、燃料噴射のタイミング、流量、または継続時間を制御するために2つのニードル弁のうちの1つのみに依然依存する。これは、燃焼室の温度が上昇するときの噴射量を制御するには不十分であり、その結果、`193特許の燃料噴射器は、燃焼室内で生成された排ガス中のばい煙、NOx、または未燃燃料の量を適切に制御できないことがある。
【0006】
本開示の燃料噴射器は、上述した問題および/または従来技術の他の問題のうちの1つまたは複数を解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1つの態様では、本開示は燃料噴射器を対象とする。燃料噴射器は、噴射器本体を含むことができる。噴射器本体は、燃料入口および少なくとも1つのオリフィスを含むことができる。燃料噴射器はまた、第1のチェック弁部材を含むことができる。第1のチェック弁部材は、燃料入口から少なくとも1つのオリフィスまでの第1の燃料の流れを流体的にブロックするように選択的に可動である。さらに、燃料噴射器は、第2のチェック弁部材をむことができる。第2のチェック弁部材は、燃料入口から少なくとも1つのオリフィスまでの第2の燃料の流れを流体的にブロックするように選択的に可動である。燃料噴射器はまた、制御弁アセンブリを含むことができる。制御弁アセンブリは、燃料入口と少なくとも1つのオリフィスとを流体的に連結するために、第1のチェック弁部材、または第1のチェック弁部材と第2のチェック弁部材の両方を選択的に移動させるように構成されてもよい。
【0008】
別の態様では、本開示は、噴射器本体、燃料入口、および少なくとも1つのオリフィスを含む、燃料噴射器の動作方法を対象とする。本方法は、燃料を加圧することを含むことができる。本方法はまた、加圧燃料を燃料噴射器の燃料入口に供給することを含むことができる。さらに、本方法は、噴射器本体内の第1の通路を介して燃料入口を少なくとも1つのオリフィスに流体連結するために第1のチェック弁部材を動作させることを含むことができる。本方法は、少なくとも1つのオリフィスから第1の燃料の量を噴射することを含むことができる。本方法は、噴射器本体内の第2の通路を介して燃料入口を少なくとも1つのオリフィスに選択的に流体連結するために第2のチェック弁部を動作させることをさらに含むことができる。本方法はまた、少なくとも1つのオリフィスから第2の燃料の量を選択的に噴射することを含むことができる。
【0009】
さらに別の態様では、本開示は、燃料システムを対象とする。燃料システムは、コモンレールおよび燃料源を含むことができる。燃料システムはまた、源からコモンレールに燃料を供給するように構成された燃料ポンプを含むことができる。燃料システムは、コモンレールに流体連結された燃料噴射器を含むことができる。燃料噴射器は、コモンレールから燃料を受け取るように構成されてもよい。燃料噴射器は、燃料入口およびドレン出口を含む噴射器本体を含むことができる。燃料噴射器はまた、噴射器本体内に配設されたノズル室を含むことができる。ノズル室は、少なくとも1つのオリフィスを含むことができる。燃料噴射器は、燃料入口から少なくとも1つのオリフィスまでの燃料の第1の流れを流体的にブロックするように選択的に可動な第1のチェック弁部をさらに含むことができる。燃料噴射器はまた、燃料入口から少なくとも1つのオリフィスまでの燃料の第2の流れを流体的にブロックするように選択的に可動な第2のチェック弁部を含むことができる。また、燃料噴射器は、第1のチェック弁部材の基端部に配設された第1の制御室を含むことができる。第1の制御室は、ドレン出口に連結可能であってもよい。燃料噴射器は、第2のチェック弁部の基端部に配設された第2の制御室を含むこともできる。第2の制御室は、ドレン出口に連結可能であってもよい。燃料噴射器は、第1の制御室とドレン出口とを選択的に流体連結するように構成された第1の制御弁を含むことができる。燃料噴射器は、第2の制御室とドレン出口とを選択的に流体連結するように構成された第2の制御弁を含むことができる。さらに、燃料システムは、第1の制御弁および第2の制御弁と通信するコントローラを含むことができる。コントローラは、燃料入口を少なくとも1つのオリフィスに流体連結するために、第1のチェック弁部材あるいは第1のチェック弁部材と第2のチェック弁部材の両方を選択的に動作させるように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】例示的に開示された動力システムの図解である;
【
図2】
図1の動力システムと共に使用することができる例示的に開示された燃料噴射器の断面図である;
【
図4】
図1の動力システムと共に使用することができる別の例示的に開示された燃料噴射器の断面図である;
【
図6】
図2および
図4の燃料噴射器の例示的に開示された動作方法を示すフローチャートであり;および
【
図7】
図2および
図4の燃料噴射器を用いて得られる例示的なレートシェイプ(流量波形)を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、燃料と空気の混合物を燃焼させて機械的動力を生成するように構成された動力システム10の例示的な実施形態を示す。動力システム10はエンジン12を含むことができる。エンジン12は4ストロークディーゼルエンジンでもよい。しかし、エンジン12は、例えば、2ストロークディーゼルエンジン、ガス燃料駆動2ストロークエンジン、ガス燃料駆動4ストロークエンジン、デュアル燃料駆動の2ストロークまたは4ストロークエンジン、または2ストロークまたは4ストロークガソリンエンジンなどの他の任意の種類の内燃エンジンであってもよいことが考えられる。エンジン12は、スパーク点火エンジンであってもよいと考えられる。
【0012】
エンジン12は、複数のシリンダー16を少なくとも部分的に画成するエンジンブロック14を含むことができる。
図1に示すように、例示的なエンジン12は、4つのエンジン16を含むことができる。しかし、エンジン12は任意の数のエンジン16を含み得ることが考えられる。さらに、エンジン12のシリンダ16は、「直列」構成、「V」構成、対向ピストン構成、または他の任意の適切な構成で配設することができる。エンジン12は、エンジンブロック14内に回転可能に配設されたクランクシャフト18を含むことができる。コネクティングロッド(図示せず)により、複数のピストン(図示せず)をクランクシャフト18に連結することが可能であり、この結果、1つまたは複数のシリンダ16内の燃焼は、それぞれの個々のシリンダ16内のピストンの摺動運動により、往復ピストンエンジンでは通常のように、クランクシャフト18の回転が生じる。
【0013】
動力システム10は、タイミングスキームに従って各シリンダ16の対応する燃焼室に加圧燃料を供給するように構成された燃料システム20を含み、結果的にシリンダ16内の協調燃焼をもたらして機械的動力を生成することになる。例えば、燃料システム20は、高圧コモンレールシステムであってもよく、燃料の供給を保持するように構成された源22と、源22から燃料を加圧し、コモンレール28を介してシリンダ16に関連付けられた複数の燃料噴射器26に燃料を誘導するように構成された燃料ポンプ24を含むことができる。燃料システム20はコモンレールシステムとして記載されているが、他の燃料システム構成も可能であることが考えられる。例えば、燃料システム20は、燃料を源22から燃料噴射器26に直接供給する専用燃料供給ラインを含むことができる。
【0014】
燃料システム20は、コントローラ30、クランクアングルセンサ32、および1つまたは複数の温度センサ34も含むことができる。コントローラ30は、クランクアングルセンサ32および/または温度センサ34から受信された入力に少なくとも部分的に基づいて燃料システム20の動作を制御するように構成されてもよい。コントローラ30は、単一または複数のマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)などを具体化することができる。多数の市販のマイクロプロセッサを、コントローラ30の機能を発揮するように構成されてもよい。電源回路、信号調整回路、および通信回路を含む様々な他の既知の回路をコントローラ30に関連付けることができる。コントローラ30はまた、メモリデバイス、ランダムアクセスメモリ(RAM)デバイス、NORまたはNANDフラッシュメモリデバイス、および読み出し専用メモリ(ROM)デバイス、CD-ROM、ハードディスク、フロッピードライブ、光学式媒体、固体記憶媒体などの1つまたは複数の非一時的記憶デバイスと関連付けることができる。
【0015】
クランクアングルセンサ32は、クランクシャフト18上またはエンジンブロック14上に配置されてもよい。クランクアングルセンサ32は、ホール効果センサ、光学センサ、磁気センサ、または当技術分野で知られている他の種類のクランクアングルセンサであってもよい。クランクアングルセンサ32は、クランクアングルθを示す信号を送信するように構成されてもよく、クランクアングルθは、シリンダ16内のピストンの上死点(TDC)位置に対するクランク軸18の回転角であってもよい。従来知られているように、TDC位置に達する前に、ピストンが隣接のクランクシャフト18からシリンダ16のヘッドエンドに向かって移動する一方、TDC位置に到達した後、従来のエンジン内のピストンは シリンダ16のヘッドエンドから離れてクランクシャフト18に向かって移動することを当業者なら認識するであろう。例示的な一実施形態では、クランクアングルセンサ32は、クランクシャフト18の回転速度を示す信号を送信するように構成されてもよい。
【0016】
温度センサ34は、シリンダ16上に配設されてもよく、シリンダ16内の温度を決定するように構成されてもよい。温度センサ34は、ダイオード温度計、サーミスタ、熱電対、赤外線センサ、または当該技術分野において既知の任意の他の種類の温度センサを含むことができる。コントローラ30は、燃料噴射器26、クランクアングルセンサ32、および温度センサ34と通信することができ、燃料噴射器26、クランクアングルセンサ32、および温度センサ34の1つまたは複数からの信号に基づいて燃料システム20の動作を制御することができる。燃料システム20は、他の種類のセンサ、例えば、NOxセンサ、空気および燃料流量センサ、圧力センサ、速度センサ、トルクセンサ、加速度センサ等を含むことができることが考えられる。燃料システム20は、フィルタ、チェック弁、リリーフ弁などの他の従来の構成部材を含むことができることも考えられる。
【0017】
図2は、例示的な燃料噴射器26の断面図を示す。燃料噴射器26は燃料噴射器本体36を含むことができ、燃料噴射器本体36は隣接の燃料入口端部38から隣接の燃料排出端部40まで延在することができる。燃料噴射器本体36は、燃料噴射器26の縦軸線42の周りに配設することができる。燃料入口端部38はシリンダ16の外側に配設されてもよいのに対して、燃料排出端部40はシリンダ16内に配設されてもよい。噴射器本体36は、上部本体44と下部本体46とを含むことができる。上部本体44は噴射器ボア48を含むことができ、噴射器ボア48は隣接の燃料入口端部38から隣接の燃料排出端部40まで延在することができる。
図2に示す1つの例示的な実施形態では、下部本体46は、燃料排出端部40に隣接して配設されてもよく、噴射器ボア48を介して上部本体44から外側に突出してもよい。下部本体46は下部本体ボア50を含むことができ、下部本体ボア50は下部本体46の長さ全体にわたって延在することができる。しかし、いくつかの例示的な実施形態では、上部本体44および下部本体46が一体のユニット式噴射器本体32を形成してもよいことが考えられる。
【0018】
燃料噴射器26は、制御部分60および送達部分62を含むことができる。制御部分60は、噴射器ボア48内に配設されてよい。送達部分62は、部分的に噴射器ボア48内に、部分的には下部本体ボア50内に配設されてもよい。制御部分60は、燃料入口端38と燃料排出端40との間に配設され燃料入口端部38から制御部分端部64まで延在することができる。燃料噴射器26の送達部分62は、制御部分端部64から隣接の燃料排出端部40まで延在することができる。
【0019】
燃料噴射器26は、燃料入口66およびドレン出口68を含むことができる。燃料入口66は、コモンレール28に連結されてもよく、かつコモンレール28から加圧燃料を受けるように構成されてもよい。ドレン出口68は、通路(図示せず)を介して源22に連結されてもよい。ドレン出口68は、余分な燃料を源22に戻すことを可能にするように構成されてもよい。コモンレール28および燃料入口66の圧力が、ドレン出口68および源22の圧力よりも高くできることを当業者なら認識するであろう。
【0020】
送達部分62は、チェック弁部材70、チェック弁部材72、制御室74、制御室76、通路78および80、並びに1つまたは複数のオリフィス82を含むことができる。チェック弁部材70は、隣接の基端部84から噴射端部86まで延びていてもよい。基端部84は、制御部端部64に隣接して配設され、噴射端部86は燃料排出端部40に隣接して配設されてよい。チェック弁部材70は、縦軸線42の周りに同心状に配設されてもよい。チェック弁部材70は、縦軸線42に沿ってその縦方向に沿って移動するように構成されてもよい。
図2に示す1つの例示的な実施形態では、チェック弁部材70は、細長い針の形態であってもよい。制御室74は、チェック弁部材70の基端部84に隣接して配設されてもよい。制御室74は、通路(図示せず)を介してドレン出口68に連結可能であってよい。
【0021】
チェック弁部材72は、基端部88から噴射端部90まで延びていてもよい。基端部88は、基端部84と燃料排出端部40との間に配設され、噴射端部90は、燃料排出端部40に隣接して配設されてよい。
図2に示す1つの例示的な実施形態では、チェック弁部材72は、細長い針の形態であってもよい。制御室76はチェック弁部材72の基端部88に隣接して配設されてもよい。制御室76は、通路78および80を介してドレン出口68に連結可能であってよい。通路78および80の寸法は、燃料を制御室76からドレン出口68に排出可能にさせる流量を制御するように選択することができる。
【0022】
図3は、燃料噴射器26の送出部分62の拡大図を示す。
図3に示すように、チェック弁部材72は、基端部88から隣接の噴射端部90まで延在するボア92を含むことができる。チェック弁部材70は、チェック弁部材72のボア92内に配設されてもよい。
図3に例示される1つの例示的な実施形態では、チェック弁部材70は、ボア92と同心状に配設されてもよい。チェック弁部材70は、チェック弁部材72のボア92から隙間94によって分離されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、隙間94は、「Mオリフィス」と呼ばれることがある。
【0023】
図3にも示されているように、送達部分62は、嚢96および上部ノズル空間98を含むことができる。嚢96は、チェック弁部材70の噴射端部86と噴射器本体32との間に配設されてもよく、かつ燃料入口66から受け取った加圧燃料を保持するように構成されてもよい。オリフィス82は、嚢96をシリンダ16と流体連結するように構成されてもよい。上部ノズル空間98および隙間94は、ノズル室100を画定することができる。
図3に示すように、チェック弁部材70はノズル室100内に配設されてもよい。ノズル室100は、噴射器本体32内の1つまたは複数の通路(図示せず)を介して燃料入口66に連結されてもよい。ノズル室100は、燃料を燃料入口66から嚢96まで送達することができる。
【0024】
チェック弁部材70は、閉位置から開位置に移動するように構成されてもよい。その閉位置では、チェック弁部材70は、燃料入口66から嚢96へ、さらに1つまたは複数のオリフィス82への燃料の流れをブロックするように、噴射器本体32のノズルシート102に密封状態で接触することができる。その開位置において、チェック弁部材70はノズルシート102と離接することができ、燃料は嚢96および1つまたは複数のオリフィス82に流れることが可能になる。
【0025】
ノズル室100を燃料入口66に連結することにより、チェック弁部70の噴射端部86をコモンレール28からの高圧にさらすことができる。上述したように、制御室74(
図2参照)は、ドレン出口68に連結可能であってよく、ドレン出口68はコモンレール28内の圧力と対比して比較的低い圧力を有し得る。従って、制御室74がドレン出口68に連結されているとき、チェック弁部材70は、噴射端部86に作用するコモンレール28内の圧力に対応する高圧と、制御室74を介して基端部84に作用する燃料源22の低圧との圧力差を受けることができる。この圧力差の結果として、チェック弁部材70は、噴射端部86から基端部84に向かう方向に縦軸線42に沿ってその閉位置から開位置に移動することができる。その開位置において、チェック弁部材70がノズルシート102と離接しているとき、チェック弁部材70は嚢96および1つまたは複数のオリフィス82へ、シリンダ16内部への燃料の流れを許容することができる。このように、チェック弁部材70をその閉位置から開位置に移動させることにより、燃料入口66からノズル室100を通って1つまたは複数のオリフィス82へ、およびシリンダ16への燃料の第1の流れを許容することができる。
【0026】
チェック弁部材70の動作によって生じる、1つまたは複数のオリフィス82を通る燃料流量すなわち燃料の量は、チェック弁部材70とボア92との間の隙間94の幾何学的寸法に少なくとも部分的に基づいて決定されてもよい。1つの例示的な実施形態では、隙間94は、隣接の基端部88から隣接の噴射端部90までチェック弁部材70およびボア92の長さに沿ってほぼ均一であってよい。別の例示的な実施形態では、隙間94は、チェック弁部70およびボア92の長さに沿って変化してもよい。さらに別の例示的な実施形態では、基端部88に隣接する隙間94の寸法は、噴射端部90に隣接する隙間94の寸法を基準にしてより大きくてもよい。他の例示的な実施形態では、噴射端部90に隣接する隙間94の寸法は、基端部88に隣接する隙間94の寸法よりも大きくてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、隙間94の寸法は、基端部88と噴射端部90との間の位置でより大きくてもよいことも考えられる。
【0027】
チェック弁部材72は、下部本体46の下部本体ボア50内に配設されてよい。チェック弁部材72は、下部本体ボア50から半径方向に離間されていてもよい。チェック弁部材72と下部本体ボア50との間の空間は、ノズル室106を画定することができる。ノズル室106は、噴射器本体32内の1つまたは複数の通路(図示せず)を介して燃料入口66に連結されてもよい。チェック弁部材72は、閉位置から開位置に移動するように構成されてもよい。その閉位置において、チェック弁部材72は、燃料入口66およびノズル室106から嚢96への流体の流れをブロックするように、噴射器本体32のノズルシート108と密封状態で接触してもよい。その開位置において、チェック弁部材72は、燃料がノズル室106から嚢96に流れることを可能にするように、ノズルシート108と離接していてもよい。
【0028】
上述したように、ノズル室106は燃料入口66に連結していてもよく、燃料入口66はチェック弁部材72の噴射端部90をコモンレール28からの高圧にさらすことができる。上述したように、制御室76はドレン出口68に連結可能であってよくドレン出口68はコモンレール28内の圧力と比較して比較的低い圧力を有することができる。したがって、制御室76がドレン出口68に連結されているとき、チェック弁部材72は、噴射端部90に作用するコモンレール28内の圧力に対応する高圧と、制御室76を介して基端88に作用する源22の低圧との圧力差を受けることができる。この圧力差の結果として、チェック弁部材72は噴射端部90から基端部88に向かう方向に縦軸線42に沿ってその閉位置からその開位置に移動することができる。その開位置において、チェック弁部材72がノズルシート108と離接しているとき、チェック弁部材72はノズル室106から嚢96への燃料の流れを許容し、この燃料の流れを1つまたは複数のオリフィス82を介してシリンダ16の中へ噴射させることができる。したがって、チェック弁部材72を閉位置から開位置に移動させることにより、燃料入口66からノズル室106を通って1つまたは複数のオリフィス82まで、さらにシリンダ16まで燃料の第2の流れを可能にすることができる。さらに、チェック弁部材72をその閉位置から開位置に移動させることは、燃料が燃料入口66から流れノズル室106を通ってノズル室100まで流れるようにすることにより、コモンレール28からの高圧をノズルシート102に隣接するチェック弁部材70に加えることを可能にする。したがって、チェック弁部材70に加えられた圧力は、チェック弁部材72の動作によって変えることができる。
【0029】
チェック弁部材72の動作によって生じる、1つまたは複数のオリフィス82を通る燃料流量つまり燃料の流れの量は、チェック弁部材72とノズルシート108との間のギャップ(図示せず)に少なくとも部分的に基づいて決定されてもよい。チェック弁部材70とチェック弁部材72の両方がそれぞれ開位置にあるとき、燃料がノズル室100とノズル室106の両方から嚢96内に流入することができることを当業者なら認識するであろう。したがって、チェック弁部材70とチェック弁部材72の両方を開くことにより、チェック弁部材72がその閉位置に留まっている状態でチェック弁部材70のみが開位置にあることができるときにオリフィス82を通ってシリンダ16に流入することができる燃料の第1の量と比較して、燃料の第2の量がオリフィス82からシリンダ16に流入することが可能になる。
【0030】
図2に戻って参照すると、制御部分60は、通路110、通路112、および制御弁アセンブリ114を含むことができる。流路110は、燃料噴射器本体36内に配設されてもよく、加圧燃料を燃料入口66から、燃料噴射器26の送達部分62内のノズル室100およびノズル室106に送達するように構成されてもよい。制御部分60および/または送達部分62は、通路110をノズル室100およびノズル室106に連結することができる追加の通路(図示せず)を含み得ることが考えられる。いくつかの例示的な実施形態では、制御部分60および/または送達部分62内の追加の通路(図示せず)は、通路110および燃料入口66を制御室74および76の一方または両方に連結することができる。
【0031】
流路112は、燃料噴射器本体36内に配設されてもよく、かつ燃料噴射器26の送達部分62内の制御室74および76を、ドレン出口68を介して源22と連結させるように構成されてもよい。例えば、
図2に示すように、通路112は、通路78および80をドレン出口68に連結することができる。燃料噴射器本体36には、2つの通路110および112のみが示されているが、燃料噴射器は燃料入口をノズル室100および106に連結する2つ以上の通路110と、制御室74および/または76をドレン出口68に連結する2つ以上の通路112とを含み得ることが考えられる。
【0032】
制御弁アセンブリ114は、制御弁116、制御弁118、ソレノイド120、およびソレノイド122を含むことができる。例示的な1つの実施形態では、制御弁116および118は、2ウエイまたは3ウエイソレノイド制御弁であってもよい。しかし、制御弁116および118は、ソレノイド以外の構成を介して制御されてもよいことが考えられる。例えば、いくつかの例示的な実施形態では、制御弁116、118はカム構成を介して、またはバネなどの付勢部材の使用によって制御することができる。
【0033】
図2に示す1つの例示的な実施形態では、制御弁116は、制御部分端部64に隣接する噴射器本体32内、および燃料入口端部38と制御部分端部64との間に位置付けされ得る。制御弁116は、制御室74がドレン出口68から流体的にブロックされる第1の位置と、制御室74がドレン出口68に流体連結される第2の位置との間で縦軸42に沿って可動であり得る。
図2に示すように、制御弁116は、第1の位置に向けて付勢部材124によって付勢され得る。
図2に示す1つの例示的な実施形態では、付勢部材124は螺旋バネの形態であってもよいが、他の形状も考えられる。
【0034】
ソレノイド120は、制御部分端部64に隣接して配設されてもよい。ソレノイド120は、制御室74が噴射器本体32内の1つまたは複数の通路(図示せず)を介してドレン出口68に連結されるように、付勢部材124の付勢力に抗して制御弁116を移動させるように動作可能にしてもよい。したがって、ソレノイド120の動作によって、チェック弁部材70に関連付けられる制御室74をドレン出口68に連結するか、またはドレン出口68からブロックすることができる。
【0035】
制御弁118は、燃料入口端部38に隣接する噴射器本体32内に、かつ燃料入口端部38と制御弁116との間に位置付けすることができる。制御弁118は、チェック弁部材72に関連付けられる通路112がドレン出口68から流体的にブロックされる第1の位置と、通路112がドレン出口68に流体連結される第2の位置との間で縦軸線42に沿って可動であってよい。制御弁118は、その第1の位置に向けて付勢部材124によって付勢され得る。
図2に示す1つの例示的な実施形態では、付勢部材124を、制御弁116と制御弁118との間に配設することができる。しかし、制御弁116、118はそれぞれそれ自体の別個の付勢部材124を有してもよいことが考えられる。
【0036】
ソレノイド122は、制御弁118に隣接して配設することができる。ソレノイド122は、通路112がドレン出口68に連結され得るように、付勢部材124の付勢力に抗して制御弁118を移動させるように動作可能であり得る。したがって、ソレノイド122の動作によって、チェック弁部材72に関連付けられた制御室76は、通路78、80、および112を介してドレン出口68に連結されるか若しくはドレン出口68からブロックされ得る。制御弁116およびソレノイド120は、制御部分端部64に隣接して位置付けされていると上述したが、制御弁116およびソレノイド120が代わりに燃料入口端部38に隣接して若しくは噴射器本体36内の他の場所に位置付けされ得ることが考えられる。同様に、制御弁118およびソレノイド122は、燃料入口端部38に隣接して位置付けされているとして上述したが、制御弁118およびソレノイド122が代わりに制御部分端部64に隣接して、または噴射器本体36内の他の場所に位置付けされ得ることが考えられる。
【0037】
上述したように、いくつかの例示的な実施形態では、制御室74および76を燃料入口66に連結することもできる。しかし、制御室74が燃料入口66に連結されている場合であっても、制御室74がドレン出口68にも連結されている場合、ドレン出口68への流体連結は制御室74内の圧力を低下させ、チェック弁部材70をその開位置に移動させるのに十分であり得ることを当業者なら認識するであろう。同様に、制御室76が燃料入口66に連結されている場合であっても、制御室76がドレン出口68にも連結されている場合、ドレン出口68への流体連結は制御室76内の圧力を低下させ、チェック弁部材72をその開位置に移動させるのに十分であり得ることを当業者なら認識するであろう。
【0038】
図4は、例示的な燃料噴射器128の断面図を示す。燃料噴射器128の特徴の多くは、燃料噴射器26の対応する特徴に類似している。例えば、燃料噴射器26と同様に、燃料噴射器128は、通路110および112、並びに制御弁アセンブリ114を含む、上部本体44および制御部分60を含むことができる。燃料噴射器26および128のこれらおよび他の共通の特徴は、燃料噴射器26に対応する
図2で使用されているのと同じ番号を用いて
図4において表示されている。さらに、
図2に関連する共通の特徴の上記説明は、燃料噴射器128のこれらの特徴に等しく適用される。以下に、燃料噴射器26の特徴と異なる、燃料噴射器128の特徴のみを詳細に説明する。
【0039】
燃料噴射器128は、燃料噴射器26の送達部分62とは異なり得る、送達部分132を含むことができる。送達部分132は、下部本体130を含むことができ、制御部分端部64から燃料排出端部40まで延在することができる。燃料噴射器128の送達部分132は、ノズル部分134、本体部分136、および上部部分138を含むことができる。ノズル部分134は、隣接の燃料排出端部40から、制御部分端部64と燃料排出端部40との間に配設されたノズル部分端部140まで延在することができる。本体部分136は、ノズル部分端部140から、制御部分端部64とノズル部分端部140との間に配設された本体部分端部142まで延在することができる。上部部分138は、制御部分端部64から本体部分端部142まで延在することができる。
【0040】
ノズル部分134は、下部本体130、ノズル室150、ノズル室152、および嚢154を含むことができる。下部本体130は、噴射器ボア48内に配設され、かつノズル部分端部140から隣接の燃料排出端部40まで延在することができる。
図5は、燃料噴射器128のノズル部分134および本体部分136の拡大図を示す。ノズル部分134は、下部本体130に配設されたノズル室150およびノズル室152を含むことができる。ノズル室150および152は、互いに隣接して、互いから直径方向に離間して配設されてもよい。ノズル室150は、ノズル部分端部140から下部本体130内の隣接の燃料排出端部40まで延在するボアの形態であってもよい。
図5に示すように、ノズル室150は、縦軸線42に対して半径方向に片寄ってもよい。ノズル室150は、燃料入口66に連結されてもよい。
【0041】
チェック弁部材156は、隣接の基端部158から噴射端部160まで延びてもよい。基端部158は、本体部分端部142に隣接して配設されてもよく、噴射端部160は、燃料排出端部40に隣接して配設されてもよい。チェック弁部材156の少なくとも一部は、ノズル室150内に配設されてもよい。チェック弁部材156は、その縦方向に沿って(例えば、基端部158と噴射端部160との間で)移動するように構成されてもよい。
【0042】
ノズル室152は、ノズル部分端部140から下部本体130の途中までのノズル室端部162(ノズル部分端部140と燃料排出端部40の間に配設)まで延在するボアの形態であってもよい。ノズル室152は、燃料入口66に連結されてもよい。通路164は、下部本体130内に配設されてもよく、ノズル室152およびノズル室150を連結させてもよい。
図5に示す1つの例示的な実施形態では、通路164は、ノズル室端部162に隣接するノズル室152に流体連結されてよい。通路164はまた、ノズル部分端部140と噴射端部160との間に配設されてもよく、ノズル室連結部166においてノズル室150に流体連結されてよい。いくつかの例示的な実施形態では、通路164がノズル部分端140に隣接するノズル室150に流体連結され得ることが考えられる。
【0043】
チェック弁部材168は、隣接の基端部170から隣接のノズル室端部162まで延在してもよい。基端部170は、本体部分端部142に隣接して配設されてよい。チェック弁部材168の一部は、ノズル室152内に配設されてよい。チェック弁部材168は、その縦方向(例えば、基端部170とノズル室端部162との間、およびその逆)に沿って移動するように構成されてもよい。
【0044】
本体部分136は、隣接のノズル部分端部140から本体部分端部142まで延在するボア172を含むことができる。ボア172は、通路174および176の一方または両方を介して燃料入口66に連結されてよい、容積部を画定することができる。チェック弁部材156、168の一部は、ボア172内に配設されてよい。
図5に示す1つの例示的な実施形態では、チェック弁部材156は、ボア172内のチェック弁部材168に隣接して、かつチェック弁部材168から直径方向に離間して配設されてよい。ノズル室150および152は、ボア172に流体連結されてよく、かつボア172から加圧燃料を受け取ることができ、その結果として燃料入口66から加圧燃料を受け取ることができる。特定の通路、例えば、通路174、176が上記に説明されきたが、いくつかの例示的な実施形態では、噴射器本体36が、燃料入口66をボア172に連結することができる他の通路(図示せず)を含み得ることが考えられる。
【0045】
制御室178は、チェック弁部材156に関連付けられてよく、かつチェック弁部材156の基端158に隣接する本体部分136内に配設されてよい。制御室178は、通路180を介してドレン出口168と連結可能であってよい。制御室182は、チェック弁部材168と関連付けられてよく、かつチェック弁部材168の基端部170に隣接して配設されてよい。制御室182は、通路184を介してドレン出口68に連結可能であってよい。特定の通路、例えば、通路180、184が上記に説明されきたが、いくつかの例示的な実施形態では、噴射器本体36は、制御室178および182をドレン出口68に連結することができる他の通路(図示せず)を含み得ることが考えられる。
【0046】
チェック弁部材156は、閉位置から開位置に移動するように構成されてもよい。その閉位置では、チェック弁部材156は、ノズル室150から嚢154および1つまたは複数のオリフィス82への燃料の流れをブロックするようにノズル室150内のノズルシート186と密封状態で接触することができる。その開位置において、チェック弁部材156は、燃料がノズル室150から嚢154および1つまたは複数のオリフィス82に流れることを可能にするように、ノズルシート186から離接することができる。
【0047】
例えばボア172および通路174を介してノズル室150を燃料入口66に連結することにより、チェック弁部材156の噴射端部160がコモンレール28からの高圧にさらされることができる。上述したように、制御室178は、例えば通路180を介してドレン出口68に連結可能であってよい。したがって、制御室178がドレン出口68に連結されているとき、チェック弁部材156は、隣接の噴射端部160に作用するコモンレール28内の圧力に対応する高圧と、制御室178を介して基端部158に作用する源22の低圧との間の圧力差を受けることがある。この圧力差の結果として、チェック弁部材156は、噴射端部160から基端部158に向かう方向にその閉位置からその開位置に移動することができる。その開位置において、チェック弁部材156がノズルシート186から離接しているとき、チェック弁部材156は、嚢154および1つまたは複数のオリフィス82を介してシリンダ16内部への燃料の流れを許容することができる。したがって、チェック弁部材156をその閉位置からその開位置に移動させることにより、燃料入口66からノズル室150を通って1つまたは複数のオリフィス82へ、さらにシリンダ16への燃料の第1の流れを許容することができる。
【0048】
チェック弁部材156の動作によって生じる、ノズル室150を通る燃料流量つまり燃料の流れの量は、チェック弁部材156とノズル室150との間の隙間188の寸法に少なくとも部分的に基づいて決定されてもよい。1つの例示的な実施形態では、隙間188は、隣接のノズル部分端部140から隣接のノズル室連結部166までチェック弁部材156の長さに沿って概して均一であり得る。別の例示的な実施形態では、隙間188は、チェック弁部材156の長さに沿って変化してもよい。さらに別の例示的な実施形態では、ノズル部分端部140に隣接する隙間188の寸法は、ノズル室連結部166に隣接する隙間188の寸法に対してより大きくてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、隙間188の寸法は、ノズル部分端部140およびノズル室連結部166に隣接する隙間188の寸法と比較して、ノズル部分端部140とノズル室連結部166との間でより大きくなり得ることが考えられる。
【0049】
チェック弁部材168は、閉位置から開位置に移動するように構成されてもよい。その閉位置において、チェック弁部材168は、通路164を介してノズル室152からノズル室150への燃料の流れをブロックするようにノズル室152内のノズルシート190と密封状態で接触することができる。その開位置において、チェック弁部材168は、燃料が通路164を介してノズル室152からノズル室150に流れることを許容するようにノズルシート190から離接することができる。
【0050】
上述したように、ノズル室152は、例えば通路176を介して燃料入口66に連結されることができ、通路176はノズル室端部162をコモンレール28から高圧にさらすことができる。同様に上述したように、制御室182は、コモンレール28内の圧力と比較して比較的低い圧力を有することができる、例えば通路184を介してドレン出口68に連結可能にしてよい。したがって、制御室182がドレン出口68に連結されているとき、チェック弁部材168は、ノズル室端部162に隣接することに作用するコモンレール28内の圧力に対応する高圧と、制御室182を介して基端部170に作用する燃料源22の低圧との圧力差を受けることができる。この圧力差の結果として、チェック弁部材168は、ノズル室端部162から基端部170に向かう方向にその閉位置からその開位置に移動することができる。その開位置において、チェック弁部材168がノズルシート190から離接しているとき、チェック弁部材168は、通路164を介してノズル室152からノズル室150への燃料の流れを許容することができる。このように、チェック弁部材168をその閉位置から開位置に移動させることにより、燃料入口66からノズル室152を通ってノズル室150へ、さらに1つまたは複数のオリフィス82への燃料の第2の流れが可能になる。さらに、チェック弁部材168をその閉位置から開位置に移動させることは、燃料を燃料入口66からノズル室152を通ってノズル室150まで流れることを可能にすることによりコモンレール28からの高圧がノズル室連結部166に隣接するチェック弁部材156に加えられることを許容する。いくつかの例示的な実施形態において、通路164が制御室178に流体連結され得ることが考えられる。これらの例示的な実施形態では、チェック弁部材168の動作は、燃料が燃料入口66からノズル室152を通って制御室178まで流れることを許容することによって制御室178の圧力を調整するのに役立ち、これは結果的に、チェック弁部材156をノズルシート186に接触または離接状態にさせるようにチェック弁部材156の移動を制御することに補助し得る。こうして、チェック弁部材156に加えられる圧力は、チェック弁部材168の動作によって変更され得る。
【0051】
チェック弁部材168の動作によって生じる、ノズル室152からノズル室150への燃料流量は、チェック弁部材168とノズルシート190との間のギャップ(図示せず)に少なくとも部分的に基づいておよび通路164の寸法によって決定することができる。チェック弁部材156とチェック弁部材168の両方がそれぞれの開位置にあるとき、燃料はノズル室150とノズル室152の両方から嚢154内に流入し得ることを当業者なら認識するであろう。このように、チェック弁部材156とチェック弁部材168の両方を開くことは、チェック弁部材156のみが開位置にあり、チェック弁部材168が閉位置のままに留まっている場合にオリフィス82を通ってシリンダ16内部に流入する燃料の第1の量と対比して、燃料の第2の量がオリフィス82を通ってシリンダ16内部に流入することを許容する。
【0052】
図4に戻って参照すると、上部部分138は通路194、196および198を含むことができ、その各々は制御部分端部64から本体部分端部142まで延在することができる。通路194は、通路174および176を通路110を介して燃料入口66と連結することができる。通路196は通路180をドレン出口68に連結させ、通路198は通路194を通路112を介してドレン出口68に連結させることができる。
【0053】
ソレノイド120は、通路180がドレン出口68に連結され得るように、付勢部材124の付勢力に抗して制御弁116を移動させるように動作可能であり得る。したがって、ソレノイド120の動作によって、チェック弁部材156に関連付けられた制御室178をドレン出口68に連結することができる。ソレノイド122は、制御室182が通路112、184、および198を介してドレン出口68に連結されるように、付勢部材124の付勢力に抗して制御弁118を移動させるように動作可能であり得る。
【0054】
上述したように、いくつかの例示的な実施形態では、制御室178および182を燃料入口66に連結することもできる。しかし、制御室178が燃料入口66に連結されている場合であっても、制御室178がドレン出口68にも連結されている場合には、ドレン出口68への流体連結は、チェック弁部材156をその開位置に移動させるように、制御室178内の圧力を低下させるのに十分であることを当業者なら認識するであろう。同様に、制御室182が燃料入口66に連結されている場合であっても、制御室182がドレイン出口68にも連結されている場合には、ドレン出口68への流体連結は、チェック弁部材168をその開位置に移動させるように、制御室182内の圧力を低減するのに十分であり得ることを当業者なら認識するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の燃料システムは、エンジンの運転中にエンジンの噴射のタイミング、流量つまり燃料の量、および燃料の燃焼室内への噴射継続時間を連続的に調整するために使用され得る。特に、本開示の燃料システムは、エンジンの1つまたは複数のシリンダにおける温度および/またはエンジンのシリンダにおける燃料の燃焼によって生成される排気ガス中のNOxの量を決定することができる。NOxの測定された温度および/または量に基づいて、本開示の燃料システムは、燃焼サイクル中の噴射のタイミング、燃料がシリンダー内部に噴射される量、およびシリンダ内部への燃料の噴射の継続時間を制御することができる。そうすることによって、本開示の燃料システムは、シリンダ内の温度を低下させるのを補助し得るが、これは結果的に燃焼プロセスによって生成されるばい煙および/またはNOxの量を低減するのを補助し得る。燃料噴射器26または128を動作させる例示的な方法を以下に説明する。
【0056】
図6は、エンジン12の燃料システム20の動作の例示的な方法600を示す。本方法600のステップの順序および配置は、説明のために提供される。この開示から理解されるように、方法600のステップを例えば追加、結合、削除、および/または再配置するなどして、方法600に対して修正を行うことができる。例示的な一実施形態では、方法600は、コントローラ30によって実行することができる。しかし、燃料噴射器26または128が、例えば、カム構成を介して、または制御弁116、118、および/またはチェック弁部材70、72、156、または168の1つまたは複数を動作させるための他の技術を使用して機械的に制御され得ることが考えられる。さらに、方法600は、エンジン12の一部または全部のシリンダ16に適用されてもよい。
【0057】
方法600は、燃料を加圧するステップを含むことができる(ステップ602)。例示的な一実施形態では、コントローラ30は、燃料ポンプ24を制御して、燃料22を燃料源22から引き寄せ、燃料を加圧してエンジン12に送達することができる。方法600は、燃料噴射器に加圧燃料を供給するステップを含むことができる(ステップ604)。コントローラ30は、燃料システム20に関連付けられた1つまたは複数の制御弁および/またはチェック弁を制御して、加圧燃料の流れを燃料噴射器26または128の燃料入口66に流すことを許容することができる。
【0058】
方法600は、クランクアングル「θ」を決定するステップを含むことができる(ステップ606)。例示的な一実施形態では、コントローラ30は、クランクアングルセンサ32から信号を受信することができる。コントローラ30は、燃料噴射器26または128に関連付けられたシリンダ16内のピストンのTDC位置に対するクランクアングルθを決定するためにコントローラ30に関連付けられたメモリデバイスに記憶された相関、テーブル、マップ、または他のアルゴリズムに依存することができる。
【0059】
方法600は、クランクアングルθがクランクアングル「θ1」にほぼ等しいかどうかを判定するステップ(ステップ608)を含むことができる。クランクアングルθ1は、燃料噴射プロセスの開始を意味するクランクアングルθの第1の閾値を表すことができる。コントローラ30は、例えばクランクアングルセンサ32によって測定されたクランクアングルθがクランクアングルθ1より小さいと判断した場合(ステップ608:いいえ)、コントローラ30はステップ606に戻ることができる。しかし、コントローラ30は、クランクアングルθがクランクアングルθ1にほぼ等しいと判断した場合(ステップ608:はい)、コントローラ30はステップ610に進むことができる。
【0060】
方法600は、第1のチェック弁部材を動作させるステップ(ステップ610)を含むことができる。ステップ610において、コントローラ30は、燃料噴射器26または128のソレノイド120に通電することができる。ソレノイド120を通電することは、付勢部材124によって加えられる付勢力を克服して、制御弁116をその第1の位置からその第2の位置に移動させることができる。上述したように、その第2の位置において、制御弁116は、燃料噴射器26の制御室74をドレン出口68に流体連結させることができ、ドレン出口68は噴射端部86に隣接するチェック弁部材70に作用する燃料の圧力を基準にして制御室74内の圧力を減少させることができる。噴射端部86に隣接する高圧は、チェック弁部材70を縦軸線42に沿ってノズルシート102から離接するように移動させることができ、第1の燃料の流れをノズル室100から嚢96および1つまたは複数のオリフィス82を通ってシリンダ16内部に流入させることを可能にする。
【0061】
同様に、コントローラ30が、燃料噴射器128を制御するように構成されている場合で、制御弁116がその第2の位置に移動するとき、制御弁116は、燃料噴射器128の制御室178をドレン出口68に流体連結させることができ、ドレン出口68は噴射端部160に隣接するチェック弁部材156に作用する燃料の圧力を基準にして制御室178内の圧力を減少させることができる。噴射端部160に隣接する高圧は、チェック弁部材156をノズルシート186から離接させ、燃料の第1の流れをノズル室150から嚢154および1つまたは複数のオリフィス82を通ってシリンダ16内部に流入させることを可能にする。
【0062】
方法600は、クランクアングルθがクランクアングル「θ1」以上でかつクランクアングル「θ2」以下であるかどうかを判定するステップを含む(ステップ612)。クランクアングルθ2は、シリンダ16に噴射されつつある燃料の量を変更することができる第2のクランクアングルθの閾値を表すことができる。ステップ612において、コントローラ30は、クランクアングルθを決定する、例えばステップ606に関して上述したものと同様の機能を発揮することができる。コントローラは、クランクアングルθの決定された値を閾値θ1およびθ2と比較することができる。コントローラ30は、例えばクランクアングルセンサ32によって測定されたクランクアングルθがクランクアングルθ1以上かつクランクアングルθ2以下であると判断した場合(ステップ612:はい)、コントローラ30は、第1のチェック弁部材を動作させ続けるステップ614に進むことができる。このステップでは、コントローラ30は、燃料の第1の流れが燃料噴射器26または128のオリフィス82から流出することを可能にするためにソレノイド120を通電し続けることができる。しかしながら、コントローラ30は、例えばクランクアングルセンサ32によって測定されたクランクアングルθがクランクアングルθ2よりも大きいと判断した場合(ステップ612:いいえ)、ステップ616に進むことができる。
【0063】
方法600は、第2のチェック弁部材を動作させるステップ(ステップ616)を含むことができる。ステップ616において、コントローラ30は、燃料噴射器26または128のソレノイド122を通電することができる。ソレノイド122を通電することは、付勢部材124によって加えられる付勢力を克服して、制御弁118をその第1の位置から第2の位置に移動させることができる。上述したように、第2の位置において、制御弁118は、燃料噴射器26の制御室76をドレン出口68に流体連結させることができ、ドレン出口68は噴射端部90に隣接するチェック弁部材72に作用する燃料の圧力を基準にして制御室76内の圧力を低減することができる。噴射端部90に隣接する高圧は、チェック弁部材72を縦軸線42に沿ってノズルシート108と離接するように移動させ、燃料の第2の流れをノズル室106から嚢96内部に流入させることを可能にする。燃料の第2の流れは、1つまたは複数のオリフィス82を通ってシリンダ16内部に流入することもできる。
【0064】
同様に、コントローラ30が、燃料噴射器128を制御するように構成されている場合には、制御弁118がその第2の位置に移動するとき、制御弁118は、燃料噴射器128の制御室182をドレン出口68に流体連結させ、ドレン出口68はノズル室端部162に隣接するチェック弁部材168に作用する燃料の圧力を基準にして制御室182内の圧力を低減させることができる。ノズル室端部162に隣接する高圧は、チェック弁部材168をノズルシート190から離接するように移動させ、燃料の第2の流れがノズル室152から流出してかつノズル室150および嚢154内部に流入することを可能にする。燃料の第2の流れはまた、1つまたは複数のオリフィス82を通ってシリンダ16内部に流入することもできる。したがって、ステップ616では、制御弁116、118の両方が通電されているので、燃料の第1および第2の流れは、燃料噴射器26または128から流出してシリンダ16内部に流入することができる。ステップ616でシリンダ16内部に噴射されつつある燃料の量は、ステップ610でシリンダ16内部に噴射される燃料の量よりも多くてもよいことを当業者なら認識するであろう。
【0065】
方法600は、クランクアングルθがクランクアングル「θ3」より大きいかどうかを判定するステップ(ステップ618)を含むことができる。ステップ618において、コントローラ30は、例えばクランクアングルθを決定するステップ606に関して上述したものと同様の機能を発揮することができる。コントローラは、クランクアングルθの決定された値を閾値θ3と比較することができ、閾値θ3は燃料噴射の終了を意味する。コントローラ30は、例えばクランクアングルセンサ32によって測定されたクランクアングルθがクランクアングルθ3以下であると判定した場合(ステップ618:いいえ)、第1のチェック弁部材と第2のチェック弁部材を動作させ続けるステップ620に進むことができる。このステップでは、コントローラ30は、ソレノイド120およびソレノイド122の両方を通電状態に保持し続けることができ、燃料の第1および第2の流れの両方が、燃料噴射器26または128のオリフィス82から流出することを可能にする。しかしながら、コントローラ30は、例えばクランクアングルセンサ32によって測定されたクランクアングルθがクランクアングルθ3よりも大きいと判定した場合(ステップ612:はい)、ステップ622に進むことができる。
【0066】
方法600は、シリンダ16内部への燃料噴射を停止するステップを含むことができる(ステップ622)。ステップ622において、コントローラ30は、ソレノイド120および122両方の非通電にするように構成されてもよい。ソレノイド120、122を非通電にすることにより、付勢部材124の付勢力により制御弁116および118がそれぞれの第1の位置に復帰することが可能になる。制御弁116および118がそれぞれの第1の位置へ移動することにより、制御室74および76とドレン出口68との間の連結をブロックすることができる。制御室74、76を、燃料入口66にも連結することができるため、制御室74、76とドレン出口68との間の連結をブロックすることにより、制御室74、76をコモンレール28の圧力にさらすことができる。これにより、チェック弁部材70、72がそれぞれ噴射端部86、90に向かって移動することができる。その結果、チェック弁部材70、72がそれぞれノズルシート102、108に密封状態で接触して、1つまたは複数のオリフィス82をブロックして、ノズル室100およびノズル室106からシリンダ16内部への燃料の流れを停止させることができる。
【0067】
同様に、コントローラ30が、燃料噴射器128を制御するように構成されている場合には、ソレノイド120および122を非通電にすることにより、制御室178および182とドレン出口68との間の連結をブロックすることができる。制御室178および182を、通路174および176を介して燃料入口66に連結することができるため、制御室178および182とドレン出口68との間の連結をブロックすることによって、制御室178および182をコモンレール28の高圧力にさらすことができる。これにより、チェック弁部材156、168がそれぞれ噴射端部160およびノズル室端部162に向かって移動することができる。結果として、チェック弁部材156、168は、それぞれノズルシート186、190に密封状態で接触し、1つまたは複数のオリフィス82および通路164をブロックさせて、ノズル室150およびノズル室152からシリンダ16内部へのの燃料の流れを停止させることができる。
【0068】
図7は、上述した方法600に対応する時間経過とともに、1つまたは複数のオリフィス82を通ってシリンダ16内部への燃料流量の変化を示す例示的なチャート700を示す。
図7のチャートは、レートシェイプ(流量波形)と呼ばれることがある。
図7に示すように、コントローラ30は、時間t
1(クランクアングルθ
1に対応する)においてソレノイド120を通電することができる。コントローラ30は、時間t
2(クランクアングルθ
2に対応する)までソレノイド122を非通電状態に維持することができる。時間t
2において、コントローラ30は、ソレノイド120にも通電しながらソレノイド122に通電することができ、
図7に見られるように、シリンダ16内部への燃料流量の増加を引き起こす。コントローラ30は、時間t
3(クランクアングルθ
3に対応する)におけるソレノイド120および122を非通電にすることができ、これにより、1つまたは複数のオリフィスからの燃料の流量をゼロに減少させることができる。こうして、
図7は、時間t
1とt
2との間に少量の燃料が最初にシリンダ16に噴射され、時間t
2とt
3の間により多い量の燃料がシリンダ16に噴射される例示的な噴射方法を示す。燃焼サイクルの初期段階において時間t
1とt
2の間に少量の燃料を導入することは、シリンダ16内の温度を低下させるのに役立ち、これは、結果的に燃焼中にシリンダ16内に生成されるばい煙および/またはNO
xの量を減少させるのに補助し得る。
【0069】
方法600および
図7に示される対応するレートシェイプは、コントローラ30および燃料システム20によって実行され得る例示的な方法に対応し得ることが理解されるべきである。燃料噴射器26または128は、燃焼サイクル中にシリンダ16に噴射される燃料の流量および量を変更するために、多くの異なる方法で作動され得ることが考えられる。例えば、いくつかの例示的な実施形態では、燃焼サイクルの終了に向かって追加の燃料を噴射させ、燃焼サイクル中に生成されたばい煙を燃焼させるのを補助するために、チェック弁部材70または156を、θ
2より大きなクランクアングルにおいて作動させることができる。他の例示的な実施形態では、チェック弁部材70、72の両方または156、168の両方をクランクアングルθ
1およびθ
2の間で作動させることができ、チェック弁部材70または156のみをθ
2よりも大きな角度で作動させることができる。
【0070】
本開示の燃料噴射器に対して種々の修正および変形をない得ることが当業者に明らかであろう。本開示の燃料噴射器の仕様および実施を考察すれば他の実施形態が当業者に明らかであろう。仕様および実施例は、模範的なものに過ぎないと考えるべきであり、真の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示されることが意図される。