(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】路盤補強工法
(51)【国際特許分類】
E01C 3/00 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
E01C3/00
(21)【出願番号】P 2019161429
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】弘中 淳市
(72)【発明者】
【氏名】小川 亮太
(72)【発明者】
【氏名】木村 宗祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和成
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-090611(JP,A)
【文献】特開2009-185516(JP,A)
【文献】特開2002-088706(JP,A)
【文献】特開平11-323812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装道路の路盤の幅方向片側部分に第1の樹脂製シート部材を敷設すると共に前記路盤の幅方向他側部分に第2の樹脂製シート部材を敷設して前記路盤を補強する路盤補強工法であって、
前記舗装道路を掘削して前記路盤の幅方向片側部分を露出させる工程と、
露出させた前記路盤の幅方向片側部分の上面に前記第1の樹脂製シート部材を敷設すると共に、前記舗装道路の幅方向中央側に位置する前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部を上方に向かって折り曲げる工程と、
折り曲げた前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部にカバー部材を装着させる工程とを含む路盤補強工法。
【請求項2】
前記舗装道路を掘削して前記路盤の幅方向他側部分と共に前記カバー部材を露出させる工程と、
前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部から前記カバー部材を取り外すと共に、前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部の折り曲げを解除して展開する工程と、
露出させた前記路盤の幅方向他側部分の上面に前記第2の樹脂製シート部材を敷設し、かつ、展開した前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部に、前記舗装道路の幅方向中央側に位置する前記第2の樹脂製シート部材の片側縁部を重ねる工程とを含む、請求項1に記載の路盤補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装道路の路盤の幅方向片側部分に第1の樹脂製シート部材を敷設すると共に路盤の幅方向他側部分に第2の樹脂製シート部材を敷設して路盤を補強する路盤補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通量の増大に伴い、既設の舗装道路の路盤を補強する工事が随時行われている。既設の舗装道路の路盤を補強する際は、路盤に樹脂製シート部材を敷設する路盤補強工法が従来から採用されている(たとえば特許文献1および2参照。)。一般に、路盤補強工法においては、まず、舗装道路の幅方向片側を通行規制すると共に、舗装道路を掘削して路盤の幅方向片側部分を露出させる。次いで、露出させた路盤の幅方向片側部分の上面に第1の樹脂製シート部材を敷設する。次いで、舗装道路の幅方向片側を再構築して通行規制を解除する。次いで、舗装道路の幅方向他側を通行規制すると共に、舗装道路を掘削して路盤の幅方向他側部分を露出させる。次いで、露出させた路盤の幅方向他側部分の上面に第2の樹脂製シート部材を敷設する。そして、舗装道路の幅方向他側を再構築して通行規制を解除する。このようにして、舗装道路の路盤補強工法を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-44374号公報
【文献】特開2010-281080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路盤補強工法を実施する際は、所要の補強効果を確保する観点から、第1および第2の樹脂製シート部材の片側縁部同士を重ねる必要がある。このため、舗装道路を掘削して路盤の幅方向他側部分を露出させる際は、舗装道路の幅方向中央側に位置する第1の樹脂製シート部材の片側縁部も露出させる必要がある。しかしながら、舗装道路の掘削には油圧ショベル等の掘削機械を用いることから、路盤の幅方向他側部分と共に第1の樹脂製シート部材の片側縁部を露出させる際に、掘削機械によって第1の樹脂製シート部材を損傷させてしまうおそれがある。
【0005】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、舗装道路を掘削して路盤の幅方向他側部分と共に第1の樹脂製シート部材の片側縁部を露出させる際に、第1の樹脂製シート部材の損傷を防止することができる路盤補強工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために以下の路盤補強工法を提供する。すなわち、舗装道路の路盤の幅方向片側部分に第1の樹脂製シート部材を敷設すると共に前記路盤の幅方向他側部分に第2の樹脂製シート部材を敷設して前記路盤を補強する路盤補強工法であって、前記舗装道路を掘削して前記路盤の幅方向片側部分を露出させる工程と、露出させた前記路盤の幅方向片側部分の上面に前記第1の樹脂製シート部材を敷設すると共に、前記舗装道路の幅方向中央側に位置する前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部を上方に向かって折り曲げる工程と、折り曲げた前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部にカバー部材を装着させる工程とを含む路盤補強工法を本発明は提供する。
【0007】
好ましくは、前記舗装道路を掘削して前記路盤の幅方向他側部分と共に前記カバー部材を露出させる工程と、前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部から前記カバー部材を取り外すと共に、前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部の折り曲げを解除して展開する工程と、露出させた前記路盤の幅方向他側部分の上面に前記第2の樹脂製シート部材を敷設し、かつ、展開した前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部に、前記舗装道路の幅方向中央側に位置する前記第2の樹脂製シート部材の片側縁部を重ねる工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の路盤補強工法においては、舗装道路を掘削して路盤の幅方向片側部分を露出させる工程と、露出させた前記路盤の幅方向片側部分の上面に第1の樹脂製シート部材を敷設すると共に、前記舗装道路の幅方向中央側に位置する前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部を上方に向かって折り曲げる工程と、折り曲げた前記第1の樹脂製シート部材の片側縁部にカバー部材を装着させる工程とを含むので、舗装道路を掘削して路盤の幅方向他側部分と共に第1の樹脂製シート部材の片側縁部を露出させる際に、カバー部材によって第1の樹脂製シート部材の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】路盤の幅方向片側部分が露出した状態を示す舗装道路の断面図。
【
図4】路盤の幅方向片側部分に第1の樹脂製シート部材が敷設された状態を示す舗装道路の断面図。
【
図6】折り曲げられた第1の樹脂製シート部材の片側縁部にカバー部材が装着された状態を示す舗装道路の断面図。
【
図7】幅方向片側が再構築された舗装道路の断面図。
【
図8】路盤の幅方向他側部分およびカバー部材が露出した状態を示す舗装道路の断面図。
【
図9】第1の樹脂製シート部材の片側縁部からカバー部材が取り外されると共に、第1の樹脂製シート部材の片側縁部の折り曲げが解除され片側縁部が展開された状態を示す舗装道路の断面図。
【
図10】路盤の幅方向他側部分に第2の樹脂製シート部材が敷設された状態を示す舗装道路の断面図。
【
図11】幅方向他側が再構築された舗装道路の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の路盤補強工法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1には、本発明の路盤補強工法によって路盤が補強される前の舗装道路2の断面が示されている。
図1に示すとおり、舗装道路2は、路床4の上に敷設された路盤6と、路盤6の上に敷設された表層8とを備える。路盤6は、適宜のクラッシャラン等から構成され得る下層路盤6aと、適宜の粒度調整砕石等から構成され得る上層路盤6bとを含む。表層8はアスファルト混合物等から構成され得る。なお、
図1に示す矢印Wは舗装道路2の幅方向である。
【0014】
図示の実施形態の路盤補強工法では、まず、舗装道路2の幅方向片側を通行規制し、油圧ショベル等の掘削機械(図示していない。)を用いて、
図2に示すとおり、舗装道路2を掘削して路盤6の幅方向片側部分(
図2における左側部分)を露出させる工程を実施する。図示の実施形態では
図2に示すとおり、下層路盤6aを露出させているが、露出させる路盤6は、上層路盤6bであってもよい。
【0015】
路盤6の幅方向片側部分を露出させた後、露出させた路盤6の幅方向片側部分の上面に第1の樹脂製シート部材を敷設すると共に、舗装道路2の幅方向中央側に位置する第1の樹脂製シート部材の片側縁部を上方に向かって折り曲げる工程を実施する。
【0016】
図3には、本発明の路盤補強工法において用いることができる第1の樹脂製シート部材10が示されている。第1の樹脂製シート部材10は、ポリオレフィン(たとえばポリプロピレン、ポリエチレン)等の適宜の熱可塑性樹脂から形成されており、全体として長方形状である。第1の樹脂製シート部材10の長さは40~100m程度でよく、第1の樹脂製シート部材10の幅は2~5m程度でよい。図示の実施形態の第1の樹脂製シート部材10は、三角形状の複数の開口12が規則的に形成された網状である。開口12の形状は、矩形状、亀甲形状または円形状等であってもよい。なお、第1の樹脂製シート部材10は不織布や織布から形成されていてもよい。
【0017】
そして、
図4に示すとおり、露出させた路盤6(図示の実施形態では下層路盤6a)の幅方向片側部分の上面に第1の樹脂製シート部材10を車両進行方向(
図4における紙面に対して垂直な方向)に沿って敷設すると共に、舗装道路2の幅方向中央側に位置する第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aを上方に向かって折り曲げる。折り曲げる片側縁部10aの寸法Zは、たとえば5~45cm程度でよい。なお、複数の第1の樹脂製シート部材10を路盤6に敷設する場合には、隣接する第1の樹脂製シート部材10の縁部同士が重なるようにする。
【0018】
路盤6の幅方向片側部分に第1の樹脂製シート部材10を敷設した後、折り曲げた第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aにカバー部材を装着させる工程を実施する。
【0019】
図5には、本発明の路盤補強工法において用いることができるカバー部材14が示されている。カバー部材14は、ポリオレフィン(たとえばポリプロピレン、ポリエチレン)やポリ塩化ビニル等の適宜の熱可塑性樹脂または鋼材等の適宜の金属材料から形成されている。カバー部材14は、長方形状の片側部16と、片側部16に対面する長方形状の他側部18と、片側部16の上端と他側部18の上端とを接続する接続部20とを備えている。図示の実施形態のカバー部材14は、長方形の板状部材を短手方向中間部において折り返すことによって形成されている。なお、カバー部材14はプラスチック段ボール(中空構造板)から形成されていてもよい。また、カバー部材14は一時的に舗装道路2に埋め込まれることから、舗装道路2を掘削して路盤6の幅方向他側部分を露出させる際にカバー部材14を容易に見つけることができるように、路盤6に対して比較的コントラストがはっきりした色(たとえば黄色)でカバー部材14が着色されているのが好ましい。
【0020】
図5を参照して説明を続けると、カバー部材14の長さLは、作業者が把持して持ち運ぶ際の運搬性の観点から、1~4m程度であるのが好ましい。カバー部材14の厚さTは、カバー部材14の強度や自立性、加工性等の観点から、0.5~5mm程度であるのが好ましい。カバー部材14の高さHは、たとえば10~50cm程度でよく、片側部16と他側部18との間の隙間Sは、たとえば1~2cm程度でよく、第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aを片側部16と他側部18との間に収容できる程度の高さHおよび隙間Sであればよい。なお、片側部16の高さと他側部18の高さとは、図示の実施形態では同一であるが、異なっていてもよい。そして、
図6に示すとおり、折り曲げた第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aに、車両進行方向に沿って複数のカバー部材14を被せる。第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aに被せたカバー部材14が倒れるのを防止するため、L字状やJ字状のアンカーピン(図示していない。)をカバー部材14に沿って路盤6の底面に突き刺し、カバー部材14をアンカーピンで支持してもよい。
【0021】
第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aにカバー部材14を装着させた後、
図7に示すとおり、舗装道路2の幅方向片側を再構築して、舗装道路2の幅方向片側の通行規制を解除する。なお、図示の実施形態では
図7に示すとおり、第1の樹脂製シート部材10の上には上層路盤6bを構成する材料を敷設しているが、掘削前の下層路盤6aの幅方向片側部分の上面まで、下層路盤6aを構成する材料を敷設してもよい。
【0022】
舗装道路2の幅方向片側を再構築した後、舗装道路2の幅方向他側を通行規制し、
図8に示すとおり、舗装道路2を掘削して路盤6の幅方向他側部分(
図8における右側部分)と共にカバー部材14を露出させる工程を実施する。本工程では、第1の樹脂製シート部材10が敷設されている深さまで、掘削機械を用いて舗装道路2を掘削する。この際、第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aは上方に向かって折り曲げられていると共に、片側縁部10aにカバー部材14が装着されているため、掘削機械による第1の樹脂製シート部材10の損傷が防止される。
【0023】
路盤6の幅方向他側部分を露出させた後、
図9に示すとおり、第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aからカバー部材14を取り外すと共に、第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aの折り曲げを解除して展開する工程を実施する。なお、カバー部材14に沿って路盤6の底面にアンカーピンを突き刺していた場合には、カバー部材14と共にアンカーピンを取り外す。
【0024】
第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aの折り曲げを解除して展開した後、
図10に示すとおり、露出させた路盤6の幅方向他側部分の上面に第2の樹脂製シート部材22を敷設し、かつ、展開した第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aに、舗装道路2の幅方向中央側に位置する第2の樹脂製シート部材22の片側縁部22aを重ねる工程を実施する。第2の樹脂製シート部材22については、第1の樹脂製シート部材10の構成と同一でよいので説明を省略する。
【0025】
路盤6の幅方向他側部分に第2の樹脂製シート部材22を敷設した後、
図11に示すとおり、舗装道路2の幅方向他側を再構築して、舗装道路2の幅方向他側の通行規制を解除する。このようにして、路盤補強工法を実施する。
【0026】
以上のとおりであり、図示の実施形態の路盤補強工法においては、舗装道路2を掘削して路盤6の幅方向片側部分を露出させる工程と、露出させた路盤6の幅方向片側部分の上面に第1の樹脂製シート部材10を敷設すると共に、舗装道路2の幅方向中央側に位置する第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aを上方に向かって折り曲げる工程と、折り曲げた第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aにカバー部材14を装着させる工程とを含むので、舗装道路2を掘削して路盤6の幅方向他側部分と共に第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aを露出させる際に、カバー部材14によって第1の樹脂製シート部材10の損傷を防止することができる。
【0027】
また、図示の実施形態のカバー部材14においては、長方形状の片側部16と、片側部16に対面する長方形状の他側部18と、片側部16の上端と他側部18の上端とを接続する接続部20とを備えるので、折り曲げられた第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aにカバー部材14を被せることにより、舗装道路2を掘削して路盤6の幅方向他側部分と共に第1の樹脂製シート部材10の片側縁部10aを露出させる際に、第1の樹脂製シート部材10の損傷を防止することができる。
【符号の説明】
【0028】
2:舗装道路
6:路盤
6a:下層路盤
6b:上層路盤
10:第1の樹脂製シート部材
10a:第1の樹脂製シート部材の片側縁部
14:カバー部材
16:片側部
18:他側部
20:接続部
22:第2の樹脂製シート部材
22a:第2の樹脂製シート部材の片側縁部