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  • 特許-樹脂フィルム延伸装置及びその検査方法 図1
  • 特許-樹脂フィルム延伸装置及びその検査方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】樹脂フィルム延伸装置及びその検査方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/02 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
B29C55/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019193193
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021066091
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】平山 智也
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-041595(JP,A)
【文献】特開昭48-074573(JP,A)
【文献】特開2014-024351(JP,A)
【文献】特開2000-037772(JP,A)
【文献】実開平02-022952(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00
B29C 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の環状のレールと、
前記一対のレール上に設けられた一対の環状のチェーンと、
前記一対のチェーンに間隔を空けて取り付けられ、前記一対のレール間の走行経路に供給された樹脂フィルムを把持する複数のクリップと、
前記一対のチェーンを走行させるモータと、
前記モータによって前記一対のチェーンに付加されるトルクを算出し、前記モータによって前記一対のチェーンに付加されるトルクの算出値が所定の閾値を超えている場合、前記複数のクリップの何れかに故障が発生している又は故障の恐れがあると判断する、診断部と、
を備えた、樹脂フィルム延伸装置。
【請求項2】
前記複数のクリップの何れかに取り付けられた検知対象物と、
前記レールの所定の位置に設置され、前記チェーンの走行に伴って移動する前記検知対象物が通過したことを検知するセンサと、
をさらに備えた、
請求項1に記載の樹脂フィルム延伸装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記センサによって前記検知対象物が検知されてから次に検知されるまでを前記チェーンの一周当たりのトルクの情報として取得するように構成されている、
請求項2に記載の樹脂フィルム延伸装置。
【請求項4】
前記センサによって前記検知対象物が検知されてから次に検知されるまでを前記チェーンの一周当たりのトルクの情報として画面に表示させる表示部をさらに備えた、
請求項2又は3に記載の樹脂フィルム延伸装置。
【請求項5】
一対の環状のレールと、
前記一対のレール上に設けられた一対の環状のチェーンと、
前記一対のチェーンに間隔を空けて取り付けられ、前記一対のレール間の走行経路に供給された樹脂フィルムを把持する複数のクリップと、
前記一対のチェーンを走行させるモータと、
を備えた樹脂フィルム延伸装置の検査方法であって、
前記モータによって前記一対のチェーンに付加されるトルクを算出するステップと、
前記モータによって前記一対のチェーンに付加されるトルクの算出値が所定の閾値を超えている場合、前記複数のクリップの何れかに故障が発生している又は故障の恐れがあると判断する故障診断ステップと、
を備えた、樹脂フィルム延伸装置の検査方法。
【請求項6】
前記レールの所定の位置に設置されたセンサによって、前記チェーンの走行に伴って移動する前記複数のクリップの何れかに取り付けられた検知対象物、が通過したことを検知するステップをさらに備え、
前記故障診断ステップでは、
前記センサによって前記検知対象物が検知されてから次に検知されるまでを前記チェーンの一周当たりのトルクの情報として取得する、
請求項5に記載の樹脂フィルム延伸装置の検査方法。
【請求項7】
前記レールの所定の位置に設置されたセンサによって、前記チェーンの走行に伴って移動する前記複数のクリップの何れかに取り付けられた検知対象物、が通過したことを検知するステップと、
前記センサによって前記検知対象物が検知されてから次に検知されるまでを前記チェーンの一周当たりのトルクの情報として表示部の画面に表示させるステップと、
をさらに備えた、
請求項5又は6に記載の樹脂フィルム延伸装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂フィルム延伸装置及びその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、フィルムを複数のクリップで把持して幅方向に引っ張ることによって、当該フィルムを幅方向に延伸するフィルム延伸装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-31528号公報
【文献】特開平6-270246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィルム延伸装置には、例えばフィルムを把持する複数のクリップの中から故障しているクリップや故障する恐れのあるクリップをできるだけ早く検出して新しいクリップに交換することにより、信頼性を向上させることが求められている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2には、フィルムを把持する複数のクリップの故障検出方法について開示も示唆もされていない。したがって、特許文献1及び特許文献2に開示されたフィルム延伸装置では、複数のクリップが故障しているか否かを目視で判定しているものと考えられる。そのため、特許文献1及び特許文献2に開示されたフィルム延伸装置では、高精度にクリップの故障を検出することができないため、信頼性を向上させることができない、という課題があった。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる樹脂フィルム延伸装置は、一対の環状のレールと、前記一対のレール上に設けられた一対の環状のチェーンと、前記一対のチェーンに間隔を空けて取り付けられ、前記一対のレール間の走行経路に供給された樹脂フィルムを把持する複数のクリップと、前記一対のチェーンを走行させるモータと、前記モータによって前記一対のチェーンに付加されるトルクを算出し、その算出結果に基づいて、前記複数のクリップの故障診断を行う診断部と、を備える。
【0008】
一実施の形態にかかる樹脂フィルム延伸装置の検査方法は、一対の環状のレールと、前記一対のレール上に設けられた一対の環状のチェーンと、前記一対のチェーンに間隔を空けて取り付けられ、前記一対のレール間の走行経路に供給された樹脂フィルムを把持する複数のクリップと、前記一対のチェーンを走行させるモータと、を備えた樹脂フィルム延伸装置の検査方法であって、前記モータによって前記一対のチェーンに付加されるトルクを算出するステップと、その算出結果に基づいて、前記複数のクリップの故障診断を行うステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
前記一実施の形態によれば、信頼性を向上させることが可能な樹脂フィルム延伸装置及びその検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る樹脂フィルム延伸装置の一部の構成例を示す概略平面図である。
図2】オープン状態のクリップの構成例を示す概略側面図である。
図3】クローズ状態のクリップの構成例を示す概略側面図である。
図4】実施の形態2に係る樹脂フィルム延伸装置の一部の構成例を示す概略平面図である。
図5】基準クリップの構成例を示す概略側面図である。
図6】表示部の画面に表示される3D画像を模式的に示す図である。
図7】表示部の画面に表示される2D画像を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、樹脂フィルム延伸装置1の一部の構成例を示す概略平面図である。樹脂フィルム延伸装置1は、樹脂フィルム10を複数のクリップで把持して幅方向に引っ張ることによって、当該樹脂フィルム10を幅方向に延伸する装置である。以下、具体的に説明する。
【0012】
図1に示すように、樹脂フィルム延伸装置1は、熱処理部(オーブン)30内に設けられ、レール11_1,11_2と、チェーン12_1,12_2と、クリップクローザ13_1,13_2と、クリップオープナ14_1,14_2と、複数のクリップ15_1,15_2と、制御部21と、インバータ22と、モータ23_1,23_2と、を備える。
【0013】
レール11_1,11_2は、樹脂フィルム10が搬送されるステージ上において、それぞれ環状に、かつ、当該樹脂フィルム10の搬送経路(走行経路)L1を挟むように対向配置されている。レール11_1,11_2上には、それぞれチェーン12_1,12_2が環状に設けられている。
【0014】
チェーン12_1には、所定の間隔を空けて複数のクリップ15_1が取り付けられている。また、チェーン12_2には、所定の間隔を空けて複数のクリップ15_2が取り付けられている。
【0015】
レール11_1,11_2に挟まれた樹脂フィルム10の走行経路L1の入口(樹脂フィルム10の供給口)には、クリップクローザ13_1,13_2が設置され、入口よりも幅の広い出口(樹脂フィルム10の排出口)には、クリップオープナ14_1,14_2が設置されている。
【0016】
クリップクローザ13_1は、チェーン12_1のチェーンホイールとしての役割を果たす。さらに、クリップクローザ13_1は、走行経路L1の入口付近において、チェーン12_1の走行に伴って当該クリップクローザ13_1を順次通過するオープン状態の複数のクリップ15_1を順次クローズしていく。順次クローズされる複数のクリップ15_1によって進行中の樹脂フィルム10の一方の側面が順次把持される。
【0017】
クリップクローザ13_2は、チェーン12_2のチェーンホイ-ルとしての役割を果たす。さらに、クリップクローザ13_2は、走行経路L1の入口付近において、チェーン12_2の走行に伴って当該クリップクローザ13_2を順次通過するオープン状態の複数のクリップ15_2を順次クローズしていく。順次クローズされる複数のクリップ15_2によって進行中の樹脂フィルム10の他方の側面が順次把持される。
【0018】
樹脂フィルム10は、樹脂フィルム10の走行経路L1の入口から当該入口よりも幅の広い出口にかけて搬送される。このとき、樹脂フィルム10は、その両側を把持した複数のクリップ15_1,15_2によって幅方向に引っ張られるため、幅方向に延伸する。
【0019】
クリップオープナ14_1は、クリップクローザ13_1とともに、チェーン12_1のチェーンホイールとしての役割を果たす。さらに、クリップオープナ14_1は、走行経路L1の出口付近において、チェーン12_1の走行に伴って当該クリップオープナ14_1を順次通過するクローズ状態の複数のクリップ15_1を順次オープンにしていく。それにより、走行経路L1の入口から出口まで樹脂フィルム10を把持していた複数のクリップ15_1は、順次樹脂フィルム10を解放する。
【0020】
クリップオープナ14_2は、クリップクローザ13_2とともに、チェーン12_2のチェーンホイールとしての役割を果たす。さらに、クリップオープナ14_2は、走行経路L1の出口付近において、チェーン12_2の走行に伴って当該クリップオープナ14_2を順次通過するクローズ状態の複数のクリップ15_2を順次オープンにしていく。それにより、走行経路L1の入口から出口まで樹脂フィルム10を把持していた複数のクリップ15_2は、順次樹脂フィルム10を解放する。
【0021】
インバータ22は、例えば制御部21によって制御され、モータ23_1,23_2を駆動する。モータ23_1は、例えばチェーンホイールとしての役割も果たすクリップオープナ14_1を回転させることによってチェーン12_1を走行させる。モータ23_2は、例えばチェーンホイールとしての役割も果たすクリップオープナ14_2を回転させることによってチェーン12_2を走行させる。
【0022】
図2は、オープン状態のクリップ15_1の構成例を示す概略側面図である。図3は、クローズ状態のクリップ15_1の構成例を示す概略側面図である。
【0023】
図2及び図3に示すように、クリップ15_1は、クリップ台151と、クリップ本体152と、ピン153と、クリップレバー154と、把持部155と、によって構成されている。
【0024】
クリップ台151は、レール11_1上に設置されている。クリップ本体152は、クリップ台151上に設置されている。なお、クリップ台151とクリップ本体152とによって形成された溝152aには、チェーン12_1が配置されている。また、クリップ本体152の側面には、樹脂フィルム10の挿入が可能な溝152bが形成されている。溝152bの開口部近傍には、クリップレバー154に連動する把持部155が設置されている。具体的には、クリップレバー154及び把持部155は、ピン153を用いて、クリップ本体152に取り付けられている。クリップレバー154を所定の方向に移動させることより、把持部155は、ピン153を回転軸にして所定の方向とは反対の方向に移動する。把持部155と溝152bの一部とによって、樹脂フィルム10を把持したり(図3参照)、樹脂フィルム10を解放したり(図2参照)する。
【0025】
クリップ15_2の構成については、基本的にはクリップ15_1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0026】
ここで、制御部21は、インバータ22の制御を行うだけでなく、複数のクリップ15_1,15_2の故障診断を行う診断部としての機能も有する。
【0027】
具体的には、制御部21は、モータ23_1,23_2によってチェーン12_1,12_2に付加されるトルク、及び、必要に応じてモータ23_1,23_2の回転速度を(例えば、インバータ22からモータ23_1,23_2に付加される駆動力などから)算出し、その算出結果に基づいて、複数のクリップ15_1,15_2の故障診断を行う。
【0028】
例えば、制御部21は、モータ23_1,23_2によってチェーン12_1,12_2に付加されるトルクが所定の閾値を超えた場合、経年劣化等によって複数のクリップ15_1,15_2の何れかに故障が発生している又はその恐れがあると判断する。
【0029】
制御部21による故障診断結果は、警告音として出力されたり、例えば図示しない表示部の画面に表示されたりする。それにより、ユーザは、制御部21によって故障が発生している又はその恐れがあると判断されたクリップを新しいクリップに交換すること等ができる。
【0030】
このように、本実施の形態にかかる樹脂フィルム延伸装置1は、モータ23_1,23_2によってチェーン12_1,12_2に付加されるトルクに基づいて、複数のクリップ15_1,15_2の故障診断を行う。それにより、本実施の形態にかかる樹脂フィルム延伸装置1は、目視でクリップの故障の有無を判断するよりも、正確に故障の有無を判断することができるとともに、故障の恐れがあるか否かを判断することもできるため、信頼性を向上させることができる。
【0031】
<実施の形態2>
図4は、実施の形態2にかかる樹脂フィルム延伸装置2の構成例を示す概略平面図である。図4に示す樹脂フィルム延伸装置2は、樹脂フィルム延伸装置1の場合と比較して、基準クリップ16_1と、センサ17_1をさらに備える。
【0032】
基準クリップ16_1は、複数のクリップ15_1の何れかに検知対象物であるドグ161を取り付けたものである(図5参照)。センサ17_1は、所謂近接センサであって、レール11_1の所定の位置に設置され、チェーン12_1の走行に伴って移動する基準クリップ16_1が当該センサ17_1を通過したことを検知する。
【0033】
制御部21は、センサ17_1によって基準クリップ16_1(より詳しくは基準クリップ16_1に取り付けられたドグ161)が検知されてから次に再び検知されるまでをチェーン12_1の一周当たりのトルクの情報として取得する。それにより、制御部21は、モータ23_1によってチェーン12_1に付加されるトルク及びそのときの複数のクリップ15_1の位置情報をより正確に取得することができるため、より信頼性の高い故障診断を行うことができる。
【0034】
制御部21による故障診断結果は、例えば図示しない表示部の画面に表示される。それにより、ユーザは、制御部21によって故障が発生している又はその恐れがあると判断されたクリップを新しいクリップに交換すること等ができる。
【0035】
ここで、制御部21は、トルク情報をチェーン一周単位で表示部の画面に3D表示させる。それにより、ユーザによる視認性が向上する。図6は、表示部の画面に表示される3D画像を模式的に示す図である。図6の例では、a軸が経過時間を表し、b軸がクリップ位置を表し、c軸がトルクを表している。図6を参照すると、時間の経過とともにトルクが増大していることが分かる。また、所定のクリップ位置において、それ以外のクリップ位置の場合よりもトルクが増大していることも分かる。つまり、図6に示すような3D表示により、図7に示すような2D表示の場合よりも、ユーザによる視認性が向上する。
【0036】
本実施の形態では、センサ17_1が近接センサである場合を例に説明したが、これに限られない。センサ17_1は、基準クリップ16_1を検知可能な任意のセンサに適宜変更可能である。
【0037】
また、本実施の形態では、複数のクリップ15_1の何れかにドグを取り付けることによって基準クリップ16_1が設けられた場合を例に説明したが、これに限られない。当然ながら、複数のクリップ15_2の何れかにドグを取り付けることによって基準クリップ16_2が設けられても良い。この場合、基準クリップ16_2を検知するセンサ17_2がさらに設けられる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0039】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 樹脂フィルム延伸装置
2 樹脂フィルム延伸装置
10 樹脂フィルム
11_1 レール
11_2 レール
12_1 チェーン
12_2 チェーン
13_1 クリップクローザ
13_2 クリップクローザ
14_1 クリップオープナ
14_2 クリップオープナ
15_1 クリップ
15_2 クリップ
16_1 基準クリップ
16_2 基準クリップ
17_1 センサ
17_2 センサ
21 制御部
22 インバータ
23_1 モータ
23_2 モータ
30 熱処理部(オーブン)
151 クリップ台
152 クリップ本体
152a 溝
153 ピン
154 クリップレバー
155 把持部
161 ドグ
L1 走行経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7