(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】開閉式支保工及び開閉式支保工の使用方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20230906BHJP
E04G 17/16 20060101ALI20230906BHJP
E04G 13/04 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
E02B3/06
E04G17/16
E04G13/04
(21)【出願番号】P 2019221484
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】前田 一成
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-187129(JP,A)
【文献】特開昭55-097909(JP,A)
【文献】特開平09-256339(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112853986(CN,A)
【文献】特開平10-204830(JP,A)
【文献】特開2001-172919(JP,A)
【文献】特開2005-113579(JP,A)
【文献】特開2004-052232(JP,A)
【文献】特開2018-168599(JP,A)
【文献】特開2002-081068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E04G 17/16
E04G 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に間隔をおいて配置された構造体間に設置される開閉式支保工であって、
前記構造体間に跨って設置される支保工基部と、該支保工基部の側部に回動可能に支持された支保工アームと、該支保工アームを回動させる回動手段と
、前記構造体間に跨って設置された前記支保工基部を前記構造体上で水平方向に移動させる水平位置調整手段とを備え、
前記支保工アームは、基端が前記支保工基部に枢支された回動腕部と、該回動腕部の先端側に上端が支持された支持腕部と、該支持腕部の下端より内向きに延出された挿し込み腕部とを備え、
前記支保工アームの回動によって前記挿し込み腕部が前記構造体の下方に挿し込まれるようにしたことを特徴とする開閉式支保工。
【請求項2】
前記回動手段は、一端が前記支保工基部に枢支され、他端が前記回動腕部に枢支されたシリンダ装置により構成されている請求項1に記載の開閉式支保工。
【請求項3】
前記支保工基部は、伸縮可能な複数の支持脚を備え、該支持脚を介して前記構造物上に設置される請求項1又は2に記載の開閉式支保工。
【請求項4】
前記水平位置調整手段は、
伸縮方向を前記支保工基部を設置した際の幅方向と平行な方向であって互いに異なる方向に向けた少なくとも一対の幅方向調整ジャッキと、伸縮方向を前記支保工基部を設置した際の長手方向と平行な方向であって互いに異なる方向に向けた少なくとも一対の長手方向調整ジャッキとを備え、
前記幅方向調整ジャッキ及び前記長手方向調整ジャッキが前記支保工基部を適正な設置位置に押し出すようにした
請求項1~3の何れか一に記載の開閉式支保工。
【請求項5】
前記支保工基部は、上下方向に貫通した開口部を備えている
請求項1~4の何れか一に記載の開閉式支保工。
【請求項6】
前記支保工アームに型枠部材が着脱可能に保持されている
請求項1~5の何れか一に記載の開閉式支保工。
【請求項7】
前記支保工アームに作業床板材が着脱可能に固定されている
請求項1~6の何れか一に記載の開閉式支保工。
【請求項8】
水平方向に間隔をおいて配置された構造体間に支保工を設置する開閉式支保工の使用方法において、
前記構造物体間に架設される支保工基部と、該支保工基部の側部に回動可能に支持された支保工アームと、該支保工アームを回動させる回動手段と
、前記支保工基部を前記構造体上で水平方向に移動させる水平位置調整手段とを備え、前記支保工アームには、基端が前記支保工基部に枢支された回動腕部と、該回動腕部の先端側に上端が支持された支持腕部と、該支持腕部の下端より内向きに延出された挿し込み腕部とを備えてなる開閉式支保工を使用し、
前記支保工アームを開いた状態で前記開閉式支保工を吊り上げ、前記構造体間の上方に移動させ、その位置で前記開閉式支保工を下降させて前記支保工基部を前記構造体間に跨って設置した後
、前記水平位置調整手段によって前記支保工基部を水平方向に移動させ、前記開閉式支保工の水平方向位置を調整し、然る後、前記支保工アームを回動させて前記挿し込み腕部を前記構造体の下方に挿し込むことを特徴とする開閉式支保工の使用方法。
【請求項9】
前記支保工基部を伸縮可能な複数の支持脚を介して前記構造体上に設置し、支保工の高さを調整する
請求項8に記載の開閉式支保工の使用方法。
【請求項10】
前記構造物は、互いに水平方向に間隔をおいて配置された構造体を備え、
前記支保工アームに型枠部材を着脱可能に保持しておき、前記支保工基部を前記構造体間に跨って設置した後、前記支保工アームを回動させ、前記型枠部材で前記構造体間の側面及び/又は底面を閉鎖する
請求項8又は9に記載の開閉式支保工の使用方法。
【請求項11】
前記支保工アームに
作業床板材を着脱可能に保持させておき、前記支保工アームを回動させ、前記構造体間の下側に作業用床を形成し、しかる後、前記作業用床を用いて前記構造体間に型枠部材を設置する
請求項8又は9に記載の開閉式支保工の使用方法。
【請求項12】
前記支保工基部に上下に貫通した開口部を備え、該開口部を通して前記支保工基部下の型枠部材内にコンクリートを打設する
請求項10又は11に記載の開閉式支保工の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隔をおいて設置される構造体間に設置される開閉式支保工及び開閉式支保工の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、桟橋等の構築では、鉄筋コンクリート造の梁部を構成する複数のプレキャストコンクリート部材を予め陸上の工場又は製作ヤードで製造し、それを施工現場に搬送し、鋼管杭の頭部に当該プレキャストコンクリート部材を支持させた後、各プレキャストコンクリート部材間を場所打ちコンクリートからなるコンクリート連結部により連結することでコンクリート製の梁部を構築する工法が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
その場合、コンクリート連結部は、設置された隣り合うプレキャストコンクリート部材間に型枠設置用の支保工を仮設し、その支保工に型枠を支持させるとともに、型枠内に鉄筋を配設し、しかる後、型枠内に場所打ちコンクリートを打設することにより各プレキャストコンクリート部材間を連結していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、コンクリート連結部を形成する際、プレキャストコンクリート部材間に足場兼用支保工を仮設し、その仮設の足場兼用支保工を用いて、型枠の組立て・解体(脱型)、鉄筋の配設、コンクリートの打設・養生等の一連の作業を行わなければならなかった。
【0006】
この足場兼用支保工の設置から解体撤去に至るまでの一連の作業は、海上で行わなければならず、海象・気象条件の影響を受けるという問題があり、迅速かつ効率的に行うことが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、間隔をおいて設置された構造体間に迅速且つ効率的に支保工を設置することができる開閉式支保工及び開閉式支保工の使用方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、水平方向に間隔をおいて配置された構造体間に設置される開閉式支保工であって、前記構造体間に跨って設置される支保工基部と、該支保工基部の側部に回動可能に支持された支保工アームと、該支保工アームを回動させる回動手段と、前記構造体間に跨って設置された前記支保工基部を前記構造体上で水平方向に移動させる水平位置調整手段とを備え、前記支保工アームは、基端が前記支保工基部に枢支された回動腕部と、該回動腕部の先端側に上端が支持された支持腕部と、該支持腕部の下端より内向きに延出された挿し込み腕部とを備え、前記支保工アームの回動によって前記挿し込み腕部が前記構造体の下方に挿し込まれるようにしたことにある。
【0009】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記回動手段は、一端が前記支保工基部に枢支され、他端が前記回動腕部に枢支されたシリンダ装置により構成されていることにある。
【0010】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記支保工基部は、伸縮可能な複数の支持脚を備え、該支持脚を介して前記構造物上に設置されることにある。
【0011】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1~3の何れか一の構成に加え、前記水平位置調整手段は、伸縮方向を前記支保工基部を設置した際の幅方向と平行な方向であって互いに異なる方向に向けた少なくとも一対の幅方向調整ジャッキと、伸縮方向を前記支保工基部を設置した際の長手方向と平行な方向であって互いに異なる方向に向けた少なくとも一対の長手方向調整ジャッキとを備え、前記幅方向調整ジャッキ及び前記長手方向調整ジャッキが前記支保工基部を適正な設置位置に押し出すようにしたことにある。
【0012】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1~4の何れか一の構成に加え、前記支保工基部は、上下方向に貫通した開口部を備えていることにある。
【0013】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1~5の何れか一の構成に加え、前記支保工アームに型枠部材が着脱可能に保持されていることにある。
【0014】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項1~6の何れか一の構成に加え、前記支保工アームに作業床板材が着脱可能に固定されていることにある。
【0015】
請求項8に記載の発明の特徴は、水平方向に間隔をおいて配置された構造体間に支保工を設置する開閉式支保工の使用方法において、前記構造物体間に架設される支保工基部と、該支保工基部の側部に回動可能に支持された支保工アームと、該支保工アームを回動させる回動手段と、前記支保工基部を前記構造体上で水平方向に移動させる水平位置調整手段とを備え、前記支保工アームには、基端が前記支保工基部に枢支された回動腕部と、該回動腕部の先端側に上端が支持された支持腕部と、該支持腕部の下端より内向きに延出された挿し込み腕部とを備えてなる開閉式支保工を使用し、前記支保工アームを開いた状態で前記開閉式支保工を吊り上げ、前記構造体間の上方に移動させ、その位置で前記開閉式支保工を下降させて前記支保工基部を前記構造体間に跨って設置した後、前記水平位置調整手段によって前記支保工基部を水平方向に移動させ、前記開閉式支保工の水平方向位置を調整し、然る後、前記支保工アームを回動させて前記挿し込み腕部を前記構造体の下方に挿し込むことにある。
【0016】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項8の構成に加え、前記支保工基部を伸縮可能な複数の支持脚を介して前記構造体上に設置し、支保工の高さを調整することにある。
【0017】
請求項10に記載の発明の特徴は、請求項8又は9の構成に加え、前記構造物は、互いに水平方向に間隔をおいて配置された構造体を備え、前記支保工アームに型枠部材を着脱可能に保持しておき、前記支保工基部を前記構造体間に跨って設置した後、前記支保工アームを回動させ、前記型枠部材で前記構造体間の側面及び/又は底面を閉鎖することにある。
【0018】
請求項11に記載の発明の特徴は、請求項8又は9の何れか一の構成に加え、前記支保工アームに作業床板材を着脱可能に保持させておき、前記支保工アームを回動させ、前記構造体間の下側に作業用床を形成し、しかる後、前記作業用床を用いて前記構造体間に型枠部材を設置することにある。
【0019】
請求項12に記載の発明の特徴は、請求項10又は11の構成に加え、前記支保工基部に上下に貫通した開口部を備え、該開口部を通して前記支保工基部下の型枠部材内にコンクリートを打設することにある。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る開閉式支保工は、請求項1に記載の構成を具備することによって、水上や空中に水平方向に間隔をおいて配置された構造体を有する桟橋や橋梁等の構造物に支保工を効率よく設置することができる。
【0021】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、支保工アームを簡易な構造で回動させることができる。
【0022】
本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、支保工基部の高さ及びレベルを好適に調整し、構造体に対し支保工アームを適正な高さ及びレベルで設置することができる。
【0023】
本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、支保工基部の水平位置を調整し、構造体に対し支保工アームを適正な水平位置に設置することができる。
【0024】
本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、支保工基部下の状況を視認することができるとともに、開口部を通して支保工基部下に配置された型枠に対し上部からのコンクリート打設作業が容易になる。
【0025】
本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、支保工の設置と同時に型枠の設置を行うことができる。
【0026】
本発明において、請求項7に記載の構成を具備することによって、支保工の設置と同時に作業用床及び安全通路の設置を行うことができる。
【0027】
本発明に係る開閉式支保工の使用方法は、請求項8に記載の構成を具備することによって、水上や空中に水平方向に間隔をおいて配置された構造体を有する桟橋や橋梁等の構造物に支保工を効率よく設置することができる。また、支保工基部の水平位置を調整し、構造体に対し支保工アームを適正な水平位置に設置することができる。
【0028】
本発明において、請求項9に記載の構成を具備することによって、支保工基部の高さ及びレベルを好適に調整し、構造体に対し支保工アームを適正な高さ及びレベルで設置することができる。
【0029】
本発明において、請求項10に記載の構成を具備することによって、支保工の設置と同時に型枠の設置を行うことができる。
【0030】
本発明において、請求項11に記載の構成を具備することによって、支保工の設置と同時に作業用床及び安全通路を設置でき、配筋作業を効率よく行うことができるとともに、型枠部材の設置を安全に行うことができる。
【0031】
本発明において、請求項12に記載の構成を具備することによって、支保工基部下の状況を視認することができるとともに、開口部を通して支保工基部下に配置された型枠に対し上部からのコンクリート打設作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る開閉式支保工の一例を示す正面図である。
【
図3】
図2中の支保工アームを閉じた状態のA-A線断面図である。
【
図4】同上の支保工アームを開いた状態の断面図である。
【
図5】本発明に係る開閉式支保工の使用方法によって支保工を設置する構造物を示す平面図である。
【
図6】同上の開閉式支保工の設置作業の状態を示す正面図である。
【
図8】同上の開閉式支保工の使用方法における開閉式支保工を構造物上に載荷した状態を示すB-B線断面図である。
【
図9】同上の水平方向位置調整作業の状態を示す断面図である。
【
図10】同上の支保工基部の水平方向位置調整作業を説明するための概略平面図であって、(a)は初期設置状態、(b)はx方向位置調整作業の状態、(c)は同y方向位置調整作業の状態を示す図である。
【
図11】同上の支保工アームを閉じた状態を示す断面図である。
【
図12】同上の上下方向位置調整作業の状態を示す断面図である。
【
図13】同上の開閉式支保工を構造物上に設置した状態を示す正面図である。
【
図14】同上の開閉式支保工を構造物上に設置した状態を示す平面図である。
【
図15】同上の開閉式支保工の撤去作業の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明に係る開閉式支保工の実施態様を
図1~
図5示した実施例に基づいて説明する。
【0034】
開閉式支保工1は、
図1~
図4に示すように、水平方向に間隔をおいて配置された構造体2,2間に跨って設置される支保工基部3と、支保工基部3の両側部に回動可能に支持された複数の支保工アーム4,4…と、支保工アーム4,4…を回動させる回動手段とを備え、支保工アーム4,4…が回動することによって開閉できるようになっている。
【0035】
また、この開閉式支保工1には、支保工基部3を構造体2,2上で水平方向に移動させる水平位置調整手段を備え、構造体2,2に対し水平方向の位置調整をできるようになっている。
【0036】
尚、本実施例の説明において、x方向とは、支保工基部3の設置した際の支保工基部3の長手方向を基準としてそれと平行な水平方向をいい、y方向とは、支保工基部3の設置した際の支保工基部3の短手方向(幅方向)を基準としてそれと平行な水平方向をいうものとする。
【0037】
支保工基部3は、水平方向に長い直方体状に形成され、支保工基部長手方向両端部下面にそれぞれ伸縮可能な複数の支持脚5,5…を備え、支持脚5,5…を介して両構造体2,2上に設置され、支保工基部3の上面が足場としても機能するようになっている。
【0038】
さらに、支保工基部3には、
図2に示すように、上下方向に貫通した開口部6を備え、開口部6を通して支保工基部3下の状況を視認できるようになっている。
【0039】
尚、開口部6は、一又は複数のグレーチング材7等が固定されており、視野を確保した状態でその上面部を作業員等が移動できるようになっている。尚、グレーチング部材7は、必要に応じて着脱できるようになっており、例えば、構造体間にコンクリートを打設する際、グレーチング部材7を取り外すことによって、支保工基部3の上方から開口部6を通してコンクリートを打設できる。
【0040】
また、支保工基部3の長手方向両端部には、昇降用階段8,8が回動可能に固定されており、未使用時には、支保工基部3上面に畳まれて載置された状態にあり、設置後にこの昇降用階段8,8を展開することによって、構造体2,2の上面と支保工基部3の上面との間を昇降できるようになっている。尚、図中符号9は、支保工基部3の両側部に設置された転倒・転落防止柵である。
【0041】
さらに、支保工基部3には、上面の互いに間隔をおいた位置に複数の吊り具10,10…が固定され、開閉式支保工1全体をクレーンや起重機船等によって吊り上げられるようになっている。尚、図中符号11は吊り上げ用のワイヤである。
【0042】
支持脚5,5…は、支保工基部3の下面に上端が固定された上脚部12と、上脚部12にスライド可能に支持された下脚部13とを備え、油圧シリンダ等のシリンダ機構(図示せず)によって上脚部12と下脚部13とが上下方向に相対移動することによって所望の伸縮量で伸縮するようになっている。
【0043】
また、各支持脚5,5…は、それぞれ独立して伸縮量を制御でき、各支持脚5,5…を伸縮させることによって支保工基部3の高さ調整及びレベル調整ができるようになっている。
【0044】
下脚部13は、下端部に固定された矩形台状の押圧部14を備え、側面からのジャッキによる押圧に耐え得る強度を有している。
【0045】
尚、各構造体2,2上には、
図5に示すように、鋼板等からなる平坦な載置版15が所定の位置に固定されており、下脚部13の中心を載置版15の中心位置に合わせて載置させることによって、支保工基部3を構造体2上の所定の位置に設置できるようになっている。
【0046】
尚、載置版15は、押圧部14の下面よりも大きな矩形状に形成され、支持脚5,5…が載置版15上を一定距離移動することを許容している。そして、支保工基部3は、水平位置調整手段によって支持脚5,5…が載置版15上を移動することによって構造体2,2上を水平移動できるようになっている。
【0047】
水平位置調整手段は、伸縮方向をy方向で互いに異なる方向に向けた少なくとも一対の幅方向調整ジャッキ16,17と、伸縮方向をx方向で互いに異なる方向に向けた少なくとも一対の長手方向調整ジャッキ18,19とを備え、幅方向調整ジャッキ16,17及び長手方向調整ジャッキ18,19が支保工基部3をxy水平方向の適正な設置位置に押し出すようになっている。
【0048】
長手方向調整ジャッキ18,19及び幅方向調整ジャッキ16,17は、
図5に示すように、構造体2上に固定された受け部20と、受け部20に固定された伸縮可能なジャッキ本体21,21とを備え、各ジャッキ本体21,21が受け部20に支持された状態でxy水平方向に伸縮するようになっている。
【0049】
対を成す幅方向調整ジャッキ16,17は、y方向に間隔をおいて配置され、互いにジャッキ本体21,21側を対向させた配置に設置され、対を成す長手方向調整ジャッキ18,19は、x方向に間隔をおいて配置され、互いにジャッキ本体21,21側を対向させた配置に設置されている。
【0050】
具体的には、各載置版15の隣り合う外辺側にそれぞれ幅方向調整ジャッキ16,17及び長手方向調整ジャッキ18,19が配置され、対を成す幅方向調整ジャッキ16,17及び長手方向調整ジャッキ18,19がy方向及びx方向で互いに間隔をおいて対向する配置となっている。
【0051】
そして幅方向調整ジャッキ16,17及び長手方向調整ジャッキ18,19は、ジャッキ本体21,21を伸長させた際の先端から載置版15中心までの距離と、支持脚5,5…の中心から押圧部14の外側面までの距離とが同じ距離となっており、ジャッキ本体21,21が作動すると、対を成す一方のジャッキが支持脚5,5…の押圧部14側面を押圧するとともに、他方がストッパーとなって支持脚5,5…を載置版15の中心位置に移動させ、支保工基部3の位置を適正な位置に調整する。
【0052】
一方、支保工基部3には、側面部に長手方向に間隔を置いて板状の基部側枢支部22が固定され、基部側枢支部22に各支保工アーム4,4…が回動軸23を介して枢支されている。
【0053】
基部側枢支部22は、山形板状に形成され、板厚方向を支保工基部3の長手方向に向けて支保工基部3の側面に頂部を外側に向けて突設され、互いに支保工基部3の長手方向に間隔をおいて配置されている。
【0054】
支保工アーム4,4…は、基端が支保工基部3の側面部に枢支された回動腕部30と、回動腕部30の先端側に上端が支持された支持腕部31と、支持腕部31の下端より内向きに延出された挿し込み腕部32とを備え、回動動作によって挿し込み腕部32が構造体2,2間の下方に挿し込まれる位置と挿し込み腕部32の先端部が構造体2,2間の下方より引き出された位置との間を移動できるようになっている。
【0055】
回動腕部30は、H型、ロ字型等の断面を有する高い剛性の梁状に形成され、基端部にストッパー部材33と、ストッパー部材33に突設された板状の腕側枢支部34とを備え、腕側枢支部34と、基部側枢支部22とを支保工基部3の長手方向に向けた回動軸23が貫通し、支保工基部3に対して回動軸23を介して回動自在に連結され、回動手段によって回動するようになっている。
【0056】
回動手段には、油圧シリンダやエアシリンダ等のシリンダ装置35を使用し、シリンダ装置35の一端が支保工基部3の側部上面に固定されたシリンダ枢支部材36に上下方向に回動自在に枢支され、他端が回動腕部30の先端側上面部に固定されたシリンダ枢支部材37に上下方向に回動自在に枢支されている。
【0057】
各シリンダ装置35は、制御手段によって伸縮動作が制御され、互いに同期して動作するようになっている。
【0058】
また、回動腕部30は、
図4に示すように、ストッパー部材33が基部側枢支部22に形成された山形側面に当接することによって回動角度が規制されるようになっている。
【0059】
各支持腕部31は、H型、ロ字型等の断面を有する高い剛性の柱状に形成され、回動腕部30の先端部より垂直下向きに延出され、その下端に挿し込み腕部32の基端が支持され、支持腕部31を介して回動腕部30と挿し込み腕部32とが互いに平行に配置されている。
【0060】
また、支保工基部3の長手方向に間隔をおいて配置された各支持腕部31は、外側面が連結棒材38,38によって連結され、各支保工アーム4,4…が同期して回動するようにしている。尚、支持腕部31の形状は、一方向に長い柱状に限定されず、例えば、側面視く字状等であってもよい。
【0061】
挿し込み腕部32は、H型、ロ字型等の断面を有する高い剛性の梁状であって、回動腕部30より長く形成され、支保工アーム4,4…を閉じた際に、支保工基部3を介して対称に配置された支保工アーム4,4の先端部が互いに突き合わされるとともに、互いに突き合わされる挿し込み腕部32の何れか一方の先端に固定された爪部39が他方の端部と係合するようになっている。
【0062】
また、挿し込み腕部32の上面には、支保工基部3の長手方向に間隔をおいて配置された複数の挿し込み腕部32に跨って作業床板材40が挿し込み腕部32の幅に合わせて固定され、それぞれ支保工基部3を介して対象に配置された各支保工アーム4,4…を閉じた際に作業床板材40が互いに突き合わされて挿し込み腕部32上に作業用床が形成されるようになっている。尚、この作業用床は、安全通路としても使用することができる。
【0063】
また、作業床板材40上には、平板状の底板部41aと、底板部41aの側縁より垂直に立ち上がった側板部41bとを有する断面L字形の型枠部材41が着脱可能に固定されている。
【0064】
この型枠部材41は、側板部41bを外側に向けるとともに、底板部41aの側板部41bとは反対側の側縁を作業床板材40の内側縁の位置に合わせて固定され、それぞれ支保工基部3の両側に枢支された各支保工アーム4,4…を閉じた際に両型枠部材41の底板部41aが互いに突き合わされ、断面U字状の型枠が形成されるようになっている。
【0065】
次に、このような開閉式支保工1を使用した開閉式支保工の使用方法について
図5~
図16に基づいて説明する。本実施例では、型枠部材41として、梁コンクリートのかぶり部分をプレキャスト化し、撤去不要な埋設型枠を用いる場合を例に説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
また、本実施例では、桟橋等の杭柱状体50,50の頭部に支持され、互いに間隔をおいて設置された構造体2,2を有する構造物であって、構造体2,2間に開閉式支保工1を設置し、開閉式支保工1を使用して構造体2,2間に場所打ちコンクリートによる梁部51を形成する場合を例に説明する。
【0067】
尚、図中符号52は、各構造体2,2の端面より突出した鉄筋であって、突出した鉄筋52,52…の先端部間が未連結の状態になっている。
【0068】
開閉式支保工1を設置するには、先ず、
図5に示すように、各構造体2,2上の所定の位置に載置版15を固定するとともに、載置版15の側部にそれぞれ幅方向調整ジャッキ16,17及び長手方向調整ジャッキ18,19を設置する。
【0069】
次に、開閉式支保工1をクレーンや起重機船によって吊り上げ、開閉式支保工1を構造物上に移動させる。尚、開閉式支保工1を移動させる際は、支保工アーム4,4…は開いた状態であることが望ましい。
【0070】
そして、開閉式支保工1を構造物上に移動させたら、
図6、
図7に示すように、支保工アーム4,4…を開いた状態で下降させ、
図8に示すように、各支持脚5,5…の位置を設置された載置版15の位置に合わせて支保工基部3を構造2,2間に跨って設置する。
【0071】
その際、支保工アーム4,4…が開いた状態であるので、支保工アーム4,4…の挿し込み腕部32,32が構造体2,2の側面及び対向する端面より水平方向に突出した鉄筋52,52の外側を通過し、構造体2,2間に形成される空間の下側まで移動する。
【0072】
次に、水平位置調整手段によって支保工基部3を適正な位置に移動させる。尚、本実施例では、
図10(a)に示すように、載置版15に対し支持脚5,5…がxy方向の一方に片寄った状態で載置されているものとする。
【0073】
具体的な位置調整は、
図10(b)に示すように、互いにx方向で対向する対となる長手方向調整ジャッキ18,19を作動すると、載置版15上に載置された支持脚5,5…の押圧部14のx方向の外側面を一方の長手方向調整ジャッキ18が押圧することにより、支保工基部3がx方向に移動し、支持脚5,5…の中心が載置版15のx方向中心位置まで移動すると、他方の長手方向調整ジャッキ19に当接する。
【0074】
次に、
図10(c)に示すように、各幅方向調整ジャッキ16,17を作動すると、載置版15上に載置された押圧部14のy方向の外側面を一方の幅方向調整ジャッキ16が押圧することにより、支保工基部3がy方向に移動し、支持脚5,5…の中心が載置版15のy方向中心位置まで移動すると、他方の幅方向調整ジャッキ17に当接する。
【0075】
これにより、支持脚5,5…の中心が載置版15の中心位置に移動し、支保工基部3の水平方向位置が構造物(各構造体2,2)に対し適正な位置に調整される。
【0076】
次に、
図11に示すように、回動手段によって支保工アーム4,4…を回動させ、挿し込み腕部32を構造体2,2間の下に挿し込み、挿し込み腕部32の先端部を互いに突き合わせて支保工アーム4,4…を閉じる。
【0077】
支保工アーム4,4…を閉じると、挿し込み腕部32の上面に固定された作業床板材40が互いに突き合わされて構造物(構造体2,2間の鉄筋群下方)に作業用床が形成されるとともに、型枠部材41が互いに突き合わされて断面U字状の型枠が形成される。
【0078】
その際、支保工基部3の水平方向位置が適正な位置に調整されているので、型枠部材41の側板部41bが構造体2,2の側面に対し適正な位置で接触し、支保工アーム4,4…を閉じることができる。
【0079】
そして、
図12に示すように、各支持脚5,5…の高さを調整し、支保工基部3の高さ及びレベルを調整することによって、構造体2,2間に形成された空間の側面及び下面が型枠部材41によって閉鎖される。
【0080】
型枠部材41の配置が完了したら、必要に応じて型枠部材41を構造体2,2に固定するとともに、型枠部材41と構造体2,2との間をシール材等によって封鎖する。
【0081】
次に、
図13、
図14に示すように、昇降用階段8,8を展開して構造体2,2上と支保工基部3の上面との間で昇降できるようにするとともに、転倒・転落防止柵9間に昇降梯子54を設置し、支保工基部3上から作業床板材40上面との間の昇降をできるようにし、開閉式支保工1の設置が完了する。
【0082】
そして、この状態で作業用床を利用して鉄筋52,52の連結作業を行うとともに、互いに連結された鉄筋群の外周部をフープ筋53によって拘束する。
【0083】
配筋作業完了後は、型枠部材41,41内にコンクリート55を打設し、構造体2,2間を連結するコンクリート製の梁部50を形成する。
【0084】
その際、支保工基部3には、上下方向に貫通した開口部6が形成されているので、開口部6より支保工基部3下の状況を視認することができ、また、開口部6に設置されたグレーチング部材7を取り外すことにより、開口部6を通して型枠部材41,41内の状況を視認しつつ、コンクリートの打設を行うことができる。尚、開口部6に複数のグレーチング部材7が設置されている場合には、必要な箇所だけを取り外して、コンクリート打設用の開口を確保することによって、安全に作業を行うことができる。
【0085】
一方、この開閉式支保工1を撤去するには、型枠部材41を支保工アーム4,4…より取り外した後、昇降梯子54を取り外すとともに昇降用階段8,8を回動させて支保工基部3の上面に載置する。
【0086】
次に、
図15、
図16に示すように、吊り上げ用のワイヤ11を支保工基部3の吊り具10に連結して吊り上げ可能な状態とし、回動手段によって支保工アーム4,4…を回動させ、挿し込み腕部32を構造体2,2間の下方より引き出した位置まで移動させる。
【0087】
そして、その状態で支保工基部3をクレーンや起重機船によって上方に吊り上げ、各支保工アーム4,4…を形成された梁部51の側方を移動させつつ、開閉式支保工1全体を構造体2,2の上方まで移動させた後に撤去する。
【0088】
このように構成された開閉式支保工1は、支保工アーム4,4が支保工基部3を介して挿し込み腕部32,32が互いに離反する方向に回動し、開閉することができるので、梁状の構造物の側面及び下面に支保工を迅速且つ円滑に設置することができる。
【0089】
また、この開閉式支保工1は、上下方向及び水平方向の位置調整を容易に行うことができ、構造物に対して適正な位置に設置することができる。
【0090】
尚、水平位置調整手段の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、ジャッキ本体21,21を支持脚5側に固定し、受け部20に向けて伸長させてもよく、また、幅方向調整ジャッキ16,17及び長手方向調整ジャッキ18,19を構造体2の高い位置に設置して支保工基部3の端面及び側面を押圧するようにしてもよい。
【0091】
さらに、水平位置調整手段は、支保工基部3又は支持脚5に自走式の車輪やクローラ等を備え、自走するようにしたものであってもよい。
【0092】
尚、本発明の態様は、上述の実施例に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。
【0093】
たとえば、挿し込み腕部32の上面に作業床板材40だけを固定しておき、開閉式支保工1を既設構造体2、2間に設置した後、支保工アーム4,4…を閉じ作業用床を形成し、しかる後、鉄筋52,52の配設を行い、型枠部材41は、鉄筋組が終了したあとで作業床用板材40上に設置し、梁部形成後に撤去するようにしても良い。
【0094】
また、型枠部材41は特定の大きさに限定されず、さまざまなサイズの梁に対応可能となっている。
【符号の説明】
【0095】
1 開閉式支保工
2 構造体
3 支保工基部
4 支保工アーム
5 支持脚
6 開口部
7 金網
8 昇降用階段
9 転倒・転落防止柵
10 吊り具
11 ワイヤ
12 上脚部
13 下脚部
14 押圧部
15 載置版
16,17 幅方向調整ジャッキ
18,19 長手方向調整ジャッキ
20 受け部
21 ジャッキ本体
22 基部側枢支部
23 回動軸
30 回動腕部
31 支持腕部
32 挿し込み腕部
33 ストッパー部材
34 腕側枢支部
35 シリンダ装置
36,37 シリンダ枢支部材
38 連結棒材
39 爪部
40 作業床板材
41 型枠部材
50 杭柱状体
51 梁部
52 鉄筋
53 フープ筋
54 昇降梯子