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特許7344169モールド注型治具及び帯状の補強材の配置方法
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  • 特許-モールド注型治具及び帯状の補強材の配置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】モールド注型治具及び帯状の補強材の配置方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
H02K15/12 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020058552
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158846
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 重哉
(72)【発明者】
【氏名】川井 庸市
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-094011(JP,A)
【文献】特開昭55-160948(JP,A)
【文献】特開2017-41964(JP,A)
【文献】特開昭50-67403(JP,A)
【文献】特開2017-169293(JP,A)
【文献】実開昭54-124904(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の固定子のコイルエンドを樹脂で覆うモールド注型を行う際に前記固定子の径方向内側に挿入される軸状のモールド注型治具であって、
前記モールド注型を行うために前記固定子の径方向内側に挿入された状態で、前記固定子の固定子鉄心の径方向内側に配置される嵌合部と、前記コイルエンドの径方向内側に配置されるモールド受け部と、を備え、
前記モールド受け部は前記嵌合部から軸方向に離れるほど外径が拡大する略円錐台形状の外周面を有し、前記モールド受け部の前記外周面には、略周方向に延びる溝が少なくとも一周以上、形成されていることを特徴とするモールド注型治具。
【請求項2】
請求項1に記載のモールド注型治具であって、
前記モールド受け部の前記溝が螺旋状に形成されていることを特徴とするモールド注型治具。
【請求項3】
請求項1に記載のモールド注型治具であって、
周方向に一周する前記溝により前記モールド受け部の前記外周面に段差が設けられていることを特徴とするモールド注型治具。
【請求項4】
請求項1に記載のモールド注型治具を用いて前記モールド注型を行う際に、前記モールド注型によって前記樹脂の径方向内側に前記樹脂と一体となって固定される帯状の補強材を配置する方法であって、
前記モールド受け部の前記溝に沿って前記補強材を巻き付けることを特徴とする帯状の補強材の配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の固定子のコイルエンドを樹脂で覆うモールド注型を行う際に用いるモールド注型治具及び樹脂を補強する帯状の補強材の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の定格出力や定格トルクを向上させるために、巻線のコイルエンドの熱を外部に効果的に放出する目的で、コイルエンドを樹脂で覆うモールド注型を施した回転電機の固定子が知られている。更に、コイルエンドの温度の上昇や下降を繰り返すことによりコイルエンドを覆う樹脂にクラックが発生することを防ぐために、帯状の補強材で樹脂を補強する技術が特許文献1で開示されている。
【0003】
図3は、巻線のコイルエンドを樹脂で覆うモールド注型を施した回転電機の固定子10を示す斜視図である。図4及び図5は、特許文献1に開示された図である。図4は、図3に示す回転電機の固定子10を径方向内側から見た図である。図5は、図4におけるA-A線断面図である。このA-A線断面は、固定子鉄心1と樹脂2の境界面であり、固定子鉄心1の軸方向端面を含む。図3図4及び図5に示すように、固定子10は、電磁鋼板が軸方向に積層された固定子鉄心1と、巻線3と、巻線3のうち固定子鉄心1の軸方向端面より外側に飛び出した部分であるコイルエンド31を覆うモールド注型によって形成された樹脂2を備える。
【0004】
図5に示すように、固定子鉄心1は、略円環形状のヨーク11と、ヨーク11の内周面から径方向内側に突出する複数のティース12によって構成される。周方向に隣接するティース12の間には巻線3が収容される空間であるスロット13が形成されており、巻線3はスロット13を通してティース12に巻回されている。そして、図4に細い破線で示すように、巻線3のコイルエンド31が樹脂2の内部に入っている。
【0005】
また、図4及び図5に示すように、スロット13から巻線3が径方向内側へ飛び出すことを防止するために、スロット開口部14には絶縁板4が挿入されている。絶縁板4は、このようにスロット開口部14を塞ぐだけでなく、軸方向に延びて固定子鉄心1の軸方向端面より軸方向に突出しており、図4に太い破線で示すように固定子鉄心1の軸方向端面より突出した突出部41が樹脂2の内部に入っている。
【0006】
巻線3に交流電流を流すと、固定子10に回転磁界が発生し、固定子10の径方向内側に所定のギャップを設けて配置した不図示の回転子の磁極と磁気的に作用して回転子が回転する。固定子10において、巻線3に電流を流したり止めたりすることにより、巻線3の温度が上昇と下降を繰り返す。すると、固定子鉄心1及び樹脂2も温度の上昇と下降を繰り返し、固定子鉄心1と樹脂2の線膨張係数の差に起因して発生する熱応力が樹脂2に加わりクラックが発生することがある。特にクラックが発生し易い場所は、応力が集中するティース角部15であり、図4及び図5に示すティース角部15を起点として樹脂2にクラックが発生して軸方向に伸展することが多い。
【0007】
そこで、図4及び図5に示すように、帯状の補強材5が、コイルエンド31の径方向内側かつ固定子鉄心1の軸方向端面のティース角部15近傍に少なくとも1周分配置され、モールド注型によって樹脂2の径方向内側に一体となって固定される。なお、図5図4におけるA-A線断面図であるため、本来は、帯状の補強材5は図5に描かれないはずであるが、軸方向に見て帯状の補強材5が配置される外周位置を図5に破線で示している。帯状の補強材5の材質としては、樹脂2を補強するために樹脂2と一体に成形できることが望ましいため、図4に示すようにガラスクロス織布又は炭素繊維織布等の、樹脂2の浸透が可能な材質が使用される。
【0008】
固定子10のコイルエンド31を樹脂2で覆うモールド注型が行われる際は、巻線3を巻回した固定子鉄心1のスロット13に絶縁板4を挿入して補強材5を上記の位置に配置してモールド注型治具を組み付けた状態で樹脂2が流し込まれる。図6は従来のモールド注型治具を組み付けた固定子10の軸方向断面図である。従来のモールド注型治具は、固定子鉄心1の径方向内側に樹脂2が漏れないように挿入する軸状の治具21と、固定子10の下側に樹脂3が漏れないように受ける円盤状の治具22と、固定子10の径方向外側へ樹脂2の漏れを防ぐ円筒形状の治具23と、樹脂2の熱硬化時に軸状の治具21と円盤状の治具22との軸方向へ隙間が生じないよう軸状の治具21を押さえる板状の治具24で構成される。
【0009】
軸状の治具21は、モールド注型を行う際に固定子鉄心1の径方向内側に配置される略円柱形状の嵌合部21aと、コイルエンド31の径方向内側に配置されるモールド受け部21bを備える。嵌合部21aは、常温で固定子鉄心1の内周面との間に隙間があり、固定子鉄心1の径方向内側に挿入してモールド注型を行う際に加熱されて膨張し、固定子鉄心1の内周面との間の隙間を塞ぐ役割がある。モールド受け部21bは、回転電機を搭載するユニットの構造物である他部品との干渉を避けるためや、モールド注型後の離型性を高めるためなどの理由から、嵌合部21aから軸方向に離れるほど外径が大きくなる円錐台形状の外周面を有する。軸状の治具21の材質として、加熱時の嵌合と冷却時の離型が容易な、線膨張係数が固定子鉄心1より大きい樹脂等が挙げられる。
【0010】
また、円筒形状の治具23と板状の治具24は、不図示のボルトやナット等の締結部材を用いて円盤状の治具22に固定される。なお、円筒形状の治具23は固定子10を冷却するために嵌装する不図示の水冷ジャケット等でも代用が可能である。
【0011】
モールド注型を行う際に帯状の補強材5を配置する方法として、スロット13内に挿入された絶縁板4の突出部41の径方向内側の表面に予め帯状の補強材5を接着する方法と、軸状の治具21と絶縁板4との間に帯状の補強材5を挿入して樹脂2と一体成型することにより樹脂2に固定する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2017-41964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の帯状の補強材の配置方法のうち、絶縁板の突出部の径方向内側の表面に接着する方法は、軸状の治具を固定子の径方向内側に挿入する前に帯状の補強材を絶縁板に固定することになる。一般的にコイルエンドは高さを抑えるためプレスして成形される。コイルエンドはプレスされた際、径方向内側へ膨らむことがある。コイルエンドが径方向内側へ膨らむと、帯状の補強材がコイルエンドによって径方向内側に向かって押されて、軸状の治具の挿入時に帯状の補強材が軸状の治具と干渉してしまうことがある。
【0014】
また、軸状の治具と絶縁板との間に帯状の補強材を挿入し、樹脂と一体成型することにより樹脂に固定する方法についても、プレスされたコイルエンドが径方向内側へ膨らむと、軸状の治具と絶縁板との隙間に帯状の補強材を挿入しづらく作業性が悪いことや、帯状の補強材は弾力性に富み、挿入後において特に接着等で固定しないため、軸状の治具のモールド受け部の外周面が円錐台形状のままでは、帯状の補強材を軸状の治具のモールド受け部に巻きつけた状態を保持しておくのが難しいという課題があった。
【0015】
そこで、本発明は、コイルエンドを樹脂で覆うモールド注型を行う際に、樹脂を補強する帯状の補強材が軸状のモールド注型治具と干渉せず、また軸状のモールド注型治具から外れることなく配置可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るモールド注型治具は、回転電機の固定子のコイルエンドを樹脂で覆うモールド注型を行う際に前記固定子の径方向内側に挿入される軸状のモールド注型治具であって、前記モールド注型を行うために前記固定子の径方向内側に挿入された状態で、前記固定子の固定子鉄心の径方向内側に配置される嵌合部と、前記コイルエンドの径方向内側に配置されるモールド受け部と、を備え、前記モールド受け部は前記嵌合部から軸方向に離れるほど外径が拡大する略円錐台形状の外周面を有し、前記モールド受け部の前記外周面には、略周方向に延びる溝が少なくとも一周以上、形成されていることを特徴とする。
【0017】
このように軸状のモールド注型治具のモールド受け部の外周面に略周方向に延びる溝が少なくとも一周以上、形成されているため、帯状の補強材がコイルエンドによって径方向内側に向かって押された場合でも、軸状のモールド注型治具を固定子の径方向内側に挿入する際に絶縁板に接着された帯状の補強材が溝に逃げ込み、帯状の補強材が軸状のモールド注型治具と干渉することを避けることができる。また、帯状の補強材をモールド注型治具のモールド受け部の外周面の溝に嵌めることにより帯状の補強材の動きが規制されるため、軸状のモールド注型治具に帯状の補強材が巻き付いた状態を保持できる。そのため、本発明に係るモールド注型治具は、コイルエンドを樹脂で覆うモールド注型を行う際に、樹脂を補強する帯状の補強材が軸状のモールド注型治具と干渉せず、また軸状のモールド注型治具から外れることなく配置可能とすることができる。
【0018】
本発明に係るモールド注型治具の一態様において、前記モールド受け部の前記溝が螺旋状に形成されていてもよい。
【0019】
本発明に係るモールド注型治具の一態様において、周方向に一周する前記溝により前記モールド受け部の前記外周面に段差が設けられていてもよい。
【0020】
本発明に係る帯状の補強材の配置方法は、前記モールド注型治具を用いて前記モールド注型を行う際に、前記モールド注型によって前記樹脂の径方向内側に前記樹脂と一体となって固定される帯状の補強材を配置する方法であって、前記モールド受け部の前記溝に沿って前記補強材を巻き付けることを特徴とする。
【0021】
このように軸状のモールド注型治具のモールド受け部の溝に沿って帯状の補強材を巻き付けることによって、帯状の補強材が溝に嵌って帯状の補強材の動きが規制されるため、軸状のモールド注型治具に帯状の補強材が巻き付いた状態を保持できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、コイルエンドを樹脂で覆うモールド注型を行う際に、樹脂を補強する帯状の補強材が軸状のモールド注型治具と干渉せず、また軸状のモールド注型治具から外れることなく配置可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態の軸状のモールド注型治具の斜視図である。
図2】第2の実施形態の軸状のモールド注型治具の斜視図である。
図3】回転電機の固定子の斜視図である。
図4図3に示す回転電機の固定子を径方向内側から見た図である。
図5図4におけるA-A線断面図である。
図6】従来のモールド注型治具を組み付けた回転電機の固定子の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
第1の実施形態のモールド注型治具25について、図面を用いて説明する。図1は、モールド注型治具25の斜視図である。モールド注型治具25は、図3図4及び図5に示す回転電機の固定子10のコイルエンド31を樹脂2で覆うモールド注型を行う際に固定子10の径方向内側に挿入される軸状のモールド注型治具である。軸状のモールド注型治具25を用いてモールド注型を行う場合、巻線3を巻回した固定子鉄心1のスロット13に絶縁板4を挿入して補強材5を配置した状態で、図6に示す軸状の治具21の代わりに軸状のモールド注型治具25を固定子10の径方向内側に挿入し、円盤状の治具22、円筒形状の治具23及び板状の治具24を固定子10に組み付けた状態で樹脂2が流し込まれる。
【0025】
軸状のモールド注型治具25は、既述の軸状の治具21と同様に、モールド注型を行うために固定子10の径方向内側に挿入された状態で、固定子鉄心1の径方向内側に配置される円柱形状の嵌合部25aと、コイルエンド31の径方向内側に配置されるモールド受け部25bを備える。嵌合部25aは、常温で固定子鉄心1の内周面との間に隙間があり、固定子鉄心1の径方向内側に挿入してモールド注型を行う際に加熱されて膨張し、固定子鉄心1の内周面との間の隙間を塞ぐ役割がある。図1に示すように、モールド受け部25bは、嵌合部25aから軸方向に離れるほど外径が大きくなる略円錐台形状の外周面を有する。そして、モールド受け部25bの外周面には、略周方向に延びる溝25cが螺旋状に少なくとも一周以上、形成されている。
【0026】
モールド注型を行う際の帯状の補強材5を配置する方法として絶縁板4の突出部41の径方向内側の表面に帯状の補強材5を接着する方法を採用した場合に、既に述べたように、径方向内側へ膨らんだコイルエンド31によって帯状の補強材5が径方向内側に向かって押されることがある。しかし、このように帯状の補強材5がコイルエンド31によって径方向内側に向かって押されても、上記のようにモールド受け部25bの外周面に溝25cが形成されており、軸状のモールド注型治具25を固定子10の径方向内側に挿入する際に帯状の補強材5が溝25cに逃げ込むため、帯状の補強材5が軸状のモールド注型治具25と干渉することを避けることができる。
【0027】
また、モールド注型を行う際の帯状の補強材5を配置する方法として軸状のモールド注型治具25と絶縁板4との間に帯状の補強材5を挿入する方法を採用した場合、帯状の補強材5の幅を溝25cの幅と同じにして帯状の補強材5を溝25cに沿って押し当てるように巻き付けて嵌めることにより、帯状の補強材5の動きが規制されるため、軸状のモールド注型治具25に帯状の補強材5が巻き付いた状態を保持できる。
【0028】
このように本実施形態のモールド注型治具25は、コイルエンド31を樹脂2で覆うモールド注型を行う際に、樹脂2を補強する帯状の補強材5が軸状のモールド注型治具25と干渉せず、また軸状のモールド注型治具25から外れることなく配置可能とすることができる。
【0029】
<第2の実施形態>
第2の実施形態のモールド注型治具26について、図面を用いて説明する。図2はモールド注型治具26の斜視図である。モールド注型治具26は、図3図4及び図5に示す回転電機の固定子10のコイルエンド31を樹脂2で覆うモールド注型を行う際に固定子10の径方向内側に挿入される軸状のモールド注型治具である。軸状のモールド注型治具26を用いてモールド注型を行う場合、巻線3を巻回した固定子鉄心1のスロット13に絶縁板4を挿入して補強材5を配置した状態で、図6に示す軸状の治具21の代わりに軸状のモールド注型治具26を固定子10の径方向内側に挿入し、円盤状の治具22、円筒形状の治具23及び板状の治具24を固定子10に組み付けた状態で樹脂2が流し込まれる。
【0030】
軸状のモールド注型治具26は、第1の実施形態のモールド注型治具25と同様に、モールド注型を行うために固定子10の径方向内側に挿入された状態で、固定子鉄心1の径方向内側に配置される円柱形状の嵌合部26aと、コイルエンド31の径方向内側に配置されるモールド受け部26bを備える。嵌合部26aは、第1の実施形態のモールド注型治具25の嵌合部25aと同様に、常温で固定子鉄心1の内周面との間に隙間があり、固定子鉄心1の径方向内側に挿入してモールド注型を行う際に加熱されて膨張し、固定子鉄心1の内周面との間の隙間を塞ぐ役割がある。図2に示すように、モールド受け部26bは、嵌合部26aから軸方向に離れるほど外径が大きくなる略円錐台形状の外周面を有する。そして、モールド受け部26bの外周面には、周方向に延びる溝26cが形成されており、溝26cによりモールド受け部26bの外周面には段差が生じている。
【0031】
モールド注型を行う際の帯状の補強材5を配置する方法として絶縁板4の突出部41の径方向内側の表面に帯状の補強材5を接着する方法を採用した場合に、帯状の補強材5がコイルエンド31によって径方向内側に向かって押されても、上記のようにモールド受け部26bの外周面に段差が生じており、軸状のモールド注型治具26を固定子10の径方向内側に挿入する際に帯状の補強材5が段差の凹部に逃げ込むため、帯状の補強材5が軸状のモールド注型治具26と干渉することを避けることができる。
【0032】
また、モールド注型を行う際の帯状の補強材5を配置する方法として軸状のモールド注型治具26と絶縁板4との間に帯状の補強材5を挿入する方法を採用した場合、帯状の補強材5の幅をモールド受け部26bの外周面の溝26cの軸方向の幅と同じにして帯状の補強材5を溝26cに沿って押し当てるように巻き付けて嵌めることにより、帯状の補強材5の動きが規制されるため、軸状のモールド注型治具26に帯状の補強材5が巻き付いた状態を保持できる。
【0033】
このように本実施形態のモールド注型治具26は、コイルエンド31を樹脂2で覆うモールド注型を行う際に、樹脂2を補強する帯状の補強材5が軸状のモールド注型治具26と干渉せず、また軸状のモールド注型治具26から外れることなく配置可能とすることができる。
【0034】
<実施形態の補足>
本開示の軸状のモールド注型治具は、上述した形態に限定されず、本開示の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、モールド受け部の外周面に設けられる溝の形状は、第1の実施形態及び第2の実施形態とは異なる形状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 固定子鉄心、2 樹脂、3 巻線、4 絶縁板、5 補強材、10 固定子、11 ヨーク、12 ティース、13 スロット、14 スロット開口部、15 ティース角部、21,25,26 軸状の治具、21a,25a,26a 嵌合部、21b,25b,26b モールド受け部、22 円盤状の治具、23 円筒形状の治具、24 板状の治具、25c,26c 溝、31 コイルエンド、41 突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6