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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20230906BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230906BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09F9/30 365
G09G3/20 611A
G09G3/20 612U
G09G3/20 641P
G09G3/20 642A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019177389
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021056310
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520272868
【氏名又は名称】武漢天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松枝 洋二郎
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-039046(JP,A)
【文献】特開2008-145880(JP,A)
【文献】特開2015-212803(JP,A)
【文献】特開2019-095527(JP,A)
【文献】特開2005-062337(JP,A)
【文献】特開2004-301964(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0233107(US,A1)
【文献】国際公開第2014/156402(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0251916(US,A1)
【文献】特開2007-058217(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0026732(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0156763(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/3233
G09F 9/30
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネルへの信号を処理する、制御回路と、
を含み、
階調レベルの範囲を分割した複数の区分それぞれに対して、減算量が割り当てられており、
前記減算量は、最も明るい区分から最も暗い区分に向かって減少しており、
前記制御回路は、
一つの副画素行の複数の副画素それぞれの輝度を示す階調レベルを取得し、
前記階調レベルの分布に基づき、前記一つの副画素行の補正対象領域を決定し、
前記補正対象領域における副画素それぞれの階調レベルが含まれる区分に対応する減算量を、前記副画素それぞれの階調レベルから減算する、
表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記複数の区分において最も暗い区分に割り当てられている減算量は、0である、
表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記複数の副画素は、連続する階調レベルが最も高い副画素からなる1又は2の第1副画素群と、連続する階調レベルが最も低い副画素からなる第2副画素群とで構成され、
前記制御回路は、前記第1副画素群の階調レベルから所定減算量を減算する、
表示装置。
【請求項4】
表示パネルと、
前記表示パネルへの信号を処理する、制御回路と、
を含み、
異なる数の階調レベルの区分からなる複数の区分グループが定義されており、
前記複数の区分グループそれぞれの各区分に補正量が割り当てられており、
前記制御回路は、
一つの副画素行の複数の副画素それぞれの輝度を示す階調レベルを取得し、
前記複数の副画素の階調レベルの分布から所定の指標を算出し、
前記指標に基づき前記複数の区分グループから一つの区分グループを選択し、
選択した前記一つの区分グループに基づき、前記複数の副画素それぞれの階調レベルの補正量を決定し、
前記複数の副画素それぞれの階調レベルを前記補正量だけ補正する、
表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記指標は、前記複数の副画素の輝度平均を示す、
表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置であって、
前記複数の副画素は、連続する階調レベルが最も高い副画素からなる1又は2の第1副画素群と、連続する階調レベルが最も低い副画素からなる第2副画素群とで構成され、
前記指標は、前記第2副画素群の割合を示す、
表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記制御回路は、外部からの画像信号に基づきデータ信号を生成し前記表示パネルに出力するドライバ集積回路に含まれる、
表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記制御回路は、前記一つの副画素行以外の副画素行の階調レベルを参照することなく、前記補正対象領域の副画素それぞれの階調レベルの減算量を決定する、
表示装置。
【請求項9】
表示パネルと、
前記表示パネルへの信号を処理する、制御回路と、
を含み、
異なる数の階調レベルの区分からなる複数の区分グループが定義されており、
前記複数の区分グループそれぞれの各区分に補正量が割り当てられており、
前記制御回路は、
第1副画素行の次に第2副画素行を表示し、
前記第1副画素行の階調レベルの分布と前記第2副画素行の階調レベルの分布との比較結果に基づき前記第2副画素行に対して前記複数の区分グループから一つの区分グループを選択し、
選択した前記一つの区分グループに基づき、前記第2副画素行に含まれる副画素それぞれの階調レベルの補正量を決定し、
前記副画素それぞれの階調レベルを前記補正量だけ補正する、
表示装置。
【請求項10】
表示パネルと、
前記表示パネルへの信号を処理する、制御回路と、
を含み、
前記制御回路は、第3副画素行、前記第3副画素行の次の第4副画素行、前記第4副画素行の次の第5副画素行の副画素それぞれの階調レベルを取得し、
前記第3副画素行は、階調レベルが最も高い副画素で構成され、
前記第4副画素行は、連続する階調レベルが最も高い副画素からなる1又は2の第3副画素群と、連続する階調レベルが最も低い副画素からなる第4副画素群とで構成され、
前記第5副画素行は、連続する階調レベルが最も高い副画素からなる1又は2の第5副画素群と、連続する階調レベルが最も低い副画素からなる第6副画素群とで構成され、
前記第4副画素行の副画素の階調レベルの分布と、前記第5副画素行の副画素の階調レベルの分布は同一であり、
前記制御回路は、
前記第3副画素行の副画素それぞれの階調レベルから、第1減算量を減算し、
前記第4副画素行における前記第3副画素群の副画素それぞれの階調レベルから、第2減算量を減算し、
前記第5副画素行における前記第5副画素群の副画素それぞれの階調レベルから、第3減算量を減算し、
前記第2減算量は、前記第1減算量及び前記第3減算量より大きく、
前記第1減算量は、前記第2減算量及び前記第3減算量より小さい、
表示装置。
【請求項11】
表示パネルと、
前記表示パネルへの信号を処理する、制御回路と、
を含み、
前記制御回路は、第6副画素行、前記第6副画素行の次の第7副画素行、前記第7副画素行の次の第8副画素行の副画素それぞれの階調レベルを取得し、
前記第6副画素行は、連続する階調レベルが最も高い副画素からなる1又は2の第7副画素群と、連続する階調レベルが最も低い副画素からなる第8副画素群とで構成され、
前記第7副画素行は、階調レベルが最も高い副画素で構成され、
前記第8副画素行は、階調レベルが最も高い副画素で構成され、
前記制御回路は、
前記第6副画素行における前記第7副画素群の副画素それぞれの階調レベルから、第4減算量を減算し、
前記第7副画素行の副画素それぞれの階調レベルから、第5減算量を減算し、
前記第8副画素行の副画素それぞれの階調レベルから、第6減算量を減算し、
前記第5減算量は、前記第4減算量及び前記第6減算量より小さく、
前記第4減算量は、前記第5減算量及び前記第6減算量より大きい、
表示装置。
【請求項12】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記制御回路は、前記複数の副画素に対して、データ信号を同時に出力する、
表示装置。
【請求項13】
表示装置における画像のデータを補正する方法であって、
階調レベルの範囲を分割した複数の区分それぞれに対して、減算量が割り当てられており、
前記減算量は、最も明るい区分から最も暗い区分に向かって減少しており、
前記方法は、
一つの副画素行の複数の副画素それぞれの輝度を示す階調レベルを取得し、
前記階調レベルの分布に基づき、前記一つの副画素行の補正対象領域を決定し、
前記補正対象領域における副画素それぞれの階調レベルが含まれる区分に対応する減算量を、前記副画素それぞれの階調レベルから減算する、
ことを含む方法。
【請求項14】
表示装置における画像のデータを補正する方法であって、
異なる数の階調レベルの区分からなる複数の区分グループが定義されており、
前記複数の区分グループそれぞれの各区分に補正量が割り当てられており、
前記方法では、
一つの副画素行の複数の副画素それぞれの輝度を示す階調レベルを取得し、
前記複数の副画素の階調レベルの分布から所定の指標を算出し、
前記指標に基づき前記複数の区分グループから一つの区分グループを選択し、
選択した前記一つの区分グループに基づき、前記複数の副画素それぞれの階調レベルの補正量を決定し、
前記複数の副画素それぞれの階調レベルを前記補正量だけ補正する、
ことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリックス表示装置は、1以上のスイッチトランジスタを含む画素回路と、画素回路を制御する制御回路、とを含む。制御回路は、外部から受信した画像データに従って画素回路それぞれを制御することで、画素のそれぞれの輝度を制御する。画素回路に画素の輝度を示すデータを書き込むデータドライバは多数のアナログアンプを共有の内部電源で駆動する。そのため、表示する画像(データ分布)によっては、アナログアンプ間の出力差が発生する可能性や、負荷の変動により書き込み不足を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-237828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データドライバの上記特性は、表示画像における特定の画素の輝度の所望の輝度からのずれを発生させ得る。例えば、中央に黒の矩形と、当該黒の矩形を囲む白の背景からなる画像において、黒の矩形の左右の白領域の輝度が、黒の矩形の上下の領域の白の領域の輝度より高くなり得る。従って、同一の輝度であるべき画素間の輝度の相違を低減できる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルへの信号を処理する、制御回路と、を含む。前記制御回路は、一つの副画素行の複数の副画素それぞれの輝度を示す階調レベルを取得し、前記階調レベルの分布及び前記複数の副画素それぞれの階調レベルに基づき、前記複数の副画素それぞれの階調レベルの補正量を決定し、前記複数の副画素それぞれの階調レベルを前記補正量だけ補正する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、同一の輝度であるべき画素間の輝度の相違を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】OLED表示装置の構成例を模式的に示す。
図2A】画素回路の構成例を示す。
図2B】画素回路の他の構成例を示す。
図3】ドライバICの論理要素を示す。
図4】比較例の表示領域が、特定パターンの画像を表示した時の、表示領域の部分領域の輝度を模式的に示している。
図5】本実施形態のドライバICにおいて、階調補正部がソースドライバに与える副画素の階調レベルを示している。
図6】階調レベル補正テーブルの構成例を示す。
図7】階調レベル補正テーブルの他の構成例を示す。
図8】比較例の表示領域が、特定パターンの画像を表示した時の、表示領域の部分領域の輝度を模式的に示している。
図9】本実施形態のドライバICにおいて、階調補正部がソースドライバに与える副画素の階調レベルを示している。
図10】階調補正部が保持する階調レベル補正テーブル群の例を示す。
図11】階調レベル補正テーブル管理テーブルの構成例を示す。
図12A】比較例の表示領域が、特定パターンの画像を表示した時の、表示領域の部分領域の輝度を模式的に示している。
図12B図12Aにおける四つの部分領域の境界領域の拡大図を示す。
図12C図12Aにおける四つの部分領域の境界領域の拡大図を示す。
図13A】境界領域において、階調補正部がソースドライバに与える副画素の階調レベルを示している。
図13B】境界領域において、階調補正部がソースドライバに与える副画素の階調レベルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。
【0009】
データドライバは多数のアナログアンプを共有の内部電源で駆動する。そのため、表示する画像(データ分布)によっては、アナログアンプ間の出力差が発生する可能性や、負荷の変動により書き込み不足を生じる可能性がある。これは、表示画像における特定の画素の輝度の所望の輝度からのずれを発生させ得る。
【0010】
データドライバの内部電源の強化やアナログアンプの出力インピーダンスを下げることによって、画像における輝度のずれを改善できる可能性がある。しかし、表示装置の消費電力が増加してしまい、特に、モバイル装置に使用される表示装置において好ましくない。
【0011】
以下に開示する表示装置は、特定画素の階調レベルから補正量を決定し、当該階調レベルを補正量だけ変化させる。これにより、制御回路の消費電力を上げることなく、同一の輝度であるべき画素間の輝度の相違を低減できる。
【0012】
[表示装置の構成]
図1を参照して、本実施形態に係る、表示装置の全体構成を説明する。なお、説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。以下において、表示装置の例として、OLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置を説明するが、本開示の特徴は、液晶表示装置や量子ドット表示装置等、OLED表示装置と異なる任意の種類の表示装置に適用することができる。
【0013】
図1は、OLED表示装置10の構成例を模式的に示す。OLED表示装置10は、OLED表示パネルと制御回路とを含む。OLED表示パネルは、発光素子が形成されるTFT(Thin Film Transistor)基板100と、OLED素子を封止する封止基板200と、TFT基板100と封止基板200とを接合する接合部(ガラスフリットシール部)300を含む。TFT基板100と封止基板200との間には、例えば、乾燥窒素が封入されており、接合部300により封止されている。封止基板200は封止構造部の一例であり、薄膜封止(TFE)を使用してもよい。
【0014】
TFT基板100の表示領域125の外側のカソード電極形成領域114の周囲に、走査ドライバ131、エミッションドライバ132、保護回路133、及びドライバ集積回路(IC)134が配置されている。ドライバIC134は、FPC(Flexible Printed Circuit)135を介して外部の機器と接続される。走査ドライバ131、エミッションドライバ132、保護回路133、及びドライバIC134は制御回路に含まれる。
【0015】
走査ドライバ131はTFT基板100の走査線を駆動する。エミッションドライバ132は、エミッション制御線を駆動して、各副画素の発光期間を制御する。保護回路133は素子を静電気放電から保護する。ドライバIC134は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて実装される。
【0016】
ドライバIC134は、走査ドライバ131及びエミッションドライバ132に電源及びタイミング信号(制御信号)を与る。さらに、ドライバIC134は、データ線にデータ信号を与える。すなわち、ドライバIC134は、表示制御機能を有する。後述するように、ドライバIC134は、表示画像における特定画素の階調レベルを補正する機能を有する。
【0017】
図1において、左から右に延びる軸をX軸、上から下に延びる軸をY軸と呼ぶ。走査線はX軸に沿って延びており、表示領域125において、X軸に沿って配列された画素又は副画素を画素又は副画素の行と呼ぶ。表示領域125において、Y軸に沿って配列された画素又は副画素を画素列又は副画素の列と呼ぶ。
【0018】
[画素回路の構成]
TFT基板100上には、複数のOLED素子E1のアノード電極にそれぞれ供給する電流を制御する複数の画素回路が形成されている。図2Aは、画素回路の構成例を示す。各画素回路は、駆動トランジスタT1と、選択トランジスタT2と、エミッショントランジスタT3と、保持容量C1とを含む。画素回路は、OLED素子E1の発光を制御する。トランジスタは、薄膜トランジスタ(TFT)である。OLED素子E1のカソードには、電源電位VSSが与えられている。
【0019】
選択トランジスタT2は副画素を選択するスイッチである。そのゲート端子は、走査線106に接続されている。ソース/ドレイン端子の一方は、データ線105に接続され、他方は、駆動トランジスタT1のゲート端子に接続されている。
【0020】
駆動トランジスタT1はOLED素子E1の駆動用のトランジスタ(駆動TFT)である。そのゲート端子は選択トランジスタT2のドレイン端子に接続されている。駆動トランジスタT1のソース/ドレイン端子の一方は、電源電位VDDを与える電源線108に接続され、他方は、エミッショントランジスタT3のソース端子に接続されている。駆動トランジスタT1のゲート端子とソース/ドレイン端子の一方との間に保持容量C1が形成されている。
【0021】
エミッショントランジスタT3は、OLED素子E1への駆動電流の供給と停止を制御するスイッチである。そのゲート端子はエミッション制御線107に接続されている。エミッショントランジスタT3のソース/ドレイン端子の一方は駆動トランジスタT1のドレイン端子に接続され、他方は、OLED素子E1に接続されている。
【0022】
次に、画素回路の動作を説明する。走査ドライバ131が走査線106に選択パルスを出力し、選択トランジスタT2をオン状態にする。データ線105を介してドライバIC134から供給されたデータ電圧は、保持容量C1に格納される。保持容量C1は、格納された電圧を、1フレーム期間を通じて保持する。保持電圧によって、駆動トランジスタT1のコンダクタンスがアナログ的に変化し、駆動トランジスタT1は、発光階調に対応した順バイアス電流をOLED素子E1に供給する。
【0023】
エミッショントランジスタT3は、駆動電流の供給経路上に位置する。エミッションドライバ132は、エミッション制御線107に制御信号を出力して、エミッショントランジスタT3のオンオフを制御する。エミッショントランジスタT3がオン状態のとき、駆動電流がOLED素子E1に供給される。エミッショントランジスタT3がオフ状態のとき、この供給が停止される。エミッショントランジスタT3のオンオフを制御することにより、1フレーム周期内の点灯期間(デューティ比)を制御することができる。
【0024】
図2Bは、画素回路の他の構成例を示す。当該画素回路は、図2AのエミッショントランジスタT3に代えて、リセットトランジスタT4を有する。リセットトランジスタT4は、基準電圧供給線110とOLED素子E1のアノードとの電気的接続を制御する。リセットトランジスタT4のゲートにリセット制御線109からリセット制御信号が供給されることによりこの制御が行われる。例えば、エミッションドライバ132又はドライバIC134がリセット制御信号を供給する。
【0025】
リセットトランジスタT4は、様々な目的で使用することができる。リセットトランジスタT4は、例えば、OLED素子E1間のリーク電流によるクロストークを抑制するために、一旦、OLED素子E1のアノード電極を黒信号レベル以下の十分低い電圧にリセットする目的で使用しても良い。
【0026】
他にも、リセットトランジスタT4は、駆動トランジスタT1の特性を測定する目的で使用してもよい。例えば、駆動トランジスタT1を飽和領域、リセットトランジスタT4を線形領域で動作するようにバイアス条件を選んで、電源線108(VDD)から基準電圧供給線110(VREF)に流れる電流を測定すれば、駆動トランジスタT1の電圧・電流変換特性を正確に測定することができる。画素回路間の駆動トランジスタT1の電圧・電流変換特性の違いを補償するデータ信号を外部回路で生成すれば、均一性の高い表示画像を実現できる。
【0027】
一方、駆動トランジスタT1をオフ状態にしてリセットトランジスタT4をリニア領域で動作させ、OLED素子E1を発光させる電圧を基準電圧供給線110から印加すれば、OLED素子E1の電圧・電流特性を正確に測定することができる。例えば、長時間の使用によってOLED素子E1が劣化した場合にも、その劣化量を補償するデータ信号を外部回路で生成すれば、長寿命化を実現できる。
【0028】
図2A及び2Bの画素回路は例であって、画素回路は他の回路構成を有してよい。図2A及び2Bの画素回路はpチャネル型TFTを使用しているが、画素回路はnチャネル型TFTを使用してもよい。
【0029】
[ドライバICの構成]
図3は、ドライバIC134の論理要素を示す。ドライバIC134は、タイミングコントローラ400、データ受信部421、パネル制御部423、階調電圧制御部425、ソースドライバ427、及びDC/DCコンバータ429を含む。タイミングコントローラ400は、輝度制御部402、色制御部404、ガンマ補正部406、及び階調補正部408を含む。これら機能部は、ロジック回路(ハードウェア)、又は、プロセッサ(ハードウェア)及びプロセッサにより実行されるソフトウェアの組み合わせ、により実装可能である。
【0030】
タイミングコントローラ400は、外部からの制御信号及び画像信号(画像データ)に基づき、走査信号、データ信号、及びOLEDの発光を制御する信号の、タイミングを制御する。タイミングコントローラ400は、ガンマ補正に必要な情報を階調電圧制御部425に与え、ソースドライバに副画素それぞれの輝度を表す階調レベルを与える。
【0031】
データ受信部421は、たとえばMIPI(Mobile Industry Processor Interface)アライアンスで定められた規格に準拠した画像信号を受信し、タイミングコントローラ400に出力する。
【0032】
タイミングコントローラ400において、輝度制御部402は、受信した画像信号に含まれる各画素のデータ(副画素それぞれの輝度を示す)に対して、輝度調整を行う。色制御部404は、輝度調整後の、各画素のデータに対して、色度調整を行う。ガンマ補正部406は、色度調整後の、各画素のデータのガンマ補正を行う。階調補正部408は、ガンマ補正された画素から、特定の画素を検出し、当該画素のデータを補正する。階調補正部408により補正の詳細は後述する。
【0033】
パネル制御部423は、走査信号、発光制御信号等のパネルを制御する各種信号(パネル制御信号)を生成し、走査ドライバ131及びエミッションドライバ132に出力する。階調電圧制御部425は、各データ出力端子の電圧(例えば256レベル)が、副画素の階調レベルと輝度との間の所定のガンマ特性を実現するように、赤、緑、及び青の各色のアナログ基準電圧を出力する。
【0034】
ソースドライバ427は、階調補正部408により補正された副画素のデータが示す階調レベル及び階調電圧制御部425からの基準電圧に基づき、データ信号を生成し、出力端子に出力する。DC/DCコンバータ429は、入力電源から、走査回路に供給されるクロック信号(ゲート信号)の電位(VGH、VGL)、画素回路の電源電位VDD(OLED素子のアノードに供給される電源電位)、及び電源電位VEE(OLED素子のカソードに供給される電源電位)を生成する。
【0035】
[階調補正]
以下において、階調補正部408による画素のデータの補正について説明する。図4は、比較例の表示領域125が、特定パターンの画像を表示した時の、表示領域125の部分領域251A~251Iの輝度を模式的に示している。部分領域251A~251Iは、共通の形状を有する。特定パターンの画像は、中央の黒の矩形及びその周囲の白の領域で構成されている。表示領域125における中央の部分領域251Eは黒である。その周囲の部分領域251A~251D、251F~251Iそれぞれが、白である。
【0036】
図4において、各部分領域内の数字は、副画素それぞれに割り当てられている階調レベルを示す。階調レベルは、タイミングコントローラからソースドライバに与えられる副画素それぞれの輝度を示す値である。図4に示す比較例に対応するドライバICの構成は、図3に示す本実施形態の構成から、階調補正部408を除いたものである。
【0037】
図4に示す比較例において、部分領域251Eの全ての副画素に与えられる階調レベルは0(最も暗い)であり、他の部分領域251A~251D、251F~251Iの全ての副画素に割り当てられている階調レベルは255である。本例において、階調レベルの最大値(副画素の最大輝度に対応)は255である(最も明るい)。
【0038】
図4に示す比較例において、白の部分領域251D及び251Fの輝度が、他の白の部分領域251A~251C、251G~251Iの輝度よりも高い。これは、データの分布によって生じるドライバIC134からの出力電位差が、原因の一つと考えられる。ソースドライバは、多数のアナログアンプを共有の内部電源で駆動する。ソースドライバは、選択されている複数の副画素(副画素行)に対して、アナログアンプからデータ電位を同時に出力する。そのため、入力された複数の副画素の階調レベルの分布によって、アナログアンプ間の出力差が発生し得る。
【0039】
図4に示す比較例において、白の部分領域251A~251Cの各副画素行は、同一の階調レベル255が割り当てられている副画素で構成されている。同様に、白の部分領域251G~251Iの各副画素行は、同一の階調レベル255が割り当てられている副画素で構成されている。
【0040】
一方、部分領域251D~251Fにおける各画素行は、部分領域251Dの連続する画素、部分領域251Eの連続する画素、及び部分領域251Fの連続する画素で構成されている。部分領域251D、251Fにおける副画素は、階調レベル255(最大値)が割り当てられており、部分領域251Eにおける副画素は階調レベル0(最小値)が割り当てられている。
【0041】
階調レベルが低い部分領域251Eにより、部分領域251D及び251Fにおける副画素の実際の輝度が、階調レベル255の他の部分領域251A~251C、251G~251Iの輝度よりも高くなる。つまり、部分領域251D及び251Fにおける副画素の実際の輝度は、階調レベル255が示す輝度からずれている。
【0042】
図5は、本実施形態のドライバIC134において、階調補正部408がソースドライバ427に与える副画素の階調レベルを示している。階調補正部408がガンマ補正部406から取得する副画素の階調レベルは、図4に示す比較例と同様である。階調補正部408は、部分領域251D及び251Eの階調レベル255から、階調レベル2だけ減算する。ソースドライバ427に与えられる、部分領域251D及び251Eの階調レベルは、253である。
【0043】
図5に示すように、部分領域251D及び251Fの階調レベルを、階調レベル255から所定の減産量を減算した階調レベルにすることで、実際の輝度を低くすることができる。これにより、部分領域251D及び251Fにおいて階調補正が無い場合に生じた輝度のずれを小さくでき、同一の輝度であるべき領域間の輝度の差を小さくできる。
【0044】
階調補正部408は、例えば、1画素行(副画素行)のデータから、補正を行うべき副画素(補正対象副画素)を特定(検出)する。階調補正部408は、メモリを含み、ガンマ補正部406からの1画素行のデータを格納する。階調補正部408は、1画素行のデータを分析し、実際の輝度が階調レベルにより示される輝度からずれると推定される副画素を、補正対象副画素として特定する。
【0045】
画素行において、実際の輝度が階調レベルにより示される輝度からずれると推定される領域(補正対象領域)を特定(検出)する様々な方法あり、階調補正部408は、任意の方法により補正対象領域を特定することができる。上述のように、コントラストが大きい画素行において、輝度のずれが発生する。例えば、階調補正部408は、1画素行においてコントラスト(輝度比)及び階調レベルが規定条件を超える領域を補正対象領域と決定し、当該補正対象領域の副画素の階調レベルを補正することができる。画素の輝度は、当該画素を構成する副画素の階調レベル(輝度)から計算できる。
【0046】
階調補正部408は、補正を行う画素行を、特定の色及び/又は特定の輝度パターンを示す画素行に限定してもよい。階調補正部408は、例えば、画素を構成する副画素の階調レベルが同一である無彩色の画素からなる画素行から補正を行う画素行を選択してもよく、2色の画素からなる画素行から補正を行う画素行を選択してもよい。補正を行う画素行を、同一色の一つの部分(領域)と、当該部分より輝度が高い同一色の1又は2の部分からなる画素行(例えば図5のパターン)に限定してもよい。
【0047】
階調補正部408は、副画素それぞれの階調レベルに基づき、当該階調レベルの補正量を決定する。これにより、消費電力を増加させることなく、シンプルな処理により輝度の補正を行うことができる。例えば、階調補正部408は、階調レベルと補正量との関係を定義する補正テーブルを保持してもよい。階調補正部408は、階調レベル補正テーブルを参照し、副画素が示す階調レベルに対する補正量を決定する。なお、階調補正部408は、補正量を決定する任意の方法を使用できる。
【0048】
図6は、階調レベル補正テーブルの構成例601を示す。階調レベル補正テーブル601は、階調レベル範囲の複数の区分と階調レベルの補正量とを関連付け、より具体的には、区分と階調レベルの減算量とを関連付ける。階調補正部408は、補正対象であると判定した画素行において、階調レベル補正テーブル601を参照し、副画素それぞれの階調レベルの補正量を決定する。
【0049】
階調レベル補正テーブル601は、階調範囲を三つの区分0、1、2に分割し、区分それぞれに対して減算量を割り当てる。階調レベル補正テーブル601が定義する階調レベル範囲は、レベル0からレベル255である。
【0050】
階調レベルが最も小さい(最も輝度が小さい)区分0は、レベル0からレベル135であり、最も大きい(最も輝度が大きい)区分2は、レベル224からレベル255である。最も小さい区分に対して割り当てられている減算量は0であり、区分0に含まれる階調レベルの副画素は補正対象外である。
【0051】
階調レベル補正テーブル601は、より大きい区分に対してより大きい(絶対値が大きい)減算量が割り当てている。減算量は、最も明るい区分から最も暗い区分に向かって減少している。減算量の絶対値は、1ずつ変化しており、最も大きい区分2に対して-2、中間の区分1に-1が割り当てられている。階調レベルが大きい区分に大きい減算量を割り当てることで、輝度の分布に起因して発生する輝度変化を効果的に抑制し、補正による表示画像の変化を小さくできる。
【0052】
OLED表示装置10がガンマ値2.2のガンマ特性を有している場合、階調レベル補正テーブル601の区分0は輝度0~25%の輝度範囲に対応し、区分1は輝度25~75%の輝度範囲に対応し、区分2は輝度75~100%の輝度範囲に対応する。予想される輝度変化が2%程である場合、2レベル分の補正で適切に補正を行うことができる。
【0053】
図7は、階調レベル補正テーブルの他の構成例603を示す。階調レベル補正テーブル603は、図6に示す階調レベル補正テーブル601の区分グループと異なる区分グループを定義する。具体的には、階調レベル補正テーブル603は、階調範囲を四つの区分0~3に分割し、区分それぞれに対して減算量を割り当てる。階調レベル補正テーブル603が定義する階調レベル範囲は、レベル0からレベル255である。
【0054】
階調レベルが最も小さい(最も輝度が小さい)区分0は、レベル0からレベル110であり、次の区分1はレベル111からレベル186であり、次の区分2はレベル187からレベル234であり、最も大きい(最も輝度が大きい)区分3は、レベル235からレベル255である。
【0055】
最も小さい区分に対して割り当てられている減算量は0であり、区分0に含まれる階調レベルの副画素は補正対象外である。階調レベル補正テーブル603は、より大きい区分に対してより大きい(絶対値が大きい)減算量が割り当てる。減算量は、最も明るい区分から最も暗い区分に向かって減少している。減算量の絶対値は、1ずつ変化している。区分1に対して-1、区分2に対して-2、そして最も大きい区分3に対して-3が割り当てられている。階調レベルが大きい区分に大きい減算量を割り当てることで、輝度の分布に起因して発生する輝度変化を効果的に抑制し、補正による表示画像の変化を小さくできる。
【0056】
OLED表示装置10がガンマ値2.2のガンマ特性を有している場合、階調レベル補正テーブル603の区分0は輝度0~16.6%の輝度範囲に対応し、区分1は輝度16.6~50%の輝度範囲に対応し、区分2は輝度50~83.3%の輝度範囲に対応し、区分3は輝度83.3~100%の輝度範囲に対応する。予想される輝度変化が3%程である場合、3又は4レベル分の補正で適切に補正を行うことができる。
【0057】
次に、階調レベルが示す輝度からの輝度ずれを発生させる画像の他に例について説明する。図8は、比較例の表示領域125が、特定パターンの画像を表示した時の、表示領域125の部分領域252A~252Pの輝度を模式的に示している。部分領域252A~252Pを共通の形状を有する。
【0058】
特定パターンの画像は、階調レベルが0(最も暗い)の黒の部分領域252E、I、J、M、N、Oと、階調レベルが255(最も明るい)の白のその他の部分領域とで構成されている。図8において、各部分領域内の数字は、副画素それぞれに割り当てられている階調レベルを示す。本例において、階調レベルの最大値(副画素の最大輝度に対応)は255である(最も明るい)。各画素行は、連続する白の画素又は連続する黒の画素と連続する白の画素とで構成されている。
【0059】
階調レベルは、タイミングコントローラからソースドライバに与えられる副画素それぞれの輝度を示す値である。図8に示す比較例に対応するドライバICの構成は、図3に示す本実施形態の構成から、階調補正部408を除いたものである。
【0060】
図8に示す比較例において、白の部分領域251A~252Dの輝度は同一である。白の部分領域252F~252Hの輝度は同一である。白の部分領域252K、252Lの輝度は同一である。
【0061】
図8に示す比較例において、白の部分領域252Pの輝度が、他の白の部分領域252A~252D、252F~252H、252K、252Lの輝度よりも高い。部分領域252F~252Hの輝度が、部分領域252K、252Lの輝度の次に高い。部分領域251A~252Dの輝度が、最も低い。
【0062】
図8の比較例において、部分領域252Pの画素(副画素)は、黒の部分領域252M~252Oの画素(副画素)と同一の画素行(副画素行)に含まれる。部分領域252K、252Lの画素は、黒の部分領域252I、252Jの画素と同一の画素行に含まれる。部分領域252F~252Hの画素は、黒の部分領域252Eの画素と同一の画素行に含まれる。部分領域252A~252Dの画素は、階調レベルが255の画素で構成される画素行に含まれている。
【0063】
図8の比較例において、同一画素行に黒の画素が含まれる白の画素の輝度は、白の画素のみからなる画素行の輝度よりも高い。さらに、同一の画素行に含まれる黒の画素が多い程、白の画素の輝度が高い。このように、部分領域252F~252H、252K、252L、252Pにおける副画素の実際の輝度は、階調レベル255が示す輝度からずれている。さらに、それらのずれの量は、同一画素行内の黒画素が多い程大きい。
【0064】
図9は、本実施形態のドライバIC134において、階調補正部408がソースドライバ427に与える副画素の階調レベルを示している。階調補正部408がガンマ補正部406から取得する副画素の階調レベルは、図8に示す比較例と同様である。階調補正部408は、部分領域252Pの階調レベル255から階調レベル3だけ減算し、部分領域252K、252Lの階調レベル255から階調レベル2だけ減算し、部分領域252F~252Hの階調レベル255から階調レベル1だけ減算する。
【0065】
図9に示すように、部分領域252F~252H、252K、252L、252Pの階調レベルから、所定の減算量を減算することで、部分領域の実際の輝度と階調レベルが示す輝度とのずれを小さくできる。これにより、同一の輝度であるべき領域間の輝度の差を小さくできる。
【0066】
図9に示すような補正を行うため、階調補正部408は、例えば、複数の階調レベル補正テーブルを使用することができる。図10は、階調補正部408が保持する階調レベル補正テーブル群の例604を示す。階調レベル補正テーブル群604は、階調レベル補正テーブル605A~605Cからなる。階調レベル補正テーブル605A~605Cは、それぞれ、図6及び7を参照して説明したように、階調レベル範囲の区分と階調レベルの補正量(減算量)とを関連付ける。
【0067】
輝度のずれが大きい画素(副画素)に対して、より大きい補正量が必要である。一例において、階調レベル補正テーブル605A~605Cは、異なる輝度のずれ量に応じて構成されている。階調レベル補正テーブル605A~605Cは、それぞれ、異なる区分グループの減算量を定義する。
【0068】
図6及び7を参照して説明したように、階調レベル補正テーブル605A~605Cは異なる数の階調レベル範囲の区分を定義し、減算量を1ずつ変化させる。階調レベルが最も小さい区分に割り当てられている減算量は0である。階調レベル補正テーブルの最大減算量は、その区分数が多い程大きい。
【0069】
例えば、階調レベル補正テーブル605Aは、二つの区分を定義し、階調レベルが小さい区分に減算量0を割り当て、階調レベルが大きい区分に減算量-1を割り当てる。階調レベル補正テーブル605Bは、三つの区分を定義し、階調レベルが低い区分から、0、-1及び-2を割り当てる。階調レベル補正テーブル605Cは、四つの区分を定義し、階調レベルが低い区分から、0、-1、-2、-3を割り当てる。
【0070】
階調補正部408は、補正対象画素行における輝度分布(画素行を構成する複数の副画素の階調レベル)に基づき、使用する階調レベル補正テーブルを選択する。階調補正部408は、所定の指標、例えば、補正対象の画素行において、階調レベルが示す輝度と推定される実際の輝度とのずれ量(の最大値)を示す指標の値を計算し、その指標の値に応じて階調レベル補正テーブルを選択する。
【0071】
ずれ量が大きい程、最大減算量が大きい階調レベル補正テーブルが選択される。指標値は画素の輝度の統計値を直接又は間接的に示し、例えば、補正対象画素行の画素の輝度平均又は黒画素の割合(白画素の割合と同義)を示す。輝度平均が低い画素行や黒画素の割合が大きい画素行に対して、最大減算量が大きい階調レベル補正テーブルが選択される。
【0072】
階調補正部408は、例えば、階調レベル補正テーブル605A~605Cと指標の値とを関連付ける管理テーブルを保持し、その管理テーブルを参照して、指標の値に基づき階調レベル補正テーブルを選択することができる。
【0073】
図11は、階調レベル補正テーブル管理テーブルの構成例606を示す。階調レベル補正テーブル管理テーブル606は、指標値の範囲と階調レベル補正テーブルとを関連付ける。指標が示す推定のずれ量が大きい程、区分数が多い階調レベル補正テーブルが割り当てられている。階調補正部408は、画素行の指標値を計算し、その値が含まれる範囲に対応する階調レベル補正テーブルを選択する。上述のように、異なる区分グループを定義する複数の階調レベル補正テーブルを用意することで、表示される輝度分布に応じてより適切な補正を行うことができる。
【0074】
上述のように、階調補正部408による補正対象の輝度のずれは、ドライバIC134の出力特性に起因する現象のため、輝度変化量の予想が可能であり、事前に補正量をドライバIC134内に設定することができる。このため、階調レベルの補正のための回路サイズを小さくすることができ、ドライバIC134内に階調補正部408を内蔵することが可能である。
【0075】
上記例のように、階調補正部408は、対象の一つの副画素行(画素行)の副画素それぞれの階調レベルの補正量を、当該対象副画素行と異なる副画素行の階調レベルを参照することなく、当該対象副画素行の階調レベルのみに基づき決定することができる。補正のために必要なメモリ領域は1副画素行分であり、フレームメモリのように大きな記憶領域をドライバIC134内に実装することなく、補正を行うことができる。
【0076】
次に、表示画像の輝度分布に起因する輝度のずれの他の発生態様を説明する。図12Aは、比較例の表示領域125が、特定パターンの画像を表示した時の、表示領域125の部分領域251A~251Iの輝度を模式的に示している。部分領域251A~251Iの輝度は、図4を参照して説明した通りである。
【0077】
図4を参照した説明において省略したが、部分領域251Dにおける部分領域251Aと境界において、部分領域251Dにおける他の部分よりも輝度が高い線が発生することがある。また、部分領域251Fにおける部分領域251Cとの境界において、部分領域251Fにおける他の部分よりも輝度が高い線が発生することがある。
【0078】
さらに、部分領域251Gにおける部分領域251Dとの境界において、部分領域251Gの他部分よりも輝度が低い線が発生することがある。また、部分領域251Hにおける部分領域251Eとの境界において、部分領域251Hの他部分よりも輝度が低い線が発生することがある。また、部分領域251Iにおける部分領域251Fとの境界において、部分領域251Iの他部分よりも輝度が低い線が発生することがある。
【0079】
図12Bは、図12Aにおける四つの部分領域251B、251C、251E、251Fの境界領域253Aの拡大図を示す。図4を参照して説明したように、部分領域251Fの輝度は、部分領域251B、251Cの輝度よりも高い。部分領域251Fにおいて部分領域251Cに隣接する画素群(副画素群)255Aの輝度は、部分領域251Fにおける他の部分の輝度よりも高い。
【0080】
図示していないが、部分領域251Dにおいて部分領域251Aに隣接する画素群の輝度は、部分領域251Dにおける他の部分の輝度よりも高い。部分領域251Dのこれら画素群は、部分領域251Fの画素群255Aと同一の画素行(同時にデータ信号が書き込まれる画素群)に含まれる。
【0081】
画素群255Aを含む副画素行(第4副画素行)は、連続する階調レベル255の副画素からなる2つの副画素群(第3副画素群)と、連続する階調レベルが0の副画素からなる副画素群(第4副画素群)とで構成されている。画素群255Aを含む副画素行の直前の副画素行(第3副画素行)は、部分領域251A、251B及び251Cの副画素で構成され、それらの階調レベルは255である。画素群255Aを含む副画素行の次の副画素行(第5副画素行)は、連続する階調レベル255の副画素からなる2つの副画素群(第5副画素群)と、連続する階調レベルが0の副画素からなる副画素群(第6副画素群)とで構成されている。画素群255Aを含む副画素行の次の副画素行は、画素群255Aを含む副画素行と同一の階調レベル分布を有している。
【0082】
図12Cは、図12Aにおける四つの部分領域251E、251F、251H、251Iの境界領域253Bの拡大図を示す。図4を参照して説明したように、部分領域251Fの輝度は、部分領域251H、251Iの輝度よりも高い。画素群(副画素群)255Bは、部分領域251Hにおいて部分領域251Eに隣接する画素と、部分領域251Iにおいて部分領域251Fに隣接する画素とを含む。画素群255Bは、同一の画素行に含まれている。画素群255Bの輝度は、部分領域251H及び部分領域251Iにおける他の部分の輝度よりも低い。
【0083】
図示していないが、部分領域251Gにおいて部分領域251Dに隣接する画素群は画素群255Bと同一の画素行に含まれ、それらの輝度は、部分領域251Gにおける他の部分の輝度よりも低い。
【0084】
画素群255Bを含む副画素行(第7副画素行)は、階調レベルが255の副画素で構成されている。画素群255Bを含む副画素行の直前の副画素行(第6副画素行)は、連続する階調レベル255の副画素からなる2つの副画素群(第7副画素群)と、連続する階調レベルが0の副画素からなる副画素群(第8副画素群)とで構成されている。画素群255Bを含む副画素行の次の副画素行(第8副画素行)は、階調レベルが255の副画素で構成されている。
【0085】
図13Aは、境界領域253Aにおいて、階調補正部408がソースドライバ427に与える副画素の階調レベルを示している。階調補正部408がガンマ補正部406から取得する副画素の階調レベルは、図12Aに示す比較例と同様である。階調補正部408は、部分領域251B及び251Cの階調レベル255から、階調レベル2(第1減算量)だけ減算する。ソースドライバ427に与えられる、部分領域251B及び251Cの階調レベルは、253である。
【0086】
階調補正部408は、部分領域251Fにおいて部分領域251Cに隣接する副画素群255Aの階調レベル255から、階調レベル5だけ減算(第2減算量)する。階調補正部408は、部分領域251Fにおける他の副画素の階調レベル255から、階調レベル4(第3減算量/)だけ減算する。
【0087】
図示していないが、階調補正部408は、部分領域251Dにおいても、部分領域251Fと同様の補正を行う。つまり、階調補正部408は、部分領域251Dにおいて、部分領域251Aに隣接する副画素の階調レベル255から、階調レベル5だけ減算する。階調補正部408は、部分領域251Dの他の副画素の階調レベル255から、階調レベル4だけ減算する。
【0088】
図13Bは、境界領域253Bにおいて、階調補正部408がソースドライバ427に与える副画素の階調レベルを示している。階調補正部408がガンマ補正部406から取得する副画素の階調レベルは、図12Aに示す比較例と同様である。階調補正部408は、部分領域251H及び251Iにおいて、副画素群255Bの階調レベル255から階調レベル1(第5減算量)だけ減算する。図示していないが、階調補正部408は、部分領域251Gにおいて、部分領域251Dに隣接する副画素群の階調レベル255から階調レベル1だけ減算する。
【0089】
階調補正部408は、部分領域251H及び251Iの他の副画素の階調レベル255から階調レベル2(第6減算量)だけ減算する。図示していないが、階調補正部408は、部分領域251Gにおいて、部分領域251Dに隣接する副画素群以外の副画素の階調レベル255から、階調レベル2だけ減算する。
【0090】
図13A及び13Bに示すように、部分領域の境界の副画素の階調レベルから所定の減算量を減算することで、境界の副画素の実際の輝度と階調レベルが示す輝度とのずれを小さくできる。これにより、同一の輝度であるべき領域間の輝度の差を小さくできる。
【0091】
画素群255Aを含む画素行及び画素群255Bを含む画素行それぞれにデータ信号を与える時のデータ線の電位は、直前の画素行にデータ信号を与える時のデータ線の電位から、大きく変化している。そのため、データ線駆動負荷に対する書き込み不足が、輝度に影響を与え、実際の輝度の階調レベルが示す輝度からのずれが発生し得る。
【0092】
階調補正部408は、複数の画素行の輝度分布を比較することで、領域境界における副画素の階調レベルを適切に補正する。例えば、階調補正部408は、輝度ずれが発生しないと推定される画素行、輝度ずれが発生すると推定される画素行、領域境界の画素行それぞれに対する階調レベル補正テーブルを保持する。階調レベル補正テーブルは、上述のように、階調レベル範囲の区分と補正量とを関連付ける。
【0093】
輝度ずれが発生すると推定される画素行は、上述のように特定できる。領域境界の画素行は、連続する二つの画素行の輝度分布を比較することで特定することができる。また、境界画素行における実際の輝度が、階調レベルが示す輝度から増加するか減少するかは、直前の画素行の輝度分布との比較から特定できる。
【0094】
図13A及び13Bを参照して説明したように、階調補正部408は、輝度ずれが発生しないと推定される画素行においても、階調レベルの補正を行う。階調レベルの補正は、上述のように、階調レベル範囲の区分に対して割り当てられている補正量に基づく。
【0095】
階調補正部408は、輝度が増加すると推定される領域境界の画素行のための階調レベル補正テーブルと、輝度が減少すると推定される領域境界の画素行のための階調レベル補正テーブルとを保持する。上述のように、輝度が増加すると推定される領域境界の減算量は大きく、輝度が減少すると推定される境界領域の減算量は小さい。上記例は、副画素の階調レベルを減少させるが、特定の副画素の階調レベルを増加させてもよい。
【0096】
上記例のように、階調補正部408は、対象の一つの副画素行の副画素それぞれの階調レベルの補正量を、それを含む連続する三つの副画素行の階調レベルから、決定することができる。補正のために必要なメモリ領域は数副画素行分であり、フレームメモリのように大きな記憶領域をドライバIC134内に実装することなく、補正を行うことができる。
【0097】
上述のように、ドライバIC134は、表示画像の輝度分布(階調レベルの分布)に応じて適切に階調レベルを補正する。一例において、ドライバIC134は、さらに、表示領域125におけるピーク輝度を調整する機能を有することができる。ドライバIC134は、ピーク輝度を、階調レベル補正とは独立して行う。例えば、外部から入力される設定データに従って、ドライバIC134は、電源電位VEEを調整することで、ピーク輝度を調整する。
【0098】
一例において、階調補正部408の機能は、オン/オフ可能であってもよい。ドライバIC134は、外部からのモード設定に従って、階調補正部408をオン/オフする。これにより、ユーザの要求に応じた画像を表示することができる。階調補正部408がオフである場合、ガンマ補正部406からの階調レベルを示すデータが、ソースドライバ427に与えられる。階調補正部408は、上記いくつかの態様の階調レベルの補正方法の一部のみ又は全部を実行してよい。
【0099】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 OLED表示装置、100 TFT基板、105 データ線、106 走査線、107 エミッション制御線、108 電源線、109 リセット制御線、110 基準電圧供給線、114 カソード電極形成領域、125 表示領域、131 走査ドライバ、132 エミッションドライバ、133 保護回路、134 ドライバIC、200 封止基板、251A~251I 部分領域、252A~252P 部分領域、253A、253B 境界領域、255A、255B 画素群、400 タイミングコントローラ、402 輝度制御部、404 色制御部、406 ガンマ補正部、408 階調補正部、421 データ受信部、423 パネル制御部、425 階調電圧制御部、427 ソースドライバ、429 DC/DCコンバータ、601、603、605A~605C 階調レベル補正テーブル、604 階調レベル補正テーブル群、606 階調レベル補正テーブル管理テーブル
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B