(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】発泡性内容物の吐出部材
(51)【国際特許分類】
B05B 9/04 20060101AFI20230906BHJP
B65D 83/30 20060101ALI20230906BHJP
B65D 83/20 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B05B9/04
B65D83/30
B65D83/20
(21)【出願番号】P 2019096421
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】横木 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】松井 和弘
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193128(JP,A)
【文献】特表2016-540695(JP,A)
【文献】特開2018-193081(JP,A)
【文献】特開2017-218184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
B65D 35/44-35/54
39/00-55/16
83/00
83/08-83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性内容物が充填されている吐出容器に取り付けられる吐出部材であって、
吐出容器のバルブに装着され、発泡性内容物を通す通路を有する台座と、
前記通路を遮るように配置され、発泡性内容物を所定の輪郭に成形する成形通路およびその成形通路を通過する発泡性内容物の流れを調節する通液調整部を備えた成形部材とを備え、
前記成形部材が、
台座に取り付けられるカバーの板状の上壁と、その
上壁の上面または下面に貼り付けられ、または
前記上壁と台座の間に挟み込まれる通液調整シートとを有し、
前記上壁の中心部に前記成形通路が形成され、
前記通液調整シートのうち前記成形通路と重なる範囲が、網目状の開口を有する通液調整部である、
吐出部材。
【請求項2】
前記成形部材が、前記台座に対して着脱自在に取り付けられている請求項1記載の吐出部材。
【請求項3】
前記成形部材が、前記台座に取り付けられるカバーと、そのカバーに貼り付けられる前記通液調整シートとを有し、
前記カバーの上壁に前記成形通路が形成されている請求項1または2記載の吐出部材。
【請求項4】
発泡性内容物が充填されている吐出容器に取り付けられる吐出部材であって、
吐出容器のバルブに装着され、発泡性内容物を通す通路を有する台座と、
前記通路を遮るように配置され、発泡性内容物を所定の輪郭に成形する成形通路およびその成形通路を通過する発泡性内容物の流れを調節する通液調整部を備えた成形部材とを備え、
前記通液調整部が網目状の開口を有し、
前記成形部材が、前記台座に取り付けられるカバーと、そのカバーに貼り付けられる通液調整シートとを有し、
前記通液調整シートに成形通路および通液調整部が形成されている吐出部材。
【請求項5】
発泡性内容物が充填されている吐出容器に取り付けられる吐出部材であって、
吐出容器のバルブに装着され、発泡性内容物を通す通路を有する台座と、
前記通路を遮るように配置され、発泡性内容物を所定の輪郭に成形する成形通路およびその成形通路を通過する発泡性内容物の流れを調節する通液調整部を備えた成形部材とを備え、
前記通液調整部が網目状の開口を有し、
前記成形部材がシートであり、その成形部材が前記台座に貼り付けられている吐出部材。
【請求項6】
発泡性内容物が充填されている吐出容器に取り付けられる吐出部材であって、
吐出容器のバルブに装着され、発泡性内容物を通す通路を有する台座と、
前記通路を遮るように配置され、発泡性内容物を所定の輪郭に成形する成形通路およびその成形通路を通過する発泡性内容物の流れを調節する通液調整部を備えた成形部材とを備え、
前記通液調整部が網目状の開口を有し、
前記成形部材が、前記台座に着脱自在に取り付けられるカバーと、そのカバーと台座との間に挟まれる通液調整シートおよび成形フィルムとを有し、
前記成形フィルムに成形通路が形成されている、吐出部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡性内容物の吐出部材に関し、とくに所定形状の泡体を吐出することができる吐出部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体部から供給される発泡性内容物を所定の形状に成形する成形通路を備える成形部と、成形通路を外側から覆い、微細な通路を多数有する吐出部とを備えている発泡性内容物の吐出部材が開示されている。この吐出部材は、泡体が成形部を通過することにより、所定の形状に形成することができ、成形部と吐出部とが内容物の圧力により一緒に膨張・収縮することで、吐出部材内での内容物の残量を少なくすることができる。この吐出部材は、内容物の圧力で膨張するように、成形部はフィルム状の合成樹脂シートを用い、吐出部はスポンジ状の軟質な多孔性素材を用いている。
【0003】
特許文献2には、多数の成形長穴を設けた板からなる造形部を有する吐出部材の造形ヘッドが開示されている。造形部の裏面側には、内容物を発泡させるための拡散室が設けられている。拡散室で発泡された泡体は、成形長穴を通ることでその形状に成形され、造形部の表面側に押し出された複数枚の泡体の全体で花などを表現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-218184号公報
【文献】特開2016-10919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の吐出部材は、内容物を吐出するたびに吐出部と成形部が膨張し、また吐出部が不均等な孔を有するスポンジであるため、スポンジに不均等に負荷がかかり破れやすく、泡体の形状が安定しない。また、成形部と吐出部の隙間に内容物が侵入し、乾燥して固まると、孔が詰まって成形することができなくなることがある。
【0006】
特許文献2の吐出部材では、造形部の裏面側の拡散室に内容物が残存するので、不衛生になりがちである。造形部は装着部に対して着脱自在であるので、取り外すことにより拡散室を清掃できるが、煩雑である。また、泡体を成形長穴から押し出すため、拡散室内にはある程度の圧力が必要である。そのため、成形長穴を広い面積にすることは難しい。
【0007】
本発明は、長期間使用しても泡体の形状が安定し、成形部が詰まるなどの不具合が生じにくく、さらに内容物が成形部に残存しにくい発泡内容物の吐出部材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吐出部材13、30、35は、発泡性内容物Cが充填されている吐出容器(エアゾール容器11)に取り付けられる吐出部材13であって、吐出容器11のバルブ15に装着され、発泡性内容物Cを通す通路18aを有する台座16と、前記通路18aを遮るように配置され、発泡性内容物Cを所定の輪郭に成形する成形通路23、23a、23bおよびその成形通路23、23a、23bを通過する発泡性内容物Cの流れを調節する通液調整部22aを備えた成形部材17とを備え、前記通液調整部22aが網目状の開口28を有することを特徴としている。
【0009】
このような吐出部材13においては、前記成形部材17が、台座16に対して着脱自在に取り付けられているものが好ましい。また、前記成形部材17が、前記台座16に取り付けられるカバー21と、そのカバー21に貼り付けられる通液調整シート22とを有し、前記カバー21に成形通路23が形成され、前記通液調整シート22に通液調整部22aが設けられているものが好ましい。さらに前記成形部材17が、前記台座16に取り付けられるカバー21と、そのカバー21に貼り付けられる通液調整シート22とを有し、前記通液調整シート22に成形通路23a、23bおよび通液調整部22aが形成されているものが好ましい。前記成形部材17がシート(通液調整シート22)であり、その成形部材17が前記台座16に貼り付けられているものであってもよい。また、前記成形部材17が、前記台座16に着脱自在に取り付けられるカバー21と、そのカバー21と台座16との間に挟まれる通液調整シート37および成形フィルム38とを有し、前記成形フィルム38に成形通路23が形成されているものが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吐出部材を吐出容器に取り付けて発泡性内容物を吐出させると、吐出容器から供給される発泡性内容物は、成形通路を通り、成形通路に対応する断面形状に成形される。そのとき、通液調整部により流速が調整されるため、成形された形状で立体的なフォームを形成することができる。そして通液調整部が網目状の開口を有するので、泡体が残存しにくい。さらに通気性が高く、衛生的であり、詰まりなどの不具合を生じにくい。
【0011】
前記成形部材が、台座に着脱自在に取り付けられている場合は、取り外して洗浄できるので一層衛生的である。また、前記成形部材が、前記台座に取り付けられるカバーと、そのカバーに貼り付けられる通液調整シートとを有し、前記カバーに成形通路が形成され、前記通液調整シートに通液調整部が設けられている場合は、成形通路の成形が容易で、発泡性内容物を成形しやすい。
【0012】
さらに前記成形部材が、前記台座に取り付けられるカバーと、そのカバーに貼り付けられる通液調整シートとを有し、前記通液調整シートに成形通路および通液調整部が形成されている場合は、構造が簡単になる。前記成形部材がシートであり、その成形部材が前記台座に貼り付けられている場合は、製造が容易になる。前記成形部材が、前記台座に着脱自在に取り付けられるカバーと、そのカバーと台座との間に挟まれる通液調整シートおよび成形フィルムとを有し、前記成形フィルムに成形通路が形成されている場合は、成形フィルムを交換するだけで泡体を好みの形状にすることができる。また、成形フィルムはフィルムに成形通路を打ち抜くだけで製造できるので、消費者が自分で好みのものを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは本発明の吐出部材の一実施形態をエアゾール容器に取り付けた状態で示す断面図、
図1Bはその吐出部材の一部切り欠き平面図、
図1Cは吐出される泡体の概略斜視図である。
【
図3】
図3は成形部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図4】
図4Aは本発明に関わる通液調整シートの一実施形態を示す拡大平面図、
図4Bは
図4AのIV-IV線断面図である。
【
図5】本発明の吐出部材の他の実施形態を示す断面図である。
【
図6】
図6Aは本発明の吐出部材の他の実施形態を示す断面図、
図6Bはその吐出部材の平面図、
図6Cは吐出された泡体の概略斜視図である。
【
図7】
図7Aは本発明の吐出部材のさらに他の実施形態を示す断面図、
図7Bはその吐出部材の一部切り欠き平面図である。
【
図8】本発明の吐出部材のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図9】
図9Aは通液調整シートのさらに他の実施形態を示す拡大平面図、
図9Bは
図9AのIX-IX線断面図である。
【
図10】通液調整シートのさらに他の実施形態を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1Aに示すエアゾール製品10は、発泡性内容物Cが充填されているエアゾール容器(吐出容器)11と、そのエアゾール容器11に取り付けられている肩カバー12と、吐出部材13とからなる。発泡性内容物Cは原液と、液化ガスとからなる。エアゾール容器11は、底部、胴部11aおよび肩部11bを備えた容器本体14と、容器本体14の上端開口部を閉じるエアゾールバルブ15とからなる公知の形態を有する。
【0015】
エアゾールバルブ15は、容器本体14の上端開口部の周囲にクリンチされるマウンティングカップ15aと、そのマウンティングカップ15aに保持されるハウジング15bと、そのハウジング15b内に上下移動自在に挿入されているステム15cとを有する。肩カバー12はマウンティングカップ15aの外周部に係止され、容器本体14の肩部11bや、容器本体14と吐出部材13の隙間を覆って見栄えをよくするものである。また、肩カバー12は吐出部材13を保護するキャップを装着するために利用することもできる。容器本体14およびマウンティングカップ15aは、図では金属製をイメージしているが、いずれか一方、または両方が合成樹脂などの他の素材であってもよい。
【0016】
吐出部材13は、ステム15cに取り付けられる台座16と、その台座16に着脱自在に被せられる成形部材17とからなる。台座16は、ステム15cに装着される筒状の装着部18と、装着部18の上端から拡がる円板状の上壁19と、上壁19の外周縁から下方に延びる筒状の外壁20とを備えている。装着部18の中心にはステム15c内と連通して内容物を通す通路18a形成されており、下部にはステム15cが嵌合する嵌合穴18bが形成されている。上壁19の上面には、平坦にされた外周近辺19aを除き、すり鉢状の凹面19bが形成されている。
【0017】
成形部材17は、この実施形態では、有底筒状のカバー21と、そのカバー21の上面21aに貼り付けられている通液調整シート22とからなる。カバー21は、台座16の外周に嵌合される円筒状の周壁21bと、台座16の上面を覆う円形の上壁21cとからなる。上壁21cは薄い板状で、中心部には、吐出させる発泡性内容物Cないし得られる泡体Fの輪郭を成形する成形通路23が形成されている。上壁21cの厚さは0.5~5mm程度である。この実施形態では、成形通路23は、
図1B、
図2に示すように、上壁21cを上下に貫通する星形の開口である。カバー21には、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂などが用いられる。
【0018】
通液調整シート22は発泡性内容物の流出速度を調整するものであり、この実施形態では
図4A、
図4Bに示すように、多数本の線材24を等間隔に配列した下層25と、その上側に略直角に設けた多数の線材26を等間隔に配列した上層27とからなる、矩形状ないし正方形の透孔(開口)28を有するシートである。下層25の線材24と上層27の線材26は、いずれも熱可塑性樹脂製で、交差部で熱溶着されて網状に形成されている。ただし下層25の線材24と上層27の線材26を編組したネットにしてもよい。また、金属線を溶接または編組することで得ることもできる。さらに合成樹脂や金属シートに対し、矩形状または円形の多数の開孔をプレスなどで抜き加工してもよく、レーザー切断機による穿孔ないし切断加工で形成してもよい。
【0019】
前記線材24、26を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、フッ素樹脂などが用いられる。線材24、26の間隔、すなわち編み目の細かさは、形成するフォーム(泡体)の固さや粘度、要求されるきめの細かさなどによっても異なるが、たとえば20~150メッシュ程度が用いられ、とくに30~120メッシュ程度が好ましい。線材24、25の太さは0.04~0.5mm程度、とくに0.05~0.4mm程度が好ましい。通液調整シート22の平均厚さは0.08~1mm程度が好ましい。透孔28の一辺(目開き)または内径は、0.05~0.5mm程度、とくに0.08~0.4mm程度が好ましい。通液調整シート22の開孔率は、たとえば25~65%程度であり、とくに30~60%が好ましい。開孔率が高過ぎると、通液の速度調整が不充分であり、開孔率が低過ぎるとフォームを通す速度が遅くなり、使用者が待つことになるので使い勝手がわるい。
【0020】
通液調整シート22は、カバー21の上面21aと同形状であり、
図1B、
図2に示すように、カバー21の上面21a全体を覆う円形としている。通液調整シート22の周囲の部分(
図2の領域R)は、カバー21の上面21aに接合されている。カバー21が熱可塑性樹脂製である場合は、通液調整シート22をカバー21の上面21aに溶着することができる。
【0021】
溶着は超音波溶着、熱板溶着、高周波溶着、レーザー溶着などが用いられる。通液調整シート22をカバー21に溶着するときは、同一の素材を用いるのが接合性が高くなるため好ましい。接着剤で接着することもできる。なお、上層27と下層25を溶着したものをカバー21に溶着するほか、下層25をカバー21に溶着した後、その上に上層27を溶着してもよい。
【0022】
通液調整シート22のうち、カバー21の成形通路23と重なる範囲が通液調整部22aである。他の部位22bはカバー21の上面21aで塞がれているため、通液調整作用は奏しない。そのため、
図3に示すように、通液調整シート22のうち、カバー21の上面21aと当接する部位(前記他の部位22b)の全体をカバー21に溶着してもよい。また、通液調整シート22を成形通路23と略同形で、貼り代分だけ大きい形状にカットしたものを貼り付けるようにしてもよい。
【0023】
通液調整シート22は、カバー21の上面21aに貼り付けるほか、
図5に示すように、下面21dに貼り付けてもよい。この場合、通液調整シート22の周囲がカバー21の上壁21cと台座16で挟み込まれるので、溶着しなくてもよい。この実施形態においても、通液調整シート22のうち、成形通路23と対応する部分が通液調整部22aである。
【0024】
上記のように構成される吐出部材13を
図1Aに示すエアゾール製品10のステム15cに装着し、吐出部材13の上端の周囲部分を押し下げると、エアゾールバルブ15が開放され、ステム15cから発泡性内容物が吐出され、台座16の通路18aを通り、台座16の上面側に出てくる。出てきた発泡性内容物は、大気圧の下で発泡しながらすり鉢状の凹面19bに沿って拡がり、さらに形成されたフォームが成形通路23を通り、通路調整部22aを通過して出てくる。そのとき、フォームFは成形通路23の輪郭の形状に成形される。
【0025】
なお、フォームFが通液調整部22aの透孔28(
図4A参照)を通るとき、編み目の線材24、26の抵抗を受ける。そのため、液体のまま吐出されず、全体の流速が調整され、成形通路23の星形の形状に成形された立体的なフォームFが通液調整部22aの上面に留まり、その状態がしばらく維持される(
図1C参照)。使用者はそのフォームFを手や指ですくいとり、洗顔や手洗いなどに使用する。
【0026】
エアゾール容器11に充填する発泡性内容物Cとしては、界面活性剤、有効成分を含有した溶媒からなる原液と、液化ガスとからなるものがあげられる。
【0027】
前記界面活性剤は、発泡性内容物が吐出されたときに液化ガスの気化により泡体を形成するなどの目的で用いられる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アミノ酸系界面活性剤等があげられる。
【0028】
溶媒は、界面活性剤や有効成分などを含有し、界面活性剤と液化ガスにより発泡して泡体の液膜を形成する。前記溶媒としては、水やアルコールなどの水性溶媒、エステル油や油脂などの油性溶媒があげられる。
【0029】
前記有効成分は吐出部上で形成された泡体内に含まれ、泡体から蒸散して効果を発揮するもの、泡体を皮膚や頭髪など、人体に塗布されて効果を発揮するもの、対象物に塗布されて効果を発揮するものなどがあげられる。有効成分としては、香料などの芳香成分、消臭成分、殺菌成分、洗浄成分、保湿成分、かゆみ止め成分、収斂成分、日焼け止め成分、清涼成分、制汗成分、スタイリング成分、トリートメント成分、染毛成分、殺虫成分、害虫忌避成分などがあげられる。
【0030】
原液には、泡の硬さや弾力などを調整し、成形通路23を通過する際の成形性や、通液調整シート21上に吐出された泡の保形性を良くするなどの目的で、ミリスチン酸などの高級脂肪酸やそのケン化物、セタノールなどの高級アルコール、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸などの水溶性高分子などを添加してもよい。
【0031】
前記液化ガスはエアゾール容器11内では蒸気圧を有する液体であり、前記原液と共に充填されてエアゾール組成物(発泡性内容物)を構成している。液化ガスはエアゾールバルブ15が開放されて容器本体14から供給される発泡性内容物中に含まれ、成形通路23や通液調整部22aを通過させて所定の形状の泡体を形成する。液化ガスとしては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィンおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0032】
発泡性内容物は、原液が60~98質量%であり、液化ガスが2~40質量%、さらには、原液が70~97質量%であり、液化ガスが3~30質量%であるものが好ましい。液化ガスが2質量%より少ないと、通液調整部22aを通過しにくくなり、液化ガスが40質量%より大きいと、形成される泡体の密度が小さくなり通液調整部22aを通過するときに泡の形状が崩れやすくなる。また、通液調整シート22上で形成された泡体がさらに発泡して形状が崩れやすくなる。なお、吐出時に発泡性内容物の成形通路23や通液調整部22aを通過する速さを調整して泡体の高さ(立体性)や強度を調整する、などの目的で炭酸ガス、亜酸化窒素、窒素等の圧縮ガスを配合してもよい。
【0033】
特に成形通路23で成形されやすく、さらに通液調整部22aを通過する際に崩れにくく所望の形状の泡体が得られやすい点から、もっちりとした泡質になるものが好ましい。このような泡質になる発泡性内容物としては、たとえば、アニオン性界面活性剤、カチオン性成分、多価アルコールおよび水を含有する水性原液、液化ガスならびに圧縮ガスとからなるものがあげられる。
【0034】
図1Aの吐出部材13ではカバー21の上壁21cに成形通路23を形成しているが、
図6A、
図6Bに示す吐出部材30のように、通液調整シート22の一部に成形通路23a、23bを形成することもできる。この実施形態では、通液調整シート22の周囲22cをカバーに溶着する固定部とし、中央近辺の略円形の環状領域22dを液やフォームが通らない閉鎖部(以下、閉鎖部22d)としている。それにより閉鎖されていない部位、すなわち中央の円形部23aおよび環状部23bが成形通路となる。
【0035】
このような閉鎖部22dは、
図4A、
図4Bの線材24、26を熱加工などで潰すことにより、形成することができる。なお、液不透過性のフィルムを貼り付けて閉鎖部とすることもできる。液不透過性のフィルムを
図4Bの上層27と下層25の間に介在させてもよい。他方、カバー21には、成形通路(環状部23b)より大きい開口32を形成する。この場合、カバー21は単に通液調整シート22を支持し、台座16に着脱自在に取り付けるための支持部材として機能する。ただしカバー21に形成した開口32と通液調整シート22に形成した閉鎖部22dを組み合わせて成形通路とすることもできる。
【0036】
この吐出部材30では、エアゾールバルブ15を操作してフォームを吐出させると、
図6Cに示すような、中央の細い円柱状のフォームFaと、その周囲の円筒状のフォームF2とを組み合わせた立体的なフォームFを得ることができる。閉鎖部22dは、所定の範囲にまとめて設けるほか、散点させることもできる。その場合、閉鎖部22dの密度が低い領域(透孔の密度が高い領域)ではフォームFの量が多く、高さが高くなり、閉鎖部22dの密度が高い領域ではフォームFの量が少なく、高さが低くなる。そして密度を次第に変化させることにより、グラデーションをつけた立体形状を得ることができる。
【0037】
図7A、
図7Bに示す吐出部材35では、
図1A、
図6Aの実施形態におけるカバー21を省略し、閉鎖部22dを設けた通液調整シート22を台座16に直接接合している。この実施形態は、閉鎖部22dを設けた通液調整シート22が成形部材であり、閉鎖部22d以外の部分が成形通路として作用する。この吐出部材35は部品が少ないため、製造が容易でコストダウンとなる。成形できるフォームの形状は、
図6A、
図6Bの吐出部材30と同様である。
【0038】
図8に示す吐出部材36は、カバー21と台座16の間に通液調整シート37と成形フィルム38とを重ねて配置している。通液調整シート37は、全体がメッシュのシートである。このようなメッシュのシートとして、
図4Aで示したものを採用することができ、また、市販品のメッシュシートを円形に打ち抜いたものなどを採用することができる。成形フィルム38には成形通路23が貫通している。成形フィルム38としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドなどの合成樹脂製で厚さ0.1~2mm程度のフィルムやシートを使用することができる。他方、カバー21の下端には、台座16の下端と係合するアンダーカット39を設けている。このアンダーカット39により、カバー21は台座16に対し、着脱自在であり、成形フィルム38や通液調整シート37は交換することができる。そのため、使用者はフィルムに好みの形状の成形通路23を形成し、好みの形状のフォームを吐出させることができる。また、通液調整シート37を交換することにより、好みの目の粗さのメッシュを採用することができる。なお、通常は成形フィルム38の上に通液調整シート37を重ねているが、通液調整シート37を下側にして重ねてもよい。
【0039】
図4Aの通液調整シート22では、同方向に配列される線材24の群を下層25とし、これらと交差する線材26の群を上層27としているが、
図9A、
図9Bに示す通液調整シート40では、一方向に延びている線材41の群とそれらと交差する線材42の群とを編組している。すなわち一方向に延びている線材41は、交差する線材42の上下を交互に通っており、他方向に延びている線材42も前記一方向に延びている線材41の上下を交互に通るように編まれている。このような編まれた通液調整シート40は、発泡性内容物が通過する際に変形しにくく調整効果が高いといった作用が奏される。
【0040】
図4Aの通液調整シート22や
図9Aの通液調整シート40は、いずれも正方形状の透孔28を有する。これに対し、
図10の通液調整シート43では、細長いスリット状の透孔44を有する。たとえば長い方の目開きxが100~120μm、短い方の目開きyが20~40μmである。このものは透孔44が細いため、成形フィルムなどの成形通路(たとえば
図8の符号23)が外部からほとんど見えない。そのため、使用者は予想できない意外な形状の泡体が吐出されるのを楽しむことができる。ただし、透孔44は立体的であるので、泡体の通過に支障はない。
【0041】
図10の通液調整シート43は、断面円形の通常の線材45と、途中に膨らみ46がある変形断面を有する変形線材47を編み合わせたものである。スリットの細い方の方向では変形線材47を密に寄せており、広い方の方向では通常の線材45の間隔を広くしている。そして膨らみ46によってずれを抑制し、スリット状の透孔44の形状を維持している。
【0042】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本発明の吐出部材はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることができる。たとえば前記実施形態では吐出部材に操作レバーを設けていないが、台座やカバーに側方に突出する操作レバーを設けてもよい。前記実施形態では吐出容器としてエアゾール容器11を採用しているが、ポンプで内容物を吐出する容器であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 エアゾール製品
C 発泡性内容物
11 エアゾール容器
11a 胴部
11b 肩部
12 肩カバー
13 吐出部材
14 容器本体
15 エアゾールバルブ
15a マウンティングカップ
15b ハウジング
15c ステム
16 台座
17 成形部材
18 装着部
18a 通路
18b 嵌合穴
19 上壁
19a 外周近辺
19b 凹面
20 外壁
21 カバー
21a (カバーの)上面
21b 周壁
21c 上壁
21d 下面
22 通液調整シート
R (カバーに接合する)領域
22a 通液調整部
22b 他の部位
22c 周囲(固定部)
22d 環状領域(閉鎖部)
23、23a、23b 成形通路
24、26 線材
25 下層
27 上層
28 透孔
30 吐出部材
32 (カバーの)開口
F、Fa、Fb フォーム
35 吐出部材
36 吐出部材
37 通液調整シート
38 成形フィルム
39 アンダーカット
40 通液調整シート
41、42 線材
43 通液調整シート
44 透孔
45 通常の線材
46 膨らみ
47 変形線材
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