IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イスカル リミテッドの特許一覧

特許7344121非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール
<>
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図1
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図2
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図3
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図4
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図5
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図6
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図7
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図8
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図9
  • 特許-非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20230906BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/10 D
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019548013
(86)(22)【出願日】2018-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 IL2018050341
(87)【国際公開番号】W WO2018193437
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】15/493,274
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘヒト ギル
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-091153(JP,A)
【文献】特開2017-056552(JP,A)
【文献】特開2014-083667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20
B23C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面の、インデックス可能な、非ポジティブランピングインサート(14)であって、前記ランピングインサート(14)は、3次元ユークリッド空間の第1、第2および第3の軸(X、Y、Z)の各々の周りに180度の回転シンメトリーと、前記第2の軸および第3の軸(Y、Z)により定義される第1の正中面(XP)と、前記第1の軸および第3の軸(X、Z)により定義される第2の正中面(YP)と、前記第1の軸および第2の軸(X、Y)により定義される第3の正中面(ZP)と、を有し、
前記ランピングインサート(14)は、前記第1の正中面(XP)の対向側に位置する2つの第1の面(24)と、前記第1の面(24)間に延伸し、周辺エッジ(28)で各前記第1の面(24)と交差するインサート周面(26)と、を備え、
各前記第1の面(24)は、2つの高くした角部(18a)と、2つの低くした角部(38a)と、を備え、前記高くした角部(18a)は、前記低くした角部(38a)よりも前記第1の正中面(XP)からさらに遠くにあり、
前記インサート周面(26)は、2つの第2の面(30)と、その間に延伸する2つの第3の面(32)と、を備え、
各前記第1の面(24)は、2つの正確に対向するカッティング部(36)を備え、
各前記カッティング部(36)は、
前記第1および第2の面(24、30)の交線に形成されたメジャーカッティングエッジ(16)と、
前記高くした角部(18a)の1つにあるコーナーカッティングエッジ(18)と、
前記コーナーカッティングエッジ(18)を介して前記メジャーカッティングエッジ(16)に接続されたワイパーエッジ(20)と、を備え、
各前記カッティング部(36)は、前記第1の軸(X)に平行な視点において、前記ワイパーエッジ(20)から横方向に延伸するランピングエッジ(22)をさらに備え、
各前記第3の面(32)は、2つのみの非ポジティブランピングレリーフ面(46)を備え、各前記ランピングレリーフ面(46)は、それぞれのランピングエッジ(22)から、前記第1の正中面(XP)方向であって、前記第1の正中面を超えない方向に、延伸し、
前記第2の正中面(YP)に平行な前記第3の面(32)の全ての断面において、前記第1の正中面(XP)から各前記第1の面(24)の両側に向かって前記第3の面(32)の一つに沿って進むと、各連続ポイントは、その前のポイントに対して、前記第3の正中面(ZP)から同じ距離か、またはより近接して位置する、両面の、インデックス可能な、非ポジティブランピングインサート。
【請求項2】
各前記第1の面(24)において、第1のカッティング部(36)の各ランピングエッジ(22)は、マイナーコーナーエッジ(38)を介して第2のカッティング部(36)のメジャーカッティングエッジ(16)に接続される、請求項1に記載のランピングインサート(14)。
【請求項3】
前記第3の軸(Z)に平行な視点において、各周辺エッジ(28)において、各前記マイナーコーナーエッジ(38)は、前記コーナーカッティングエッジ(18)のいずれよりも、前記第1の正中面(XP)に近接して位置される、請求項2に記載のランピングインサート(14)。
【請求項4】
前記第1の軸(X)に平行な視点において、各前記第1の面(24)において、マイナーコーナーエッジ(38)は、前記コーナーカッティングエッジ(18)よりも前記第3の正中面(ZP)に近接している、請求項1または2に記載のランピングインサート(14)。
【請求項5】
前記第1の軸(X)に平行な視点において、前記ランピングエッジ(22)は、前記第1の正中面(XP)と前記第3の面(32)との間の交差線から少なくとも部分的に離間している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項6】
前記第1の軸(X)に平行な視点において、前記第1の正中面(XP)の手前に位置する前記第3の面(32)のすべてのポイントは、可視であるか、または前記手前に位置する前記周辺エッジ(28)に一致する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項7】
クランプ穴(34)が、前記第1の面(24)か、または前記対向する第2の面(30)の間に延伸し、かつ前記第1の面(24)または前記第2の面(30)に向けて開口している、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項8】
各前記第2の面(30)が、前記第2の正中面(YP)に平行な、平面の第2のアバットメント面(50)を備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項9】
各前記ランピングレリーフ面(46)が、前記第3の正中面(ZP)に垂直であるか、または前記第3の正中面(ZP)に対して鋭角的な内部ランピングレリーフ角(β)を形成する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項10】
前記第1の軸(X)に平行な視点において、前記ワイパーエッジ(20)を始点として、前記ランピングエッジ(22)に沿って進むと、各連続するポイントは、その前のポイントよりも前記第3の正中面(ZP)により近接して位置する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項11】
前記第1の軸(X)に平行な視点において、前記ランピングエッジ(22)は、前記第3の正中面(ZP)に対して鋭角的なランピング角(α)を形成し、前記第3の面は(32)は、2つの非ポジティブワイパーレリーフ面(42)を備え、各前記ワイパーレリーフ面(42)は、それぞれのワイパーエッジ(20)から前記第1の正中面(XP)に向かって延伸する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項12】
同じ前記第3の面(32)に属する前記ワイパーレリーフ面(42)および前記ランピングレリーフ面(46)は同一平面上にはない、請求項11に記載のランピングインサート(14)。
【請求項13】
前記第1の軸(X)に平行な視点において、前記鋭角的なランピング角(α)は20度より小さい、請求項11または12に記載のランピングインサート(14)。
【請求項14】
各前記ワイパーレリーフ面(42)は前記第1の正中面(XP)に垂直である、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項15】
前記ワイパーレリーフ面(42)同士の間に延伸する第3のアバットメント面(52)をさらに備える、請求項11乃至14のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項16】
前記第3の正中面(ZP)に平行な前記第2の面(30)の全ての断面において、前記第1の正中面(XP)から各前記第1の面(24)の両側に向かって1つの前記第2の面(30)に沿って進むと、各連続するポイントは、その前のポイントに対して、前記第2の正中面(YP)から同じ距離か、または前記第2の正中面(YP)に近接して位置する、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項17】
前記ランピングインサート(14)は、前記第1、第2および第3の軸(X、Y、Z)の3つすべてに対して、少なくとも180度のカッティングエッジ回転シンメトリーを有する、請求項1乃至16のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項18】
前記ランピングレリーフ面(46)は、研磨されていない面を構成する、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のランピングインサート(14)。
【請求項19】
対向するマシニング端部およびカップリング端部(56、58)を有するランピングツール(10)において、前記マシニング端部(56)は、請求項1乃至18のいずれか一項に記載されたランピングインサート(14)を保持する少なくとも1つのポケット(12)を備える、ランピングツール(10)。
【請求項20】
前記少なくとも1つのポケットは、
第2のポケットアバットメント面(62、64)に開口したねじ穴(66)を有する第2のポケットアバットメント面(62、64)と、
前記第1のポケットアバットメント(60)面から横方向に延伸する第1及び第3ポケットアバットメント面(62、64)と、
前記ポケット(12)内の前記ランピングインサート(14)をクランプするように構成されたクランプネジ(68)と、を備える、請求項19に記載のランピングツール(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の主題は、ランピングツール(ramping tools)に関する。特に、ミリング(milling)、またはランピング(ramping)、ランピングカッティングエッジ(ramping cutting edge)を有するインサート(inserts)に関する。
【背景技術】
【0002】
US7241082は、ランピングカッティングエッジまたはランピング能力を含まない、一般的なミリングの分野からのインサートを開示する。ランピングインサートは、研磨された面(ground surfaces)をほとんど有さない。言い換えれば、ランピングインサートは、プレス・トゥ・サイズ(pressed-to-size)であり、カッティングエッジを含む全てのエッジが、研削の必要が無いように、十分正確にプレスされることを意味する。以下に説明するように、上述したプレス・トゥ・サイズの利点とは別に、プレス方法は、単一軸のみに沿ったダイス(dies)/モールド(molds)/パンチ(punches)移動を含む。特に、US7560068に開示されるようなスプリットダイメソッド(split die method)が使用されている。この単一軸タイプのプレス方法は、少ない数のダイス/パンチパーツを可能にし、製造工程の簡便さを増大し、それゆえ製造コストを大幅に削減する。以下に説明するように、周知のランピングインサートに対するランピング能力を可能にする、新しい特徴である組み合わせとジオメトリーを導入しながら、上述したこれらの利点が維持される。
【発明の概要】
【0003】
この出願の第1の態様に従って、3次元ユークリッド空間の第1、第2および第3の軸の各々について180度回転シンメトリ(symmetry)を有する、両面の(double-sided)、インデックス可能な(indexable)、非ポジティブランピングインサート(non-positive ramping insert)と、第2および第3の軸により定義される第1の正中面(median plane)と、第1および第3の軸により定義される第2の正中面YPと、第1および第2の軸により定義される第3の正中面と、が設けられ、ランピングインサートは、前記第1の正中面の対向側に配置された2つの第1の面と、前記2つの第1の面の間に延伸し、周辺エッジにおいて前記第1の面の各々と交差するインサート周面(insert peripheral surface)とを備え、各第1の面は、2つの高くした角部(raised corners)と2つの低くした角部(lowered corners)を備え、前記高くした角部は、前記低くした角部よりも前記第1の正中面から離間し、前記インサート周面は、2つの第2の面と、前記2つの第2の面の間に延伸する2つの第3の面であり、各第1の面は、正確に2つの対向するカッティング部を備え、各カッティング部は、前記第1の面と第2の面の交点に形成されたメジャーカッティングエッジ(major cutting edge)と、前記高くした角部の1つにおけるコーナーカッティングエッジと、前記コーナーカッティングエッジを介して前記メジャーカッティングエッジに接続されたワイパーエッジと、を備え、各カッティング部は、前記第1の軸に平行な視点においてワイパーエッジから横方向に延伸したランピングエッジを備え、各第3の面は、2つの非ポジティブランピングレリーフ(relief)面のみを備え、各ランピングレリーフ面は、それぞれのランピングエッジから前記第1の正中面方向へ延伸するが、前記第1の正中面を超えることはない。
【0004】
この出願の主題の第3の態様に従って、対向するマシニングおよびカップリングエンド(machining and coupling ends)を有するランピングツールがさらに設けられ、前記マシニングおよび結合端は、ポケット(pocket)と、ポケット内に結合されたランピングインサートと、を備える。
【0005】
以下の特徴のいずれもが、単独でまたは組み合わせて、この出願の主題の任意の上述した態様に適用可能である。各第1の面に、第1のカッティング部の各ランピングエッジは、マイナーコーナーエッジ(minor corner edge)を介して第2のカッティング部のメジャーカッティングエッジに接続される。各周囲エッジにおいて、各マイナーコーナーエッジは、どのメジャーコーナーエッジよりも第1の正中面により近接して位置する。各第1の面で、マイナーコーナーエッジは、コーナーカッティングエッジよりも、第1および第2の軸により定義された第3の正中面に近接している。第1の軸に平行な視点において、ランピングエッジは、第1の正中面と第3の面との間に形成された交線から、少なくとも部分的に離間している。第1の軸に平行な視点において、第1の正中面の手前に位置する第3の面のすべてのポイントは、目に見えるか、または視点に近接する周囲エッジと一致する。クランプホールは、複数の第1の面または複数の第2の面の間に延伸し、および第1の面または第2の面に開口している。
【0006】
各第1の面は、第1の正中面に平行な第1のアバットメント(abutment)面を備える。各第1の面は、第1の正中面を横切る(transverse)第1のアバットメントサブサーフェス(abutment sub-surface)を含むことができる。各第2の面は、第1および第3の軸により定義された第2の正中面に平行な、平面の第2のアバットメント面を含むことができる。各第3の面は、第1および第2の軸により定義された第3の正中面に平行な、平面の第3のアバットメント面を含むことができる。各第2の面は、2つのメジャーレリーフ面を備え、各々は、関連するメジャーカッティングエッジから、前記第1および第3の軸により定義された第2の正中面を横方向に延伸している。各第3の面は、2つのワイパーレリーフ面(wiper relief surfaces)を備え、各々は、関連するワイパーエッジから第1の正中面方向へ延伸している。各第3の面は、それぞれのワイパーエッジから第1の正中面方向へ延伸するワイパーレリーフ面と、前記ワイパーレリーフ面間に延伸する第3のアバットメント面と、を含む。ワイパーレリーフ面は、非研磨面を構成することができる。各ランピングレリーフ面は、第1および第2の軸によって定義された第3の正中面に対して垂直か、または、内部ランピングレリーフ鋭角を形成する。各第3の面は、それぞれのワイパーエッジから第1の正中面の方へ延伸するワイパーレリーフ面を備え、前記ワイパーレリーフ面と、前記ランピングレリーフ面は、同一平面上にはない。
【0007】
第1の軸に平行な視点において、ワイパーエッジを始点として、ランピングエッジに沿って進むと、各連続するポイントは、その前のポイントよりも、第1および第2の軸により定義された第3の正中面に近接して位置する。第1の軸に平行な視点において、ランピングエッジは、直線に見え、第1および第2の軸により定義された第3の正中面に対して鋭角的なランピング角を形成する。ランピングエッジは、連続的である。
【0008】
第2の正中面は、第1および第3の軸により定義され、第3の正中面は、第1および第2の軸により定義され、第2の正中面に平行な任意の第3の面の任意の断面において、第1の正中面から各第3の面に沿って進むと、各連続するポイントは、その前のポイントに対して第3の正中面から同じ距離か、または近接して位置する。第2の正中面は、第1および第3の軸により定義され、第3の正中面は、第1および第2の軸により定義され、第3の正中面に平行な任意の第2の面の任意の断面において、第1正中面から各第2の面に沿って進むと、各連続するポイントは、その前のポイントに対して第2の正中面から同じ距離か、または、近接して位置する。
【0009】
メジャーカッティングエッジは、ランピングエッジより長く、ランピングエッジは、ワイパーエッジより長い。ランピングインサートは、少なくとも180度のカッティングエッジ回転シンメトリー(rotational symmetry)を有する。回転シンメトリーは、機能しないジオメトリー(geometry)を含まない。回転シンメトリーは、チップブレーキング(chip breaking)および偏向面を含まない。
【0010】
ランピングインサートは、ワークピース(workpiece)の90度ショルダー(shoulder)を正確にミリングするように構成されている。第1軸に平行な視点において、ランピングエッジの任意の点に接している直線接線は、第3の正中面に対して20度未満のランピング角を形成する。ワイパーエッジからランピングエッジに沿って進むと、ランピングエッジは、第1正中面への近接性を高める。各ポケットは、開口したネジ穴を有する第2のポケットアバットメント面と、第1のポケットアバットメント面から横方向に延伸する第1および第3のポケットアバットメント面と、およびポケット内のランピングインサートをクランプするように構成されたクランプネジと、を含むことができる。ランピングツールの組み立てられた位置において、第1のアバットメント面は、第1のポケットアバットメント面に隣接し(abuts)、第2のアバットメント面は第2のポケットアバットメント面に隣接し、第3のアバットメント面は、第3のポケットアバットメント面に隣接し、クランプネジは、ネジ穴にねじ山が付けられ、クランプ穴に位置するネジである。
【0011】
この出願の主題のより良き理解のために、および実際にどのように実施されるかを示すために、添付図面が参照される。
適切と考えられる場合、適当な参照番号が、図面間で反復され、対応するまたは類似のエレメントを示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、接線ランピングインサートの等角投影図である。
図2図2は、図1のランピングインサートの第1の面の平面図である。
図3図3は、図1のランピングインサートの第3の面の平面図である。
図4図4は、開口しているクランプ穴を示す図1のランピングインサートの第2の面の平面図である。
図5図5は、第1の面に開口したクランプ穴を示す、図1のランピングインサートの放射状(radial)の実施形態の等角投影図である。
図6図6は、組み立てられた位置内のポケットに固定された、図1のランピングインサートの他の実施形態を有するランピングツールの等角投影図である。
図7図7は、図6のランピングツールの側面図である。
図8図8は、図6のランピングツールの軸方向底面図である。
図9図9は、図6のランピングツールの第3の面の平面図である。
図10図10は、ランピングレリーフ面とワイパーレリーフ面の上を通る図9の線X-Xに沿って切り取られた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、この出願の主題の種々の態様が記載される。説明のために、特定の構成と詳細が十分詳細に記載され、この出願の主題の完全な理解が提供される。しかしながら、ここに提示された特別の構成と詳細無しに、この出願の主題が、実施できることは、当業者に理解されるであろう。
【0014】
図1および6に着目する。ランピングツール10は、複数のポケット12と、ポケットに固定されたランピングインサート14を含む。ランピングインサート14とランピングツール10は、ワークピース内の(所望の許容度内の)90度ショルダーを正確にミリングするように構成される。ランピングインサート14は、それゆえ、少なくとも、メジャーカッティングエッジ16、コーナーカッティングエッジ18、ワイパーエッジ、およびランピングエッジ22のオペレーショナルエッジ(operational edge)を含む。
【0015】
ランピングインサート14は、バインダー(binder)中の炭化物粉末のプレス成形および焼結により、超硬合金のような、典型的に、極めて硬く、耐摩耗性材料から作られる。超硬合金は、例えば、炭化タングステンであり得る。ランピングインサート14は、コーティングされてもよいし、コーティングされなくてもよい。
【0016】
図1乃至4に着目する。ランピングインサート14は、3次元ユークリッド空間の第1、第2および第3の軸X、Y、Zの各々について180度回転シンメトリーを有する。回転シンメトリーは、少なくともマシニング、またはランピングインサート14のオペレーショナルエッジ(operational edge)に関連する。ランピングインサート14は、第2および第3の軸Y、Zにより定義される第1の正中面XP、第1および第3の軸X、Zにより定義される第2の正中面YP、および第1および第2の軸X、Yにより定義される第3の正中面ZPを有する。ランピングインサート14は、前記軸に対して少なくとも180度回転シンメトリーを有する。例えば、ランピングインサート14は、前記いずれの軸に対しても90度シンメトリーを有さない。前記回転シンメトリーは、ランピングエッジ22、コーナーカッティングエッジ18、ワイパーエッジ20およびメジャーカッティングエッジ16のような、少なくとも機能マシニングジオメトリー(functional machining geometry)に関連する。例えば、カッティングエッジ表示/マーキング(連続)数のようないくつかの機能的特徴は、前記回転シンメトリーに含まれない。前記回転シンメトリーは、さらに、例えば、ランピングインサート14のカラーリング(coloring)のような非機能ジオメトリーを含まないか、あるいは関連する。さらに、前記回転シンメトリーは、必ずしもチップブレーキング面(chip breaking surface)または偏向面を含まない。
【0017】
ランピングインサート14は、第1の正中面XPの反対側に位置する、2つの同一の、第1の面24を有する。各第1の面24は、2つの高くした角部18aと、2つの低くした角部38aとを有し、高くした角部18aは、低くした角部38aよりも第1の正中面XPからさらに離間している。ランピングインサート14は、第1の複数の面24間に延伸する、インサート周面26を有する。インサート周面26は、周辺エッジ28において各第1の面24と交差する。各インサート周面26は、第2の正中面YPの反対側に位置する、2つの第2の面30を含む。インサート周面26は、さらに、第3の正中面ZPの反対側に位置する2つの第3の面32をさらに含む。各第3の面32は、2つの第2の面30間に延伸する。ランピングインサート14は、2つの第1の面24(図1-4)、または2つの第2の面30(図5)に延伸し、第1の面24、または第2の面30に開口した、クランプ穴34を有する。
【0018】
図4および図9-10に着目する。ランピングインサート14は、インデックス可能な(indexable)、両面(double-sided)で、非ポジティブ(non-positive)である。「非ポジティブ」という用語は、ランピングインサート14が、(鋭角的なレリーフ角のような)任意のポジティブジオメトリーを有さず、それゆえ、(この分野でネガティブインサートとして知られる)ネガティブストラクチャー/フォーム、および/またはポジティブストラクチャーとして知られるものの反対であるストラクチャーを有する。言い換えれば、第1の正中面XPから垂直方向に、第2または第3の面30、32に沿って進むと、第2および第3の面30、32は、それぞれ第2または第3の正中面YP、ZPから外側に延伸しない。言い換えれば、および下記にさらに詳細に述べるように、周辺エッジ28から延伸するレリーフ面は、第2または第3の正中面YP、ZP(例えば、直角または鋭い内角のみ)に対して、(ランピングインサート14内で、内部的に測定された)、鈍角の内角を形成する。ランピングインサート14の製造中に、フォームプレスプロセス(form-pressing process)が完了すると、現在の新しいジオメトリーは、第1の正中面XPにおいて分割する(splits)分割ダイセット(a splitting die set)からフォームプレスされた(脆い)グリーンボディ(green body)の、容易で、効率的で、信頼度の高い抽出を保証する。
【0019】
それゆえ、第3の正中面ZPに平行な第2の面30の任意の断面において、第1の正中面XPから進むと、第2の面30の各連続するポイントは、その前のポイントよりも、第2の正中面YPから同じ距離で、またはより近接して位置する。さらに、(図9および10に見られるように)第2の正中YPPに平行な第3の面32の任意の断面において、第1の正中面XPから進むと、第3の面32の各連続するポイントは、その前のポイントよりも、第3の正中面ZPから同じ距離か又はそれより近接して位置する。ランピングインサート14は、正確に4つのカッティング部位36を有する。各第1の面24は、正確に2つの対角線的に対向するカッティング部位36を有する。各カッティング部位36は、高くした角部18aに近接したそれぞれの周辺エッジ28に位置する4つのエッジを含む。すなわち、メジャーカッティングエッジ16と、コーナーカッティングエッジ18を介してメジャーカッティングエッジ16に接続されたワイパーエッジ20と、ランピングカッティングエッジ、またはランピングエッジ22と、を含む。各コーナーカッティングエッジ18は、第1の正中面XPから、コーナーカッティングエッジ18の最も高い、または最も遠い部位である、カッティングコーナー頂部19を有する。ランピングエッジ22は、ワイパーエッジ20から、(第1の軸Xに平行な視点において)横方向に延伸する。ワイパーエッジ20とランピングエッジ22は、同一線上にはない。メジャーカッティングエッジ16は、ランピングエッジ22より長い。ランピングエッジ22は、ワイパーエッジ22より長い。図2および3に見られるように、ランピングエッジ22は、第2の正中面YPの両側に延伸する。いくつかの実施形態において、ランピングエッジ22は、対向する2つの面30間で測定されたインサート幅Wの5%と50%との間に、第2の軸Yに沿って延伸することができる。
【0020】
低くした角部18aにおいて、各第1の面24は、正確に2つの対角的に対向するマイナーコーナーエッジ38を含み、各マイナーコーナーエッジ38は、すべての2つのカッティング部位36の間に延伸する。すべてのマイナーコーナーエッジは、最も高い、または、第1の正中面XPから最も遠い、マイナーコーナーエッジ38の部位であるマイナーコーナー頂部37を有する。マイナーコーナーエッジ38は、コーナーカッティングエッジ18よりも第1正中面XPに近接して位置する。マイナーコーナー頂部37は、コーナーカッティング頂部19よりも第1正中面XPにより近接して位置する。さらに、すべての第1の面24上において、マイナーコーナーエッジ38は、(第1の軸Xに平行な視点において)コーナーカッティングエッジ18よりも、第3の正中面ZPに近接している。その上さらに、第1の面24において、マイナーコーナー頂部37は、(第1の軸Xに平行な視点において)コーナーカッティングエッジ18よりも第3の正中面ZPに近接している。すべての第1の面24において、1つのカッティング部位36の各ランピングエッジ22は、マイナーコーナーエッジ38を介して、隣接するカッティング部位36のメジャーカッティングエッジに接続されている。
【0021】
メジャーカッティングエッジ16、コーナーカッティングエッジ18、及びランピングエッジ22は、ワークピースから材料を取り除くように構成されたすべてのシャープカッティングエッジである。それに反して、ワイパーエッジ20は、ワークピースから材料を取り除くように構成されておらず、また取り除くことができず、むしろワイピング(wiping)を実施し、及び/又はオペレーションをスムーズにして、ワークピースの表面仕上げを改善する。さらに、マイナーコーナーエッジ38は、また任意のタイプのマシニング用には構成されておらず、それらは、非鋭利であり、ワークピースから材料を取り除くことができない。
【0022】
各メジャーカッティングエッジ16は、各第1の面24と第2の面30との間の交点に形成される。各第2の面30は、メジャーカッティングエッジ16から第1の正中面XP方向へ延伸するメジャーレリーフ面39を有する。各第1の面24は、メジャーカッティングエッジ16から第1の正中面YP方向へ延伸するメジャーレーキ面(rake surface)40を有する。各メジャーカッティングエッジ16は、マイナーコーナーエッジ38とコーナーカッティングエッジ18との間に延伸する。図4に最もよくみられるように、第2の軸Yに平行な第2の面30の視点において、メジャーカッティングエッジ16は、コーナーカッティングエッジ18から隣接するマイナーコーナーエッジ38にかけて、第1の正中面XPの方向へ傾斜している。別の言い方をすれば、メジャーカッティングエッジ16は、第1の正中面XPに対して横方向に延伸している。
【0023】
各ワイパーエッジ20は、第1の面24と第3の面32との間の交点に形成される。ワイパーエッジ20は、メジャーカッティングエッジ16に対して横方向に延伸する。コーナーカッティングエッジ18は、メジャーカッティングエッジ16を、ワイパーエッジ20と接続する。各第3の面32は、ワイパーエッジ20から第1の正中面XP方向へ延伸するワイパーレリーフ面42を有する。ワイパーレリーフ面42は、第1の正中面XPに対して垂直であり得る。図2に示されるように、第1の軸Xに平行である視点からランピングインサート14を見ると、ワイパーレリーフ面42は、直線として見えることができる。各第1の面24は、ワイパーエッジ20から延伸するワイパー面44を有する。
【0024】
各ランピングエッジ22は、第1の面24と、第3の面32との間の交点にも形成される。第1の軸Xに平行な視点において、ランピングエッジ22は、ワイパーエッジ20から横方向に延伸し、第3の正中面ZPに対して鋭角的なランピング角度を形成することができる。言い換えれば、ワイパーエッジ20からランピングエッジ22に沿って進むと、ランピングエッジ22は、第3の正中面ZP近くで増大する。一般的に言うと、第1の軸Xに平行な視点において、ランピングエッジ22の任意のポイントに接している直線接線Tは、第3正中面ZPに対してランピング角度を形成する。ランピング角度は、0と20度の間の値を受け取る。
【0025】
図3に示すように、各第3の面32は、ランピングエッジ22から、第1の正中面XPの方向であって、第1の正中面XPを超えることなく延伸するランピングレリーフ面46を含む。ランピングレリーフ面46は、(図3および4に示されるように)第1の面XPに対して垂直であり得る。二者択一的に、ランピングレリーフ面46は、(図10の断面図に見られるように)第3の面ZPに対して鋭角的な内部ランピングレリーフ角度βを形成することができる。ワイパーレリーフ面42とランピングレリーフ面46は、同一平面上にはない。
【0026】
この有利なジオメトリーは、ある図、特に、図1および2において何が可視であるかという観点から記載することができる。例えば、ランピングインサート14を、第1の軸Xに平行な視点から見ると、視点(すなわち、図2の前景)により近いランピングレリーフ面46のみが前記視点において見える。別の例では、前記視点において、第1の正中面XPの、視点から最も遠い側に位置するランピングレリーフ面46が見える。さらに、同じ視点において、第1の正中面XPの手前(すなわち、図2の前景)に位置する第3の面32のすべてのポイントは、見えるかまたは周辺エッジ28の可視部位と一致する。さらに別の例において、前記視点において、各ランピングエッジ22は、(例えば、図2に見られるアバットメント面52に沿った、および下記に記載される)第1の正中面XPと第3の面32との間の交線LIから少なくとも部分的に離間している。
【0027】
上述したランピングレリーフ面ジオメトリー、すなわち、各ランピングレリーフ面46は、第1の面XPを超えて(past)延伸せず、インサートは、すべてのカッティングエッジに対して非ポジティブなジオメトリーを有するという事実により、グリーンボディ(green body)上(特に第3の面32上)にアンダーカットを形成することなく2分割ダイ(two-part die)でプレスすることができる。また、このインサート上の各ランピングレリーフ面46は、研磨されていない(non-ground)ランピングレリーフ面、すなわち、その形状がプレスと焼結により決定され、その後の研磨を伴わない、ランピングレリーフ面である。そのような研磨されていないランピングレリーフ面は、一般的に、研磨された面の表面粗さより明らかに大きな表面粗さを有する。(ランピングレリーフ面46と、任意の他のジオメトリー、または第3の面ZPに必ずしも平行ではない、第3の面32のサブサーフェスを形成するように設計された)ダイの少なくとも一部が、ダイ分割ライン(またはこのラインを横切る平面XP)を延伸するシナリオでは、(コーナーのような)望ましくないジオメトリーを本質的に含み、以下の成形プレスに関連する問題を少なくとも引き起こすので、第1の面XPの一方側に対するランピングレリーフ面46の制限に関連する上述の制約は、重要である。(a)エッジと表面精度を妨げる(b)(勾配(grads)/必要以上のジオメトリーにつながる可能性がある)電力漏れ(c)ダイ製作のコストの上昇ダイセットマッチング(die-sets-matching)の反復性を妨げる(d)一般的にプロセスの信頼性を低下させる。
【0028】
各第1の面24は、複数のメジャーレーキ面40間に延伸する第1のアバットメント面(図1、6、8)48を含むことができる。第1のアバットメント面48は、平面であり得、(図1および2に示される)第1の正中面XPに平行に配向されることができる。第1のアバットメント面(図6および8)は、第1の正中面XPから外側に向かって収束する2つの第1のアバットメントサブサーフェス49(abutment sub-surfaces)49を含むことができる。
【0029】
各第2の面30は、複数のメジャーレリーフサーフェス39間に延伸する第2のアバットメント面50を含むことができる。第2のアバットメント面50は、平面であり得、第2の正中面YPに平行に配向されることができる。
【0030】
各第3の面32は、第2の面30間に延伸する第3のアバットメント面52を含む。第3のアバットメント面52は、平面であり得、第3の正中面ZPに平行に配向されることができる。各第3のアバットメント面52は、複数のワイパーレリーフ面42間に延伸することができる。いくつかの実施形態によれば、各第3のアバットメント面52、および隣接するワイパーレリーフ面42は、同一平面上にある。第3のアバットメント面52は、常にランピングエッジ22から離間している。
【0031】
第1、第2、および第3のアバットメント面48、50、52は、研磨して台座(seating)を強化することができる。しかしながら、上述したように、第3のアバットメント面52と同じ第3の面32にあるランピングレリーフ面46は、研磨されない面を構成することができる。
【0032】
図6乃至8に着目する。ランピングツール10は、細長いボディー54またはシャンク(shank)を有し、ツール軸Rの周りを回転する。ランピングツール10は、対向するカップリングおよびマシニング端部56、58を有する。(例えば、図6乃至8に示される)いくつかの実施形態によれば、ポケット12は、ツール軸Rの周りのマシニング端部58に(後述するように)接線方向に配列されている。
【0033】
各ポケット12は、第2のポケットアバットメント面60と、第2のポケットアバットメント面60に横方向に延伸する第1および第3のポケットアバットメント面62、64と、を有する。
【0034】
第2のポケットアバットメント面60は、クランプネジ68を受け入れるように開口した雌ネジ穴66を有する。現在の正接例(tangential example)(図7)によれば、第2のポケットアバットメント面60は、回転軸Rから離れた方向に向いている。いくつかの「ライトハンド(right hand)」ランピングツール(図8)によれば、第1のポケットアバットメント面62は、カップリング端部から、右回転方向に面し、第3のポケットアバットメント面64は、カップリング端部56から回転軸Rに平行な方向に面している。
【0035】
組み立てられた位置において、ランピングインサート14は、ポケット12に据え付けられ(seated)、クランプネジ68は、クランプ穴34内部に取り付けられ、ポケット12内のネジ穴66にねじ込まれる。組み立てられた位置において、クランプとネジ穴34、66は、偏心しているため、ネジが(締め付けられたとき)ランピングインサート14を、第1および第3のアバットメント壁に向かって押し付けることができる。
【0036】
組み立てられた位置において、第1のアバットメント面48は、第1のポケットアバットメント面62に隣接し、第2のアバットメント面50は、第2のポケットアバットメント面60に隣接し、第3のアバットメント面は、第3のポケットアバットメント面64に隣接する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10