IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧 ▶ 藤和電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-注湯装置 図1
  • 特許-注湯装置 図2
  • 特許-注湯装置 図3
  • 特許-注湯装置 図4
  • 特許-注湯装置 図5
  • 特許-注湯装置 図6
  • 特許-注湯装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】注湯装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/06 20060101AFI20230906BHJP
   B22D 35/00 20060101ALI20230906BHJP
   B22D 35/04 20060101ALI20230906BHJP
   B22D 39/04 20060101ALI20230906BHJP
   B22D 41/12 20060101ALI20230906BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B22D41/06
B22D35/00 D
B22D35/04
B22D39/04
B22D41/12 A
B22D45/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020069996
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021164951
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391020492
【氏名又は名称】藤和電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】西田 理
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-123533(JP,A)
【文献】特許第6023817(JP,B2)
【文献】特開平04-253562(JP,A)
【文献】特開昭56-158253(JP,A)
【文献】特開2001-246447(JP,A)
【文献】特開平08-174200(JP,A)
【文献】特開2003-290903(JP,A)
【文献】国際公開第2011/086778(WO,A1)
【文献】実開昭62-169757(JP,U)
【文献】特開平05-248959(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106132595(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 1/00-47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された鋳型に溶湯を注湯する注湯装置であって、
第1台車と、
前記第1台車を前記鋳型の配列方向に沿って移動させる横行駆動部と、
前記第1台車上に配置された第2台車と、
前記第2台車を前記配列方向に直交する方向である前後方向に沿って移動させる前後駆動部と、
前記第2台車上に設けられたフレームと、
前記フレームに支持され、出湯口を有し、溶解炉から受湯した溶湯を貯留し、溶湯の保温機能を有する炉である保持炉と、
前記配列方向に延在し、前記フレームに支持され、前記保持炉の前記出湯口に設けられる傾動軸と、
前記傾動軸を中心に前記保持炉を傾動させる傾動駆動部と、
前記前後方向に延在し、保持炉の出湯口の前方に位置するように前記フレームに設けられ、傾動させた前記保持炉から重力によって注がれる前記溶湯を受けて、前記鋳型の湯口に前記溶湯を案内する樋部材と、
を備える注湯装置。
【請求項2】
前記保持炉から前記溶湯を受けた前記樋部材内の前記溶湯の温度を測定する放射温度計を備える請求項1に記載の注湯装置。
【請求項3】
前記樋部材内に合金材を投入する投入装置を備える請求項1又は2に記載の注湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、溶解炉を搭載した注湯装置を開示する。注湯装置は、出湯口付近に設けられた第1傾動軸を中心として溶解炉を傾動させる第1駆動部と、溶解炉の重心付近に設けられた第2傾動軸を中心として溶解炉を傾動させる第2駆動部とを有する。注湯装置は、第2傾動軸を中心に溶解炉を傾動させることによって溶解炉の上下方向の位置合わせを行う。注湯装置は、第1回転軸を中心として溶解炉を傾動させることで注湯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5640020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の注湯装置においては、第2駆動部を動作させることで溶解炉の上下方向の位置が変更される。これにより、傾動中の溶解炉が鋳型に接触することを回避できる。しかしながら、溶解炉に対して2つの駆動部を備える必要があるため、運用コストが高くなるおそれがある。本開示は、運用コストを低減できる注湯装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る注湯装置は、配列された鋳型に溶湯を注湯する。注湯装置は、第1台車、横行駆動部、第2台車、前後駆動部、フレーム、保持炉、傾動軸、傾動駆動部、及び樋部材を備える。横行駆動部は、第1台車を鋳型の配列方向に沿って移動させる。第2台車は、第1台車上に配置される。前後駆動部は、第2台車を配列方向に直交する方向である前後方向に沿って移動させる。フレームは、第2台車上に設けられる。保持炉は、フレームに支持され、出湯口を有し、溶解炉から受湯した溶湯を貯留し、貯留する溶湯の温度を保持する。傾動軸は、配列方向に延在し、フレームに支持され、保持炉の出湯口に設けられる。傾動駆動部は、傾動軸を中心に保持炉を傾動させる。樋部材は、前後方向に延在し、保持炉の出湯口の前方に位置するようにフレームに設けられ、保持炉から溶湯を受けて、鋳型の湯口に溶湯を案内する。
【0006】
この注湯装置では、第1台車は、横行駆動部によって鋳型の配列方向に沿って移動する。第2台車は、前後駆動部によって第1台車上を前後方向に移動する。保持炉は、第2台車上に設けられたフレームに支持される。保持炉は、出湯口に設けられる傾動軸を中心として傾動する。これにより、保持炉内の溶湯は、保持炉の出湯口の前方に位置する樋部材に供給される。樋部材内の溶湯は、鋳型の湯口に案内される。このように、この注湯装置は、前後駆動部及び樋部材を備えることにより、樋部材の注湯口を前後方向に自由に移動させることができる。このため、傾動中の保持炉が鋳型に当たらないように上下動させる必要がなくなる。また、保持炉内の溶湯の温度は保持炉によって保持されるため、樋部材内の溶湯の温度が目標温度から大きく低下することを回避できる。このように、この注湯装置は、保持炉を2軸で傾動させる必要がなくなるため、2軸で傾動させる注湯装置と比べて運用コストを低減できる。
【0007】
一実施形態においては、注湯装置は、保持炉から溶湯を受けた樋部材内の溶湯の温度を測定する放射温度計を備えてもよい。この場合、注湯装置は、放射温度計の検出結果に基づいて保持炉に貯留された溶湯の温度を変更することができる。
【0008】
一実施形態においては、注湯装置は、樋部材内に合金材を投入する投入装置を備えてもよい。この場合、注湯装置は、投入する合金材に応じて溶湯の成分を変更させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一側面によれば、運用コストを低減できる注湯装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る注湯システムの一例を示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る注湯装置の一例を示す正面図である。
図3図3は、実施形態に係る注湯装置の一例を示す側面図である。
図4図4は、セクタギヤの一例を示す側面図である。
図5図5は、実施形態に係る注湯装置の一例を示す平面図である。
図6図6は、図2に示される投入装置及び放射温度計の一例を示す側面図である。
図7図7は、実施形態に係る注湯装置の制御装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0012】
[注湯システムの概要]
図1は、実施形態に係る注湯システムの一例を示す平面図である。図中のX方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が垂直方向である。X方向、Y方向及びZ方向は、3次元空間の直交座標系における互いに直交する軸方向である。以下ではZ方向を上下方向ともいう。
【0013】
図1に示される注湯システム100は、注湯装置1、溶解炉2、及び、鋳型移動装置3を備える。注湯システム100において、注湯装置1は、保持炉10を備え、溶解炉2から溶湯を受湯する。溶解炉2は、金属などを溶融して溶湯を生成する炉である。保持炉10は、溶湯の保温機能を有する炉であり、ヒータなどの加熱機構を備える。注湯装置1は、X方向に延びる一対のレールR1上を走行する。注湯装置1は、溶解炉2から受湯した溶湯を、配列された鋳型MDに順次注湯する。
【0014】
鋳型移動装置3は、鋳型MDの配列方向に沿って鋳型MDを搬送する。鋳型移動装置3は、枠送りシリンダ測長器3aを備え、鋳型MDの移動するタイミング、速度又は移動量などを含む鋳型移動情報を検出する。検出された鋳型移動情報は、注湯装置1へ送信される。注湯装置1は、枠送りシリンダ測長器3aの検出結果に基づいて、鋳型移動装置3により送り出された鋳型MDに追従し、保持炉10内の溶湯を注湯する。
【0015】
[注湯装置の構成]
図2は、実施形態に係る注湯装置の一例を示す正面図である。図3は、実施形態に係る注湯装置の一例を示す側面図である。図5は、実施形態に係る注湯装置の一例を示す平面図である。
【0016】
図2図3及び図5に示されるように、注湯装置1は、保持炉10を備える。保持炉10は、一例として炉内容量が500Kg以下であり、鉄系鋳物など1500℃未満の溶湯を貯留する。これにより、注湯装置1は、溶解炉を備える場合と比較してコンパクト化される。なお、保持炉10の炉内容量及び溶湯温度は上記に限定されず、適宜に設定することができる。
【0017】
注湯装置1は、横方向(X方向:鋳型MDの配列方向)に沿って移動する第1台車11を備える。第1台車11は、横方向に延びる一対のレールR1上に配置される。第1台車11の車輪には横行駆動部12が連結され、駆動力が伝達される。横行駆動部12は、第1台車11を鋳型MDの配列方向に沿って移動させる駆動装置であり、一例として電動モータなどである。横行駆動部12の駆動力によって、注湯装置1は横方向に移動可能となる。第1台車11の車輪には、横行位置検出器13が設けられる。横行位置検出器13は、横方向の第1台車11の移動位置を検出する。横行位置検出器13は、一例として、ロータリー式のエンコーダである。
【0018】
第1台車11上には、第2台車14が配置される。第2台車14は、第1台車11上に設けられた一対のレールR2上に配置される。一対のレールR2は、前後方向(Y方向:鋳型MDの配列方向に直交する方向)に沿って延在する。第1台車11上には、前後駆動部15が設けられる。前後駆動部15は、第2台車14を前後方向に沿って移動させる駆動装置であり、一例として電動モータなどである。前後駆動部15には、ラックピニオン22(図5参照)が設けられており、前後駆動部15の回転駆動力が直線駆動力に変換されて第2台車14に作用する。前後駆動部15の駆動力によって、第2台車14は前後方向に移動可能となる。ラックピニオン22とレールR2との接続箇所にはリニアガイド17が設けられ、力の伝達が円滑に行われる。
【0019】
第2台車14上には、上部フレーム16(フレームの一例、図2参照)が設けられる。上部フレーム16は、上部フレーム16によって支持される構成要素とともに上部ユニットを構成する。つまり、第2台車14は、上部ユニットとともに前後方向に移動可能である。上部フレーム16は、第2台車14上にロードセル18を介して立設される。ロードセル18は、一例として上部ユニット下方の前後左右の4箇所に配置される。ロードセル18は、上部ユニットの重量を検出する。
【0020】
上部フレーム16には、傾動フレーム19が支持される。傾動フレーム19は、保持炉10を支持する。保持炉10は、傾動フレーム19に固定される。保持炉10の出湯口10a(図3及び図5参照)には、横方向に延在する傾動軸Aが設けられる。傾動軸Aは、上部フレーム16に回転可能に支持される。
【0021】
傾動フレーム19には、一対のセクタギヤ21(図3参照)が設けられる。図4は、セクタギヤの一例を示す側面図である。図4に示されるように、セクタギヤ21は、扇形の歯車部材であり、外周にギヤが設けられる。一例として、一対のセクタギヤ21は傾動フレーム19の両側面に取り付けられる。上部フレーム16には一対の傾動駆動部20が設けられる。一対のセクタギヤ21それぞれは、対応する傾動駆動部20に嵌合される。傾動駆動部20は、傾動軸Aを中心に保持炉10を傾動させる駆動装置であり、一例として電動モータなどである。傾動駆動部20の回転駆動力は、セクタギヤ21によって傾動軸Aを中心とする回転力として傾動フレーム19に伝達される。傾動駆動部20の駆動力によって、傾動フレーム19は保持炉10とともに傾動軸Aを中心に傾動可能となる。
【0022】
上部フレーム16には、鋳型MDの湯口C(図3参照)に溶湯を案内する樋部材30が設けられる。樋部材30は、前後方向に延在し、保持炉10の出湯口10aの前方に位置するように上部フレーム16に設けられる。樋部材30は、上部が開放された容器であり、底には注湯口30aが設けられる。注湯口30aは、鉛直方向に開口される。これにより、樋部材30は、保持炉10から溶湯を受けて貯留し、注湯口30aから溶湯を鉛直方向に沿って鋳型MDの湯口Cに供給できる。
【0023】
上部フレーム16には、樋部材30内に合金材を投入する投入装置40が設けられる。投入装置40は、樋部材30の上方に位置するように上部フレーム16に設けられる。また、上部フレーム16には、樋部材30内の溶湯の温度を測定する放射温度計42が設けられる。
【0024】
図6は、図2に示される投入装置40及び放射温度計42の一例を示す側面図である。図6に示されるように、投入装置40は、投入ノズル41、合金材ホッパ43、投入スクリュー44、及び、接種駆動部45を備える。合金材ホッパ43は、予め決定された合金材を貯留する。合金材ホッパ43の下部には、投入スクリュー44が接続される。投入スクリュー44は、接種駆動部45によって動作する。接種駆動部45は一例として電動モータである。投入スクリュー44は、鋳型ごとの切出量に応じて設定された回転数で回転し、投入ノズル41へ合金材を搬送する。投入ノズル41は、投入スクリュー44によって搬送された合金材を樋部材30へ落下させる。
【0025】
放射温度計42は、投入装置40に支持されている。放射温度計42は、測定位置の赤外線強度を検出する。放射温度計42は、測定位置が樋部材30内の溶湯となるように予め位置決めされる。
【0026】
注湯装置1は、上述した構成要素を統括制御する制御装置50(図2参照)を備える。制御装置50は、一例としてPLC(Programmable Logic Controller)として構成される。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)及びROM(Read Only Memory)などの主記憶装置(記憶媒体の一例)、タッチパネルやキーボードなどの入力デバイス、ディスプレイなどの出力デバイス、ハードディスクなどの補助記憶装置(記憶媒体の一例)などを含む通常のコンピュータシステムとして構成されてもよい。
【0027】
図7は、実施形態に係る注湯装置の制御装置の構成図である。図7に示されるように、制御装置50は、コントローラ51を備える。コントローラ51は、演算部51a、記憶部51b、及び、I/O部51cを備える。演算部51aは、プロセッサとして動作し、演算処理やプログラムの読み出し、実行などを行う。記憶部51bは、各種設定値、作動中に取得された各種検出値、及び、プログラムなどを保存する。I/O部51cは、アナログ入出力、ディジタル入出力、カウンタ、及び通信機能などを実現する。
【0028】
制御装置50は、ユーザインターフェイスとして表示器60及び設定器61を備える。コントローラ51は、表示器60及び設定器61に接続される。表示器60は、一例としてディスプレイ装置であり、設定器61は、一例としてキーボードなどである。
【0029】
制御装置50は、動力インターフェイスとしてサーボドライバ及びインバータを備える。コントローラ51は、サーボドライバ及びインバータに接続される。サーボドライバはモータを駆動させる回路であり、インバータはモータの回転を制御する回路である。例えば、コントローラ51は、一対の傾動駆動部20のうちの第1傾動駆動部20aと第1サーボドライバ52を介して接続される。コントローラ51は、一対の傾動駆動部20のうちの第2傾動駆動部20bと第2サーボドライバ53を介して接続される。コントローラ51は、第3サーボドライバ54を介して前後駆動部15に接続される。コントローラ51は、第1インバータ55を介して横行駆動部12に接続される。コントローラ51は、第2インバータ56を介して接種駆動部45に接続される。
【0030】
制御装置50は、センサ用インターフェイスとして温度計アンプ57及びロードセルアンプ58を備える。コントローラ51は、温度計アンプ57を介して放射温度計42に接続される。コントローラ51は、ロードセルアンプ58を介してロードセル18に接続される。コントローラ51は、センサである横行位置検出器13及び枠送りシリンダ測長器3aに接続される。
【0031】
コントローラ51は、接続される機器から情報を取得し、注湯装置1の動作を制御する。コントローラ51は、第1傾動駆動部20a及び第2傾動駆動部20bにより調整された保持炉10の傾動位置(回転位置)を第1サーボドライバ52及び第2サーボドライバ53から取得する。コントローラ51は、前後駆動部15により調整された保持炉10の前後位置を第3サーボドライバ54から取得する。コントローラ51は、取得した位置情報を記憶部51bに記憶する。コントローラ51は、演算部51aから指定位置又は指定速度を第1サーボドライバ52、第2サーボドライバ53、及び第3サーボドライバ54に出力する。これにより、保持炉10は、コントローラ51からの指示に従って前後方向を移動し、コントローラ51からの指示に従って傾動する。
【0032】
コントローラ51は、横行駆動部12により調整された第1台車11の移動速度を第1インバータ55から取得する。コントローラ51は、取得した速度情報を記憶部51bに記憶する。コントローラ51は、演算部51aから指定速度を第1インバータ55に出力する。コントローラ51は、横行位置検出器13の位置情報に基づいて第1台車11の停止を判定し、横行駆動部12へ停止を指示する。コントローラ51は、枠送りシリンダ測長器3aにより取得されたデータに基づいて、記憶部51bに記憶された鋳型MDの現在位置を更新する。これにより、第1台車11はコントローラ51からの指示に従って鋳型MDを追従するように横方向を移動し、投入装置40はコントローラ51からの指示に従って合金材を投入する。
【0033】
コントローラ51は、接種駆動部45により調整された投入スクリュー44の回転速度を第2インバータ56から取得する。コントローラ51は、取得した速度情報を記憶部51bに記憶する。コントローラ51は、演算部51aから指定速度を第2インバータ56に出力する。これにより、投入装置40はコントローラ51からの指示に従って合金材を投入する。コントローラ51は、記憶部51bに予め記憶された鋳型MD毎の切出量に合わせた回転数を第2インバータ56に指示する。第2インバータ56は、接種駆動部45を介して投入スクリュー44を回転させ、合金材ホッパ43の下部より合金材を切り出し、投入ノズル41から樋部材30へ合金材を投入する。コントローラ51は、合金材の投入時間又は投入量に基づいて、接種駆動部45へ投入停止を指示する。
【0034】
コントローラ51は、I/O部51cを介してロードセルアンプ58から得られたデータを取得し、演算部51aによって保持炉10内の溶湯の重量を算出する。そして、コントローラ51は、記憶部51bに記憶された現在の溶湯重量を更新する。
【0035】
コントローラ51は、放射温度計42から樋部材30の溶湯の温度を所定時間測定する。例えば、コントローラ51は、湯面が安定する受湯開始時間から所定時間経過後、所定時間の間、測定する。これにより、コントローラ51は、樋部材30の溶湯の適切な温度を取得することができる。また、コントローラ51は、放射温度計42の測定結果に基づいて保持炉10の設定温度を調整する。
【0036】
[注湯装置の動作]
コントローラ51は、記憶部51bに記憶された現在の溶湯重量が所定値以下の場合には、溶解炉2の前に移動するように横行駆動部12へ指示を出力する。これにより、注湯装置1の第1台車11は、溶解炉2の前に移動し、保持炉10は溶湯を受け取る。
【0037】
続いて、コントローラ51は、記憶部51bに記憶された鋳型MDの現在位置に基づいて、横行駆動部12へ指示を出力する。これにより、第1台車11はコントローラ51からの指示に従って鋳型MDを追従するように横方向を移動し、目的の鋳型MDの湯口Cと横位置を位置合わせする。
【0038】
続いて、コントローラ51は、記憶部51bに記憶された位置情報に基づいて前後駆動部15へ指示を出力する。これにより、第2台車14が上部フレーム16とともに前後して、目的の鋳型MDの湯口Cと、樋部材30の注湯口30aとの前後位置を位置合わせする。
【0039】
続いて、コントローラ51は、記憶部51bに記憶された位置情報に基づいて傾動駆動部20へ指示を出力する。これにより、傾動フレーム19が保持炉10とともに傾動軸Aを中心に傾動する。保持炉10の出湯口10aから溶湯が樋部材30へと注がれ、樋部材30の注湯口30aから溶湯が鋳型MDの湯口Cへと注がれる。
【0040】
コントローラ51は、ロードセル18の検出結果に基づいて所定量の溶湯が注湯されたと判定した場合には、傾動駆動部20を逆回転させ、セクタギヤ21を介して湯切りする。コントローラ51は、上述した処理を鋳型MDごとに繰り返す。
【0041】
[実施形態のまとめ]
【0042】
注湯装置1では、第1台車11は、横行駆動部12によって鋳型MDの配列方向に沿って移動する。第2台車14は、前後駆動部15によって第1台車11上を前後方向に移動する。保持炉10は、第2台車14上に設けられた上部フレーム16に傾動フレーム19を介して支持される。保持炉10は、出湯口10aに設けられる傾動軸Aを中心として傾動する。これにより、保持炉10内の溶湯は、保持炉10の出湯口10aの前方に位置する樋部材30に供給される。樋部材30内の溶湯は、鋳型MDの湯口Cに案内される。このように、注湯装置1は、前後駆動部15及び樋部材30を備えることにより、樋部材30の注湯口30aを前後方向に自由に移動させることができる。このため、傾動中の保持炉10が鋳型MDに当たらないように上下動させる必要がなくなる。このように、注湯装置1は、保持炉10を2軸で傾動させる必要がなくなるため、2軸で傾動させる注湯装置と比べて消費電力を抑えることができる。よって、注湯装置1は、運用コストを低減できる。さらに、炉を2軸で傾動させる場合と比べて装置全体がコンパクトとなり、傾動機構に接続されるケーブルの本数が減少し、ケーブルの取り回しが容易となり、ケーブル起因の故障も減少する。つまり、注湯装置1は、故障率が低下し、メンテナンス性が向上する。
【0043】
取鍋や炉を傾動させて直接湯口に注湯する場合、湯口を大きく形成する必要がある。さらに、炉内溶湯レベルによって湯の飛びすぎや手前への湯こぼしなどが発生し、溶湯の注湯流速を遅くする必要がある。これに対して、注湯装置1は、樋部材30を用いることにより、取鍋や炉を傾動させて直接湯口に注湯する注湯装置と比べて、正確かつ迅速に鋳型MDの湯口Cに注湯することができる。
【0044】
なお、樋部材30を用いることで、取鍋や炉を傾動させて直接湯口に注湯する場合と比べて溶湯温度が低下することが考えられる。注湯装置1では、保持炉10内の溶湯の温度は保持炉10によって保持されるため、樋部材30内の溶湯の温度が目標温度から大きく低下することを回避できる。
【0045】
注湯装置1は、放射温度計42の検出結果に基づいて保持炉10に貯留された溶湯の温度を変更することができる。注湯装置1は、樋部材30内に合金材を投入する投入装置40を備え、投入する合金材に応じて溶湯の成分を変更させることができる。これにより、注湯装置1は、多品種少量生産を可能とする。
【0046】
以上、実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、樋部材30は、ロードセルを介して上部フレーム16に設けられてもよい。この場合、樋部材30に注湯された溶湯の量を測定できるので、注湯精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…注湯装置、2…溶解炉、10…保持炉、10a…出湯口、11…第1台車、12…横行駆動部、14…第2台車、15…前後駆動部、16…上部フレーム(フレームの一例)、20…傾動駆動部、30…樋部材、40…投入装置、42…放射温度計、A…傾動軸、C…湯口、MD…鋳型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7