(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ブザー装置
(51)【国際特許分類】
G10K 9/122 20060101AFI20230906BHJP
G10K 9/12 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G10K9/122 151
G10K9/12 C
G10K9/122 140
G10K9/122 152
(21)【出願番号】P 2020086248
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】ミネベアアクセスソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 祐介
(72)【発明者】
【氏名】磯▲崎▼ 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅志
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴史
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237473(JP,A)
【文献】実開昭58-157399(JP,U)
【文献】特開2004-170511(JP,A)
【文献】特開2015-038575(JP,A)
【文献】特開平10-313499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/122
G10K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(10)内に共鳴室(C)と、該共鳴室(C)に振動板(31)を臨ませた圧電ブザー(30)とが配設され、前記圧電ブザー(30)からの音放出と前記共鳴室(C)内からの水抜きに兼用される放音兼排水孔(H1~H3)が前記ケース(10)に設けられるブザー装置において、
前記共鳴室(C)は略円筒孔状に形成され、
前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室径方向で外方側の縁部(21)が、前記共鳴室(C)の周面(11ki)に対し共鳴室軸方向で隣接し且つ該周面(11ki)に沿って延びるように形成され、
前記放音兼排水孔(H1~H3)は、直径5ミリ以上の円を取り囲めるサイズに形成され
、
前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室周方向で一方側の縁部(22)と他方側の縁部(23)とが、共鳴室径方向で外方に向かうにつれて徐々に離れるように開いていて、該放音兼排水孔(H1~H3)の共鳴室周方向の二等分線(L)に関して線対称に形成されていることを特徴とするブザー装置。
【請求項2】
ケース(10)内に共鳴室(C)と、該共鳴室(C)に振動板(31)を臨ませた圧電ブザー(30)とが配設され、前記圧電ブザー(30)からの音放出と前記共鳴室(C)内からの水抜きに兼用される放音兼排水孔(H1~H3)が前記ケース(10)に設けられるブザー装置において、
前記共鳴室(C)は略円筒孔状に形成され、
前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室径方向で外方側の縁部(21)が、前記共鳴室(C)の周面(11ki)に対し共鳴室軸方向で隣接し且つ該周面(11ki)に沿って延びるように形成され、
前記放音兼排水孔(H1~H3)は、直径5ミリ以上の円を取り囲めるサイズに形成され、
前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室径方向で外方側の縁部(21)が内方側の縁部(24)よりも、共鳴室周方向で幅広であることを特徴とす
るブザー装置。
【請求項3】
ケース(10)内に共鳴室(C)と、該共鳴室(C)に振動板(31)を臨ませた圧電ブザー(30)とが配設され、前記圧電ブザー(30)からの音放出と前記共鳴室(C)内からの水抜きに兼用される放音兼排水孔(H1~H3)が前記ケース(10)に設けられるブザー装置において、
前記共鳴室(C)は略円筒孔状に形成され、
前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室径方向で外方側の縁部(21)が、前記共鳴室(C)の周面(11ki)に対し共鳴室軸方向で隣接し且つ該周面(11ki)に沿って延びるように形成され、
前記放音兼排水孔(H1~H3)は、直径5ミリ以上の円を取り囲めるサイズに形成され、
前記ケース(10)の、前記放音兼排水孔(H1~H3)が開口する正面(15)は、該放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室径方向で外方側の縁部(21)に連なる低位面部(15l)と、その他の縁部(22~24)に連なる高位面部(15h)とを有しており、
前記低位面部(15l)と前記高位面部(15h)との間に形成される段差部(15s)が、該外方側の縁部(21)の両端より前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室周方向で一方側の縁部(22)及び他方側の縁部(23)からそれぞれ離れる側に延びていることを特徴とす
るブザー装置。
【請求項4】
前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室周方向で一方側の縁部(22)と他方側の縁部(23)とが、共鳴室径方向で外方に向かうにつれて徐々に離れるように開いていて、該放音兼排水孔(H1~H3)の共鳴室周方向の二等分線(L)に関して線対称に形成されていることを特徴とする、請求項2または3に記載のブザー装置。
【請求項5】
前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室周方向で一方側の縁部(22)と他方側の縁部(23)とが、前記二等分線(L)に対し各々20°ずつ開いていることを特徴とする、請求項
1または4に記載のブザー装置。
【請求項6】
前記放音兼排水孔(H1~H3)は複数有って、共鳴室周方向に互いに間隔をおいて配置されることを特徴とする、請求項1~
5の何れか1項に記載のブザー装置。
【請求項7】
前記共鳴室(C)の周面(11ki)は、前記ケース(10)の正面側に徐々に拡径したテーパ面に形成されることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載のブザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブザー装置、特にケース内に共鳴室と、その共鳴室に振動板を臨ませた圧電ブザーとが配設され、圧電ブザーからの音を放出させる放音孔がケースに設けられるブザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ブザー装置において、放音孔を有するケースに、放音孔とは別に水抜き孔を設ける技術は、特許文献1に開示されている。また放音孔と水抜き孔とを兼ねる放音兼排水孔をケースに設ける技術は、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭57-93999号公報
【文献】実開昭55-129854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のブザー装置のように、放音孔とは別に水抜き孔をケースに設ける構造では、水抜き孔の追加に伴い共鳴室内の共鳴周波数が変化し、音圧低下が問題となる。
【0005】
そこで、この問題を解決するために、放音孔及び水抜き孔を小径にすることが考えられるが、その場合には、小径化に伴い水抜き孔の排水性が低下したり或いは孔内面に表面張力による水膜が張ってしまう虞れがあって、その水膜により放音性の低下を招いたり、或いはケース内に残る水が電子部品である圧電ブザーの故障要因となってしまう等の別の不都合がある。
【0006】
また特許文献2のように放音孔と水抜き孔とを兼ねる放音兼排水孔をケースに設ける従来構造では、放音兼排水孔が円形孔であって、共鳴室の周面に接するように配置されている。そのため、ブザー装置を組付けるべき支持体(例えば車体等)へのケースの組付け角度にばらつきが生じた場合には、放音兼排水孔と共鳴室周面との連通部が、共鳴室周面の最下部よりずれてしまい、そのため、共鳴室周面を伝って周面の最下部まで流下した水を放音兼排水孔からスムーズには排出できなくなる虞れがある。
【0007】
尚、特許文献2の部材でも、放音兼排水孔が小径であれば、特許文献1の構造と同様、水膜に因る不都合が生じる。
【0008】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、従来構造の上記問題を簡単な構造で解決可能としたブザー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、ケース内に共鳴室と、該共鳴室に振動板を臨ませた圧電ブザーとが配設され、前記圧電ブザーからのからの音放出と前記共鳴室内からの水抜きに兼用される放音兼排水孔が前記ケースに設けられるブザー装置において、前記共鳴室は略円筒孔状に形成され、前記放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部が、前記共鳴室の周面に対し共鳴室軸方向で隣接し且つ該周面に沿って延びるように形成され、前記放音兼排水孔は、直径5ミリ以上の円を取り囲めるサイズに形成され、前記放音兼排水孔の、共鳴室周方向で一方側の縁部と他方側の縁部とが、共鳴室径方向で外方に向かうにつれて徐々に離れるように開いていて、該放音兼排水孔の共鳴室周方向の二等分線に関して線対称に形成されていることを第1の特徴とする。
【0010】
また本発明は、ケース内に共鳴室と、該共鳴室に振動板を臨ませた圧電ブザーとが配設され、前記圧電ブザーからの音放出と前記共鳴室内からの水抜きに兼用される放音兼排水孔が前記ケースに設けられるブザー装置において、前記共鳴室は略円筒孔状に形成され、前記放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部が、前記共鳴室の周面に対し共鳴室軸方向で隣接し且つ該周面に沿って延びるように形成され、前記放音兼排水孔は、直径5ミリ以上の円を取り囲めるサイズに形成され、前記放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部が内方側の縁部よりも、共鳴室周方向で幅広であることを第2の特徴とする。
【0011】
また本発明は、ケース内に共鳴室と、該共鳴室に振動板を臨ませた圧電ブザーとが配設され、前記圧電ブザーからの音放出と前記共鳴室内からの水抜きに兼用される放音兼排水孔が前記ケースに設けられるブザー装置において、前記共鳴室は略円筒孔状に形成され、前記放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部が、前記共鳴室の周面に対し共鳴室軸方向で隣接し且つ該周面に沿って延びるように形成され、前記放音兼排水孔は、直径5ミリ以上の円を取り囲めるサイズに形成され、前記ケースの、前記放音兼排水孔が開口する正面は、該放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部に連なる低位面部と、その他の縁部に連なる高位面部とを有しており、前記低位面部と前記高位面部との間に形成される段差部が、該外方側の縁部の両端より前記放音兼排水孔の、共鳴室周方向で一方側の縁部及び他方側の縁部からそれぞれ離れる側に延びていることを第3の特徴としている。
【0012】
また本発明は、第2または第3の特徴に加えて、前記放音兼排水孔(H1~H3)の、共鳴室周方向で一方側の縁部(22)と他方側の縁部(23)とが、共鳴室径方向で外方に向かうにつれて徐々に離れるように開いていて、該放音兼排水孔(H1~H3)の共鳴室周方向の二等分線(L)に関して線対称に形成されていることを第4の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第1または第4の特徴に加えて、前記放音兼排水孔の、共鳴室周方向で一方側の縁部と他方側の縁部とが、前記二等分線に対し各々20°ずつ開いていることを第5の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第1~第5の何れかの特徴に加えて、前記放音兼排水孔は複数有って、共鳴室周方向に互いに間隔をおいて配置されることを第6の特徴とする。
【0015】
また本発明は、第1~第6の何れかの特徴に加えて、前記共鳴室の周面は、前記ケースの正面側に徐々に拡径したテーパ面に形成されることを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1~第3の特徴によれば、共鳴室を略円筒孔状としたケースに放音兼排水孔を設けたブザー装置において、放音兼排水孔は、直径5ミリ以上の円を取り囲めるサイズに形成されるので、孔の開口面積を十分に確保して、良好な排水性を発揮可能であるばかりか、孔内面に水膜が張るのを効果的に抑制して、水膜に因る放音性低下を防止できる。その上、放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部が、共鳴室の周面に対し共鳴室軸方向で隣接し且つ該周面に沿って延びるように形成されるので、その外方側の縁部が共鳴室周面に沿って周方向に延びることで、放音兼排水孔と共鳴室周面との連通部が周方向に拡がり、従って、ブザー装置を装着すべき支持体へのケースの取付け角度にばらつきが生じた場合でも、放音兼排水孔の外方側の縁部を共鳴室周面の最下部に露出させることができるため、共鳴室周面を伝って周面の最下部まで流下した水を放音兼排水孔からスムーズに排出可能となる。このように放音兼排水孔は、これの外方側の縁部が共鳴室周面に沿って延びる点による効果と、前述の開口面積を十分確保し得たサイズ効果とが相俟って、全体として良好且つスムーズな排水性が上記取付け角度のばらつきに影響されずに得られるので、ケース内に水が残りにくくなって、ブザー装置の故障発生の抑制に寄与することができる。
【0017】
また第1,第4の特徴によれば、放音兼排水孔の、共鳴室周方向で一方側の縁部と他方側の縁部とが、共鳴室径方向で外方に向かうにつれて徐々に離れるよう開いていて、放音兼排水孔の共鳴室周方向の二等分線に関して線対称に形成されるので、支持体に対するケースの取付角度が正規の取付け角度より、一方向又は他方向の何れかにばらついた場合でも、それに影響されずに放音兼排水孔のスムーズな排水性が確保可能となる。
【0018】
また第2の特徴によれば、放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部が内方側の縁部よりも、共鳴室周方向で幅広であるので、放音兼排水孔の開口面積を特別に大きくすることなく、放音兼排水孔と共鳴室周面との連通部を周方向に拡げることができて、共鳴室周面に沿って流下する水を放音兼排水孔より効率よくスムーズに排出できる。
【0019】
また第3の特徴によれば、ケースの、放音兼排水孔が開口する正面は、放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部に連なる低位面部と、その他の縁部に連なる高位面部とを有し、それら低位面部と高位面部との間に形成される段差部が、外方側の縁部の両端より放音兼排水孔の、共鳴室周方向で一方側の縁部及び他方側の縁部からそれぞれ離れる側に延びるので、放音兼排水孔からケース正面側に達した排水が、表面張力の働きで段差部を伝ってスムーズに流出可能となり、放音兼排水孔の排水性を更に高めることができる。
【0020】
また第5の特徴によれば、放音兼排水孔の、共鳴室周方向で一方側の縁部と他方側の縁部とが、前記二等分線に対し各々20°ずつ開いているので、支持体に対するケースの取付角度が正規の取付け角度より一方向又は他方向の何れかにばらついた場合でも、そのばらつきが20°以下であれば、そのばらつきに影響されずに放音兼排水孔のスムーズな排水性が確保可能となる。
【0021】
また第6の特徴によれば、放音兼排水孔は複数有って、共鳴室周方向に互いに間隔をおいて配置されるので、何れの放音兼排水孔を共鳴室周面の最下部に配置しても排水が可能となり、従って、ケースの支持体に対する取付位置の自由度が高められる。
【0022】
また第7の特徴によれば、共鳴室の周面は、ケースの正面側に徐々に拡径したテーパ面に形成されるので、その周面を伝い下った水は、テーパ面の勾配により周面の最下部前端までスムーズに流れ、そこに開口する放音兼排水孔よりケース外に流出可能となる。これにより、共鳴室内からの水抜きがより確実に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブザー装置の正面下方から見た全体斜視図
【
図5】支持板に取付けたブザー装置を斜め後方より見た一部破断斜視図(
図3の5矢視図)
【
図7】共鳴室周面を伝い下って放音兼排水孔に達した水の流れの一例を示す説明図(
図4の7矢視部拡大断面図)
【
図8】共鳴室を出て放音兼排水孔からケース正面側に達した水の流れの一例を示す説明図(
図2の8矢視部拡大断面図)
【
図9】(A)は縦置き取付姿勢にあるブザー装置の正面図、(B)は左右一方側への横置き取付姿勢にあるブザー装置の正面図、(C)は左右他方側への横置き取付姿勢にあるブザー装置の正面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
先ず、
図1~
図4において、車両としての自動車の車体適所には、運転状況に応じて車外の人、或いはドライバーに警報(例えば左折時の警報、後退時の警報等)を発するブザー装置Bが取付けられる。
【0026】
ブザー装置Bは、合成樹脂製のケース10と、そのケース10内に画成される共鳴室Cと、共鳴室Cに振動板31を臨ませた圧電ブザー30と、ケース10に設けられて圧電ブザー30からの音放出と共鳴室C内からの水抜きに兼用される放音兼排水孔H1~H3とを備える。特に実施形態の放音兼排水孔H1~H3は複数有って、共鳴室Cの周方向に互いに間隔をおいて配置される。
【0027】
ケース10は、中空のボックス状に形成されるケース本体11と、そのケース本体11を下面を除く表面を被覆するようケース本体11に嵌合されるボックス状のケースカバー12とで分割構成される。
【0028】
ケース本体11とケースカバー12との嵌合面間には、その間を着脱可能に結合する複数の結合機構13が設けられ、各々の結合機構13は、上記嵌合面の何れか一方(図示例ではケースカバー12)に設けた複数の係止孔12aと、何れか他方(図示例ではケース本体11)にそれぞれ突設されて複数の係止孔12aに各々係脱可能に係止する複数の係止爪11tとを備える。尚、ケース本体11とケースカバー12間の結合手段としては、実施形態の結合機構13に限定されず、例えば、ねじ止め、カシメ、ピン止め等の結合手段も実施可能である。
【0029】
ケースカバー12の複数の特定外面(例えば左右側面と背面)には、ブザー装置Bを支持させる支持体、例えば車体に固定の支持板Fにケース10を取付け固定するためのクリップ40が選択的且つ着脱可能に装着できるようになっている。クリップ40は、弾性材料(例えば硬質ゴム)により形成される。尚、クリップ40は、支持板Fを介さずに車体の板状部に直接、取付け固定してもよく、その場合は、車体が支持体となる。
【0030】
次に、クリップ40の取付構造について説明する。ケースカバー12の複数の特定外面(例えば左右側面と背面)には、上下方向に延びて互いに平行する一対の支持レール12rが突設され、両支持レール12rの上端間は、クリップ40に対する摺動ストッパを兼ねる連結枠12sで結合される。一方、クリップ40は、一対の支持レール12r間に摺動可能に挟持、支持される被支持部41bを裏面に一体に有する台座41を有する。この台座41の裏面(即ち被支持部41b)とケースカバー12の上記特定外面との対向面には、互いに係脱可能な第1,第2係止突起41bt,12tが形成される。
【0031】
従って、それら係止突起41bt,12t相互を係止させ且つ前記連結枠12sに被支持部41bの上端を係合させることで、台座41(従ってクリップ40)が支持レール12r上の定位置に固定可能である。
【0032】
また台座41の表面よりテーパ状に立ち上がる台座先部41aは、クリップ40の支持板Fへの取付け状態で、支持板Fにクッション体43を挟んで対向配置される。また台座41の表面中央部には、クッション体43の中心孔43hを通して外方に延びる支柱部45が突設され、その支柱部45の先部は、クッション体43の中心孔43hに先端部が係合可能な一対の弾性係止爪45tを一体に有する。その両弾性係止爪45tの中間部外面には、支持板Fの係合孔Fhの縁部に弾力的に係止可能な係止突部45tkが突設され、その係止突部45tkとクッション体43との間に係合孔Fhの縁部が挟持、固定可能となっている。
【0033】
ケース10に装着したクリップ40を支持板Fに取付ける際には、台座先部41aと弾性係止爪45tとの間でクッション体43を予めクリップ40に仮止めしておく。そして、その状態からクリップ40の弾性係止爪41tを支持板Fの係合孔Fh内に押し込むようにすれば、
図4に示す態様でクリップ40が支持板Fに取付け可能となる。かくして、クリップ40(延いてはケース10)を支持板F、従って車体に固定可能である。
【0034】
次にケース本体11の構造をより具体的に説明する。ケース本体11は、正面側を開放したボックス状のケース本体主部11mと、そのケース本体主部11mの内面に一体に結合される概略円筒状の共鳴室形成壁部11kと、共鳴室形成壁部11kおよびケース本体主部11mの底壁相互間を一体に結合する補強リブ部11aとを備えており、ケース本体主部11mの底面には、カプラ部11cが一体に連設される。
【0035】
共鳴室形成壁部11kの内部空間は共鳴室Cを構成する。実施形態の共鳴室形成壁部11kの内周面は、正面側に緩やかに拡径したテーパ状に形成され、そのテーパ状の内周面が共鳴室Cの周面11kiを構成する。そのテーパの勾配により、共鳴室Cの周面11kiに侵入した水はケース10の正面側にスムーズに流下する。
【0036】
共鳴室形成壁部11kの開放後端には、これを塞ぐようにして圧電ブザー30の外周部が取付けられる。圧電ブザー30は、共鳴室形成壁部11kに外周部が固定される円板状の振動板31と、振動板31の中央部に接合される圧電素子32とを有する。
【0037】
ケース本体主部11mの背面には、振動板31及び圧電素子32にリード線を介して一端が接続される一対の端子34,35が固定される。その両端子34,35は、抵抗36を介して接続されており、また各端子34,35の他端は、下方に延びてカプラ部11c内に露出し、その露出部が、外部配線に接続可能なカプラ端子部を構成する。而して、そのカプラ端子部は、外部配線を介して不図示の電子制御装置に接続される。
【0038】
ケースカバー12の前壁部は、共鳴室Cの前面の大部分を塞ぐようにして共鳴室形成壁部11kに隣接配置される。そして、そのケースカバー12の前面即ち正面15には、ケース10が縦置き配置(
図9(A)参照)された状態で最下位置となる第1放音兼排水孔H1と、ケース10が左右一方側に横置き配置(
図9(B)参照)された状態で最下位置となる第2音兼排水孔H2と、ケース10が左右他方側に横置き配置(
図9(C)参照)された状態で最下位置となる第3音兼排水孔H3とが設けられる。
【0039】
各々の放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室径方向で外方側の縁部21は、共鳴室Cの周面11kiに対し共鳴室軸方向で隣接し且つ周面11kiの周方向に沿って延びるように(実施形態では円弧状に)形成される。しかも各放音兼排水孔H1~H3は、直径5ミリ以上の仮想円Xを取り囲めるサイズに形成される。
【0040】
また本実施形態では、共鳴室Cの周面11kiの外端縁部にテーパ状の小さな面取り面11kicが形成されており、この面取り面11kicに相当する小段差面を介して共鳴室Cの周面11kiと上記縁部21とが接続される。尚、上記面取り面11kicは、省略してもよい。
【0041】
また各放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室周方向で一方側の縁部22と他方側の縁部23とは、共鳴室径方向で外方に向かうにつれて徐々に離れるように開いていて、放音兼排水孔H1~H3の共鳴室周方向の二等分線Lに関して線対称に形成される。
【0042】
特に本実施形態では、
図8に明示したように各放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室周方向で一方側の縁部22と他方側の縁部23とが、共鳴室C(従って振動板31)の中心軸線を通って各放音兼排水孔H1~H3を共鳴室周方向に二等分する二等分線Lに対し、各々20°ずつ開いている。
【0043】
しかも各放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室径方向で外方側の縁部21は、内方側の縁部24よりも、共鳴室周方向で幅広に形成される。またその内方側の縁部24は、実施形態では共鳴室径方向で内方側に中高の山形形状に形成されており、これにより、各放音兼排水孔H1~H3は、前述の如く直径5ミリ以上の仮想円Xを取り囲めるサイズに形成されながらも、孔の開口面積を極力抑え得る孔形状とすることができる。
【0044】
またケース10(より具体的にはケースカバー12)の、放音兼排水孔H1~H3が開口する前面即ち正面15は、放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室径方向で外方側の縁部21に連なる低位面部15lと、その他の縁部22~24に連なる高位面部15hとを有する。そして、それら低位面部15lと高位面部15hとの間に形成される段差部15sが、外方側の縁部21の両端より放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室周方向で一方側の縁部22及び他方側の縁部23からそれぞれ離れる側に(換言すれば、各々の縁部22,23の延長線上を直線状に)延びるように形成される。
【0045】
次に実施形態の作用について説明する。
【0046】
ブザー装置Bは、これの圧電ブザー30に不図示の電子制御装置から電気信号が送られると、圧電素子32に連動する振動板31の振動により警報音が発せられ、これが共鳴室Cで増幅されて第1~第3放音兼排水孔H1~H3から放音される。
【0047】
また、支持体としての支持板Fにブザー装置Bのケース10を取付けるためのクリップ40は、これをケース10(より具体的にはケースカバー12)の複数の特定外面(実施形態では左右側面と背面)の何れかに選択的に装着することで、ケース10の支持板Fに対する取付姿勢を複数選択可能である。即ち、
図9(A)~(C)に例示したように、第1放音兼排水孔H1が共鳴室Cの最下部に臨む位置となる縦置き取付姿勢と、第2放音兼排水孔H2が共鳴室Cの最下部に臨む位置となる第1の横置き取付姿勢と、第3放音兼排水孔H3が共鳴室Cの最下部に臨む位置となる第2の横置き取付姿勢の何れでも選択することができる。
【0048】
ところでブザー装置Bにおいて、ケース10内、特に共鳴室Cには、雨水や結露水等が入り込んで滞留する可能性があり、その場合に水を外部に排出するために第1~第3放音兼排水孔H1~H3の何れか(特に最下位置にある放音兼排水孔)が水抜き孔として利用される。例えば、ケース10が縦置き取付姿勢にある場合には、最下位置にある第1放音兼排水孔H1が水抜き孔となって、そこから排水される。またケース10が左右一方側又は他方側の横置き取付姿勢にある場合には、最下位置にある第2放音兼排水孔H2又は第3放音兼排水孔H3が水抜き孔となって、そこから排水される。
【0049】
その排水態様の一例を、ケース10が縦置き取付姿勢にあって第1放音兼排水孔H1が水抜き孔となる場合について説明する。
【0050】
共鳴室Cの周面11kiに水が付着すると、それは、周面11kiを伝って最下部側に流下する。この場合、共鳴室Cの周面11kiは、ケースカバー12の正面側(前方)に徐々に拡径するテーパ面であることから、周面11kiを伝い下った水Wは、
図7に示すように、テーパ面の勾配により周面11kiの最下部前端まで流れ、そこに開口する第1放音兼排水孔H1よりケースカバー11外に流出する。
【0051】
而して、本実施形態のブザー装置Bでは、第1放音兼排水孔H1は、直径5ミリ以上の仮想円Xを取り囲めるサイズに形成されるので、孔の開口面積を十分に確保して、良好な排水性を発揮可能であるばかりか、孔内面に水膜が張るのを効果的に抑制して、水膜に因る放音性低下を防止できる。
【0052】
その上、第1放音兼排水孔H1の、共鳴室径方向で外方側の縁部21は、共鳴室Cの周面11kiの最下部に対し共鳴室軸方向で隣接し且つその周面11kiに沿って延びるように(実施形態では円弧状に)形成される。これにより、その外方側の縁部21が共鳴室Cの周面11kiに沿って長く延びることで、第1放音兼排水孔H1と共鳴室Cの周面11kiとの連通部が周方向に拡がるため、ブザー装置Bを装着すべき支持板Fへのケース10の取付け角度にばらつきが生じた場合でも、第1放音兼排水孔H1の外方側の縁部21を共鳴室C周面の最下部に露出させることができる。従って、共鳴室Cの周面11kiを伝って周面11kiの最下部前端まで流下した水Wを第1放音兼排水孔H1からスムーズに排出可能となる。
【0053】
このように第1放音兼排水孔H1は、これの外方側の縁部21が共鳴室Cの周面11kiに沿って延びる点による効果と、前述の開口面積を十分確保し得たサイズ効果とが相俟って、全体として良好且つスムーズな排水性が上記取付け角度のばらつきに影響されずに得られるから、ケース10内に水が残りにくくなって、ブザー装置Bの故障発生の抑制に寄与することができる。
【0054】
また本実施形態の第1放音兼排水孔H1の、共鳴室周方向で一方側の縁部22と他方側の縁部23とは、共鳴室径方向で外方に向かうにつれて徐々に離れるよう開いていて、第1放音兼排水孔H1の共鳴室周方向の前記二等分線Lに関して線対称に形成される。これにより、支持板Fに対するケース10の、共鳴室C(従って振動板31)の中心軸線回りの取付け角度が正規の取付け角度より、一方向又は他方向の何れかにばらついた場合でも、それに影響されずに第1放音兼排水孔H1のスムーズな排水性が確保可能となる。
【0055】
この場合、特に本実施形態では、第1放音兼排水孔H1の上記一方側の縁部22と他方側の縁部23とが、上記二等分線Lに対し各々20°ずつ開いているので、当該取付け角度の、一方向・他方向へのばらつきが各々20°以下であれば、第1放音兼排水孔H1の外方側の縁部21を共鳴室Cの周面11kiの最下部に露出させることができる。これにより、上記ばらつきに影響されずに第1放音兼排水孔H1のスムーズな排水性が確保可能となる。
【0056】
その上、本実施形態の放音兼排水孔H1~H3は複数有って、共鳴室周方向に互いに間隔をおいて配置されている。これにより、その何れの放音兼排水孔H1~H3を共鳴室Cの周面11kiの最下部に配置しても(換言すれば、ケース10を前記した縦置き取付姿勢・一方側及び他方側の横置き取付姿勢のうちのどの姿勢で取付けても)支障なく水Wを排出可能となるため、ケース10の支持板Fに対する取付位置の自由度が高められる。
【0057】
更に各々の放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室径方向で外方側の縁部21は、内方側の縁部24よりも、共鳴室周方向で幅広に形成される。これにより、各放音兼排水孔H1の開口面積を特別に大きくすることなく、各放音兼排水孔H1と共鳴室Cの周面11kiとの連通部を周方向に拡張できるため、共鳴室Cの周面11kiに沿って流下する水Wを各放音兼排水孔H1より効率よくスムーズに排出可能となる。
【0058】
更にまた本実施形態では、ケースカバー12の、各放音兼排水孔H1~H3が開口する正面15が、各放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室径方向で外方側の縁部21に連なる低位面部15lと、その他の縁部22~24に連なる高位面部15hとを有していて、それら低位面部15lと高位面部15hとの間に形成される段差部15sが、外方側の縁部21の両端より各放音兼排水孔H1~H3の、共鳴室周方向で一方側の縁部22及び他方側の縁部23からそれぞれ離れる側に延びている。これにより、各放音兼排水孔H1~H3からケース10の正面15側に達した水Wは、
図8に示すように、表面張力の働きで段差部15sを伝ってスムーズに流出可能となるから、各放音兼排水孔H1~H3の排水性を更に高めることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0060】
例えば、前記実施形態では、ブザー装置Bが自動車等の車両に設置使用するものを示したが、本発明のブザー装置を車両以外の各種装置に設置使用してもよい。
【0061】
また前記実施形態では、放音兼排水孔H1の、共鳴室径方向で外方側の縁部21を、共鳴室Cの周面11kiに略沿って延びる円弧状に形成したものを示したが、共鳴室Cの周面11kiに略沿って延びる形状であれば円弧状に限定されず、例えば、共鳴室Cの周面11kiに略沿って延びる直線状であってもよく、但し、この場合は、放音兼排水孔H1~H3からのスムーズな排水を確保するために、外方側の縁部21を、共鳴室Cの周面11kiと正面視で接する位置又はそれよりも低位置に形成することが望ましい。
【0062】
また前記実施形態では、ブザー装置Bの支持体(支持板F)への取付姿勢を複数の取付姿勢より選択可能とすべく放音兼排水孔H1~H3をケース10に複数設けたものを示したが、本発明では、放音兼排水孔が単一であってもよく、その場合は、ブザー装置を支持体に一定姿勢でのみ取付けられる。
【符号の説明】
【0063】
B・・・・・ブザー装置
C・・・・・共鳴室
H1~H3・・放音兼排水孔としての第1~第3放音兼排水孔
10・・・・ケース
11ki・・周面としての、共鳴室形成壁部の内周面
15・・・・ケース正面としてのケースカバーの正面
15h・・・ケース正面の高位面部
15l・・・ケース正面の低位面部
15s・・・ケース正面の段差部
21・・・・放音兼排水孔の、共鳴室径方向で外方側の縁部
22・・・・放音兼排水孔の、共鳴室周方向で一方側の縁部
23・・・・放音兼排水孔の、共鳴室周方向で他方側の縁部
24・・・・放音兼排水孔の、共鳴室径方向で内方側の縁部
30・・・・圧電ブザー
31・・・・振動板