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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】半導体装置形成方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20230906BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20230906BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230906BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20230906BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20230906BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20230906BHJP
【FI】
H01L21/306 D
H01L21/306 R
H01L21/308 E
H01L29/78 371
H10B43/27
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019157007
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021034691
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 栄次
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-136097(JP,A)
【文献】特開2015-153941(JP,A)
【文献】特開2015-084400(JP,A)
【文献】特表2019-519107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0163556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/308
H01L 21/336
H01L 29/78
H10B 43/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に支持された積層構造に設けられたリセスのうち、前記積層構造の表面側に位置する部分を選択的に被覆する被覆層を形成する工程と、
前記リセスのうち前記被覆層よりも深部の径を広げるように、前記リセスの前記深部を薬液でエッチングする工程と
を包含し、
前記被覆層を形成する工程は、
前記リセスのうちの深部を部分的に充填する部分充填層を形成する工程と、
前記部分充填層を形成した後に撥水剤を供給する工程と、
前記撥水剤を供給した後に、前記部分充填層を除去して前記撥水剤から前記被覆層を形成する工程と
を含む、半導体装置形成方法。
【請求項2】
基材に支持された積層構造に設けられたリセスのうち、深部を部分的に充填する部分充填層を形成する工程と、
前記部分充填層を形成した後に、前記リセスのうちの前記部分充填層よりも表面側に位置する部分を選択的に被覆する被覆層を形成し、前記部分充填層を除去する工程と、
前記部分充填層を除去した後、前記リセスのうち前記被覆層よりも深部の径を広げるように、前記リセスの前記深部を薬液でエッチングする工程と
を包含する、半導体装置形成方法。
【請求項3】
前記部分充填層を除去する工程は、除去液を供給して前記部分充填層を溶解させる工程を含む、請求項1または2に記載の半導体装置形成方法。
【請求項4】
前記部分充填層は、昇華性物質を含み、
前記部分充填層を除去する工程は、前記部分充填層を加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の半導体装置形成方法。
【請求項5】
前記部分充填層を形成する工程は、
前記リセスを充填する充填層を形成する工程と、
前記充填層を形成した後で前記充填層を部分的に除去する工程と
を含む、請求項から4のいずれかに記載の半導体装置形成方法。
【請求項6】
前記充填層を部分的に除去する工程は、前記充填層を除去する除去液を供給する工程を含む、請求項5に記載の半導体装置形成方法。
【請求項7】
前記エッチングする工程において、前記薬液は、フッ酸、水および燐酸のいずれかを含む、請求項1から6のいずれかに記載の半導体装置形成方法。
【請求項8】
前記リセスに、複数の記憶素子が形成される、請求項1から7のいずれかに記載の半導体装置形成方法。
【請求項9】
前記積層構造には前記リセスが複数設けられており、
前記リセスのトップ径の差は5%以下である、請求項1から8のいずれかに記載の半導体装置形成方法。
【請求項10】
前記リセスは、規則構造を有している、請求項9に記載の半導体装置形成方法。
【請求項11】
前記基材と前記積層構造との間にはエッチング停止層が配置されている、請求項1から10のいずれかに記載の半導体装置形成方法。
【請求項12】
処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液から形成された充填層を除去するための除去液を供給する除去液供給部と、
撥水剤を供給する撥水剤供給部と、
薬液を供給する薬液供給部と、
前記処理液供給部、前記除去液供給部、前記撥水剤供給部および前記薬液供給部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
(1)前記処理液を供給して基材に支持された積層構造に設けられたリセスを充填する充填層を形成し、
(2)前記除去液を供給して前記リセス内の前記充填層を部分的に除去し、
(3)前記撥水剤を供給して前記リセスのうちの前記充填層で覆われていない表面側に位置する部分を選択的に被覆する被覆層を形成し、
(4)前記薬液を供給して前記リセスのうち前記被覆層よりも深部の径を広げる、
ように、前記処理液供給部、前記除去液供給部、前記撥水剤供給部および前記薬液供給部を制御する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置形成方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を処理する基板処理装置は、例えば、半導体装置の形成に用いられる。近年、半導体装置の記憶素子を微細に作製するために、半導体基板に記憶素子を積層して形成することが進められている(特許文献1参照)。特許文献1の半導体記憶装置では、半導体基板の積層構造において基材に対して垂直方向にいわゆるメモリホールと呼ばれるアスペクト比の大きいホールを形成する。当該ホール内に多数の記憶素子が並んで配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-117894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の半導体記憶装置では、メモリホールの下部の径がメモリホールの上部の径よりも小さい。これは、メモリホールの下部は、メモリホールの上部と比べてエッチング液が到達しづらいためである。この場合、メモリホール内に形成された記憶素子の電気的特性にばらつきが生じてしまうおそれがある。メモリホールのアスペクト比(メモリホールの高さと幅との比率)は年々高くなっており、近年ではアスペクト比が50を超えるメモリホールもある。こうした高いアスペクト比のメモリホールでは、メモリホールの上部の径とメモリホールの下部の径を揃えることは容易ではない。
【0005】
また、近年の素子微細化または素子構造の3次元化に伴い、上述したメモリホールだけでなく、アスペクト比の大きいホールまたはトレンチといった凹部においても同様の問題が生じる。すなわち、凹部の上方に比べて凹部の下方ではエッチング液が浸透しづらく、液置換が進行しにくいため、凹部の下方は、凹部の上方とは異なるようにエッチングされる。このように、比較的大きなアスペクト比を有するホールやトレンチなどの凹部(以下、リセスとよぶ)では、凹部内で凹部の径が一定にならないことがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板の積層構造に設けられたリセスを選択的にエッチングすることでリセスの径を調整可能な半導体装置形成方法および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面によれば、半導体装置形成方法は、基材に支持された積層構造に設けられたリセスのうち、前記積層構造の表面側に位置する部分を選択的に被覆する被覆層を形成する工程と、前記リセスのうち前記被覆層よりも深部の径を広げるように、前記リセスの前記深部を薬液でエッチングする工程とを包含し、前記被覆層を形成する工程は、前記リセスのうちの深部を部分的に充填する部分充填層を形成する工程と、前記部分充填層を形成した後に撥水剤を供給する工程と、前記撥水剤を供給した後に、前記部分充填層を除去して前記撥水剤から前記被覆層を形成する工程とを含む。
【0008】
本発明の別の局面によれば、半導体装置形成方法は、基材に支持された積層構造に設けられたリセスのうち、深部を部分的に充填する部分充填層を形成する工程と、前記部分充填層を形成した後に、前記リセスのうちの前記部分充填層よりも表面側に位置する部分を選択的に被覆する被覆層を形成し、前記部分充填層を除去する工程と、前記部分充填層を除去した後、前記リセスのうち前記被覆層よりも深部の径を広げるように、前記リセスの前記深部を薬液でエッチングする工程とを包含する。
【0009】
ある実施形態では、前記部分充填層を除去する工程は、除去液を供給して前記部分充填層を溶解させる工程を含む。
【0010】
ある実施形態では、前記部分充填層は、昇華性物質を含み、前記部分充填層を除去する工程は、前記部分充填層を加熱する工程を含む。
【0011】
ある実施形態では、前記部分充填層を形成する工程は、前記リセスを充填する充填層を形成する工程と、前記充填層を形成した後で前記充填層を部分的に除去する工程とを含む。
【0012】
ある実施形態では、前記充填層を部分的に除去する工程は、前記充填層を除去する除去液を供給する工程を含む。
【0013】
ある実施形態では、前記エッチングする工程において、前記薬液は、フッ酸、水および燐酸のいずれかを含む。
【0014】
ある実施形態では、前記リセスに、複数の記憶素子が形成される。
【0015】
ある実施形態では、前記積層構造には前記リセスが複数設けられており、前記リセスのトップ径の差は5%以下である。
【0016】
ある実施形態では、前記リセスは、規則構造を有している。
【0017】
ある実施形態では、前記基材と前記積層構造との間にはエッチング停止層が配置されている。
【0018】
本発明の別の局面によれば、基板処理装置は、処理液供給部と、除去液供給部と、撥水剤供給部と、薬液供給部と、制御部とを備える。前記処理液供給部は、処理液を供給する。前記除去液供給部は、前記処理液から形成された充填層を除去するための除去液を供給する。前記撥水剤供給部は、撥水剤を供給する。前記薬液供給部は、薬液を供給する。前記制御部は、前記処理液供給部、前記除去液供給部、前記撥水剤供給部および前記薬液供給部を制御する。前記制御部は、(1)前記処理液を供給して基材に支持された積層構造に設けられたリセスを充填する充填層を形成し、(2)前記除去液を供給して前記リセス内の前記充填層を部分的に除去し、(3)前記撥水剤を供給して前記リセスのうちの前記充填層で覆われていない表面側に位置する部分を選択的に被覆する被覆層を形成し、(4)前記薬液を供給して前記リセスのうち前記被覆層よりも深部の径を広げるように、前記処理液供給部、前記除去液供給部、前記撥水剤供給部および前記薬液供給部を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板の積層構造に設けられたリセスの径を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
図2】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
図3】本実施形態の基板処理装置のブロック図である。
図4】(a)は、本実施形態の基板処理装置を用いて製造される半導体装置の模式的な側面図であり、(b)は、半導体装置の模式的な上面図であり、(c)は、(b)の一部拡大図である。
図5】(a)~(e)は、本実施形態の半導体装置形成方法を説明するための模式図である。
図6】(a)~(g)は、本実施形態の半導体装置形成方法を説明するための模式図である。
図7】本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。
図8】本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。
図9】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
図10】本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。
図11】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
図12】本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。
図13】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
図14】本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。
図15】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
図16】本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。
図17】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
図18】本実施形態の半導体装置形成方法で形成された半導体装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明による半導体装置形成方法および基板処理装置の実施形態を説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載することがある。典型的には、X軸およびY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。また、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、互いに直交するx軸、y軸およびz軸を記載することがある。典型的には、x軸およびy軸は、基板または基材の主面に対して平行に延びており、z軸は基板または基材の主面に対して垂直な方向に延びている。
【0022】
まず、図1を参照して、本発明による基板処理装置100の実施形態を説明する。図1は、本実施形態の基板処理装置100の模式的な平面図である。
【0023】
基板処理装置100は、基板Wを処理する。基板処理装置100は、基板Wに対して、エッチング、表面処理、特性付与、処理膜形成、膜の少なくとも一部の除去および洗浄のうちの少なくとも1つを行うように基板Wを処理する。
【0024】
基板Wは、半導体基板として用いられる。基板Wは、半導体ウエハを含む。例えば、基板Wは略円板状である。ここでは、基板処理装置100は、基板Wを一枚ずつ処理する。
【0025】
図1に示すように、基板処理装置100は、複数のチャンバー110と、流体キャビネット100Aと、流体ボックス100Bと、複数のロードポートLPと、インデクサーロボットIRと、センターロボットCRと、制御装置101とを備える。制御装置101は、ロードポートLP、インデクサーロボットIRおよびセンターロボットCRを制御する。制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。
【0026】
ロードポートLPの各々は、複数枚の基板Wを積層して収容する。インデクサーロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、インデクサーロボットIRとチャンバー110との間で基板Wを搬送する。チャンバー110の各々は、基板Wに液体を吐出して、基板Wを処理する。液体は、処理液、除去液、撥水剤および/または薬液を含む。流体キャビネット100Aは、液体を収容する。なお、流体キャビネット100Aは、ガスを収容してもよい。
【0027】
具体的には、複数のチャンバー110は、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置された複数のタワーTW(図1では4つのタワーTW)を形成している。各タワーTWは、上下に積層された複数のチャンバー110(図1では3つのチャンバー110)を含む。流体ボックス100Bは、それぞれ、複数のタワーTWに対応している。流体キャビネット100A内の液体は、いずれかの流体ボックス100Bを介して、流体ボックス100Bに対応するタワーTWに含まれる全てのチャンバー110に供給される。また、流体キャビネット100A内のガスは、いずれかの流体ボックス100Bを介して、流体ボックス100Bに対応するタワーTWに含まれる全てのチャンバー110に供給される。
【0028】
基板処理装置100は、制御装置101をさらに備える。制御装置101は、基板処理装置100の各種動作を制御する。
【0029】
制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。制御部102は、プロセッサーを有する。制御部102は、例えば、中央処理演算機(Central Processing Unit:CPU)を有する。または、制御部102は、汎用演算機を有してもよい。
【0030】
記憶部104は、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。データは、レシピデータを含む。レシピデータは、複数のレシピを示す情報を含む。複数のレシピの各々は、基板Wの処理内容および処理手順を規定する。
【0031】
記憶部104は、主記憶装置と、補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブである。記憶部104はリムーバブルメディアを含んでいてもよい。制御部102は、記憶部104の記憶しているコンピュータプログラムを実行して、基板処理動作を実行する。
【0032】
次に、図2を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。図2は、基板処理装置100の模式図である。
【0033】
基板処理装置100は、チャンバー110と、基板保持部120と、液体供給部130とを備える。チャンバー110は、基板Wを収容する。基板保持部120は、基板Wを保持する。
【0034】
チャンバー110は、内部空間を有する略箱形状である。チャンバー110は、基板Wを収容する。ここでは、基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉型であり、チャンバー110には基板Wが1枚ずつ収容される。基板Wは、チャンバー110内に収容され、チャンバー110内で処理される。チャンバー110には、基板保持部120および液体供給部130のそれぞれの少なくとも一部が収容される。
【0035】
基板保持部120は、基板Wを保持する。基板保持部120は、基板Wの上面(表面)Waを上方に向け、基板Wの裏面(下面)Wbを鉛直下方に向くように基板Wを水平に保持する。また、基板保持部120は、基板Wを保持した状態で基板Wを回転させる。詳細は後述するが、基板Wの上面Waには、リセスの形成された積層構造が設けられている。基板保持部120は、基板Wを保持したまま基板Wを回転させる。
【0036】
例えば、基板保持部120は、基板Wの端部を挟持する挟持式であってもよい。あるいは、基板保持部120は、基板Wを裏面Wbから保持する任意の機構を有してもよい。例えば、基板保持部120は、バキューム式であってもよい。この場合、基板保持部120は、非デバイス形成面である基板Wの裏面Wbの中央部を上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持する。あるいは、基板保持部120は、複数のチャックピンを基板Wの周端面に接触させる挟持式とバキューム式とを組み合わせてもよい。
【0037】
例えば、基板保持部120は、スピンベース121と、チャック部材122と、シャフト123と、電動モーター124と、ハウジング125とを含む。チャック部材122は、スピンベース121に設けられる。チャック部材122は、基板Wをチャックする。典型的には、スピンベース121には、複数のチャック部材122が設けられる。
【0038】
シャフト123は、中空軸である。シャフト123は、回転軸Axに沿って鉛直方向に延びている。シャフト123の上端には、スピンベース121が結合されている。基板Wは、スピンベース121の上方に載置される。
【0039】
スピンベース121は、円板状であり、基板Wを水平に支持する。シャフト123は、スピンベース121の中央部から下方に延びる。電動モーター124は、シャフト123に回転力を与える。電動モーター124は、シャフト123を回転方向に回転させることにより、回転軸Axを中心に基板Wおよびスピンベース121を回転させる。ハウジング125は、シャフト123および電動モーター124を取り囲んでいる。
【0040】
液体供給部130は、基板Wに液体を供給する。典型的には、液体供給部130は、基板Wの上面Waに液体を供給する。
【0041】
液体供給部130は、処理液供給部132と、除去液供給部134と、撥水剤供給部136と、薬液供給部138とを含む。処理液供給部132、除去液供給部134、撥水剤供給部136および薬液供給部138の少なくとも一部は、チャンバー110内に収容される。
【0042】
処理液供給部132は、基板Wの上面Waに処理液を供給する。例えば、処理液は、溶質および揮発性を有する溶媒を含む。基板Wの上面Waに処理液を供給した後、溶媒が揮発することにより、溶質から充填層が形成される。充填層は、溶質成分からなる固体状の膜である。充填層は、基板Wのリセスに残存するパーティクルを保持できる。充填層が形成される際に、基板Wの上面Waに付着していたパーティクルが、基板Wから引き離されて、充填層中に保持される。
【0043】
ここで「固化」とは、例えば、溶媒の揮発に伴い、分子間や原子間に作用する力等によって溶質が固まることを指す。「硬化」とは、例えば、重合や架橋等の化学的な変化によって、溶質が固まることを指す。したがって、「固化または硬化」とは、様々な要因によって溶質が「固まる」ことを表している。なお、処理液は、パーティクルを保持できる程度に固化または硬化すればよく、溶媒は完全に揮発する必要はない。また、充填層を形成する「溶質成分」とは、処理液に含まれる溶質そのものであってもよいし、溶質から導かれるもの、例えば、化学的な変化の結果として得られるものであってもよい。
【0044】
溶質として、任意の溶媒に対して可溶性で、かつ固化または硬化時に、基板Wの上面に付着していたパーティクルを当該基板Wから引き離して保持した状態で、充填層を形成することができる、種々の樹脂を用いることができる。例えば、溶質として、所定の変質温度以上に加熱する前は水に対して難溶性ないし不溶性で、変質温度以上に加熱することで変質して水溶性になる性質を有する樹脂(以下「感熱水溶性樹脂」と記載する場合がある。)を用いてもよい。
【0045】
感熱水溶性樹脂としては、例えば、所定の変質温度以上(例えば、200℃以上)に加熱することで分解して、極性を持った官能基を露出させて、水溶性を発現する樹脂等を用いることができる。感熱水溶性樹脂は、変質温度以上に加熱すると、水溶性に変質する。
【0046】
ただし、あえて、感熱水溶性樹脂の温度を変質温度未満に留めて、水系の液体に対する難溶性ないし不溶性を維持した状態で充填層を形成してもよい。充填層を形成する際に、処理液の温度を、感熱水溶性樹脂の変質温度未満の温度にすることにより、感熱水溶性樹脂を水溶性に変質させずに、基板Wの上面に、水系の液体に対して難溶性ないし不溶性の充填層を形成する。この場合、充填層からパーティクルを脱落させることなく、塊状態を維持した充填層を基板Wから除去することができる。したがって、高い除去率でパーティクルを除去することができる。
【0047】
なお、処理液に含まれる溶質としては、感熱水溶性樹脂以外に、例えば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等を用いることもできる。
【0048】
溶媒は、水よりも高い揮発性を有することが好ましい。溶媒として、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)を用いることが好ましい。
【0049】
また、処理液は、昇華性物質を含んでもよい。昇華性物質としては、5℃~35℃での蒸気圧が高く、固相から液相を経ずに気相に変化する種々の物質が用いられる。昇華性物質としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、1,3,5-トリオキサン、1-ピロリジンカルボジチオ酸アンモニウム、メタアルデヒド、炭素数20~48程度のパラフィン、t-ブタノール、パラジクロロベンゼン、ナフタレン、L-メントール、フッ化炭化水素化合物等が用いられる。とくに、昇華性物質としては、フッ化炭化水素化合物を用いることができる。
【0050】
フッ化炭化水素化合物としては、例えば、下記化合物(A)~(E)の1種または2種以上を用いることができる。
化合物(A):炭素数3~6のフルオロアルカン、またはその誘導体
化合物(B):炭素数3~6のフルオロシクロアルカン、またはその誘導体
化合物(C):炭素数10のフルオロビシクロアルカン、またはその誘導体
化合物(D):フルオロテトラシアノキノジメタン、またはその誘導体
化合物(E):フルオロシクロトリホスファゼン、またはその誘導体
【0051】
なお、化合物(A)としては、式(1)で表される、炭素数3~6のフルオロアルカン、またはその誘導体が挙げられる。
mnF2m+2-n (1)
〔式中mは3~6の数を示し、nは0≦n≦2m+1の数を示す。〕
【0052】
昇華性物質として、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを用いることが特に好ましい。この化合物は、20℃での蒸気圧が約8266Pa、融点(凝固点)が20.5℃、沸点が82.5℃である。また、融解状態の昇華性物質を混合させる場合、溶媒としては、融解状態の昇華性物質に対して相溶性を示す溶媒が好ましい。また、溶質としての昇華性物質を溶解させる場合には、当該昇華性物質に対し溶解性を示す溶媒が好ましい。
【0053】
また、融解状態の昇華性物質を混合させる場合、溶媒としては、融解状態の昇華性物質に対して相溶性を示す溶媒が好ましい。また、溶質としての昇華性物質を溶解させる場合には、当該昇華性物質に対し溶解性を示す溶媒が好ましい。
【0054】
溶媒としては、例えば、DIW、純水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、エーテル等からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。具体的には、例えば、DIW、純水、メタノール、エタノール、IPA、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ヘキサン、トルエン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGPE(プロピレングリコールモノプロピルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)、GBL(γ-ブチロラクトン)、アセチルアセトン、3-ペンタノン、2-へプタノン、乳酸エチル、シクロヘキサノン、ジブチルエーテル、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、及びm-キシレンヘキサフルオライドからなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0055】
処理液供給部132は、配管132aと、バルブ132bと、ノズル132nとを含む。ノズル132nは基板Wの上面Waに処理液を吐出する。ノズル132nは、配管132aに接続される。配管132aには、供給源から処理液が供給される。バルブ132bは、配管132a内の流路を開閉する。ノズル132nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0056】
除去液供給部134は、基板Wの上面Waに除去液を供給する。除去液により、処理液の溶質から形成された充填層を除去できる。除去液を供給する時間を制御することにより、基板Wから充填層を選択的に除去できる。
【0057】
除去液としては、いずれかの樹脂に対する溶解性を有する任意の溶媒を用いることができる。除去液としては、例えばシンナー、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類等の有機溶媒、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性液を用いることができる。特に、水系の液体との相溶性を有する溶媒を用いることが好ましい。例えば、除去液として、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)を用いることが好ましい。
【0058】
除去液供給部134は、配管134aと、バルブ134bと、ノズル134nとを含む。ノズル134nは、基板Wの上面Waに除去液を吐出する。ノズル134nは、配管134aに接続される。配管134aには、供給源から除去液が供給される。バルブ134bは、配管134a内の流路を開閉する。ノズル134nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0059】
撥水剤供給部136は、基板Wの上面Waに、液状の撥水剤を供給する。撥水剤の供給により、基板Wの上面Waに撥水層が形成される。
【0060】
例えば、撥水剤は、末端にメチル基またはシリル基を含む化合物を含む。典型的には、リセスの表面には水酸基(OH基)が存在しているが、撥水剤により、基板Wの表面の水酸基は、メチル基またはシリル基に置換される。なお、撥水剤は、充填層の特性を変化させないことが好ましい。
【0061】
例えば、撥水剤は、シリコン(Si)自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させる撥水剤である。典型的には、撥水剤は、シランカップリング剤である。一例では、シランカップリング剤は、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系撥水剤の少なくとも1つを含む。非クロロ系撥水剤は、例えば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも1つを含む。
【0062】
撥水剤供給部136は、配管136aと、バルブ136bと、ノズル136nとを含む。ノズル136nは、基板Wの上面Waに撥水剤を吐出する。ノズル136nは、配管136aに接続される。配管136aには、供給源から撥水剤が供給される。バルブ136bは、配管136a内の流路を開閉する。ノズル136nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0063】
薬液供給部138は、基板Wの上面Waに薬液を供給する。薬液を用いた薬液処理により、基板Wの上面Waを薬液処理できる。薬液処理により、基板Wに対して、エッチング、表面処理、特性付与、処理膜形成および膜の少なくとも一部の除去のいずれかを行うことが可能である。典型的には、薬液は、基板Wのエッチング処理に用いられるエッチング液である。
【0064】
薬液は、フッ酸を含む。例えば、フッ酸は、40℃以上70℃以下に加熱されてもよく、50℃以上60℃以下に加熱されてもよい。ただし、フッ酸は、加熱されなくてもよい。また、薬液は、水または燐酸を含んでもよい。
【0065】
さらに、薬液は、過酸化水素水をさらに含んでもよい。また、薬液は、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)または王水(濃塩酸と濃硝酸との混合物)を含んでもよい。
【0066】
薬液供給部138は、配管138aと、バルブ138bと、ノズル138nとを含む。ノズル138nは基板Wの上面Waに薬液を吐出する。ノズル138nは、配管138aに接続される。配管138aには、供給源から薬液が供給される。バルブ138bは、配管138a内の流路を開閉する。ノズル138nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0067】
なお、上述したように、処理液供給部132、除去液供給部134、撥水剤供給部136および薬液供給部138のノズル132n、134n、136nおよび138nは移動可能であってもよい。ノズル132n、134n、136nおよび138nは、制御部102によって制御される移動機構にしたがって水平方向および/または鉛直方向に移動できる。なお、本明細書において、図面が過度に複雑になることを避けるために移動機構を省略していることに留意されたい。
【0068】
基板処理装置100は、カップ180をさらに備える。カップ180は、基板Wから飛散した液体を回収する。カップ180は昇降する。例えば、カップ180は、液体供給部130が基板Wに液体を供給する期間にわたって基板Wの側方にまで鉛直上方に上昇する。この場合、カップ180は、基板Wの回転によって基板Wから飛散する液体を回収する。また、カップ180は、液体供給部130が基板Wに液体を供給する期間が終了すると、基板Wの側方から鉛直下方に下降する。
【0069】
上述したように、制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。制御部102は、基板保持部120、処理液供給部132、除去液供給部134、撥水剤供給部136、および/またはカップ180を制御する。一例では、制御部102は、電動モーター124、バルブ132b、134b、136bおよび/または138bを制御する。
【0070】
本実施形態の基板処理装置100は、半導体の設けられた半導体装置の作製に好適に用いられる。典型的には、半導体装置において、基材の上に導電層および絶縁層が積層される。基板処理装置100は、半導体装置の製造時に、導電層および/または絶縁層の洗浄および/または加工(例えば、エッチング、特性変化等)に好適に用いられる。
【0071】
次に、図1図3を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。図3は、基板処理装置100のブロック図である。
【0072】
図3に示すように、制御装置101は、基板処理装置100の各種動作を制御する。制御装置101は、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、基板保持部120および液体供給部130を制御する。具体的には、制御装置101は、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、基板保持部120および液体供給部130に制御信号を送信することによって、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、基板保持部120および液体供給部130を制御する。
【0073】
具体的には、制御部102は、インデクサーロボットIRを制御して、インデクサーロボットIRによって基板Wを受け渡しする。
【0074】
制御部102は、センターロボットCRを制御して、センターロボットCRによって基板Wを受け渡しする。例えば、センターロボットCRは、未処理の基板Wを受け取って、複数のチャンバー110のうちのいずれかに基板Wを搬入する。また、センターロボットCRは、処理された基板Wをチャンバー110から受け取って、基板Wを搬出する。
【0075】
制御部102は、基板保持部120を制御して、基板Wの回転の開始、回転速度の変更および基板Wの回転の停止を制御する。例えば、制御部102は、基板保持部120を制御して、基板保持部120の回転数を変更することができる。具体的には、制御部102は、基板保持部120の電動モーター124の回転数を変更することによって、基板Wの回転数を変更できる。
【0076】
制御部102は、液体供給部130のバルブ132b、134b、136b、138bをそれぞれ別個に制御して、バルブ132b、134b、136b、138bの状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、液体供給部130のバルブ132b、134b、136b、138bを制御して、バルブ132b、134b、136b、138bを開状態にすることによって、ノズル132n、134n、136n、138nに向かって配管132a、134a、136a、138a内を流れる処理液、除去液、撥水剤および薬液を通過させることができる。また、制御部102は、液体供給部130のバルブ132b、134b、136b、138bを制御して、バルブ132b、134b、136b、138bを閉状態にすることによって、ノズル132n、134n、136n、138nに向かって配管132a、134a、136a、138a内を流れる処理液、除去液、撥水剤および薬液の供給をそれぞれ停止させることができる。
【0077】
本実施形態の基板処理装置100は、半導体装置を形成するために好適に用いられる。例えば、基板処理装置100は、積層構造の半導体装置として用いられる基板Wを処理するために好適に利用される。半導体装置は、いわゆる3D構造のメモリ(記憶装置)である。一例として、基板Wは、NAND型フラッシュメモリとして好適に用いられる。
【0078】
次に、図4を参照して、本実施形態の基板処理装置100を用いて半導体装置300として作製された基板Wを説明する。図4(a)は、基板処理装置100を用いて基板Wを処理して作製された半導体装置300の模式的な側面図であり、図4(b)は、半導体装置300の模式的な上面図であり、図4(c)は、図4(b)の一部拡大図である。なお、図4では、基板Wの基材Sの主面に対して直交する方向をz方向と示しており、z方向に直交する方向をx方向およびy方向と示している。
【0079】
図4(a)に示すように、基板Wは、基材Sと、積層構造Lとを有する。基材Sは、xy平面に広がる薄膜状である。積層構造Lは、基材Sの上面に形成される。基材Sは、積層構造Lを支持する。積層構造Lは、基材Sの上面からz方向に延びるように形成される。
【0080】
なお、図4(a)に示した基板Wは、基材Sと積層構造Lとの間に、エッチング停止層Esをさらに有する。エッチング停止層Esは、例えば、アルミナ(Al23)から形成される。詳細は後述するが、積層構造Lが、エッチングによって部分的に除去されることにより、リセスRが形成される。エッチングの進行は、エッチング停止層Esによって停止される。
【0081】
積層構造Lは、絶縁層Nと、導電層Mとを有する。絶縁層Nと導電層Mとは交互に積層される。例えば、絶縁層Nはシリコン酸化膜から形成される。また、導電層Mは金属から形成される。例えば、導電層Mは、タングステン(W)を含む。
【0082】
複数の絶縁層Nのそれぞれは、基材Sの上面と平行に延びる。隣接する2つの絶縁層Nの間には複数の導電層Mが設けられている。隣接する2つの絶縁層Nは導電層Mによって支持される。
【0083】
例えば、絶縁層Nの厚さ(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。また、例えば、導電層Mの厚さ(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。
【0084】
1層の絶縁層Nの厚さと1層の導電層Mの厚さの合計は20nm以上100nm以下である。積層構造Lは、10層以上100層以下の絶縁層Nと、10層以上100層以下の導電層Mとを備える。
【0085】
積層構造LにはリセスRが設けられる。リセスRは、基材Sの主面に対して垂直の方向に延びる。リセスRは、積層構造Lの表面Laとエッチング停止層Esとの間にわたって延びる。
【0086】
リセスRの口径(径)は、ナノオーダーである。例えば、リセスRの径は、20nm以上300nm以下である。リセスRの径は、50nm以上200nmであってもよい。
【0087】
理想的には、リセスRは、基材Sの主面に対して垂直に形成される。リセスRの表面部分の径(トップ径Wt)は、20nm以上300nm以下であり、50nm以上200nmである。
【0088】
例えば、リセスRのアスペクト比は10以上である。また、これまでのところ、高さ約1μmのメモリホールをアスペクト比40~50で形成することが報告されており、今後、アスペクト比はさらに増大すると考えられる。例えば、リセスRのアスペクト比の上限は100であってもよく、200であってもよい。
【0089】
図4(a)に示した半導体装置300において、基板WのリセスR内には、円筒状の電荷保持層Hが配置される。電荷保持層Hの内側には、円筒状のチャネル層Chが配置される。例えば、チャネル層Chは、ポリシリコンから形成される。チャネル層Chの内側には、円柱状の誘電体層Dが配置される。誘電体層Dは、シリコン酸化膜から形成される。
【0090】
電荷保持層Hは、3層構造を有してもよい。例えば、電荷保持層Hは、円筒状の内側層H1と、円筒状の中間層H2と、円筒状の外側層H3とを含む。外側層H3は、積層構造Lと接触する。中間層H2は、外側層H3の内側に配置される。内側層H1は、中間層H2の内側に配置される。内側層H1は、チャネル層Chと接触する。このため、積層構造LのリセスRの中心から、誘電体層D、チャネル層Ch、内側層H1、中間層H2および外側層H3が配置される。
【0091】
例えば、内側層H1は、シリコン酸化膜から形成される。内側層H1は、トンネル層とも呼ばれる。
【0092】
例えば、中間層H2は、シリコン窒化膜から形成される。中間層H2は、電荷を蓄積する。中間層H2は、電荷蓄積層とも呼ばれる。
【0093】
例えば、外側層H3は、シリコン酸化膜から形成される。外側層H3は、ブロック層とも呼ばれる。
【0094】
導電層Mおよびチャネル層Chに電圧が印加されることにより、対応する中間層H2に電荷が蓄積される。図4(a)に示すように、導電層Mに対応して記憶素子Seが形成される。このため、1つのリセスR内には、導電層Mの数に対応する数の記憶素子Seが形成される。
【0095】
なお、図4(b)に示すように、基板Wには、複数のリセスRが形成されており、リセスRは、基板Wにおいて規則的に配置される。リセスR内にはそれぞれ、電荷保持層H、チャネル層Chおよび誘電体層Dが配置されている。複数のリセスRは、同様の径および高さを有するように設計される。例えば、リセスRごとのトップ径Wtの差は、5%以下であってもよく、3%以下であってもよい。
【0096】
典型的には、リセスRは、積層構造Lに対してドライエッチングを行うことによって形成される。積層構造Lに対してドライエッチングを行ってリセスRを形成する際に、リセスRの深部の径が、リセスRの表面側の径よりも小さくなることがある。特に、積層構造の高さおよび/または積層構造の積層数が増大すると、リセスRの深部の径は、リセスRの表面側の径よりも小さくなりやすい。また、スループットを向上させるためにドライエッチングの処理期間を短くするほど、リセスRの深部の径は、リセスRの表面側の径よりも小さくなりやすい。
【0097】
図4(a)に示したように、リセスR内には複数の記憶素子Seが形成される。このため、リセスRの径は、表面側部分から深部にわたって一定であることが好ましい。しかしながら、積層構造LにリセスRを形成する場合、リセスRの径が一定にならないことがある。リセスRの径が異なる場合、リセスR内に記憶素子を形成すると、記憶素子の電気的特性が一定にならず、記憶素子の特性を均一化できないことがある。
【0098】
また、一般に、リセスRの径が小さいほど、基材に対してより多くの記憶素子を形成できるため、メモリ容量を増大させるためには、リセスRの径が小さいことが好ましい。ただし、リセスRの径が小さいと、リセスRをエッチングするためのエッチング流体の流れが不充分になりやすい。このため、リセスRをエッチングすると、リセスRの位置に応じてエッチングに偏りが生じやすい。具体的には、リセスRの表面側部分は比較的エッチングされやすいのに対して、リセスRの深部は比較的エッチングされにくい。
【0099】
詳細は後述するが、本実施形態によれば、リセスRの径が小さくても、リセスRの深部Rfを選択的にエッチングできる。これにより、リセスRの径の不均一性を抑制できる。
【0100】
次に、図5を参照して、本実施形態の半導体装置形成方法を説明する。本実施形態の半導体装置形成方法の一部は、図1図3を参照して上述した基板処理装置100を用いて行われる。
【0101】
図5(a)に示すように、基板Wは、基材Sと、積層構造Lとを有する。基材Sは、xy平面に広がる薄膜状である。積層構造Lは、基材Sの上面に形成される。積層構造Lは、基材Sの上面からz方向に延びるように形成される。例えば、積層構造Lは、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜から形成される。積層構造Lは、表面Laを有する。
【0102】
積層構造Lは、絶縁層Nと、犠牲層Saとを有する。絶縁層Nと犠牲層Saとは交互に積層される。複数の絶縁層Nのそれぞれは、基材Sの上面と平行に延びる。隣接する2つの絶縁層Nの間には複数の犠牲層Saが設けられている。隣接する2つの絶縁層Nは犠牲層Saによって支持される。なお、犠牲層Saは、半導体装置300を作製する過程において、図4に示した導電層Mに置換される。
【0103】
例えば、絶縁層Nの厚さ(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。絶縁層Nは、シリコン酸化膜から形成される。
【0104】
また、例えば、犠牲層Saの厚さ(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。例えば、犠牲層Saは、絶縁層Nを実質的にエッチングしないエッチング液を用いた際にエッチングされる材料から形成される。一例では、犠牲層Saは、シリコン窒化膜から形成される。例えば、エッチング液として燐酸を用いる場合、絶縁層Nを実質的にエッチングすることなく、犠牲層Saをエッチングできる。
【0105】
図5(b)に示すように、積層構造LにリセスRを形成する。典型的には、リセスRは、ドライエッチングによって形成される。ドライエッチングによって形成されたリセスRの径(xy平面における長さ)が表面側から深部まで一定であることが理想的であるが、実際には、リセスRの径は表面側から深部まで一定にならないことがある。特に、基板Wのスループットを向上させるためにドライエッチングの処理時間を短縮する場合、リセスRの径が表面側から深部まで一定になりにくい。この場合、リセスRの深部Rfの径は、リセスRの表面側部分Rnの径よりも小さくなる。
【0106】
図5(c)に示すように、基板WのリセスRを変形する。例えば、リセスRの深部Rfの径をドライエッチング後のリセスRの深部Rfの径よりも選択的に大きくする。一例では、リセスRの深部Rfの径は、xy平面に沿って10nm未満の長さにわたって広げられる。これにより、基板WのリセスRの径を表面側から深部にわたって均一化できる。
【0107】
図5(d)に示すように、積層構造LのリセスRの内側に電荷保持層Hを形成する。
【0108】
図5(e)に示すように、電荷保持層Hの内側に、チャネル層Chおよび誘電体層Dを形成する。その後、犠牲層Saを導電層Mに置換する。以上のようにして、図4に示した半導体装置300を形成できる。
【0109】
なお、図5(b)では、説明が過度に複雑になることを避けるために、リセスRの径は、表面側から深部まで直線的に変化するように示したが、本実施形態はこれに限定されない。ボーイング現象により、リセスRの径は、中央部付近において最も大きくなることがある。
【0110】
次に、図1図3および図6を参照して、本実施形態の半導体装置形成方法を説明する。図6(a)~図6(g)は、本実施形態の半導体装置形成方法を説明するための模式図である。図6(a)~図6(g)に示した半導体装置形成方法は、図5を参照して上述した半導体装置形成方法の一部として好適に用いられる。例えば、図6(a)~図6(g)に示した半導体装置形成方法は、図5(c)に示したリセスRの変形に行われる。本実施形態の半導体装置形成方法は、図1図3を参照して上述した基板処理装置100を用いて行われる。
【0111】
図6(a)に示すように、積層構造LにはリセスRが設けられる。例えば、基板Wに対してエッチングを行うことにより、積層構造LにリセスRが形成される。ここでは、絶縁層Nおよび犠牲層SaにリセスRが形成される。リセスRは、エッチング停止層Esにまで達する。
【0112】
図6(b)に示すように、リセスRに充填層Fを充填する。充填層Fは、例えば、有機物(炭素系材料)である。一例では、充填層Fは、ポリマーである。充填層Fは、レジストから形成されてもよい。例えば、処理液供給部132が基板Wに処理液を供給した後で、処理液から溶媒を揮発させると、処理液の溶質から充填層Fが形成される。ここでは、充填層Fは、リセスRの深部Rfから表面側部分Rnにまでわたって充填する。
【0113】
処理液は、基板Wに付与された後に固体状に変化することが好ましい。処理液自体は液体状であるが、処理液が基板Wに塗布された後に溶媒が揮発することにより、溶質は固体状に変化して充填層Fを形成する。
【0114】
図6(c)に示すように、基板Wに除去液Dsに付与する。除去液Dsは、充填層Fを溶解させる。ここでは、除去液Dsは、リセスRに充填された充填層Fを部分的に溶解させる。これにより、リセスRの深部Rfには充填層Fが充填されたまま、リセスRの表面側部分Rnは除去液Dsに置換される。その結果、充填層Fから、リセスRの深部Rfを部分的に充填した部分充填層Fpが形成される。
【0115】
例えば、除去液供給部134は、基板Wに除去液Dsを供給する。除去液供給部134は、充填層Fが完全に溶解することなく部分的に溶解するように設定された時間および量の除去液Dsを供給する。例えば、除去液Dsは、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)を含む。
【0116】
典型的には、リセスRの深さのうちの半分以上が除去液Dsに置換され、リセスRの深さのうちの充填層Fの半分未満が残って部分充填層Fpとなる。例えば、部分充填層Fpの深さ(z軸方向の長さ)はリセスRの深さのうちの1/3以下である。
【0117】
図6(d)に示すように、撥水剤Pを供給する。例えば、撥水剤供給部136は、基板Wに撥水剤Pを供給する。部分充填層Fpは、撥水剤Pには影響されず、除去液Dsが撥水剤Pに置換される。これにより、リセスRの深部Rfには部分充填層Fpが充填されたまま、リセスRの表面側部分Rnの除去液Dsは撥水剤Pに置換される。
【0118】
なお、リセスRの深部Rfは部分充填層Fpで覆われているが、リセスRの表面側部分Rnは部分充填層Fpには覆われていない。このため、撥水剤Pが供給されると、リセスRの表面側部分Rnにおいて積層構造Lの表面と撥水剤Pとが反応して被覆層Psが形成される。
【0119】
図6(e)に示すように、部分充填層Fpおよび撥水剤Pを除去する。この場合、リセスRの深部Rfの部分充填層FpとともにリセスRの表面側の撥水剤Pの一部が除去される。このとき、リセスRを形成した際(例えば、ドライエッチング時)の残渣であるパーティクルも除去されることが好ましい。部分充填層Fpの除去により、リセスRの深部Rfでは、絶縁層Nおよび犠牲層Saが露出される。一方、リセスRの表面側部分Rnは被覆層Psで被覆されたままである。
【0120】
例えば、部分充填層Fpおよび撥水剤Pを除去するために、除去液を付与してもよい。一例では、除去液はIPAを含む。例えば、除去液供給部134は、基板Wに除去液Dsを供給する。除去液供給部134は、部分充填層Fpが完全に溶解するように設定された時間および量の除去液を供給する。
【0121】
あるいは、部分充填層Fpおよび撥水剤Pを除去するために、基板Wは加熱されてもよい。例えば、部分充填層Fpが昇華性物質から形成される場合、加熱によって部分充填層Fpを昇華させてもよい。
【0122】
図6(f)に示すように、リセスRを薬液Cでエッチングする。典型的には、薬液Cは、フッ酸を含む。例えば、薬液Cは、1:100~1:2000の範囲で希釈されたフッ酸を含む。あるいは、薬液Cは、水または脱イオン水(Deionized Water:DIW)を含んでもよい。あるいは、薬液Cは、燐酸を含んでもよい。
【0123】
リセスRの深部Rfは、絶縁層Nおよび犠牲層Saが露出されているため、薬液Cによってエッチングされる。一方、リセスRの表面側部分Rnは、被覆層Psによって被覆されているため、薬液Cによってエッチングされない。このため、図6(f)に示すように、リセスRの深部Rfに位置する領域Reは、薬液Cによって除去され、リセスRの径が広がるように拡大する。リセスRの深部Rfの径は、リセスRの手前の径(トップ径)と等しくなるように、広がってもよい。
【0124】
図6(g)に示すように、薬液Cおよび被覆層Psを除去する。薬液Cおよび被覆層Psの除去は、紫外線照射または加熱によって行ってもよい。また、このとき、ドライエッチング時の残渣も除去されることが好ましい。薬液Cおよび被覆層Psの除去は、基板処理装置100とは、別の装置で行われてもよい。
【0125】
以上のようにして、積層構造LのリセスRの径を調整できる。なお、図6(e)、図6(f)および図6(g)では、リセスRの形状の変化が容易に理解されるように、リセスRの深部Rfの径がリセスRのトップ径(口径)と等しくなる一方で、リセスRの深部Rfの径がリセスRの中央部分の径よりも大きくなるように図示したが、これは、例示に過ぎないことに留意されたい。リセスRは、リセスRの深部Rfの径がリセスRの中央部分の径と等しくなるようにリセスRの深部Rfの径は広がってもよい。または、リセスRは、リセスRの深部Rfの径がリセスRのトップ径および中央部分の径と等しくなるように変形されてもよい。
【0126】
なお、図6(c)では、除去液Dsを付与することにより、充填層Fは、部分的に除去液Dsに置換される。リセスRの径が小さい場合、除去液Dsが充填層Fの全体を除去するためには比較的長い時間が必要となる。このため、除去液Dsが充填層Fの全体を除去するための時間の途中で除去液Dsによる充填層Fの除去処理を中断することにより、充填層Fを部分的に除去できる。また、図6(c)に示すように、除去液Dsの量および処理時間等を調整することにより、適切な部分を被覆した部分充填層Fpを残すことができる。
【0127】
また、図6(c)では、除去液Dsによって充填層Fから部分充填層Fpを形成したが、本実施形態はこれに限定されない。充填層Fが昇華性物質から形成される場合、加熱によって充填層Fから部分充填層Fpを形成してもよい。この場合も、加熱時間および温度を調整することで、充填層Fから、リセスRの深部Rfを部分的に充填する部分充填層Fpを形成してもよい。
【0128】
なお、基板Wは、複数の記憶素子Seを備えたメモリとして用いられることが好ましい。典型的には、基板Wがメモリとして用いられる場合、基板Wには、径および高さが一定に設計された複数のリセスRが設けられる。このため、記憶容量の大きなメモリに用いられる複数のリセスを同一の処理によって同時に変形できる。
【0129】
なお、積層構造LにリセスRを形成する際に、ボーイング現象によってリセスRの径が中央部付近において最も大きくなることがある。この場合、被覆層Psは中央部付近を覆うことが好ましい。また、リセスRの深部Rfの径は、リセスRの最も大きい中央部の径と等しくなるように、エッチングによって広げられてもよい。
【0130】
なお、図6を参照した上述の説明では、被覆層Psは、部分充填層Fpの充填されたリセスRに対して液体状の撥水剤Pを供給することによって形成されたが、本実施形態はこれに限定されない。被覆層Psは、ガスによって形成されてもよい。
【0131】
次に、図1図3図6および図7を参照して本実施形態の半導体装置形成方法を説明する。図7は、半導体装置形成方法のフロー図である。本実施形態の半導体装置形成方法は、図1図3を参照して上述した基板処理装置100によって好適に行われる。
【0132】
まず、ステップS10において、積層構造LにおいてリセスRを部分的に被覆する。典型的には、リセスRの表面側部分Rnを選択的に被覆する。例えば、リセスRの表面側部分Rnに被覆層Psを形成する。被覆層Psは、リセスRの表面側部分Rnを選択的に被覆する一方で、リセスRの深部Rfを被覆しない。このため、リセスRの深部Rfでは、積層構造Lが露出される。
【0133】
ステップS20において、リセスRの深部Rfの径を拡張する。リセスRに薬液Cが付与されることにより、リセスRの深部Rfの径を拡張できる。リセスRは被覆層Psで部分的に被覆されているため、リセスRのうち被覆層Psで被覆されていない深部Rfの径を部分的に拡張する。これにより、リセスRの深部Rfの径を拡張できるため、リセスRの径を調整できる。
【0134】
次に、図1図3図6図8を参照して本実施形態の半導体装置形成方法を説明する。図8は、半導体装置形成方法のフロー図である。本実施形態の半導体装置形成方法は、図1図3を参照して上述した基板処理装置100を用いて好適に行われる。
【0135】
まず、ステップSaにおいて、基板Wを基板処理装置100に搬入する。ここでは、基板Wは、基材Sおよび積層構造Lを有しており、積層構造LにはリセスRが設けられる。
【0136】
ステップS10において、積層構造LにおいてリセスRを部分的に被覆する。ここでは、ステップS10におけるリセスRの部分的な被覆は、ステップS12における充填層Fの形成、ステップS14における充填層Fの一部除去(部分充填層Fpの形成)、ステップS16における撥水剤供給、および、ステップS18における部分充填層Fpの除去によって行われる。
【0137】
ステップS12において、リセスRに充填層Fを充填する。処理液供給部132は、基板Wに処理液を供給する。これにより、基板WのリセスRに充填層Fが充填される。なお、典型的には、処理液が供給された後、基板保持部120は、基板Wの回転数を増大して、基板Wの表面に余剰に残った処理液を基板Wの外方に振り切る。
【0138】
ステップS14において、充填層Fの一部を除去する。例えば、除去液供給部134は、基板Wに除去液を所定期間にわたって供給する。除去液DsがリセスRの充填層Fに付与されることにより、充填層Fを部分的に溶解してリセスR内に部分充填層Fpが形成される。除去液Dsを付与する時間は、リセスRの充填層Fを部分的に除去するように設定される。このとき、リセスRの表面側部分Rnの充填層Fは除去される一方で、リセスRの深部Rfには部分充填層Fpが残留する。
【0139】
あるいは、充填層Fを所定期間加熱することにより、リセスR内に部分充填層Fpを形成してもよい。例えば、充填層Fが昇華性物質を含む場合、充填層Fを所定期間加熱することにより、充填層Fの一部を昇華させて、リセスR内に部分充填層Fpを形成できる。
【0140】
ステップS16において、基板Wに撥水剤を供給する。撥水剤供給部136は、基板Wに撥水剤を供給する。深部Rfに部分充填層Fpの形成されたリセスRに対して、撥水剤を付与することにより、リセスRのうち部分充填層Fpの形成されていない表面側部分Rnに撥水剤が充填され、撥水層が形成される。このとき、リセスRの表面側部分Rnの特性が撥水剤によって変化し、リセスRの表面側部分Rnに被覆層Psが形成される。このように、撥水剤の供給により、リセスRの表面側部分Rnに、撥水層の一部として被覆層Psが形成される。
【0141】
ステップS18において、部分充填層Fpを除去する。ここでは、撥水剤から形成された撥水層のうち被覆層Ps以外の部分を除去するとともに、部分充填層Fpを除去する。例えば、除去液供給部134は、基板Wに除去液を供給することにより、部分充填層Fpを溶解させるとともに、撥水層のうち被覆層Ps以外の部分を置換する。このとき、リセスRの表面側部分Rnには被覆層Psで被覆される一方で、リセスRの深部Rfには積層構造Lが露出する。
【0142】
あるいは、部分充填層Fpを所定期間加熱することにより、部分充填層Fpを除去してもよい。例えば、充填層Fが昇華性物質を含む場合、充填層Fを加熱することにより、充填層Fの一部を昇華させて、リセスRから部分充填層Fpを除去できる。
【0143】
次に、ステップS20において、リセスの深部Rfの径を拡張する。例えば、薬液供給部138は、基板Wに薬液を供給する。これにより、リセスRのうち被覆層Psで被覆されない深部Rfが部分的にエッチングされ、リセス径が広がる。
【0144】
ステップSbにおいて、基板Wを基板処理装置100から搬出する。その後、必要に応じて、被覆層Psを除去する。被覆層Psは、紫外線の照射または加熱処理によって被覆層Psをアッシングすることで除去してもよい。以上のようにして、リセス径の変動が抑制された基板Wを形成できる。
【0145】
なお、図8を参照して上述した説明では、ステップS20におけるエッチングは、1種類のエッチング液で行われたが、本実施形態はこれに限定されない。ステップS20におけるエッチングは、複数種類のエッチング液で行われてもよい。例えば、1種類のエッチング液では、絶縁層Nのエッチング量を犠牲層Saのエッチング量と等しくできないことがある。この場合、ステップS20におけるエッチングは、複数種類のエッチング液で行うことが好ましい。
【0146】
次に、図1図3図6図9および図10を参照して本実施形態の半導体装置形成方法を説明する。図9は、本実施形態の基板処理装置100の模式図である。図9の基板処理装置100は、液体供給部130がリンス液供給部137をさらに備えるとともに、薬液供給部138が第1薬液供給部138Aおよび第2薬液供給部138Bを備える点を除いて、図2に示した基板処理装置100と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0147】
基板処理装置100において、液体供給部130は、リンス液供給部137をさらに備える。リンス液供給部137は、基板Wにリンス液を供給する。
【0148】
リンス液供給部137は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。リンス液を用いたリンス処理により、基板Wの上面Waに付着した薬液および不純物等を洗い流すことができる。リンス液供給部137から供給されるリンス液は、脱イオン水(Deionized Water:DIW)、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、アンモニア水、希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、または、還元水(水素水)のいずれかを含んでもよい。
【0149】
リンス液供給部137は、配管137aと、バルブ137bと、ノズル137nとを含む。ノズル137nは、基板Wの上面Waにリンス液を吐出する。ノズル137nは、配管137aに接続される。配管137aには、供給源からリンス液が供給される。バルブ137bは、配管137a内の流路を開閉する。ノズル137nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0150】
基板処理装置100において、薬液供給部138は、第1薬液供給部138Aおよび第2薬液供給部138Bを備える。第1薬液供給部138Aは、基板Wに第1薬液を供給する。第2薬液供給部138Bは、基板Wに第2薬液を供給する。
【0151】
第1薬液供給部138Aは、基板Wの上面Waに第1薬液を供給する。第1薬液を用いた薬液処理により、基板Wの上面Waを薬液処理できる。第1薬液供給部138Aは、配管138aと、バルブ138bと、ノズル138nとを含む。ノズル138nは基板Wの上面Waに第1薬液を吐出する。ノズル138nは、配管138aに接続される。配管138aには、供給源から第1薬液が供給される。バルブ138bは、配管138a内の流路を開閉する。ノズル138nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0152】
第2薬液供給部138Bは、基板Wの上面Waに第2薬液を供給する。第2薬液を用いた薬液処理により、基板Wの上面Waを薬液処理できる。第2薬液供給部138Bは、配管138cと、バルブ138dと、ノズル138mとを含む。ノズル138mは、基板Wの上面Waに第2薬液を吐出する。ノズル138mは、配管138cに接続される。配管138cには、供給源から第2薬液が供給される。バルブ138dは、配管138c内の流路を開閉する。ノズル138mは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0153】
第1薬液の絶縁層Nに対する犠牲層Saのエッチングの選択性は、第2薬液の絶縁層Nに対する犠牲層Saのエッチングの選択性とは異なる。例えば、第1薬液の絶縁層Nに対する犠牲層Saのエッチング比が高い場合、第2薬液の絶縁層Nに対する犠牲層Saのエッチング比が低い。一例では、第1薬液がフッ酸を含む場合、第2薬液は、水または燐酸を含むことが好ましい。このように、絶縁層Nに対する犠牲層Saのエッチングの選択性の異なる第1薬液および第2薬液を用いることにより、絶縁層Nのエッチング量を犠牲層Saのエッチング量と等しくできる。
【0154】
制御部102は、液体供給部130のバルブ137b、138b、138dをそれぞれ別個に制御して、バルブ137b、138b、138dの状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、液体供給部130のバルブ137b、138b、138dを制御して、バルブ137b、138b、138dを開状態にすることによって、ノズル137n、138n、138mに向かって配管137a、138a、138c内を流れるリンス液、第1薬液および第2薬液を通過させることができる。また、制御部102は、液体供給部130のバルブ137b、138b、138dを制御して、バルブ137b、138b、138dを閉状態にすることによって、ノズル137n、138n、138mに向かって配管137a、138a、138c内を流れるリンス液、第1薬液および第2薬液の供給をそれぞれ停止させることができる。
【0155】
図10は、本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。図10のフロー図は、リセスRの深部Rfのエッチングを複数のエッチング液で行う点を除いて、図8のフロー図と同様であり、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0156】
本実施形態では、ステップS20におけるエッチングは、ステップS20aにおける第1エッチング、ステップS20bにおけるリンス液供給、および、ステップS20cにおける第2エッチングを含む。第1エッチングおよび第2エッチングについて絶縁層Nに対する犠牲層Saのエッチングの選択性が異なる。例えば、第1エッチングについて絶縁層Nに対する犠牲層Saのエッチング比が高い場合、第2エッチングについて絶縁層Nに対する犠牲層Saのエッチング比が低いことが好ましい。
【0157】
ステップS20aにおいて、第1エッチングは、絶縁層Nおよび犠牲層Saのうちの一方を選択的にエッチングする。例えば、第1薬液供給部138Aは、基板Wの上面Waに第1薬液を供給する。なお、絶縁層Nおよび犠牲層Saのうちの絶縁層Nを選択的にエッチングする場合、第1薬液として、フッ酸を用いることが好ましい。また、絶縁層Nおよび犠牲層Saのうちの犠牲層Saを選択的にエッチングする場合、第1薬液として、温水または燐酸を用いることが好ましい。
【0158】
その後、ステップS20bにおいて、リンス処理をする。リンス液供給部137は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。
【0159】
ステップS20cにおいて、第2エッチングは、絶縁層Nおよび犠牲層Saのうちの他方を選択的にエッチングする。例えば、第2薬液供給部138Bは、基板Wの上面Waに第2薬液を供給する。第1エッチングにおいて絶縁層Nおよび犠牲層Saのうちの一方を選択的にエッチングした場合、第2エッチングにおいて絶縁層Nおよび犠牲層Saのうちの他方を選択的にエッチングする。以上のように、選択比の異なる2つのエッチングを行うことにより、絶縁層Nのエッチング量を犠牲層Saのエッチング量と等しくできる。
【0160】
なお、図2図6および図7を参照して上述したように、処理液供給部132が基板Wに処理液を供給することにより、充填層Fが形成される。なお、処理液が溶質および揮発性の溶媒を含む場合、処理液供給部132が基板Wに処理液を供給した後、処理液を加熱することが好ましい。処理液を加熱することにより、充填層Fを速やかに形成できる。
【0161】
次に、図11および図12を参照して本実施形態の半導体装置形成方法を説明する。図11は、本実施形態の基板処理装置100の模式図である。図11の基板処理装置100は、熱媒体供給部140、ガス供給部142および遮蔽部材150をさらに備える点を除いて、図2に示した基板処理装置100と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0162】
基板処理装置100は、熱媒体供給部140、ガス供給部142および遮蔽部材150をさらに備える。熱媒体供給部140は、基板Wに熱媒体を供給する。ガス供給部142は、基板Wにガスを供給する。遮蔽部材150は、基板Wを鉛直上方側から遮蔽する。
【0163】
処理液供給部132は、溶質および揮発性の溶媒を含む処理液を供給する。充填層Fは、溶質成分から形成される。
【0164】
熱媒体供給部140によって供給される熱媒体は、液体または気体のいずれであってもよい。例えば、熱媒体は、温水である。処理液供給部132が基板Wの上面Waに処理液を供給している最中またはその後に、熱媒体供給部140は、スピンベース121およびチャック部材122に保持された基板Wを、基板Wの裏面Wb側から加熱して、基板Wの上面Waに充填層を形成する。
【0165】
基板Wが回転している際に、熱媒体供給部140は、基板Wの裏面Wbの中心位置に向けて熱媒体を供給する。供給された熱媒体は、遠心力の働きによって基板Wの裏面Wbの略全面に行き渡る。これにより、基板Wおよび基板Wの上面Waの処理液が加熱されて、処理液から溶媒が揮発して充填層が速やかに形成される。
【0166】
熱媒体供給部140は、配管140aと、バルブ140bと、ノズル140nとを含む。ノズル140nは、基板Wの裏面Wbに対向する。ノズル140nは基板Wの裏面Wbに熱媒体を吐出する。ノズル140nは、配管140aに接続される。配管140aには、供給源から熱媒体が供給される。バルブ140bは、配管140a内の流路を開閉する。
【0167】
ガス供給部142は、基板Wの上面Waにガスを供給する。ガス供給部142によって供給されるガスは、不活性ガスを含むことが好ましい。不活性ガスは、窒素ガスを含む。
【0168】
ガス供給部142は、配管142aと、バルブ142bとを含む。配管142aには、供給源からガスが供給される。バルブ142bは、配管142a内の流路を開閉する。
【0169】
遮蔽部材150は、基板保持部120の上方に位置する。遮蔽部材150は、基板Wに対向する。ここでは、遮蔽部材150の少なくとも一部の水平方向に沿った外径は、基板Wの外径とほぼ等しい。
【0170】
遮蔽部材150は、近接位置と退避位置との間で、基板Wに対して移動する。遮蔽部材150が近接位置に位置する場合、遮蔽部材150は、下降して基板Wの上面に所定間隔をあけて近接する。近接位置では、遮蔽部材150は、基板Wの表面を覆って、基板Wの上方を遮蔽する。遮蔽部材150が退避位置に位置する場合は、遮蔽部材150は近接位置よりも鉛直上方に離れた場所に位置する。遮蔽部材150が近接位置から退避位置に変化するとき、遮蔽部材150は上昇して基板Wから離間する。
【0171】
遮蔽部材150は、遮蔽板152と、支軸154と、ノズル156とを含む。支軸154は、シャフト123の回転軸Axの線上に位置する。遮蔽板152は、支軸154から水平方向に延びる。ここでは、遮蔽板152は、水平方向に延びた形状を有している。例えば、遮蔽板152は、略円板状である。
【0172】
ノズル156には、除去液供給部134の配管134aおよびガス供給部142の配管142aが連結されている。ノズル156は、除去液供給部134およびガス供給部142のノズルとして機能する。
【0173】
制御部102は、バルブ140b、142bをそれぞれ別個に制御して、バルブ140b、142bの状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、バルブ140b、142bを制御して、バルブ140b、142bを開状態にすることによって、ノズル140n、156に向かって配管140a、142a内を流れる熱媒体およびガスを通過させることができる。また、制御部102は、バルブ140b、142bを制御して、バルブ140b、142bを閉状態にすることによって、ノズル140n、156に向かって配管140a、142a内を流れる熱媒体およびガスの供給を停止させることができる。
【0174】
また、制御部102は、遮蔽部材150を制御して遮蔽部材150を近接位置と退避位置との間で、基板Wに対して移動させる。
【0175】
図12は、本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。図12のフロー図は、充填層Fの形成が複数の工程で行われる点を除いて、図8のフロー図と同様であり、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0176】
ステップS12における充填層Fの形成は、ステップS12aにおける処理液供給、ステップS12bにおけるスピンオフ、および、ステップS12cにおける加熱を含む。
【0177】
ステップS12aにおいて、処理液を供給する。処理液供給部132は、基板Wの上面Waに処理液を供給する。このとき、基板Wの回転数は、10rm~100rpmである。
【0178】
ステップS12bにおいて、基板保持部120は、処理液を供給した後、基板Wの回転数を増加させて基板Wの上面Waの処理液をスピンオフする。例えば、基板Wの回転数は、300rm~1500rpmに増加させる。
【0179】
ステップS12cにおいて、熱媒体供給部140は、基板Wの裏面Wbに熱媒体を供給する。例えば、処理液をスピンオフした後、基板Wの回転数は、100rm~1000rpmにまで低下させる。基板Wの上面Waの処理液が加熱されることにより、処理液から充填層Fを速やかに形成できる。
【0180】
なお、図11および図12を参照した説明では、処理液は、熱媒体供給部140から供給される熱媒体によって加熱されたが、本実施形態はこれに限定されない。基板処理装置100に、ランプまたは電熱ヒータなどの熱源を設置し、処理液は、熱源からの熱を利用して加熱されてもよい。
【0181】
なお、充填層Fおよび/または部分充填層Fpを除去する除去液を供給する前に、基板Wに剥離液を供給することが好ましい。
【0182】
次に、図6図13および図14を参照して本実施形態の半導体装置形成方法を説明する。図13は、本実施形態の基板処理装置100の模式図である。図13の基板処理装置100は、液体供給部130がリンス液供給部137および剥離液供給部160をさらに備える点を除いて、図11に示した基板処理装置100と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0183】
本実施形態の基板処理装置100において、液体供給部130は、リンス液供給部137および剥離液供給部160をさらに備える。リンス液供給部137は、基板Wにリンス液を供給する。剥離液供給部160は、基板Wに剥離液を供給する。
【0184】
リンス液供給部137は、基板Wにリンス液を供給する。リンス液供給部137は、配管137aと、バルブ137bとを含む。配管137aには、供給源からリンス液が供給される。バルブ137bは、配管137a内の流路を開閉する。
【0185】
遮蔽部材150のノズル156には、リンス液供給部137の配管137aが連結されている。ノズル156は、リンス液供給部137のノズルとして機能する。
【0186】
剥離液供給部160は、基板Wの上面Waに剥離液を供給する。剥離液は、充填層Fに対する剥離性を有する。剥離液の供給により、その後、充填層Fを容易に除去できる。例えば、剥離液は、DIWおよびSC1の少なくとも一方を含む。剥離液供給部160によって供給される剥離液の濃度および処理時間を制御することにより、充填層Fから部分充填層Fpを適切に形成できる。
【0187】
ここでは、剥離液供給部160は、第1剥離液供給部162と、第2剥離液供給部164とを含む。第1剥離液供給部162は、第1剥離液を基板Wの上面Waに供給する。第2剥離液供給部164は、第2剥離液を基板Wの上面Waに供給する。第1剥離液供給部162は、第2剥離液供給部164とは異なる剥離液を基板Wの上面Waに供給する。
【0188】
第1剥離液供給部162は、配管162aと、バルブ162bとを含む。配管162aには、供給源から第1剥離液が供給される。バルブ162bは、配管162a内の流路を開閉する。
【0189】
第2剥離液供給部164は、配管164aと、バルブ164bとを含む。配管164aには、供給源から第2剥離液が供給される。バルブ164bは、配管164a内の流路を開閉する。
【0190】
剥離液供給部160は、配管160aと、ノズル160nとをさらに含む。配管160aは、配管162aおよび配管164aと接続される。ノズル160nは、基板Wの上面Waに剥離液を吐出する。ノズル160nは、配管160aに接続される。ノズル160nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0191】
制御部102は、剥離液供給部160のバルブ162bおよび164bをそれぞれ別個に制御して、バルブ162bおよび164bの状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、剥離液供給部160のバルブ162b、164bを制御して、バルブ162bまたは164bを開状態にすることによって、ノズル160nに向かって配管160aおよび配管162aまたは164a内を流れる第1剥離液および第2剥離液を通過させることができる。また、制御部102は、剥離液供給部160のバルブ162b、164bを制御して、バルブ162bおよび164bを閉状態にすることによって、ノズル160nに向かって配管160aおよび配管162aまたは164a内を流れる第1剥離液および第2剥離液の供給をそれぞれ停止させることができる。
【0192】
処理液が溶質として熱水溶性樹脂を含む場合、処理液を加熱する際に感熱水溶性樹脂の温度を変質温度未満にするためには、熱媒体として、沸点が当該変質温度未満である熱媒体を用いることが好ましい。例えば、変質温度が180℃である感熱水溶性樹脂の場合、熱媒体としてDIW(沸点:100℃)等を用いることができる。なお、熱媒体の温度は、溶媒の沸点未満の温度にすることがさらに好ましい。処理液の温度を、溶媒の沸点未満の温度にすることにより、充填層中に溶媒を残留させることができる。そして、充填層中に残留した溶媒と、剥離液との相互作用によって、当該充填層を、基板Wの上面から剥離しやすくすることができる。
【0193】
図14は、本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。図14のフロー図は、充填層および部分充填層を除去するために除去液を供給するとともに除去液の供給前に剥離液を供給する点を除いて、図12のフロー図と同様であり、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0194】
ステップS12cにおいて基板Wを加熱した後、ステップS13aにおいて、第1剥離液を供給する。第1剥離液供給部162は、基板Wに第1剥離液を供給する。例えば、第1剥離液供給部162は、第1剥離液としてDIWを供給する。
【0195】
ステップS13bにおいて、第2剥離液を供給する。第2剥離液供給部164は、基板Wに第2剥離液を供給する。例えば、第2剥離液供給部164は、第2剥離液としてSC1を供給する。
【0196】
ステップS13cにおいて、リンス液を供給する。例えば、リンス液供給部137は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。
【0197】
その後、ステップS14aにおいて、除去液によって充填層Fを部分的に溶解させて部分充填層Fpを形成する。除去液供給部134は、基板Wに除去液を所定期間にわたって供給する。除去液DsがリセスRの充填層Fに付与されることにより、充填層Fを部分的に溶解してリセスR内に部分充填層Fpが形成される。第1剥離液供給部162、第2剥離液供給部164および除去液供給部134によって供給される第1剥離液、第2剥離液および除去液の濃度および処理時間を制御することにより、充填層Fから部分充填層Fpを適切に形成できる。
【0198】
また、ステップS16において撥水剤を供給した後、ステップS18aにおいて除去液を供給して、被覆層Psを除く撥水剤Pおよび部分充填層Fpを除去する。その後の処理は同様である。
【0199】
なお、図14に示したフロー図では、除去液で充填層Fを部分的に溶解する前に、第1剥離液および第2剥離液を供給したが、本実施形態はこれに限定されない。第1剥離液および第2剥離液は、充填層Fを部分的に溶解する前だけなく、部分充填層Fpを溶解する前に供給されてもよい。あるいは、第1剥離液および第2剥離液は、充填層Fを部分的に溶解する前でなく、部分充填層Fpを溶解する前に供給されてもよい。
【0200】
また、図14に示したフロー図では、第1剥離液および第2剥離液を供給したが、本実施形態はこれに限定されない。充填層Fおよび/または部分充填層Fpを溶解する前に第1剥離液および第2剥離液の一方のみを供給してもよい。
【0201】
なお、図13および図14を参照した上述の説明では、充填層Fおよび/または部分充填層Fpは、剥離液および除去液によって除去されたが、本実施形態はこれに限定されない。充填層Fおよび/または部分充填層Fpは、加熱によって除去されてもよい。
【0202】
次に、図6図15および図16を参照して本実施形態の半導体装置形成方法を説明する。図15は、本実施形態の基板処理装置100の模式図である。図15の基板処理装置100は、処理液が昇華性物質を含むこと、処理液から形成された充填層を冷却する点を除いて、図11に示した基板処理装置100と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0203】
本実施形態では、処理液供給部132は、昇華性物質を含む処理液を基板Wの上面Waに供給する。また、融解状態の昇華性物質を混合させる場合、溶媒としては、融解状態の昇華性物質に対して相溶性を示す溶媒が好ましい。また、溶質としての昇華性物質を溶解させる場合には、当該昇華性物質に対し溶解性を示す溶媒が好ましい。
【0204】
基板処理装置100は、冷媒供給部144をさらに備える。冷媒供給部144は、基板Wに、室温よりも低い冷媒を供給する。冷媒は、例えば、室温よりも冷却されたDIWである。
【0205】
冷媒供給部144によって供給される冷媒は、液体または気体のいずれであってもよい。処理液供給部132が基板Wの上面Waに処理液を供給して後に、冷媒供給部144は、スピンベース121およびチャック部材122に保持された基板Wを、基板Wの裏面Wb側から冷却する。
【0206】
基板Wが回転している際に、冷媒供給部144は、基板Wの裏面Wbの中心位置に向けて冷媒を供給する。供給された冷媒は、遠心力の働きによって基板Wの裏面Wbの略全面に行き渡る。これにより、基板Wおよび基板Wの上面Waの処理液が冷却されて凝固し、処理液から充填層を速やかに形成できる。
【0207】
冷媒供給部144は、配管144aと、バルブ144bとを含む。配管144aには、供給源から冷媒が供給される。バルブ144bは、配管144a内の流路を開閉する。配管144aは、熱媒体供給部140の配管140aと接続される。冷媒は、熱媒体供給部140のノズル140nから基板Wの裏面Wbに供給される。
【0208】
なお、基板処理装置100は、冷媒供給部144に加えて熱媒体供給部140を備えている。冷媒供給部144が基板Wの裏面Wbに冷媒を供給する直前まで熱媒体供給部140が基板Wの裏面Wbに熱媒体を供給することにより、充填層Fを薄く形成できる。このため、充填層F内に生じる内部応力を低減できる。
【0209】
図16は、本実施形態の半導体装置形成方法のフロー図である。図16のフロー図は、処理液が昇華性物質を含有しており、部分充填層を除去する際に加熱する点を除いて、図8のフロー図と同様であり、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0210】
ステップS12において充填層Fを形成する。処理液供給部132は、基板Wに処理液を供給する。ここで、処理液は、昇華性物質を含有する。処理液供給部132は、昇華性物質を含有する処理液を基板Wの上面Waに供給する。
【0211】
充填層Fを形成する際に、冷媒供給部144は、基板Wの裏面Wbに冷媒を供給する。これにより、処理液は凝固して充填層Fが形成される。基板Wの裏面Wbに供給された冷媒は、遠心力の働きにより、基板Wの裏面Wbの略全域に行きわたる。これにより、基板Wの上面Waに処理液の冷却を開始する。
【0212】
また、ステップS18bにおいて部分充填層Fpを除去する際に、冷媒供給部144による冷媒の供給を停止し、熱媒体供給部140による熱媒体の供給を開始する。これにより、部分充填層Fpが昇華するため、部分充填層Fpを除去できる。
【0213】
なお、図1図16を参照した上述の説明では、基板処理装置100は枚葉式であり、基板処理装置100は1枚ごとに基板Wを処理したが、本発明はこれに限定されない。基板処理装置はバッチ式であってもよい。
【0214】
次に、図17を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。図17は、基板処理装置100の模式図である。基板処理装置100は、複数枚の基板Wをまとめて処理できる。
【0215】
基板処理装置100は、基板保持部120と、液体供給部130とを備える。液体供給部130は、処理液供給部132と、除去液供給部134と、撥水剤供給部136と、薬液供給部138とを含む。処理液供給部132、除去液供給部134、撥水剤供給部136および薬液供給部138は、それぞれ液体を貯留する。
【0216】
処理液供給部132は、処理液貯留槽132tを含む。処理液貯留槽132tには、処理液が貯留される。処理液から、充填層が形成される。例えば、処理液は、溶質および揮発性を有する溶媒を含む。あるいは、処理液は、昇華性物質を含む。
【0217】
除去液供給部134は、除去液貯留槽134tを含む。除去液貯留槽134tには、除去液が貯留される。除去液により、処理液から形成された充填層を除去できる。除去液を供給する時間を制御することにより、基板Wから充填層を選択的に除去できる。
【0218】
除去液としては、いずれかの樹脂に対する溶解性を有する任意の溶媒を用いることができる。除去液としては、例えばシンナー、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類等の有機溶媒、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性液を用いることができる。
【0219】
撥水剤供給部136は、撥水剤貯留槽136tを含む。撥水剤貯留槽136tには、液体の撥水剤が貯留される。撥水剤により、基板Wに撥水層を形成する。撥水剤は、シリコン(Si)自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させる撥水剤である。撥水剤は、例えば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系撥水剤の少なくとも1つを含む。非クロロ系撥水剤は、例えば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも1つを含む。
【0220】
薬液供給部138は、薬液貯留槽138tを含む。薬液貯留槽138tには、薬液が貯留される。薬液を用いた薬液処理により、基板Wを薬液処理できる。薬液処理により、基板Wに対して、エッチング、表面処理、特性付与、処理膜形成および膜の少なくとも一部の除去のいずれかを行うことが可能である。典型的には、薬液は、基板Wのエッチング処理に用いられるエッチング液である。
【0221】
薬液は、フッ酸を含む。例えば、フッ酸は、40℃以上70℃以下に加熱されてもよく、50℃以上60℃以下に加熱されてもよい。ただし、フッ酸は、加熱されなくてもよい。また、薬液は、水または燐酸を含んでもよい。
【0222】
さらに、薬液は、過酸化水素水をさらに含んでもよい。また、薬液は、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)または王水(濃塩酸と濃硝酸との混合物)を含んでもよい。
【0223】
基板保持部120は、基板Wを保持する。基板保持部120によって保持された基板Wの主面の法線方向はY方向に平行である。基板保持部120は、複数の基板Wを保持したまま基板Wを移動させる。例えば、基板保持部120は、基板Wを保持したまま鉛直上方または鉛直下方に移動する。あるいは、基板保持部120は、基板Wを保持したまま水平方向に移動してもよい。
【0224】
基板保持部120は、本体板122bと、保持棒124bとを含む。本体板122bは、鉛直方向(Z方向)に延びる板である。保持棒124bは、本体板122bの一方の主面から水平方向(Y方向)に延びる。ここでは、2つの保持棒124bが本体板122bの一方の主面からY方向に延びる。複数の基板Wは、紙面の奥手前方向に複数の基板Wを配列した状態で、複数の保持棒124bによって各基板Wの下縁が当接されて起立姿勢(鉛直姿勢)で保持される。
【0225】
基板処理装置100は、制御装置101をさらに備える。制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。制御部102は、基板保持部120を制御する。
【0226】
本実施形態の基板処理装置100において、制御部102は、枚葉式と同様に、基板保持部120に保持される基板Wを異なる液体で処理することにより、枚葉式について図6図16を参照したのと同様に、基板Wの積層構造Lに設けられたリセスの径を調整できる。
【0227】
なお、図1図17を参照した説明では、基板WのリセスRには、記憶素子Seが配置されたが、本実施形態はこれに限定されない。基板WのリセスRには、記憶素子Seと同様の構成を有するが、記憶素子としては用いられないダミー記憶素子が形成されてもよい。あるいは、基板WのリセスRには、記憶素子Seと電気的に接続するためのコンタクトプラグが形成されてもよい。
【0228】
次に、図18を参照して本実施形態の半導体装置形成方法で形成された半導体装置300を説明する。図18は、半導体装置300の模式図である。
【0229】
半導体装置300には、複数のリセスRが設けられている。複数のリセスRは、記憶素子Seの配置されたメモリリセスRsに加えて、コンタクトプラグCpの配置されたコンタクトリセスRcを含む。コンタクトリセスRcは、導電層Mと電気的に接続される。
【0230】
本実施形態の半導体装置形成方法によれば、メモリリセスRsだけでなく、コンタクトリセスRcの径も表面部分から深部にわたって均一化できる。このため、コンタクトリセスRcによる半導体装置を支持する強度を均一化できる。
【0231】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明は、半導体装置形成方法および基板処理装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0233】
100 基板処理装置
110 チャンバー
120 基板保持部
130 液体供給部
132 処理液供給部
134 除去液供給部
136 撥水剤供給部
138 薬液供給部
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18