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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】太陽電池カバー
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/054 20140101AFI20230906BHJP
【FI】
H01L31/04 620
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019167888
(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公開番号】P2021048147
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 弘行
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-159822(JP,A)
【文献】国際公開第2013/180298(WO,A1)
【文献】特開2001-274449(JP,A)
【文献】国際公開第2011/058941(WO,A1)
【文献】特開2011-138970(JP,A)
【文献】特開2005-099802(JP,A)
【文献】特開2009-139418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0006382(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103364871(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルの受光面を覆う太陽電池カバーであって、
頂面に光の入射面、底面に光の出射面、側面に光を反射させる境界面を有する透明な柱状部材を、前記側面同士が隣接するように複数束ねて、各々の前記頂面および前記底面が面一となるように平板状に構成され、前記頂面または前記底面から見たとき前記境界面が網目状に見える網目境界透明カバー板を備え、該網目境界透明カバー板は、前記柱状部材の底面が前記受光面に向くように前記太陽電池パネルに装着されるものであり、
前記柱状部材は、断面が正方形、長方形、円形、正六角形、正三角形の何れかであり、前記入射面と前記出射面とが平行であり、前記入射面および前記出射面に対して前記境界面が垂直である、ことを特徴とする太陽電池カバー。
【請求項2】
前記柱状部材の臨界角をθ1、前記柱状部材の屈折率をn2としたとき、前記柱状部材の屈折角θ2を次式で求め、
θ2=arcsin((sinθ1)/n2)
前記柱状部材の側面同士の幅w1、前記柱状部材の1単位の高さt1、前記柱状部材の屈折角θ2が次式の関係となっており、
tanθ2=w1/t1
前記柱状部材の高さt1=tとしたとき、前記柱状部材の側面同士の幅wが次式で定められた、
w=(t/n)tanθ2 nは自然数
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池カバー。
【請求項3】
前記柱状部材の境界面における反射効率を高めるため、前記柱状部材の側面が鏡面状態となっている、又は前記柱状部材の側面に金属蒸着が施されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池カバー。
【請求項4】
前記柱状部材が、接着剤を介して複数束ねられており、隣接する前記柱状部材の側面同士の間に接着剤が介在されている、ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の太陽電池カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの受光面を覆う太陽電池カバーに係り、特に、簡易な構成で発電効率の向上を図った太陽電池カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルの受光面を覆うカバーとして、レンズによって集光を図ったもの(特許文献1参照)や、反射板によって集光を図ったもの(特許文献2参照)が知られているが、レンズや反射板によって集光する場合、発電面積が狭く、太陽追尾が必要で、装置全体が複雑となって大型化してしまう。
【0003】
太陽追尾が不要、簡易な構成で軽薄な太陽電池カバーとして、カバー本体としての透明板の裏面に、断面が三角形の反射溝を形成し、略プリズムによって集光を図ったものが知られているが(特許文献3参照)、三角溝の直下は光が出射されず、太陽電池の電流の流れが悪く、抵抗となって部分的に発熱する可能性がある。部分発熱(ホットスポット)は、太陽電池の劣化を早めるため、改善の余地がある。
【0004】
また、太陽光を複数の光ファイバーによって集光し、太陽電池に導くようしたものが知られているが(特許文献4参照)、レンズや反射板によって集光を図ったものと同様、発電面積が狭い。また、光ファイバーによって装置全体が大型化し、太陽電池パネルに重ねられず、パネルアッセンブリをコンパクトに構成できない。いずれの方式も、既設の太陽電池パネルへの取り付けが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-228709号公報
【文献】特開2017-191854号公報
【文献】特開2010-238830号公報
【文献】特開昭55-96906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、反射板式、レンズ式、光ファイバー式よりも簡易な構造で軽薄に構成でき、プリズム式より発電面積が広く、太陽追尾が不要で発電効率を向上でき、既設の太陽電池パネルにも取り付けられる太陽電池カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成すべく創案された本発明によれば、太陽電池パネルの受光面を覆う太陽電池カバーであって、頂面に光の入射面、底面に光の出射面、側面に光を反射させる境界面を有する透明な柱状部材を、側面同士が隣接するように複数束ねて、各々の頂面および底面が面一となるように平板状に構成され、頂面または底面から見たとき境界面が網目状に見える網目境界透明カバー板を備え、網目境界透明カバー板は、柱状部材の底面が受光面に向くように太陽電池パネルに装着されるものであり、柱状部材は、断面が正方形、長方形、円形、正六角形、正三角形の何れかであり、入射面と出射面とが平行であり、入射面および出射面に対して境界面が垂直である、ことを特徴とする太陽電池カバーが提供される。
【0008】
本発明に係る太陽電池カバーにおいては、柱状部材の臨界角をθ1、柱状部材の屈折率をn2としたとき、柱状部材の屈折角θ2を次式で求め、
θ2=arcsin((sinθ1)/n2)
柱状部材の側面同士の幅w1、柱状部材の1単位の高さt1、柱状部材の屈折角θ2が次式の関係となっており、
tanθ2=w1/t1
柱状部材の高さt1=tとしたとき、柱状部材の側面同士の幅wが次式で定められた、
w=(t/n)tanθ2 nは自然数
ことを特徴とする太陽電池カバーであってもよい。
【0009】
本発明に係る太陽電池カバーにおいては、柱状部材の境界面における反射効率を高めるため、柱状部材の側面が鏡面状態となっている、又は柱状部材の側面に金属蒸着が施されていてもよい。
【0010】
本発明に係る太陽電池カバーにおいては、柱状部材が、接着剤を介して複数束ねられており、隣接する柱状部材の側面同士の間に接着剤が介在されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る太陽電池カバーによれば、反射板式、レンズ式、光ファイバー式よりも簡易な構造で軽薄に構成でき、プリズム式より発電面積が広がり、太陽追尾が不要で発電効率を向上でき、既設の太陽電池パネルにも取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池カバーの斜視図である。
図2】太陽電池カバーを通過する透過光の説明図であり、(a)は境界面が有る本発明、(b)は境界面が無い比較例を示す。
図3】太陽電池カバーを通過する透過光が拡散する様子を示す説明図であり、(a)は境界面が無い比較例、(b)は境界面が有る本発明を示す。
図4】太陽電池カバーの板厚の違いによる入射面積と出射面積の違いを示す説明図であり、(a)、(b)、(c)は板厚が1単位の2倍のときの上面図、側断面図、下面図を示し、(d)、(e)、(f)は板厚が1単位の1倍のときの上面図、側断面図、下面図を示し、(g)、(h)、(i)は板厚が1単位の0.5倍のときの上面図、側断面図、下面図を示す。
図5】太陽電池カバーのカバー板厚tと境界面間距離wを求めるための説明図であり、(a)は入射光、太陽電池カバー、出射光を示す側断面図、(b)は屈折角θ2と境界面間距離w1と板厚t1との関係を示す数式であり、(c)は臨界角度、屈折率等を示す表であり、(d)は屈折角θ2を算出する数式である。
図6】東京の1月1日での時刻と日射量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(太陽電池カバー1の概要)
図1示す本発明の一実施形態に係る太陽電池カバー1は、太陽電池パネルの受光面を覆うカバーであって、図2(a)に示すように、頂面に光の入射面2、底面に光の出射面3、側面に光を反射させる境界面4を有する透明な柱状部材5を、側面同士が隣接するように複数束ねて、各々の頂面および底面が面一となるように平板状に構成され、頂面または底面から見たとき境界面4が網目状に見える網目境界透明カバー板6を備えている。この網目境界透明カバー板6は、柱状部材5の底面(出射面3)が受光面に向くように太陽電池パネルに重ねて装着される。
【0016】
本実施形態に係る太陽電池カバー1は、図2(a)に示すように、光を反射させる境界面4を有しているため、頂面(入射面2)に斜めに入射した入射光(矢印)が、境界面4で反射し、底面(出射面3)から出射する。このルートは、頂面の入射部の真下の底面が出射部となる点で、垂直光6と同様に考えられる。一方、図2(b)に示すように、従来の太陽電池カバー1aは、単なる透明な板体7であるため、頂面に斜めに入射した入射光が、板体7を透過してそのまま底面から出射する。このルートは、頂面の入射部の斜め下の底面が出射部となるため、傾斜光8となる。
【0017】
図3(a)に示すように、境界面4が無い従来の太陽電池カバー1aにおいては、頂面から入射した入射光が透明な板体7内にて拡散して拡散光9となり、拡散幅w1が或る程度広がった状態で底面から出射する。他方、図3(b)に示すように、本実施形態の太陽電池カバー1においては、頂面(入射面2)から入射した入射光は、拡散するものの境界面4で反射し、反対側の境界面4で更に反射し、反射の度に拡散し、境界面4によって区画された面積に制限された状態(幅w2、w2<w1)で底面(出射面3)から出射する。これにより、底面から出射する光の密度(照度、輝度)が従来の太陽電池カバー1aよりも高まり、発電効率が向上する。以下、本実施形態に係る太陽電池カバー1の各構成要素について説明する。
【0018】
(柱状部材5)
図2(a)、図3(b)に示す柱状部材5の材質には、透明材として、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン等が用いられる。図4(a)、図4(b)、図4(c)に示すように、柱状部材5は、断面が正方形であり、入射面2と出射面3とが平行であり、入射面2および出射面3に対して境界面4が垂直となっている。なお、柱状部材5の断面形状は、正方形に限られず、長方形、円形、正六角形、正三角形でもよい。また、境界面4における反射効率を高めるため、柱状部材5の側面を鏡面状態としてもよく、柱状部材5の側面に銀色又は金色等の金属蒸着が施されていてもよい。
【0019】
柱状部材5の入射面2には、透過光の均一性を増す(ムラを無くす)ため、拡散性がよくなる表面処理を施してもよい。同様に、柱状部材5の出射面3にも、出射光の均一性を増すため、拡散性がよくなる表面処理を施してもよい。表面処理には、光拡散剤を含んだ透明な樹脂や塗料などを、入射面2、出射面3に塗布(コーティング)することが考えられる。光拡散剤には、二酸化ケイ素(ガラス)、炭酸カルシウム(石灰)、蛍光剤などが用いられる。その他、表面処理として、粒子を吹き付けて、入射面2、出射面3の表面に凹面レンズ状の窪みを付けるブラスト加工も考えられる。
【0020】
(接着剤)
柱状部材5は、接着剤を介して複数束ねられて接着されており、隣接する柱状部材5の側面(境界面4)同士の間に接着剤が介在されている。隣接する柱状部材5の境界面4と境界面4との間に接着剤が挟み込まれるため、個々の柱状部材5の境界面4の反射機能は保たれる。粘度の小さい接着剤を用いることで、柱状部材5同士の間の接着剤の厚みを薄くすることができ、太陽電池カバー1の頂面(入射面2)および底面(出射面3)に、隣接する柱状部材5を仕切るように網目状に現れる接着剤の面積(光を遮る面積)を、可及的に小さくできる。
【0021】
接着剤は、透明で、柱状部材5の表面(側面)を溶解しない材質が好ましい。例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤(アロンアルファ(登録商標)等)が考えられる。接着剤には、図2(a)において、境界面4を突き抜けた透過光を柱状部材5に戻すため、ガラスビーズや蛍光剤などの拡散剤を添加してもよい。
【0022】
(柱状部材5の縦横比)
図4(b)、図4(e)に示すように、柱状部材5の高さtと側面(境界面)同士の幅wとの比(縦横比)は、柱状部材5の頂面2に入射する光(太陽光の直達光)の角度が、設定した最大入射角(例えば柱状部材5の材質の臨界角)のとき、入射面積(図4(a)、図4(d))と出射面積(図4(c)、図4(f))とが同等となる縦横比が望ましい。
【0023】
例えば、図4(e)に示すように、入射点(西上頂点)から入射した光が反射点(東下頂点)に到達するときの高さを板厚txとした場合は、図4(d)にハッチングで示す入射面積と図4(f)にハッチングで示す出射面積とが等しくなる。
【0024】
また、図4(b)に示すように、入射点(西上頂点)から反射点(東反射点)までの高さと反射点(東反射点)から出射点(西下頂点)までの高さが等しくなる板厚tyでも、図4(a)に示す入射面積と図4(c)に示す出射面積とが等しくなる。
【0025】
他方、図4(h)に示すように、入射点(西上頂点)から入射した光が反射点(東下頂点)に到達しない板厚tzでは、図4(d)に示す入射面積に対して図4(f)に示す出射面積が小さくなり、非出射部10ができるため好ましくない。
【0026】
(作用・効果)
図1に示す本実施形態に係る太陽電池カバー1を構成する網目境界透明カバー板6は、図示しない太陽電池の受光面に、隙間無く重ねて設置される。網目境界透明カバー板6の底面の出射面積は、太陽電池の受光面積と等しい。
【0027】
図2(a)に示すように、網目境界透明カバー板6を透過する透過光は、入射面2で屈折し、柱状部材5の内部を透過し、出射面3で再度屈折し、出射される。カバー板6の内部の透過光は、透明な柱状部材5の境界面4で反射(全反射)し、出射面3に向かう。反射屈折の原理は、スネルの法則に則る。例えば、柱状部材5の入射面2では、光の上流側媒質Aが空気、下流側媒質Bが柱状部材5となる。接着後の境界面4では、光の上流側媒質Aが柱状部材5、下流側媒質Bが接着剤となる。
【0028】
図3(a)に示すように、透明な板体7の内部を透過する透過光には、一般に拡散性がある。図3(b)に示すように、本実施形態においては、拡散する透過光が柱状部材5の境界面4で反射(全反射)して出射面3に向かうため、拡散領域が拡大することが抑えられる(w2<w1)。このため、底面(出射面3)から出射する光の密度(単位面積当たりの出射光量)が、境界面が無い透明板7(図3(a)参照)よりも増加する。よって、発電効率が向上する。
【0029】
ところで、図5に示すように、太陽光は、直線的に網目境界透明カバー板6に到達する直達光(破線で示す)と、大気中の水蒸気等の分子や微粒子に当たって散乱した後にカバー板6に到達する散乱光(ドットで示す)とから構成されている。直達光は、日の出から日の入りにかけてカバー板6の入射面2に対する入射角が変化し、散乱光は、入射角が変化せずカバー板6の入射面に垂直に到達する。従って、入射角変化により発生する直達光の非出射部10(図4(h)、図4(i)参照)にも、散乱光の透過光が照射される。
【0030】
このため、図5に示す柱状部材5の出射面3、すなわち太陽電池の受光面における照度のムラ(光の重なりの差)は、散乱光(散乱しながら大気を透過した光)の透過光(直線的に柱状部材5内を透過した光(ドットで示す))と直達光(直線的に大気を通過した光)の透過光(直線的に柱状部材5内を透過した光(破線で示す))の拡散光(透明な柱状部材5を通過する際に拡散する光(細かなハッチングで示す))で緩和される。よって、カバー板6の底面(出射面3)に完全な非出射部10(図4(h)、図4(i)参照)が無くなり、太陽電池の受光面に発電しない部分が無くなり、発電効率が向上する。
【0031】
このように、本実施形態に係る網目境界透明カバー板6を用いた太陽電池カバー1によれば、例えば、特許文献3記載された透明板の裏面に断面三角形の反射溝を形成したものと比べると、太陽電池パネルの受光面にホットスポットができなくなるため、太陽電池の劣化が抑制される。
【0032】
また、文献3に記載されたもののように、電極の位置に合わせた溝間隔の製造精度、取付位置精度を必要とせず、文献2の反射式、文献1のレンズ式に対し、太陽電池パネルとは別に必要な支持構造物が不要となる。すなわち、簡易かつ軽薄な構造であるため、軽量で製品コストを抑制できる。
【0033】
文献2の反射式、文献1のレンズ式、文献4の光ファイバー式に対し、網目境界透明カバー板6の入射面2と出射面3との間隔が、夫々、反射板、レンズの焦点距離、光ファイバーの長さと比べ狭くなり、装置全体の厚みが薄くなる。よって、太陽電池パネルへの重量負荷を軽減でき、網目境界透明カバー板6を太陽電池パネルの受光面に支持構造物無しで重ねることができ、パネルアッセンブリをコンパクトに構成できる。
【0034】
(発電時間)
ところで、柱状部材5の材質をアクリル(PMMA)とすると、図5に示すように、空気(媒質A)から光が柱状部材5(媒質B)に屈折しながら入り始める入射角度と、空気(媒質A)からの光が柱状部材(媒質B)によって全反射し始める反射角の臨界角θ1’は42.2°である。よって、太陽光の直達光が柱状部材5内に入れる角度の範囲は、理論的には84.4°(=42.2×2)となるが、実際には余裕を考えて入射角度範囲θ3=80°と考える。この場合、実務上の臨界角(入射角)θ1=40°となる。
【0035】
地球は、24時間で360°回転するので、入射角度範囲θ3=80°(θ1×2)は、時間にすると5時間20分となる。5時間20分を午前午後に分け、12時(正午)を中心とした前後2時間40分の時間帯は、9時20分から14時40分である。図6に示すように、9時20分から14時40分の5時間20分の日射量(水平面日射量=直達日射量+散乱日射量)を考えると、全日射量の82%で上述した発電効果を発揮することができる。
【0036】
また、入射角度範囲θ3=80°に対し、夏至から冬至までの太陽の傾きの角度範囲は地軸の傾斜角(23.5°)を2倍した47°であるので、太陽追尾機構なしで、1年を通じて適切な発電効果を発揮できる。
【0037】
(柱状部材5の高さt、側面同士の幅wの決定)
図5に示す、柱状部材5の高さである網目境界透明カバー板の板厚t、柱状部材5の側面同士の幅である境界面4間距離wは、次のようにして決定する。
【0038】
先ず、図5(a)において、アクリル製の柱状部材5の入射面2で全反射が起こる臨界角θ1’=42.2°から実際の運用時の余裕を考えて実務上の臨界角(入射角)θ1=40°を定め、臨界角θ1=40°から以下のように柱状部材5内での屈折角θ2を求める。
【0039】
屈折角θ2は、入射光(太陽光の直達光)の入射角θ1=40°、柱状部材5の屈折率n2=1.49、空気の屈折率n1=1から、次式(スネルの法則)で表される(図5(c)、図5(d)参照)。
n2(sinθ2)=n1(sinθ1)
上式を変形し、屈折角θ2を求めると、
n2=sinθ1/sinθ2
θ2=sin^-1((sinθ1)/n2)=arcsin((sinθ1)/n2)=25.6°
となる。
【0040】
図5(b)に示すように、屈折光線を斜辺とし、斜辺と隣辺との角度を屈折角θ2とした直角三角形が斜辺同士で2個組み合わされた長方形を、柱状部材5の側面の1単位とする。直角三角形の対辺の長さが境界面間距離w1となり、隣辺の長さが1単位の板厚t1となり、何れか一方を設定すると、1単位が定まる。1単位を一以上積み重ねて所望の板厚tとする。
【0041】
すなわち、図5(b)に示すように、柱状部材5の1単位の側面同士の幅w1、柱状部材5の1単位の高さt1とすると、柱状部材の屈折角θ2は次式の関係となる。
tanθ2=w1/t1
上式を変形し、柱状部材5の高さt1=tとしたとき、柱状部材5の側面同士の幅wは、次式で算出される。
w=(t/n)tanθ2…式X (nは自然数)
図5(a)、図4(b)はn=2で1単位を2個積み重ねたもの、図4(e)はn=1で1単位のものである。なお、1単位を3個以上積み重ねてもよい。
【0042】
柱状部材5の高さt、側面同士の幅wは、図5(a)に示す太陽光を取り込む角度範囲θ3、製造の難易度、経済性(材質、重量、コスト)の何れに重点を置くかで、それぞれ最適な仕様が定まる。
【0043】
例えば、太陽光を取り込む角度範囲θ3を重視する場合には、入射角(実務上の臨界角)θ1が広い材質の柱状部材5を用いることで、太陽光の取込量が増えるため発電量が多くなる。製造の難易度を重視する場合には、柱状部材5の太さ(幅w)を大きくし、柱状部材5を束ねる数を少なくすることで、柱状部材5同士を接着させ易くなって製造が容易となる。また、経済性(重量、コスト)を重視する場合には、柱状部材5の高さtを低くしてカバー板6の板厚tを薄くし、柱状部材5を束ねる数を少なくし、カバー板6の体積を小さくすることで、柱状部材5の使用材料量が減るため経済性が高まる。
【0044】
本実施形態においては、図5に示すように、柱状部材5の材質にアクリルを用い、太陽光の直達光を最長時間取り込むため、アクリルの臨界角θ1’=42.2°よりもやや小さい入射角θ1=40°から定まる屈折角θ2=25.6°を、1単位の基準とする。
【0045】
また、網目境界透明カバー板6の重量を考慮して、カバー板6の板厚(柱状部材5の高さ)t(図5(b)の直角三角形の隣辺)を予め所定の数値に設定し、柱状部材5の側面同士の幅wを算出することとする。なお、1単位の積重数は、柱状部材5の境界面4での反射回数が多くなると透過光の拡散性が高まるため、2回反射する2単位とする。
【0046】
屈折角θ2=25.6°、板厚t=5mm、2単位の積み重ねとすると、柱状部材5の側面同士の幅wは、上述した式Xで算出される。
w=(t/n)tanθ2 nは自然数(n=2)
=(5/2)tan25.6
=1.2mm
この場合、柱状部材5の側面同士の幅wは、1.2mmと定まる。
【0047】
同じ屈折角θ2=25.6°で、板厚t=5mm、3単位の積み重ねでは、
w=(t/n)tanθ2 nは自然数(n=3)
=(5/3)tan25.6
=0.8mm
この場合、柱状部材5の側面同士の幅wは、0.8mmと定まる。
【0048】
同じ屈折角θ2=25.6°で、板厚t=3mm、2単位の積み重ねでは、
w=(t/n)tanθ2 nは自然数(n=2)
=(3/2)tan25.6
=0.7mm
この場合、柱状部材5の側面同士の幅wは、0.7mmと定まる。
【0049】
このように、簡単な計算で、カバー板6の板厚(柱状部材5の高さ)t、柱状部材5の側面同士の幅(境界面間距離)wを、正確に求めることができる。なお、拡散光(図3(b)、図5(a)参照)の影響を考慮して最大発電量となる1単位の積重数は、実際の試験結果から決定する。
【0050】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、太陽電池パネルの受光面を覆う太陽電池カバーに係り、簡易な構成で発電効率の向上を図った太陽電池カバーに利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 太陽電池カバー
2 入射面
3 出射面
4 境界面
5 柱状部材
6 網目境界透明カバー板
t 柱状部材の高さ
w 柱状部材の側面(境界面)同士の幅
θ1 柱状部材の臨界角
θ2 柱状部材の屈折角
n2 柱状部材の屈折率
図1
図2
図3
図4
図5
図6