(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】粘性土の改質処理土および改質処理土の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/02 20060101AFI20230906BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20230906BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C09K17/02 P
C09K17/10 P ZAB
E02D3/12
(21)【出願番号】P 2019186374
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
(72)【発明者】
【氏名】野中 宗一郎
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172245(JP,A)
【文献】特開2019-148144(JP,A)
【文献】特開2018-126673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00 - 17/52
E02D 3/12
C02F 11/00 - 11/20
C04B 2/00 - 32/02
C04B 40/00 - 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水比が1.1~2.0wL(wL:液性限界)である粘性土を改質した改質処理土であって、
粘性土と製鋼スラグと改質材とが混合され、
前記改質材がペーパースラッジ焼却灰系改質材またはセメントであ
り、
前記改質処理土の5℃養生の材令28日強度が粘性土と製鋼スラグとによる改質土の20℃養生の材令28日強度と同等またはそれ以上であるように、および/または、前記改質処理土の混合24時間後のコーン指数が200kN/m
2
以上であるように、前記改質材の混合量が決定されていることで、前記改質処理土における低温時の強度発現性および混合早期の強度発現性の少なくとも一方を改善した、粘性土の改質処理土。
【請求項2】
前記製鋼スラグは、その最大粒径が5~40mmであり、前記粘性土に対する体積混合率が10~30vol%である請求項1に記載の粘性土の改質処理土。
【請求項3】
前記ペーパースラッジ焼却灰系改質材の混合量は、前記粘性土と前記製鋼スラグとの混合材料の単位体積(m3)あたり50~200kgであり、
前記セメントの混合量は、前記粘性土と前記製鋼スラグとの混合材料の単位体積(m3)あたり50~200kgである請求項1または2に記載の粘性土の改質処理土。
【請求項4】
含水比が1.1~2.0wL(wL:液性限界)である粘性土を改質した改質処理土を製造する方法であって、
粘性土に製鋼スラグと改質材とを混合し、
前記改質材がペーパースラッジ焼却灰系改質材またはセメントであ
り、
前記改質処理土の5℃養生の材令28日強度が粘性土と製鋼スラグとによる改質土の20℃養生の材令28日強度と同等またはそれ以上であるように、および/または、前記改質処理土の混合24時間後のコーン指数が200kN/m
2
以上であるように、前記改質材の混合量を決定することで、前記改質処理土における低温時の強度発現性および混合早期の強度発現性の少なくとも一方を改善する、粘性土の改質処理土の製造方法。
【請求項5】
前記セメントを加水によりスラリー状としてから混合する請求項4に記載の粘性土の改質処理土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温時や混合早期の強度発現性を改善した粘性土の改質処理土および改質処理土の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫土は港湾工事によって発生するが、近年処分場の確保が課題となっていることから、浚渫土の有効利用が求められている。浚渫土を有効活用する方法として、浚渫土とカルシア改質材(転炉系製鋼スラグの粒径・成分を調整した材料)を混合したカルシア改質土があり(たとえば、特許文献1,2,非特許文献1参照)、港湾域で浅場・干潟の造成材、潜堤材、埋立材等として広く使用されている。
【0003】
特許文献3は、軟弱土に製鋼スラグ(最大粒径10mm以下、20~150kg/m3)と高炉セメント(40~100kg/m3)とを混合する方法を開示するが、カルシア改質土と比較して製鋼スラグの添加量が少ない。
【0004】
特許文献4は、2.0wL以上の高含水比の泥土に吸水性材料を添加(25~100kg/m3)して材料分離を防ぎつつ、強度確保を図る高含水比泥土の改質土の製造方法を開示するが、高含水比の泥土の改質を目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-121167号公報
【文献】特開2011-206625号公報
【文献】特開2006-231208号公報
【文献】特開2019-148144号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「港湾・空港・海岸等におけるカルシア改質土利用技術マニュアル」(沿岸技術研究センター、平成29年2月発行)
【文献】CIKMIT Arlyn Aristo・土田孝・姜庚吾・嘉數浩靖・本田秀樹・湯怡新「製鋼スラグを用いて固化処理した浚渫海成粘土の強度発現特性」地盤と建設(地盤工学会中国支部論文報告集) Vol.35、No.1、pp.93-100、2017 http://jgschugoku.jp/asset/00032/GE/Vol35/GE_vol35_11.pdf
【文献】「発生土利用基準」国土交通省 技術調査課(2006) http://www.mlit.go.jp/tec/kankyou/hasseido/060810kijyun.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カルシア改質土は、養生温度の影響を受けるため、気温や水温が低い冬季や寒冷地で施工する場合、目標強度に到達しない可能性がある(非特許文献1(附2-10))。強度を確保する手段として、高炉スラグ微粉末を添加する方法、カルシア改質材の粒径を小さくする方法、カルシア改質材の混合率を上げる方法等がある(非特許文献1(附2-6、附2-7、附2-8、附2-11))。このカルシア改質土の粒度を調整する方法は作業が煩雑となる。カルシア改質材の混合率を上げる方法は、例えば、一般的な30vol%から40vol%へ増やすと、浚渫土の比率が低下するため、浚渫土の有効活用の観点からすると望ましくない。
【0008】
また、カルシア改質土は、中長期的に強度発現する材料であり、混合後の初期における強度は小さい(非特許文献2)。このため、混合直後から数十時間の間は、ダンプトラック等による運搬やカルシア改質土上での重機作業は困難である。この問題は前述のカルシア改質材の混合率を上げる方法や高炉スラグ微粉末を添加する方法では解決することができない。
【0009】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、低温時の強度発現性または混合早期の強度発現性を改善できる粘性土の改質処理土および改質処理土の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための粘性土の改質処理土は、含水比が1.1~2.0wL(wL:液性限界)である粘性土を改質した改質処理土であって、粘性土と製鋼スラグと改質材とが混合され、
前記改質材がペーパースラッジ焼却灰系改質材またはセメントであり、
前記改質処理土の5℃養生の材令28日強度が粘性土と製鋼スラグとによる改質土の20℃養生の材令28日強度と同等またはそれ以上であるように、および/または、前記改質処理土の混合24時間後のコーン指数が200kN/m
2
以上であるように、前記改質材の混合量が決定されていることで、前記改質処理土における低温時の強度発現性および混合早期の強度発現性の少なくとも一方を改善したものである。
【0011】
この粘性土の改質処理土によれば、粘性土と製鋼スラグとに加えてさらに改質材としてペーパースラッジ焼却灰系改質材またはセメントが混合されることで、粘性土と製鋼スラグとの混合材料に比べ、改質処理土における低温時の強度発現性および混合早期の強度発現性の少なくとも一方を改善でき、低温時の強度および混合早期の強度の少なくとも一方を確保できる。
【0012】
上記粘性土の改質処理土において前記製鋼スラグは、その最大粒径が5~40mmであり、前記粘性土に対する体積混合率が10~30Vol%であることが好ましい。
【0013】
前記ペーパースラッジ焼却灰系改質材の混合量は、前記粘性土と前記製鋼スラグとの混合材料の単位体積(m3)あたり50~200kgであり、前記セメントの混合量は、前記粘性土と前記製鋼スラグとの混合材料の単位体積(m3)あたり50~200kgであることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するための粘性土の改質処理土の製造方法は、含水比が1.1~2.0wL(wL:液性限界)である粘性土を改質した改質処理土を製造する方法であって、
粘性土に製鋼スラグと改質材とを混合し、
前記改質材がペーパースラッジ焼却灰系改質材またはセメントであり、
前記改質処理土の5℃養生の材令28日強度が粘性土と製鋼スラグとによる改質土の20℃養生の材令28日強度と同等またはそれ以上であるように、および/または、前記改質処理土の混合24時間後のコーン指数が200kN/m
2
以上であるように、前記改質材の混合量を決定することで、前記改質処理土における低温時の強度発現性および混合早期の強度発現性の少なくとも一方を改善するものである。
【0015】
この粘性土の改質処理土の製造方法によれば、粘性土と製鋼スラグとに加えてさらに改質材としてペーパースラッジ焼却灰系改質材またはセメントを混合することで、粘性土と製鋼スラグとの混合材料に比べ、低温時の強度発現性および混合早期の強度発現性の少なくとも一方を改善した改質処理土を製造でき、改質処理土において低温時の強度および混合早期の強度の少なくとも一方を確保できる。
【0016】
上記粘性土の改質処理方法において前記セメントを加水によりスラリー状としてから混合することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粘性土の改質処理土および改質処理土の製造方法によれば、改質処理土における低温時の強度発現性および混合早期の強度発現性の少なくとも一方を改善できるので、低温時の強度および混合早期の強度の少なくとも一方を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態による粘性土の改質処理土の製造方法の主要な工程S01~S04を説明するためのフローチャートである。
【
図2】実験例1において材令28日の一軸圧縮試験の試験結果を示すグラフである。
【
図3】実験例1において20℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示すグラフである。
【
図4】実験例1において5℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示すグラフである。
【
図5】実験例2において材令28日の一軸圧縮試験の試験結果(製鋼スラグ:30vol%)を示すグラフである。
【
図6】実験例2においてPS灰系改質材を混合した場合の材令28日の一軸圧縮試験の試験結果(製鋼スラグ:30vol%)を養生温度5℃と20℃との比較で示すグラフである。
【
図7】実験例2においてPS灰系改質材を混合した場合の材令28日の一軸圧縮試験の試験結果を製鋼スラグの混合量20vol%と30vol%との比較で示すグラフである。
【
図8】実験例2において製鋼スラグの混合量30vol%、20℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示すグラフである。
【
図9】実験例2において製鋼スラグの混合量30vol%、5℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示すグラフである。
【
図10】実験例2において製鋼スラグの混合量20vol%、20℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態による粘性土の改質処理土の製造方法の主要な工程S01~S04を説明するためのフローチャートである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態による粘性土の改質処理土の製造方法は、含水比が1.1~2.0wL(wL:液性限界)である浚渫土等の粘性土を用意し(S01)、次に、最大粒径が5~40mmである製鋼スラグを粘性土に混合し(S02)、さらに、改質材としてペーパースラッジ焼却灰系改質材(以下、本明細書では「PS灰系改質材」ともいう。)またはセメントを混合し(S03)、これにより、粘性土の改質処理土を得る(S04)ものである。なお、工程S02と工程S03とは同時に行ってもよいし、工程を入れ替えてもよい。
【0021】
製鋼スラグの粘性土に対する体積混合率は10~30Vol%である。また、PS灰系改質材の混合量は50~200kg/m3、または、セメントの混合量は50~200kg/m3である。ただし、m3:粘性土と製鋼スラグとの混合材料の単位体積である。
【0022】
なお、ペーパースラッジ焼却灰系改質材(PS灰系改質材)とは、ペーパースラッジ焼却灰からなる改質材、または、ペーパースラッジ焼却灰を主成分とする改質材であり、製紙スラッジ焼却灰に他成分が混合されていてもよいが、他成分の混合は必ずしも必要ではない。ペーパースラッジ焼却灰とは、製紙産業において発生するペーパースラッジ(PS)を減容化のため焼却した際に生じる焼却灰(PS灰)である。
【0023】
PS灰系改質材またはセメントの混合方法は、PS灰系改質材またはセメントが粉体であって粉体のまま混合する場合は、ミキサやバックホウで混合を行う。また、セメントは粉体であっても加水してスラリー状としたものでもよく、スラリー状とする場合には、ミキサ混合、バックホウ混合、落下混合、管中混合等の工法を用いる。なお、セメントをスラリー状とするのは、セメントの混合量が50kg/m3程度と比較的小さい場合に適用することが好ましい。
【0024】
本実施形態による粘性土の改質処理土によれば、粘性土と製鋼スラグとに加えて適正量のPS灰系改質材またはセメントが混合されることで、低温時の強度発現性が改善され、低温時でも従来の常温時のカルシア改質土と同等の強度を確保することができる。また、従来のカルシア改質土と比較して混合早期の強度発現性が改善され、ダンプトラックでの運搬が可能なコーン指数qc=200kN/m2(第4種建設発生土相当(非特許文献3))の目標値を確保できるため、混合後数時間でのダンプトラック運搬が可能であり、さらに、その後の養生において通常の施工性が確保されるコーン指数qc=400kN/m2(第3種建設発生土相当(非特許文献3))を確保できるので、建設機械での作業が可能である。
【0025】
次に、本発明についての実験例1,2を説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0026】
[実験例1]
浚渫土(液性限界wL=66.5%、含水比116.4%(1.75wL))に製鋼スラグ(最大粒径5mm、30vol%)を混合したカルシア改質土、および、このカルシア改質土にPS灰系改質材または高炉セメントB種を所定量(50kg/m
3,100kg/m
3)混合した改質処理土をそれぞれ作製し、5℃または20℃の条件で養生した後、一軸圧縮試験(JIS A 1216)およびコーン貫入試験(JIS A 1228)を実施した。
図2に材令28日の一軸圧縮試験の試験結果を示す。
図3に20℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示す。
図4に5℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示す。
【0027】
図2に示すように、5℃養生のカルシア改質土の材令28日の一軸圧縮強さは、20℃養生のカルシア改質土の半分以下となり、低温時の強度が低下したのに対し、PS灰系改質材またはセメントをさらに混合した5℃養生の改質処理土は、混合量50kg/m
3、100kg/m
3の条件において20℃養生のカルシア改質土と同等またはそれ以上の一軸圧縮強さを示し、低温時の強度発現性が改善され、低温時でも従来の常温時のカルシア改質土と同等またはそれ以上の強度を確保できた。
【0028】
図3に示すように、20℃養生のカルシア改質土の場合、混合後の強度発現に時間がかかるのに対し、PS灰系改質材を50kg/m
3、100kg/m
3混合し20℃養生の改質処理土の場合、混合後数時間でコーン指数qc=200kN/m
2の目標値に到達し、その後、通常の施工性が確保されるコーン指数qc=400kN/m
2まで速やかに到達し、混合早期の強度発現性が改善され、混合早期の強度を確保できた。
【0029】
図4に示すように、同様の配合で、5℃養生の場合、カルシア改質土の強度発現は大きく遅れるが、PS灰系改質材を100kg/m
3混合した場合、3時間後にqc=200kN/m
2の目標値に到達した。セメントを混合した場合、初期強度の発現効果はやや小さく、100kg/m
3混合の場合16時間程度で、qc=200kN/m
2の目標値に到達した。低温時の混合早期の強度発現性は、PS灰系改質材を100kg/m
3以上混合すると、改善され、低温時でも混合早期の強度を確保できた。また、セメントを混合する場合でも、100kg/m
3を超えて200kg/m
3以下混合すれば、低温時の混合早期の強度発現性はかなり改善されると考えられる。
【0030】
[実験例2]
浚渫土(液性限界wL=107.2%、含水比157.4%(1.5wL))に製鋼スラグ(最大粒径5mm、20vol%または30vol%)を混合したカルシア改質土、および、このカルシア改質土にPS灰系改質材または高炉セメントB種を所定量(50kg/m
3,100kg/m
3,200kg/m
3)混合した改質処理土をそれぞれ作製し、5℃または20℃の条件で養生した後、一軸圧縮試験(JIS A 1216)およびコーン貫入試験(JIS A 1228)を実施した。
図5に材令28日の一軸圧縮試験の試験結果(製鋼スラグ:30vol%)を示す。
図6にPS灰系改質材を混合した場合の材令28日の一軸圧縮試験の試験結果(製鋼スラグ:30vol%)を養生温度5℃と20℃との比較で示す。
図7にPS灰系改質材を混合した場合の材令28日の一軸圧縮試験の試験結果を製鋼スラグの混合量20vol%と30vol%との比較で示す。
図8に製鋼スラグの混合量30vol%、20℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示す。
図9に製鋼スラグの混合量30vol%、5℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示す。
図10に製鋼スラグの混合量20vol%、20℃養生後のコーン貫入試験による混合早期における強度発現状況を示す。
【0031】
図5に示すように、5℃養生のカルシア改質土の材令28日の一軸圧縮強さは、20℃養生のカルシア改質土の1/3程度であったが、PS灰系改質材またはセメントを混合した場合、5℃養生であっても混合量が50kg/m
3から200kg/m
3へと増えるに従い強度が増加し、混合量が50kg/m
3以上の条件で20℃養生のカルシア改質土以上の強度が確認され、低温時の強度発現性が改善された。
【0032】
図6に示すように、PS灰系改質材を混合した場合、混合量が50kg/m
3から200kg/m
3へと増えるに従い、20℃と5℃の養生温度差による強度差が小さくなり、低温時の強度発現性への影響が小さくなることが確認できた。
【0033】
図7に示すように、改質処理土において製鋼スラグの混合量を減らすと発現強度が低下するが、製鋼スラグ20vol%の混合量でPS灰系改質材を100kg/m
3以上混合することにより、20℃養生の製鋼スラグ30vol%のカルシア改質土と同等以上の材令28日強度を発現することを確認できた。
【0034】
図8に示すように、カルシア改質土では強度発現に時間がかかるが、PS灰系改質材またはセメントを混合すると混合早期の強度発現性が改善されることがわかる。製鋼スラグ30vol%、20℃養生の場合、24時間後にコーン指数qc=200kN/m
2の目標値以上となるのは、PS灰系改質材の混合量が50kg/m
3以上、セメントの混合量が100kg/m
3以上の条件であった。
【0035】
図9に示すように、製鋼スラグ30vol%、5℃の低温養生の場合、24時間後にコーン指数qc=200kN/m
2の目標値以上となるのは、PS灰系改質材の混合量が200kg/m
3以上、セメントの混合量が100kg/m
3以上の条件であった。
【0036】
図10に示すように、製鋼スラグ20vol%、20℃養生の場合、24時間後にコーン指数qc=200kN/m
2の目標値以上となるのは、PS灰系改質材の混合量が100kg/m
3以上の条件であった。
【0037】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本発明による粘性土の改質処理土は、浅場・干潟造成材、潜堤材、地盤材料等に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、粘性土と製鋼スラグと改質材としてのPS灰系改質材またはセメントとが混合された改質処理土において低温時の強度発現性および混合早期の強度発現性の少なくとも一方を改善でき、低温時の強度および混合早期の強度の少なくとも一方を確保できるので、冬季や寒冷地での施工性を確保でき、また、ダンプトラック運搬や建設機械での作業等の通常の施工性を確保できる。