(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】撮像素子および電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20230906BHJP
H04N 5/33 20230101ALI20230906BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20230906BHJP
【FI】
H01L27/146 F
H01L27/146 A
H04N5/33
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2019501200
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2018004155
(87)【国際公開番号】W WO2018155183
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2017030375
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 三佐男
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】恩田 春香
【審判官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-164870(JP,A)
【文献】特開2016-96233(JP,A)
【文献】特開2009-168742(JP,A)
【文献】特開2012-204402(JP,A)
【文献】特開2010-67827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L27/146
H04N 5/33
H04N25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光電変換部を有する画素領域と、
所定の電位に接続された第2光電変換部を有する画素外領域と、
一方の面に前記第1光電変換部および前記第2光電変換部が設けられるとともに、前記第1光電変換部に電気的に接続された周辺回路を有する回路基板とを備え、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部は化合物半導体を含み、
前記第1光電変換部は、発生した信号電荷が移動する、画素毎に設けられた第1導電型領域と、前記画素領域の全面に亘って設けられた、前記第1導電型領域とは異なる導電型の第2導電型領域とを有
し、
平面視で前記周辺回路に重なる領域に、前記第2光電変換部が設けられ、
前記回路基板は、前記第2光電変換部と前記周辺回路との間を前記回路基板の面内方向に延伸し、前記第2光電変換部と電気的に接続され、前記第2光電変換部で発生した電荷の排出経路となる配線をさらに有する
撮像素子。
【請求項2】
前記第1光電変換部と前記第2光電変換部とは電気的に分離されている
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記第2光電変換部の構成材料は、前記第1光電変換部の構成材料と同じである
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記第2光電変換部は、少なくとも前記第1光電変換部の感度波長帯と同じ感度波長帯を有する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部は、赤外領域の波長の光を吸収して電荷を発生する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部はIII-V族半導体を含む
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記III-V族半導体はInGaAsである
請求項6に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記回路基板には画素毎に画素回路が設けられ、
前記画素回路に、前記第1導電型領域が電気的に接続されている
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項9】
更に、前記第1光電変換部を間にして、前記回路基板に対向する第1電極を有する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項10】
更に、前記第2光電変換部を間にして、前記回路基板に対向する第2電極を有する
請求項9に記載の撮像素子。
【請求項11】
前記第1電極と前記第2電極とが一体的に設けられている
請求項10に記載の撮像素子。
【請求項12】
前記第1電極と前記第2電極とが電気的に分離して設けられている
請求項10に記載の撮像素子。
【請求項13】
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部はフォトダイオードである
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項14】
前記所定の電位は、電源または、グラウンド(GND)電位である
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項15】
第1光電変換部を有する画素領域と、
所定の電位に接続された第2光電変換部を有する画素外領域と、
一方の面に前記第1光電変換部および前記第2光電変換部が設けられるとともに、前記第1光電変換部に電気的に接続された周辺回路を有する回路基板とを備え、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部は化合物半導体を含み、
前記第1光電変換部は、発生した信号電荷が移動する、画素毎に設けられた第1導電型領域と、前記画素領域の全面に亘って設けられた、前記第1導電型領域とは異なる導電型の第2導電型領域とを有
し、
平面視で前記周辺回路に重なる領域に、前記第2光電変換部が設けられ、
前記回路基板は、前記第2光電変換部と前記周辺回路との間を前記回路基板の面内方向に延伸し、前記第2光電変換部と電気的に接続され、前記第2光電変換部で発生した電荷の排出経路となる配線をさらに有する
撮像素子を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば赤外センサ等に用いられる撮像素子および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外領域に感度を有する撮像素子(赤外線センサ)が商品化されている。例えば、特許文献1では、このような赤外線センサにInGaAs(インジウムガリウム砒素)等のIII-V族半導体を光電変換部として用いることが記載されている。この光電変換部において、赤外線が吸収されることで電荷が発生する(光電変換が行われる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
このような撮像素子では、画質の低下を抑えることが望まれている。
【0005】
したがって、画質の低下を抑えることが可能な撮像素子および電子機器を提供することが望ましい。
【0006】
本技術の一実施の形態に係る撮像素子は、第1光電変換部を有する画素領域と、所定の電位に接続された第2光電変換部を有する画素外領域と、一方の面に第1光電変換部および第2光電変換部が設けられるとともに、第1光電変換部に電気的に接続された周辺回路を有する回路基板とを備えたものであり、第1光電変換部および第2光電変換部は化合物半導体を含み、第1光電変換部は、発生した信号電荷が移動する、画素毎に設けられた第1導電型領域と、画素領域の全面に亘って設けられた、第1導電型領域とは異なる導電型の第2導電型領域とを有し、平面視で周辺回路に重なる領域に、第2光電変換部が設けられ、回路基板は、第2光電変換部と周辺回路との間を回路基板の面内方向に延伸し、第2光電変換部と電気的に接続され、第2光電変換部で発生した電荷の排出経路となる配線をさらに有する。
【0007】
本技術の一実施の形態に係る電子機器は、本技術の一実施の形態に係る撮像素子を備えたものである。
【0008】
本技術の一実施の形態に係る撮像素子および電子機器では、画素外領域に、所定の電位に接続された第2光電変換部が設けられているので、画素外領域で発生した光および画素外領域に入射した光は、画素領域に入射した光とは別に光電変換され、所定の電位に排出される。
【0009】
本技術の一実施の形態に係る撮像素子および電子機器によれば、画素外領域に、所定の電位に接続された第2光電変換部を設けるようにしたので、画素外領域で発生した光および画素外領域に入射した光が、画素領域に影響を及ぼすのを抑えることができる。よって、画質の低下を抑えることが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本技術の第1の実施の形態に係る撮像素子の概略構成を表す平面図である。
【
図2】
図1に示した撮像素子の機能構成の一例を表すブロック図である。
【
図3】
図1に示した撮像素子の概略構成を表す分解斜視図である。
【
図4】
図1に示したIV-IV線に沿った断面構成を模式的に表す図である。
【
図5】
図4に示した光電変換層の構成を模式的に表す平面図である。
【
図6】
図4に示した撮像素子がパッケージされた状態の一例を表す断面図である。
【
図7】
図4に示した撮像素子の動作について説明するための断面模式図である。
【
図8】比較例に係る撮像素子の構成を模式的に表す断面図である。
【
図9】
図8に示した撮像素子の画素外領域に入射する光について説明するための断面模式図である。
【
図10】
図6に示した撮像素子の効果について説明するための断面模式図(1)である。
【
図11】
図6に示した撮像素子の効果について説明するための断面模式図(2)である。
【
図12】変形例1に係る撮像素子の概略構成を表す断面図である。
【
図13】変形例2に係る撮像素子の概略構成を表す断面図である。
【
図14】変形例3に係る撮像素子の概略構成を表す断面図である。
【
図15】変形例4に係る撮像素子の概略構成を表す断面図である。
【
図16】変形例5に係る撮像素子の概略構成を表す断面図である。
【
図17】第2の実施の形態に係る撮像素子の概略構成を表す断面図である。
【
図18】
図17に示した配線層および半導体層の構成の一例を模式的に表す断面図である。
【
図19】
図17に示した撮像素子の画素回路の一例を表す図である。
【
図20】
図1等に示した撮像素子を用いた電子機器(カメラ)の一例を表す機能ブロック図である。
【
図21】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図22】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図23】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図24】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【
図25】
図2に示した行走査部の構成の他の例を示す平面図である。
【
図26A】
図3に示した半導体基板の構成の他の例(1)を表す平面図である。
【
図26B】
図3に示した回路基板の構成の他の例(1)を表す平面図である。
【
図27A】
図3に示した半導体基板の構成の他の例(2)を表す平面図である。
【
図27B】
図3に示した回路基板の構成の他の例(2)を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(画素外領域に第2光電変換部を設けた撮像素子の例)
2.変形例1(第2光電変換部には、透明電極から所定の電位を供給する例)
3.変形例2(画素領域と画素外領域とで透明電極が分離されている例)
4.変形例3(画素領域と画素外領域とで透明電極を分離し、かつ、第2光電変換部には、透明電極から所定の電位を供給する例)
5.変形例4(画素領域のみに透明電極を設けた例)
6.変形例5(第1光電変換部および第2光電変換部が連続している例)
7.第2の実施の形態(第1光電変換部および第2光電変換部がフォトダイオードである例)
8.適用例(電子機器の例)
9.応用例1(体内情報取得システムの例)
10.応用例2(移動体制御システムの例)
【0012】
<1.第1の実施の形態>
[撮像素子1の構成]
図1は、本技術の第1の実施の形態に係る撮像素子(撮像素子1)の模式的な平面構成を表したものである。撮像素子1は、例えば赤外線イメージセンサであり、例えば波長800nm以上の光に対しても感度を有している。この撮像素子1には、例えば四角形状の画素領域10Pと、画素領域10Pの外側の画素外領域10Bとが設けられている。画素外領域10Bには、画素領域10Pを駆動するための周辺回路20Bが設けられている。
【0013】
図2は、撮像素子1の機能構成を表したものである。撮像素子1の画素領域10Pには、例えば2次元配置された複数の受光単位領域(画素P)が設けられている。周辺回路20Bは、例えば行走査部201、水平選択部203、列走査部204およびシステム制御部202を有している。
【0014】
画素Pには、例えば画素行ごとに画素駆動線Lread(例えば、行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、画素Pからの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、行走査部201の各行に対応した出力端に接続されている。
【0015】
行走査部201は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、画素領域10Pの各画素Pを、例えば行単位で駆動する画素駆動部である。行走査部201によって選択走査された画素行の各画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通して水平選択部203に供給される。水平選択部203は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチ等によって構成されている。
【0016】
列走査部204は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、水平選択部203の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この列走査部204による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線205に出力され、当該水平信号線205を通して図示しない信号処理部等へ入力される。
【0017】
システム制御部202は、外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータなどを受け取り、また、撮像素子1の内部情報などのデータを出力するものである。システム制御部202はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に行走査部201、水平選択部203および列走査部204などの駆動制御を行う。
【0018】
図3は、撮像素子1の構成を模式的に表す分解斜視図である。撮像素子1は、画素領域10Pを有する半導体基板10と、画素領域10Pの各画素Pを駆動するための回路基板20とが積層されたものである。回路基板20には、半導体基板10で光電変換された信号電荷を増幅またはAD変換して出力する回路が設けられている。この回路基板20に、周辺回路20Bが設けられている。
【0019】
図4は、
図1に示したIV-IV線に沿った撮像素子1の断面構成を模式的に表している。半導体基板10は、光入射面S1を有しており、この光入射面S1と反対の面が、回路基板20との接合面(接合面S2)となっている。半導体基板10は、例えば赤外領域の波長の光等の入射光を画素P毎に光電変換するためのものであり、接合面S2に近い位置から順に、保護層11および光電変換層12を有している。光電変換層12には、画素領域10Pと画素外領域10Bとを分離する分離膜13が設けられている。半導体基板10の光入射面S1には、透明電極14およびパッシベーション膜15がこの順に設けられている。回路基板20には、半導体基板10で発生した信号電荷の読み出し回路(ROIC:Readout Integrated Circuit)が設けられている。以下、各部の構成について説明する。
【0020】
保護層11は、例えば、保護層11A,11Bの積層構造を有している。保護層11Aは接合面S2を構成する層であり、この保護層11Aが回路基板20に接している。保護層11Aには、画素P毎に接続層11Cが設けられている。画素外領域10Bの保護層11Aには、例えば画素領域10Pの接続層11Cと同じピッチで、接続層11CBが設けられている。保護層11Bは、保護層11Aと光電変換層12との間に設けられている。この保護層11Bには、画素P毎に貫通電極11Tが設けられている。画素外領域10Bの保護層11Bには、例えば画素領域10Pの貫通電極11Tと同じピッチで、貫通電極11TBが設けられている。貫通電極11T,11TBは、光電変換層12で発生した電荷(例えば正孔)を読みだすための電圧が供給される電極であり、接続層11C,11CBに接している。即ち、光電変換層12で発生した信号電荷は、貫通電極11T,11TBおよび接続層11C,11CBを介して、回路基板20に移動するようになっている。
【0021】
保護層11は、例えば無機絶縁材料を用いて構成することができる。この無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化シリコン(SiO2)および酸化ハフニウム(HfO2)等が挙げられる。保護層11Aと保護層11Bとは、互いに同じ材料により構成するようにしてもよく、あるいは、異なる材料により構成するようにしてもよい。
【0022】
貫通電極11T,11TBおよび接続層11C,11CBには、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),窒化チタン(TiN),白金(Pt),金(Au),ゲルマニウム(Ge),パラジウム(Pd),亜鉛(Zn),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)等のうちのいずれかの単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金を用いることができる。貫通電極11T,11TBおよび接続層11C,11CBは、単層膜であってもよく、あるいは積層膜であってもよい。
【0023】
光電変換層12は、所定の波長の光(例えば、波長900nm~1700nmの赤外領域の波長の光)を吸収して、信号電荷を発生させるものであり、例えば、III-V族半導体などの化合物半導体を含んでいる。光電変換層12に用いられるIII-V族半導体としては、例えば、InGaAs(インジウムガリウム砒素)が挙げられる。InGaAsの組成は、例えばInxGa(1-x)As(x:0<x≦1)である。赤外領域で、感度を高めるためには、x≧0.4であることが好ましい。光電変換層12は、HgCdTe(水銀カドミウムテルル)またはInSb(インジウムアンチモン)等により構成するようにしてもよい。
【0024】
光電変換層12は、画素領域10Pに設けられた第1光電変換部12Pと、画素外領域10Bに設けられた第2光電変換部12Bとを有しており、第1光電変換部12Pと第2光電変換部12Bとは、分離膜13により電気的に分離されている。本実施の形態では、この画素外領域10Bの第2光電変換部12Bが所定の電位に接続され、第2光電変換部12Bに入射した光が、第1光電変換部12Pに入射した光とは別に、処理されるようになっている。詳細は後述するが、これにより、画素外領域10Bで発生した光(例えば後述の
図8の光E)および画素外領域10Bに入射した光(例えば後述の
図9の光L1)が、画素領域10Pに影響を及ぼすのを抑えることができる。
【0025】
図5は、光電変換層12の模式的な平面構成を表したものである。例えば、平面視で四角形状の第1光電変換部12Pの周囲を囲んで第2光電変換部12Bが設けられている。第2光電変換部12Bは、第1光電変換部12Pの全ての辺の外側に設けられている必要はなく、少なくとも画素外領域10Bの一部に設けられていればよい。平面視で、周辺回路20Bに重なる領域に、第2光電変換部12Bが設けられていることが好ましい(
図4)。周辺回路20Bに起因して発生した光(後述の
図8の光E)を効率良く、処理できるためである。例えば、第2光電変換部12Bは、平面視で周辺回路20Bよりも広く設けられ、周辺回路20Bを覆っている。
【0026】
第2光電変換部12Bの感度波長帯は、例えば、第1光電変換部12Pの感度波長帯と同じであり、第1光電変換部12Pおよび第2光電変換部12B(光電変換層12)は、赤外領域の波長の光を吸収して光電変換を行うようになっている。第2光電変換部12Bの感度波長帯が、第1光電変換部12Pの感度波長帯よりも広くなっていてもよい。第2光電変換部12Bの構成材料は、第1光電変換部12Pの構成材料と異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。第1光電変換部12Pおよび第2光電変換部12Bの構成材料、その組成が同じであれば、第1光電変換部12Pおよび第2光電変換部12Bを、同一工程で形成することができる。即ち、第2光電変換部12Bを簡便に形成することができる。また、第2光電変換部12Bに、第1光電変換部12Pと同じ構成材料を用いることにより、第2光電変換部12Bの耐久性を、第1光電変換部12Pと同程度にすることができる。
【0027】
第1光電変換部12Pの保護層11近傍には、画素毎Pに第1導電型領域12P-1が設けられている。第1光電変換部12Pのうち、第1導電型領域12P-1以外の部分は、第2導電型領域12P-2である。第2光電変換部12Bの保護層11近傍には、例えば、画素領域10Pの第1導電型領域12P-1と同じピッチで、第1導電型領域12B-1が設けられている。第2光電変換部12Bのうち、第1導電型領域12B-1以外の部分は、第2導電型領域12B-2である。
【0028】
第1導電型領域12P-1,12B-1は、光電変換層12で発生した電荷の一方が移動する領域であり、貫通電極11T,11TBに接続されている。この第1導電型領域12P-1,12B-1は、例えば、例えばZn(亜鉛)等のp型不純物を含んでいる。第2導電型領域12P-2,12B-2は、例えばSi(ケイ素)等のn型の不純物を含んでいる。第2導電型領域12P-2,12B-2は、真性半導体により構成されていてもよい(i型の半導体領域であってもよい)。第1光電変換部12Pおよび第2光電変換部12Bでは、第1導電型領域12P-1,12B-1と第2導電型領域12P-2,12B-2との界面に、pn接合またはpin接合が設けられている。
【0029】
分離膜13は、少なくとも光電変換層12に設けられている。分離膜13は、例えば光電変換層12を貫通し、保護層11の厚み方向の一部にも設けられている。分離膜13は、例えば、第1光電変換部12Pを囲むように額縁状に設けられている(
図5)。この分離膜13は、第1光電変換部12Pと第2光電変換部12Bとを電気的に分離するためのものであり、例えば酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁材料により構成されている。
【0030】
透明電極14は、第1光電変換部12Pおよび第2光電変換部12Bにわたって、光電変換層12に接している。即ち、透明電極14の一部(第1電極)は、第1光電変換部12Pを間にして回路基板20に対向し、透明電極14の他の一部または全部(第2電極)は第2光電変換部12Bを間にして回路基板20に対向している。ここでは、第1光電変換部12P上の透明電極14と第2光電変換部12B上の透明電極14とが一体化して設けられている。この透明電極14は、光電変換層12で発生した不要な電荷を排出するためのものであり、第1光電変換部12P,第2光電変換部12Bそれぞれに電気的に接続されている。第1光電変換部12Pで発生した電荷のうち、例えば正孔が信号電荷として回路基板20に読み出されるとき、第1光電変換部12Pおよび第2光電変換部12Bで発生した電子が、この透明電極14を介して排出される。
【0031】
透明電極14は、例えば赤外線などの入射光を透過可能な導電膜により構成されている。透明電極14には、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),窒化チタン(TiN),白金(Pt),金(Au),ゲルマニウム(Ge),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)のうちのいずれかの単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金を用いることができる。透明電極14にには、赤外領域の波長の光に対する透過率が高い材料、例えばITiO(In2O3-TiO2)を用いることが好ましい。この他、透明電極14には、ITO(Indium Tin Oxide),スズ(Sn),酸化スズ(SnO2),タングステンをドープした酸化インジウム(IWO),インジウム-亜鉛複合酸化物(IZO),亜鉛をドープした酸化アルミニウム(AZO),亜鉛をドープした酸化ガリウム(GZO),マグネシウムおよび亜鉛をドープした酸化アルミニウム(AlMgZnO),インジウム-ガリウム複合酸化物(IGO),In-GaZnO4(IGZO),フッ素をドープした酸化スズ(FTO),酸化亜鉛(ZnO),ホウ素をドープした酸化亜鉛およびInSnZnO等を用いることができる。
【0032】
パッシベーション膜15は、半導体基板10の光入射面S1を平坦化するためのものであり、例えば無機絶縁材料により構成されている。パッシベーション膜15には、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化シリコン(SiO2)および酸化ハフニウム(HfO2)等の無機絶縁材料を用いることができる。パッシベーション膜15上に、カラーフィルタおよびオンチップレンズ等を設けるようにしてもよい。
【0033】
回路基板20は、支持基板21と層間絶縁層22とを含むものである。支持基板21は、例えばシリコン(Si)基板により構成されている。層間絶縁層22は、支持基板21と保護層11(半導体基板10)との間に設けられている。この層間絶縁層22に、各画素Pから信号読み出しを行うためのROICが設けられている。層間絶縁層22の画素領域10Pには、例えば半導体基板10に近い位置から順に、接続層22C、読み出し電極22R、画素回路22Pおよび複数の配線22Wが設けられている。層間絶縁層22の画素外領域10Bには、例えば半導体基板10に近い位置から順に、接続層22CB、読み出し電極22RB、画素回路22PB、配線22WBおよび周辺回路20Bが設けられている。
【0034】
接続層22Cは、画素P毎に設けられ、半導体基板10の接続層11Cに接している。読み出し電極22Rは、接続層22Cと画素回路22Pとを電気的に接続するためのものであり、画素P毎に設けられている。画素P毎に設けられた画素回路22Pは各々、複数の配線22Wに電気的に接続されている。したがって、第1光電変換部12Pで発生した信号電荷は、接続層11Cから、接続層22Cおよび読み出し電極22Rを介してROICに読み出されるようになっている。
【0035】
画素外領域10Bの接続層22CB、読み出し電極22RBおよび画素回路22PBは、例えば画素領域10Pと同じピッチで設けられている。接続層22CBは、半導体基板10の接続層11CBに接している。読み出し電極22RBは、接続層22CBと画素回路22PBとを電気的に接続するためのものである。複数の画素回路22PBは、同一の配線22WBに接続されている。配線22WBは、例えば、撮像素子1の電源または接地(GND)電位等の所定の電位に接続されている。したがって、第2光電変換部12Bで発生した電荷は、接続層11CBから、接続層22CB、読み出し電極22RB、画素回路22PBおよび配線22WBを介して所定の電位に排出されるようになっている。
【0036】
周辺回路20Bは、例えば、平面視で第2光電変換部12Bと重なる位置に設けられ、配線22Wに電気的に接続されている。即ち、周辺回路20Bは、配線22Wを介して第1光電変換部12Pに電気的に接続されている。
【0037】
図6は、パッケージに収容された撮像素子1の断面構成を模式的に表している。半導体基板10および回路基板20を含む撮像素子1は、例えば、このようにパッケージ(パッケージ23)内に収容される。パッケージ23は、例えば、セラミックまたは樹脂材料等により構成されている。パッケージ23は、回路基板20を支持するとともに、半導体基板10側に開口を有している。この開口は、画素領域10Pに対向する位置に配置されている。開口は、封止板(封止板24)により塞がれている。封止板24は、例えばガラスなどの透明材料により構成されており、封止板24を介して光電変換層12に光が入射するようになっている。
【0038】
[撮像素子1の動作]
図7を用いて撮像素子1の動作について説明する。撮像素子1では、封止板24(
図6)、パッシベーション膜15および透明電極14を介して、第1光電変換部12Pへ光(例えば赤外領域の波長の光)が入射すると、この光が第1光電変換部12Pにおいて吸収される。これにより、第1光電変換部12Pでは正孔(ホール)および電子の対が発生する(光電変換される)。このとき、例えば貫通電極11Tに所定の電圧が印加されると、第1光電変換部12Pに電位勾配が生じ、発生した電荷のうち一方の電荷(例えば正孔)が、信号電荷として第1導電型領域12P-1に移動し、第1導電型領域12P-1から画素P毎に貫通電極11Tへ収集される。この信号電荷が、接続層11C,22Cを介して回路基板20のROICによって読み出される。
【0039】
[撮像素子1の作用・効果]
本実施の形態の撮像素子1では、画素外領域10Bに、所定の電位に接続された第2光電変換部12Bが設けられているので、画素外領域10Bで発生した光(後述の
図8の光E)および画素外領域10Bに入射した光(後述の
図9の光L1)が、画素領域10Pに影響を及ぼすのを抑えることができる。以下、これについて説明する。
【0040】
図8は、比較例に係る撮像素子(撮像素子100)の模式的な断面構成を表したものである。撮像素子100は、回路基板20上の画素領域10Pのみに光電変換層12を有するものであり、画素外領域10Bには光電変換層(例えば
図4の第2光電変換部12B)が設けられていない。
【0041】
このような撮像素子100では、画素外領域10Bに設けられた周辺回路20Bで発生する光(光E)が、直接、画素領域10Pの光電変換層12に入射する虞がある。あるいは、光Eがパッケージ23で反射された後に、画素領域10Pの光電変換層12に入射する虞がある。光Eは、例えば、回路動作によって、回路基板20に含まれるシリコン(Si)がホットキャリアを発生することに起因するものである。主に可視領域の波長の光を対象とした撮像素子では、この光Eが画素領域に入射しても、画質へ及ぼす影響は低い。しかしながら、ホットキャリアに起因する光Eは、赤外領域の波長の光を含んでいるため、赤外領域の波長の光を対象とした撮像素子は、光Eに対しても、光電変換処理がなされる。即ち、赤外線センサとして用いられる撮像素子100では、光Eが直接、あるいは反射して光電変換層12に入射し、画質を大きく低下させる虞がある。
【0042】
画素領域10Pへの光Eの入射を防ぐ方法として、光Eを反射するための反射部材(例えば、金属材料の反射部材)を設ける、あるいは、光Eを吸収するための吸収剤を設けることが考えられる。しかしながら、このような方法は、撮像素子100の構成を複雑化させるため、採用することが困難である。仮に、反射部材を設けた場合には、反射部材からの反射光が画素領域10Pに入射することを防止するための更なる措置が必要であり、吸収剤を設けた場合には、光Eを吸収した吸収剤の変質に対して更なる措置が必要となるためである。
【0043】
上記の方法の他、画素領域10Pへの光Eの入射を防ぐ方法として、例えば、周辺回路20Bを回路基板20とは別の基板に設けたり、あるいは、周辺回路20Bを画素領域10Pから十分に離れた領域に形成するなどの方法も考え得る。しかしながら、このような方法でも、撮像素子の小型化が困難になるなどの不具合が生じる。
【0044】
また、撮像素子100では、
図9に示したように、外から入射した光(光L1)が画素外領域10Bで反射され、画素領域10Pの光電変換層12に入射する虞もある。このような光L1は、所謂、ゴーストを引き起こし、画質を低下させる。
【0045】
これに対し、撮像素子1では、画素外領域10Bの周辺回路20Bを覆うように第2光電変換部12Bが設けられ、この第2光電変換部12Bは所定の電位に接続されている。
【0046】
したがって、
図10,11に示したように、ホットキャリアに起因した光Eおよび外から入射した光L1が、画素領域10Pに影響を及ぼすのを抑えることができる。光Eおよび光L1は、例えば、以下のように処理される。
【0047】
周辺回路20Bで発生した光Eは、直上の第2光電変換部12Bに入射し、第2光電変換部12Bにおいて吸収される(
図10)。これにより、
図7に示したように、第2光電変換部12Bでは正孔(ホール)および電子の対が発生する(光電変換される)。このとき、例えば貫通電極11TBに配線22WBを介して所定の電圧が印加されると、第2光電変換部12Bに電位勾配が生じ、発生した電荷のうち一方の電荷(例えば正孔)が、第1導電型領域12B-1に移動し、第1導電型領域12B-1から貫通電極11TBへ収集される。この電荷が、接続層11CB,22CBを介して配線22WBに移動し、所定の電位に排出される。第2光電変換部12Bで発生した他方の電荷(例えば電子)は、透明電極14を介して排出される。
【0048】
また、画素外領域10Bに入射した光L1は、第2光電変換部12Bに入射し、第2光電変換部12Bにおいて吸収される(
図11)。上記で説明したのと同様に、この光L1に起因して第2光電変換部12Bでは、電荷が発生し、所定の電位に排出される。即ち、光Eおよび光L1は、第1光電変換部12Pに入射した光とは別に光電変換され、処理されるようになっているので、光Eおよび光L1の画素領域10Pへの影響が抑えられる。このような撮像素子1では、反射部材または吸収部材を設ける必要がないので、簡素な構成を実現できる。また、周辺回路20Bの形成領域も自由に設計することができるので、小型化も可能となる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態では、画素外領域10Bに、所定の電位に接続された第2光電変換部12Bを設けるようにしたので、画素外領域10Bで発生した光Eおよび画素外領域10Bに入射した光L1が、画素領域10Pに影響を及ぼすのを抑えることができる。よって、画質の低下を抑えることが可能となる。
【0050】
以下、上記実施の形態の変形例および他の実施の形態について説明するが、以降の説明において上記実施の形態と同一構成部分については同一符号を付してその説明は適宜省略する。
【0051】
<変形例1>
図12は変形例1に係る撮像素子(撮像素子1A)の模式的な断面構成を表したものである。このように、第2光電変換部12Bに、透明電極14のみから、所定の電位を供給するようにしてもよい。
【0052】
この撮像素子1Aでは、画素外領域10Bの貫通電極11TBが配線(
図4の配線22WB)に接続されていない。即ち、第2光電変換部12Bには、回路基板20側から電位は供給されないようになっている。したがって、第2光電変換部12Bで発生した電荷は、透明電極14を介して所定の電位に排出される。
【0053】
<変形例2>
図13は、変形例2に係る撮像素子(撮像素子1B)の模式的な断面構成を表したものである。このように、第1光電変換部12Pに接続された透明電極(透明電極14P)と、第2光電変換部12Bに接続された透明電極(透明電極14B)とを電気的に分離するようにしてもよい。
【0054】
この撮像素子1Bでは、分離膜13が透明電極14Pと透明電極14Bとの間に設けられ、透明電極14Pと透明電極14Bとが電気的に分離されている。透明電極14Bは、例えば、配線22WBと同一の電位に接続されている。したがって、第2光電変換部12Bで発生した電荷の一方(例えば正孔)は、配線22WBを介して所定の電位に排出され、他方(例えば電子)は、透明電極14Bを介して所定の電位に排出される。透明電極14Bは、配線22WBと別の電位に接続されていてもよい。
【0055】
<変形例3>
図14は、変形例3に係る撮像素子(撮像素子1C)の模式的な断面構成を表したものである。このように、このように、第2光電変換部12Bに、透明電極14Bのみから、所定の電位を供給するようにしてもよい。
【0056】
この撮像素子1Cでは、画素外領域10Bの貫通電極11TBが配線(
図13の配線22WB)に接続されていない。即ち、第2光電変換部12Bには、回路基板20側から電位は供給されないようになっている。したがって、第2光電変換部12Bで発生した電荷は、透明電極14Bを介して所定の電位に排出される。
【0057】
<変形例4>
図15は、変形例4に係る撮像素子(撮像素子1D)の模式的な断面構成を表したものである。このように、このように、第1光電変換部12Pのみを透明電極14Pに接続し、第2光電変換部12Bには、回路基板20側から所定の電位を供給するようにしてもよい。
【0058】
この撮像素子1Dでは、第2光電変換部12B上の透明電極(
図13の透明電極14B)が省略されている。第2光電変換部12Bは、貫通電極11TB等を介して配線22WBに接続されている。したがって、第2光電変換部12Bで発生した電荷は、配線22WBを介して所定の電位に排出される。
【0059】
<変形例5>
図16は、変形例5に係る撮像素子(撮像素子1E)の模式的な断面構成を表したものである。このように、光電変換層12に分離膜(分離膜13)を設けず、第1光電変換部12Pと第2光電変換部12Bとを連続させるようにしてもよい。このような場合であっても、画素外領域10Bで発生した光および画素外領域10Bに入射した光を、画素領域10Pに入射した光とは別に処理することができる。
【0060】
<第2の実施の形態>
図17は、第2の実施の形態に係る撮像素子(撮像素子2)の模式的な断面構成を表したものである。撮像素子2は、第1光電変換部(第1光電変換部32P)および第2光電変換部(第2光電変換部32B)が、例えばpn接合を有するフォトダイオードにより構成されている。この点を除き、撮像素子2は、撮像素子1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0061】
撮像素子2は、回路基板20と光電変換基板30との積層構造を有している。光電変換基板30の光入射面(光入射面S3)には、カラーフィルタ層34が設けられている。光電変換基板30と回路基板20との接合面(接合面S4)は、光入射面S3との対向面である。光電変換基板30は、接合面S4に近い位置から、配線層31および半導体層32をこの順に有している。
【0062】
配線層31は、例えば、回路基板20に接する配線層31Aと、配線層31Aと半導体層32との間の配線層31Bとを有している。配線層31Aは、例えば酸化シリコン(SiO2)等の無機絶縁膜内に複数の配線(配線31W,31WB等)が設けられたものである。配線層31Aに設けられた配線31Wは、第1光電変換部32PとROICとを電気的に接続するためのものである。第1光電変換部32Pで発生した信号電荷は、配線31Wを介して回路基板20に移動し、ROICに読み出されるようになっている。配線31WBは、第2光電変換部32Bで発生した電荷を所定の電位に排出するためのものである。配線31WBは、回路基板20に設けられた配線22WBを介して、撮像素子2の電源または接地(GND)電位等の所定の電位に接続されている。配線層31Bは、例えばポリシリコン(poly-Si)などの半導体層内に複数の配線が設けられたものである。
【0063】
半導体層32は、例えばシリコン(Si)により構成されている。この半導体層32に、第1光電変換部32Pおよび第2光電変換部32Bが設けられている。第1光電変換部32Pは、画素領域10Pに画素P毎に設けられている。隣り合う第1光電変換部32Pは、分離膜33により互いに電気的に分離されている。第2光電変換部32Bは、画素外領域10Bに、例えば第1光電変換部32Pと同じピッチで複数設けられている。本実施の形態の撮像素子2では、このように画素外領域10Bに所定の電位に接続された第2光電変換部32Bが設けられているので、上記撮像素子1で説明したのと同様に、画素外領域10Bで発生した光E(
図8参照)および画素外領域10Bに入射した光L1(
図9参照)が、画素領域10Pに影響を及ぼすのを抑えることができる。例えば、隣り合う第2光電変換部32Bも、分離膜33により互いに電気的に分離されている。隣り合う第1光電変換部32Pと第2光電変換部32Bとの間にも分離膜33が設けられ、これらは電気的に分離されている。分離膜33は、半導体層32の厚み方向にわたって設けられている。この分離膜33は、例えば酸化シリコン(SiO
2)等の無機絶縁材料により構成されている。
【0064】
図18は、配線層31および半導体層32のより詳細な構成の一例を表したものである。半導体層32には、第1光電変換部32Pおよび第2光電変換部32Bに加えて、配線層31B近傍に、例えば、フローティングディフュージョン(FD)321,電源電圧(VDD)322および拡散領域323等が設けられている。拡散領域323は、例えば選択トランジスタのドレインであり、垂直信号線VSLに接続されている。配線層31には、トランジスタ(例えば後述の転送トランジスタTr1,増幅トランジスタTr2)のゲート電極Tr1G,Tr2G等が設けられている。ゲート電極Tr1Gは、例えば転送トランジスタTr1のゲート電極である。ゲート電極Tr2Gは、例えば増幅トランジスタTr2のゲート電極であり、FD321に電気的に接続されている。
【0065】
図19は、撮像素子2の画素回路の一例を表したものである。この画素回路では、選択トランジスタおよびリセットトランジスタを省略している。第1光電変換部32Pは、転送トランジスタTr1のソースおよびドレインの一方の端子(例えばソース)に接続されている。転送トランジスタTr1の他方の端子(例えばドレイン)は、FD321を介して増幅トランジスタTr2のゲートに接続されている。
【0066】
カラーフィルタ層34は、例えば、赤色フィルタ,緑色フィルタ,青色フィルタおよびIRフィルタを含んでおり、これらが画素P毎に配置されている。このようなカラーフィルタ層34を設けることにより、撮像素子2では、その色配列に対応した波長の受光データが得られる。光電変換基板30の光入射面S3には、カラーフィルタ層34とともに、オンチップレンズを設けるようにしてもよい。
【0067】
撮像素子2では、カラーフィルタ層34を介して、第1光電変換部12Pへ光(例えば赤外領域の波長の光)が入射すると、この光は、フォトダイオードである第1光電変換部32Pにおいて光電変換され、電子および正孔が発生する。これらのうちの一方が信号電荷として第1光電変換部12Pに蓄積される。この信号電荷は、所定のタイミングでFD321を介して画素回路に転送され、電圧信号として垂直信号線VSLに読み出される。
【0068】
このような撮像素子2も、上記撮像素子1で説明したのと同様に、画素外領域10Bに、所定の電位に接続された第2光電変換部32Bが設けられているので、画素外領域10Bで発生した光E(
図8)および画素外領域10Bに入射した光L1(
図9)が、画素領域10Pに影響を及ぼすのを抑えることができる。よって、画質の低下を抑えることが可能となる。
【0069】
<適用例>
上述の撮像素子1,2は、例えば赤外領域を撮像可能なカメラなど、様々なタイプの電子機器に適用することができる。
図20に、その一例として、電子機器3(カメラ)の概略構成を示す。この電子機器3は、例えば静止画または動画を撮影可能なカメラであり、撮像素子2と、光学系(光学レンズ)310と、シャッタ装置311と、撮像素子2およびシャッタ装置311を駆動する駆動部313と、信号処理部312とを有する。
【0070】
光学系310は、被写体からの像光(入射光)を撮像素子2へ導くものである。この光学系310は、複数の光学レンズから構成されていてもよい。シャッタ装置311は、撮像素子2への光照射期間および遮光期間を制御するものである。駆動部313は、撮像素子2の転送動作およびシャッタ装置311のシャッタ動作を制御するものである。信号処理部312は、撮像素子2から出力された信号に対し、各種の信号処理を行うものである。信号処理後の映像信号Doutは、メモリなどの記憶媒体に記憶されるか、あるいは、モニタ等に出力される。
【0071】
更に、本実施の形態等において説明した撮像素子1,2は、下記電子機器(カプセル内視鏡および車両等の移動体)にも適用することが可能である。
【0072】
<応用例1(内視鏡手術システム)>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0073】
図21は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0074】
図21では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0075】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0076】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0077】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0078】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0079】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0080】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0081】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0082】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0083】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0084】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0085】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0086】
図22は、
図21に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0087】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0088】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0089】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0090】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0091】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0092】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0093】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0094】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0095】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0096】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0097】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0098】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0099】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0100】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0101】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0102】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0103】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、より鮮明な術部画像を得ることができるため、術者が術部を確実に確認することが可能になる。
【0104】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0105】
<応用例2(移動体)>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0106】
図23は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0107】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図23に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0108】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0109】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0110】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0111】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0112】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0113】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0114】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0115】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12030に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0116】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図23の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0117】
図24は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0118】
図24では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0119】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0120】
なお、
図24には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0121】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0122】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0123】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0124】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0125】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、より見やすい撮影画像を得ることができるため、ドライバの疲労を軽減することが可能になる。
【0126】
以上、実施の形態、変形例、適用例および応用例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した撮像素子の層構成は一例であり、更に他の層を備えていてもよい。また、各層の材料や厚みも一例であって、上述のものに限定されるものではない。
【0127】
また、上記実施の形態等で説明した回路構成は一例であり、その構成および配置等は、上述のものに限定されない。
図25に示したように、回路基板20の2辺に行走査部201を配配置するようにしてもよい。
【0128】
更に、半導体基板10上に回路を設けるようにしてもよい。
図26A,26Bに示したように、行走査部を分割し、行走査部201Aを半導体基板10上に、行走査部201Bを回路基板20にそれぞれ設けるようにしてもよい。
図27A,27Bに示したように、回路基板20には行走査部を設けずに、半導体基板10上に行走査部201A,201B(あるいは行走査部201)を設けるようにしてもよい。行走査以外の機能を有する回路部を分割してもよく、あるいは、半導体基板10上に設けるようにしてもよい。
【0129】
上記実施の形態等において説明した効果は一例であり、他の効果であってもよいし、更に他の効果を含んでいてもよい。
【0130】
尚、本開示は、以下のような構成であってもよい。
(1)
第1光電変換部を有する画素領域と、
所定の電位に接続された第2光電変換部を有する画素外領域と、
一方の面に前記第1光電変換部および前記第2光電変換部が設けられるとともに、前記第1光電変換部に電気的に接続された周辺回路を有する回路基板とを備え、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部は化合物半導体を含み、
前記第1光電変換部は、発生した信号電荷が移動する、画素毎に設けられた第1導電型領域と、前記画素領域の全面に亘って設けられた、前記第1導電型領域とは異なる導電型の第2導電型領域とを有し、
平面視で前記周辺回路に重なる領域に、前記第2光電変換部が設けられ、
前記回路基板は、前記第2光電変換部と前記周辺回路との間を前記回路基板の面内方向に延伸し、前記第2光電変換部と電気的に接続され、前記第2光電変換部で発生した電荷の排出経路となる配線をさらに有する
撮像素子。
(2)
前記第1光電変換部と前記第2光電変換部とは電気的に分離されている
前記(1)に記載の撮像素子。
(3)
前記第2光電変換部の構成材料は、前記第1光電変換部の構成材料と同じである
前記(1)または(2)に記載の撮像素子。
(4)
前記第2光電変換部は、少なくとも前記第1光電変換部の感度波長帯と同じ感度波長帯を有する
前記(1)ないし(3)のうちいずれか1つに記載の撮像素子。
(5)
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部は、赤外領域の波長の光を吸収して電荷を発生する
前記(1)ないし(4)のうちいずれか1つに記載の撮像素子。
(6)
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部はIII-V族半導体を含む
前記(1)ないし(5)のうちいずれか1つに記載の撮像素子。
(7)
前記III-V族半導体はInGaAsである
前記(6)に記載の撮像素子。
(8)
前記回路基板には画素毎に画素回路が設けられ、
前記画素回路に、前記第1導電型領域が電気的に接続されている
前記(1)ないし(7)のうちいずれか1つに記載の撮像素子。
(9)
更に、前記第1光電変換部を間にして、前記回路基板に対向する第1電極を有する
前記(1)ないし(8)のうちいずれか1つに記載の撮像素子。
(10)
更に、前記第2光電変換部を間にして、前記回路基板に対向する第2電極を有する
前記(9)に記載の撮像素子。
(11)
前記第1電極と前記第2電極とが一体的に設けられている
前記(10)に記載の撮像素子。
(12)
前記第1電極と前記第2電極とが電気的に分離して設けられている
前記(10)に記載の撮像素子。
(13)
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部はフォトダイオードである
前記(1)ないし(4)のうちいずれか1つに記載の撮像素子。
(14)
前記所定の電位は、電源または、グラウンド(GND)電位である
前記(1)ないし(13)のうちいずれか1つに記載の撮像素子。
(15)
第1光電変換部を有する画素領域と、
所定の電位に接続された第2光電変換部を有する画素外領域と、
一方の面に前記第1光電変換部および前記第2光電変換部が設けられるとともに、前記第1光電変換部に電気的に接続された周辺回路を有する回路基板とを備えを備え、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部は化合物半導体を含み、
前記第1光電変換部は、発生した信号電荷が移動する、画素毎に設けられた第1導電型領域と、前記画素領域の全面に亘って設けられた、前記第1導電型領域とは異なる導電型の第2導電型領域とを有し、
平面視で前記周辺回路に重なる領域に、前記第2光電変換部が設けられ、
前記回路基板は、前記第2光電変換部と前記周辺回路との間を前記回路基板の面内方向に延伸し、前記第2光電変換部と電気的に接続され、前記第2光電変換部で発生した電荷の排出経路となる配線をさらに有する
撮像素子を備えた電子機器。
【0131】
本出願は、日本国特許庁において2017年2月21日に出願された日本特許出願番号第2017-30375号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容を参照によって本出願に援用する。
【0132】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。