(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20230906BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20230906BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20230906BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20230906BHJP
H01M 50/183 20210101ALI20230906BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/12
H01G11/78
H01G11/80
H01M50/183
(21)【出願番号】P 2019551901
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2018033671
(87)【国際公開番号】W WO2019092980
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-03-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2017217329
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018048197
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】山田 正博
(72)【発明者】
【氏名】田丸 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴文
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇
(72)【発明者】
【氏名】前田 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】柘植 昭人
(72)【発明者】
【氏名】塚本 耕司
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】山本 章裕
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-040792(JP,A)
【文献】特開2019-36514(JP,A)
【文献】特開2019-61834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
H01M 6/00-6/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極が積層されてなる積層体と、
前記積層体の積層方向から見て前記電極の縁部を包囲するように前記積層体に設けられたシール部と、を備え、
前記電極は、複数のバイポーラ電極と、負極終端電極と、正極終端電極と、を含み、
前記バイポーラ電極は、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の前記第1面の反対側の第2面に設けられた負極と、を含み、
前記負極終端電極は、前記電極板と当該電極板の前記第2面に設けられた負極とを含み、前記第2面が前記積層体の内側に位置するように、前記積層方向における前記積層体の一端に配置されており、
前記正極終端電極は、前記電極板と当該電極板の前記第1面に設けられた正極とを含み、前記第1面が前記積層体の内側に位置するように、前記積層方向における前記積層体の他端に配置されており、
前記シール部は、複数の前記電極の各々の縁部に設けられた複数の第1シール部と、前記積層方向から見て前記複数の第1シール部を包囲するように前記第1シール部に接合された第2シール部と、を含み、
前記第2シール部は、
前記積層体の前記一端側において前記負極終端電極の縁部に設けられた前記第1シール部である第1終端シール部に当接すると共に、前記積層方向から見て前記第1終端シール部と重なる部分を有する第1フランジ部と、
前記積層体の前記他端側において前記正極終端電極の縁部に設けられた前記第1シール部である第2終端シール部に当接すると共に、前記積層方向から見て前記第2終端シール部と重なる部分を有する第2フランジ部と、を含み、
前記第1フランジ部と前記負極終端電極との組及び前記第2フランジ部と前記正極終端電極との組の少なくとも一方の組は、前記積層方向から見て互いに重なる部分を有しており、
前記複数の第1シール部のそれぞれは、前記電極板の縁部から張り出す張出部分を有し、
前記積層体の前記積層方向における外縁部に含まれる一又は複数の前記第1シール部の前記張出部分の長さが、前記外縁部に含まれない前記第1シール部の前記張出部分の長さよりも短い、蓄電モジュール。
【請求項2】
少なくとも、前記第1フランジ部及び前記負極終端電極は、前記積層方向から見て互いに重なる部分を有している、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
複数の電極が積層されてなる積層体と、
前記積層体の積層方向から見て前記電極の縁部を包囲するように前記積層体に設けられたシール部と、を備え、
前記電極は、複数のバイポーラ電極と、負極終端電極と、正極終端電極と、を含み、
前記バイポーラ電極は、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の前記第1面の反対側の第2面に設けられた負極と、を含み、
前記負極終端電極は、前記電極板と当該電極板の前記第2面に設けられた負極とを含み、前記第2面が前記積層体の内側に位置するように、前記積層方向における前記積層体の一端に配置されており、
前記正極終端電極は、前記電極板と当該電極板の前記第1面に設けられた正極とを含み、前記第1面が前記積層体の内側に位置するように、前記積層方向における前記積層体の他端に配置されており、
前記シール部は、複数の前記電極の各々の縁部に溶着された複数の第1シール部と、前記積層方向から見て前記複数の第1シール部を包囲するように一体的に形成され、前記第1シール部の外表面に溶着された第2シール部と、を含み、
前記第2シール部は、
前記積層体の前記一端側において前記負極終端電極の前記第1面の縁部に溶着された前記第1シール部である第1終端シール部に当接すると共に、前記積層方向から見て前記第1終端シール部と重なる部分を有し、前記第1終端シール部における前記負極終端電極の前記第1面に溶着される面とは反対側の面である外面に溶着された第1フランジ部と、
前記積層体の前記他端側において前記正極終端電極の前記第2面の縁部に溶着された前記第1シール部である第2終端シール部に当接すると共に、前記積層方向から見て前記第2終端シール部と重なる部分を有し、前記第2終端シール部における前記正極終端電極の前記第2面に溶着される面とは反対側の面である外面に溶着された第2フランジ部と、を含み、
前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部は、前記積層方向から見て矩形環状に形成されており、
前記第1フランジ部と前記第1終端シール部と前記負極終端電極
の電極板と
は、前記積層方向から見て互いに重なる第1部分を有し、
前記第2フランジ部と前記第2終端シール部と前記正極終端電極
の電極板とは、前記積層方向から見て互いに重なる
第2部分を有
し、
前記第1部分は、前記積層方向から見て、前記負極終端電極の電極板の縁部の全周に亘って矩形環状に形成されており、
前記第2部分は、前記積層方向から見て、前記正極終端電極の電極板の縁部の全周に亘って矩形環状に形成されている、
蓄電モジュール。
【請求項4】
前記複数の第1シール部のそれぞれは、前記電極板の縁部から張り出す張出部分を有し、
前記積層体の前記積層方向における外縁部に含まれる一又は複数の前記第1シール部の前記張出部分の長さが、前記外縁部に含まれない前記第1シール部の前記張出部分の長さよりも短い、請求項
3に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えた、いわゆるバイポーラ型の蓄電モジュールが知られている(特許文献1参照)。このような蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極を積層してなる積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間をシールする樹脂群が設けられている。隣り合うバイポーラ電極間に形成された内部空間には、電解液が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールにおいては、電解液の漏れ等を防止するために、隣り合うバイポーラ電極間に形成された内部空間を気密に確保することが求められる。
【0005】
本発明の一側面は、電解液の漏液を効果的に抑制できる蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、電極板、電極板の一方面に設けられた正極、及び電極板の他方面に設けられた負極をそれぞれ有する複数のバイポーラ電極が積層されてなる積層体と、各電極板の縁部に設けられ、電極板の端部から張り出す張出部分をそれぞれ有する複数の第1シール部と、を準備する工程と、積層体の積層方向における外縁部に含まれる一又は複数の第1シール部の張出部分の長さが、外縁部に含まれない第1シール部の張出部分の長さよりも短くなるように、一又は複数の第1シール部の張出部分を加工する工程と、型枠内に樹脂材料を流通させる射出成形によって、積層体の積層方向から見て第1シール部の周囲に設けられ、積層体の積層端に位置する第1シール部の積層方向における外側面の少なくとも一部を覆う第2シール部を形成する工程と、を含む。
【0007】
この蓄電モジュールの製造方法では、積層体の外縁部に含まれる一又は複数の第1シール部の張出部分の長さが外縁部に含まれない第1シール部の張出部分の長さよりも短くなるように、当該一又は複数の張出部分が加工される。これにより、外縁部に含まれる一又は複数の第1シール部の張出部分は、外縁部に含まれない第1シール部の張出部分と比較して、捲れ上がり等の変形が抑制される。その結果、射出成形時において、外縁部に含まれる一又は複数の第1シール部の張出部分が捲れ上がって樹脂材料の流路を塞いでしまう虞が低減される。すなわち、射出成形時において、フランジ部(第2シール部のうち、積層体の積層端に位置する第1シール部の外側面の少なくとも一部を覆う部分)に対応する空間に樹脂材料が流れ込み易くなる。以上により、この蓄電モジュールの製造方法によれば、積層体の側面をシールするシール部材(第1シール部及び第2シール部)を精度良く形成することができる。これにより、隣り合うバイポーラ電極間を適切にシールすることができ、電解液の漏液を効果的に抑制できる。
【0008】
加工する工程においては、外縁部に含まれる複数の第1シール部の張出部分を加熱することによって、隣り合う張出部分同士を接合させてもよい。この場合、隣り合う張出部分同士を熱によって接合することにより張出部分の強度を向上させることができる。これにより、射出成形時に流入する樹脂材料の圧力によって、外縁部に含まれる第1シール部の張出部分が変形すること(剥がれ、捲れ上がり等)を一層抑制することができ、フランジ部に対応する空間への樹脂材料の流路が塞がれることを効果的に抑制することができる。
【0009】
加工する工程においては、積層端に近い第1シール部ほど、当該第1シール部の張出部分の長さが短くなるように、外縁部に含まれる複数の第1シール部の張出部分を加工してもよい。この場合、フランジ部に対応する空間への樹脂材料の流路を塞ぐ虞が大きい張出部分(すなわち、積層端に近い第1シール部の張出部分)ほど、その長さが短くなるように加工されることにより、フランジ部に対応する空間への樹脂材料の流路が塞がれることを効果的に抑制することができる。
【0010】
外縁部に含まれる複数の第1シール部の端部は、R形状をなしていてもよい。この場合、蓄電モジュールの耐圧性能を効果的に向上させることができる。
【0011】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、電極板、電極板の一方面に設けられた正極、及び電極板の他方面に設けられた負極をそれぞれ有する複数のバイポーラ電極が積層されてなる積層体と、各電極板の縁部に設けられ、電極板の端部から張り出す張出部分をそれぞれ有する複数の第1シール部と、積層体の積層方向から見て複数の第1シール部の周囲に設けられ、積層体の積層端に位置する第1シール部の積層方向における外側面の少なくとも一部を覆う第2シール部と、を備える。積層体の積層方向における外縁部に含まれる一又は複数の第1シール部の張出部分の長さが、外縁部に含まれない第1シール部の張出部分の長さよりも短い。
【0012】
この蓄電モジュールでは、積層体の外縁部に含まれる一又は複数の第1シール部の張出部分の長さが外縁部に含まれない第1シール部の張出部分の長さよりも短い。これにより、当該蓄電モジュールの製造時において、外縁部に含まれる一又は複数の第1シール部の張出部分は、外縁部に含まれない第1シール部の張出部分と比較して、捲れ上がり等の変形が抑制される。その結果、射出成形時において、外縁部に含まれる一又は複数の第1シール部の張出部分が捲れ上がって樹脂材料の流路を塞いでしまう虞が低減される。すなわち、射出成形時において、フランジ部(第2シール部のうち、積層体の積層端に位置する第1シール部の外側面の少なくとも一部を覆う部分)に対応する空間に、樹脂材料が流れ込み易くなる。以上により、この蓄電モジュールによれば、積層体の側面をシールするシール部材(第1シール部及び第2シール部)を精度良く形成することができる。これにより、隣り合うバイポーラ電極間を適切にシールすることができ、電解液の漏液を効果的に抑制できる。
【0013】
本発明の他の側面に係る蓄電モジュールは、複数の電極が積層されてなる積層体と、積層体の積層方向から見て電極の縁部を包囲するように積層体に設けられたシール部と、を備える。電極は、複数のバイポーラ電極と、負極終端電極と、正極終端電極と、を含む。バイポーラ電極は、電極板と、電極板の第1面に設けられた正極と、電極板の第1面の反対側の第2面に設けられた負極と、を含む。負極終端電極は、電極板と当該電極板の第2面に設けられた負極とを含み、第2面が積層体の内側に位置するように、積層方向における積層体の一端に配置されている。正極終端電極は、電極板と当該電極板の第1面に設けられた正極とを含み、第1面が積層体の内側に位置するように、積層方向における積層体の他端に配置されている。シール部は、複数の電極の各々の縁部に設けられた複数の第1シール部と、積層方向から見て複数の第1シール部を包囲するように第1シール部に接合された第2シール部と、を含む。第2シール部は、積層体の一端側において負極終端電極の縁部に設けられた第1シール部である第1終端シール部に当接すると共に、積層方向から見て第1終端シール部と重なる部分を有する第1フランジ部と、積層体の他端側において正極終端電極の縁部に設けられた第1シール部である第2終端シール部に当接すると共に、積層方向から見て第2終端シール部と重なる部分を有する第2フランジ部と、を含む。第1フランジ部と負極終端電極との組及び第2フランジ部と正極終端電極との組の少なくとも一方の組は、積層方向から見て互いに重なる部分を有している。
【0014】
蓄電モジュールは、使用されることにより、その内部にガスを発生させる。当該ガスにより蓄電モジュール内の内圧が上昇する。このような内圧の上昇が生じると、積層体の最外層(積層体の一端又は他端)において、積層方向に沿って内側から外側への圧力が作用することになる。この場合、積層体の最外層に配置された部材のうち比較的強度が低い第1シール部(第1終端シール部又は第2終端シール部)が脆弱部となる。そして、例えば、このような脆弱部が上記圧力を受けて内側から外側に向けて変形すると、当該変形部分から蓄電モジュール内部に蓄えられた電解液が漏出するおそれが高くなる。一方、上述した本発明の他の側面に係る蓄電モジュールでは、第1フランジ部と負極終端電極との組及び第2フランジ部と正極終端電極との組の少なくとも一方の組が、積層体の積層方向から見て互いに重なる部分を有している。すなわち、上記2つの組の少なくとも一方において、脆弱部(第1終端シール部又は第2終端シール部)のみで上記圧力を受けることがないように各部材(第1フランジ部と負極終端電極との組又は第2フランジ部と正極終端電極との組)が配置されている。これにより、蓄電モジュールの耐圧強度の向上が図られており、上述したような電解液が漏出するおそれが低減されている。従って、上記蓄電モジュールによれば、電解液の漏液を効果的に抑制できる。
【0015】
上記蓄電モジュールにおいて、少なくとも、第1フランジ部及び負極終端電極は、積層方向から見て互いに重なる部分を有していてもよい。電解液としてアルカリ水溶液が用いられる蓄電モジュールにおいては、いわゆるアルカリクリープ現象によって、積層体の負極側の端部(他端)からの電解液の漏液が発生し易くなる。このため、上記構成によれば、蓄電モジュールの負極側の端部における耐圧強度を向上させて拘束圧を高めることができるため、電解液の漏液をより一層効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、電解液の漏液を効果的に抑制できる蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】蓄電モジュールを備える蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】第1実施形態の蓄電モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図3】
図2に示される蓄電モジュールの要部拡大断面図である。
【
図4】
図2に示される蓄電モジュールの製造工程を説明するための図である。
【
図5】
図2に示される蓄電モジュールの製造工程を説明するための図である。
【
図6】
図2に示される蓄電モジュールの製造工程を説明するための図である。
【
図7】比較例に係る蓄電モジュールの製造工程を説明するための図である。
【
図8】第1の変形例に係る蓄電モジュールを示す概略断面図である。
【
図9】第2の変形例に係る蓄電モジュールを示す概略断面図である。
【
図11】
図10に示される解析モデルによる解析結果を示す図である。
【
図12】第2実施形態の蓄電モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図13】
図12に示される蓄電モジュールの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面にはXYZ直交座標系が示される。
【0019】
[第1実施形態]
[蓄電装置の構成]
図1は、蓄電モジュールを備える蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。同図に示される蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置10は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール12を備えるが、単一の蓄電モジュール12を備えてもよい。蓄電モジュール12は例えばバイポーラ電池である。蓄電モジュール12は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0020】
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層され得る。積層方向D1(Z方向)から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向D1において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向D1に直列に接続される。積層方向D1において、一端に位置する導電板14には正極端子24が接続されており、他端に位置する導電板14には負極端子26が接続されている。正極端子24は、接続される導電板14と一体であってもよい。負極端子26は、接続される導電板14と一体であってもよい。正極端子24及び負極端子26は、積層方向D1に交差する方向(X方向)に延在している。これらの正極端子24及び負極端子26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0021】
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の空隙14aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙14aは例えば積層方向D1に交差する方向(Y方向)に延在する。積層方向D1から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。
【0022】
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電板14を積層方向D1に拘束する拘束部材16を備え得る。拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)とを備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向D1から見て、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きくなっており、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。積層方向D1から見て、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向D1から見て、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H2が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。積層方向D1から見て各拘束プレート16A,16Bが矩形形状を有している場合、挿通孔H1及び挿通孔H2は、拘束プレート16A,16Bの角部に位置する。
【0023】
一方の拘束プレート16Aは、負極端子26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、正極端子24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔H1に通され、他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向D1に拘束荷重が付加される。
【0024】
図2は、蓄電モジュール12を示す概略断面図である。
図3は、蓄電モジュール12の要部拡大断面図である。具体的には、
図3は、蓄電モジュールを構成する積層体の積層方向D1における外縁部(上側縁部及び下側縁部の各々)のうち、X方向における一方側(
図2の図示左側)の部分を拡大して示した図である。なお、蓄電モジュールの概略構成を示す
図2においては、積層体の外縁部の詳細な構成(
図3に示される外縁部Eの構成)の図示は省略されている。
【0025】
図2及び
図3に示されるように、蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極(電極)32が積層された積層体30を備える。バイポーラ電極32の積層方向D1から見て積層体30は例えば矩形形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ40が配置され得る。バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の一方面に設けられた正極36と、電極板34の他方面に設けられた負極38とを含む。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極36は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極38は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極36と対向している。積層方向D1において、積層体30の一端には、内側面に負極38が配置された電極板34(負極終端電極)が配置され、積層体30の他端には、内側面に正極36が配置された電極板34(正極終端電極)が配置される。負極終端電極の負極38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極36と対向している。正極終端電極の正極36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極38と対向している。これら終端電極の電極板34はそれぞれ隣り合う導電板14(
図1参照)に接続される。
【0026】
蓄電モジュール12は、積層方向D1に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50を備える。枠体50は、積層方向D1から見て積層体30の周囲に設けられている。具体的には、枠体50は、積層体30の側面30aを取り囲むように構成されている。枠体50は、各電極板34の縁部34aに設けられ、電極板34の端部34bから張り出す張出部分52bをそれぞれ有する複数の第1シール部52と、積層方向D1から見て複数の第1シール部52の周囲に設けられる第2シール部54と、を備えている。
【0027】
枠体50の内壁を構成する第1シール部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の一方面(ここでは正極36が形成される面)から縁部34aにおける電極板34の端面にわたって設けられている。積層方向D1から見て、各第1シール部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34a全周にわたって設けられている。隣り合う第1シール部52同士は、各バイポーラ電極32の電極板34の他方面(ここでは負極38が形成される面)の外側に延在する面において当接している。その結果、第1シール部52には、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aが埋没して保持されている。各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aと同様に、積層体30の両端に配置された電極板34の縁部34aも第1シール部52に埋没した状態で保持されている。具体的には、正極終端電極については、正極終端電極の外側面(導電板14に接続される面)にも、第1シール部52が設けられている。すなわち、正極終端電極の縁部34aは、正極終端電極の外側面に設けられた第1シール部52(
図2において1番下に設けられた第1シール部52)と、正極終端電極の一方面に設けられた第1シール部52とに埋没した状態で保持されている。積層方向D1に隣り合う電極板34,34間には、当該電極板34,34と第1シール部52とによって気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。
【0028】
枠体50の外壁を構成する第2シール部54は、積層方向D1を軸方向として延在する筒状部である。第2シール部54は、積層方向D1において積層体30の全長にわたって延在する。第2シール部54は、積層方向D1に延在する第1シール部52の外側面を覆っている。第2シール部54は、後述する射出成形によって形成されている。第2シール部54は、積層方向D1における両端部の各々において、内側に延在する矩形環状のフランジ部54aを有している。フランジ部54aは、積層体30の積層端に位置する第1シール部52の積層方向D1における外側面の少なくとも一部を覆う部分である。積層体30は、積層方向D1における両端部に形成されるフランジ部54aによって挟持されている。
【0029】
電極板34は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。或いは、電極板34は、ニッケルめっき鋼板であってもよい。電極板34の縁部34aは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第1シール部52に埋没して保持される領域となっている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の他方面における負極38の形成領域は、電極板34の一方面における正極36の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0030】
セパレータ40は、例えばシート状に形成されている。セパレータ40を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ40は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0031】
枠体50を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0032】
図3に示されるように、積層体30の積層方向D1における外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bの長さd1が、外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短い。ここで、張出部分52bの長さとは、電極板34の端部34bから張出部分52bの端部52a(すなわち、第1シール部52の先端部)までの長さである。また、外縁部Eとは、積層体30の積層方向D1における外側の一部分であり、積層体30において最も外側の電極板34(正極終端電極又は負極終端電極)を少なくとも含む部分である。本実施形態では一例として、負極終端電極を含む外縁部E1は、負極終端電極、及び負極終端電極と隣接する3つの電極板34を含んでいる。正極終端電極を含む外縁部E2は、正極終端電極、及び正極終端電極と隣接する3つの電極板34を含んでいる。
【0033】
本実施形態では一例として、複数(ここでは4つ)の第1シール部52によって形成される外縁部E1における角部は、面取りされた形状をなしている。このような面取り形状は、負極終端電極に設けられた第1シール部521の加工前の張出部分52bと、負極終端電極と隣接する3つの電極板34に設けられた3つの第1シール部522~524の各々の加工前の張出部分52bとを合わせた領域のうち、当該領域の隅部に相当する直角二等辺三角形状の領域が除去されることによって形成されている。これにより、第1シール部521~524の各々の張出部分52bの長さd11~d14(ここでは一例として平均長さ(すなわち、張出部分52bの積層方向D1における中心部における長さ))は、いずれも外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短くなっている。また、積層体30のうち複数の第1シール部52と複数の電極板34とが重なる部分の積層方向D1における幅t1は、積層体30のうち複数の第1シール部52の張出部分52bが互いに重なる部分の外側端部の積層方向D1における幅t2よりも大きくなっている。
【0034】
蓄電モジュール12の外縁部E2における構成は、上述した外縁部E1における構成と同様である。具体的には、
図3に示されるように、蓄電モジュール12の外縁部E2における構成は、蓄電モジュール12の外縁部E1における構成とほぼ対称的な構成である。すなわち、複数(ここでは4つ)の第1シール部52によって形成される外縁部E2における角部は、外縁部E1における角部と同様に面取りされた形状をなしている。このような形状は、正極終端電極に設けられた第1シール部525,526の加工前の張出部分52bと、正極終端電極と隣接する2つの電極板34に設けられた2つの第1シール部527,528の各々の加工前の張出部分52bとを合わせた領域のうち、当該領域の隅部に相当する直角二等辺三角形状の領域が除去されることによって形成されている。これにより、第1シール部525~528の各々の張出部分52bの長さは、外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短くなっている。
【0035】
[蓄電装置の製造方法]
次に、
図4~
図6を参照して、
図1に示される蓄電装置10の製造方法(蓄電モジュール12の製造方法を含む)の一例について説明する。
【0036】
(準備工程)
まず、
図4に示されるように、積層体30及び複数の第1シール部52が準備される。例えば、それぞれ第1シール部52が予め電極板34の縁部34aに形成された複数のバイポーラ電極32を、セパレータ40を介して積層することにより、積層体30が得られる。積層体30は、例えば、複数の第1シール部52の端部52aの位置を揃えるようにして、複数のバイポーラ電極32及びセパレータ40を積層することにより形成される。これにより、複数の第1シール部52の端部52aの位置が揃った積層体30が得られる。
【0037】
(加工工程)
続いて、
図5に示されるように、積層体30の積層方向D1における外縁部E(外縁部E1及び外縁部E2)に含まれる一又は複数の第1シール部52の各々の張出部分52bが加工される。具体的には、外縁部E1に含まれる一又は複数の第1シール部52(ここでは、4つの第1シール部521~524)の張出部分52bの長さが、外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短くなるように、当該一又は複数の第1シール部52の張出部分52bが加工される。ここでは一例として、第1シール部521~524の各々の加工前の張出部分52bを合わせた領域のうち、当該領域の隅部に相当する直角二等辺三角形状の領域R1が除去される。
【0038】
このような面取り形状(ここでは領域R1)は、電極板34の縁部34aが露出しない程度(すなわち、電極板34の縁部34aが第1シール部52に被覆された状態が維持される程度)に、任意に定められ得る。例えば、領域R1の斜辺以外の1辺の長さd3は、設計値として予め定められた長さd2(張出部分52bの端部34bからの飛び出し量)の所定割合(例えば4分の3)を上限として定められてもよい。例えば、長さd2が2mmである場合、長さd3は、長さd2の4分の3である1.5mmを上限として設定されてもよい。この場合、外縁部E1における複数の第1シール部52の端部52aは、C1.5で加工されたC面となる。なお、長さd3の大きさにより、面取り形状を形成する第1シール部52の個数は変化し得る。例えば、
図5の例では、4つの第1シール部52によって面取り形状(領域R1)が形成されているが、長さd3をこれよりも短くした場合には、1個~3個の第1シール部52によって面取り形状が形成され得る。
【0039】
ここで、面取り形状(領域R1)は、例えば、第1シール部521~524の各々の加工前の張出部分52bの端部を加熱することによって形成され得る。例えば、第1シール部521~524の各々の加工前の張出部分52bを合わせた領域のうち領域R1に相当する領域は、加熱されて溶かされることによって除去される。この場合、隣り合う第1シール部52の張出部分52b同士が熱によって固定(溶着)され、外縁部E1に含まれる張出部分52bの強度を向上させることができる。これにより、後述する射出成形工程時に流入する樹脂材料RMの圧力によって当該張出部分52bが変形すること(剥がれ、捲れ上がり等)を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では一例として、上述したような面取り加工によって、積層体30の積層端に近い第1シール部52ほど、当該第1シール部52の張出部分52bの長さが短くなるように、外縁部E1に含まれる4つの第1シール部52(第1シール部521~524)の張出部分52bが加工される。具体的には、第1シール部521~524の各々の張出部分52bの長さd11~d14について、「d11<d12<d13<d14」が成立している。
【0041】
外縁部E2についても外縁部E1と同様に加工される。すなわち、外縁部E2に含まれる一又は複数の第1シール部52(ここでは、4つの第1シール部525~528)の張出部分52bの長さが、外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短くなるように、当該一又は複数の第1シール部52の張出部分52bが加工される。具体的には、上述したような外縁部E1に対する加工処理と同様の加工処理によって、第1シール部525~528の各々の加工前の張出部分52bを合わせた領域のうち、当該領域の隅部に相当する直角二等辺三角形状の領域R2が除去される。
【0042】
(射出成形工程)
続いて、
図6に示されるように、型枠M内に樹脂材料RMを流通させる射出成形を実行する。型枠Mに設けられた開口Maを介して、型枠Mと複数の第1シール部52との間に形成される空間に樹脂材料RMが流れ込むことにより、第2シール部54(
図3参照)が形成される。当該射出成形によって、積層体30の積層端に位置する第1シール部52(ここでは、負極終端電極に設けられた第1シール部521及び正極終端電極に設けられた第1シール部525)の積層方向D1における外側面の少なくとも一部を第2シール部54が覆うように、第2シール部54が形成される。すなわち、当該射出成形により、フランジ部54a(
図3参照)を有する第2シール部54が形成される。
【0043】
[第1実施形態の作用効果]
以上述べたように、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法は、積層体30及び複数の第1シール部52を準備する工程(準備工程)と、積層体30の積層方向D1における外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bの長さd1が、外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短くなるように、一又は複数の第1シール部52の張出部分52bを加工する工程(加工工程)と、型枠M内に樹脂材料RMを流通させる射出成形によって、積層方向D1から見て第1シール部52の周囲に設けられ、積層体30の積層端に位置する第1シール部52の積層方向における外側面の少なくとも一部を第2シール部54が覆う第2シール部54を形成する工程(射出成形工程)と、を含む。
【0044】
この蓄電モジュールの製造方法では、積層体30の外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bの長さd1が外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短くなるように、当該一又は複数の張出部分52b(本実施形態では一例として、外縁部E1に含まれる4つの第1シール部521~524の張出部分52b及び外縁部E2に含まれる4つの第1シール部525~528の張出部分52b)が加工される。これにより、外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bは、外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bと比較して、捲れ上がり等の変形が抑制される。その結果、射出成形時において、積層体30の外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bが捲れ上がって樹脂材料RMの流路を塞いでしまう虞が低減される。すなわち、射出成形時において、フランジ部54a(第2シール部54のうち、積層体30の積層端に位置する第1シール部52の外側面の少なくとも一部を覆う部分)に対応する空間に樹脂材料RMを流し込み易くすることができる。以上により、この蓄電モジュールの製造方法によれば、積層体30の側面30aをシール(封止)するシール部材(第1シール部52及び第2シール部54)を精度良く形成することができる。
【0045】
図7に示される比較例を参照して、上記効果について補足する。当該比較例は、上述した準備工程の後に直ちに射出成形工程を実施した例である。すなわち、比較例では、積層体30の積層方向D1における外縁部に含まれる第1シール部52の張出部分52bに対する加工(加熱、切削等)が実施されておらず、当該張出部分52bの長さは、外縁部に含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さと同一となっている。このため、比較例においては、
図7に示されるように、負極終端電極側及び正極終端電極側のそれぞれ(或いは一方)において、終端電極に設けられた第1シール部52が、フランジ部54aに対応する空間Sへの流路を塞ぐように捲れ上がる虞がある。
図7の例では、終端電極に設けられた第1シール部52だけでなく、その隣の第1シール部52も捲れ上がっている。このような事態が生じてしまうと、樹脂材料RMが空間Sに適切に流れ込まず、第2シール部54(
図3参照)を適切に形成できない虞がある。一方、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法では、上述した通り、加工工程によって外縁部Eに含まれる第1シール部52の張出部分52bの捲れ上がりを抑制しているため、フランジ部54aに対応する空間Sに樹脂材料RMを適切に流し込むことができる。
【0046】
また、加工工程においては、外縁部Eに含まれる複数の第1シール部52の張出部分52bを加熱することによって、隣り合う張出部分52b同士が溶着(接合)させられる。このように、隣り合う張出部分52b同士を熱によって溶着することにより、外縁部Eに含まれる複数の第1シール部52の張出部分52bの強度を向上させることができる。これにより、射出成形時に流入する樹脂材料RMの圧力によって外縁部Eに含まれる複数の第1シール部52の張出部分52bが変形すること(捲れ上がり等)を一層抑制することができる。その結果、フランジ部54aに対応する空間への樹脂材料RMの流路が塞がれることを効果的に抑制することができる。
【0047】
また、加工工程においては、積層端に近い第1シール部52ほど、当該第1シール部52の張出部分52bの長さが短くなるように、外縁部Eに含まれる複数の第1シール部52の張出部分52bが加工される。フランジ部54aに対応する空間Sへの樹脂材料RMの流路を塞ぐ虞が大きい張出部分52b(すなわち、積層端に近い第1シール部52の張出部分52b)ほど、その長さが短くなるように加工されることにより、フランジ部54aに対応する空間Sへの樹脂材料RMの流路が塞がれることを効果的に抑制することができる。
【0048】
本実施形態に係る蓄電モジュール12は、電極板34、電極板34の一方面に設けられた正極36、及び電極板34の他方面に設けられた負極38をそれぞれ有する複数のバイポーラ電極32が積層されてなる積層体30と、各電極板34の縁部34aに設けられ、電極板34の端部34bから張り出す張出部分52bをそれぞれ有する複数の第1シール部52と、積層体30の積層方向D1から見て複数の第1シール部52の周囲に設けられ、積層体30の積層端に位置する第1シール部52の積層方向D1における外側面の少なくとも一部を覆う第2シール部54と、を備えている。積層体30の積層方向D1における外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bの長さd1は、外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短い。
【0049】
この蓄電モジュール12では、積層体30の外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bの長さd1が外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bの長さd2よりも短い。これにより、蓄電モジュール12の製造時において、外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bは、外縁部Eに含まれない第1シール部52の張出部分52bと比較して、捲れ上がり等の変形が抑制される。その結果、射出成形時において、外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の張出部分52bが捲れ上がって樹脂材料RMの流路を塞いでしまう虞が低減される。すなわち、射出成形時において、フランジ部54a(第2シール部54のうち、積層体30の積層端に位置する第1シール部52の外側面の少なくとも一部を覆う部分)に対応する空間Sに、樹脂材料RMが流れ込み易くなる。以上により、蓄電モジュール12によれば、積層体30の側面30aをシールするシール部材(第1シール部52及び第2シール部54)を精度良く形成することができる。
【0050】
以上、本発明の第1実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、
図8に示される第1の変形例に係る蓄電モジュール12Aのように、積層体30の上側及び下側のそれぞれの外縁部に含まれる複数(ここでは2つ)の第1シール部52Aの張出部分52bの一部が積層方向D1に平行な方向に沿って切除されることにより、階段状の切欠き形状が形成されてもよい。このような構成においても、外縁部に含まれる第1シール部52Aの張出部分52bの捲れ上がりを抑制でき、射出成形工程において、フランジ部54aに対応する空間に樹脂材料を流し込み易くすることができる。
【0051】
また、外縁部Eに含まれる一又は複数の第1シール部52の端部52aの形状は、必ずしも熱による加工によって形成されなくてもよく、例えば当該一又は複数の第1シール部52の張出部分52bの切削加工によって形成されてもよい。
【0052】
また、
図9に示される第2の変形例に係る蓄電モジュール12Bのように、外縁部Eに含まれる複数の第1シール部52の端部52aは、R形状をなしていてもよい。すなわち、外縁部Eに含まれる複数の第1シール部52の端部52aにより形成される面は、上述したようなC面加工によって形成されたC面に限られず、R面加工によって形成されたR面(丸みを帯びた面)であってもよい。R面加工は、例えば、R形状が形成された熱板を複数の第1シール部52の端部52aに押し当てること等によって行われ得る。ただし、R面加工は、その他の加工方法であってもよく、例えば機械的な切断処理であってもよい。
【0053】
ここでは一例として、負極終端電極に設けられた第1シール部52B1の加工前の張出部分52bと、負極終端電極と隣接する3つの電極板34に設けられた3つの第1シール部52B2~52B4の加工前の張出部分52bとを合わせた領域の一部が、R面加工によって除去されている。これにより、4つの第1シール部52B1~52B4の端部52aによってR面が形成されている。その結果、第2シール部54のうち第1シール部52B1~52B4の端部52aに接する部分には、第1シール部52B1~52B4の端部52aの形状に対応したR面部54bが形成されている。
【0054】
同様に、正極終端電極に設けられた第1シール部52B5の加工前の張出部分52bと、正極終端電極と隣接する3つの電極板34に設けられた3つの第1シール部52B6~52B8の加工前の張出部分52bとを合わせた領域の一部が、R面加工によって除去されている。これにより、4つの第1シール部52B5~52B8の端部52aによってR面が形成されている。その結果、第2シール部54のうち第1シール部52B5~52B8の端部52aに接する部分には、第1シール部52B5~52B8の端部52aの形状に対応するR面部54bが形成されている。
【0055】
第2シール部54にR面部54bが形成されることにより、蓄電モジュール12Bの耐圧性能を効果的に向上させることができる。これについて、
図10及び
図11を参照して詳細に説明する。
【0056】
図10は、解析モデルSMを示す概略図である。解析モデルSMは、蓄電モジュールの内圧上昇によって、正極終端電極の電極板34と当該電極板34に設けられた第1シール部52とが第2シール部54のフランジ部54aを押し上げる際の動作をシミュレートするために用意されたモデルの一例である。解析モデルSMは、実際の蓄電モジュールの構成とは異なる。解析モデルSMにおいて、フランジ部54aの厚み(積層方向D1における長さ)は、1.13mmに設定されている。フランジ部54aの張出長さ(フランジ部54aの基端部と先端部との間の距離)は、4.1mmに設定されている。フランジ部54aの先端部と導電板14との距離は、0.5mmに設定されている。なお、解析モデルSMでは、実際の蓄電モジュールの構成とは異なり、第1シール部52と導電板14とが接触している。
【0057】
図11は、上述した解析モデルSMによる解析結果を示すグラフである。
図11に示される解析結果は、R面部54bの中央部分(
図10の領域A1)、及び第1シール部52と第2シール部54との接着部分(
図10の領域A2)のそれぞれについて、各部分が破断(剥離)する際(クライテリア到達時)の内圧(解析モデルSMの内部空間S1の内圧)とR面部54bのR形状の寸法(円の半径)であるRサイズとの関係を示している。
【0058】
図11において、グラフG1は、領域A1のクライテリア到達時における内部空間S1の内圧とRサイズとの関係を示しており、グラフG2は、領域A2のクライテリア到達時における内部空間S1の内圧とRサイズとの関係を示している。グラフG1,G2の破線部分は、他のRサイズに対応する計算結果に基づく外挿によって得られた推定値である。
図11に示されるように、解析モデルSMを用いた解析によって、蓄電モジュールの内圧上昇による影響を受けやすいいずれの領域A1,A2においても、R面部54bのRサイズが大きい程、耐圧性能が向上するという解析結果が得られた。具体的には、Rサイズが1mmであるR面部54bを形成することにより、R面部54bが設けられない場合(Rサイズが0の場合)と比較して、領域A1が破断する際の内圧(破壊圧力)を約0.4MPa(推定値)から約1MPaまで上げることが可能であり、領域A2が破断する際の内圧(破壊圧力)を約1.5MPa(推定値)から約2.7MPaまで上げることが可能であることを示す解析結果が得られた。
【0059】
なお、蓄電モジュール12Bでは、複数(ここでは4つ)の第1シール部52の端部52aによって滑らかなR形状が形成される形態を例示したが、複数の第1シール部52の端部52aによって形成されるR形状は、階段状に形成された疑似的なR形状であってもよい。
【0060】
[第2実施形態]
図12に示されるように、第2実施形態に係る蓄電モジュール12Cは、積層体130と、積層方向Dから見て電極(複数のバイポーラ電極132、負極終端電極132A、及び正極終端電極132B)の縁部を包囲するように積層体130に設けられた枠体150(シール部)と、を有している。積層体130の積層方向Dは、蓄電装置10の積層方向Dと一致している。積層体130は、積層方向Dに延びる側面130aを有している。
【0061】
バイポーラ電極132は、バイポーラ電極32と同様に、電極板134、電極板134の第1面134aに設けられた正極136、電極板134の第1面134aの反対側の第2面134bに設けられた負極138を含んでいる。正極136は、正極36と同様に、正極活物質が電極板134に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極138は、負極38と同様に、負極活物質が電極板134に塗工されることにより形成される負極活物質層である。積層体130において、一のバイポーラ電極132の正極136は、セパレータ140を挟んで積層方向Dに隣り合う他のバイポーラ電極132の負極138と対向している。積層体130において、一のバイポーラ電極132の負極138は、セパレータ140を挟んで積層方向Dに隣り合うさらに他のバイポーラ電極132の正極136と対向している。
【0062】
負極終端電極132Aは、電極板134、及び電極板134の第2面134bに設けられた負極138を含んでいる。負極終端電極132Aは、その第2面134bが積層体130の内側(積層方向Dについての中心側)になるように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極132Aの負極138は、セパレータ40と同様のセパレータ140を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極132の正極136と対向している。正極終端電極132Bは、電極板134、及び電極板134の第1面134aに設けられた正極136を含んでいる。正極終端電極132Bは、その第1面134aが積層体130の内側になるように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極132Bの正極136は、セパレータ140を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極132の負極138と対向している。
【0063】
負極終端電極132Aの電極板134の第1面134aには、導電板14が接触している。また、正極終端電極132Bの電極板134の第2面134bには、蓄電モジュール12Cに隣接する他方の導電板14が接触している。拘束部材16からの拘束荷重は、導電板14を介して負極終端電極132A及び正極終端電極132Bから積層体130に付加される。すなわち、導電板14は、積層方向Dに沿って積層体130に拘束荷重を付加する拘束部材でもある。
【0064】
枠体150は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。枠体150は、電極板134の縁部134cを包囲するように積層体130の側面130aに設けられている。枠体150は、側面130aにおいて縁部134cを保持している。枠体150は、縁部134cに溶着された複数の第1シール部151と、側面130aに沿って第1シール部151を外側から包囲するように第1シール部151に接合された単一の第2シール部152と、を有している。
【0065】
第1シール部151は、積層方向Dから見て、矩形環状をなし、縁部134cの全周にわたって連続的に設けられている。第1シール部151は、電極板134の第1面134aに溶着されて気密に接合されている。第1シール部151は、例えば超音波又は熱によって溶着されている。第1シール部151は所定の厚さ(積層方向Dの長さ)を有するフィルムである。電極板134の端面は、第1シール部151から露出している。第1シール部151の内側の一部は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板134の縁部134c同士の間に位置しており、外側の一部は、電極板134から外側に張り出している。第1シール部151は、当該外側の一部において第2シール部152に埋設されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1シール部151同士は、互いに離間している。
【0066】
第2シール部152は、積層体130及び第1シール部151の外側に設けられ、蓄電モジュール12Cの外壁(筐体)を構成している。第2シール部152は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って積層体130の全長にわたって延在している。第2シール部152は、積層方向Dを軸方向として延在する筒状(環状)を呈している。第2シール部152は、例えば、射出成型時の熱によって第1シール部151の外表面に溶着(接合)されている。
【0067】
第2シール部152は、第1シール部151と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極132の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極132Aとバイポーラ電極132との間、及び、積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極132Bとバイポーラ電極132との間をそれぞれ封止している。これにより、バイポーラ電極132の間、負極終端電極132Aとバイポーラ電極132との間、及び、正極終端電極132Bとバイポーラ電極132との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ140、正極136及び負極138内に含浸されている。
【0068】
第1シール部151及び第2シール部152は、例えば、絶縁性の樹脂であって、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等から構成され得る。
【0069】
第2シール部152は、積層方向Dにおける一端側において負極終端電極132Aの縁部に設けられた第1シール部151である第1終端シール部151Aに接合された第1フランジ部153を有している。第1終端シール部151Aは、負極終端電極132Aの電極板134の第1面134aに溶着されている。第1フランジ部153は、積層方向Dから見て第1終端シール部151Aと重なる部分を有している。第1フランジ部153は、積層体130の一端側において、積層方向Dから見て内側に延在する矩形環状に形成されている。第1フランジ部153は、第1終端シール部151Aの外面(電極板134の第1面134aに溶着される面とは反対側の面)に当接している。第1フランジ部153は、第1終端シール部151Aの外面に溶着されている。
【0070】
第2シール部152は、積層方向Dにおける他端側において正極終端電極132Bの縁部に設けられた第1シール部151である第2終端シール部151Bに接合された第2フランジ部154を有している。第2終端シール部151Bは、正極終端電極132Bの電極板134の第2面134bに溶着されている。第2フランジ部154は、積層方向Dから見て第2終端シール部151Bと重なる部分を有している。第2フランジ部154は、積層体130の他端側において、積層方向Dから見て内側に延在する矩形環状に形成されている。第2フランジ部154は、第2終端シール部151Bの外面(電極板134の第2面134bに溶着される側の面とは反対側の面)に当接している。第2フランジ部154は、第2終端シール部151Bの外面に溶着されている。
【0071】
図13に示されるように、第1フランジ部153及び負極終端電極132Aは、積層方向Dから見て互いに重なる部分153aを有している。すなわち、積層方向Dから見て、第1フランジ部153の内側端部153bは負極終端電極132Aの電極板134の端部134dよりも内側に位置している。部分153aは、積層方向Dから見て、負極終端電極132Aの電極板134の縁部の全周に亘って、矩形枠状に形成されている。部分153aの幅w(すなわち、積層方向Dから見て第1フランジ部153、第1終端シール部151A、及び負極終端電極132Aが重なる部分の幅)は、例えば、第1終端シール部151Aの厚さ(積層方向Dの長さ)の10倍程度に設定される。
【0072】
ここで、蓄電モジュール12Cは、使用されることにより、その内部(各内部空間V)にガスを発生させる。当該ガスにより蓄電モジュール12C内の内圧が上昇する。このような内圧の上昇が生じると、蓄電モジュール12Cの構造上、積層体130の最外層(積層体130の一端又は他端)において、積層方向Dに沿って内側から外側への圧力が作用することになる(
図13の矢印を参照)。この場合、積層体130の最外層に配置された部材のうち比較的強度が低い第1シール部151(第1終端シール部151A又は第2終端シール部151B)が脆弱部となる。そして、例えば、このような脆弱部が上記圧力を受けて内側から外側に向けて変形すると、当該変形部分から蓄電モジュール12Cの内部に蓄えられた電解液が漏出するおそれが高くなる。
【0073】
一方、上述した蓄電モジュール12Cでは、第1フランジ部153と負極終端電極132Aとの組が、積層方向Dから見て互いに重なる部分(積層方向Dから見て部分153aと重なる部分)を有している。すなわち、脆弱部(第1終端シール部151A)のみで上記圧力を受けることがないように各部材(第1フランジ部153と負極終端電極132Aとの組)が配置されている。これにより、蓄電モジュール12Cの耐圧強度の向上が図られており、上記脆弱部の変形が抑制されている。その結果、上述したような電解液が漏出するおそれが低減されている。従って、蓄電モジュール12Cによれば、電解液の漏液を効果的に抑制できる。
【0074】
なお、本実施形態では、第2フランジ部154と正極終端電極132Bとの組も、第1フランジ部153と負極終端電極132Aとの組と同様に、積層方向Dから見て互いに重なる部分(オーバーラップ部分)を有している。このように、負極終端電極132A側及び正極終端電極132B側の両方において、オーバーラップ部分が存在することにより、効果的に蓄電モジュール12Cの耐圧強度を向上させることができる。これにより、蓄電モジュール12Cの積層方向Dにおける拘束圧を向上させることができ、その結果として負極終端電極132A側又は正極終端電極132B側からの電解液の漏液を効果的に抑制できる。ただし、第1フランジ部153と負極終端電極132Aとの組及び第2フランジ部154と正極終端電極132Bとの組の少なくとも一方の組が、積層方向Dから見て互いに重なる部分を有していてもよい。このような場合にも、蓄電モジュール12Cの耐圧強度及び拘束圧の向上を図ることができ、その結果として電解液の漏液を抑制できる。
【0075】
また、電解液としてアルカリ水溶液が用いられる蓄電モジュール12Cにおいては、いわゆるアルカリクリープ現象によって、積層体130の負極側の端部(他端)からの電解液の漏液が発生し易くなる。このため、蓄電モジュール12Cのように、少なくとも第1フランジ部153及び負極終端電極132Aが積層方向Dから見て互いに重なる部分を有する構成によれば、蓄電モジュール12Cの負極側の端部における耐圧強度を向上させて拘束圧を高めることができるため、アルカリクリープ現象による電解液の漏液をより一層効果的に抑制できる。
【0076】
また、部分153aの幅w(すなわち、積層方向Dから見て第1フランジ部153、第1終端シール部151A、及び負極終端電極132Aが重なる部分の幅)は、蓄電モジュール12Cの耐圧強度が飽和状態(幅wの増加量に対して耐圧強度が一定以上上昇しなくなった状態)となる大きさに設定されることが好ましい。重複部分の大きさ(幅w)を必要十分な大きさとすることにより、第2シール部152の材料コストを低減できる。
【0077】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、第1実施形態及び第2実施形態のいずれにおいても、蓄電モジュールの電解液の漏液を効果的に抑制できる。また、第1実施形態及び第2実施形態は、互いに組み合わせられてもよい。その場合、第1実施形態の効果及び第2実施形態の効果の両方の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
10…蓄電装置、12,12A,12B,12C…蓄電モジュール、30,130…積層体、30a,130a…側面、32,132…バイポーラ電極、34,134…電極板、34a…縁部、34b…端部、36,136…正極、38,138…負極、50,150…枠体、52,52A,52B1~52B8,151,521~528…第1シール部、52b…張出部分、54,152…第2シール部、54a…フランジ部、54b…R面部、132A…負極終端電極、132B…正極終端電極、151A…第1終端シール部、151B…第2終端シール部、153…第1フランジ部、154…第2フランジ部、D1…積層方向、E,E1,E2…外縁部、M…型枠、RM…樹脂材料。