IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェーイーエルの特許一覧

<>
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図1
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図2
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図3
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図4
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図5
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図6
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図7
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図8
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図9
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図10
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図11
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図12
  • 特許-基板の位置合わせ方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】基板の位置合わせ方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20230906BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230906BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20230906BHJP
   G01B 11/27 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H01L21/68 F
G01B11/00 H
G01B11/26 H
G01B11/27 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019152239
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021032662
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】599104794
【氏名又は名称】株式会社ジェーイーエル
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】古林 剛
(72)【発明者】
【氏名】結城 徹
(72)【発明者】
【氏名】平田 樹里
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-196855(JP,A)
【文献】特開2003-185419(JP,A)
【文献】特開2008-203182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0329241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
G01B 11/00
G01B 11/26
G01B 11/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸回りに回転可能なステージ上に載置された基板のエッジ位置に相当する位置情報を基板全周に取得し、前記エッジ位置での位置情報を1次位置データとして保存するステップと、
前記ステージを所定方向に所定量移動させ、前記基板の移動後のエッジ位置に相当する測点情報を基板全周に取得し、前記移動後のエッジ位置での測点情報を2次位置データとして保存するステップと、
前記1次位置データと前記2次位置データの対応する各エッジ位置の差分移動量を算出するステップと、
各差分移動量と前記ステージの移動量との光学倍率比率を算出し、各エッジ位置での光学倍率比率をもとに前記1次位置データの各エッジ位置での位置情報を、補正位置データに更新するステップと、
を含むことを特徴とする基板の位置合わせ方法。
【請求項2】
さらに、前記補正位置データをもとに、前記基板の中心位置、前記基板に設けられた基準マークの角度合わせを行う請求項1に記載の基板の位置合わせ方法。
【請求項3】
前記エッジ位置は、前記ステージ上に載置保持された前記基板のエッジ位置を撮像した撮像手段の画像センサ上の位置情報として認識される請求項1に記載の基板の位置合わせ方法。
【請求項4】
前記光学倍率比率は、反りのない平面状の基板における光学倍率に対する、反りの生じた基板における光学倍率との比である請求項1に記載の基板の位置合わせ方法。
【請求項5】
前記光学倍率比率は、基板に生じた反りの状態に応じて変化し、対応する各エッジ位置において得られた前記1次位置データに前記光学倍率比率の逆数を乗じて前記補正位置データを求める請求項1に記載の基板の位置合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板の位置合わせ方法に係り、アライメント工程において、周縁に反りが生じている基板等に対しても正確な中心位置合わせ、基準マークの角度合わせを行えるようにした基板の位置合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ(以下、基板と記す。)のアライメント工程に用いられるアライナ装置では、基板の正確な位置と向きを設定するため、ステージ上に載置された基板の正確な中心位置合わせと、基準マークとしてのオリフラやノッチや、基板表面に付された各種のマーク等を利用した角度合わせが行なわれる。
【0003】
また、基板が鏡面状、透明、半透明等であったり、レーザーマークが表面に付された基板に対応したアライナ装置として、基板の周縁の一部を撮像するカメラを備えた装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に開示されたアライナ装置では、基板周縁を撮像するために、ごく狭い合焦範囲に設定された固定焦点カメラとハーフミラーとが搭載され、照明で照らされた基板のエッジおよび基板外とを撮像した際の輝度分布のうち顕著な変化率を示す位置を基板の縁端部の位置として認識している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-63028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アライナ装置では、アライメント工程において、基板を回転させて、所定の角度における基板の縁端部(以下、エッジと記す。)の位置を測定し、それらの測定結果(たとえば角度θと基板回転中心からの距離r)を用いて、基板の中心位置合わせ、基準マークの角度合わせを行っている。ところが、反りが生じているような基板を取り扱った場合等では、反りの状態によってカメラレンズと基板との間の距離が、反りのない平らな基板の場合のカメラレンズと基板のとの距離と異なり撮像時の光学倍率が変化し、上述した測定結果に測定差が生じてしまい、基板中心位置、基板縁端部の角度の算出精度が悪化するという問題がある。
【0007】
また、特許文献1では、エッジ周辺に反りがある基板を用いる場合、輝度分布の変化率が明確に表れる程度まで、基板を載置したステージを昇降させて対応するようになっている。ステージを昇降させて基板高さを補正してカメラ焦点を基板縁端部に合焦させる場合でも、基板を90°ずつ回転させた4点について昇降補正量を求めるのみで、基板の全周に関しては所定のアルゴリズムによるスプライン曲線でカーブフィッティングさせて反りを推定するにとどまっている。このように、特許文献1の発明では、基板中心位置、エッジに設けられた基準マークの角度位置合わせの精度が低下する上、基板の全周にわたる反りの状態を正確に把握することができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、基板の反りの状態に応じたカメラレンズとエッジとの距離の変動を検出し、変動に応じた補正を行って正確な基板中心位置、基準マークの角度合わせを行えるようにした基板の位置合わせ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の基板の位置合わせ方法は、回転軸回りに回転可能なステージ上に載置された基板のエッジ位置に相当する位置情報を基板全周に取得し、前記エッジ位置での位置情報を1次位置データとして保存するステップと、前記ステージを所定方向に所定量移動させ、前記基板の移動後のエッジ位置に相当する測点情報を基板全周に取得し、前記移動後のエッジ位置での測点情報を2次位置データとして保存するステップと、前記1次位置データと前記2次位置データの対応する各エッジ位置の差分移動量を算出するステップと、各差分移動量と前記ステージの移動量との光学倍率比率を算出し、各エッジ位置での光学倍率比率をもとに前記1次位置データの各エッジ位置での位置情報を、補正位置データに更新するステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記補正位置データをもとに、前記基板の中心位置、前記基板に設けられた基準マークの角度合わせを行うことが好ましい。
【0011】
前記エッジ位置は、前記ステージ上に載置保持された前記基板のエッジ位置を撮像した撮像手段の画像センサ上の位置情報として認識され、取り扱われることが好ましい。
【0012】
前記光学倍率比率は、反りのない平面状の基板における光学倍率に対する、反りの生じた基板における光学倍率との比とすることが好ましい。
【0013】
前記光学倍率比率は、基板に生じた反りの状態に応じて変化し、対応する各エッジ位置において得られた前記1次位置データに前記光学倍率比率の逆数を乗じて前記補正位置データを求めることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の基板の位置合わせ方法を用いるアライナ装置の外観および内部構成の一部を模式的に示した正面図。
図2図1に示したアライナ装置を模式的に示した平面図。
図3】基板のエッジ位置情報の取得のための位置情報を基板上に模式的に示した説明図。
図4】基板中心位置を算出する手順を示したフローチャート。
図5】基準マークの角度を算出する手順を示したフローチャート。
図6】画像センサ上のエッジ位置を連続して模式的に示した展開図、反りの生じた状態を展開して示した展開図。
図7】基板に生じた反りの状態および反りの状態を周方向に展開して示した展開図。
図8】反りの生じた基板のエッジ位置および画像センサ上に投影されたエッジ位置を模式的に示した光学系の模式説明図。
図9】基板に生じた反りによる光学倍率の変化を模式的に示した説明図。
図10】ステージ上の平板状の基板、上側、下側に反りが生じた基板をΔY方向に移動させた場合の画像センサ上に投影されたエッジ位置を模式的に示した光学系の模式説明図。
図11】本発明によるアライメント工程の手順を示したフローチャート。
図12】本発明による位置データの補正の手順を示したフローチャート。
図13】基板に生じた反りの状態を3Dで視覚的に描画したCGモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の基板の位置合わせ方法の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の基板の位置合わせ方法によって基板Wのアライメントを行うアライナ装置10の外観および内部構成の一部を示した正面図である。図2はその平面図である。このアライナ装置10は、本体内に内蔵された駆動装置(図示せず)により、本体上面から突出したステージ上面に基板Wを載置、吸着させてステージ上に保持された基板Wのエッジ位置情報を取得し、基板Wの中心位置、エッジに形成されたノッチ等の基板エッジに設けられた基準マークの位置を測定し、角度合わせを行っている。
【0017】
図示しない基板搬送ロボットのアームによってアライナ装置10まで搬送された基板Wは、平面視して円形状のステージ11上に載置される。このとき基板Wは、図1図2において仮想線で示したように、ステージ11の回転軸(θ軸12)と基板Wの中心位置とをおおよそ一致させるようにして、ステージ11に組み込まれた公知の真空チャック等(図示せず)によってステージ11上に吸着保持される。
【0018】
このステージ11は、図1図2内で矢印で示したように、本体内に組み込まれた図示しない駆動装置によってX,Y方向に水平スライドし、回転軸(θ軸12)に正逆方向に回転し、図示しない制御部からの指令により、ステージ11上面に吸着保持された基板Wに所定の並行移動、回転を付与することができる。
【0019】
[アライナ装置の構成]
図1に示したアライナ装置10は、所定ステージ11上の基板Wのエッジ位置情報を取得するために、基板Wのエッジを撮像するカメラ20と、撮像時の光量を確保するための照明30とを備えている。カメラ20は図1に示したように、ステージ11上に保持された基板Wのエッジを撮像するために、装置本体13から所定距離を確保するように起立して設けられたボックス21内に収容されている。カメラ20としては固定焦点カメラが用いられ、開放されたボックス21の下面に位置するレンズ23は基板面が被写界深度内のほぼ中央に位置する程度の焦点距離を有し、レンズ23鏡筒の結像面位置には画像センサ24が配置され、光学系として基板側に所定のワークディスタンス(WD)が設定されている。本実施形態の画像センサ24としては、CMOSリニアイメージセンサ(以下、単に画像センサ24と記す。)が用いられている(図1図2)。なお、カメラ20と前述した駆動装置とは、ボックス21内の制御部25からの指令により、基板Wの撮像タイミング、撮像間隔と、撮像時の基板Wの回転量とを同期させることができる。
【0020】
一方、画像センサ24とステージ11に保持された基板Wのエッジの下側の本体上面には照明が配置されている。本実施形態では、面光源として機能するLED照明が用いられている。よって、カメラ20は図2の拡大図に示したように、下方にある照明によって照射された基板Wの裏面(基板上面)側を撮像することになり、イメージセンサの棒状をなす受光面には基板Wが遮光した暗部と照明からの入射光で照らされた明部とで区切られた状態が写し出される。
【0021】
[エッジ位置情報の取得方法]
ここで、基板Wの中心位置の位置合わせ、基準マークの角度合わせを行うための基本情報となる基板Wのエッジ位置情報を取得方法と、基板Wの中心位置の位置の算出、基準マークの角度算出の手順について、図3図5を参照して説明する。
【0022】
基板Wのエッジ位置情報を用いた中心位置の算出手順について、図3図4を参照して説明する。基板Wは通常、基板搬送ロボットのアームを用いてアライナ装置10のステージ11上に仮載置されるが、このときステージ11の回転軸(θ軸12)と基板Wの中心位置とがわずかに偏心している場合がある。図3は基板Wのエッジ位置情報の取得のための位置情報を基板W上に模式的に示した説明である。基板Wの回転中心(XR,YR)、すなわちステージ11の回転軸(θ軸12)に対して、基板Wの中心位置は(XW,YW)で、基板Wは基板Wの中心位置から偏心量(a,b)だけ偏心した状態にある。この状態で、図4のフローチャートに示したように、基板Wをθ軸12回りに360°回転して所定のサンプリング数s(たとえばs=20,000)で、極座標データとしてエッジ位置(ri,θi)を取得する。基板Wが円形であることを前提として、基準マーク位置としてのノッチnの範囲(たとえばrn,θnの前後)を判別する。そしてこれらの基準マーク位置を除いたエッジ位置(ri,θi)と、計算で求められた対応する基板半径Rとから偏心量(a,b)を求め、最終的に基板Wの中心位置(XW,YW)を算出することができる。なお、対象体の回転中心から対象物の中心座標を求める公知の方法は各種知られているので、本方法以外の算出方法を適宜採用できることは言うまでもない。
【0023】
さらに、基準マークの角度算出は、図3図5に示したように、基準マーク位置(rn,θn)と基板中心位置(XW,YW)とのなす基準マーク角度θnwを算出すればよい。なお、基板中心位置、基準マーク角度θ nw の算出過程において、各座標値は、演算に好適な座標系に変換して扱うことが好ましい。
【0024】
図6(a),(b)は、基板Wをθ軸12回りに1周回転させた状態で画像センサ24で撮像されたときの画像センサ24上のエッジ位置を連続して模式的に示した展開図である。この状態で基板Wは回転中心が中心位置から偏心してステージ11上に載置されており、画像センサ24上のエッジ位置は同図(b)に拡大して示したような滑らかな曲線を示す。この曲線は基準マーク(ノッチ)位置において不連続な状態となるので、エッジ位置情報を取得する場合は、上述したようにこの基準マーク位置を判別して除外することが必要である。
【0025】
[基板の反りの影響]
ところで、アライナ装置10では、使用に支障のない程度の反りが生じている基板Wのアライメントを行う場合がある。図7(a)は反りが生じて曲面状になっている基板Wを平面視、2方向から側面視した状態図、同図(b)は、反りの状態を周方向に展開して示した展開図である。このように反りが生じている基板Wのエッジ位置は、反りのない基準位置から上側あるいは下側に滑らかに変化する。なお、図7では、基板Wの反りは90°、270°の位置で反りが上側に最大となるように表示されている。同様に、図6(c)は、図6(a)に示した基板Wのエッジの所定箇所に生じた反りの状態を周方向に展開して示した展開図である。
【0026】
図8は、反りの生じた基板Wのエッジ位置を撮像した場合を模式的に示した光学系の模式説明図である。図8では、説明のために、反りの生じていない平板状の基板Wを基準として、上下方向に反りが生じた3状態の基板を同時に描いている。同図に示したように、反りが生じている基板Wのエッジ位置では、レンズ23と基板間の距離(以下、基板側距離と記す。)がDL,D0,DUと異なる。このときアライナ装置10には固定焦点式の光学系が採用されているため、基板側距離が異なると、図8に示したように、レンズ23と画像センサ24間の距離(以下、センサ側距離と記す。)も変化し、画像センサ24上に結像するエッジ位置が変化し、その結果光学倍率が変動してしまう。なお、図8において説明の簡単化のため、基板側距離はレンズ23の厚み方向の中心(主点)でなく、レンズ23の基板側(物体側)表面と基板間の距離としている。図6(d)は、図8で説明した反りの生じた部位(図6(c))での画像センサ24上のエッジ位置を破線で加筆した展開図である。同図に示したように、反りのない状態での基板Wのエッジ位置に対して反りの生じた部位でのエッジ位置は画像センサ24上で変化して投影されることになる。
【0027】
図9は、基板Wに生じた反りによる光学倍率の変化を、スケール表示させて模式的に示した説明図である。同図に示したように、上側に反りが生じた場合、光学倍率は平板状の場合より大きくなり、下側に反りが生じた場合、光学倍率は平板状の場合より小さくなる。よって、反りが生じた基板Wのエッジ位置情報の取得作業では、一定光学倍率の光学系を適用できないため、得られた位置情報の精度が明らかに低下する。
【0028】
[反りの影響の除去]
(分解能の定義)
本発明では、図9に示したような基板側距離の変化によって光学倍率が変化する点に着目して、基準となる基板位置(高さ)での、たとえば水平方向の移動量に対しての画像センサ24上に投影される移動量との対応関係をもとに、画像センサ24上に投影されたエッジ位置の情報から反りの生じた基板Wにおける基板側距離を推定することとした(図10)。
(基準距離での分解能)
基板Wの反りの影響を除去する前提として、基準となるレンズ23と被写体との間の距離(以下、基準距離と記す。)における被写体端部の移動量と、画像センサ24上の撮像面(受光面)に投影される被写体端部の移動量との比を分解能Reとして定義する。すなわち、
Re=B/A(pixel/mm)
A:被写体端部の移動量(ステージの移動量)(mm)
B:画像センサの撮像面に投影される被写体端部の移動量(pixel)
よって、被写体端部をΔ(mm)移動(スライド)したときの画像センサ24上での被写体端部の移動量δ(pixel)は、
δ=Re×Δ(pixel)
となる。
【0029】
(光学倍率比率の設定)
図9各図において、(b)はレンズ23から基準距離にある被写体端部が所定量(Δ)移動した際の画像センサ24上の撮像面に投影された基準値としての被写体端部の移動量(δ0)を、スケールで表示している。このとき基準距離での光学倍率R0は、R0=δ0/Δである。ここで、レンズ23と被写体端部との未知の距離(被写体側距離)で、被写体端部をΔi(mm)移動したときの画像センサ24の撮像面での移動量がδi(pixel)であるとき、この測定値δi(pixel)と基準値δ0(pixel)から次の関係が成り立つ。
δi/δ0>1…被写体は基準距離より近くにある(図9(a))
δi/δ0=1…被写体は基準距離にある(図9(b))
δi/δ0<1…被写体は基準距離より遠くにある(図9(c))
【0030】
(位置データの補正)
図10(a)は、ステージ11上の平板状の基板W、すなわちレンズ23から基準距離D0にある基板WをY方向に所定量ΔY移動させた場合と、エッジが上側に反って基板側距離DUである基板WをY方向に所定量ΔY移動させた場合とを同時に描いた本発明の光学系説明図である。図10(b)は、同様に基準距離D0にある基板WをY方向に所定量ΔY移動させた場合と、エッジが下側に反って基板側距離DLである基板WをY方向に所定量ΔY移動させた場合とを同時に描いた光学系の説明図である。両図に示したように、エッジが上側に反った基板Wでは画像センサ24の撮像面での移動量δUはδ0より大きく、エッジが下側に反った基板Wでは画像センサ24の撮像面での移動量δLはδ0より小さい。このとき具体的な基準距離D0での光学倍率に対して所定距離だけ離れた距離(DUあるいはDL)での光学倍率との比率Rが分かれば、その逆数(1/R)を移動前の位置データに乗ずることで反りのない状態での位置データに補正することができる。
【0031】
[本発明によるアライメントの手順]
図11図12は、アライメント工程において、この関係を利用して周縁に反りの生じた基板Wの全周にわたって位置データを補正し、さらに補正後の位置データを用いて基板中心位置の算出、基準マークの角度算出を行うようにした方法の手順を示したフローチャートである。以下、図11を参照して全体手順について説明する。
【0032】
まず反りの生じた基板Wをアライナ装置10のステージ11上に載置、保持し、ステージ11の回転軸(θ軸12)回りに回転して全周にわたり1次エッジ位置(ri,θi)を取得し、その位置データ(1次位置データ)を記憶部に保存する。その後、基板Wを保持したステージ11の回転支持軸をY方向に所定量(ΔY)移動する(図2図10参照)。本実施の形態ではΔY=2mmとする。引き続き同様に基板Wを移動後のステージ11の回転軸(θ軸12)回りに回転して全周にわた2次エッジ位置(rj,θj)を取得し、その位置データ(2次位置データ)を記憶部に保存する。基板エッジの全周にわたる1次位置データと2次位置データとをもとに位置データ補正を行う(図12)。記憶部に保存されている1次位置データと2次位置データの各エッジ位置(ri,θi)、(rj,θj)の差分移動量δi=jを全周にわたり算出する。次いで、各位置での光学倍率比率の算出Ri=j=(δi=j/ΔY)を算出し、以下のように1次位置データの各1次エッジ位置(ri,θi)を、反りのない状態の補正位置データに補正して更新する。
補正エッジ位置=(1次エッジ位置×1/R)
【0033】
以後、この補正後の位置データを用いて基板中心位置の算出、基準マークの角度算出を行う(図11参照)。これにより反りを生じている基板Wにおいて、反りの影響を除去した基板中心位置、基準マークの角度合わせを高精度に行うことができる。
【0034】
また、図13に示したように、パーソナルコンピュータ等を用いたCGモデルで、基板Wのエッジに相当する点群での反りの量を3D形式で描画することで、反りの向き(発生箇所)、反り量を視覚的に容易に確認することができる。同図では、反りのない状態の基板Wの基準高さを表示した点群Aに対して、反りが生じた基板Wの外縁の高さを表示した点群Bとが合わせて描画されている。たとえば、製品として基板の反り量に規定値が設定されている場合の検査等において、規定値を超えた範囲の点群の描画色を、たとえば反り量に応じて黄色(許容範囲内)→赤色(許容範囲以上)等に区分して表示させることで、反りの状態に対する検査結果を視覚的に容易に確認、把握することができ、基板の品質管理の効率化、高精度化を図ることができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10 アライナ装置
11 ステージ
12 回転軸(θ軸)
20 カメラ
23 レンズ
24 画像センサ
30 照明
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13