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特許7344185重機の施工を支援する作業員の位置誘導システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】重機の施工を支援する作業員の位置誘導システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230906BHJP
   G01S 19/14 20100101ALI20230906BHJP
【FI】
E02D3/12 102
G01S19/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020152954
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047183
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-12-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年 2月26日に日本基礎技術株式会社総合テクニカルセンターにおいて行われた性能評価試験
(73)【特許権者】
【識別番号】000172961
【氏名又は名称】あおみ建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 友起
(72)【発明者】
【氏名】寺本 哲平
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-257223(JP,A)
【文献】特開2015-048635(JP,A)
【文献】特開2002-202357(JP,A)
【文献】特開2001-289638(JP,A)
【文献】特開2014-074597(JP,A)
【文献】特開平10-017271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
G01S 19/14
J-STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機の施工を支援する作業員の位置誘導システムであって、
GNSS衛星が送信するGNSS信号を受信して、前記作業員の2次元座標である現在位置座標を取得可能なGNSS受信機と、
前記重機の施工予定地点と任意のオフセット量だけ離間して設定されるガイドライン上の所定の基準点の2次元座標である基準点座標が予め記憶された記憶部と、
前記現在位置座標が前記基準点座標に一致するように、前記作業員を誘導する誘導情報を生成する誘導情報生成部と、
前記現在位置座標及び前記基準点座標を2次元地図上に表示する表示画面を生成する表示画面生成部と、
前記表示画面及び前記誘導情報を表示する表示部と、
を備えていることを特徴とする重機の施工を支援する作業員の位置誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重機の施工を支援する作業員を所定の場所に誘導する位置誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤に鋼管杭を打設する杭打機や特許文献1に示す軟弱地盤に固化材を注入撹拌して円柱状の改良体を造成する深層混合処理装置や軟弱地盤に強固な締固め砂杭を造成するための締固め地盤改良杭の造成装置等の重機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-57255号公報
【文献】特開2017-186752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した重機による施工を効率的に進めるために、重機近傍の作業員が、重機の施工予定地点に設けられた旗等を目印に重機の移動方向を示すラインをひく場合があるが、このようなライン引きが煩雑であるという問題があった。
【0005】
そこで、重機の施工を支援する作業員を所定の場所に簡便に誘導するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る重機の施工を支援する作業員の位置誘導システムは、重機の施工を支援する作業員の位置誘導システムであって、GNSS衛星が送信するGNSS信号を受信して、前記作業員の2次元座標である現在位置座標を取得可能なGNSS受信機と、前記重機の施工予定地点と任意のオフセット量だけ離間して設定されるガイドライン上の所定の基準点の2次元座標である基準点座標が予め記憶された記憶部と、前記現在位置座標が前記基準点座標に一致するように、前記作業員を誘導する誘導情報を生成する誘導情報生成部と、前記現在位置座標及び前記基準点座標を2次元地図上に表示する表示画面を生成する表示画面生成部と、前記表示画面及び前記誘導情報を表示する表示部と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、作業員が、表示部に表示される表示画面及び誘導情報に基づいて、重機の移動方向を示すラインを簡便にひくことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業員が、表示部に表示される表示画面及び誘導情報に基づいて、重機の移動方向を示すラインを簡便にひくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る位置誘導兼施工管理システムの構成を示す模式図。
図2】深層混合処理装置の構成を模式的に示す正面図。
図3】施工機の位置誘導の手順を示すフローチャート。
図4】1軸オーガの施工機を位置誘導する場合の位置誘導画面。
図5】2軸オーガの施工機を位置誘導する場合の位置誘導画面。
図6】深層混合処理装置を用いて改良体を造成する手順を示す模式図。
図7】施工機の施工管理の手順を示すフローチャート。
図8】施工機向け施工管理画面を示す模式図。
図9】監督者等向け施工管理画面を示す模式図。
図10】ライン引きを行う作業員を誘導する手順を示すフローチャート。
図11】ライン引きを行う作業員を誘導する手順を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0011】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0012】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0013】
図1は、発明の一実施形態を示す位置誘導兼施工管理システム1を示す模式図である。また、図2は、位置誘導兼施工管理システム1で位置誘導及び施工管理を行う深層混合処理装置(深層混合処理装置)の構成を示す模式図である。なお、位置誘導兼施工管理システム1で位置誘導、施工管理を行う対象は、深層混合処理装置の他に、地盤改良機(三点杭打機、バックホウタイプ)、モーターグレーダ、アスファルトフィニッシャ、タイヤローラ、タイヤショベル、ブルドーザ又はバックホウ等であっても構わない。
【0014】
〈深層混合処理装置〉
深層混合処理装置2は、原地盤g内に堅固な地盤(着底層)に達する改良体を造成するものである。深層混合処理装置2は、施工機3と、スラリープラント4と、を備えている。なお、位置誘導兼施工管理システム1が位置誘導する施工機3の台数は、1台であっても、2台以上であっても構わない。施工機3は、ベースマシン本体3aと、オーガ3bと、撹拌軸3cと、撹拌翼3dと、を備えている。
【0015】
ベースマシン本体3aには、施工機3で使用する電力を発電し供給する発電機3eが設置されている。なお、必要に応じて、施工機3で使用する図示しない圧縮空気を生成する空気圧縮機を設置しても構わない。
【0016】
オーガ3bは、リーダ3fに昇降自在に設けられている。リーダ3fは、ベースマシン本体3aに垂直に支持されている。
【0017】
撹拌軸3cは、図示しないスイベルを介してオーガ3bに正逆転駆動可能に連結されている。また、撹拌軸3cは、外管と内管から成る2重管構造を呈しており、外管及び内管が相対的に反対向きに駆動可能である。
【0018】
撹拌軸3cの下端には、撹拌翼3dが取り付けられている。撹拌翼3dは、公知の構造を採用しており、内管と一体に回転する第1の撹拌翼と外管と一体に回転する第2の撹拌翼とからなる籠状の撹拌混合部を形成している。また、撹拌翼3dには、図示しない固化材吐出口が設けられている。なお、撹拌軸3cは、2重管構造に限定されず、1重管構造であっても構わない。また、施工機3は、オーガ3b、撹拌軸3cがそれぞれ1台ずつ設けられた1軸式に限定されず、1重管構造のオーガ3b、撹拌軸3cがそれぞれ2台以上設けられたものであっても構わない。
【0019】
スラリープラント4は、セメントサイロ4aと、バッチャープラント4bと、グラウトポンプ4cと、を備えている。スラリープラント4は、セメントサイロ4a内に貯蔵された固化材としてのセメントをスラリー状に調合し、その固化材(セメントスラリー)をバッチャープラント4bを介してグラウトポンプ4cからチューブ管4d内に送る。そして、固化材は、撹拌軸3cの内管を介して固化材吐出口に供給される。なお、符号4eは、スラリープラント4で使用する電力を発電し供給する発電機である。
【0020】
〈位置誘導兼施工管理システム〉
位置誘導兼施工管理システム1は、施工機3に設置されたデータ収集兼支援装置10と、施工機3の移動方向を示すラインを引く作業員が保持する作業員端末20と、第1、第2の情報端末30、40と、を備えている。
【0021】
〈データ収集兼支援装置〉
データ収集兼支援装置10は、GNSSアンテナ11と、GNSS受信機12と、を備えている。GNSS受信機12は、GNSS衛星50から所定間隔毎(例えば、1秒毎)に送信されるGNSS信号をGNSSアンテナ11を介して受信し、施工機3に取り付けられた2台のGNSSアンテナ11の3次元位置をそれぞれ測位する。なお、施工機3の位置測位に用いられるGNSS(Global Navigation Satellite System)としては、GPS(Global Positioning System)の他、例えばGLONASS(GLObal Navigation Satellite System)による測位とGPSによる測位とを動的に切替えるものや、GPSとGLONASSを組合せて測位するもの等が考えられる。
【0022】
図2に示すように、施工機3に設けられた2台のGNSSアンテナ11のうち、前方のGNSSアンテナ11は、施工機3のリーダ3fの下部に取り付けられ、後方のGNSSアンテナ11は、施工機3の後部架台に取り付けられている。2台のGNSSアンテナ11の設置位置は、左右方向(Y軸:図2の紙面垂直方向)及び高さ方向(Z軸:図2の紙面上下方向)の各座標が略一致し、前後方向(X軸:図2の紙面左右方向)の座標が異なっている。これにより、例えば、GNSSアンテナ11を施工機3のリーダ3fの頂部に取り付けた場合には、リーダ3fが風圧で揺れてGNSSアンテナ11の位置検知が正しく行われない虞があり、また、オーガ3bの位置をX軸方向に微調整したりリーダ3fを傾斜させた場合にも、GNSSアンテナ11の位置検知が正しく行われない虞があるところ、前方のGNSSアンテナ11が、リーダ3fの下部に取り付けられていることにより、そのような風圧の影響やオーガ3bの位置調整やリーダ3fの傾きの影響を軽減することができる。
【0023】
データ収集兼支援装置10は、センサ13を備えている。センサ13は、施工機3による施工時の各種情報を取得するものであり、例えば、オーガ3bの傾きを計測する傾斜センサ、オーガ3bの回転数を計測する回転数検出器、オーガ3b下端の深度を計測する深度検出器、オーガ3bの昇降速度を計測する速度検出器、オーガ3bを回転させるモータの電流値を計測する電流検出器、固化材スラリーの流量を検出する検出器等である。
【0024】
データ収集兼支援装置10は、記憶部14と、制御部15と、表示部16と、通信部17と、を備えている。
【0025】
記憶部14は、設計位置座標DB14aと、施工情報DB14bと、を備えている。
【0026】
設計位置座標DB14aは、施工機3によって造成される円柱状の改良体を設ける施工予定地点の3次元座標である設計位置座標が予め記憶されている。なお、設計位置座標は、施工機3を位置誘導する上で必要なものが少なくとも含まれるものであればよく、例えば、施工機3を平面上で誘導する場合には、施工機3の高さ方向の座標が含まれていなくても構わない。
【0027】
施工情報DB14bには、センサ13が取得した施工情報が記憶される。また、施工情報DB14bには、センサ13が施工中に計測する各種データに基づいて施工状況を判定する判定基準が予め記憶されている。判定基準は、例えば、オーガ3bの下端が着底層に達したか否かを判定する着底基準や固化材スラリー流量が規定量に達したか否かを判定するスラリー基準等を含む。
【0028】
制御部15は、データ収集兼支援装置10を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部15は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部15の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。制御部15は、演算部15aと、誘導情報生成部15bと、表示画面生成部15cと、を備えている。
【0029】
演算部15aは、GNSS受信機12が取得したGNSS信号に基づいて、施工機3の3次元座標である現在位置座標を算出する。なお、施工機3の現在位置座標とは、施工機3内の任意の位置の座標を意味し、GNSS信号及びGNSS受信機12から施工機3の任意の部位(例えば、撹拌翼3d下端)までの既知のオフセット量に基づいて、施工機3内の任意の部位の座標が算出される。また、現在位置座標は、施工機3を位置誘導する上で必要なものが少なくとも含まれるものであればよく、例えば、施工機3を平面上で誘導する場合には、施工機3の高さ方向の座標は含まれていなくても構わない。
【0030】
誘導情報生成部15bは、現在位置座標が設計位置座標に一致するように施工機3を誘導する誘導情報を生成する。
【0031】
表示画面生成部15cは、施工現場に対応する2次元地図上に現在位置座標及び設計位置座標を表示する表示画面(位置誘導画面)を生成する。また、表示画面生成部15cは、センサ13が取得した施工情報を表示する表示画面(施工機向け施工管理画面、監督者等向け)を生成する。
【0032】
表示部16は、施工機3のキャビン内に設置されている。表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
【0033】
通信部17は、施工現場内に構築された有線又は無線の通信回線を介して第1の情報端末30と通信可能に接続されている。第1の情報端末30は、施工現場内の作業員が保持するタブレット端末等である。第1の情報端末30は、表示画面を表示可能な表示部31を備えている。また、通信部17は、ネットワーク60を介して第2の情報端末40と通信可能に接続されている。第2の情報端末40は、遠隔地に設置された管理用コンピュータ等である。第2の情報端末40は、表示画面を表示可能な表示部41を備えている。
【0034】
また、データ収集兼支援装置10は、オペレータの入力動作を検知する図示しない入力部を備えている。入力部は、例えば、押下するボタンやタッチ入力を検知するタッチパネルである。また、データ収集兼支援装置10は、光や音を出力する図示しない出力部と、を備えている。
【0035】
〈作業員端末〉
作業員端末20は、GNSSアンテナ21と、GNSS受信機22と、を備えている。
【0036】
GNSS受信機22は、GNSS衛星50から所定間隔毎(例えば、1秒毎)に送信されるGNSS信号をGNSSアンテナ21を介して受信し、作業員端末20に取り付けられたGNSSアンテナ21の3次元位置をそれぞれ測位する。なお、作業員端末20の位置測位に用いられるGNSS(Global Navigation Satellite System)としては、GPS(Global Positioning System)の他、例えばGLONASS(GLObal Navigation Satellite System)による測位とGPSによる測位とを動的に切替えるものや、GPSとGLONASSを組合せて測位するもの等が考えられる。
【0037】
作業員端末20は、制御部23と、表示部24と、通信部25と、を備えている。
【0038】
制御部23は、作業員端末20を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部23は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部23の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。
【0039】
表示部24は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。通信部25は、施工現場内に構築された有線又は無線の通信回線を介してデータ収集兼支援装置10の通信部17と通信可能に接続されている。
【0040】
また、作業員端末20は、作業員の入力動作を検知する図示しない入力部を備えていても構わない。入力部は、例えば、押下するボタンやタッチ入力を検知するタッチパネルである。また、作業員端末20は、GNSS受信機22が取得した測位データを一時保存する図示しない記憶部と、光や音を出力する図示しない出力部と、を備えている。なお、作業員端末20は、座標を測位する機能と表示画面を表示する機能とを1つに包含したものに限定されず、機能的に分割しても構わない。
【0041】
〈位置誘導〉
次に、施工機の位置誘導兼施工管理システム1による位置誘導について、図3に基づいて説明する。図3は、施工機3を位置誘導する手順を示すフローチャートである。
【0042】
まず、施工機3による施工前に、施工現場内に造杭される予定の全ての改良体に関する設計位置座標が設計位置座標DB14aに記憶される(ステップS1)。
【0043】
次に、GNSS受信機12が、GNSSアンテナ11を介してGNSS信号を受信する(ステップS2)。
【0044】
次に、演算部15aが、GNSS信号に基づいて、施工機3の現在位置座標(施工機現在位置座標)を算出する(ステップS3)。具体的には、2台のGNSSアンテナ11から施工機3内の任意の位置(例えば、撹拌翼下端)までの既知のオフセット量を考慮することにより、任意の位置の座標を算出することができる。
【0045】
また、誘導情報生成部15bは、施工機現在位置座標が造杭予定位置の設計位置座標に一致するように、施工機3を誘導する施工機向け誘導情報を生成する(ステップS4)。施工機向け誘導情報は、例えば、設計位置座標に対する現在位置座標の相対的な位置関係を表す向きと距離(北に1m、東に2m等)である。
【0046】
また、表示画面生成部15cは、施工現場に対応する2次元地図上に施工機現在位置座標及び設計位置座標を表示する施工機向け位置誘導画面を生成する(ステップS5)。
【0047】
次に、制御部15が、表示部16に施工機向け誘導情報及び施工機向け位置誘導画面を表示させる(ステップS6)。
【0048】
図4は、1軸オーガを備えた施工機3を誘導する場合に、表示部16に表示される施工機向け誘導情報及び施工機向け位置誘導画面の一例である。図4(1)は、施工機向け位置誘導画面の向きが、施工機3の進行方向と一致するように表示されるヘッドアップモードに設定されたものであり、図4(2)は、施工機向け位置誘導画面の向きが、北向きと一致するように表示されるノースアップモードに設定されたものである。なお、施工機向け位置誘導画面の向きは、任意に切換可能である。
【0049】
また、施工機向け位置誘導画面上では、例えば、設計位置座標が杭を表すアイコンで表示され、このアイコンを施工情報DB15bに記憶された施工情報に基づいて、各杭の施工状態に応じて判別可能に表示するのが好ましい。図4(1)、(2)に示す位置誘導画面では、杭を表すアイコンが、「過日施工杭」、「本日施工杭」、「目標杭」、「未施工杭」で判別可能に表示されている。「過日施工杭」とは、前日以前に施工された改良体を意味し、「本日施工杭」とは、当日に施工された改良体を意味し、「目標杭」とは、これから施工する改良体を意味し、「未施工杭」とは、目標杭より後に施工予定の改良体を意味する。なお、図4中の誘導情報は、杭芯に対する撹拌翼3dの回転中心の相対的な位置関係を表す向きと距離に設定されている。
【0050】
図5は、2軸オーガを備えた施工機3を誘導する場合に、表示部16に表示される施工機向け誘導情報及び施工機向け位置誘導画面の一例である。図5(1)は、施工機向け位置誘導画面の向きが、施工機3の進行方向と一致するように表示されるヘッドアップモードに設定されたものであり、図5(2)は、施工機向け位置誘導画面の向きが、北向きと一致するように表示されるノースアップモードに設定されたものである。なお、施工機向け位置誘導画面の向きは、任意に切換可能である。施工機向け誘導情報は、2軸オーガの各回転軸(右軸、左軸)から各回転軸で施工される左右の改良体の杭芯までの相対的な位置関係を表す向きと距離、及び2軸オーガの各回転軸を結んだ直線と左右1組の改良体の杭芯を結んだ直線との傾きである。
【0051】
また、表示画面生成部15cは、施工機3が施工予定地点に接近するにつれて、施工機向け位置誘導画面のうち施工予定地点周辺を拡大するようにしても構わない。これにより、施工機3のオペレータが、施工予定地点への接近を視覚的に感知することができる。
【0052】
このようにして、施工機3のオペレータは、表示部16に表示される施工機向け位置誘導画面で、施工機3と造杭予定位置との相対的な位置関係を直感的に把握することができる。また、施工機3のオペレータは、表示部16に施工機向け誘導情報が表示されることにより、施工機3をスムーズに移動させることができる。さらに、表示部16に表示される施工機向け位置誘導画面の向きが図4(1)、図5(1)に示すヘッドアップモードに設定されることにより、施工機3のオペレータは、施工機3と施工予定位置との相対的な位置関係をさらに直感的に把握することができる。
【0053】
なお、施工機3の移動状況に応じて、表示画面生成部15cが、位置誘導画面上に誘導情報の確認を施工機3のオペレータに促すテキストメッセージを出力しても構わない(ステップS7)。なお、メッセージは、文字、図形、音声又はそれらの組み合わせであっても構わない。この場合には、テキストメッセージを含む位置誘導画面が、表示部16に表示される(ステップS8)。
【0054】
また、第1の情報端末30及び第2の情報端末40には、通信部17を介して施工機向け誘導情報及び施工機向け位置誘導画面が送られ(ステップS9、S10)、表示部31、41には、施工機向け誘導情報及び施工機向け位置誘導画面が表示される(ステップS11)。なお、第1の情報端末30及び第2の情報端末40のユーザが施工機向け誘導情報を必要としない場合には、少なくとも施工機向け位置誘導画面が第1の情報端末30及び第2の情報端末40に送られれば良い。
【0055】
これにより、施工現場内や遠隔地にいる監督者等が、表示部31、41を介して施工機向け誘導情報及び位置誘導画面を共有することができる。また、表示部31、41に表示される施工機向け位置誘導画面の向きは、第1の情報端末30、第2の情報端末40毎にそれぞれ切換可能であるが、図4(2)、図5(2)に示すノースアップモードに設定されるのが好ましい。
【0056】
〈施工管理〉
次に、施工機の位置誘導兼施工管理システム1による施工管理について、図面に基づいて説明する。
【0057】
まず、施工機3による地盤改良の手順について図6に基づいて説明する。杭の打設を開始する。具体的には、まず、図6中の(1)に示すように、撹拌軸3cの下端部に設けられた撹拌翼3dを所定の施工予定位置にセットする。次に、オーガ3bを起動させて、撹拌軸3cを回転駆動させる。
【0058】
そして、図6中の(2)に示すように、撹拌翼3dが原地盤gに貫入されると共に、固化材吐出口より固化材が吐出される。撹拌翼3dが原地盤g内に貫入されるにつれて、原地盤gには縦孔5が掘削されると共に、縦孔5内で掘削土と固化材とが撹拌されて成る混合土6が順次造成されて行く。撹拌軸3cの初期貫入速度は、例えば、0.5m/minに設定される。
【0059】
図6中の(3)に示すように、撹拌軸3cの下端が堅固な地盤(着底層)に達すると、即ち撹拌軸3cが着底すると、撹拌軸3cの貫入速度が減少すると共に撹拌軸3c及び撹拌翼3dを回転させるオーガ3bのモータ電流値が上昇する。これは、撹拌翼3dが堅固な地盤に達することにより、撹拌翼3dの回転抵抗が増大することにより起因する。なお、撹拌翼3dが着底したか否かは、撹拌軸3cの貫入速度が0.2~0.3m/minの状態が1~3分以上継続しているか、及び/又はオーガ3bのモータ電流値が所定値(モータの規格、種類等によって異なるが、概ね250~400A)以上の状態が1分以上継続しているか等を基準に判定されるのが一般的であり、これらの着底基準を満たす場合に、撹拌翼3dが着底したと判定される。
【0060】
次に、図6中の(4)、(5)に示すように、撹拌軸3cの下端が着底すると、撹拌軸3cを一度上昇させた後に堅固な地盤まで下降させるダブリング処理を行う。これにより、改良体の下端付近の混合土6を十分に混合することができる。
【0061】
そして、図6中の(6)、(7)に示すように、撹拌軸3cを回転させながら引き抜くことにより、混合土6を再度混合して円柱状の改良体7を縦孔5内に造成する。
【0062】
このようにして、深層混合処理装置2は、原地盤g内に堅固な地盤に達する改良体7を造成することができる。なお、深層混合処理装置2は、着底層に達する改良体7を造成するものに限定されず、例えば、着底層に達成させることなく所定の設計深度に達する改良体7を造成するものであっても構わない。
【0063】
次に、上述した施工機3による施工と並行して行う施工管理について図7に基づいて説明する。
【0064】
まず、センサ13が各種情報(オーガ3bの傾き、オーガ3bの回転数、オーガ3b下端の深度、オーガ3bの昇降速度及びオーガ3bを回転させるモータの電流値等の施工情報)を計測する(ステップS20)。センサ13が取得した施工情報は、施工情報DB14bに記憶される(ステップS21)。
【0065】
次に、表示画面生成部15cは、施工情報を表示する表示画面(施工機向け施工管理画面、監督者等向け施工管理画面)を生成する(ステップS22)。なお、施工機向け施工管理画面とは、施工機3のオペレータが施工状況を把握する上で必要な施工情報が含まれる表示画面であり、監督者等向け施工管理画面とは、第1、第2の情報端末30、40を保持する監督者等が施工の進捗状況を把握する上で必要な施工情報が含まれる表示画面である。
【0066】
施工機向け施工管理画面の一例を図8に示す。図8に示す施工機向け施工管理画面は、目標深度及び現深度を示す瞬時値である深度項目、単位深さ当たりの撹拌軸3cの貫入速度を示す区間値及び現貫入速度を示す瞬時値が含まれる速度項目、単位深さ当たりの撹拌翼3dの回転数を示す区間値及び現回転数を示す瞬時値が含まれる交差回数項目、単位深度当たりの固化材の流入量の目標値及び現在値を示す瞬時値が含まれる区間流量項目、直近1m当たりの固化材の流入量の目標値及び現在値を示す瞬時値が含まれる瞬時流量項目、固化材の総量が含まれる積算流量項目、オーガ3bのモータ電流値の最大値及び現在値である瞬時値が含まれる電流項目、及び縦軸に撹拌翼3dの深度、横軸にモータ電流値を示すグラフが含まれる。
【0067】
また、監督者等向け施工管理画面の一例を図9に示す。図9に示す監督者等向け施工管理画面は、杭のX座標及びY座標、地盤高(GL)、オーガ下端の打設深度、モータの最大電流値、モータが最大電流値を達した際のオーガ下端の深度、現在のスラリー流量、スラリー流量の設計値、撹拌軸3cの回転数及び施工開始から現在までのオーガ先端のZ座標の経時的な変化を示すグラフを含む。なお、オーガ先端のZ座標の経時的な変化を示すグラフは適宜省略しても構わない。
【0068】
次に、制御部15が、表示部16に監督者等向け施工管理画面を表示させる(ステップS23)。
【0069】
なお、施工の進捗状況に応じて、表示画面生成部15cが、監督者等向け施工管理画面上に施工内容の適否を施工機3のオペレータに確認を促すテキストメッセージを出力し(ステップS24)、テキストメッセージを含む施工管理画面が、表示部16に表示される(ステップS25)。例えば、予め記憶された着底基準に基づいて撹拌翼3dの下端が着底層に達していると推測される場合には、その旨のメッセージを出力することが考えられる。なお、メッセージは、文字、図形、音声又はそれらの組み合わせであっても構わない。
【0070】
また、第1の情報端末30及び第2の情報端末40には、通信部17を介して監督者等向け施工管理画面が送られ(ステップS26、S27)、表示部31、41には、監督者等向け施工管理画面を表示される(ステップS28)。
【0071】
これにより、施工現場内や遠隔地にいる監督者等が、表示部31、41を介して監督者等向け施工管理画面を共有することができる。
【0072】
〈作業員誘導〉
次に、位置誘導兼施工管理システム1による作業員の施工機3の移動方向を示すラインひきの支援について、図10に基づいて説明する。図10は、作業員によるライン引きを支援する手順を示すフローチャートである。なお、作業員によるラインひきは、上述した施工機3の位置誘導より前に実施される。
【0073】
まず、施工機3による施工前に、施工現場内で施工機3の移動方向の基準となるガイドラインの始点と終点の2次元座標である基準点座標が設計位置座標DB31aに記憶される(ステップS30)。なお、ガイドラインは、複数の設計位置座標を結んだ直線から任意のオフセット量だけ距離を空けて設定されて施工機3の移動方向を示すものである。
【0074】
次に、GNSS受信機22が、GNSSアンテナ21を介してGNSS信号を受信し(ステップS31)、通信部17、25を介してGNSS信号がデータ収集兼支援装置10に送られる(ステップS32、S33)。
【0075】
次に、演算部15aが、GNSS信号に基づいて、作業員端末20の現在位置座標(作業員現在位置座標)を算出する(ステップS34)。
【0076】
また、誘導情報生成部15bは、作業員現在位置座標がガイドラインの始点と終点の基準点座標に一致するように、作業員を誘導する作業員向け誘導情報を生成する(ステップS35)。なお、作業員向け誘導情報は、例えば、ガイドラインの始点及び終点に対する作業員現在位置座標の相対的な位置関係を表す向きと距離(北に1m、東に2m等)である。
【0077】
また、表示画面生成部15cは、施工現場に対応する2次元地図上に作業員現在位置座標及び設計位置座標を表示する作業員向け位置誘導画面を生成する(ステップS36)。
【0078】
また、作業員向け誘導情報及び作業員向け位置誘導画面が、通信部25、17を介して作業員端末20に送られる(ステップS37、S38)。
【0079】
次に、制御部23が、表示部24に作業員向け誘導情報及び作業員向け位置誘導画面を表示させる(ステップS39)。
【0080】
図11は、作業員をガイドラインLの始点に誘導する作業員向け位置誘導画面の一例を示す。図11に示す位置誘導画面では、設計位置座標が杭を表すアイコンで表示されている。また、図11に示す作業員向け誘導情報は、例えば、ガイドラインLの始点Sに対する作業員現在位置座標の相対的な位置関係を表す向きと距離に設定されている。なお、図11上では、作業員を始点Sに誘導する場合を例に説明したが、作業員を終点Fに誘導する場合も同様である。また、図11上では、参考までに施工機3の移動予定位置を破線で示しているが、実際の作業員向け位置誘導画面では省略される。
【0081】
このようにして、作業員が、誘導されたガイドラインLの始点S及び終点Fにマーキングを行い、これらを結ぶように白線等のラインを引くことにより、施工機3のオペレータに、隣り合う改良体7を連続して施工する場合の施工機3の移動方向を示したり、施工機3が走行する際の足場となる鉄板をフォークリフト等で敷設する際の目印が簡便に得られる。
【0082】
なお、設計位置座標とガイドラインLとの距離は、例えば、施工機3のキャタピラの中心から撹拌翼3dの下端までの距離と略等しく設定される。
【0083】
また、第1の情報端末30及び第2の情報端末40には、通信部17を介して作業員向け誘導情報及び作業員向け位置誘導画面が送られ(ステップS37、S40)、表示部31、41には、作業員向け誘導情報及び作業員向け位置誘導画面が表示される(ステップS41)。なお、第1の情報端末30及び第2の情報端末40のユーザが作業員向け誘導情報を必要としない場合には、作業員向け位置誘導画面のみが第1の情報端末30及び第2の情報端末40に送られても良い。
【0084】
これにより、施工現場内や遠隔地にいる監督者等が、表示部31、41を介して作業員向け誘導情報及び作業員向け位置誘導画面を共有することができる。
【0085】
なお、上述したように、作業員が表示部24を介して作業員向け誘導情報及び作業員向け位置誘導画面を確認しながらラインを引く代わりに、第1の情報端末30を保持する監督者が、表示部31に表示される作業員向け誘導情報及び作業員向け位置誘導画面に基づいて作業員を誘導し、その指示に基づいて作業員がラインを引いても構わない。
【0086】
このようにして、本発明の実施形態に係る位置誘導兼施工管理システム1は、GNSS衛星50が送信するGNSS信号を受信して、作業員の2次元座標である作業員現在位置座標を取得可能なGNSS受信機22と、施工機3の施工予定地点と任意のオフセット量だけ離間して設定されるガイドラインL上の始点Sと終点Fの2次元座標である基準点座標が予め記憶された設計位置座標DB14aと、作業員現在位置座標が始点S及び終点Fの基準点座標に一致するように、作業員を誘導する作業員向け誘導情報を生成する誘導情報生成部15bと、作業員現在位置座標及び始点Sと終点Fの基準点座標を2次元地図上に表示する作業員向け表示画面を生成する表示画面生成部15cと、作業員向け表示画面及び作業員向け誘導情報を表示する表示部24と、を備えている構成とした。
【0087】
この構成によれば、作業員が、表示部24に表示される作業員向け表示画面及び作業員向け誘導情報に基づいて、ガイドラインLに沿って施工機3の移動方向を示すラインを簡便にひくことができる。
【0088】
なお、本発明は、上述した構成以外にも本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0089】
例えば、上述した位置誘導兼施工管理システム1は、施工機3の位置誘導と施工機3による地盤改良の施工管理とを兼ねた構成であるが、これらを機能ごとに分割しても構わない。
【符号の説明】
【0090】
1 :位置誘導兼施工管理システム
2 :深層混合処理装置
3 :施工機
3a :ベースマシン本体
3b :オーガ
3c :撹拌軸
3d :撹拌翼
3e :発電機
3f :リーダ
4 :スラリープラント
4a :セメントサイロ
4b :バッチャープラント
4c :グラウトポンプ
4d :チューブ管
4e :発電機
5 :縦孔
6 :混合土
7 :改良体
10 :データ収集兼支援装置
11 :GNSSアンテナ
12 :GNSS受信機
13 :センサ
14 :記憶部
14a:設計位置座標DB
14b:施工情報DB
15 :制御部
15a:演算部
15b:誘導情報生成部
15c:表示画面生成部
16 :表示部
17 :通信部
20 :作業員端末
21 :GNSSアンテナ
22 :GNSS受信機
23 :制御部
24 :表示部
25 :通信部
30 :第1の情報端末
31 :表示部
40 :第2の情報端末
41 :表示部
50 :GNSS衛星
60 :ネットワーク
g :原地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11