(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】情報表示システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230906BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G08G1/09 A
G08G1/16 F
(21)【出願番号】P 2019157811
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】蛸井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】糸永 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】照内 啓太
(72)【発明者】
【氏名】神田 征司
(72)【発明者】
【氏名】佐敷 敦
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081220(JP,A)
【文献】特開2007-286995(JP,A)
【文献】特開2009-237649(JP,A)
【文献】特許第3547408(JP,B2)
【文献】特開2013-156707(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044536(WO,A1)
【文献】特開2018-173716(JP,A)
【文献】特開2008-210239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 23/00
G01C 23/00 - 25/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者に情報を提供する情報表示システムであり、
所定の時間単位で、複数の車両の運転者の視線の
高さの分布の情報に基づいて、複数の車両の運転者の視線の
高さの集中位置を判定する視線判定手段と、
運転者に情報を表示する情報表示手段と、
前記視線判定手段で判定された視線の集中位置に、前記情報表示手段を移動させる移動手段と
を備えることを特徴とする、情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交通道路の近辺において、看板や電光掲示板などの情報表示装置により、運転者に交通情報を提供し、また、運転者に各種注意を喚起する情報表示システムが、知られている。
【0003】
情報表示システムには、運転者の需要に応じて、より効率および精度よく情報を提供することが要求されている。
【0004】
そのような情報表示システムとしては、例えば、運転者の顔画像に基づいて、運転者の覚醒度を判断し、その覚醒度に応じて、路側看板に表示する運転支援装置が提案されている。より具体的には、運転者の顔を含む撮像画像を取得する画像取得手段と、画像取得手段により取得された撮像画像の顔画像領域に含まれる運転者の顔の特徴点の動きを検出する第1検出手段と、第1検出手段により検出された顔の特徴点の変化から運転者の特徴動作を検出する特徴検出手段と、特徴検出手段により検出された特徴動作に基づいて運転者の覚醒度を判定する判定手段と、顔画像領域と所定の位置関係にある顔以外の物体を検出する第2検出手段と、第2検出手段により物体が検出された場合には、顔の特徴点の変化に基づく特徴動作の検出を中止させる検出制御手段とを備える運転支援装置が、提案されている。また、例えば、居眠りの初期状態を検出した場合に、その信号を道路管理システムに送信し、居眠り注意などの警告情報を路側看板に表示することが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1に記載されるように、運転者の状況に応じた情報を路側看板に表示する場合であっても、その表示内容や表示位置は、予め情報表示装置に設定された範囲に留まり、画一的である。
【0007】
一方、自動車の運転者の属性は、例えば、会社員、主婦、学生など様々であり、また、自動車の車種も様々であるため、視線の高さなどは、種々異なる。また、時間帯によって、比較的多い運転者の属性や、車種が異なる。その結果、予め設定された範囲で、情報表示装置に画一的に情報を表示しても、運転者の注目を十分に集められない場合がある。
【0008】
本発明は、情報表示に対する運転者の注目の度合いの向上を図ることができる情報表示システムである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、車両の運転者に情報を提供する情報表示システムであり、車両の運転者の視線の情報に基づいて、視線の集中位置を判定する視線判定手段と、運転者に情報を表示する情報表示手段と、前記視線判定手段で判定された視線の集中位置に、前記情報表示手段を移動させる移動手段とを備える、情報表示システムを含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の情報表示システムでは、車両の運転者の視線が集中する位置を視線判定手段が判定し、その視線が集中する位置に、移動手段が情報表示手段を移動させる。
【0011】
そのため、本発明の情報表示システムによれば、情報表示に対する運転者の注目の度合いの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の情報表示システムの一実施形態を示す概略構成図であり、
図1Aは、表示装置が第1位置に配置される形態を、
図1Bは、表示装置が第2位置に配置される形態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.情報表示システム
図1において、情報表示システム1は、車両としての自動車10の運転者12に情報(後述)を提供するために、設備されている。
【0014】
情報表示システム1は、運転者12の視線の集中位置を判定する視線判定手段としての視線判定ユニット2と、運転者12に情報を表示する情報表示手段としての情報表示ユニット3と、運転者12の視線の集中位置に情報表示ユニット3を移動させる移動手段としての移動ユニット4とを備えている。
【0015】
視線判定ユニット2は、運転者12の視線の集中位置を判定するユニットである。視線判定ユニット2は、自動車10の位置情報を取得するGPS装置(図示せず)と、各運転者12の顔を撮影する車室カメラ20と、各車室カメラ20による撮像を、撮像データとして保持する撮像サーバ22と、撮像データから視線の集中位置を判定する判定部23とを備えている。
【0016】
GPS装置(図示せず)は、自動車10の位置情報を取得するとともに、その位置情報をデータ(以下、位置データ)として判定部23に送信可能としている。
【0017】
車室カメラ20は、自動車10の運転席において、運転者12に向かって配置されている。車室カメラ20は、運転者12の顔を撮影し、その撮像をデータ(以下、撮像データ)として撮像サーバ22に送信可能としている。
【0018】
撮像サーバ22は、上記で得られた撮像データを蓄積可能とするデータ記憶媒体である。撮像サーバ22は、車室カメラ20と無線通信などにより接続されている(
図1破線参照)。これにより、車室カメラ20から撮像データを受信可能としている。
【0019】
判定部23は、GPS装置(図示せず)により取得される自動車10の位置データと、撮像サーバ22に蓄積される撮像データとを、所定のプログラムにより総合的に情報処理し、注視度を算定可能としている。
【0020】
より具体的には、判定部23は、撮像サーバ22と無線通信などにより接続されている(
図1破線参照)。これにより、判定部23には、撮像サーバ22に記憶された撮像データが入力可能とされている。そして、判定部23は、各撮像データおよび位置データから、予め設定された所定の地域(情報表示ユニット3の近傍)を走行する自動車10の運転者12の視線の情報を、データ(以下、視線データ)として抽出可能としている。視線の情報としては、例えば、視線の角度、視線の方向、視線の停滞時間などが挙げられる。
【0021】
また、判定部23は、詳しくは後述するように、運転者12の視線データに基づいて、運転者12の視線の集中位置を、所定のプログラムに従って判定可能としている。
【0022】
なお、運転者12の視線が集中する位置とは、所定の地域(情報表示ユニット3の近傍)を走行する自動車10の運転者12の視線が集中しやすい位置であり、例えば、所定の時間毎に(例えば、1時間単位で)判定される。
【0023】
つまり、判定部23は、例えば、所定の時間単位(例えば、過去1時間)で、情報表示ユニット3の近傍を走行する自動車10の運転者12の視線の情報を取得し、視線が集中しやすい位置を判定する。
【0024】
より具体的には、例えば、大型車(トラックなど)や、男性ドライバーの通行が多い時間帯であれば、視線の集中しやすい位置は、比較的高くなり、また、例えば、小型車(軽自動車など)や、女性ドライバーの通行が多い時間帯であれば、視線の集中しやすい位置は、比較的低くなる。つまり、判定部23は、所定の地域(情報表示ユニット3の近傍)を走行する複数の自動車10において、各運転者12の視線の分布を観察することにより、視線が集中しやすい位置を特定可能としている。なお、視線が集中しやすい位置を特定する方法は、公知の方法に準拠できる。
【0025】
情報表示ユニット3は、運転者12に任意の情報を表示するユニットである。情報表示ユニット3は、運転者12に向かって情報(文字、図など)を表示する表示板31を備えている。
【0026】
表示板31は、移動ユニット4により移動可能に配置されている。
【0027】
表示板31に表示される情報は、一定であってもよく、また、周期的にまたは任意のタイミングで変更可能とされていてもよい。
【0028】
表示板31に表示される情報は、好ましくは、周期的にまたは任意のタイミングで変更可能とされている。この場合、情報表示ユニット3は、例えば、情報を選択し、表示板31に表示するための制御部(図示せず)を備えることができる。
【0029】
表示板31に表示される情報は、特に制限されないが、例えば、道路渋滞注意、通行規制注意などの道路交通情報、例えば、ブレーキ注意、車間距離注意などの注意喚起(警告)情報、例えば、各種都市や施設までの距離を示す地図情報、例えば、各種広告情報などが挙げられる。また、表示板31に表示される情報として、運転者12の撮像データなどに基づいて、運転者12の生理状態、健康状態などに応じて提供される情報(例えば、眠気注意など)も挙げられる。
【0030】
移動ユニット4は、視線判定ユニット2で判定された視線の集中位置に、表示板31を配置するユニットである。
【0031】
移動ユニット4は、表示板31を支持する支持装置41と、その支持装置41に電気的に接続され、支持装置41による表示板31の支持高さを調整するための制御部42とを備えている。
【0032】
支持装置41は、例えば、自動車10が走行する道路の近傍において、表示板31を運転者12に向けて支持している。また、支持装置41は、表示板31を所定方向(例えば、高さ方向、車幅方向)に移動可能としており、任意の位置で、表示板31を固定可能としている。
【0033】
支持装置41としては、特に制限されないが、例えば、表示板31を上下方向(自動車10の高さ方向)に移動可能とする柱型支持装置、例えば、表示板31を水平方向(自動車10の前後方向または車幅方向)に移動可能とする陸橋型支持装置などが挙げられる。
図1には、柱型支持装置を示している。
【0034】
制御部42は、表示板31を移動させ、その支持高さを調整するために備えられている。制御部42は、判定部23と無線通信などにより接続されている(
図1破線参照)。これにより、制御部42は、所定のプログラムに従って、判定部23で判定された視線の集中位置に、表示板31の位置を調整可能としている。
【0035】
なお、撮像サーバ22、判定部23および制御部42は、例えば、同一の管理施設8内に配置される。
【0036】
2.情報表示システムによる情報表示
上記の情報表示システム1では、表示板31に、任意の情報が表示される。
【0037】
また、表示板31は、支持装置41に支持され、自動車10の走行地域に配置される。
【0038】
このとき、表示板31の表示位置(高さ)は、
図1Aに示されるように、例えば、一般的な自動車の大きさ、座面の高さなどを考慮して、表示情報が運転者12の視界に入る位置(第1位置)に、調整される。
【0039】
一方、通常の交通道路において、自動車10の運転者の属性は、例えば、会社員、主婦、学生など様々であり、また、自動車10の車種も様々であるため、視線の高さなどは、種々異なる。また、時間帯によって、比較的多い運転者の属性や、車種が異なる。
【0040】
その結果、予め設定された範囲で、情報表示装置に画一的に情報を表示しても、運転者の注目を十分に集められない場合がある。
【0041】
より具体的には、
図1Bに示されるように、トラックなどの大型車両の通行が多い時間帯などでは、
図1Aに示されるような、普通自動車の通行が多い時間帯に比べて、運転者12の視線の平均的な高さが高くなる。
【0042】
そのため、
図2において仮想線(2点鎖線)で示されるように、上記の第1位置に配置された表示板31に、運転者12の視線が集まりにくくなる場合がある。
【0043】
そこで、この情報表示システム1では、視線判定ユニット2が、複数の自動車10を対象としてデータ分析し、運転者12の視線の集中位置を判定する。
【0044】
より具体的には、上記の情報表示システム1では、視線判定ユニット2の車室カメラ20が、走行中の各自動車10の運転者12の顔を撮影して、撮像データを撮像サーバ22に送信する。また、GPS装置(図示せず)が自動車10の位置データを取得し、撮像サーバ22に送信する。
【0045】
そして、判定部23は、予め設定された所定の位置(情報表示ユニット3の近傍)を走行する各自動車10の運転者12の撮像データから、運転者12の視線の情報を、視線データ(視線の方向、停滞時間)として抽出する(
図1の太破線矢印X)。
【0046】
そして、得られた視線データを、判定部23において所定のプログラムに従って情報処理し、運転者12の視線の集中位置を判定する。
【0047】
より具体的には、判定部23は、複数の撮像データから視線データを抽出して、その視線分布を分析し、より多くの運転者12の視線が集中している位置(つまり、運転者12の視線が集中しやすい位置)を特定する。
【0048】
そして、判定部23は、運転者12の視線の集中位置を、制御部42に送信する。
【0049】
制御部42は、支持装置41を操作して、表示板31を、運転者12の視線の集中位置(高さ)に移動させる。つまり、表示板31は、より運転者12の視線を集めやすい位置(第2位置)に配置される。
【0050】
そして、この情報表示システム1では、上記の操作を継続的に繰り返し実行する。
【0051】
すなわち、上記の情報表示システム1が作動している間、視線判定ユニット2は、常に運転者12の視線の集中位置を判定する。そして、移動ユニット4が、運転者12の視線の集中位置に、表示板31を移動させる。これにより、表示板31の位置が、常に、運転者12の視線の集中位置に調整され続ける。
【0052】
3.作用・効果
上記の情報表示システム1では、自動車10の運転者12の視線が集中する位置を視線判定ユニット2が判定し、その視線が集中する位置に、移動ユニット4が情報表示ユニット3(表示板31)を配置する。そのため、上記の情報表示システム1によれば、情報表示に対する運転者12の注目の度合いの向上を図ることができる。
【0053】
4.変形例
上記した実施形態では、支持装置41として、表示板31を上下方向(自動車10の高さ方向)に移動可能とする柱型支持装置、例えば、表示板31を水平方向(自動車10の前後方向または車幅方向)に移動可能とする陸橋型支持装置などを挙げているが、支持装置41としては、上記に限定されず、例えば、表示板31を一体的にまたは別体として有する無人飛行体(飛行型ドローン)や、表示板31一体的にまたは別体として有する無人走行体(自走型ドローン)などを用いることができる。これらによっても、表示板31を、視線の集中位置に応じて、上下方向(自動車10の高さ方向)に移動可能とすることができ、また、水平方向(自動車10の前後方向または車幅方向)に移動可能とすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 情報表示システム
2 視線判定ユニット
3 情報表示ユニット
4 移動ユニット
10 自動車
12 運転者