(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】バルブ用手動操作機構及びこれを備えるバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/44 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
F16K31/44 G
(21)【出願番号】P 2019076363
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】八丁 菜津美
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-118267(JP,U)
【文献】特開平6-129566(JP,A)
【文献】特開昭60-60385(JP,A)
【文献】実開平3-62277(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0009552(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0309057(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムの回転駆動により開閉操作が行われるバルブと前記ステムを回転駆動するための駆動装置との間に配置されるバルブ用手動操作機構であって、
回転軸線周りに回転可能であり且つ前記回転軸線に沿って互いと隣接して配置される第1のシャフト及び第2のシャフトと、
前記第2のシャフトに面する前記第1のシャフトの端部の外周部に設けられた第1の切欠部と、
前記第1のシャフトに面する前記第2のシャフトの端部の外周部に設けられた第2の切欠部と、
前記第1の切欠部内に配置されており、前記第2のシャフト側の端部が前記第1の切欠部内に配置される位置から前記第2の切欠部内に突出する位置まで前記回転軸線に沿った方向に移動可能となっているクラッチ部材と、
前記第2のシャフトに対して前記回転軸線周りに回転可能に取り付けられた操作ハンドルと、
前記操作ハンドルに支持され、前記第2のシャフトに面する端部に係合部を有した切り換えレバーと、
を備え、前記切り換えレバーは、前記操作ハンドルに対して、前記係合部が前記第2の切欠部に係合する係合位置と前記係合部が前記第2の切欠部から離脱する係合解除位置との間で摺動可能となっていることを特徴とするバルブ用手動操作機構。
【請求項2】
前記クラッチ部材は、前記第1の切欠部とのみ係合する第1のクラッチ係合位置と前記第1の切欠部及び前記第2の切欠部の両方と係合する第2のクラッチ係合位置との間で前記回転軸線に沿った方向に移動可能であり、前記切り換えレバーを前記係合位置に移動すると、前記クラッチ部材が前記第2のクラッチ係合位置から前記第1のクラッチ係合位置に移動されるように構成されている、請求項1に記載のバルブ用手動操作機構。
【請求項3】
前記切り換えレバーの前記係合部の先端部における前記回転軸線方向の前記第1のシャフト側の面にテーパ状の傾斜面が形成されている、請求項2に記載のバルブ用手動操作機構。
【請求項4】
前記クラッチ部材の前記第2のシャフト側の端部における外側面にテーパ状の傾斜面が形成されている、請求項2又は請求項3に記載のバルブ用手動操作機構。
【請求項5】
前記第2のシャフトへ向かって前記クラッチ部材を付勢する付勢部材をさらに備える、請求項1から請求項4の何れか一項に記載のバルブ用手動操作機構。
【請求項6】
前記クラッチ部材を支持し前記第1のシャフトの外周に沿って移動する環状のクラッチガイドをさらに備え、前記クラッチ部材の前記回転軸線方向の移動が前記クラッチガイドによって案内される、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のバルブ用手動操作機構。
【請求項7】
前記第1のシャフトが、小径部と、前記第2のシャフトに面し且つ該小径部よりも大きい直径を有する大径部とを含むと共に、前記第2のシャフトが、小径部と、前記第1のシャフトに面し且つ該小径部よりも大きい直径を有する大径部とを含み、
前記第1の切欠部が前記第1のシャフトの前記大径部に形成され、
前記第2の切欠部が前記第2のシャフトの前記大径部に形成されている、請求項1から請求項6の何れか一項に記載のバルブ用手動操作機構。
【請求項8】
前記切り換えレバーを前記係合位置と前記係合解除位置とにロック可能なロック機構をさらに備える、請求項1から請求項7の何れか一項に記載のバルブ用手動操作機構。
【請求項9】
弁体の回転により開閉が行われるバルブであって、
前記弁体に連結され該弁体を回転させるステムと、
請求項1から請求項8の何れか一項に記載のバルブ用手動操作機構と、
を備え、前記バルブ用手動操作機構の第2のシャフトが前記ステムに連結されるようになっていることを特徴とするバルブ。
【請求項10】
前記ステムを駆動するための駆動装置をさらに備え、前記バルブ用手動操作機構の第1のシャフトが前記駆動装置の出力軸に連結される、請求項9に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置によってステムを介して弁体を回転させることにより開閉を行うバルブに用いられ、必要に応じて、手動でステムを回転させることを可能とさせるバルブ用手動操作機構及びこれを備えるバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動式や流体駆動式などの駆動装置によって弁体に連結されるステムを回転駆動して開閉を行う自動バルブ装置では、駆動装置の故障時のような緊急時などに、必要に応じて手動でステムを回転駆動させることができるように、手動操作機構を備えているものがある。このような手動操作機構は、操作者の負荷を軽減するために、手動操作時に、駆動装置の出力軸とステムとの連結を解除できるようになっていることが好ましい。
【0003】
このような手動操作機構として、例えば、特許文献1は、圧力媒体を用いて作動するシリンダ部に連結されたラックによってピニオン軸を回転させるようになっている弁作動装置とボールコックである弁との間に配置される手動操作装置を開示している。特許文献1に開示される手動操作装置では、ピニオン軸と共に回転するようにピニオン軸にレバーを配置し、弁の弁軸と共に回転し得るように弁軸にハンドルレバーを取り付け、弁作動装置による弁の作動時には、ハンドルレバーに支持される弾性の爪をレバーに設けた窪みに掛合させることで、ピニオン軸と弁軸との連結を行い、手動操作時には、爪を窪みから逸脱させて、ピニオン軸と弁軸との連結を解除し、ハンドルレバーにより弁軸を回転させることができるようにしている。
【0004】
また、特許文献2は、動力源の出力軸に設けた第1コネクタと、第1のコネクタと同軸上に位置する従動軸に第2コネクタと、ばね付勢されて、一部が第1コネクタ及び第2コネクタに係合し、かつ、ばねに抗して反対側へ摺動させることにより、第2コネクタに係合したまま、第1コネクタから外れるようになっているアダプタとを備えた手動切換操作装置を開示している。特許文献2に開示の手動切換操作装置では、通常時は、アダプタが第1コネクタ及び第2コネクタの両方に係合して動力源の出力軸により弁の弁軸である従動軸を回転させることができる。一方、手動操作時には、アダプタの外側面に設けられた環溝に係合する偏心カムに連結される操作軸を回転させることによりアダプタをばねに抗して押し下げてアダプタと第1コネクタとの係合を外し、この状態なったときに整合する、アダプタの案内孔と第2コネクタの受孔にレバーを嵌挿して、アダプタと第2コネクタとを一緒に回転させることができるようにし、レバーによる手動回転を可能にさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-060385号公報
【文献】特開平6-129566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているような手動操作機構では、手動操作するためのハンドルレバーが、常時、弁の弁軸と共に回転するように弁軸に取り付けられている。したがって、弁作動装置のピニオン軸と共に回転するようにピニオン軸に配置されているレバーの爪を弁軸に取り付けられたハンドルレバーの窪みに掛合させることにより、ピニオン軸と弁軸とを連結させて、駆動装置である弁作動装置によって弁軸を駆動すると、ハンドルレバー及びレバーが弁軸と共に回転する。このように、駆動装置による弁軸の回転駆動時に手動操作のためのハンドルが弁軸の回転に伴って回転するようになっている場合に、ハンドルが周囲の物に接触したり、駆動装置が動力停止から復帰したときなどに、操作者に意図せずに接触したりして、物の破損や操作者の負傷を招く可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に開示されているような手動操作機構では、手動操作時に手動操作のためのレバーを装着するので、駆動装置による弁軸の駆動時に弁軸の回転に伴ってレバーが回転することはなく、上述のような物の破損や操作者の負傷を防ぐことができる。しかしながら、レバーが手元にないと、緊急時に手動操作を行うことができないという問題がある。
【0008】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解決するために、手動操作のためのハンドルを備えていながら、ハンドルとバルブの弁体を回転させるためのステムとの連動を解除することを可能にし、駆動装置によるバルブの駆動時にハンドルを回転させないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、本発明は、第1の態様として、ステムの回転駆動により開閉操作が行われるバルブと前記ステムを回転駆動するための駆動装置との間に配置されるバルブ用手動操作機構であって、回転軸線周りに回転可能であり且つ前記回転軸線に沿って互いと隣接して配置される第1のシャフト及び第2のシャフトと、前記第2のシャフトに面する前記第1のシャフトの端部の外周部に設けられた第1の切欠部と、前記第1のシャフトに面する前記第2のシャフトの端部の外周部に設けられた第2の切欠部と、前記第1の切欠部内に配置されており、前記第2のシャフト側の端部が前記第1の切欠部内に配置される位置から前記第2の切欠部内に突出する位置まで前記回転軸線に沿った方向に移動可能となっているクラッチ部材と、前記第2のシャフトに対して前記回転軸線周りに回転可能に取り付けられた操作ハンドルと、前記操作ハンドルに支持され、前記第2のシャフトに面する端部に係合部を有した切り換えレバーとを備え、前記切り換えレバーは、前記操作ハンドルに対して、前記係合部が前記第2の切欠部に係合する係合位置と前記係合部が前記第2の切欠部から離脱する係合解除位置との間で摺動可能となっているバルブ用手動操作機構を提供する。
【0010】
上記バルブ用手動操作機構では、第1の切欠部内に配置されたクラッチ部材の第2のシャフト側の端部が第1の切欠部内に配置される位置から第2の切欠部内に突出する位置までクラッチ部材が回転軸線に沿った方向に移動可能になっていると共に、操作ハンドルに支持される切り換えレバーの係合部が第2の切欠部に係合する係合位置と係合部が第2の切欠部から離脱する係合解除位置との間で切り換えレバーが操作ハンドルに対して摺動可能となっている。したがって、クラッチ部材の第2のシャフト側端部が第2の切欠部内に突出する位置にクラッチ部材を移動すれば、クラッチ部材が第1のシャフトの第1の切欠部及び第2のシャフトの第2の切欠部の両方に係合して、第1のシャフトと第2のシャフトとを連動して回転させることができる。また、このとき、切り換えレバーを係合解除位置に移動すれば、切り換えレバーの係合部が第2のシャフトの第2の切欠部から離脱して、係合部と第2の切欠部との係合が解除される。すなわち、切り換えレバーが支持される操作ハンドルと第2のシャフトとの連動が解除され、操作ハンドルと第2のシャフトとの相対的な回転が可能となる。一方、クラッチ部材の第2のシャフト側端部が第1の切欠部内に配置される位置にクラッチ部材を移動させれば、クラッチ部材が第2のシャフトの第2の切欠部と係合しなくなり、第1のシャフトと第2のシャフトとの連動を解除することができる。また、このとき、切り換えレバーを係合位置に移動すれば、切り換えレバーの係合部が第2のシャフトの第2の切欠部に係合して、切り換えレバーが支持される操作ハンドルと第2のシャフトとが連動して回転するようになる。
【0011】
上記バルブ用手動操作機構では、前記クラッチ部材は、前記第1の切欠部とのみ係合する第1のクラッチ係合位置と前記第1の切欠部及び前記第2の切欠部の両方と係合する第2のクラッチ係合位置との間で前記回転軸線に沿った方向に移動可能であり、前記切り換えレバーを前記係合位置に移動すると、前記クラッチ部材が前記第2のクラッチ係合位置から前記第1のクラッチ係合位置に移動されるように構成されていることが好ましい。この場合、切り換えレバーを係合位置に移動して、操作ハンドルによる回転操作を可能にさせると、自動的に、クラッチ部材が第1の切欠部とのみ係合する第1のクラッチ係合位置に移動する。したがって、第1のシャフトと第2のシャフトとの連動が解除され、操作ハンドルによる回転操作時に、切り換えレバーが係合する第2の切欠部を有する第2のシャフトのみを回転させ、第1のシャフトを回転させないようにすることが可能となる。
【0012】
また、前記切り換えレバーの前記係合部の先端部における前記回転軸線方向の前記第1のシャフト側の面に傾斜面が形成されていることが好ましい。この構成に代えて又は加えて、前記クラッチ部材の前記第2のシャフト側の端部における外側面に傾斜面が形成されているようにしてもよい。このような構成とすることで、クラッチ部材が第2のクラッチ係合位置に配置されていても、切り換えレバーを係合解除位置から係合位置へ移動させる動作の際に、係合部がクラッチ部材の端部に当接することにより、クラッチ部材を第2のクラッチ係合位置から第1のクラッチ係合位置へ円滑に移動させることができる。
【0013】
さらに、前記第2のシャフトへ向かって前記クラッチ部材を付勢する付勢部材をさらに備えることが好ましい。このような構成とすれば、切り換えレバーを係合解除位置に移動して、係合部が第2の切欠部から離脱すると、クラッチ部材が付勢部材の付勢により第2のシャフトへ向かって移動して、係合部に代わってクラッチ部材が第2の切欠部に係合するようになる。したがって、操作ハンドルによる回転操作を可能とさせていないときには、自動的に第1のシャフトと第2のシャフトとが連動する状態に復帰させることが可能となる。
【0014】
一つの実施形態として、前記クラッチ部材を支持し前記第1のシャフトの外周に沿って移動する環状のクラッチガイドをさらに備え、前記クラッチ部材の前記回転軸線方向の移動が前記クラッチガイドによって案内されるようにしてもよい。
【0015】
また、前記第1のシャフトが、小径部と、前記第2のシャフトに面し且つ該小径部よりも大きい直径を有する大径部とを含むと共に、前記第2のシャフトが、小径部と、前記第1のシャフトに面し且つ該小径部よりも大きい直径を有する大径部とを含み、前記第1の切欠部が前記第1のシャフトの前記大径部に形成され、前記第2の切欠部が前記第2のシャフトの前記大径部に形成されているようにしてもよい。
【0016】
さらに、前記切り換えレバーを前記係合位置と前記係合解除位置とにロック可能なロック機構をさらに備えるようにしてもよい。
【0017】
また、本発明は、第2の態様として、弁体の回転により開閉が行われるバルブであって、前記弁体に連結され該弁体を回転させるステムと、上述のバルブ用手動操作機構とを備え、前記バルブ用手動操作機構の第2のシャフトが前記ステムに連結されるようになっているバルブを提供する。
【0018】
上記バルブでは、例えば、前記ステムを駆動するための駆動装置をさらに備え、前記バルブ用手動操作機構の第1のシャフトが前記駆動装置の出力軸に連結されるようにすればよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバルブ用手動操作機構及びこれを備えるバルブによれば、第2のシャフト側の端部が第2の切欠部内に突出する位置にクラッチ部材を移動したときに、第1のシャフトと第2のシャフトとを連動して回転させることができる。したがって、バルブ用手動操作機構を駆動装置とバルブとの間に配置すれば、駆動装置の回転をバルブのステムに伝達して弁体を回転駆動することが可能となる。また、切り換えレバーを係合解除位置に移動したときに、操作ハンドルと第2のシャフトとの相対的な回転が可能となる。したがって、駆動装置によりバルブのステムを回転駆動するときに、操作ハンドルがステムの回転に伴って回転しないようにすることができる。これにより、駆動装置によるバルブのステムの回転駆動を可能とさせつつ、操作ハンドルの回転により周囲の物の破損や操作者の負傷を招くことを防ぐことができる。一方、切り換えレバーを係合位置に移動すれば、第1のシャフトと第2のシャフトとの連動を解除することがでる。また、このときに、第2のシャフト側の端部が第1の切欠部内に配置される位置にクラッチ部材を移動させれば、切り換えレバーが支持される操作ハンドルと第2のシャフトとが連動して回転するようになる。したがって、バルブ用手動操作機構を駆動装置とバルブとの間に配置すれば、操作ハンドルによってバルブのステムを回転駆動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明によるバルブ用手動操作機構の一実施形態の断面図である。
【
図2】
図1に示されているバルブ用手動操作機構の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示されているバルブ用手動操作機構における板バネとクラッチガイドの配置状態を示す説明図である。
【
図4】バルブ用手動操作機構の切り換えレバーが第2のシャフトの第2の切欠部から離脱した係合解除位置に配置された状態を示す断面図である。
【
図5】
図4に示されている状態のバルブ用手動操作機構の断面と垂直な断面を示す断面図である。
【
図6】バルブ用手動操作機構の切り換えレバーが第2のシャフトの第2の切欠部に係合した係合位置に配置された状態を示す断面図である。
【
図7】
図6に示されている状態のバルブ用手動操作機構の断面と垂直な断面を示す断面図である。
【
図8】本発明によるバルブ用手動操作機構を駆動装置とバルブとの間に取り付けた使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明によるバルブ用手動操作機構の実施形態を説明するが、本発明が図示されている実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0022】
本発明によるバルブ用手動操作機構11は、
図8に示されているように、バルブ101とバルブ101を駆動するための駆動装置103との間に接続されて用いられる。バルブ101は、例えばボールバルブやバタフライバルブのように、ステム101aに接続される弁体を回転させることにより開閉を行う回転弁タイプのものである。また、駆動装置103は、電動又はエアなどの作動流体を用いて回転駆動した出力軸103aの回転をステム101aに伝達し、バルブ101の操作を行うものである。バルブ用手動操作機構11は、通常時は駆動装置103によって駆動されるバルブ101において、駆動装置103の故障や停電のような緊急時などに、バルブ101を手動で操作して開閉を行うために使用される。したがって、バルブ用手動操作機構11は、通常時には、駆動装置103の出力軸103aの回転をバルブ101のステム101aに伝達できる一方、上述のような緊急時にはバルブ101のステム101aの手動操作を可能とさせるようになっている。
【0023】
次に、
図1から
図3を参照して、バルブ用手動操作機構11の一実施形態の全体構成を説明する。バルブ用手動操作機構11は、ケーシング13と、ケーシング13内に回転軸線O周りに回転可能に支持される第1のシャフト15及び第2のシャフト17と、回転軸線O周りに回転可能となるように第2のシャフト17に取り付けられる操作ハンドル19とを備える。
【0024】
ケーシング13は、上側ケーシング13aと下側ケーシング13bとによって構成されており、内部に第1のシャフト15及び第2のシャフト17を収容するための空間が形成されている。また、ケーシング13の側面には、回転軸線O周りに90度以上の範囲にわたって窓部21が形成されており、この窓部21を通って、第2のシャフト17に取り付けられた操作ハンドル19が外部まで延び且つ回転軸線O周りに旋回させることができるようになっている(
図8参照)。
【0025】
第1のシャフト15は、上側ケーシング13aに回転可能に支持されており、上側ケーシング13aを貫通して外部まで延びる上端部に駆動装置103の出力軸103aが接続されるようになっている。また、第2のシャフト17は、下側ケーシング13bに回転可能に支持されており、下側ケーシング13bを貫通して外部まで延びる下端部にバルブ101のステム101aが接続されるようになっている。しかしながら、第1のシャフト15の上端部及び第2のシャフトの下端部は、出力軸103a及びステム101aを接続できるようになっていれば、外部まで突出している必要はない。第1のシャフト15の下端部と第2のシャフト17の上端部はケーシング13内で隣接して配置されている。好ましくは、回転軸がぶれるのを抑制にするために、第1のシャフト15及び第2のシャフト17の一方に円形状の環状突起部を設けると共に他方に断面円形状のの嵌合凹部を設け、環状突起部を嵌合凹部に嵌合させるようにすることが好ましい。図示されている実施形態では、第1のシャフト15に環状突起部23が設けられ、第2のシャフト17に嵌合凹部25が設けられている。
【0026】
第1のシャフト15は、断面円形状の小径部15aと、小径部15aと隣接して第1のシャフト15の下端部(第2のシャフト17に隣接する端部)に設けられ且つ小径部15aよりも大きい直径を有して小径部15aの外周面から径方向に突出して延びるフランジ状の大径部15bとを含んでいる。同様に、第2のシャフト17も、断面円形状の小径部17aと、小径部17aと隣接して第2のシャフト17の上端部(第1のシャフト15に隣接する端部)に設けられ且つ小径部17aよりも大きい直径を有して小径部17aの外周面から径方向に突出して延びるフランジ状の大径部17bとを含んでいる。このように、第1のシャフト15の大径部15bと第2のシャフト17の大径部17bとは、互いに隣接して配置されるようになっている。さらに、第1のシャフト15の大径部15bと第2のシャフト17の大径部17bには、互いと回転軸線O周りの同じ位置に、それぞれ、第1の切欠部27と第2の切欠部29とが形成されている。第1の切欠部27及び第2の切欠部29は、
図2に示されているように、それぞれ、第1のシャフト15の大径部15b及び第2のシャフト17の大径部17bにおいて、回転軸線O周りに等間隔で複数設けられていることが好ましい。図示されている実施形態では、第1の切欠部27及び第2の切欠部29は回転軸線O周りに等間隔でそれぞれ二つずつ設けられている。しかしながら、第1の切欠部27と第2の切欠部29は、それぞれ、第1のシャフト15の大径部15bと第2のシャフト17の大径部17bに、一つ又は三つ以上設けられていてもよい。また、複数の第1の切欠部27及び第2の切欠部29が設けられる場合には、回転軸線O周りに等間隔で設けられることが好ましいが、任意の位置に設けるようにしてもよい。
【0027】
なお、第1のシャフト15及び第2のシャフト17は、大径部15b,17bと反対側の小径部15a,17aの端部に小径部15a,17aよりも細い支持部15c,17cをさらに備えており、第1のシャフト15の支持部15cが上側ケーシング13aに回転可能に支持され、第2のシャフト17の支持部17cが下側ケーシング13bに回転可能に支持されている。
【0028】
第1のシャフト15の第1の切欠部27内には、回転軸線Oに沿った方向に上下動可能にクラッチ部材31が配置されている。クラッチ部材31は、第1のシャフト15の第1の切欠部27と第2のシャフト17の第2の切欠部29が回転軸線O方向に整列しているときに、下端部(すなわち第2のシャフト17側の端部)が第1の切欠部27内に配置されて第1の切欠部27のみと係合する第1のクラッチ係合位置(
図6参照)と、下端部が第1の切欠部27から突出して第2の切欠部29内に配置されて第1の切欠部27及び第2の切欠部29の両方と係合する第2のクラッチ係合位置(
図4参照)との間で回転軸線O方向に沿った方向に上下動可能になっている。クラッチ部材31が第2のクラッチ係合位置に配置されているとき、クラッチ部材31が第1のシャフト15の第1の切欠部27と第2のシャフト17の第2の切欠部29の両方に係合するので、第1のシャフト15と第2のシャフト17とは、回転の伝達が可能となるように連結され、連動して回転する。一方、クラッチ部材31が第1の係合位置に配置されているとき、クラッチ部材31は第1のシャフト15の第1の切欠部27とのみ係合するので、第1のシャフト15と第2のシャフト17とは連結を解除されて回転が伝達されなり、相対的な回転が可能な状態となって、一方が回転しても他方は回転しないようにすることが可能となる。
【0029】
図示されている実施形態では、クラッチ部材31は、第1のシャフト15の小径部15aの周りに配置された環状のクラッチガイド33に支持されている。クラッチガイド33とクラッチ部材31とは一体的に形成された一つの部材となっていることが好ましい。クラッチガイド33は、第1のシャフト15の小径部15aの直径よりも僅かに大きく且つ大径部15bの直径よりも小さい内径を有し、第1のシャフト15の小径部15aに沿って移動可能となっている。したがって、クラッチガイド33は、小径部15aに沿って移動可能である一方、小径部15aと大径部15bとの段差部を越えて大径部15bまでは下降できない。よって、クラッチガイド33が段差部に到達したときにクラッチ部材31の下端部が第1の切欠部27から第2の切欠部29へ突出するようにクラッチ部材31の大きさを定めれば、クラッチ部材31は、第1のクラッチ係合位置と第2のクラッチ係合位置との間の回転軸線Oに沿った方向のクラッチ部材31の移動が可能となる。
【0030】
さらに、図示されている実施形態では、クラッチガイド33は、第1のシャフト15の小径部15aを取り囲むようにクラッチガイド33の上方に配置されたスラストリング35を介して、操作ハンドル19に一端部を固定された概略Y字形状の板バネ37によって第2のシャフト17へ向けて付勢されている。スラストリング35は、超高分子量PE樹脂のような摺動性の良い材料から作製されている。このような構成により、外力が作用しない状態では、クラッチ部材31が第2のクラッチ係合位置に移動しようとするようになる。クラッチガイド33とスラストリング35はPOM樹脂などを用いて一体的に形成されてもよい。また、クラッチ部材31が第2のクラッチ係合位置に配置されている状態では、板バネ37の付勢力に抗する力を作用させなければ、クラッチ部材31を第2のクラッチ係合位置から回転軸線方向に上方へ移動させることができなくなるので、意図せずに、第1のシャフト15と第2のシャフト17との連動が解除されることを防ぐことができる。
【0031】
操作ハンドル19は、回転軸線O周りに回転可能に第2のシャフト17に取り付けられる。図示されている実施形態では、操作ハンドル19は第1のシャフト15及び第2のシャフト17の周りに回転可能に取り付けられている。操作ハンドル19内には、操作ハンドル19と第2のシャフト17との連動と連動解除とを切り換えるための切り換えレバー39が操作ハンドル19に対して摺動可能に支持されている。詳細には、切り換えレバー39は、ガイドブロック部39aと、ガイドブロック部39aに片持ち支持されて延びるアーム部39bと、アーム部39b上に設けられた突起部39cと、アーム部39bの自由端部側に設けられた操作部39dと、ガイドブロック部39aから延びる係合部39eとを備える。
【0032】
ガイドブロック部39aは、操作ハンドル19内に設けられた案内路41に沿って摺動し、操作ハンドル19に対する摺動を案内するようになっている。係合部39eは、第2のシャフト17の大径部17bに面するように配置され、操作ハンドル19に対する切り換えレバー39の摺動により、第2のシャフト17の第2の切欠部29に対する係合及び離脱を行うことができるようになっている。
図4及び
図5に示されているように、係合部39eを第2の切欠部29から離脱させると、操作ハンドル19と第2のシャフト17の連動を解除して操作ハンドル19に対して第2のシャフト17を自由に回転させることができるようになる。また、
図6及び
図7に示されているように、係合部39eを第2の切欠部29に係合させると、操作ハンドル19と第2のシャフト17とを連動して回転させることができるようになる。
【0033】
操作部39dは、操作ハンドル19に設けられた窓部43を貫通して外部に突出している。また、操作ハンドル19における突起部39cと対向する面には、突起部39cが嵌合可能な二つの凹部45a,45bが設けられている。突起部39cは、
図4に示されているように第2のシャフト17から遠い側の凹部(以下、係合解除用凹部)45aに嵌合されたときに係合部39eが第2の切欠部29から離脱し且つ
図6に示されているように第2のシャフト17に近い側の凹部(係合用凹部)45bに嵌合されたときに係合部39eが第2の切欠部29に係合するような位置に設けられており、突起部39cと凹部45a,45bとの嵌合により、係合部39eが第2の切欠部29に係合した係合位置又は係合部39eが第2の切欠部29から離脱した係合解除位置に、切り換えレバー39をロックすることが可能となる。また、操作部39dを窓部43内に押し込んでアーム部39bを撓ませることによって突起部39cと凹部45a,45bとの嵌合を解除することができ、この状態で操作部39dを用いて切り換えレバー39を摺動させることによって、突起部39cと嵌合する凹部45a,45bを切り換えることが可能となる。
【0034】
図4及び
図6に示されているように、係合部39eの先端部(第2のシャフトと面する側の端部)における回転軸線方向の第1のシャフト側の面(図示されている実施形態における上側面)に、上向きの凸状に湾曲した傾斜面(第1のシャフトから離れる側に傾斜する面)47が形成されていると共に、クラッチ部材31の第2のシャフト側の端部における外側面(回転軸線から遠い側の面)に、下向きの凸状に湾曲した傾斜面(回転軸線Oに近づく側に傾斜する面)49が形成されていることが好ましい。このような傾斜面47,49が形成されていることにより、切り換えレバー39を摺動して係合部39eを第2の切欠部29に係合させる係合位置に移動させたときに、係合部39eがクラッチ部材31に当接し、クラッチ部材31を第1の切欠部27へ向けて押し上げて第2の切欠部29から離脱させ、クラッチ部材31が第1の切欠部27とのみ係合する第1のクラッチ係合位置に円滑に移動させることが可能となる。図示されている実施形態では、傾斜面47,49が湾曲した傾斜面となっているが、面取りのように直線状(平面状)の傾斜面としてもよい。また、クラッチ部材31と係合部39eの両方にテーパ状の傾斜面47,49が形成されているが、一方のみに設けるようにしてもよい。
【0035】
バルブ用手動操作機構11は、
図1に示されているように、バルブ101と駆動装置103との間に接続されて使用される。詳細には、バルブ101の弁体(図示せず)に接続されているステム101aがケーシング13から上方に突出する第2のシャフト17の端部に螺合や圧入などにより接続され、駆動装置103の出力軸103aがケーシング13から下方に突出する第1のシャフト15の端部に螺合や圧入などにより接続される。
【0036】
次に、
図4から
図7を参照して、
図1や
図8に示されているように、バルブ101と駆動装置103との間に接続されたときのバルブ用手動操作機構11の動作を説明する。
【0037】
駆動装置103によってバルブ101のステム101aを回転駆動させるときには、最初に、第1のシャフト15の第1の切欠部27と第2のシャフト17の第2の切欠部29が回転軸線O方向に整列するように、操作ハンドル19を回転軸線O周りに回転させる(
図4参照)。第1のシャフト15の第1の切欠部27と第2のシャフト17の第2の切欠部29との回転軸線O方向の整列は、例えば、係合部39eを第2のシャフト17の第2の切欠部29に係合させた状態では、第2の切欠部29の位置が操作ハンドル19の向きから把握できるので、バルブ101の出力軸103aの回転位置を色の異なる部品や線、矢印等の目印により示す表示器51に基づいて出力軸103aに連結される第1のシャフト15の第1の切欠部27の回転位置を把握することで、容易に行うことが可能である。第1のシャフト15の第1の切欠部27の位置の把握を容易にするために、表示器51の目印の向きが第1の切欠部27の位置を指すように表示器51を設定しておくことが好ましい。
【0038】
次に、バルブ用手動操作機構11の切り換えレバー39の操作部39dを操作ハンドル19の窓部43に押し込むことによってアーム部39bを撓ませて突起部39cを凹部(係合用凹部)45bから離脱させた状態で、第2のシャフト17から離れる向きに係合位置から係合解除位置まで切り換えレバー39を摺動させる。切り換えレバー39が係合解除位置に到達したら、切り換えレバー39の操作部39dの押し下げを解除し、
図4に示されているように、突起部39cを係合解除用凹部45aに嵌合させる。これにより、切り換えレバー39が係合解除位置にロックされる。切り換えレバー39が係合解除位置に配置されると、
図4に示されているように、係合部39eは第2のシャフト17の第2の切欠部29から離脱する。また、クラッチ部材31を支持するクラッチガイド33は、板バネ37によってスラストリング35を介して第2のシャフト17へ向かって付勢されているので、係合部39eが第2のシャフト17の第2の切欠部29から離脱すると、第1の切欠部27内のクラッチ部材31が第1のクラッチ係合位置から第2のクラッチ係合位置へ移動して第2の切欠部29へ突出し、クラッチ部材31が係合部39eに代わって第2の切欠部29にも係合する。なお、このとき、
図5に示されているように、クラッチガイド33が第1のシャフト15の小径部15aに沿って移動して小径部15aと大径部15bの段差部に当接して停止し、クラッチ部材31の移動範囲は制限されるので、クラッチ部材31は第1の切欠部27と第2の切欠部29の両方に跨って係合する状態を維持することができる。このようにして、クラッチ部材31は第1の切欠部27と第2の切欠部29の両方に係合し、第1のシャフト15と第2のシャフト17とが連動して回転するようになる。したがって、駆動装置103の出力軸103aの回転が、第1のシャフト15及び第2のシャフト17を介してステム101aに伝達されるようになり、駆動装置103によってステム101aを駆動できるようになる。
【0039】
また、このとき、切り換えレバー39の係合部39eが第2のシャフト17の第2の切欠部29から離脱して、操作ハンドル19と第2のシャフト17の連動が解除され、操作ハンドル19に対して第2のシャフト17が相対的に回転できるようになっているので、第1のシャフト15と連動して第2のシャフト17が回転しても、操作ハンドル19が第2のシャフト17の回転に伴って回転することを防ぐことができる。したがって、駆動装置103によるステム101aの回転駆動の際に、操作ハンドル19が回転して、周囲の物や操作者に接触することにより破損や損傷を招くことを防ぐことができる。なお、操作ハンドル19が第2のシャフト17と連動して回転せず止まった状態を維持すると、駆動装置103の出力軸103aに連結される第1のシャフト15が回転するときに、第1のシャフト15の第1の切欠部27に係合するクラッチ部材31を支持するクラッチガイド33も第1のシャフト15と共に回転することになり、操作ハンドル19に支持される板バネ37に対してクラッチガイド33が回転することになる。したがって、板バネ37が直接的にクラッチガイド33に接触するようになっていると、板バネ37に対してクラッチガイド33が回転してクラッチガイド33及び板バネ37の摩耗を招く恐れがある。しかしながら、図示されているバルブ用手動操作機構11では、板バネ37が摺動性のよい材料(例えば超高分子量PE樹脂材料)から作製されるスラストリング35を介してクラッチガイド33を付勢しているので、板バネ37及びクラッチガイド33の摩耗を抑えることができるようになっている。POM樹脂などの摺動性と強度とを持ち合わせた材料を用いれば、クラッチガイド33とスラストリング35を一体的に形成してもよい。
【0040】
図示されている実施形態では、係合部39eが第2の切欠部29から離脱すると、板バネ37によってクラッチ部材31が自動的に第1の切欠部27と第2の切欠部29の両方に係合する第2のクラッチ係合位置に移動するようになっているが、手動でクラッチ部材31を第2のクラッチ係合位置に移動させるようにしてもよい。
【0041】
一方、駆動装置103の故障や停電のような緊急時などに、駆動装置103に代えて、手動でバルブ101のステム101aを回転駆動させるときには、最初に、表示器51により、第2の切欠部29の位置を把握して、切り換えレバー39の係合部39eが第2のシャフト17の第2の切欠部29と対向する位置に配置されるように、回転軸線O周りに操作ハンドル19を回転させる。なお、駆動装置103は、駆動装置103を駆動させるための作動流体や電力の供給が停止したときに、バルブ101のステム101aに接続された弁体を自動的にホーム位置として全開位置又は全閉位置に回転させるように構成されていることが好ましい。例えば、エア式など流体駆動される駆動装置103の場合、駆動装置103への作動流体の供給が停止されたときにバネの力で出力軸103aを回転させて弁体を全開位置又は全閉位置(ホーム位置)に配置させるようにすればよい。また、
図2や
図8に示されているように、バルブ用手動操作機構11のケーシング13にマーク53のような目印を設けると共に、操作ハンドル19にマーク55のような目印を設け、弁体がホーム位置に配置されたときに第2のシャフト17の第2の切欠部29がマーク53の向きに配置されるようにステム101aと第2のシャフト17とを連結することが好ましい。このような構成を採用すれば、停電などにより作動流体の供給が停止したとき、第2の切欠部29がマーク53で示される方向に向くようになる。したがって、操作ハンドル19のマーク55をケーシング13のマーク53に合せるように回転軸線O周りに操作ハンドル19を回転させることによって、容易に切り換えレバー39の係合部39eを第2の切欠部29と対向させる位置に配置することができる。
【0042】
次に、バルブ用手動操作機構11の切り換えレバー39の操作部39dを操作ハンドル19の窓部43に押し込むことによってアーム部39bを撓ませて突起部39cを係合解除用凹部45aから離脱させた状態で、第2のシャフト17へ接近させる向きに係合解除位置から係合位置まで切り換えレバー39を摺動させる。切り換えレバー39が係合位置まで到達したら、切り換えレバー39の操作部39dの押し下げを解除し、
図6に示されているように、突起部39cを係合用凹部45bに嵌合させる。これにより、切り換えレバー39が係合位置にロックされる。切り換えレバー39が係合位置へ向けて移動されるとき、係合部39eの傾斜面47とクラッチ部材31の傾斜面49とが当接して、係合部39eは、スラストリング35を介してクラッチガイド33に作用する板バネ37の付勢力に抗して、クラッチガイド33に支持されるクラッチ部材31を第2の切欠部29から離脱させる方向に第1のクラッチ係合位置まで上昇させる。さらに切り換えレバー39を係合位置まで移動させると、係合部39eは、
図6に示されているように、第2のシャフト17の第2の切欠部29に係合する。このとき、クラッチガイド33は、
図7に示されているように、第1のシャフト15の小径部15aに沿って移動して小径部15aと大径部15bの段差部から離れた状態となる。このようにして、クラッチ部材31は、第2の切欠部29から離脱して第1の切欠部27のみと係合し、第1のシャフト15と第2のシャフト17とが互いに対して相対的に回転することが可能となる。
【0043】
また、このとき、切り換えレバー39の係合部39eが第2のシャフト17の第2の切欠部29に係合しているので、操作ハンドル19と第2のシャフト17とが連動して回転するようになる。したがって、操作ハンドル19を手動で回転軸線O周りに回転させれば、操作ハンドル19の回転が第2のシャフト17を介してバルブ101のステム101aに伝達されて、操作ハンドル19によってステム101aを駆動できるようになる。また、上述したように第1のシャフト15と第2のシャフト17とが互いに対して相対的に回転できるようになっているので、操作ハンドル19によって第2のシャフト17を回転駆動してステム101aを回転させるときに、第1のシャフト15は第2のシャフト17と連動して回転しなくなり、駆動装置103の出力軸103aが操作者の負荷とならないようにして、操作者の負荷を軽減することができる。
【0044】
さらに、バルブ用手動操作機構11では、操作ハンドル19が第2のシャフト17に取り付けられた状態となっているので、手動操作時に操作ハンドル19を準備する必要がなく、迅速な切り換えが可能である。
【0045】
なお、切り換えレバー39が係合位置に配置されて、操作ハンドル19による第2のシャフト17の回転駆動が可能になっているとき、係合部39eが第2のシャフト17の第2の切欠部29に係合しているので、手動操作を行っても操作ハンドル19の位置に基づいて第2の切欠部29の位置を把握することができる。したがって、例えばバルブ101の出力軸103aの回転位置を示す表示器51の目印がバルブ101の出力軸103aに連結される第1のシャフト15の第1の切欠部27の位置を示すように設定することによって、表示器51の表示によって第1の切欠部27の位置が分かるようにしておけば、第1の切欠部27と第2の切欠部29を回転軸線O方向に整列させて、駆動装置103によるステム101aの駆動への切り換えも容易に行うことができ、操作ハンドル19による回転駆動から駆動装置103による回転駆動へのバルブ用手動操作機構11のモードの切り換えも容易となる。
【0046】
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明によるバルブ用手動操作機構11及びこれを備えるバルブ101を説明したが、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、図示されている実施形態では、クラッチガイド33を板バネ37で第2のシャフト17へ向けて付勢しており、切り換えレバー39を操作ハンドル19に対して摺動させて係合部39eを第2の切欠部29へ係合させる動作に伴って、係合部39eとクラッチ部材31との当接により、クラッチガイド33に支持されるクラッチ部材31を板バネ37の付勢力に抗して第2の切欠部29から離脱させるようにしている。しかしながら、板バネ37やクラッチガイド33を設けず、手動でクラッチ部材31を第1のクラッチ係合位置と第2のクラッチ係合位置との間で移動させるようにしてもよい。この場合、例えば手動でクラッチ部材31を第2のクラッチ係合位置から第1のクラッチ係合位置に移動させた状態で切り換えレバー39を係合解除位置から係合位置へ移動させるようにすればよい。
【符号の説明】
【0047】
11 バルブ用手動操作機構
15 第1のシャフト
15a 小径部
15b 大径部
15c 支持部
17 第2のシャフト
17a 小径部
17b 大径部
17c 支持部
19 操作ハンドル
27 第1の切欠部
29 第2の切欠部
31 クラッチ部材
33 クラッチガイド
37 板バネ
39 切り換えレバー
39d 操作部
39e 係合部
47 傾斜面
49 傾斜面