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特許73440603次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】3次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/00 103A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019167414
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043155
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠之
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100898(JP,A)
【文献】特開2019-045319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置であって、
望遠鏡部の視準により前記測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、
前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、
前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、
を備え、
前記制御演算部は、前記望遠鏡部の視準により測量位置における前記視準測距ユニットの機械基準点の座標と前記望遠鏡部の基準視準の方向とを算出して記憶し、前記スキャナユニットを制御することにより前記測量位置において取得された前記点群データを記憶し、前記視準測距ユニットに対する前記スキャナユニットの相対的な位置および姿勢をキャリブレーションによって予め与えておくことにより、記憶された前記機械基準点の座標と前記基準視準の方向とに基づいて前記スキャナユニットにより取得された前記点群データの位置合わせを行い、前記スキャナユニットにより取得された前記点群データに含まれる複数の前記3次元データを用いて前記測定対象物の平面の平均的な位置合わせを行うことにより前記位置合わせを行った前記点群データの詳細位置合わせを行う制御を実行することを特徴とする3次元測量装置。
【請求項2】
前記平面は、前記測定対象物の壁面であることを特徴する請求項1に記載の3次元測量装置。
【請求項3】
前記壁面は、ビルの壁面であることを特徴とする請求項2に記載の3次元測量装置。
【請求項4】
望遠鏡部の視準により測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、
前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、
前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、
を備え、前記測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置が実行する3次元測量方法であって、
前記望遠鏡部の視準により測量位置における前記視準測距ユニットの機械基準点の座標と前記望遠鏡部の基準視準の方向とを算出して記憶し、前記スキャナユニットを制御することにより前記測量位置において取得された前記点群データを記憶し、前記視準測距ユニットに対する前記スキャナユニットの相対的な位置および姿勢をキャリブレーションによって予め与えておくことにより、記憶された前記機械基準点の座標と前記基準視準の方向とに基づいて前記スキャナユニットにより取得された前記点群データの位置合わせを行い、前記スキャナユニットにより取得された前記点群データに含まれる複数の前記3次元データを用いて前記測定対象物の平面の平均的な位置合わせを行うことにより前記位置合わせを行った前記点群データの詳細位置合わせを行うステップを備えたことを特徴とする3次元測量方法。
【請求項5】
望遠鏡部の視準により測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、
前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、
前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、
を備え、前記測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置のコンピュータによって実行される3次元測量プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記望遠鏡部の視準により測量位置における前記視準測距ユニットの機械基準点の座標と前記望遠鏡部の基準視準の方向とを算出して記憶し、前記スキャナユニットを制御することにより前記測量位置において取得された前記点群データを記憶し、前記視準測距ユニットに対する前記スキャナユニットの相対的な位置および姿勢をキャリブレーションによって予め与えておくことにより、記憶された前記機械基準点の座標と前記基準視準の方向とに基づいて前記スキャナユニットにより取得された前記点群データの位置合わせを行い、前記スキャナユニットにより取得された前記点群データに含まれる複数の前記3次元データを用いて前記測定対象物の平面の平均的な位置合わせを行うことにより前記位置合わせを行った前記点群データの詳細位置合わせを行うステップを実行させることを特徴とする3次元測量プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トータルステーションと、レーザスキャナユニットと、を備えた測量システムが開示されている。トータルステーションは、測定点の3次元座標(3次元データ)を高精度に測定する測量装置である。レーザスキャナユニットは、測距光としてパルスレーザ光を回転照射し、パルスレーザ光毎に測距を行い、点群データを取得する。より具体的には、レーザスキャナユニットは、測距光としてパルスレーザ光を測定対象物に照射し、測定対象物で反射したパルスレーザ光毎の反射光を受光して、測定対象物までの距離を測定するとともに測距光の照射方向(水平角および鉛直角)を検出することにより、測定対象物の多数点の3次元データ(3次元点群データ)を取得する。
【0003】
トータルステーションの測定精度は、工業計測を含めて非常に高い。例えば、トータルステーションは、測量の分野で使用される場合において、距離精度で1mm以下の測定精度を確保することができ、また、角度精度も一級経緯儀等で要求される充分な精度を確保することができる。レーザスキャナユニットは、1秒間に数十万点の点群測定を実行可能であり、非常に高速で高効率な測量を実現することができる。
【0004】
例えば、トータルステーションが3次元データを高精度に測定し、レーザスキャナユニットが高速に点群データを取得した後では、トータルステーションにより取得された3次元データと、レーザスキャナユニットにより取得された点群データと、が測量装置とは異なる他のコンピュータなどに入力される。そして、トータルステーションにより取得された3次元データと、レーザスキャナユニットにより取得された点群データと、の位置合わせ、対応付け、あるいは関連付けなどを行う点群データのレジストレーションが他のコンピュータにより実行される。
【0005】
しかし、トータルステーションにより取得された3次元データと、レーザスキャナユニットにより取得された点群データと、によっては、レジストレーションにおいて比較的長い処理時間が必要になったり、レジストレーションが完了できなかったりすることがある。また、レジストレーションの処理時間を短縮化したり、レジストレーションをより確実に完了させたりするために、点群データのレジストレーションを手動で行うことがある。このように、測定対象物の点群データを取得する3次元測量装置には、点群データのレジストレーションにおいて時間や手間がかかるという点において改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-223540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、点群データのレジストレーションを効率的に実行することができる3次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置であって、望遠鏡部の視準により前記測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、を備え、前記制御演算部は、前記望遠鏡部の視準により測量位置における前記視準測距ユニットの機械基準点の座標を算出して記憶し、前記スキャナユニットを制御することにより前記測量位置において取得された前記点群データを記憶し、記憶された前記機械基準点の座標に基づいて前記スキャナユニットにより取得された前記点群データの位置合わせを行う制御を実行することを特徴とする本発明に係る3次元測量装置により解決される。
【0009】
本発明に係る3次元測量装置によれば、測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットが、測定対象物に関する測距および測角を行う視準測距ユニットと一体で設けられている。制御演算部は、視準測距ユニットの望遠鏡部の視準により測量位置における視準測距ユニットの機械基準点の座標を算出して記憶する。また、制御演算部は、スキャナユニットを制御することにより測量位置において取得された点群データを記憶する。そして、制御演算部は、記憶された視準測距ユニットの機械基準点の座標に基づいてスキャナユニットにより取得された点群データの位置合わせを行う制御を実行する。これにより、スキャナユニットにより取得された点群データは、自動的に正しい位置にアライメントされる。そのため、点群データのレジストレーションが実行される際に、比較的長い処理時間が必要になったり、点群データのレジストレーションが完了できなかったり、点群データのレジストレーションを手動で行うことで手間がかかったりすることを抑えることができる。これにより、本発明に係る3次元測量装置は、点群データのレジストレーションを効率的に実行することができる。
【0010】
本発明に係る3次元測量装置において、好ましくは、前記制御演算部は、前記スキャナユニットにより取得された前記点群データに含まれる複数の前記3次元データに基づいて、前記位置合わせを行った前記点群データの詳細位置合わせを行う制御を実行することを特徴する。
【0011】
本発明に係る3次元測量装置によれば、制御演算部は、スキャナユニットにより取得された点群データに含まれる複数の3次元データに基づいて、位置合わせを行った点群データの詳細位置合わせを行う制御を実行する。そのため、視準測距ユニットにより取得された3次元データが仮に誤差を含む場合であっても、制御演算部は、スキャナユニットにより取得された多数の測定点の3次元データを用いることにより、点群データの位置合わせを修正し、より高精度な点群データの位置合わせを行うことができる。そのため、スキャナユニットにより取得された点群データは、より一層正しい位置にアライメントされる。これにより、本発明に係る3次元測量装置は、点群データのレジストレーションをより一層効率的に実行することができる。
【0012】
本発明に係る3次元測量装置において、好ましくは、前記制御演算部は、互いに異なる複数の前記測量位置のそれぞれにおいて前記スキャナユニットにより取得された前記点群データに含まれる複数の前記3次元データに基づいて、前記詳細位置合わせを行うことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る3次元測量装置によれば、制御演算部は、互いに異なる複数の測量位置のそれぞれにおいてスキャナユニットにより取得された点群データに含まれる複数の3次元データに基づいて点群データの詳細位置合わせを行う。そのため、測定対象物が例えばビルなどの比較的高い建築物である場合において、計測用ターゲットの設置可能な箇所が所定の箇所に限定されるときであっても、制御演算部は、各測量位置においてスキャナユニットにより取得された多数の測定点の3次元データを用いることにより、測定対象物の所定の面などの特徴部分に関する各測量位置における3次元データの不整合を調整し、より高精度な点群データの位置合わせを行うことができる。そのため、スキャナユニットにより取得された点群データは、より一層正しい位置にアライメントされる。これにより、本発明に係る3次元測量装置は、点群データのレジストレーションをより一層効率的に実行することができる。
【0014】
前記課題は、望遠鏡部の視準により測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、を備え、前記測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置が実行する3次元測量方法であって、前記望遠鏡部の視準により測量位置における前記視準測距ユニットの機械基準点の座標を算出して記憶し、前記スキャナユニットを制御することにより前記測量位置において取得された前記点群データを記憶し、記憶された前記機械基準点の座標に基づいて前記スキャナユニットにより取得された前記点群データの位置合わせを行うステップを備えたことを特徴とする本発明に係る3次元測量方法により解決される。
【0015】
本発明に係る3次元測量方法によれば、3次元測量方法を実行する3次元測量装置において、測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットは、測定対象物に関する測距および測角を行う視準測距ユニットと一体で設けられている。そして、視準測距ユニットの望遠鏡部の視準により測量位置における視準測距ユニットの機械基準点の座標が算出されて記憶される。また、スキャナユニットを制御することにより測量位置において取得された点群データが記憶される。そして、記憶された視準測距ユニットの機械基準点の座標に基づいてスキャナユニットにより取得された点群データの位置合わせを行うステップが実行される。これにより、スキャナユニットにより取得された点群データは、自動的に正しい位置にアライメントされる。そのため、点群データのレジストレーションが実行される際に、比較的長い処理時間が必要になったり、点群データのレジストレーションが完了できなかったり、点群データのレジストレーションを手動で行うことで手間がかかったりすることを抑えることができる。これにより、本発明に係る3次元測量方法は、点群データのレジストレーションを効率的に実行することができる。
【0016】
前記課題は、望遠鏡部の視準により測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、を備え、前記測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置のコンピュータによって実行される3次元測量プログラムであって、前記コンピュータに、前記望遠鏡部の視準により測量位置における前記視準測距ユニットの機械基準点の座標を算出して記憶し、前記スキャナユニットを制御することにより前記測量位置において取得された前記点群データを記憶し、記憶された前記機械基準点の座標に基づいて前記スキャナユニットにより取得された前記点群データの位置合わせを行うステップを実行させることを特徴とする本発明に係る3次元測量プログラムにより解決される。
【0017】
本発明に係る3次元測量プログラムによれば、3次元測量プログラムを実行するコンピュータを備える3次元測量装置において、測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットは、測定対象物に関する測距および測角を行う視準測距ユニットと一体で設けられている。そして、視準測距ユニットの望遠鏡部の視準により測量位置における視準測距ユニットの機械基準点の座標が算出されて記憶される。また、スキャナユニットを制御することにより測量位置において取得された点群データが記憶される。そして、記憶された視準測距ユニットの機械基準点の座標に基づいてスキャナユニットにより取得された点群データの位置合わせを行うステップが実行される。これにより、スキャナユニットにより取得された点群データは、自動的に正しい位置にアライメントされる。そのため、点群データのレジストレーションが実行される際に、比較的長い処理時間が必要になったり、点群データのレジストレーションが完了できなかったり、点群データのレジストレーションを手動で行うことで手間がかかったりすることを抑えることができる。これにより、本発明に係る3次元測量プログラムは、点群データのレジストレーションを効率的に実行することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、点群データのレジストレーションを効率的に実行することができる3次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る3次元測量装置の構造系を主として表すブロック図である。
図2】本実施形態に係る3次元測量装置の制御系を主として表すブロック図である。
図3】本実施形態に係る3次元測量装置の第1動作を表すフローチャートである。
図4】本実施形態に係る3次元測量装置の第2動作を表すフローチャートである。
図5】本実施形態に係る3次元測量装置の第3動作を表すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る3次元測量装置が複数の測量位置で測定対象物の点群データを取得する状況を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る3次元測量装置の構造系を主として表すブロック図である。
図2は、本実施形態に係る3次元測量装置の制御系を主として表すブロック図である。
【0022】
本実施形態に係る3次元測量装置2は、視準測距ユニット4と、スキャナユニット5と、を備え、例えば建築物などの測定対象物7の3次元データを取得する。視準測距ユニット4は、例えばトータルステーションなどと呼ばれ、望遠鏡部45の視準により、測定対象物7に第1測距光455(図2参照)を照射し、第1測距光455が測定対象物7で反射した第1反射測距光456(図2参照)と第1内部参照光(図示せず)とに基づいて測定対象物7までの距離を測定するとともに、第1測距光455の照射方向すなわち望遠鏡部45の視準の方向を検出する。つまり、視準測距ユニット4は、測距および測角を行う機器である。視準測距ユニット4の詳細については、後述する。
【0023】
視準測距ユニット4が測距および測角を行う測定対象物には、例えばプリズムなどの計測用ターゲット6が含まれる。つまり、視準測距ユニット4は、測定対象物として例えばプリズムなどの計測用ターゲット6に関する測距および測角を行うことができる。計測用ターゲット6として用いられるプリズムは、特には限定されず、例えば全周プリズムや球状プリズムや面状プリズムなどである。
【0024】
スキャナユニット5は、視準測距ユニット4と一体で設けられている。本実施形態に係る3次元測量装置2では、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4の上部に固定されている。なお、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4に対して回転自在に設けられていてもよい。スキャナユニット5は、測定対象物7に第2測距光565(図2参照)を照射し、第2測距光565が測定対象物7で反射した第2反射測距光566(図2参照)と第2内部参照光(図示せず)とに基づいて測定対象物7までの距離を測定するとともに、第2測距光565の照射方向を検出する。スキャナユニット5は、視準測距ユニット4と同様に、測距および測角を行う機器である。
【0025】
より具体的には、スキャナユニット5は、第2測距光565を回転照射し、測定対象物7までの距離を測定するとともに第2測距光565の照射方向を検出することにより、測定対象物7に関する多数の測定点の3次元座標(3次元データ)を取得する。すなわち、スキャナユニット5は、測定対象物7における多数の測定点の3次元データ(点群データ)を取得する。スキャナユニット5の詳細については、後述する。
【0026】
本実施形態の視準測距ユニット4は、整準部41と、第1托架部42と、第1水平回転部43と、第1鉛直回転部44と、望遠鏡部45と、制御演算部46と、操作表示部47と、基盤部48と、傾斜計49と、を有する。なお、視準測距ユニット4は、傾斜計49を必ずしも有していなくともよい。視準測距ユニット4は、測定対象物としての計測用ターゲット6を自動的に探す自動追尾機能を有していてもよい。
【0027】
制御演算部46は、演算部461と、第1距離測定部462と、第1水平回転駆動部463と、第1鉛直回転駆動部464と、第2距離測定部465と、第2鉛直回転駆動部467と、記憶部468と、画像処理部469と、を有する。演算部461は、例えばCPU(Central Processing Unit)などであり、操作表示部47の操作入力部472から送信された信号(指令)に基づいて、プログラムの起動や、信号の制御処理や、演算や、操作表示部47の表示部471などの駆動制御などを実行する。すなわち、演算部461は、3次元測量装置2の全体の制御を行うとともに、測量条件や、測定結果(測距結果および測角結果)や、画像処理された結果(2D受光光量の画像)などを表示部471に表示させる。
【0028】
なお、制御演算部46は、スキャナユニット5に設けられていてもよく、視準測距ユニット4およびスキャナユニット5の両方に設けられていてもよい。すなわち、制御演算部46は、視準測距ユニット4およびスキャナユニット5の少なくともいずれかに設けられる。
【0029】
第1距離測定部462、第1水平回転駆動部463、第1鉛直回転駆動部464、第2距離測定部465、第2鉛直回転駆動部467、および画像処理部469は、記憶部468に格納(記憶)されているプログラムを演算部461が実行することにより実現される。なお、第1距離測定部462、第1水平回転駆動部463、第1鉛直回転駆動部464、第2距離測定部465、第2鉛直回転駆動部467、および画像処理部469は、ハードウェアによって実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0030】
記憶部468には、例えば、測定のためのシーケンスプログラムや、画像処理のための画像処理プログラムや、演算プログラムなどが格納されている。記憶部468としては、例えば、3次元測量装置2に内蔵された半導体メモリなどが挙げられる。あるいは、記憶部468としては、3次元測量装置2に接続可能なCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、RAM(Random access memory)、ROM(Read only memory)、ハードディスク、メモリカードなどの種々の記憶媒体が挙げられる。
【0031】
制御演算部46を含むコンピュータによって実行されるプログラムは、本発明の「3次元測量プログラム」に相当する。ここでいう「コンピュータ」とは、パソコンには限定されず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本発明の機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0032】
整準部41は、三脚(図示せず)に取付けられる部分であり、例えば3つの調整螺子411を有する。整準部41の整準は、測量位置において、第1托架部42に設けられた傾斜センサ(図示せず)が水平を検出するように調整螺子411が調整されることにより行われる。すなわち、第1托架部42は、測量位置において、調整螺子411による整準が行われることで水平に維持される。
【0033】
第1水平回転部43は、第1水平回転軸431と、軸受432と、第1水平駆動モータ433と、第1水平角検出器(例えばエンコーダ)434と、を有する。第1水平回転軸431は、鉛直に延びた第1鉛直軸心436を有し、軸受432を介して基盤部48に回転自在に支持されている。第1托架部42は、第1水平回転軸431に支持され、第1水平駆動モータ433から伝達された駆動力により第1鉛直軸心436を中心として水平方向に第1水平回転軸431と一体的に回転する。
【0034】
基盤部48に対する第1水平回転軸431の回転角(すなわち第1托架部42の回転角)は、第1水平角検出器434によって検出される。第1水平角検出器434の検出結果は、演算部461に入力される。第1水平駆動モータ433の駆動は、第1水平角検出器434の検出結果に基づいて第1水平回転駆動部463により制御される。
【0035】
第1鉛直回転部44は、第1鉛直回転軸441と、軸受442と、第1鉛直駆動モータ443と、第1鉛直角検出器(例えばエンコーダ)444と、を有する。第1鉛直回転軸441は、水平に延びた第1水平軸心446を有し、軸受442を介して第1托架部42に回転自在に支持されている。第1鉛直回転軸441の一方の端部は、第1托架部42の間隙部421に突出している。望遠鏡部45は、第1托架部42の間隙部421に突出した第1鉛直回転軸441の一方の端部に支持され、第1鉛直駆動モータ443から伝達された駆動力により第1水平軸心446を中心として鉛直方向に第1鉛直回転軸441と一体的に回転する。
【0036】
第1鉛直角検出器444は、第1鉛直回転軸441の他方の端部に設けられている。第1托架部42に対する第1鉛直回転軸441の回転角(すなわち望遠鏡部45の回転角)は、第1鉛直角検出器444により検出される。第1鉛直角検出器444の検出結果は、演算部461に入力される。第1鉛直駆動モータ443の駆動は、第1鉛直角検出器444の検出結果に基づいて第1鉛直回転駆動部464により制御される。
【0037】
望遠鏡部45は、前述したように、第1鉛直回転軸441に支持され、第1鉛直駆動モータ443から伝達された駆動力により第1水平軸心446を中心として鉛直方向に回転する。望遠鏡部45は、視準望遠鏡458を有し、計測用ターゲット6を含む測定対象物7に視準され第1測距光455を照射する。第1測距光455は、望遠鏡部45の測距光軸上に射出される。望遠鏡部45の測距光軸は、第1鉛直軸心436と交差するとともに、第1水平軸心446と直交する。望遠鏡部45の測距光軸と、第1鉛直軸心436と、の交差点は、視準測距ユニット4の機械基準点に設定されてもよい。本実施形態の説明では、視準測距ユニット4の機械基準点が、望遠鏡部45の測距光軸と、第1鉛直軸心436と、の交差点である場合を例に挙げる。
【0038】
望遠鏡部45は、第1測距発光部451と、第1測距受光部452と、視準受光部453と、を有する。
【0039】
第1測距発光部451は、第1距離測定部462により駆動制御される。第1測距発光部451は、望遠鏡部45の内部に設けられ、例えばレーザ光などの第1測距光455を第1水平軸心446に直交する方向に射出する。第1測距発光部451から射出された第1測距光455は、測定対象物7に照射される。なお、前述したように、視準測距ユニット4が測距および測角を行う測定対象物は、建築物などの測定対象物7に限定されるわけではなくプリズムなどの計測用ターゲット6であってもよい。測定対象物7で反射した第1反射測距光456は、望遠鏡部45の内部に設けられた第1測距受光部452において受光される。第1測距受光部452は、受光した第1反射測距光456による明暗(受光結果)を電子信号(受光信号)に変換し、受光信号を第1距離測定部462に送信する。また、第1測距受光部452は、参照光光学部(図示せず)から導かれた内部参照光(図示せず)を受光し電気信号に変換して、第1距離測定部462に送信する。
【0040】
第1距離測定部462は、第1測距受光部452から送信された受光信号に基づいて測定対象物7までの距離を演算する。すなわち、第1反射測距光456および内部参照光は、第1反射測距光電気信号および内部参照光電気信号のそれぞれに変換され、第1距離測定部462に送られる。測定対象物7までの距離は、第1反射測距光電気信号と内部参照光電気信号との間の時間的間隔の差に基づいて測定される。第1距離測定部462の演算結果は、演算部(CPU)461に入力される。
【0041】
演算部461は、測定した測定対象物7までの距離と、第1鉛直角検出器444により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、測定対象物7の座標を算出する。あるいは、演算部461は、測定した測定対象物7までの距離と、第1鉛直角検出器444により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、所定位置を基準とした視準測距ユニット4の機械基準点の座標を算出してもよい。
【0042】
視準受光部453は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサであり、第1反射測距光456の波長域とは異なる波長域の反射視準光457を受光する。反射視準光457は、第1反射測距光456の波長域とは異なる波長域を有する光であって、測定対象物7で反射した光である。すなわち、視準受光部453は、測定対象物7で反射した反射視準光457を受光し、測定対象物7の画像を受光する。反射視準光457としては、例えば自然光や赤外光などが挙げられる。但し、反射視準光457は、これだけには限定されない。反射視準光457は、望遠鏡部45の内部に設けられた視準受光部453において受光される。視準受光部453は、反射視準光457による明暗(受光結果)を電子信号(画像信号)に変換し、画像信号を画像処理部469に送信する。
【0043】
画像処理部469は、視準受光部453から送信された画像信号の画像処理を実行し、画像データ信号として演算部461に送信する。演算部461は、画像処理部469から送信された画像データ信号に基づいて演算を実行し、望遠鏡部45による視準範囲の画像を操作表示部47の表示部471に表示させる制御を実行する。
【0044】
傾斜計49は、重力に対する視準測距ユニット4の傾き(傾斜角)を計測する。傾斜計49の計測結果は、演算部461に入力される。
【0045】
本実施形態のスキャナユニット5は、第2托架部52と、第2鉛直回転部54と、走査鏡55と、第2測距発光部56と、第2測距受光部57と、を有し、視準測距ユニット4の上部に固定されている。なお、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4の第1水平回転部43と同様の水平回転部を有していてもよい。この場合には、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4に対して水平方向に回転自在に設けられる。
【0046】
第2鉛直回転部54は、第2鉛直回転軸541と、軸受542と、第2鉛直駆動モータ543と、第2鉛直角検出器(例えばエンコーダ)544と、を有する。第2鉛直回転軸541は、水平に延びた第2水平軸心546を有し、軸受542を介して第2托架部52に回転自在に支持されている。第2鉛直回転軸541の一方の端部は、第2托架部52の凹部521に突出している。走査鏡55は、第2托架部52の凹部521に突出した第2鉛直回転軸541の一方の端部に支持され、第2鉛直駆動モータ543から伝達された駆動力により第2水平軸心546を中心として鉛直方向に第2鉛直回転軸541と一体的に回転する。
【0047】
第2鉛直角検出器544は、第2鉛直回転軸541の他方の端部に設けられている。第2托架部52に対する第2鉛直回転軸541の回転角(すなわち走査鏡55の回転角)は、第2鉛直角検出器544により検出される。第2鉛直角検出器544の検出結果は、演算部461に入力される。第2鉛直駆動モータ543の駆動は、第2鉛直角検出器544の検出結果に基づいて第2鉛直回転駆動部467により制御される。
【0048】
第2水平軸心546は、第1水平軸心446と平行である。第1水平軸心446と第2水平軸心546との間の距離は、既知である。すなわち、第1水平軸心446に対する第2水平軸心546の位置は、既知である。
【0049】
走査鏡55は、偏向光学部材であり、水平方向から入射した第2測距光565を直角に反射する。すなわち、走査鏡55は、水平方向から入射した第2測距光565を第2水平軸心546に直交する方向に反射する。走査鏡55は、前述したように、第2鉛直回転軸541に支持され、第2鉛直駆動モータ543から伝達された駆動力により第2水平軸心546を中心として鉛直方向に回転する。これにより、走査鏡55は、第2測距光565を第2水平軸心546に交差(具体的には直交)する面内で回転照射させる。また、走査鏡55は、測定対象物7で反射され走査鏡55に入射した第2反射測距光566を第2測距受光部57に向かって反射する。すなわち、走査鏡55は、測定対象物7で反射され走査鏡55に入射した第2反射測距光566を第2水平軸心546に平行な方向に反射する。
【0050】
第2水平軸心546と、走査鏡55と、の交差点は、スキャナユニット5の機械基準点に設定されている。例えば、視準測距ユニット4の機械基準点と、スキャナユニット5の機械基準点と、は、同一直線としての第1鉛直軸心436の上に存在する。つまり、スキャナユニット5の機械基準点を通過する鉛直線は、第1鉛直軸心436に合致する。視準測距ユニット4の機械基準点と、スキャナユニット5の機械基準点と、の間の距離は、既知である。
【0051】
図2に表したように、第2測距発光部56は、発光素子561と、対物レンズ等を含む投光光学部562と、を有し、第2距離測定部465により駆動制御される。発光素子561は、例えば半導体レーザ等であり、投光光学部562を介して第2測距光565を第2水平軸心546に合致する光軸上に射出する。第2測距光565は、不可視光としての赤外光のパルスレーザ光線である。発光素子561は、第2距離測定部465に制御され、所要の光強度や所要のパルス間隔などを含む所要の状態でパルス光を発光する。
【0052】
図2に表したように、第2測距受光部57は、受光素子571と、集光レンズなどを含む受光光学部572と、を有する。受光素子571は、第2測距光565が測定対象物7で反射した第2反射測距光566であって、走査鏡55で反射し受光光学部572を透過した第2反射測距光566を受光する。受光素子571は、受光した第2反射測距光566による明暗(受光結果)を電子信号(受光信号)に変換し、受光信号を第2距離測定部465および演算部461に送信する。また、受光素子571は、参照光光学部(図示せず)から導かれた内部参照光(図示せず)を受光し電気信号に変換して、第2距離測定部465に送信する。
【0053】
第2距離測定部465は、第2測距受光部57(具体的には受光素子571)から送信された受光信号に基づいて測定対象物7までの距離を演算する。すなわち、第2反射測距光566および内部参照光は、第2反射測距光電気信号および内部参照光電気信号のそれぞれに変換され、第2距離測定部465に送られる。測定対象物7までの距離は、第2反射測距光電気信号と内部参照光電気信号との間の時間的間隔の差に基づいて測定される。第2距離測定部465の演算結果は、演算部461に入力される。
【0054】
演算部461は、測定した測定対象物7までの距離と、第2鉛直角検出器544により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、測定対象物7の座標を算出する。また、演算部461は、パルス光毎の測定対象物7の座標を記録することで、測定範囲全域に関する点群データ、あるいは測定対象物7に関する点群データを得ることができる。
【0055】
さらに、演算部461は、第2測距受光部57の受光素子571から送信された受光信号に基づいて第2反射測距光566の強度(反射強度)を演算し、第2反射測距光566の強度を示す画像を望遠鏡部45による視準範囲の画像に重合させて操作表示部47の表示部471に表示させる制御を実行する。これにより、作業者等は、測定対象物7のうちで、3次元データが取得された測定箇所(点や領域)と、3次元データが取得されなかった測定箇所(点や領域)と、を表示部471において確認することができる。すなわち、作業者等は、スキャナユニット5が点群データを取得したときに、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていない「抜け部」などと呼ばれるデータ不足部が存在するか否かを表示部471において確認することができる。
【0056】
次に、本実施形態に係る3次元測量装置の動作を、図面を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る3次元測量装置の第1動作を表すフローチャートである。
なお、図3ならびに後述する図4および図5は、すなわち、本実施形態に係る3次元測量方法により実行されるステップと、本実施形態に係る3次元測量プログラムが3次元測量装置2のコンピュータに実行させるステップと、を表すフローチャートである。
【0057】
まず、ステップS11において、3次元測量装置2の制御演算部46は、例えば後方交会法などにより測量位置における視準測距ユニット4の機械基準点の座標と、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の基準視準の方向と、を決定し記憶部468に記憶する。すなわち、制御演算部46は、測量位置において、視準測距ユニット4から例えばプリズムなどの計測用ターゲット6までの距離と、第1鉛直角検出器444により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、視準測距ユニット4の機械基準点の座標と、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の基準視準の方向と、を算出し記憶部468に記憶する。
【0058】
続いて、ステップS12において、制御演算部46は、スキャナユニット5を制御することにより、測定対象物7に関する多数の測定点の3次元データ(点群データ)を測量位置において取得し記憶する。
【0059】
続いて、ステップS13において、制御演算部46は、記憶された視準測距ユニット4の機械基準点の座標に基づいて、スキャナユニット5により取得された点群データの位置合わせを行う。具体的には、制御演算部46は、視準測距ユニット4に対するスキャナユニット5の相対的な位置および姿勢をキャリブレーションによって予め与えておくことにより、視準測距ユニット4の機械基準点の座標と、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の基準視準の方向と、に基づいてスキャナユニット5により取得された点群データの位置合わせを行うことができる。このように、本実施形態に係る3次元測量装置2は、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の視準により視準測距ユニット4の機械基準点の座標を算出し、視準測距ユニット4の機械基準点の座標に基づいてスキャナユニット5により取得された点群データのアライメントを行う。
【0060】
本実施形態に係る3次元測量装置2によれば、スキャナユニット5により取得された点群データは、自動的に正しい位置にアライメントされる。そのため、点群データのレジストレーションが実行される際に、比較的長い処理時間が必要になったり、点群データのレジストレーションが完了できなかったり、点群データのレジストレーションを手動で行うことで手間がかかったりすることを抑えることができる。これにより、本実施形態に係る3次元測量装置2は、点群データのレジストレーションを効率的に実行することができる。なお、点群データのレジストレーションとしては、ICP(Interactive Closest Point)アルゴリズムや、ICPアルゴリズムを拡張した手法など、種々の公知技術が利用可能である。
【0061】
図4は、本実施形態に係る3次元測量装置の第2動作を表すフローチャートである。
まず、ステップS21~S23の処理は、図3に関して前述したステップS11~S13の処理と同じである。
【0062】
ここで、視準測距ユニット4は、測定点の3次元データを高精度に取得することができる。一方で、視準測距ユニット4により取得された3次元データは、誤差を含んでいることがある。視準測距ユニット4により取得された3次元データが誤差を含んでいると、ステップS23において位置合わせを行った点群データが誤差を含むことがある。
【0063】
これに対して、図4に表した第2動作では、ステップS24において、制御演算部46は、スキャナユニット5により取得された点群データに含まれる複数の3次元データに基づいて、位置合わせを行った点群データの詳細位置合わせを行う。スキャナユニット5は、例えば1秒間に数十万点の点群測定を実行可能であり、非常に高速で高効率な測量を実現することができる。そのため、スキャナユニット5により取得された3次元データの数は、視準測距ユニット4により取得された3次元データの数よりもはるかに多い。そこで、ステップS24において、制御演算部46は、スキャナユニット5により取得された多数の測定点の3次元データを用いることにより、点群データの位置合わせを修正する。
【0064】
本実施形態に係る3次元測量装置2によれば、制御演算部46は、スキャナユニット5により取得された多数の測定点の3次元データを用いて点群データの位置合わせを修正することにより、より高精度な点群データの位置合わせを行うことができる。そのため、スキャナユニット5により取得された点群データは、より一層正しい位置にアライメントされる。これにより、本実施形態に係る3次元測量装置2は、点群データのレジストレーションをより一層効率的に実行することができる。
【0065】
図5は、本実施形態に係る3次元測量装置の第3動作を表すフローチャートである。
図6は、本実施形態に係る3次元測量装置が複数の測量位置で測定対象物の点群データを取得する状況を例示する模式図である。
【0066】
図5および図6を参照して説明する第3動作では、測定対象物7が例えばビルなどの比較的高い建築物である場合を例に挙げる。この場合には、例えば作業者等が計測用ターゲット6を測定対象物7の高層階に設置することができないことがある。つまり、計測用ターゲット6の設置可能な箇所が、例えば低層階などの所定の箇所に限定されることがある。このような場合に、図5および図6を参照して説明する第3動作は、有効な動作の1つの例である。
【0067】
まず、ステップS31において、3次元測量装置2の制御演算部46は、例えば後方交会法などにより測量開始位置P1における視準測距ユニット4の機械基準点の座標と、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の基準視準の方向と、を決定し記憶部468に記憶する。すなわち、制御演算部46は、測量開始位置P1において、視準測距ユニット4から例えばプリズムなどの計測用ターゲット6までの距離と、第1鉛直角検出器444により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、視準測距ユニット4の機械基準点の座標と、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の基準視準の方向と、を算出し記憶部468に記憶する。図6に表した例では、計測用ターゲット6は、例えばビルの1階や2階などの低層階に設置されている。
【0068】
続いて、ステップS32において、制御演算部46は、スキャナユニット5を制御することにより、測定対象物7に関する多数の測定点の3次元データ81(点群データ8)を測量開始位置P1において取得し記憶する。なお、図6は、スキャナユニット5が測定対象物7の壁面71に関する多数の測定点の3次元データ81を含む点群データ8を測量開始位置P1、第2測量位置P2および第3測量位置P3において取得する例を表している。測定対象物7の壁面71は、本発明の測定対象物の「特徴部分」の一例である。
【0069】
続いて、ステップS33において、図6に表した矢印A1のように、作業者等は、測量開始位置P1から第2測量位置P2に3次元測量装置2を移動させる。第2測量位置P2は、作業者等により任意に決定される。続いて、ステップS34において、制御演算部46は、スキャナユニット5を制御することにより、測定対象物7に関する多数の測定点の3次元データ81(点群データ8)を他の測量位置(ここでは第2測量位置P2)において取得し記憶する。
【0070】
続いて、スキャナユニット5による多数の測定点の3次元データ81(点群データ8)の取得を終了しない場合には(ステップS35:NO)、ステップS33において、図6に表した矢印A2のように、作業者等は、第2測量位置P2から第3測量位置P3に3次元測量装置2を移動させる。続いて、ステップS34において、制御演算部46は、スキャナユニット5を制御することにより、測定対象物7に関する多数の測定点の3次元データ81(点群データ8)を他の測量位置(ここでは第3測量位置P3)において取得し記憶する。
【0071】
一方で、スキャナユニット5による多数の測定点の3次元データ81(点群データ8)の取得を終了する場合には(ステップS35:YES)、ステップS36において、制御演算部46は、記憶された視準測距ユニット4の機械基準点の座標に基づいて、スキャナユニット5により取得された点群データ8の位置合わせを行う。ステップS36の処理は、図3に関して前述したステップS13の処理と同じである。
【0072】
続いて、ステップS37において、制御演算部46は、互いに異なる複数の測量位置(図6に表した例では、測量開始位置P1、第2測量位置P2および第3測量位置P3)のそれぞれにおいてスキャナユニット5により取得された点群データ8に含まれる複数の3次元データ81に基づいて、位置合わせを行った点群データ8の詳細位置合わせを行う。
【0073】
より具体的に説明すると、図4に関して前述したように、視準測距ユニット4により取得された3次元データ81は、誤差を含んでいることがある。そうすると、ステップS36において位置合わせを行った点群データ8が誤差を含むことがある。例えば、図6に表した測定対象物7の壁面71に関する点群データ8について、測量開始位置P1においてスキャナユニット5により取得された点群データ8が、第2測量位置P2および第3測量位置P3のそれぞれにおいてスキャナユニット5により取得された点群データ8とずれたり、第2測量位置P2においてスキャナユニット5により取得された点群データ8が、第3測量位置P3においてスキャナユニット5により取得された点群データ8とずれたりすることがある。そうすると、スキャナユニット5により取得された点群データ8が各測量位置において互いに不整合になり、測定対象物7の壁面71が二重や三重になった状態で表示部471などに表示されることがある。
【0074】
これに対して、前述したように、本実施形態に係る3次元測量装置2の制御演算部46は、ステップS37において、各測量位置においてスキャナユニット5により取得された点群データ8に含まれる複数の3次元データ81に基づいて、位置合わせを行った点群データ8の詳細位置合わせを行う。例えば、制御演算部46は、スキャナユニット5により取得された多数の測定点の3次元データ81を用いて測定対象物7の壁面71の平均的な位置合わせを行うことにより、ビルの壁面などの比較的広い範囲の領域において高精度な点群データ8を取得することができる。すなわち、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4ほどの高精度な3次元データ81を取得できない一方で、視準測距ユニット4よりもはるかに多数の測定点の3次元データ81を取得できる。そのため、制御演算部46は、各測量位置においてスキャナユニット5により取得された点群データ8に含まれる複数の3次元データ81に基づいて、測定対象物7の全体的な形状を安定的に認識し、測定対象物7の壁面71などの平均的な位置合わせを行うことができる。
【0075】
本実施形態に係る3次元測量装置2によれば、測定対象物7が例えばビルなどの比較的高い建築物である場合において、計測用ターゲット6の設置可能な箇所が所定の箇所に限定されるときであっても、制御演算部46は、各測量位置においてスキャナユニット5により取得された多数の測定点の3次元データ81を用いることにより、測定対象物7の壁面71などの特徴部分に関する各測量位置における3次元データ81の不整合を調整し、より高精度な点群データ8の位置合わせを行うことができる。そのため、スキャナユニット5により取得された点群データ8は、より一層正しい位置にアライメントされる。これにより、本実施形態に係る3次元測量装置2は、点群データ8のレジストレーションをより一層効率的に実行することができる。
【0076】
なお、図6に表した例では、スキャナユニット5が3箇所の測量位置において多数の測定点の3次元データ81(点群データ8)の取得する例を挙げた。但し、3次元測量装置2の測量位置の箇所数は、3箇所には限定されず、2箇所あるいは4箇所以上であってもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0078】
2:3次元測量装置、 4:視準測距ユニット、 5:スキャナユニット、 6:計測用ターゲット、 7:測定対象物、 8:点群データ、 41:整準部、 42:第1托架部、 43:第1水平回転部、 44:第1鉛直回転部、 45:望遠鏡部、 46:制御演算部、 47:操作表示部、 48:基盤部、 49:傾斜計、 52:第2托架部、 54:第2鉛直回転部、 55:走査鏡、 56:第2測距発光部、 57:第2測距受光部、 71:壁面、 81:3次元データ、 411:調整螺子、 421:間隙部、 431:第1水平回転軸、 432:軸受、 433:第1水平駆動モータ、 434:第1水平角検出器、 436:第1鉛直軸心、 441:第1鉛直回転軸、 442:軸受、 443:第1鉛直駆動モータ、 444:第1鉛直角検出器、 446:第1水平軸心、 451:第1測距発光部、 452:第1測距受光部、 453:視準受光部、 455:第1測距光、 456:第1反射測距光、 457:反射視準光、 458:視準望遠鏡、 461:演算部、 462:第1距離測定部、 463:第1水平回転駆動部、 464:第1鉛直回転駆動部、 465:第2距離測定部、 466:第2水平回転駆動部、 467:第2鉛直回転駆動部、 468:記憶部、 469:画像処理部、 471:表示部、 472:操作入力部、 521:凹部、 541:第2鉛直回転軸、 542:軸受、 543:第2鉛直駆動モータ、 544:第2鉛直角検出器、 546:第2水平軸心、 561:発光素子、 562:投光光学部、 565:第2測距光、 566:第2反射測距光、 571:受光素子、 572:受光光学部、 P1:測量開始位置、 P2:第2測量位置、 P3:第3測量位置

図1
図2
図3
図4
図5
図6