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特許7344041アラーム管理装置、アラーム管理システム、およびアラーム管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】アラーム管理装置、アラーム管理システム、およびアラーム管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
G05B23/02 301Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019146753
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021026716
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-02-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】小野 優介
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直樹
(72)【発明者】
【氏名】桑谷 資一
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】田々井 正吾
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-108412(JP,A)
【文献】特開2004-086338(JP,A)
【文献】特開平09-091572号(JP,A)
【文献】特開2018-120456(JP,A)
【文献】特開2001-195124(JP,A)
【文献】特開2010-033118(JP,A)
【文献】特開2017-097690(JP,A)
【文献】特開2009-181394(JP,A)
【文献】特開平11-045116(JP,A)
【文献】特開2006-012023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 - 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信または生成したアラームに異常元の発生要因を知らせるトリガアラームが含まれる場合に、前記トリガアラームを操作監視端末によりオペレータに提示し、
前記アラームに、前記トリガアラームの要因となるプロセス異常から副次的に発生したプロセス異常を知らせる抑制アラームが含まれる場合に、前記抑制アラームを前記オペレータに提示しないで記憶し、
前記オペレータの前記操作監視端末への操作に基づいて、記憶された前記抑制アラーム前記オペレータに追加的に提示し、
前記オペレータの復旧操作の操作履歴または特定の抑制アラームが前記トリガアラームの解消に有効であるか否かを質問するダイアログへの前記オペレータからの回答に基づいて、前記トリガアラームの解消に有効な抑制アラームか否かを決定し、
以後、前記アラームに前記抑制アラームが含まれる場合であっても、前記抑制アラームが前記トリガアラームの解消に有効な前記抑制アラームであると決定されたものである場合には、前記オペレータが前記操作監視端末を操作せずとも前記トリガアラームと共に前記オペレータに提示するよう、制御ロジックを変更する、アラーム管理装置。
【請求項2】
前記トリガアラームと前記抑制アラームとは、所定のアラームグループに属することにより関連しており、
前記オペレータの操作は、提示された前記トリガアラームが属する前記所定のアラームグループの前記オペレータによる選択を含み、
提示される前記抑制アラームは、前記オペレータによって選択された前記アラームグループに属する前記抑制アラームを含む、請求項1に記載のアラーム管理装置。
【請求項3】
前記トリガアラームの解消に有効な前記抑制アラームを、前記オペレータに他の前記抑制アラームよりも強調して提示する、請求項1に記載のアラーム管理装置。
【請求項4】
前記オペレータの操作履歴に基づいて、前記アラームを前記トリガアラームと前記抑制アラームとに分類するための分類条件を最適化する学習部をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のアラーム管理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアラーム管理装置と、操作監視端末と、エンジニアリング端末とを備える、アラーム管理システム。
【請求項6】
アラーム管理装置を用いたアラーム管理方法において、
受信または生成したアラームに異常元の発生要因を知らせるトリガアラームが含まれる場合に、前記トリガアラームを操作監視端末によりオペレータに提示するステップと、
前記アラームに、前記トリガアラームの要因となるプロセス異常から副次的に発生したプロセス異常を知らせる抑制アラームが含まれる場合に、前記抑制アラームを前記オペレータに提示しないで記憶するステップと、
前記オペレータの前記操作監視端末への操作に基づいて、記憶された前記抑制アラーム前記オペレータに追加的に提示するステップと、
前記オペレータの復旧操作の操作履歴または特定の抑制アラームが前記トリガアラームの解消に有効であるか否かを質問するダイアログへの前記オペレータからの回答に基づいて、前記トリガアラームの解消に有効な前記抑制アラームか否かを決定するステップと、
以後、前記アラームに前記抑制アラームが含まれる場合であっても、前記抑制アラームが前記トリガアラームの解消に有効な前記抑制アラームであると決定されたものである場合には、前記オペレータが前記操作監視端末を操作せずとも前記トリガアラームと共に前記オペレータに提示するよう、制御ロジックを変更するステップと、
を含む、アラーム管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アラーム管理装置、アラーム管理システム、およびアラーム管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散型制御システム(DCS:Distributed Control System)が用いられるプラント設備などでは、ある設備がプロセスの変調または機器の故障により異常な状態にあるとき、この異常をきっかけとして、別の設備においても副次的にプロセス異常が発生する場合がある。例えば、上流でプロセス異常が発生したとき、この影響により下流でもプロセス異常が発生する場合がある。この場合に、これらの異常を知らせるアラームの全てをオペレータの監視画面に表示すると、監視画面はアラームだらけ(いわゆる「アラームの洪水」)の状態になり、オペレータが混乱してしまう。この対策として、副次的に発生したプロセス異常を知らせるアラームをオペレータには提示しないで、異常元の発生要因を知らせるアラーム(以下、「トリガアラーム」と称する場合もある。)のみをオペレータに提示することが考えられる。
【0003】
特許文献1では、異常元の発生要因を知らせるトリガアラームのみをオペレータの監視対象とし、これ以外のアラームをオペレータの監視対象から除外することにより、オペレータによる重要アラームの見落としを防ぐことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-33118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、オペレータの監視対象をトリガアラームのみにすると、オペレータは、トリガアラームのみに基づいて、異常からの復旧操作を行う。しかしながら、トリガアラームのみに基づく復旧操作では、異常が解消しない場合があった。換言すると、オペレータによる異常からの復旧操作を効率化するためには、オペレータに提示する情報には改善の余地があった。
【0006】
そこで、本開示は、オペレータによる異常からの復旧操作を効率化することができるアラーム管理装置、アラーム管理システム、およびアラーム管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係るアラーム管理装置は、受信または生成したアラームにトリガアラームが含まれる場合に、前記トリガアラームを前記オペレータに提示し、前記アラームに、前記トリガアラームに関連する抑制アラームが含まれる場合に、前記抑制アラームを前記オペレータに提示しないで記憶し、前記オペレータの操作に基づいて、記憶された前記抑制アラームを前記オペレータに提示する。
【0008】
このように、オペレータの操作に基づいて、抑制アラームをオペレータに提示することにより、オペレータによる異常からの復旧操作を効率化することができる。
【0009】
一実施形態において、前記トリガアラームの解消に有効な前記抑制アラームを、前記オペレータが操作せずとも前記トリガアラームと共に前記オペレータに提示してもよい。
【0010】
このように、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームを、オペレータの操作によって呼び出す必要なくトリガアラームと共にオペレータに提示することにより、オペレータによる異常からの復旧操作をより効率化することができる。
【0011】
一実施形態において、前記トリガアラームの解消に有効な前記抑制アラームを、前記オペレータに他の前記抑制アラームよりも強調して提示してもよい。
【0012】
このように、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームを他の抑制アラームよりも強調して表示することにより、オペレータによる異常からの復旧操作をより効率化することができる。
【0013】
一実施形態において、前記トリガアラームの解消に有効な前記抑制アラームは、前記オペレータの操作履歴または前記オペレータからの回答に基づいて決定してもよい。
【0014】
一実施形態において、前記オペレータの操作履歴に基づいて、前記アラームを前記トリガアラームと前記抑制アラームとに分類するための分類条件を最適化する学習部をさらに備えてもよい。
【0015】
このように、学習部を備えることにより、オペレータによる異常からの復旧操作をより効率化することができる。
【0016】
幾つかの実施形態に係るアラーム管理システムは、前記アラーム管理装置と、操作監視端末と、エンジニアリング端末とを備える。
【0017】
このように、オペレータの操作に基づいて、抑制アラームをオペレータに提示することにより、オペレータによる異常からの復旧操作を効率化することができる。
【0018】
幾つかの実施形態に係るアラーム管理方法は、受信または生成したアラームにトリガアラームが含まれる場合に、前記トリガアラームを前記オペレータに提示するステップと、前記アラームに、前記トリガアラームに関連する抑制アラームが含まれる場合に、前記抑制アラームを前記オペレータに提示しないで記憶するステップと、前記オペレータの操作に基づいて、記憶された前記抑制アラームを前記オペレータに提示するステップと、を含む。
【0019】
このように、オペレータの操作に基づいて、抑制アラームをオペレータに提示することにより、オペレータによる異常からの復旧操作を効率化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、オペレータによる異常からの復旧操作を効率化することができるアラーム管理装置、アラーム管理システム、およびアラーム管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の一実施形態に係るアラーム管理装置の各構成を示す図である。
図2図1のアラーム管理装置の第1の処理例を説明するフローチャートである。
図3図2のステップS100前の提示例を示す図である。
図4図2のステップS101の提示例を示す図である。
図5図2のステップS101の提示例を示す図である。
図6図2のステップS104の提示例を示す図である。
図7図2のステップS106の提示例を示す図である。
図8図1のアラーム管理装置の第2の処理例を説明するフローチャートである。
図9図8のステップS204の処理前の定義ファイルの一例を説明する図である。
図10図8のステップS204の処理後の定義ファイルの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一符号は、同一または同等の構成要素を示す。
【0023】
図1を参照して、本開示の一実施形態に係るアラーム管理装置1は、操作監視端末2、コントローラ3、およびエンジニアリング端末5との間でデータ通信を行うことができる。
【0024】
操作監視端末2は、アラーム管理装置1による処理結果を表示する表示部21と、オペレータの操作を受け付けることが可能な入力部22とを備えることができる、任意の端末である。操作監視端末2としては、デスクトップPC、スマートフォン、またはタブレット端末などが挙げられる。
【0025】
コントローラ3は、フィールド機器などに接続され、これらを制御する。コントローラ3は、プロセスの変調またはフィールド機器からの異常を検知し、制御ネットワーク4を介して、この異常の基づく情報をアラーム管理装置1に送信する。なお、コントローラ3が上述した異常に基づいてアラームを生成する機能を有する場合には、コントローラ3は、制御ネットワーク4を介して、自身が生成したアラームをアラーム管理装置1に送信してもよい。また、図1では、コントローラ3を1つしか図示していないが、コントローラを複数とすることもできる。
【0026】
エンジニアリング端末5は、エンジニアの操作を受け付けることが可能な入力部51を備えることができる。エンジニアは、入力部51を介して、後述する定義ファイルを作成することができる。エンジニアによって作成された定義ファイルは、制御ネットワーク4を介してアラーム管理装置1にダウンロードされ、アラーム管理装置1が実行する処理に用いられる。エンジニアリング端末5としては、デスクトップPC、スマートフォン、またはタブレット端末などが挙げられる。以下、「定義ファイル」について説明する。
【0027】
プラント設備などでは、ある設備がプロセスの変調または機器の故障により異常な状態にあるとき、この異常をきっかけとして別の設備においても副次的にプロセス異常が発生する場合がある。例えば、上流でプロセス異常が発生したとき、この影響により下流でもプロセス異常が発生する場合がある。この場合に、これらの異常を知らせるアラームの全てをオペレータの監視画面に表示すると、監視画面はアラームだらけ(いわゆる「アラームの洪水」)の状態になり、オペレータが混乱してしまう。この対策として、従来、副次的に発生したプロセス異常を知らせるアラームをオペレータには提示しないで、異常元の発生要因を知らせるアラーム(以下、「トリガアラーム」と称する。)のみをオペレータに提示していた。しかしながら、従来、オペレータには提示されなかった、トリガアラームの要因となるプロセス異常から副次的に発生したプロセス異常を知らせるアラーム(以下、「抑制アラーム」と称する。)も必要に応じてオペレータに提示することによって、オペレータは、トリガアラームの要因となるプロセス異常に対する復旧操作を効率的に行うことができる。換言すると、トリガアラームと抑制アラームとを関連付けることにより、オペレータは、トリガアラームの要因となるプロセス異常に対する復旧操作を効率的に行うことができる。このようなトリガアラームと抑制アラームとの関連付けの一例として、エンジニアは、エンジニアリング端末5にて、トリガアラームと抑制アラームとを関連付けるための定義ファイルを作成することができる。定義ファイルには、トリガアラーム、当該トリガアラームの要因となるプロセス異常をきっかけとして共連れで発生する抑制アラーム、および当該トリガアラームと当該抑制アラームとが属するアラームグループが記述される。
【0028】
アラーム管理装置1は、処理部11と、記憶部12と、通信部15とを備えることができる。以下、アラーム管理装置1の各構成を詳細に説明する。
【0029】
記憶部12は、第1の記憶領域13と第2の記憶領域14とを有することができる。記憶部12は、例えば、半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリを用いて実現することができる。記憶部12としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、またはデータを一時的に記憶することができるDRAM(Dynamic Random Access Memory)などが挙げられる。なお、記憶部12は、必ずしも1つとは限らず、第1の記憶領域13および第2の記憶領域14がそれぞれ異なる記憶部内に存在してもよい。また、記憶部12は、アラーム管理装置1に外付けされる外部の記憶装置であってもよい。
【0030】
処理部11は、プラント設備などにおいて異常が発生すると、この異常に基づく情報を受信してアラームを生成する。例えば、処理部11は、コントローラ3から、制御ネットワーク4および通信部15を介して、当該情報を受信することができる。なお、処理部11は、1つ又は複数のプロセッサを用いて実現することができる。
【0031】
また、処理部11は、生成したアラームにトリガアラームが含まれるか否かを判断する。処理部11は、当該判断を行うにあたって、上述した定義ファイルを参照することができる。
【0032】
トリガアラームが含まれる場合には、処理部11は、当該トリガアラームをオペレータに提示する。例えば、処理部11は、操作監視端末2の表示部21に当該トリガアラームを表示することができる。図4は、トリガアラームが「PPX001.LL」である場合に、操作監視端末2の表示部21に表示されるウィンドウを示す。「PPX001.LL」は、タグ名が「PPX001」である機器で発生したアラームの状態がLL(下下限アラーム)であることを表わす。また、処理部11は、当該トリガアラームが属するアラームグループをオペレータに選択可能に提示する。例えば、処理部11は、操作監視端末2の表示部21に当該トリガアラームが属するアラームグループを選択可能に表示することができる。図5は、アラームグループの一覧であり、操作監視端末2の表示部21に表示されるウィンドウを示す。なお、詳細については後述するが、オペレータは、図4のウィンドウに表示される「Suppression Group」の欄を参照することにより、トリガアラームと当該トリガアラームが属するアラームグループとを確認することができ、図5のウィンドウに表示されるアイコン21aをクリック等により選択すると、図6のウィンドウが表示される。アイコン21aとしては、記号、文字、数字、図形、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。ただし、オペレータは、図5のウィンドウを介することなく、図4のウィンドウ内で上述したアラームグループを選択してもよい。
【0033】
一方、処理部11は、生成したアラームにトリガアラームが含まれない場合には、待機状態を取ることができる。
【0034】
さらに、処理部11は、生成したアラームに、上述したトリガアラームに関連する抑制アラームが含まれるか否かを判断する。処理部11は、当該判断を行うにあたって、上述した定義ファイルを参照することができる。
【0035】
トリガアラームに関連する抑制アラームが含まれる場合には、処理部11は、当該抑制アラームをオペレータに提示しないで、例えば記憶部12に記憶する。そして、処理部11は、オペレータの操作に基づいて、例えば記憶部12に記憶された抑制アラームをオペレータに提示する。より具体的に、処理部11は、上述した定義ファイルに基づいて、抑制アラームを所定のアラームグループに紐づけて、例えば第2の記憶領域14に記憶する。次に、オペレータが、図4のウィンドウと図5のウィンドウとを参照することによりトリガアラームが属する所定のアラームグループを確認し、図5のウィンドウに表示されたアイコン21aをクリック等により選択する。これにより、処理部11は、通信部15を介して、オペレータによって所定のアラームグループが選択された旨の通知を受信する。次に、処理部11は、例えば第2の記憶領域14を参照して、オペレータによって選択された所定のアラームグループに属する抑制アラームをオペレータに提示する。これにより、例えば図6のウィンドウが操作監視端末2の表示部21に表示される。図6は、トリガアラーム「PPX001.LL」と同じアラームグループ(グループ名:「feedwpump_repl_Sup」)に属する抑制アラームが、「TIC001.LL」、「TIC001.LO」、「PIC002.LL」、「PIC002.LO」、「PIC001.LL」、「PIC001.LO」、「TIC006.LL」、「TIC006.LO」、「CPX002.LL」、「CPX002.LO」、「CPX001.LL」、「CPX001.LO」、および「PPX001.LO」であることを示すウィンドウである。なお、LOは下限アラームが発生している状態を表わす。
【0036】
一方、トリガアラームに関連する抑制アラームが含まれない場合には、処理部11は、待機状態を取ることができる。
【0037】
なお、処理部11は、機器のプロセス値が所定の閾値を超えた場合に、アラームをオペレータに提示すると判断してもよい。「所定の閾値」は、トリガアラームおよび抑制アラームごとに、定義ファイルを用いてオペレータが任意に設定することができる。
【0038】
通信部15は、操作監視端末2、コントローラ3、およびエンジニアリング端末5とそれぞれ相互に通信可能な任意の1つ又は複数の通信インタフェースを含むことができる。通信インタフェースは、無線通信または有線通信にてデータ通信を行うことが可能なものであれば、任意である。
【0039】
(第1の処理例)
次に、図2を参照して、本実施形態に係るアラーム管理装置1が実行することができる第1の処理例を説明する。
【0040】
通常、オペレータには、トリガアラームのみの通知が行われ、かつ抑制アラームの通知は自動的に抑制されるように、処理部11のロジックが設定される。以下、この状態を「アラーム抑制状態」と称する。アラーム抑制状態は、例えば、オペレータが操作監視端末2の入力部22を介して、表示部21の選択画面を操作することによって、適宜設定される。例えば、オペレータは、操作監視端末2の表示部21に表示される図3のウィンドウを介して、アラームグループ(グループ名:「feedwpump_repl_Sup」)に属する抑制アラームをアラーム抑制状態に設定し、アラームグループ(グループ名:「ASup01」、「ASup02」、及び「Turbinne-start-up」)に属する抑制アラームをアラーム非抑制状態に設定することができる。図2を参照して、第1の処理例は、この状態で開始する。
【0041】
ステップS100において、処理部11は、アラーム抑制状態のアラームグループに関しては、当該アラームグループに属する抑制アラームをオペレータに提示しないで、記憶部12に記憶する。
【0042】
続いて、ステップS101において、処理部11は、トリガアラームをオペレータに提示する。ここで、操作監視端末2の表示部21には、図5のウィンドウが元々表示されており、ステップS101では、図4のウィンドウが図5のウィンドウとは別に追加表示される。
【0043】
続いて、ステップS102において、処理部11は、ステップS101にてオペレータに提示されたトリガアラームが属するアラームグループを、オペレータによって選択可能に提示する。
【0044】
続いて、ステップS103において、オペレータは、ステップS102において選択可能に提示されたアラームグループを選択する。オペレータは、図4のウィンドウに表示される「Suppression Group」の欄を参照することにより、ステップS101におけるトリガアラームが属する所定のアラームグループ(ここでは、グループ名:「feedwpump_repl_Sup」)を確認して、図5のウィンドウ中のアイコン21aをクリック等により選択することによって、所定のアラームグループ(ここでは、グループ名:「feedwpump_repl_Sup」)を選択することができる。なお、図4のウィンドウにアラームグループが併せて表示される場合には、オペレータは、図5のウィンドウを介さずに、アラームグループ(グループ名:「feedwpump_repl_Sup」)を選択してもよい。
【0045】
続いて、ステップS104において、処理部11は、記憶部12を参照して、ステップS103において選択されたアラームグループに属する抑制アラームを、オペレータに提示する。ステップS104では、操作監視端末2の表示部21に、図6のウィンドウが、図4のウィンドウと図5のウィンドウとは別に追加表示される。図6のウィンドウ中、各抑制アラームの欄には、異常を示すアイコン21bが表示される。なお、アイコン21bとしては、記号、文字、数字、図形、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0046】
続いて、ステップS105において、オペレータは、ステップS101において提示されたトリガアラームと、ステップS104において提示された抑制アラームとに基づいて、異常からの復旧操作を行う。
【0047】
ここで、処理部11は、オペレータの復旧操作によって異常が解消した場合、その旨をオペレータに提示することができる。例えば、抑制アラーム「CPX002.LO」の異常が解消すると、図6のウィンドウに表示された異常を示すアイコン21bが正常を示すアイコンに変化する。これに伴って、抑制アラーム「CPX002.LO」に関連するトリガアラーム「PPX001.LL」も解消すると、図4のウィンドウに表示された異常を示すアイコン21cは、図7のウィンドウに表示された正常を示すアイコン21dに変化する。換言すると、操作監視端末2の表示部21に表示されるウィンドウは、「図4のウィンドウ、図5のウィンドウ、図6のウィンドウ」から「図7のウィンドウ、図5のウィンドウ、図6のウィンドウ(ただし、図6中、異常を示すアイコン21bが正常を示すアイコンに変化している)」に変化する。図6、7のウィンドウは、オペレータが操作監視端末2の入力部22を介して操作することによって、操作監視端末2の表示部21から消える。ただし、トリガアラームが複数ある場合には、1つのトリガアラームが解消しても他のトリガアラームが解消しているとは限らないので、オペレータは、図7のウィンドウを必ずしも消さなくてもよい。なお、アイコン21c、21dとしては、記号、文字、数字、図形、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0048】
続いて、ステップS106において、処理部11は、ステップS105における復旧操作によって、トリガアラームが解消したか否かを判断する。トリガアラームが解消した場合(ステップS106:YES)、本処理を終了する。トリガアラームが解消していない場合(ステップS106:NO)、ステップS104に戻る。
【0049】
第1の処理例によれば、従来、アラームの洪水を防ぐためにオペレータに提示されないはずの共連れで発生した抑制アラームを、オペレータの操作に基づいて敢えて提示する。これにより、アラーム数の低減により重要アラームの見落としを防ぎつつも、従来、提示していなかった抑制アラームを必要に応じて異常からの復旧操作の補助情報として有効活用することができる。また、オペレータはトリガアラームの復旧により、副次的に発生した全てのプロセス異常も解消されたことを確認することができる。これにより、オペレータによる異常からの復旧操作を効率化することができる。
【0050】
(第2の処理例)
次に、図8を参照して、本実施形態に係るアラーム管理装置1が実行することができる第2の処理例を説明する。
【0051】
第2の処理例は、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームが、オペレータが操作せずともトリガアラームと共にオペレータに提示される点で、第1の処理例と異なる。なお、処理部11は、第2の処理例においても、図2のステップS100~S103と同様の処理を行う。以下、図8では、第2の処理例に含まれる処理のうち、図2のステップS103以降の処理を説明する。
【0052】
ステップS200において、処理部11は、第1の処理例と同様にして、共連れで発生した抑制アラームをオペレータに提示する。
【0053】
続いて、ステップS201において、オペレータは、第1の処理例と同様にして、トリガアラームと抑制アラームとに基づいて、異常からの復旧操作を行う。
【0054】
続いて、ステップS202において、処理部11は、第1の処理例と同様にして、オペレータの復旧操作によりトリガアラームが解消したか否かを判断する。トリガアラームが解消した場合(ステップS202:YES)、ステップS203に進む。トリガアラームが解消していない場合(ステップS202:NO)、ステップS200に戻る。
【0055】
ステップS203に進んだ場合、ステップS203において、処理部11は、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームを以後オペレータに提示するか否かを判断する。抑制アラームをトリガアラームと共にオペレータに提示する場合(ステップS203:YES)、ステップS204に進む。抑制アラームをトリガアラームと共にオペレータに提示しない場合(ステップS203:NO)、本処理を終了する。
【0056】
例えば、ステップS203では、処理部11は、特定(つまり、毎回同一)の抑制アラームに基づいてオペレータが異常からの復旧操作を行う結果、トリガアラームが解消した実績回数が所定値を超えた場合に、当該抑制アラームがトリガアラームの解消に有効であると判断してもよい。「所定値」は、オペレータがエンジニアリング端末5の入力部51を介して適宜設定することができる。換言すると、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームは、オペレータの操作履歴に基づいて決定することができる。あるいは、処理部11は、特定の抑制アラームがトリガアラームの解消に有効であるか否かを質問するダイアログなどをオペレータに提示してもよい。そして、処理部11は、オペレータがダイアログに入力した回答に基づいて、トリガアラームの解消に有効である抑制アラームをオペレータに提示するか否かを判断してもよい。換言すると、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームは、オペレータからの回答に基づいて決定することができる。
【0057】
ステップS204に進んだ場合、ステップS204において、処理部11は、以後、トリガアラームの解消に有効であった抑制アラームをトリガアラームと共にオペレータに提示するよう、制御ロジックを変更する。その後、処理部11は本処理を終了する。
【0058】
例えば、ステップS204では、以下のように定義ファイルを更新することによって、制御ロジックを変更してもよい。図9は、更新前の定義ファイルの内容を示し、図10は、更新後の定義ファイルの内容を示す。図9図10とを比較すると、抑制アラーム「CPX002.LO」がトリガアラーム「PPX001.LL」の解消に有効であるので、図10では、抑制アラーム「CPX002.LO」の「Excluded from suppression」の欄にチェックが付される。これにより、抑制アラーム「CPX002.LO」は、以後、トリガアラームと共に表示部21に表示される。なお、Alarm On Checkの欄にチェックが付されている共連れアラーム「PPX001.LO」は、トリガアラーム「PPX001.LL」の発生から所定時間以内(例えば1分以内)にこのアラームが発生したらアラーム抑制処理を継続することを意味している。
【0059】
このように、第2の処理例では、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームは、その抑制自体が解除され、呼び出す必要なくオペレータに提示される。なお、第1の処理例では、抑制アラームは、オペレータの操作に基づいて必要に応じてオペレータに提示される。第2の処理例によれば、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームをオペレータが操作せずともトリガアラームと共にオペレータに提示することにより、オペレータが閲覧する補助情報をさらに最適化することができるので、オペレータによる異常からの復旧操作をより効率化することができる。
【0060】
以上、本開示を諸図面および実施形態に基づき説明したが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0061】
例えば、上述した第1の処理例において、必要に応じて、オペレータは、図2のステップS101の処理とステップS102の処理との間にトリガアラームのみに基づく異常からの復旧操作を行ってもよい。そして、処理部11は、当該復旧操作によって異常が解消しない場合に、ステップS102以降の処理を行ってもよい。
【0062】
また、上述した第1の処理例および第2の処理例において、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームを他の抑制アラームよりも強調してオペレータに提示してもよい。例えば、図6において、マーカ、文字の色、太字等により、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームを他の抑制アラームよりも強調して表示してもよい。さらに、第1の処理例において、トリガアラームの解消に有効な抑制アラームを他の抑制アラームよりも強調してオペレータに提示し、当該抑制アラームに基づくオペレータの復旧操作によってトリガアラームが解消した場合に、第2の処理例のように、当該抑制アラームをオペレータが操作せずともトリガアラームと共にオペレータに提示してもよい。具体的には、第1の処理例において、トリガアラームの解消に有効な抑制アラーム(例えば「CPX002.LO」)を強調して表示することにより、オペレータは、図6のウィンドウを開いた際に抑制アラーム「CPX002.LO」が目に止まり、抑制アラーム(「CPX002.LO」)を踏まえて異常からの復旧操作を行うことができる。そして、異常が解消された場合に、第2の処理例のように、オペレータが操作せずとも、抑制アラーム(「CPX002.LO」)がトリガアラーム(「PPX001.LL」)と共に表示される。
【0063】
また、上述した実施形態において、アラームの分類条件の設定は、オペレータによって行われる。しかしながら、この条件設定に、ニューラルネットワークなどの任意の機械学習を用いてもよい。本開示のアラーム管理装置は、学習部をさらに備えることができる。学習部は、オペレータの操作履歴に基づいて、例えば異常からの復旧に必要な操作回数が少なくなるように、アラームの分類条件を最適化する。続いて、学習部は、最適化された分類条件を処理部に送信する。続いて、処理部は、定義ファイルに元々記述された分類条件を、最適化された分類条件に更新する。あるいは、処理部は、定義ファイルに元々記述された分類条件と、最適化された分類条件とのいずれを採用するかをオペレータに質問する。そして、処理部は、オペレータからの回答に基づいて、最適化された分類条件を採用するか否かを判断する。なお、学習部は、1つ又は複数のプロセッサを用いて実現することができる。
【0064】
また、上述した実施形態に係るアラーム管理装置1と、操作監視端末2と、エンジニアリング端末5とを備えるアラーム管理システムAを構築してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示によれば、オペレータによる異常からの復旧操作を効率化することができるアラーム管理装置、アラーム管理システム、およびアラーム管理方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 アラーム管理装置
11 処理部
12 記憶部
13 第1の記憶領域
14 第2の記憶領域
15 通信部
2 操作監視端末
21 表示部
21a、b、c、d アイコン
22 入力部
3 コントローラ
4 制御ネットワーク
5 エンジニアリング端末
51 入力部
A アラーム管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10