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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】慢性腎臓病の診断及び治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/06 20060101AFI20230906BHJP
   G01N 33/84 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61K33/06
G01N33/84 Z
A61P13/12
A61P43/00 171
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019557859
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2018035385
(87)【国際公開番号】W WO2018222865
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】62/513,396
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/567,623
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390037914
【氏名又は名称】マース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ビオユジュ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブルーク,ディルク ヘンドリック ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ジェプソン,ロザンヌ エレン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユー-メイ
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133909(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/092158(WO,A1)
【文献】特表2012-519201(JP,A)
【文献】日腎薬誌,2013年,2(1),3-9
【文献】Int Urol Nephrol,2009年,41,357-362
【文献】Nefrologia,2013年,33(3),389-399
【文献】Kidney Ind Rep,2017年,2,380-389
【文献】Clin J Am Soc Nephrol,2012年,7,810-819
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/06
G01N 33/84
A61P 13/12
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とするネコの慢性腎臓病(CKD)を治療又はその進行を遅延させる方法であって、
a.前記ネコの血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;
b.前記マグネシウムの量を所定の基準値と比較すること(ここで、前記所定の基準値はCKDを有さない対照集団における血漿tMgのガウス分布の95%基準範囲の下限値である);及び
c.前記マグネシウムの量が前記所定の基準値を下回る場合に、前記ネコを治療するためにマグネシウム又はその塩を含む組成物を前記ネコに投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
それを必要とするネコの慢性腎臓病(CKD)を治療又はその進行を遅延させる方法であって、
前記ネコが所定の基準値と比較してマグネシウム欠乏症を有し、
前記方法が、有効量のマグネシウム又はその塩を含む組成物を投与することを含み、
前記所定の基準値がCKDを有さない対照集団における血漿tMgのガウス分布の95%基準範囲の下限値である、方法。
【請求項3】
前記マグネシウムがマグネシウム配位錯体内にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マグネシウムの量が、前記組成物に基いて約50mg/1000Kcal~約500mg/1000Kcalの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
マグネシウムを含む前記組成物が、少なくとも1日に1回、前記ネコに投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
それを必要とするネコの慢性腎臓病(CKD)の進行を治療又は遅延させるための、有効量のマグネシウム又はその塩を含む、ペットフード組成物であって、
前記ネコが所定の基準値と比較してマグネシウム欠乏症を有し、
前記所定の基準値がCKDを有さない対照集団における血漿総マグネシウム濃度(tMg)のガウス分布の95%基準範囲の下限値である、組成物。
【請求項7】
前記マグネシウムがマグネシウム配位錯体内にある、請求項6に記載のペットフード組成物。
【請求項8】
前記マグネシウムの量が、約50mg/1000Kcal~約500mg/1000Kcalである、請求項6に記載のペットフード組成物。
【請求項9】
前記マグネシウムの量が、1日分又は単位用量あたり約50mg~約100mgである、請求項6に記載のペットフード組成物。
【請求項10】
前記マグネシウムの量が、前記ペットフード組成物の質量で約0.25質量%以下である、請求項6に記載のペットフード組成物。
【請求項11】
それを必要とするネコの慢性腎臓病(CKD)を治療又はその進行を遅延させるためのマグネシウムの使用であって、
前記ネコが、所定の基準値と比較してマグネシウム欠乏症を有し、
前記所定の基準値がCKDを有さない対照集団における血漿総マグネシウム濃度(tMg)のガウス分布の95%基準範囲の下限値である、使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願は、その各々の内容がここに参照することによってそれらの全体が本明細書に援用され、その優先権が主張される、2017年5月31日出願の米国仮特許出願第62/513,396号及び2017年10月3日出願の米国仮特許出願第62/567,623号に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示の主題は、家畜又はペット(例えば、ネコ又はイヌ)などの動物における慢性腎臓病(CKD)を診断及び治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
慢性腎疾患又は慢性腎不全としても知られる慢性腎臓病(CKD)は、数ヶ月又は数年にわたる進行性の腎機能低下である。CKDはさまざまな条件及び機構によって引き起こされる可能性があり、人間と他の哺乳動物の両方、特にネコに影響を及ぼす。老齢のネコの腎機能は経時とともに徐々に低下し、末期疾患につながる。
【0004】
腎疾患に罹患している動物では、幾つかの血液指標を使用して疾患の重症度を判断する。これらの指標には、血中尿素窒素(BUN)、リン、線維芽細胞成長因子23(FGF23)、副甲状腺ホルモン(PTH)、及びクレアチニンが含まれる。動物の腎臓に損傷を与えると腎臓が老廃物をろ過するのに不十分になることから、腎不全の過程で血流中のBUN、リン、及びクレアチニンのレベルが増加する。慢性腎臓病の早期にリン滞留が起こり、結果的にFGF23及びPTHの血清濃度が上昇する。FGF23及びPTHの血清濃度の増加も腎疾患の進行に寄与し、さらに、慢性腎疾患の骨ミネラル代謝異常に寄与する可能性がある。
【0005】
食餌療法、高血圧の制御、及び血液透析を含む、CKDの進行を治療又は遅延させるさまざまな手法が試みられている。現在の食餌療法には、食品タンパク質とリンの量を減らすことが含まれる。しかしながら、動物のタンパク質のニーズが満たされていないため、このような食事は他の問題を引き起こす可能性がある。したがって、当技術分野には依然として、CKDの進行を治療又は遅延させることができるペットフード組成物が必要とされている。
【0006】
ネコ及びイヌでCKDを病期分類するためのスキームは、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)によって開発された(www.iris-kidney.com。非特許文献1も参照)。病期分類システムの基礎は、血漿クレアチニン濃度である。この病期分類システムは幅広く採用されているが、しかしながら、当技術分野ではCKDの進行の他の側面を監視し、治療オプションを最適化する方法の必要性が依然として必要とされている。
【0007】
高リン血症は、ネコのCKDの明確に文書化されている後遺症であり1-5、死亡及び高窒素血症の進行のリスク増加と関連している6-8。リン酸の滞留は、腎臓が食事摂取のバランスをとるのに十分なリン酸を排泄できないことに起因する9,10。正常な血中リン酸塩値を維持するための身体の作用は、続発性腎性副甲状腺機能亢進症及びFGF-23過剰をもたらす10。これらのホルモン異常は、CKDの初期段階での明白な高リン血症を予防するが11、骨の病理及び軟組織石灰化に寄与すると考えられており、リン酸カルシウム恒常性の障害は、CKD-骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)を含む10,12,13。FGF-23自体は、CKDを患うネコの生存及び進行の強力な予測因子である。食餌リン酸制限は、ネコのCKD管理の中心であり、血漿リン酸、FGF-23、及びPTH濃度を低下させ、生存率を改善することが示されている14-18
【0008】
最近、ヒトCKD-MBDにおけるマグネシウムの役割に対する関心が高まっている。多くの細胞内プロセスに不可欠なミネラルであることに加えて19、マグネシウムは、血管石灰化20-22及び線維化促進性サイトカインの放出23の阻害剤であると考えられている。ヒトCKD患者の死亡率24-28及びおそらくは腎機能低下23,24の危険因子として低マグネシウム血症が特定された。高いリン酸値は、血清総マグネシウム濃度(tMg)が低い患者の死亡率27及び末期腎疾患への進行23のより高いリスクとのみ関連していたことから、tMgはさらに、CKDを患うヒトの高リン血症に関連するリスクを修正するように見えた。興味深いことに、これら2つの変数間の逆相関が血液透析中のヒトCKD患者で観察され29、マグネシウム欠乏食を与えられたげっ歯類ではFGF-23濃度が増加したことから30,31、マグネシウムはFGF-23調節に関与している可能性がある。
【0009】
ネコCKD-MBDにおけるマグネシウムの役割についてはほとんど知られていない。高窒素CKDを患うネコを対象とした研究では、末期疾患で血漿tMgの有意な増加が見られたが、CKDの初期段階のネコでは最大25%で低血漿tMgが観察された。マグネシウムの状態の予後的意義も、マグネシウムとFGF-23との関係も、CKDを患うネコについては調査されていない。したがって、これに関するさらなる調査が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Elliott et al., Dietary therapy for feline chronic kidney disease, Encyclopedia of feline clinical nutrition, 2nd edition, 2015
【発明の概要】
【0011】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、それを必要とする動物の慢性腎臓病(CKD)を治療又はその進行を遅延させる方法を提供する。ある特定の実施態様では、本方法は、動物の血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;マグネシウムの量を所定の基準値と比較すること(ここで、所定の基準値は対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている);及び、マグネシウムの量が第1の所定の値を下回る場合に、該動物にマグネシウム又はその塩を含む組成物を提供して該動物を治療することを含む。
【0012】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、それを必要とする動物におけるCKDを治療する、又はその進行を遅延させる方法を提供し、ここで、該動物は、所定の基準値と比較してマグネシウム欠乏症を有している。ある特定の実施態様では、本方法は、有効量のマグネシウム又はその塩を含む組成物を投与することを含み、所定の基準値は、対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている。
【0013】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、それを必要とする動物におけるCKDを治療又はその進行を遅延させる方法を提供する。ある特定の実施態様では、本方法は、動物の血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;マグネシウムの量を所定の基準値と比較すること(ここで、所定の基準値は対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている);及び、マグネシウムの量が第1の所定の値を下回るか、第2の所定の基準値を上回る場合に、該動物に治療計画を提供すること、を含む。
【0014】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、CKDのリスクのある動物を診断及び治療する方法を提供する。ある特定の実施態様では、本方法は、動物から血液サンプルを得ること;動物の血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;マグネシウムの量を所定の基準値と比較すること(ここで、所定の基準値は対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている);マグネシウムの量が第1の所定の値を下回るか、第2の所定の基準値を上回る場合に、CKDのリスクがあると動物を診断すること;及び、マグネシウムの量が第1の所定の値を下回るか、第2の所定の基準値を上回る場合に、該動物に治療計画を提供することを含む。
【0015】
ある特定の実施態様では、本開示の主題で提供される方法は、動物の血液サンプル中のFGF23の量を決定するステップ;FGF23の量を第3の所定の基準値と比較するステップをさらに含み、ここで、所定の基準値は対照集団における血中の平均FGF23レベルに基づいており、第2の所定の基準値と比較して高いFGF23レベルは効果的な治療の可能性が高いことを示している。
【0016】
ある特定の実施態様では、本開示の主題で提供される治療計画は、有効量のマグネシウム又はその塩を含む組成物の投与、リン酸摂取の低減、タンパク質摂取の低減、多価不飽和脂肪酸の投与、リン酸結合剤療法の実施、カリウムの投与、食餌性ナトリウム摂取の低減、及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの治療計画を含む。
【0017】
ある特定の実施態様では、本開示の主題で提供される治療計画は、食餌療法、血液透析、腎代替療法、腎臓を損傷する化合物の除去、腎臓移植、腎臓を損傷する処置の遅延又は回避、利尿剤投与の変更、及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの治療計画を含む。
【0018】
ある特定の実施態様では、本開示の主題で提供される方法はさらに、血液サンプル中のリン酸塩、クレアチニン、血中尿窒素(BUN)、及び副甲状腺ホルモン(PTH)からなる群より選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定すること、並びに少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を第4の所定の基準値と比較することを含み、ここで、第4の所定の基準値を上回るリン酸塩、クレアチニン、血中尿窒素(BUN)及び/又は副甲状腺ホルモン(PTH)の量は、効果的な治療の可能性が高いことを示す。
【0019】
ある特定の実施態様では、本開示の主題で提供される方法は、動物におけるFGF23の量を低下させるのに十分な期間、動物を組成物で維持することをさらに含む。
【0020】
ある特定の実施態様では、血液サンプル中のマグネシウムの量は、対照集団の血中のマグネシウムの平均量の約50%未満である。
【0021】
ある特定の実施態様では、血液サンプル中のFGF23又はさらなるバイオマーカーの量は、対照集団の血中におけるFGF23又はさらなるバイオマーカーの平均量の少なくとも約150%である。
【0022】
ある特定の実施態様では、本開示の主題で提供される方法はさらに、動物の血圧を決定すること、該血圧を第5の所定の基準値と比較すること、及び血圧が第5の所定の基準値を上回る場合に、高血圧の予防又は治療計画を実施することを含む。
【0023】
ある特定の実施態様では、マグネシウムは、マグネシウム配位錯体内にある。
【0024】
ある特定の実施態様では、治療計画は、有効量のマグネシウム又はその塩を含む組成物を投与することである。
【0025】
ある特定の実施態様では、マグネシウムの量は、約50mg/1000Kcal~約500mg/1000Kcalである。
【0026】
ある特定の実施態様では、マグネシウムを含む組成物は、少なくとも1日に1回、動物に供給される。
【0027】
ある特定の実施態様では、マグネシウムの量は、質量分析、蛍光、又は発光によって決定される。
【0028】
ある特定の実施態様では、FGF23の量は、酵素免疫測定法(ELISA)によって決定される。
【0029】
ある特定の実施態様では、動物はイヌ又はネコなどの愛玩動物である。
【0030】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、それを必要とする動物において、CKDを治療又はその進行を遅延させるために有効量のマグネシウム又はその塩を含むペットフード組成物を提供する。
【0031】
ある特定の実施態様では、マグネシウムの量は、1日分又は単位用量あたり約50mg~約100mgである。
【0032】
ある特定の実施態様では、マグネシウムの量は、ペットフード組成物に質量で約0.25質量%以下である。
【0033】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、それを必要とする動物にCKDを治療又はその進行を遅延させるためのマグネシウムの使用を提供し、ここで、該動物は、所定の基準値と比較してマグネシウム欠乏症を有し、所定の基準値は対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている。
【0034】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、動物の慢性腎臓病を予測及び/又は定量化するためのバイオマーカーとしての血中のマグネシウムレベルの使用を提供し、ここで、所定の基準値と比較したマグネシウムレベルは、それを必要とする動物の慢性腎臓病を治療するための食餌介入の必要性の基礎を提供する。
【0035】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、動物の血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;マグネシウムの量を所定の基準値と比較することを含む、動物における慢性腎臓病(CKD)を診断するための方法を提供し、ここで、所定の基準値は対照集団における血中の平均マグネシウムレベルに基づいており、第1の所定の値を下回る又は第2の所定の基準値を上回るマグネシウムの量は、CKDの存在又は可能性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】血漿総マグネシウム濃度によって四分位に分類された高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコの血漿FGF-23濃度を示すグラフ
図2A】血中の総マグネシウムに対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ。破線は、老齢のネコの血漿FGF23の基準範囲の上限(700pg/mL)を表している。
図2B】血中のFGF23に対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ。破線は、老齢のネコの血漿FGF23の基準範囲の上限(700pg/mL)を表している。
図2C】血中のリン酸に対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ。破線は、老齢のネコの血漿FGF23の基準範囲の上限(700pg/mL)を表している。
図3A】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコの総マグネシウムに対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図3B】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコのFGF23に対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図3C】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコのクレアチニンに対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図3D】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコの対称ジメチルアルギニン(SDMA)に対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図3E】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコのリン酸に対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図3F】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコの収縮期血圧に対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図3G】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコのカリウムに対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図3H】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコのカルシウムに対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図3I】高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコの副甲状腺ホルモン(PTH)に対するマグネシウム補給剤の効果を示すグラフ
図4】IRISステージ2~4のCKDを患うネコの血漿総マグネシウム濃度を示すグラフ。IRISステージ4のCKDを患うネコでは、IRISステージ2のCKD(平均,2.04mg/dL;SD,0.261)及び3のCKD(平均,2.04mg/dL;SD,0.361)を患うネコと比較して、有意に高い血漿マグネシウム濃度が観察された(平均,3.01mg/dL;SD,1.206;P<0.001)。低マグネシウム血症の有病率(95%CI)は、IRISステージ2、3、及び4で、それぞれ、9%(4~14)、18%(7~29)、及び10%(0~27)であった。高マグネシウム血症の有病率は、IRISステージ2(3%;95%CI,0~6)及び3(6%;95%CI,0~13)と比較して、IRISステージ4で有意に高かった(50%;95%CI,19-81;P<0.001)。箱は25パーセンタイルと75パーセンタイルの中央値を表しており、ひげは範囲を表している。破線は、血漿総マグネシウムの基準範囲の下限及び上限(1.73~2.57mg/dL)を示している。
図5】マグネシウム状態によってさらに分割されたIRISステージ2~4のCKDを患うネコの血漿FGF-23濃度を示すグラフ。低マグネシウム血症を患うネコ(tMg<1.73mg/dL)は、各ステージにおいて、正常マグネシウム血のネコと比較して有意に高い血漿FGF-23を有していた。箱は25パーセンタイルと75パーセンタイルの中央値を表しており、ひげは範囲を表している。破線は、血漿FGF-23の基準範囲の上限(700pg/mL)を示している。
図6】血漿tMg濃度の中央値(2.04mg/dL)でさらに分割されたIRISステージ2及び3のCKDを患う、正常なリン酸血(NP)及び高リン血症(HP)のネコの血漿FGF-23濃度を示すグラフ。正常なリン酸血(P=0.003)のネコ及び高リン血症のネコ(P=0.004)の両方において、中央値を下回るtMgを有するネコの血漿FGF-23が有意に高かった。箱は25パーセンタイルと75パーセンタイルの中央値を表しており、ひげは範囲を表している。破線は、血漿FGF-23の基準範囲の上限(700pg/mL)を示している。
図7】マグネシウム状態によって分類された高窒素血CKDを患うネコの生存を示す、カプラン・マイヤー曲線を示すグラフ。高窒素CKDの診断での低マグネシウム血症を患うネコ(青い曲線;1/20打ち切り;HR,2.92;95%CI,1.78~4.82;P<0.001)及び高マグネシウム血症を患うネコ(灰色の曲線;0/11打ち切り;HR,2.88;95%CI,1.54~5.38;P=0.001)は、正常マグネシウム血のネコ(黒い曲線;23/143打ち切り)と比較して死亡のリスクが増加していた。単変量解析では、低マグネシウム血症のネコと高マグネシウム血症のネコとの間で生存率に有意な差は認められなかった(P=0.951)。打ち切り例にはチェックマークを入れる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
今日まで、CKDを治療するためのペットフード組成物、並びにCKDの進行を監視し治療計画を最適化する方法が依然として必要性とされている。本出願は、マグネシウム及びFGF23を含むがこれらに限定されない、動物のCKDを診断するためのバイオマーカー、並びにそれを使用してCKDを治療する方法に関する。本出願はまた、CKDを治療するための有効量のマグネシウムを含むペットフード製品も提供する。明確にするためであって限定はしないが、現在開示されている主題の詳細な説明は、以下のサブセクションに分けられている:
1.定義;
2.バイオマーカー;
3.治療方法;及び
4.最終製品。
【0038】
1.定義
本明細書で用いられる用語は、概して、本発明の文脈内及び各用語が使用される特定の文脈内で、当技術分野における通常の意味を有する。本発明の方法及び組成物並びにそれらを製造及び使用する方法を説明する際に、実施者に追加のガイダンスを提供するために、以下又は本明細書の他の場所で、ある特定の用語が論じられる。
【0039】
本明細書で用いられる場合、特許請求の範囲及び/又は明細書で「含む」という用語と併せて用いられる単語「a」又は「an」の使用は、「1つ」を意味する場合もあるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又はそれより多く」と言う意味とも一致する。さらには、「有する」、「含む」、「含有する」、及び「包含する」という用語は交換可能であり、当業者はこれらの用語がオープンエンドの用語であることを認識している。
【0040】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内であることを意味し、これは、一部には、値を測定又は決定する方法、すなわち、測定システムの制限に依存するものである。例えば、「約」は、当技術分野の慣行に従って、3以内又は3を超える標準偏差を意味しうる。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、さらに好ましくは5%まで、さらになお好ましくは1%までの範囲を意味しうる。あるいは、特に生物学的システム又はプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、さらに好ましくは2倍以内を意味しうる。
【0041】
物質の「効果的な治療」又は「有効量」という用語は、臨床結果を含む有益又は望ましい結果をもたらすのに十分な治療又は物質の量を意味し、したがって、「効果的な治療」又は「有効量」は、それが適用される文脈に依存する。CKDのリスクを低減するための組成物の投与、及び/又はCKDの進行を治療又は遅延させるための組成物の投与の文脈において、本明細書に記載される組成物の有効量は、CKDを治療及び/又は改善、並びに、CKDの症状を軽減及び/又は可能性を低減するのに十分な量である。本明細書に記載される効果的な治療は、CKDを治療及び/又は改善、並びに、CKDの症状を軽減及び/又は可能性を低減するのに十分な治療である。低減は、CKDの症状の重症度又はCKDの可能性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の低下でありうる。有効量は、1回以上の投与回数で投与することができる。本明細書に記載される効果的な治療の可能性は、治療が有効である、すなわち、CKDを治療及び/又は改善,並びに症状を軽減するのに十分な可能性である。
【0042】
本明細書で用いられる場合、当技術分野で十分に理解されているように、「治療」は、臨床結果を含む有益な又は望ましい結果を得るための手法である。この主題の目的のために、有益な又は望ましい臨床結果には、1つ以上の症状の緩和又は改善、疾患の程度の減少、疾患の安定した(すなわち悪化しない)状態、疾患の予防、疾患の進行の遅延又は減速、及び/又は疾患状態の改善又は緩和が含まれるが、これらに限定されない。低減は、合併症又は症状の重症度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の低下でありうる。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味しうる。
【0043】
用語「ペットフード」又は「ペットフード組成物」又は「ペットフード製品」又は「最終ペットフード製品」とは、ネコ、イヌ、モルモット、ウサギ、トリ、又はウマなどの愛玩動物による消費を目的とする製品又は組成物を意味する。例えば、限定はしないが、愛玩動物は、例えば、イエイヌ(Canis lupus familiaris)などの「飼い」イヌでありうる。ある特定の実施態様では、愛玩動物は、イエネコ(Felis domesticus)などの「飼い」ネコでありうる。「ペットフード」又は「ペットフード組成物」又は「ペットフード製品」又は「最終ペットフード製品」には、任意の食品、飼料、スナック、栄養補給剤、液体、飲料、おやつ、おもちゃ(噛むことができるおもちゃ及び/又は消費できるおもちゃ)、食事代用品、又は食事代替品が含まれる。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「所定の基準値」又は「基準値」という用語はバイオマーカーの閾値レベルを指し、これと比較することにより、CKDの診断を行うことができる。基準値は、閾値又は基準範囲でありうる。ある特定の実施態様では、基準値は、ROC曲線解析から導出することができ、特異度をユーザ定義の閾値より上に保ちつつ、感度を最大化するものとして基準値を選択する。ある特定の実施態様では、基準値は、感度を、例えば80%の感度など、ユーザ定義の閾値よりも高く保ちつつ、特異度を最大化するものとして選択することができる。ある特定の実施態様では、CKDを有する被験体においてバイオマーカーが増加する場合、すなわち所定のアルゴリズムが正論理である場合、基準値は健康な被験体の集団から生成されるバイオマーカーレベルの範囲の上限とすることができる。逆に、CKDを有する被験体においてバイオマーカーが減少する場合、すなわちアルゴリズムが負論理である場合、基準値はバイオマーカーレベルの範囲の下限であるか、あるいは健康な被験体の集団から生成することができる。
【0045】
「対照集団」という用語は、慢性腎臓病を有しておらず、かつ変数が操作されていない動物の対照群を意味する。対照群に含まれる動物の選択は、遺伝的背景、平均健康状態、年齢、栄養履歴、予防接種、又は予防的治療に基づくことができる。ある特定の実施態様では、対照集団は、同様の遺伝的背景、年齢、及び平均健康状態を有する少なくとも3匹、好ましくは少なくとも10匹、さらに好ましくは少なくとも50匹の動物の群でありうる。
【0046】
2.バイオマーカー
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、慢性腎臓病(CKD)のリスクがある動物を診断及び/又はCKDの進行を決定するバイオマーカー及びその使用方法を提供する。
【0047】
本明細書で用いられる「バイオマーカー」という用語は、目的の疾患の漸進的発達に関連する任意の生体化合物を指す。特に、CKDを診断するためのバイオマーカーは、CKDの進行に関連する任意の生体化合物である。腎疾患の治療は、CKDの進行に関連するバイオマーカーが示すCKDの進行に応じて調整することができ、回復の予測はバイオマーカーを監視することによって決定することができる。
【0048】
ある特定の実施態様では、バイオマーカーはマグネシウムである。ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、動物の血中の総マグネシウムである。ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、動物の血清中のマグネシウムである。ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、動物の血漿中のマグネシウムである。ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、動物の尿サンプル中のマグネシウムである。
【0049】
ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの変化はCKDと関連している。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの増加は、CKDの進行及び/又はCKDを発症するリスクの増加を示唆する。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの低下は、CKDの進行及び/又はCKDを発症するリスクの増加を示唆する。ある特定の実施態様では、対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づく所定の基準値と比較して高いマグネシウムレベルは、CKDの進行及び/又はCKD発症リスクの増加を示唆する。ある特定の実施態様では、対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づく所定の基準値と比較して低いマグネシウムレベルは、CKDの進行及び/又はCKD発症リスクの増加を示唆する。
【0050】
ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの変化は、死亡率及び/又は生存率と関連している。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの増加は、死亡率の増加及び/又は生存率の低下を示唆する。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの低下は、死亡率の増加及び/又は生存率の低下を示唆する。ある特定の実施態様では、対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づく所定の参照値と比較してより高いマグネシウムレベルは、より高い死亡率及び/又はより低い生存率を示唆する。ある特定の実施態様では、対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づく所定の参照値と比較してより低いマグネシウムレベルは、より高い死亡率及び/又はより低い生存率を示唆する。
【0051】
ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの変化は、高リン血症動物の死亡率の増加と関連している。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの増加は、高リン血症動物の死亡率の増加を示唆する。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの低下は、高リン血症動物の死亡率の増加を示唆する。ある特定の実施態様では、対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づく所定の基準値と比較して高いマグネシウムレベルは、高リン血症動物のより高い死亡率を示唆する。ある特定の実施態様では、対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づく所定の基準値と比較して低いマグネシウムレベルは、高リン血症動物のより高い死亡率を示唆する。
【0052】
ある特定の実施態様では、慢性腎臓病(CKD)のリスクがある動物を診断及び治療する方法は、動物から血液サンプルを得ること;動物の血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;マグネシウムの量を所定の基準値と比較すること(ここで、所定の基準値は対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている);マグネシウムの量が第1の所定の値を下回るか、第2の所定の基準値を上回る場合に、CKDのリスクがあると動物を診断すること;及び、マグネシウムの量が第1の所定の値を下回るか、第2の所定の基準値を上回る場合に、該動物に治療計画を提供することを含む。
【0053】
ある特定の実施態様では、バイオマーカーはさらに、線維芽細胞成長因子23(FGF23)を含む。ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、動物の血中の総FGF23である。ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、動物の血清中のFGF23である。ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、動物の血漿中のFGF23である。ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、動物の尿サンプル中のFGF23である。
【0054】
ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルは、動物のFGF23レベルと逆相関している。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの低下は、動物のFGF23レベルの増加を示唆する。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの増加は、動物のFGF23レベルの低下を示唆する。
【0055】
ある特定の実施態様では、慢性腎臓病(CKD)のリスクがある動物を診断及び治療する方法はさらに、動物の血液サンプル中のFGF23の量を決定するステップ;FGF23の量を第3の所定の基準値と比較するステップを含み、ここで、所定の基準値は対照集団における血中の平均FGF23レベルに基づいており、第2の所定の基準値と比較して高いFGF23レベルは効果的な治療の可能性が高いことを示唆する。
【0056】
ある特定の実施態様では、バイオマーカーは、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーを含む。ある特定の実施態様では、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーは、米国特許出願公開第2012/0077690号明細書、同第2013/0323751号明細書、欧州特許出願公開第3,112,871号明細書、同第2,462,445号明細書、及び同第3,054,301号明細書に開示されている腎バイオマーカーから選択される。ある特定の実施態様では、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーは、リン酸塩、クレアチニン、血中尿窒素(BUN)、及び副甲状腺ホルモン(PTH)からなる群より選択され、ある特定の実施態様では、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーは、リン酸塩、クレアチニン、血中尿窒素(BUN)、副甲状腺ホルモン(PTH)、対称ジメチルアルギニン(SDMA)、収縮期血圧、カリウム、総カルシウム、ヒアルロン酸、細胞死受容体5、トランスフォーミング増殖因子-β1、フェリチン、ベータグロビン、カタラーゼ、アルファグロビン、上皮成長因子受容体経路基質8、ムチンアイソフォーム前駆体、エズリン、デルタグロビン、モエシン、リンタンパク質アイソフォーム、アネキシンA2、ミオグロビン、ヘモペキシン、セリンプロテアーゼ阻害剤、セルピンペプチダーゼ阻害剤、CD14抗原前駆体、フィブロネクチンアイソフォームプレタンパク質、アンジオテンシノーゲンプレタンパク質、補体成分前駆体、炭酸脱水酵素、ウロモジュリン前駆体、補体因子H、補体成分4BP、ヘパラン硫酸プロテオグリカン2、オルファクトメジン-4、ロイシンリッチアルファ-2グリコプロテイン、リングフィンガータンパク質167、インターアルファグロブリン阻害剤H4、ヘパラン硫酸プロテオグリカン2、N-アシルシンゴシンアミノヒドロラーゼ、セリンプロテアーゼ阻害剤クレードAメンバー1、ムチン1、クラステリンアイソフォーム1、BASP1(brain abundant membrane attached signal protein 1)、ジペプチダーゼ1、フィブロネクチン1アイソフォーム5プレタンパク質、アンギオテンシノーゲンプレプロタンパク質、炭酸脱水酵素、ウロモジュリン前駆体、メタロプロテアーゼ阻害剤2、インスリン様成長因子結合タンパク質7、免疫グロブリンA、免疫グロブリンG1、免疫グロブリンG2、アルファ-1アンチトリプシン、血清アミロイドP成分、肝細胞成長因子、細胞間接着分子1、ベータ-2-グリコプロテイン1、インターロイキン-1ベータ、好中球エラスターゼ、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー11B、インターロイキン-11、カテプシンD、C-Cモチーフケモカイン24、C-X-Cモチーフケモカイン6、C-Cモチーフケモカイン13、C-X-Cモチーフケモカイン-1、-2、及び-3、マトリライシン、インターロイキン-2受容体アルファ鎖、インスリン様成長因子結合タンパク質3、マクロファージコロニー刺激因子1、アポリポタンパク質C-I、アポリポタンパク質C-II、フィブリノーゲンアルファ鎖、フィブリノーゲンA-アルファ鎖、キニノーゲン、インター-アルファ阻害剤H4(ITIH4)、ケラチンI型サイトケレトール10シスタチンA、シスタチンB、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0057】
ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルは動物の血圧と逆相関している。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの低下は、血圧の上昇、高血圧、及び/又は動物の高血圧を発症するリスクの増加を示唆する。ある特定の実施態様では、マグネシウムレベルの増加は、動物の血圧の低下を示唆する。ある特定の実施態様では、動物の1つの群における平均レベルと比較して低いマグネシウムレベルは、高血圧又は動物の高血圧を発症するリスクの増加を示唆する。ある特定の実施態様では、血圧は、収縮期血圧、拡張期血圧、全身動脈圧、平均動脈圧、脈圧、全身静脈圧肺圧、及びそれらの組合せからなる群より選択される。ある特定の実施態様では、血圧は収縮期血圧として測定される。ある特定の実施態様では、血圧は拡張期血圧として測定される。
【0058】
ある特定の実施態様では、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーは動物の血中にある。ある特定の実施態様では、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーは動物の血清中にある。ある特定の実施態様では、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーは動物の血漿中にある。ある特定の実施態様では、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーは動物の尿サンプル中にある。
【0059】
ある特定の実施態様では、慢性腎臓病(CKD)のリスクがある動物を診断及び治療する方法はさらに、血液サンプル中の少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定すること、並びに少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を第4の所定の基準値と比較することを含む。ある特定の実施態様では、第4の所定の基準値を上回る少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量は、効果的な治療の可能性が高いことを示す。ある特定の実施態様では、第4の所定の基準値を下回る少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量は、効果的な治療の可能性が高いことを示す。
【0060】
ある特定の実施態様では、バイオマーカーの所定の基準値は、対照集団における試験された血液中のバイオマーカーの平均量に基づくことができる。対照集団は、同様の遺伝的背景、年齢、及び平均健康状態を有する少なくとも3匹、好ましくは少なくとも10匹、さらに好ましくは少なくとも50匹の動物の群でありうる。
【0061】
ある特定の実施態様では、血液サンプル中のマグネシウムの第1の所定の基準値は、対照集団の血中のマグネシウムの平均量の約90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、又は1%未満である。ある特定の実施態様では、血液サンプル中のマグネシウムの第1の所定の基準値は、対照集団の血中のマグネシウムの平均量の約50%未満である。ある特定の実施態様では、血液サンプル中のマグネシウムの第2の所定の基準値は、対照集団の血中のマグネシウムの平均量の約110%超、120%超、130%超、140%超、150%超、160%超、170%超、180%超、190%超、200%超、250%超、300%超、400%超、500%超、600%超、700%超、800%超、900%超、又は1000%超である。ある特定の実施態様では、血液サンプル中のマグネシウムの第2の所定の基準値は、対照集団の血中のマグネシウムの平均量の約120%超である。
【0062】
ある特定の実施態様では、血液サンプル中のFGF23の第3の所定の基準値は、対照集団の血中のFGF23の平均量の約110%超、120%超、130%超、140%超、150%超、160%超、170%超、180%超、190%超、200%超、250%超、300%超、400%超、500%超、600%超、700%超、800%超、900%超、又は1000%超である。ある特定の実施態様では、血液サンプル中のFGF23の第2の所定の基準値は、対照集団の血中のFGF23の平均量の約150%超である。
【0063】
ある特定の実施態様では、動物内のバイオマーカーの量は、当該分野で知られている任意の手段によって検出及び定量化することができる。ある特定の実施態様では、マグネシウムの量は、質量分析、例えば、UPLC-ESI-MS/MS又は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、蛍光法、若しくは発光法によって決定される。ある特定の実施態様では、マグネシウムの量の決定には、マグネシウムグリーン、Mag-Fura-2及び/又はMag-Indo-1が用いられる。
【0064】
ある特定の実施態様では、FGF23の量は、抗体ベースの検出方法によって決定される。ある特定の実施態様では、FGF23抗体は、FGF23の量の決定に用いられる。ある特定の実施態様では、FGF23の量は、酵素免疫測定法(ELISA)によって決定される。ある特定の実施態様では、FGF23の量は、サンドイッチELISAによって決定される。
【0065】
ある特定の実施態様では、他の分光法、クロマトグラフィ法、標識技術、又は定量化学法など、他の検出法を使用することができる。ある特定の実施態様では、動物内のバイオマーカーの量及び基準値は、同じ方法によって決定される。
【0066】
3.治療方法
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、それを必要とする動物の慢性腎臓病(CKD)を治療又はその進行を遅延させる方法を提供する。ある特定の実施態様では、本方法は、該動物にマグネシウム又はその塩を含む組成物を提供して該動物を治療することを含む。
【0067】
本開示の主題の組成物及び方法は、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジーなど)、ペット/愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマなど)、家畜(例えば、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシなど)、実験動物(例えば、マウス、ラットなど)、並びに野生動物及び動物園の動物(例えば、オオカミ、クマ、シカなど)など、非ヒト哺乳動物を含むさまざまな哺乳動物に有用でありうる。
【0068】
本開示の主題のある特定の非限定的な実施態様では、例えば、動物は、例えば非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、又はブタなどの単胃哺乳動物(すなわち、単一の胃を有する哺乳動物)である。
【0069】
本開示の主題のある特定の非限定的な実施態様では、動物は肉食性の哺乳動物、すなわち、肉を食べる哺乳動物である。
【0070】
本開示の主題の他の実施態様では、動物は雑食性の哺乳動物、すなわち植物と肉の両方を食べる哺乳動物である。
【0071】
ある特定の非限定的な実施態様では、被験体はネコ又はイヌである。
【0072】
ある特定の非限定的な実施態様では、被験体は慢性腎臓病のリスクがある。
【0073】
ある特定の非限定的な実施態様では、被験体は、慢性腎臓病のリスクがあることが知られていない。
【0074】
ある特定の非限定的な実施態様では、被験体は慢性腎臓病に罹患している。
【0075】
ある特定の非限定的な実施態様では、被験体は、慢性腎臓病に罹患していることが知られていない。
【0076】
ある特定の非限定的な実施態様では、被験体は慢性腎臓病の治療下にある。ある特定の非限定的な実施態様では、治療は食餌療法である。
【0077】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、動物における慢性腎臓病(CKD)を治療又はその進行を遅延させる方法を提供し、該方法は、動物の血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;マグネシウムの量を所定の基準値と比較すること(ここで、所定の基準値は対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている);及び、マグネシウムの量が所定の値を下回る場合に、該動物にマグネシウム又はその塩を含む組成物を提供して該動物を治療すること、を含む。
【0078】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、それを必要とする動物の慢性腎臓病(CKD)を治療又はその進行を遅延させる方法を提供し、ここで、動物は、所定の基準値と比較してマグネシウム欠乏症を有しており、本方法は、有効量のマグネシウム又はその塩を含む組成物を投与することを含み、かつ、所定の基準値は、対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている。
【0079】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、それを必要とする動物の慢性腎臓病(CKD)を治療又はその進行を遅延させる方法を提供し、該方法は、動物の血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;マグネシウムの量を所定の基準値と比較すること(ここで、所定の基準値は対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている);及び、マグネシウムの量が第1の所定の値を下回るか、第2の所定の基準値を上回る場合に、該動物に治療計画を提供すること、を含む。
【0080】
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、慢性腎臓病(CKD)のリスクがある動物を診断及び治療する方法を提供し、該方法は、動物から血液サンプルを得ること;動物の血液サンプル中のマグネシウムの量を決定すること;マグネシウムの量を所定の基準値と比較すること(ここで、所定の基準値は対照集団の血中の平均マグネシウムレベルに基づいている);マグネシウムの量が第1の所定の値を下回るか、第2の所定の基準値を上回る場合に、CKDのリスクがあると動物を診断すること;及び、マグネシウムの量が第1の所定の値を下回るか、第2の所定の基準値を上回る場合に、該動物に治療計画を提供すること、を含む。
【0081】
ある特定の実施態様では、本方法は、動物の血液サンプル中のFGF23の量を決定するステップ;FGF23の量を第3の所定の基準値と比較するステップ、をさらに含み、ここで、所定の基準値は対照集団における血中の平均FGF23レベルに基づいており、第2の所定の基準値と比較して高いFGF23レベルは、効果的な治療の可能性が高いことを示す。
【0082】
ある特定の実施態様では、慢性腎臓病(CKD)のリスクがある動物を診断及び治療する方法はさらに、血液サンプル中の少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定すること、及び少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を第4の所定の基準値と比較すること、を含む。ある特定の実施態様では、第4の所定の基準値を上回る少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量は、効果的な治療の可能性が高いことを示す。ある特定の実施態様では、第4の所定の基準値を下回る少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量は、効果的な治療の可能性が高いことを示す。
【0083】
ある特定の実施態様では、本方法は、血液サンプル中のリン酸塩、クレアチニン、血中尿窒素(BUN)、及び副甲状腺ホルモン(PTH)からなる群より選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定すること、並びに少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を第4の所定の基準値と比較すること、をさらに含み、ここで、第4の所定の基準値を上回るリン酸塩、クレアチニン、血中尿窒素(BUN)及び/又は副甲状腺ホルモン(PTH)の量は、効果的な治療の可能性が高いことを示す。
【0084】
ある特定の実施態様では、1つのさらなるバイオマーカーの第4の所定の基準値は、対照集団における1つのさらなるバイオマーカーの約110%超である、又は平均値を上回る(平均値より10%大きいことを意味する)。他の実施態様では、1つのさらなるバイオマーカーの第4の所定の基準値は、対照集団における1つのさらなるバイオマーカーの平均値の約120%超、130%超、140%超、150%超、160%超、170%超、180%超、190%超、200%超、250%超、300%超、400%超、500%超、600%超、700%超、800%超、900%超、1000%超、又はそれを超える。
【0085】
ある特定の実施態様では、本方法はさらに、動物におけるFGF23の量を低下させるのに十分な期間、動物を組成物で維持することを含む。
【0086】
ある特定の実施態様では、本開示の主題で提供される方法はさらに、動物の血圧を決定すること、該血圧を第5の所定の基準値と比較すること、及び血圧が第5の所定の基準値を上回る場合に、高血圧の予防又は治療計画を実施すること、を含む。ある特定の実施態様では、血圧は、収縮期血圧、拡張期血圧、全身動脈圧、平均動脈圧、脈圧、全身静脈圧肺圧、及びそれらの組合せからなる群より選択される。ある特定の実施態様では、血圧は収縮期血圧である。ある特定の実施態様では、血圧は拡張期血圧である。
【0087】
ある特定の実施態様では、血圧の第5の所定の基準値は、対照集団の平均血圧の約110%超、120%超、130%超、140%超、150%超、160%超、170%超、180%超、190%超、200%超、又はそれを超える。ある特定の実施態様では、第5の所定の基準値は、対照集団の平均血圧の約120%超である。
【0088】
ある特定の実施態様では、治療計画は、食餌療法、血液透析、腎代替療法、腎臓を損傷する化合物の除去、腎臓移植、腎臓を損傷する処置の遅延又は回避、利尿剤投与の変更、及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの治療計画を含む。ある特定の実施態様では、治療計画は、有効量のマグネシウム又はその塩を含む組成物の投与、リン酸摂取の低減、タンパク質摂取の低減、多価不飽和脂肪酸の投与、リン酸結合剤療法の実施、カリウムの投与、食餌性ナトリウム摂取の低減、アルカリ補給剤の投与、及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの治療計画を含む。ある特定の実施態様では、治療計画は、その内容全体が参照することによって本明細書に組み込まれる、Jonathan D. Forster, Update on Mineral and Bone Disorders in Chronic Kidney Disease. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2016 Nov;46(6):1131-49に記載される任意の治療方法を含む。
【0089】
ある特定の実施態様では、治療計画は食餌療法である。ある特定の実施態様では、食餌療法は、高マグネシウム食、低リン食、低タンパク質食、低ナトリウム食、高カリウム食、多価不飽和脂肪酸(PUFA)食、及びそれらの組合せからなる群より選択される食事を含む。ある特定の実施態様では、食餌療法は、その内容全体が参照することによって本明細書に組み込まれる、Elliott et al., Dietary therapy for feline chronic kidney disease, Encyclopedia of feline clinical nutrition, 2nd edition, 2015に記載される食餌療法のうちのいずれか1つである。
【0090】
ある特定の実施態様では、組成物はペットフード製品である。ある特定の実施態様では、マグネシウムの量は、約200mg/1000Kcal~約500mg/1000Kcalである。
【0091】
ある特定の実施態様では、組成物は栄養補給剤である。ある特定の実施態様では、ペットフード製品に加えられるマグネシウムの量は、約50mg/1000Kcal~約200mg/1000Kcalである。
【0092】
ある特定の実施態様では、組成物中のマグネシウムは、約10mg/kcal~約1000mg/kcalの量である。例えば、限定はしないが、マグネシウムは、約10mg/kcal~約100mg/kcal、約20mg/kcal~約100mg/kcal、約10mg/kcal~約200mg/kcal、約20mg/kcal~約200mg/kcal、約50mg/kcal~約100mg/kcal、約50mg/kcal~約200mg/kcal、約50mg/kcal~約300mg/kcal、約100mg/kcal~約200mg/kcal、約100mg/kcal~約300mg/kcal、約100mg/kcal~約400mg/kcal、約100mg/kcal~約500mg/kcal、約200mg/kcal~約500mg/kcal、約300mg/kcal~約500mg/kcal、約200mg/kcal~約600mg/kcal、約200mg/kcal~約700mg/kcal、約200mg/kcal~約800mg/kcal、約300mg/kcal~約600mg/kcal、約300mg/kcal~約700mg/kcal、約300mg/kcal~約800mg/kcal、約400mg/kcal~約600mg/kcal、約400mg/kcal~約700mg/kcal、約400mg/kcal~約800mg/kcal又は約500mg/kcal~約800mg/kcalの量でありうる。ある特定の実施態様では、組成物中のマグネシウムは、約200mg/kcal~約500mg/kcal、例えば、約300mg/kcalの量である。ある特定の実施態様では、組成物中のマグネシウムは、約50mg/kcal~約200mg/kcal、例えば、約100mg/kcalの量である。
【0093】
本明細書に開示される主題の組成物及び方法に用いられるマグネシウムは、マグネシウム塩又はマグネシウム配位錯体の形態でありうる。
【0094】
ある特定の実施態様では、マグネシウムは、例えば、限定はしないが、酢酸塩、TFA塩、又はギ酸塩などのマグネシウム塩である。ある特定の実施態様では、マグネシウム塩は、イオン結合を介してMg2+と結合したアニオン(-)(例えば、限定はしないが、アミノ酸アニオン、Cl、F、Br、O2-、CO 2-、HCO 、OH、NO 、PO 3-、SO 2-、CHCOO、HCOO、C 2-及びCN)を含む。
【0095】
ある特定の実施態様では、マグネシウムは、無機マグネシウム塩の形態をしている。ある特定の実施態様では、マグネシウムは酸化マグネシウムである。ある特定の実施態様では、酸化マグネシウムは、動物に提供される組成物(例えば、ペットフード又は栄養補給剤)の質量で、0.25質量%以下の量である。ある特定の実施態様では、酸化マグネシウムは、組成物の質量で0.22質量%以下の量である。ある特定の実施態様では、酸化マグネシウムは、組成物の質量で0.2質量%以下の量である。ある特定の実施態様では、マグネシウムは、有機マグネシウム塩の形態をしている。
【0096】
ある特定の実施態様では、マグネシウム化合物はマグネシウム配位錯体である。ある特定の実施態様では、マグネシウム配位錯体はクロロフィルである。ある特定の実施態様では、マグネシウム化合物は、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルd、クロロフィルf、又はそれらの組合せである。
【0097】
ある特定の実施態様では、マグネシウムは、毎日3回、毎日2回、毎日1回、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、又は毎月1回、動物に給餌することができる。ある特定の実施態様では、マグネシウムは、1日に1回以上、動物に給餌することができる。例えば、限定はしないが、マグネシウムは、1日に1回、2回、3回、4回、5回、又はそれ以上、投与されうる。ある特定の実施態様では、例えば、動物がマグネシウムを含むペットフード組成物を絶えず利用可能な状態で放牧されている場合には、マグネシウムを絶えず動物に給餌することができる。
【0098】
4.最終製品
ある特定の非限定的な実施態様では、本開示の主題は、慢性腎臓病(CKD)を治療する、又はその進行を遅延させるのに適した製品を提供する。ある特定の実施態様では、製品はペットフード組成物である。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物は、有効量のマグネシウムを含む。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、マグネシウム塩又はマグネシウム配位錯体の形態でありうる。ある特定の実施態様では、マグネシウムは、詳細な説明のセクション3に記載された形態のいずれかである。
【0099】
ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、約10mg/kcal~約1000mg/kcalの量である。例えば、限定はしないが、マグネシウムは、約10mg/kcal~約100mg/kcal、約20mg/kcal~約100mg/kcal、約10mg/kcal~約200mg/kcal、約20mg/kcal~約200mg/kcal、約50mg/kcal~約100mg/kcal、約50mg/kcal~約200mg/kcal、約50mg/kcal~約300mg/kcal、約100mg/kcal~約200mg/kcal、約100mg/kcal~約300mg/kcal、約100mg/kcal~約400mg/kcal、約100mg/kcal~約500mg/kcal、約200mg/kcal~約500mg/kcal、約300mg/kcal~約500mg/kcal、約200mg/kcal~約600mg/kcal、約200mg/kcal~約700mg/kcal、約200mg/kcal~約800mg/kcal、約300mg/kcal~約600mg/kcal、約300mg/kcal~約700mg/kcal、約300mg/kcal~約800mg/kcal、約400mg/kcal~約600mg/kcal、約400mg/kcal~約700mg/kcal、約400mg/kcal~約800mg/kcal又は約500mg/kcal~約800mg/kcalの量でありうる。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、約200mg/kcal~約500mg/kcal、例えば、約300mg/kcalの量である。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、約50mg/kcal~約200mg/kcal、例えば、約100mg/kcalの量である。
【0100】
ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、1日分又は単位用量あたり約10mg~約1000mgの量である。例えば、限定はしないが、マグネシウムは、1日分又は単位用量あたり約10mg~約500mg、1日分又は単位用量あたり約10mg~約400mg、1日分又は単位用量あたり約10mg~約300mg、1日分又は単位用量あたり約10mg~約200mg、1日分又は単位用量あたり約20mg~約200mg、1日分又は単位用量あたり約30mg~約200mg、1日分又は単位用量あたり約40mg~約200mg、1日分又は単位用量あたり約50mg~約200mg、1日分又は単位用量あたり約50mg~約150mg、1日分又は単位用量あたり約50mg~約140mg、1日分又は単位用量あたり約50mg~約130mg、1日分又は単位用量あたり約50mg~約120mg、1日分又は単位用量あたり約500mg~約110mg、1日分又は単位用量あたり約50mg~約100mg、1日分又は単位用量あたり約10mg~約50mg、1日分又は単位用量あたり約100mg~約150mg、1日分又は単位用量あたり約150mg~約200mg、1日分又は単位用量あたり約100mg~約200mg、1日分又は単位用量あたり約100mg~約300mg、1日分又は単位用量あたり約100mg~約400mg、1日分又は単位用量あたり約100mg~約500mg、1日分又は単位用量あたり約200mg~約500mg、1日分又は単位用量あたり約300mg~約500mg、1日分又は単位用量あたり約200mg~約800mg、1日分又は単位用量あたり又は約500mg~約1000mgの量でありうる。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、1日分又は単位用量あたり約20mg~約200mg、例えば、約100mgの量である。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、1日分又は単位用量あたり約50mg~約100mg、例えば、約75mgの量である。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、1日分又は単位用量あたり約60mg~約90mgの量である。
【0101】
ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、質量で、ペットフード組成物の約0.001%~約10質量%の量である。例えば、及び限定はしないが、マグネシウムは、質量で約0.001%~約0.01質量%、質量で約0.01%~約0.1質量%、質量で約0.1%~約1質量%、質量で約1%~約10質量%、質量で約0.01%~約0.5質量%、質量で約0.01%~約0.25質量%、質量で約0.01%~約0.2質量%、質量で約0.01%~約0.15質量%、質量で約0.01%~約0.1質量%、質量で約0.01%~約0.05質量%、質量で約0.1%~約0.15質量%、質量で約0.1%~約0.2質量%、質量で約0.1%~約0.25質量%、質量で約0.1%~約0.5質量%、質量で約0.5%~約1質量%、質量で約0.1%~約2質量%、質量で約0.1%~約5質量%、質量で約0.1%~約10質量%、質量で約2%~約10質量%、質量で及び約5%~約10質量%の量でありうる。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、質量で約0.25質量%以下の量である。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、質量で約0.2質量%以下の量である。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、質量で約0.15質量%以下の量である。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、質量で約0.1質量%以下の量である。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物中のマグネシウムは、質量で約0.05質量%以下の量である。
【0102】
ある特定の実施態様では、本開示の主題のペットフード組成物は、毎日3回、毎日2回、毎日1回、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、又は毎月1回、動物に給餌することができる。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物は、1日に1回以上、動物に給餌することができる。例えば、限定はしないが、ペットフード組成物は、1日に1回、2回、3回、4回、5回、又はそれ以上、投与されうる。ある特定の実施態様では、例えば、動物がペットフード組成物を絶えず利用可能な状態で放牧されている場合には、ペットフード組成物を絶えず動物に給餌することができる。
【0103】
ある特定の実施態様では、本開示の主題の製剤は、追加の活性薬剤をさらに含むことができる。本開示の主題の製剤内に存在しうる追加の活性薬剤の非限定的な例には、栄養剤(例えば、アミノ酸、タンパク質、脂肪酸、炭水化物、糖、核酸、ヌクレオチド、ビタミン、ミネラルなど)、抗血管新生剤、ステロイド、mTOR阻害剤(例えば、エベロリムス)、ベータ遮断薬(例えば、プロプラノロール)、及び/又は血圧を低下させる薬剤が含まれる。
【0104】
ある特定の実施態様では、ペットフード組成物は、当技術分野で知られている添加剤をさらに含むことができる。ある特定の実施態様では、このような添加剤は、本明細書で開示される主題によって提供される目的及び効果を損なわない量で存在する。考えられる添加剤の例には、腎機能の改善に機能的に有益な物質、安定化効果のある物質、感覚刺激物質、加工助剤、嗜好性を高める物質、着色物質、及び栄養上の利点をもたらす物質が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施態様では、安定化物質には、組成物の貯蔵寿命を延長する傾向がある物質が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施態様では、このような物質には、保存剤、相乗剤及び金属イオン封鎖剤、包装ガス、安定剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、並びに湿潤剤が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施態様では、乳化剤及び/又は増粘剤には、例えば、ゼラチン、セルロースエーテル、デンプン、デンプンエステル、デンプンエーテル、及び加工デンプンが含まれる。
【0105】
ある特定の実施態様では、着色、嗜好性、及び栄養の目的のための添加剤には、例えば、着色料;酸化鉄、塩化ナトリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、及び他の食用塩;ビタミン;ミネラル;並びにフレーバーが含まれる。組成物中のこのような添加剤の量は、典型的には最大約5%である(組成物の乾燥基準)。
【0106】
ある特定の実施態様では、ペットフード組成物は栄養補給剤である。ある特定の実施態様では、栄養補給剤は、例えば、全体の栄養バランス又は性能を改善するために別の飼料とともに用いられる飼料を含む。ある特定の実施態様では、補給剤には、他の飼料への補給剤として希釈せずに供給される組成物、個別に入手可能な動物の飼料の他の部分との自由な選択を提供される組成物、又は完全な飼料を生産するために動物の通常の飼料と希釈及び混合される組成物が含まれる。AAFCOは、例えば、the American Feed Control Officials, Incorp. Official Publication, p. 220 (2003)で、補給剤に関する議論を提供している。補給剤は、例えば、粉末、液体、シロップ、丸薬、カプセル化された組成物などを含むさまざまな形態でありうる。
【0107】
ある特定の実施態様では、ペットフード組成物はおやつである。ある特定の実施態様では、おやつには、例えば、食事時間以外に動物の気を引くために動物に与えられる組成物が含まれる。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物は、例えばイヌの骨を含むイヌ科用のおやつである。おやつは栄養的であってよく、ここで、組成物は、1つ以上の栄養素を含み、例えば、食物のための上記のような組成物を有しうる。非栄養的なおやつには、非毒性の任意の他のおやつが含まれる。
【0108】
ある特定の実施態様では、本開示の主題のマグネシウムは、組成物の他の成分の混合中及び/又は混合後など、製剤の処理中に組成物に組み込むことができる。組成物内へのこれらの成分の分配は、従来の手段により達成することができる。
【0109】
ある特定の実施態様では、本開示の主題のペットフード組成物は、従来のペットフードプロセスを使用して、缶詰形態又は湿潤形態で調製することができる。ある特定の実施態様では、粉砕した動物(例えば、哺乳動物、家禽、及び/又は魚)のタンパク質組織は、魚油、穀物、他の栄養バランス成分、特殊目的添加物(例えば、ビタミンとミネラルの混合物、無機塩、セルロース及びビートパルプ、増量剤など)を含めた他の成分と混合され、処理に十分な水もまた加えられる。これらの原料は、成分を混合しながら加熱するのに適した容器内で混合される。混合物の加熱は、例えば、直接蒸気注入により、又は熱交換器を備えた容器を使用することによってなど、任意の適切な方法を使用して行うことができる。最後の原料の添加後、混合物は約50°F(約10℃)から約212°F(約100℃)の温度範囲に加熱される。この範囲外の温度は許容できるが、他の加工助剤の使用なしでは商業的に実用的ではない可能性がある。適切な温度に加熱されると、材料は通常、濃厚な液体の形態になる。濃厚な液体を缶に入れる。蓋をして、容器を密閉する。次に、密封した缶を、内容物を滅菌するように設計された従来の機器に入れる。これは通常、適切な時間(例えば、使用される温度及び組成に応じて決まる)、約230°F(約110℃)を超える温度に加熱することにより達成される。
【0110】
ある特定の実施態様では、本開示の主題のペットフード組成物は、従来のプロセスを使用して乾燥形態で調製することができる。ある特定の実施態様では、例えば、動物性タンパク質源、植物性タンパク質源、穀粒などを含む乾燥原料は、粉砕され、一緒に混合される。ある特定の実施態様では、次いで、脂肪、油、動物性タンパク質源、水などを含む、湿った又は液体の原料が、乾燥混合物に加えられ、混合される。ある特定の実施態様では、次に、混合物は、キブル又は同様の乾燥片へと加工される。ある特定の実施態様では、ペットフード組成物はキブルである。ある特定の実施態様では、キブルは、乾燥原料と湿潤原料の混合物を高圧及び高温で機械加工に供し、小さな開口部から押し出し、回転ナイフでキブルへと切断する、押出プロセスを使用して形成される。ある特定の実施態様では、次に、湿ったキブルを乾燥させ、例えば、フレーバー、脂肪、油、粉末などを含んでよい1つ以上の局所コーティングで任意選択的にコーティングする。ある特定の実施態様では、押出ではなくベーキングプロセスを使用して生地からキブルを作ることもでき、この場合、生地は乾熱処理の前に型に入れられる。
【0111】
ある特定の実施態様では、本明細書に開示される主題のおやつは、例えば、乾燥食品について上述したものと同様の押出またはベーキングプロセスによって調製することができる。
【実施例
【0112】
本開示の主題は、限定としてではなく、本発明の例示として提供される以下の実施例を参照することにより、より良く理解されよう。
【0113】
使用されている略語のリストを以下に示す:
CKD 慢性腎臓病
CKD-MBD 慢性腎臓病-骨ミネラル代謝異常
FE 分画排泄率
FGF-23 線維芽細胞成長因子23
HCO 静脈血の重炭酸濃度
HR ハザード比
IRIS 国際獣医腎臓病研究グループ
OR オッズ比
PTH 副甲状腺ホルモン
SBP 収縮期血圧
USG 尿比重
実施例1:総マグネシウムは慢性腎臓病を患うネコの生存時間の予測因子である
低マグネシウム血症は、慢性腎臓病(CKD)を患うヒトの生存期間の低下に関連する。ネコCKDにおけるマグネシウムの予後値についてはほとんど知られていない。この研究の目的は、CKDの診断時の血漿総マグネシウム濃度がネコの生存時間と関連していたかどうかを評価することであった。線維芽細胞成長因子23(FGF23)の濃度の影響も調査され、ネコのCKDにおける重要な予後因子であることを示唆する最近の証拠が示された。
【0114】
高窒素CKDの診断時にネコから得られたヘパリン加保存血漿サンプルで、総マグネシウム濃度(tMg)を測定した。臨床データを中央値[25,75パーセンタイル]として提示した。tMgに基づいてネコを四分位(MgQ1~4)に分類し、一元配置分散分析で群間のベースライン変数の比較を行った。2つの多変量Cox回帰モデルを使用して、生存時間(全死因死亡率)の予測因子としての高窒素CKDの診断時の血漿tMgの有用性を評価した:モデル1は、年齢、血漿クレアチニン、リン酸塩、インタクト副甲状腺ホルモン、アルブミン、tMg、及びカテゴリ変数としての高血圧の診断、並びに連続変数としてのヘマトクリット値(PCV)を含み、モデル2は、モデル1に含まれるものに加えて、カテゴリ変数としてFGF23を含む。
【0115】
この後ろ向き観察コホート研究には、IRISステージ2(n=110)及び3(n=50)のCKDを患う160匹のネコが含まれていた。この研究のtMgの中央値は2.04[1.85,2.24]mg/dLで、範囲は1.29~2.90mg/dLであった。MgQ1のネコは、上位4分の3のすべてと比較して、FGF23濃度が有意に高く(2008.7[762.1,8194.4]pg/mL)、互いに有意な差はなかった(MgQ2:895.3[455.0,1948.2];MgQ3:493.9[344.2,2035.5];MgQ4:477.8[316.9,975.7]pg/mL、P<0.001)。MgQ1とMgQ3のネコは、年齢(Q1:16.4[14.1,18.7];Q3:13.4[12.0,15.9]歳、P=0.022)及びリン酸塩濃度(Q1:5.15[3.89,6.54];Q3:4.09[3.50,5.05]mg/dL、P=0.013)が異なっていた。クレアチニン濃度は、MgQ3とMgQ4の間でのみ、異なっていた(MgQ3:2.37[2.14,2.68];MgQ4:2.68[2.38,3.30]mg/dL,P=0.029)。Cox回帰モデル1では、生存率は、PCVとは正の関連を示し(P<0.001)、年齢(P<0.001)、クレアチニン(P=0.003)、tMg(P=0.007)、高血圧の診断(P=0.046)とは負の関連を示した。MgQ2のネコは、MgQ1(ハザード比(HR):0.434、P=0.003)及びMgQ4(HR:0.433、P=0.002)の両方と比較して死亡のリスクが低下していた。モデル2では、生存率は、PCVとは正の関連を示し(P<0.001)、年齢(P<0.001)、FGF23(P=0.004)、高血圧(P=0.014)、及びtMg(P=0.036)とは負の関連を示した。MgQ2のネコは、MgQ4(HR:0.452,P=0.005)と比較して死亡リスクが大幅に低下したが、MgQ1(HR:0.622,P=0.126)とは比較できなくなった。
【0116】
結論として、CKDの診断時の血漿マグネシウム濃度が高くなると、FGF23の影響を考慮した後の全死因死亡のリスクが増加した。中間のマグネシウム濃度は生存率を改善した。低マグネシウム濃度を特徴とするネコは、全死因死亡のリスクが高い(モデル1)が、このリスク増加は、マグネシウム濃度の高い四半分(モデル2)と比較して、FGF23濃度が高いことに関連しているように見えた。マグネシウムが修正可能なリスク要因であるかどうか、及びマグネシウム濃度とFGF23濃度の関係がネコCKDの新しい管理戦略の開発につながる可能性があるかどうかを調査するためには、さらなる研究が必要である。
【0117】
実施例2:ネコの慢性腎臓病(CKD)-骨ミネラル代謝異常(MBD)の管理における経口マグネシウム補給の利点
慢性腎臓病(CKD)のネコ160匹を対象とした後ろ向き研究のデータは、血漿マグネシウム濃度が生存と関連していることを示した。CKDの診断時の低マグネシウム濃度と高マグネシウム濃度の両方が、単変量Cox回帰分析の通常濃度よりも高いハザード比を有していた。しかしながら、高マグネシウムレベルは生存時間の低下と独立して関連していたのに対し、低マグネシウム群の死亡リスクの増加は、この群の線維芽細胞成長因子23(FGF23)濃度が有意に高いことに関連しているように思われ(図1)、したがって、低血清マグネシウムではなくFGF23が多変量モデルにとどまった。線形回帰は、総マグネシウムがFGF23濃度の独立した予測因子であることを示した。マグネシウム補給によって、CKDの診断でマグネシウム濃度が低いネコのFGF23レベルを低下させ、生存期間を改善できるかどうかを調査するための前向き研究が必要とされた。したがって、CKD罹患ネコの骨ミネラル代謝異常を管理するための新しい手法である経口マグネシウム補給が血清FGF23を低下させるかどうかを決定するために研究を行った。
【0118】
研究の目的
主な目的は、高窒素血症のCKDと診断され、同時に血漿マグネシウム濃度が低いネコへの経口マグネシウム補給が、これらの動物の血漿FGF23濃度を低下させるかどうかを決定することであった。
【0119】
二次的な目的は、1)経口マグネシウム補給がマグネシウムの状態を改善するかどうか、及びどの程度まで改善するかを決定すること;2)マグネシウム補給と他の臨床病理学的変数(リン酸塩、イオン化カルシウム、PTH、カルシトリオール、カリウム、収縮期血圧)の変化との関連の評価;及び、3)マグネシウム補給の可能性のある副作用(すなわち、高マグネシウム血症、ストルバイト尿路結石症、下痢)の発生の評価であった。
【0120】
研究プロトコル
登録
高窒素CKD及び低マグネシウム血症を患うネコを臨床試験に採用した。スクリーニングの前処理は以下を含んでいた:1)血漿生化学(総チロキシン及び総マグネシウムを含む)、ヘマトクリット、並びに総タンパク質;2)尿検査;3)収縮期血圧測定;及び、4)血漿FGF23及びPTHの測定。
【0121】
選択基準は、1)安定した高窒素CKDのIRISステージ2又は3の診断;2)血漿総マグネシウム濃度<0.80mmol/L;及び、3)過去2か月間の安定した食事(研究中に食事の変更は認めなかった)であった。
【0122】
除外基準は、1)甲状腺機能亢進症(総サイロキシン濃度<40nmol/L);2)高血圧の診断;3)尿検査で特定されたストルバイト結晶(尿が濃縮されている場合、ストルバイト結晶が観察されるのが一般的である;大量の結晶が存在する場合にのみ除外が適用される);4)過去1年以内のFLUTD;又は、5)腸のリン酸塩結合剤の使用、であった。
【0123】
治療
飼い主の同意を得て、ネコは、好ましくはグリシン酸マグネシウムとして、食物と一緒に、1日あたり63.6~90.1ミリグラムの元素マグネシウムからなる経口マグネシウム補給を受けた。
【0124】
特に、ネコの食事には、体重1キログラムあたり100mgのグリシン酸Mg(14.1mgのMg/kgに相当する)が補給された。例えば、5kgのネコは、1日あたり約200kcalを必要とし、1日あたり70mg/1000kcalの補給を消費する必要がある。マグネシウム補給剤は、ネコの餌に含まれる既存のマグネシウムに追加され、ネコの食事では260~330mgのMg/1000kcalの範囲であった。
【0125】
追跡
4~6週間の経口マグネシウム補給の後に評価を行った。この機会に、収縮期血圧測定、及び血液と尿のサンプルを得た。次の場合に参加終了とした:1)ネコがマグネシウム補給剤の摂取を拒否した場合;2)マグネシウムの補給時に、ネコが腎臓食を拒否し、その結果、毎日のカロリー摂取量の50%未満が腎臓食で構成された場合;3)血漿総マグネシウム濃度が1.0mmol/Lを超えた場合;4)尿沈渣にリン酸マグネシウムアンモニウム結晶が認められた場合;5)ネコが下痢を発症した場合;6)ネコが、追加の治療を必要とする、又は安楽死を必要とする、高窒素CKD以外の重大な病状を発症した場合;7)食餌療法の中止を必要とする副作用、例えば、臨床症状を併発するイオン化高カルシウム血症が観察された場合;又は、8)飼い主が追跡治療のためにネコを連れてこなかった場合。
【0126】
分析
マグネシウムとFGF23の状態に対する経口マグネシウム補給の効果を、1)ベースラインに対する血漿総マグネシウム濃度の変化、及び2)ベースラインに対する血漿FGF23濃度の変化によって決定した。
【0127】
ネコCKDに関与する他のパラメータに対する経口マグネシウム補給の効果を、1)ベースラインに対する血漿インタクトPTH濃度の変化;2)ベースラインに対する血漿カルシトリオール濃度の変化;3)ベースラインに対する血漿リン酸塩濃度の変化;4)ベースラインに対する収縮期血圧の変化;及び、5)ベースラインに対する全血カリウム濃度の変化から決定した。
【0128】
結果
図1は、血漿総マグネシウム濃度によって四分位に分類された高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコの血漿FGF23濃度を示している。総マグネシウム濃度の中央値は0.84[0.75,0.92]mmol/Lであった。マグネシウム四分位が最も低いネコは、上位4分の3のすべてと比較して、FGF23濃度が著しく高く(2008.7[762.1,8194.4]pg/mL)、互いに有意な差はなかった(MgQ2:895.3[455.0,1948.2];MgQ3:493.9[344.2,2035.5];MgQ4:477.8[316.9,975.7]pg/mL,P<0.005)。破線は、老齢のネコの血漿FGF23の基準範囲の上限(700pg/mL)を表している。図1のY軸は対数目盛である。
【0129】
高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコの血液サンプル中の総マグネシウム、FGF23、及びリン酸塩に対するマグネシウム補給剤の効果が図2A~2Cに示されている。図2Aは、4匹のネコの補給前後の総血清Mgを示している。図2Bは、Mg補給前後の血清FGF23を示している。Mg補給は、4匹中3匹のネコのFGF23の大幅な低下と関連していた。FGF23は、血清リン蓄積の既知のマーカーであり、FGF23の低下は腎疾患の進行の低減と相関していた。図2Cは、補給前後の血清リン酸塩を示している。
【0130】
図3A~3Iはさらに、高窒素CKDのIRISステージ2~3を患うネコにおける、総マグネシウム(A)、FGF23(B)、クレアチニン(C)、対称ジメチルアルギニン(SDMA)(D)、リン酸塩(E)、収縮期血圧(F)、カリウム(G)、カルシウム(H)、及び副甲状腺ホルモン(PTH)(I)に対するマグネシウム補給の効果を示している。
【0131】
実施例3:高窒素血症性慢性腎疾患に罹患したネコのコホートにおける血漿総マグネシウムの予後の重要性に関する観察
本実施例は、高窒素CKDを患うネコにおけるマグネシウム障害の有病率及び危険因子、血漿tMgとFGF-23及び他の臨床病理学的変数との関係、並びに、高窒素CKDを患うネコのコホートにおける全死因死亡及び腎機能低下に対するマグネシウム障害の予後的意義を調査する。
【0132】
方法
被験体
ネコは、ロンドン中心部の2回の一次診療(first opinion practices)で行われた、老ネコの診療所の記録から特定された(People’s Dispensary for Sick Animals in Bow and Beaumont Sainsbury Animal Hospital in Camden)。9歳以上の顧客が飼っているネコは、一般的な健康診断のためにこれらの診療所を訪れ、その後、病気の管理のために高窒素CKDと診断された。この研究に登録されたネコは、飼い主の同意が得られ、ロイヤル・ベタリナリー大学の倫理福祉委員会の承認が与えられた、より大きい観察コホートの一部であった。
【0133】
2001年9月から2013年9月の間に見られた120匹の見かけ上健康なネコの一群が、高齢ネコの血漿tMgの基準範囲を確立するために選択された。ネコは、病歴、身体検査、又は血液及び尿の検査で重大な異常が検出されなかった場合、及び薬が処方されなかった場合に、明らかに健康であるとみなされた。含めるには、ヘパリン加保存血漿サンプルがtMgの測定に利用可能でなければならなかった。
【0134】
1999年8月から2013年7月の間に高窒素CKDと診断されたネコのコホートを選択して、ネコCKDのベースライン血漿tMgの臨床的意義を調査した。高窒素CKDの診断基準は、1.035未満の尿比重(USG)で血漿クレアチニン濃度が2mg/dL以上、若しくは2~4週間間隔で2回連続して血漿クレアチニン濃度が2mg/dL以上であった。登録するためには、血漿FGF-23濃度とtMgの測定のための残りのヘパリン加保存血漿サンプルに関するデータは、CKDの診断時から利用可能でなければならなかった。甲状腺機能亢進症の臨床徴候、血漿総サイロキシン濃度が40nmol/L超、甲状腺機能亢進症の治療、糖尿病、又はコルチコステロイド治療のネコは、すべての分析から除外された。全身性高血圧の治療のためにベシル酸アムロジピンを投与されたネコは含めた。
【0135】
データ収集
診療所の訪問は、病歴及び身体検査、収縮期血圧(SBP)測定、並びに血液と尿の収集で構成されていた。高窒素CKDの診断の日に得られたベースラインデータは、電子臨床記録から検索され、年齢、品種、性別、体重、体調スコア(BCS)、収縮期血圧(SBP)、血漿総サイロキシン濃度、PCV、ルーチンの血漿生化学的変数(総タンパク質、アルブミン、グロブリン、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、塩化物、リン酸塩、総カルシウム濃度)、イオン化カルシウム濃度、静脈血の重炭酸(HCO )及びpH値、血漿カルシジオール、カルシトリオール、FGF-23及びPTH濃度、USG、尿培養結果、尿タンパク質対クレアチニン比(UPC)、並びにマグネシウム値の分画排泄率(FE)が含まれていた。死亡日及び高窒素血症の進行が起こったかどうか(以下に定義)についても文書化された。電子記録からの異常又は欠落データは、物理的な患者記録を参照することによって検証された。CKDの重症度とリン酸塩の状態は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)のガイドラインに従って分類された88。収縮期血圧はドップラー法89を使用して評価し、すべてのネコに間接検眼鏡検査を実施し、SBP>160mmHgが確認された。全身性高血圧は、1~2週間の間隔を空けた少なくとも2回のSBPが170mmHg超、若しくは眼の標的器官障害と関連した単一のSBPが160mmHg超であると定義された。
【0136】
血液サンプルは頸静脈穿刺から、尿サンプルは膀胱穿刺から得た。総マグネシウムは、通常の生化学分析も行っていた実験室によって、-80℃で保存された残留ヘパリン加血漿で測定された90。FGF-23及びPTHは、それぞれ有効なELISA91及び免疫放射測定92アッセイを使用して、EDTA血漿で測定された4,32。FGF-23の測定では、標準曲線の読み取りを実現するために、サンプルをゼロ標準で希釈した。PTHアッセイの検出限界は5.2pg/mLであり、この値を下回る濃度のサンプルには、2.6pg/mLの任意のPTH濃度が割り当てられた。イオン化カルシウム、静脈血ガス、及びビタミンD代謝産物の結果は、一部のネコからのみ入手可能であった。静脈穿刺直後にポイント・オブ・ケア分析器93を使用して、非ヘパリン加全血のイオン化カルシウム濃度及び血液ガスを測定した。ビタミンD代謝物は、外部の実験室で測定した94。尿検査には、屈折計、ディップスティック分析、及び尿沈渣顕微鏡検査によるUSGのインハウス測定が含まれていた。尿生化学検査は、商業研究所によって行われた。分画排泄率の値は、スポットサンプルの手法を使用して決定した33
【0137】
統計分析
統計分析は、統計ソフトウェアパッケージを使用して行った95。報告されたすべての分析について、有意性の両側検定を実施し、アルファレベル≦0.05で統計的有意性を定義した。継続的な臨床データは、必要に応じて平均(SD)又は中央値[25,75パーセンタイル]として表わされる。シャピロ・ウィルク検定及びQ-Qプロットの目視検査により、数値変数の分布の正規性について評価した。群間のベースライン特性は、独立したサンプルt検定(2つの群)又は正規分布を有する連続変数についてのボンフェローニの事後比較付き一元配置分散分析(3群以上)のいずれかを使用して、あるいは、マン・ホイットニーのU検定(2つの群)又はクラスカル・ウォリス検定に続いて、歪んだ分布を有する変数についてのボンフェローニ補正付きのマン・ホイットニーU検定(3群以上)を使用して比較した。フィッシャーの正確確率検定を使用して、割合を比較した。
【0138】
マグネシウム障害に関連する有病率及び要因
パラメトリック法(すなわち、平均±2SD)を使用して計算した、高齢のネコの血漿tMgの導出基準範囲の下限及び上限に基づいて、ネコを3つの群に分類した。高窒素CKDの診断時の低マグネシウム血症及び高マグネシウム血症の有病率は、この基準範囲、比較される3つのマグネシウム群間のベースライン特性、及び低マグネシウム血症又は高マグネシウム血症のいずれかの危険因子を調べるために行われた二元ロジスティック回帰を使用して計算した。これらの条件に大きく関連する変数を、多変量二元ロジスティック回帰モデルに投入した。手動の変数減少法によって最終的なモデルを導出した。ホスマー・レメショウ検定を用いてモデルの適合度を評価した。結果はオッズ比(OR;95%信頼区間[CI])として報告される。
【0139】
血漿総マグネシウムと血漿FGF-23及び他の臨床病理学的変数との関連
各IRISステージ内の低マグネシウム血症、正常マグネシウム血、及び高マグネシウム血症のネコの間、並びに、IRISステージ2及び3のCKDを患うネコの正常なリン酸血及び高リン血症下位群(各ステージの血漿リン酸塩のIRIS標的に基づく)内の血漿tMgが中央値(<2.04mg/dL及び≧2.04mg/dL)を下回る及び上回る血漿tMgを有するネコ間で、血漿FGF-23濃度を比較した。
【0140】
血漿tMgと対数変換されたFGF-23濃度との関連を評価するために、ピアソン相関係数(r)を計算した(自然対数[ln])。血漿FGF-23の既知の予測因子であるln[クレアチニン]及びln[リン酸塩]の交絡効果を除去した、これら2つの変数間の関連の強さを測定するために、部分相関を行った
【0141】
どの変数が連続変数として血漿tMgと関連しているかを調べるために、IRISステージ用に調整された単変量の一般線形モデルを構築した。年齢、体重、PCV、血漿アルブミン、ナトリウム、カリウム、塩化物、総カルシウム、ln[FGF-23]、ln[PTH]、ln[クレアチニン]、ln[リン酸塩]濃度、及びln[UPC]を、連続共変量として評価した。IRISステージ及び高血圧状態を固定因子として投入した。アルファレベル<0.10の血漿tMgに関連する共変量をIRISステージとの統計的相互作用について評価し、有意な相互作用項を含む多変量線形回帰モデルに投入した。最終的な回帰モデルを、変数減少法によって導出した。正規性の仮定及び変数間の線形関係の仮定を、残差のヒストグラムおよび適合値に対する残差の散布図の目視検査によって確認した。結果を回帰係数(β;95%CI)で報告する。
【0142】
血漿総マグネシウムと生存との関連
血漿tMgが生存に関連しているかどうかを評価するために、登録されたすべてのネコを生存分析に含め、高窒素CKDの診断日をベースラインとして指定し、全死因死亡率が興味対象となる事象であったため、追跡不能となったネコ又は2016年7月1日にまだ生存していたネコに対して打ち切りを行った。追跡不能となったネコは、生存がわかっている最後の日で打ち切りとした。正常マグネシウム血群のカプラン・マイヤー曲線を、ログランク検定を使用して低マグネシウム血症及び高マグネシウム血症のネコの曲線と比較し、単変量時不変Cox比例ハザード分析を用いて、ハザード比(HR)を計算した。可能性のある交絡因子について調整するために、次のベースライン変数の生存との関連を単変数Cox回帰分析で評価した:血漿tMg、クレアチニン、リン酸塩、総カルシウム、ナトリウム、塩化物、カリウム、アルブミン、FGF-23、及びPTH濃度、年齢、PCV、体重、BCS、高血圧の状態、USG、及びUPC。血漿PTHは、大きく歪んだ分布であったため、対数変換した。カプラン・マイヤー曲線の検査と各変数と時間との統計的相互作用の評価によって判断された比例ハザードの仮定が満たされなかった場合に、連続変数を分類した。グループ化は、可能であれば臨床的に関連するマージン(血漿tMg、高血圧状態、BCS)、又は三分位数(リン酸塩、FGF-23、ナトリウム、USG、体重)に基づいていた。欠測データ補完は行わなかった。アルファレベル<0.10の生存に関連する変数を、マグネシウム状態との相互作用について評価し、その後、統計的に有意な相互作用項(P<0.05)とともに多変量分析に投入した。手動の変数減少法によって最終的な多変量モデルを導出した。Coxモデルの全体的な適合は、Cox-Snell残差プロットの目視検査によって確認した。結果をHR(95%CI)として報告する。
【0143】
死亡率との非線形関係を考慮して、血漿tMgは、主要な分析で導出された基準範囲の下限と上限で分割されたカテゴリ変数として分析した。連続的なスケールで血漿tMgの生存に対する影響を調査するために、サブ分析を行った。ネコはtMgの中央値折半で分割され、tMgはカテゴリ変数としてではなく、連続変数として、十分に調整されたCoxモデルに投入した。
【0144】
加えて、全死因死亡率に関連する血漿マグネシウム濃度とリン酸塩状態の間の事前定義された相互作用について調査した。IRISステージ2及び3のCKDを患うネコを、IRISリン酸塩標的ガイドライン96に従って、リン酸塩の状態に基づいて、かつ、血漿tMgの中央値折半によって分割した。これにより、次の4つのカテゴリが作成された:正常なリン酸血-低マグネシウム(NP-LM:IRIS正常なリン酸血;血漿マグネシウム<2.04mg/dL)、正常なリン酸血-高マグネシウム(NP-HM:IRIS正常なリン酸血;血漿マグネシウム≧2.04mg/dL)、高リン血症-低マグネシウム(HP-LM:IRIS高リン血症;血漿マグネシウム<2.04mg/dL)、及び、高リン血症-高マグネシウム(HP-HM:IRIS高リン血症;血漿マグネシウム≧2.04mg/dL)。生存に関連するマグネシウムとリン酸塩の間の統計的相互作用を、単変量Cox回帰を使用して4つのリン酸塩-マグネシウム群の危険性を比較することによって調査した。NP-HM群は、HP-LM群の相互作用(RERI、すなわち、予想されるリスクと観測されたリスクとの差)による相対的な過剰リスクを計算するために、曝露なしの結合参照カテゴリとして選択された34,97
【0145】
血漿総マグネシウムとCKDの進行との関連
マグネシウムの状態がCKDの進行と関連していたかどうかを、二元ロジスティック回帰を使用して調査した。ネコを次の2つの群に分類した:診断の最初の12か月以内に血漿クレアチニン濃度の25%超の増加を示した、進行性CKD群、及び増加を示さなかった安定したCKD群。追跡期間が12か月以上の安定したネコのみをこの分析に含めた。マグネシウムの状態、血漿クレアチニン、リン酸塩、総カルシウム、カリウム、アルブミン、ln[FGF-23]、及びln[PTH]、年齢、PCV、体重、BCS、高血圧の状態、USG、及びUPCを、単変数の二元ロジスティック回帰に投入した。単変量解析でアルファレベル<0.10の進行性疾患に関連する変数を、多変量回帰に投入した。手動の変数減少法によって最終的なモデルを導出した。ホスマー・レメショウ検定を用いて適合度を評価した。結果をOR(95%CI)として報告する。CKDの進行に関連する血漿マグネシウム濃度とリン酸塩状態の間の事前定義された相互作用を、単変量ロジスティック回帰を使用して4つのリン酸-マグネシウム群(上記で定義)のORを比較することによって調査した。
【0146】
結果
血漿総マグネシウム濃度と、血漿FGF-23、全死因死亡率、及び高窒素CKDを患うネコの疾患進行との関連を調べるために、IRISステージ2~4のCKDの174匹の顧客が飼っているネコの記録を分析した。ベースライン血漿総マグネシウム濃度と、FGF-23濃度並びに死亡及び進行のリスクとの可能な関連性を、一般診療に由来する高窒素CKDのネコのコホートでのそれぞれ線形、Cox、及びロジスティック回帰を使用して調査した(1999~2013)。結果は、血漿クレアチニン濃度を制御すると、血漿総マグネシウム濃度(基準範囲、1.73~2.57mg/dL)が血漿FGF-23と逆相関することを示している(部分相関係数、-0.50;P<0.001)。低マグネシウム血症は、ネコの12%(20/174)で観察され、死亡リスクの増加と独立して関連していた(調整ハザード比、2.40;95%信頼区間[CI]、1.18~4.86;P=0.016)。高マグネシウム血症(有病率、6%;11匹/174匹のネコ)と生存(ハザード比、2.88;95%CI,1.54~5.38;P=0.001)との未調整の関連、並びに低マグネシウム血症と進行性CKD(オッズ比、17.68;95%CI,2.04~153.59;P=0.009)との未調整の関連は、多変量解析で有意性を失った。
【0147】
高齢ネコの血漿総マグネシウム濃度の95%基準範囲の決定
参照集団は、53匹のオスネコと67匹のメスネコで構成され、1匹の未去勢のオスと1匹の未去勢のメスを含んでいた。ネコは次の品種であった:ドメスティックショートヘア(n=97)、ドメスティックロングヘア(n=12)、ビルマ(n=4)、ペルシャ、ブリティッシュショートヘア、及びロシアンブルー各2匹、ブリティッシュブルー1匹。さらなる特徴は表1に見出すことができる。血漿tMgの分布はガウス分布であり、平均濃度は2.15(SD、0.209)mg/dLであり、1.73~2.57mg/dL(0.71~1.06mmol/L)の95%基準範囲をもたらした。
【0148】
【表1】
【0149】
高窒素CKDを患うネコの血漿総マグネシウム
1999年8月から2013年7月までの間に、合計517匹のネコが高窒素CKDを患っていると診断されたが、そのうち96匹は次の理由で除外された:同時性甲状腺機能亢進症(n=79)、CKDの診断の研究基準を満たしていない(n=16)、又はプレドニゾロン投与(n=1)。421匹の適格なネコのうち、88匹はtMgの測定に利用可能な残留血漿サンプルがなく、157匹は血漿FGF-23濃度に関するベースライン情報がなく、2つのサンプルは著しく溶血した。したがって、174匹のネコがこの研究に登録され、そのうちの一部は以前の研究に含まれていた5,8。174匹のネコと、残留血漿サンプル又は血漿FGF-23測定値の欠如のために分析から除外された247匹の適格なネコとのベースライン特性間に有意差は観察されなかった(データは示さず)。
【0150】
研究対象母集団は、88匹のメス(うち1匹は未去勢)、86匹のオス(うち3匹は未去勢)で構成されていた。ドメスティックショートヘアが最も一般的な品種であり(n=127)、次にドメスティックロングヘア(n=20)、ペルシャ(n=10)、ビルマ(n=7)、ブリティッシュショートヘア(n=2)、シャム(n=2)、及びアビシニアン、アメリカンショートヘア、チンチラ、オシキャット、ロシアンブルー、及びティファニーが各1匹であった。国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の病期分類システムによれば、114匹のネコがステージ2、50匹のネコがステージ3、10匹のネコがステージ4のCKDであった。研究対象母集団は、血漿tMgの基準範囲が導き出されたネコの群よりも高齢であった(平均,14.4年;SD,3.2年対12.7年;それぞれSD,2.2)。
【0151】
マグネシウム障害に関連する有病率及び要因
この研究対象母集団の血漿tMgの中央値は2.07[1.87,2.26]mg/dL(範囲,1.29~5.79)であった。174匹中20匹のネコが低マグネシウム血症(有病率,12%;95%CI,7~17)、11匹のネコが高マグネシウム血症(有病率,6%;95%CI,3~10)を患っていると診断された。IRISステージ4のネコでは、高マグネシウム血症が主に観察された(図4)。低マグネシウム血症、正常マグネシウム血、及び高マグネシウム血症のネコのベースライン特性が表2に示されている。
【0152】
マグネシウム障害に関連する危険因子が表3に記載されている。多変量回帰は、より高い血漿ln[FGF-23](OR,2.07;95%CI,1.48~2.90;P<0.001)及び全身性高血圧の診断(OR,4.24;95%CI,1.41~12.78;P=0.010)が、CKDを患うネコの低マグネシウム血症と独立して関連していたことを示した(Nagelkerke R,0.30)。全身性高血圧を患うネコの下位群の血漿tMgの中央値は、正常血圧群の2.09[1.90,2.29]mg/dLと比較して、1.97[1.69,2.14]mg/dLであった(P=0.004)。高マグネシウム血症の症例数が比較的少なかったため、高マグネシウム血症についての多変量解析は行わなかった。
【0153】
【表2-1】
【0154】
【表2-2】
【0155】
【表3】
【0156】
血漿総マグネシウムと血漿FGF-23及び他の臨床病理学的変数との関連
低マグネシウム血症のネコは、各IRISステージ内で正常マグネシウム血のネコよりも高いFGF-23濃度を有していた(図5)。血漿クレアチニン及びリン酸塩の濃度は、マグネシウム群間で有意差はなかった。血漿tMgとln[FGF23]との間に相関は認められなかった(r,-0.06;P=0.425)。しかしながら、血漿クレアチニンとリン酸を制御すると、血漿tMgとFGF-23との間に有意な逆相関が生じた(部分r,-0.50;P<0.001)。一般的な線形モデルからの単変量及び多変量の結果が表4に示されている。線維芽細胞成長因子23は、3つのIRISステージのすべてにおいてマグネシウムの重要な独立した予測因子であり、ステージ4で最も強い効果があった。
【0157】
正常なリン酸血及び高リン血症のネコの下位群分析(各ステージの血漿リン酸塩のIRIS標的に基づく)では、血漿FGF-23濃度は、血漿tMgの高いネコと比較して血漿tMgの低いネコで有意に高かった(図6)。IRISステージについて調整された一般線形モデルでは、ln[FGF-23]は正常なリン酸血のネコ(β,-0.11;95%CI,-0.17~-0.05;P=0.001)及び高リン血症ネコ(β,-0.17;95%CI,-0.24~-0.10;P<0.001)の両方で血漿tMgと負の関連があった。
【0158】
【表4-1】
【0159】
【表4-2】
【0160】
血漿総マグネシウムと生存との関連
270.4観察年(中央値,1.3[0.5,2.3]年)の合計追跡期間中に、150匹のネコが死亡し、20匹が追跡不能となり、4匹が2016年7月1日以降生存していた。高窒素CKDの診断後の最初の12か月における全死因死亡のリスクは、全集団で43%(72/167)、ベースラインで正常マグネシウム血のネコで35%(48/136)、低マグネシウム血症を患うネコで80%(16/20)、高マグネシウム血症を患うネコで73%(8/11)であった。全死因死亡の発生率は、すべてのネコで観察年あたり0.56、正常マグネシウム血症のネコで観察年あたり0.48、CKDの診断で低マグネシウム血症を患うネコ及び高マグネシウム血症を患うネコで観察年あたり1.34であった。
【0161】
3つのマグネシウムカテゴリのベースライン特性が表5に示されている。打ち切りは、正常マグネシウム血のネコで16%(23/143)、低マグネシウム血症のネコで5%(1/20)発生し、高マグネシウム血症のネコではいずれも発生しなかった。打ち切りされた症例の割合は、マグネシウムのカテゴリ間で有意差はなかった(P=0.240)。Cox回帰により、低マグネシウム血症と高マグネシウム血症が死亡リスクの増加と関連していることが示された(表5A及び図7)。交絡因子の調整後、低マグネシウム血症は死亡率の独立した予測因子のままであった。最終回帰モデルに組み込まれたネコ(n=119)のベースライン特性と、情報の欠落により除外されたネコ(n=55、データは示さず)のベースライン特性との間に統計的に有意な差は観察されなかった。
【0162】
十分に調整されたモデルで連続変数として扱われた血漿tMgは、血漿tMg<2.07mg/dLのネコの死亡率と逆相関していた(HR,0.04;95%CI,0.01~0.27;P=0.001;n=57;平均tMg,1.83mg/dL)。この関連は、tMg≧2.07mg/dLのネコでは非線形であり、有意ではなかった(HR,0.67;95%CI,0.24~1.85;P=0.438;n=65;平均tMg,2.37mg/dL)。しかしながら、最高四分位では、tMgは死亡率と有意に関連していた(tMg≧2.26mg/dL:HR,0.12;95%CI,0.02~0.76;P=0.025;n=31,平均tMg,2.62mg/dL)。
【0163】
血漿マグネシウム濃度と、全死因死亡率に関連するリン酸塩状態との間の事前定義された相互作用を、単変量Cox比例ハザード分析で調査した。CKDの診断時にIRISステージで高リン酸血症であったネコ(n=85)は、正常なリン酸血のネコ(n=89)と比較して、死亡リスクが増加した(HR,1.57;95%CI,1.13~2.16;P=0.007)。しかしながら、血漿マグネシウム濃度を考慮に入れると、血漿マグネシウムが低い高リン酸血症のネコのみが、正常なリン酸血のネコ(NP-HM:HR,0.53;95%CI,0.33~0.84;P=0.008、及びNP-LM:HR,0.51;95%CI,0.31~0.83;P=0.007)、及び、高血漿マグネシウムの高リン血症ネコ(HP-HM:HR,0.60;95%CI,0.36~0.99;P=0.043)と比較して死亡リスクが有意に増加した。曝露なしの結合参照カテゴリとしてのNP-HM群と比較して、HP-LM群では相対過剰リスクが0.79の相加性からの逸脱が観察され、マグネシウムとリン酸塩の相互作用が生存に関連していることが示唆された(表5B)。
【0164】
【表5-1】
【0165】
【表5-2】
【0166】
血漿総マグネシウムとCKDの進行との関連
81匹のネコは、進行解析に含めるのに利用可能な十分な追跡データを有しており、そのうち29匹(36%)は、診断の最初の12ヶ月以内にCKDの進行を示した。低マグネシウム血症のネコは、かなり高い割合で進行性のCKDを有していた(表2)。低マグネシウム血症は、単変量ロジスティック回帰分析で進行性疾患のオッズの増加と関連していたが、マグネシウムの効果は追加変数の調整後に有意性を失った。最終回帰モデルでは、より高いベースライン血漿FGF-23のみが、依然として、進行性CKDのリスクに関連する有意な予測因子のままであった(Nagelkerke R,0.21;表6)。高リン血症のネコと正常なリン酸血のネコの間(P=0.194)、又は4つのリン酸塩-マグネシウム群の間(P=0.628)で、進行リスクの統計的に有意な差は認められなかった。したがって、進行性のCKDに関連する血漿マグネシウムとリン酸塩の結合曝露の影響はさらに調査しなかった。
【0167】
【表6】
【0168】
考察
観察コホートの結果は、高窒素CKDのネコにおける血漿tMgと血漿FGF-23濃度との間の逆相関を示している。低マグネシウム血症と全死因死亡のリスク増加との間に有意な独立した関連性が観察された。マグネシウムの状態と進行性CKDのリスクとの間の独立した関連性についての不十分な証拠が見つかった。追加の分析では、低マグネシウム血症と全身性高血圧との関連の可能性が確認され、高リン酸血症に関連する死亡のリスクは、血漿tMgの上昇により緩和されるように思われた。
【0169】
この研究で見つかったCKDのさまざまなステージにわたるマグネシウム障害の分布は、少数のネコで以前に報告されたものと同等であった。高マグネシウム血症は、腎臓が十分なマグネシウムを濾過できないために起こると考えられており35,36、重度の腎機能障害を患うネコのほとんどに見られた。CKDにおける低マグネシウム血症は、腸吸収の障害又はマグネシウムの腎排泄の増加に続発すると考えられ、骨及び筋肉の蓄えが枯渇する35,37-39。尿中マグネシウムの排泄は、低マグネシウム血症のネコでより高く見えたが、これは、腎マグネシウムの消耗が根本的な原因であることを示唆している可能性がある39,40。しかしながら、これは少数の観察に基づいており、マグネシウムのFEを評価するために用いられるスポットサンプル法はネコにおける精度に欠けている41
【0170】
低マグネシウム血症は全身性高血圧と独立して関連していた。マグネシウムは、細胞内カルシウム濃度の調節、一酸化窒素の産生、及び血管の石灰化などのさまざまな機構を介して、血管抵抗に積極的な役割を果たす42-51。マグネシウムと血圧との関係は、人間の医学ではよく知られており39,52-57、イヌへのマグネシウム注入は血管抵抗とSBPの低減をもたらした58。高アルドステロン症は、全身性高血圧の高窒素血症ネコで一般に観察され59,60、アルドステロンは尿中マグネシウム排泄を刺激するが61,62、マグネシウムはアルドステロンの放出を阻害するため、低マグネシウム血症と高血圧との間のリ可能なリンクである可能性がある63,64。この研究に含まれるネコの血漿アルドステロン濃度に関する情報は入手できなかった。低カリウム血症及び低カルシウム血症は、ネコ、イヌ、及びヒトのマグネシウム欠乏と関連していたが98、コホートでの一般的な同時所見ではなかった。
【0171】
血漿tMgとFGF-23との逆相関は、CKDを患うネコの集団に見出されたが、これは、血液透析中のヒトCKD患者で以前に特定されていた69。げっ歯類研究の結果は、血漿FGF-23濃度が食事によるマグネシウム摂取による影響を受け30,31,70、マグネシウム含有緩下剤又はリン酸塩結合剤の投与を受けた血液透析患者は、POマグネシウムの投与を受けていない患者よりも血清FGF-23濃度が低かったことを示唆している69,71。他方では、ヒトCKDのステージ3及び4の患者の血清石灰化傾向に対する経口マグネシウム補給の効果を調べる研究において、FGF-23濃度の有意な低下は報告されていない72。マグネシウムとFGF-23の関係の根底にある機構は依然として解明されていないが、尿細管のリン酸塩73,74、カルシウム75、及びナトリウム76の再吸収を調節することが示されていることから、FGF-23が腎マグネシウムの対処に影響を与えると仮定することができよう。アルドステロンは骨芽細胞によるFGF-23の発現を刺激するため77、低マグネシウム血症の原因としての、又は低マグネシウム血症に続発する、高アルドステロン症は、おそらくは、より高い循環FGF-23に寄与する可能性がある。
【0172】
高窒素CKDの診断時の低マグネシウム血症は、ネコの死亡率の独立した予測因子であった。低マグネシウム血症と高マグネシウム血症の両方が集中治療室に入院したネコの生存率の低下と関連していたが78、マグネシウム状態の影響を評価した、CKDを患うネコの生存研究は以前にはなかった5-7。ヒトCKD患者の複数の観察研究は、血液透析患者25,28と非透析依存CKD患者24,26の両方で、低マグネシウム血症と死亡率の増加との関連性を報告している。さらには、高リン血症に関連する死亡リスクは、血液透析患者の血清マグネシウム濃度によって変化するように見える27。高リン血症はネコCKDでよく知られている危険因子であり6,7、結果は、マグネシウムが高いとネの高リン血症に関連する死亡のリスクが軽減されることを示唆している。CKDを患うネコの軟組織と血管石灰化に関するわずかな報告のみが存在するが2,79,80、考えられる説明としては、リン酸塩誘発性の血管石灰化に対するマグネシウムの抑制的役割でありうる21。加えて、リン酸塩とマグネシウムの両方が血漿FGF-23に影響を与え、これは、CKDを患うネコの重要な予後因子として特定されているが、ここに示す分析では生存の有意な予測因子ではなかった。ベースラインFGF-23は、CKDを患うヒトの上記の生存モデルには含まれていなかった。ネコの高マグネシウム血症に関連した高い死亡リスクは、追加の変数の調整後に失われたが、これは、おそらくは終末期CKDにおける優位性によって引き起こされた。しかしながら、この結果は少数の観測に基づいているため、95%信頼区間が広くなっていることに留意する必要がある。
【0173】
低マグネシウム血症はネコの高窒素血症の進行の危険因子だったが24、ヒトと同様に、多変量解析では関連性が失われた。さらには、マグネシウムは、マウス近位尿細管細胞へのリン酸塩誘発性損傷23、及びヒトCKD患者の高リン血症に関連する腎機能低下の程度を抑制することが示されている23。高リン血症と腎線維症の関係はCKDを患うネコではよく知られているが8,81-83、本研究では、高リン血症が進行に及ぼす効果の証拠も、高窒素血症の進行に関連するマグネシウムとリン酸塩の相互作用も見られなかった。追跡期間が短い場合、血漿クレアチニンの漸進的な増加を示すことはより困難であることから、これらの分析は、マグネシウム障害を患うネコの短い生存期間の影響を受けた可能性がある。
【0174】
ネコのコホートへの登録後に血漿tMgを測定したため、選択プロセスは対象とする曝露に対して盲検化した。しかしながら、血漿FGF-23に関する情報を有するネコのみが選択された。この潜在的なバイアスの原因には、含まれているネコと情報が欠落しているために除外されたネコのベースラインデータを比較することによって対処した。これらの頻度は所与の時間間隔ではなく単一の時点で評価されたため、低マグネシウム血症と高マグネシウム血症の有病率は過小評価された可能性があるが、これらの障害を患っているネコは死亡のリスクがより高くなるという特徴があった。
【0175】
進行及び生存に対する低マグネシウム血症と高マグネシウム血症の真の影響は、誤分類バイアスを原因として過小評価された可能性がある。第一に、単一のベースライン測定に基づいた異なるマグネシウムカテゴリにあるネコをグループ化することにより、回帰希釈バイアスが導入された可能性がある。ベースラインのマグネシウム濃度は、CKDの過程で低マグネシウム血症を発症するヒト患者では低くなるが24、CKDを患うネコの血漿マグネシウムがどのように経時変化するかは不明である。第二に、tMgは、イオン化、タンパク質結合、及び複合マグネシウムの3つの画分で構成されている19。イオン化マグネシウムの状態は、ネコ腎移植レシピエント及び糖尿病を患うネコのtMgによって過大評価されており65,84、したがって、イオン化低マグネシウム血症を患うネコは正常マグネシウム血のカテゴリに含まれている可能性があり、これは、低マグネシウムで観察された効果がtMg状態ではなくイオン化によるものである場合に、系統的でない誤分類を導入してしまうであろう。しかしながら、体内マグネシウムのわずか1%しか細胞外液には存在せず、tMgの測定又は生物学的に活性なイオン化マグネシウムの測定がマグネシウムの状態を最もよく表すかどうかに関するコンセンサスは存在しておらず、これらの方法間ではよい一致は得られていない35,39,85。多変量解析を行ったが、残留交絡の可能性を排除することはできず、ビタミンD代謝産物、血液ガス、骨パラメータ、及び血漿アルドステロン濃度に関する不完全な情報によって、マグネシウムとこれらの変数との関係の調査が妨げられた。
【0176】
この研究では、低い血漿総マグネシウムが、より高い血漿FGF-23濃度に関連し、ネコCKDの生存率を低下させることが確認されたが、これは、tMgとFGF-23との関係及びCKDを患うヒトの生存率を調査した研究の結果と一致している24,26,28,69,71。これらの観察結果は、自然発生的なCKDを用いた一次診療からの顧客が飼っているネコに対して行われたものであり、他のペットネコ集団に関連するはずである。しかしながら、ネコの比較的小さなコホートで複数の観察が行われたため、結果は、ネコの異なる集団での他の研究による検証を必要とする。血漿tMgの連続測定により、この研究で検討した関連性の縦断的分析が可能になり、特に血漿マグネシウムと高窒素血症の進行との関係の評価に有益であると思われる。この分析物は予後情報を追加し、骨ミネラル代謝異常が著しいネコを特定するのに役立つことから、この知見は、CKDを患うネコで評価される通常の血漿生化学パネルに血漿マグネシウムを追加すべきであることを示唆している。
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98. Dupha N. Serum magnesium abnormalities in a small animal intensive care unit population. J Vet Intern Med 1994; 8: 157 (abstract).
【0178】
本開示の主題及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書にさまざまな変更、置換、及び修正を行うことができることが理解されるべきである。さらには、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及びステップの特定の実施態様に制限されることは意図されていない。本開示の主題、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップの開示から、当業者が容易に認識するように、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか又は実質的に同じ結果を達成する、既存のもの又は今後開発されるものは、本開示の主題に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップをその範囲内に含むことを意図している。
【0179】
特許、特許出願、刊行物、製品説明、及びプロトコルは、本出願全体を通して引用されており、その開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4
図5
図6
図7