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特許7344194包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイル
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/36 20060101AFI20230906BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H05B6/36 B
H05B6/36 D
B65D65/40 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020502097
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 EP2018068224
(87)【国際公開番号】W WO2019015982
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】17181581.4
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸川 義信
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス・ロベ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ウエ・ドレイシガッカー
(72)【発明者】
【氏名】エミル・ヨハネソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス・クリストファーソン
(72)【発明者】
【氏名】カール・イスラエルソン
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・マサセッシ
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】槙原 進
【審判官】鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520482(JP,A)
【文献】特開2005-108654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/02 - 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の少なくとも1つの層を有する包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイル(100)であって、前記インダクタコイルは、前記包装材料の誘導加熱のために前記金属箔に交流を誘導するように構成され、前記インダクタコイルは、
基層材料(103)と、
前記基層材料と表層材料との混合物を含む不可逆的な接合界面(109)を形成するように前記基層材料に拡散接合された前記表層材料(104)と、
を含む、インダクタコイル(100)。
【請求項2】
前記基層材料は、前記表層材料よりも低い抵抗率(ρ)を有する、請求項1に記載のインダクタコイル。
【請求項3】
前記インダクタコイルは、外面(101)を含み、前記外面の少なくとも一部は、前記表層材料を含む、請求項1又は2に記載のインダクタコイル。
【請求項4】
前記インダクタコイルは、前記包装材料の誘導加熱のために前記包装材料に対向配置されるように構成された溶着面(102)を含み、前記溶着面は、前記表層材料を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のインダクタコイル。
【請求項5】
前記表層材料は、所定の厚さ(105)で前記基層材料を覆い、前記厚さは、50~150マイクロメートルの範囲内である、請求項1~のいずれか一項に記載のインダクタコイル。
【請求項6】
前記インダクタコイルは、引き伸ばされて長手方向(107)の長さで延在し、前記表層材料及び前記基層材料は、前記長さに沿って前記インダクタコイルの実質的に長方形又は正方形の断面を形成する、請求項1~のいずれか一項に記載のインダクタコイル。
【請求項7】
前記表層材料から形成された突条(110)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のインダクタコイル。
【請求項8】
前記表層材料は、銀パラジウム(AgPd)合金を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のインダクタコイル。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の少なくとも1つのインダクタコイルと、前記少なくとも1つのインダクタコイルの外面(101)は別として、前記少なくとも1つのインダクタコイルを封入する支持体(201)と、を含む誘導封止装置(200)であって、少なくとも前記外面は、基層材料と表層材料との混合物を含む不可逆的な接合界面(109)を形成するように前記基層材料(103)に接合された前記表層材料(104)を含む、誘導封止装置(200)。
【請求項10】
前記基層材料は、前記支持体とかみ合うように構成された、凸部又は凹部(108、108’)を含む、請求項に記載の誘導封止装置。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の少なくとも1つのインダクタコイル又は請求項9又は10に記載の誘導封止装置を含む、包装材料を封止するための封止機。
【請求項12】
金属箔の少なくとも1つの層を有する包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイル(100)を製造する方法(300)であって、前記方法は、
基層材料と表層材料との混合物を含む不可逆的な接合界面(109)を形成するように前記表層材料(104)を前記基層材料(103)に拡散接合するステップ(301)と、
前記インダクタコイルの外面(101)に前記表層材料を設けるステップ(302)と、
を含む、方法(300)。
【請求項13】
前記インダクタコイルの溶着面(102)に前記表層材料を設けるステップ(304)であって、前記溶着面は、前記包装材料の誘導加熱のために前記包装材料に対向配置されるように構成される、ステップ
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
50~150マイクロメートルの範囲内の所定の厚さ(105)で前記インダクタコイルの長手方向(107)に前記基層材料に沿って延在するように前記表層材料を設けるステップ(305)
を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記表層材料の第1の部分を、前記基層材料の第2の部分に結合するステップ(301’)と、
記第1の部分及び前記第2の部分の前記拡散接合のために圧力及び/又は温度を加えるステップ(301’’)と、
前記インダクタコイルの前記外面に前記表層材料が設けられるように前記拡散接合された前記第1の部分及び前記第2の部分から前記インダクタコイルを形成するステップ(302’)と、
を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記表層材料は、銀パラジウム(AgPd)合金を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔の少なくとも1つの層を有する包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルに関する。本発明は、同様に、このようなインダクタコイルを含む誘導封止装置、誘導封止装置を含む封止機、及び金属箔の少なくとも1つの層を有する包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを製造する関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱を用いたラミネート包装材料の溶着は、包装産業で使用される。このようなラミネート材料の1つの例は、紙のキャリア層、アルミニウム箔並びにラミネートの内面及び外面に沿った熱可塑性コーティングである。誘導溶着の技法は、交流によって生成される、導体の周りの磁界が隣接する導電性材料に電流を誘導することができ、それが材料の抵抗に応じて材料を温めるという事実に基づいている。したがって、誘導溶着で、アルミニウム箔を含有するラミネートに対してインダクタループ又はコイルが設けられ、ラミネートは、それが結合されることになっている材料と共にプレスされる。アルミニウム箔は、適切に選択された電流及び処理期間を用いて加熱される。材料は、熱可塑性樹脂の隣接する層を封止するのに十分高い温度に加熱されて、組み合わされた熱可塑性の層を融合させ、したがって緊密且つ耐久的な封止を作り出す。
【0003】
通常、このような封止工程に設けられる誘導封止装置、ひいてはインダクタコイルは、侵食性環境で稼働することが多い。インダクタコイルは、封止機の中で高温、高圧、及び化学物質にさらされる場合がある。この組み合わせは、ある特定の用途でインダクタコイルの急速な腐食及び摩耗を引き起こす、侵食性環境を生み出す。その結果、封止装置は、定期的に交換されなければならず、各交換がパッケージの生産に停止を引き起こす。このような誘導封止装置の状態の保守及び監視にかなりのリソースが費やされなければならない。腐食及び摩耗は、同様に、高速封止生産ラインにおける要求に応えるために例えばシステムの誘導加熱回路における正確なインピーダンス整合によって高度に最適化されることが多い、封止工程に早い段階で影響を与える場合がある。インダクタの摩耗は、したがって、このような最適化努力を相殺し、さらに、このような高速システムにおける封止の品質に悪影響を与える場合がある。
【0004】
例えば、過酷な環境でのインダクタコイルの溶着面の亀裂などの機械的故障のリスクをさらに最小化することによって、腐食及び摩耗摩を防止するための以前の解決策を改善することが望ましい。
【0005】
そのため、インダクタコイルの改善は有利になり、特に、高温及び/又は腐食環境などの侵食性環境での堅牢性及び耐性を改善することを含む、上述の問題及び妥協のより多くを回避することを可能にして、インダクタコイルの寿命を増加させ、高速封止システムにおける誘導封止工程最適化を容易にすることになる。このようなインダクタコイルを含む関連の誘導封止装置及び封止機は、同様に、包装材料の誘導溶着のためのこのようなインダクタコイルを製造する方法と同じように有利になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、本発明の実施例は、好ましくは、添付の特許請求の範囲に記載の装置を提供することによって単独で又は任意の組み合わせで、上記で特定されたものなどの、当技術分野における1つ若しくは複数の欠陥、不利益又は課題を緩和、軽減又は除去しようと努める。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、金属箔の少なくとも1つの層を有する包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルが提供される。インダクタコイルは、包装材料の誘導加熱のために金属箔に交流を誘導するように構成される。インダクタコイルは、基層材料と、基層材料と表層材料との混合物を含む不可逆的な接合界面を形成するように基層材料に接合された表層材料とを含む。
【0008】
第2の態様によれば、第1の態様による少なくとも1つのインダクタコイルと、少なくとも1つのインダクタコイルの外面は別として、前記少なくとも1つのインダクタコイルを封入する支持体とを含む誘導封止装置が提供され、少なくとも外面は、基層材料と表層材料との混合物を含む不可逆的な接合界面を形成するように基層材料に接合された表層材料を含む。
【0009】
第3の態様によれば、包装材料を封止するための封止機が提供される。封止機は、第1の態様による少なくとも1つのインダクタコイル又は第2の態様による誘導封止装置を含む。
【0010】
第4の態様によれば、金属箔の少なくとも1つの層を有する包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを製造する方法が提供される。方法は、基層材料と表層材料との混合物を含む不可逆的な接合界面を形成するように表層材料を基層材料に接合するステップと、インダクタコイルの外面に表層材料を設けるステップとを含む。
【0011】
本発明のさらなる実施例は、従属請求項に定められ、本開示の第2、第3、及び第4の態様に関する特徴は、必要な変更を加えて第1の態様と同様である。
【0012】
本開示のいくつかの実施例は、高温及び/又は腐食環境などの侵食性環境でより堅牢且つ耐性のある、包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを提供する。
【0013】
本開示のいくつかの実施例は、封止用途において寿命が増加した、包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを提供する。
【0014】
本開示のいくつかの実施例は、封止用途において必要とする保守がより少ない、包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを提供する。
【0015】
本開示のいくつかの実施例は、充填機内の侵食性環境で亀裂などの機械的故障を受けにくい溶着面を有する、包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを提供する。
【0016】
本開示のいくつかの実施例は、機械的安定性を維持すると同時に、封止工程を最適化するためにさまざまな幾何学的形状でより容易に提供される溶着面を有する、包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを提供する。
【0017】
本開示のいくつかの実施例は、溶着のために適用される誘導加熱回路の電気的パラメータにおける安定性の向上を可能にする、包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを提供する。
【0018】
本開示のいくつかの実施例は、封止工程の制御の改善を可能にする、包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを提供する。
【0019】
本開示のいくつかの実施例は、包装材料容器のより確実な封止を提供する。
【0020】
本開示のいくつかの実施例は、誘導封止生産ラインにおける処理能力の向上を提供する。
【0021】
本明細書で使用されるとき「含む/含んでいる」という用語が述べられる特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を指定するために用いられるが、1つ若しくは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はそれらの群の存在又は追加を妨げないことは、強調されるべきである。
【0022】
これらの及び他の態様は、本発明の実施例によりその特徴及び利点が可能であり、添付図面を参照して、本発明の実施例の以下の説明から明白になり明らかにされることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の一実施例によるインダクタコイルの斜視図での略図である。
図2】本開示の一実施例によるインダクタコイルの斜視図での図1の詳細な断片(A)の略図である。
図3】本開示の一実施例によるインダクタコイルの断面側面図での略図である。
図4】本開示の一実施例による、インダクタコイルを含む、誘導封止装置の断面側面図での略図である。
図5】本開示の一実施例によるインダクタコイルの断面側面図での略図である。
図6a-b】本開示の実施例による、包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイルを製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の具体的な実施例について、ここで添付図面を参照して説明する。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態で実施される場合があり、本明細書に明記された実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施例は、本開示が徹底的且つ完全になり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えることになるように提供される。添付図面に例示された実施例の詳細な説明で使用される専門用語は、本発明を限定することは意図されない。図面で、同様な番号は同様な要素を意味する。
【0025】
図1は、包装材料(図示せず)の誘導溶着のためのインダクタコイル100の斜視図での略図である。包装材料は、交流が誘導され得る金属箔の少なくとも1つの層を有する。インダクタコイル100は、包装材料の誘導加熱のために金属箔に交流を誘導するように構成される。図2は、図1のインダクタコイル100の断片(A)の拡大図である。インダクタコイル100は、基層材料103及び表層材料104を含む。表層材料104は、基層材料103と表層材料104との混合物を含む不可逆的な接合界面109を形成するように基層材料103に接合される。基層材料103と表層材料104との間のこのような接合界面109は、同様に表層材料104に対する機械的摩滅と相まって、腐食性高温環境などの侵食性環境で、表層材料104の完全性が改善されたより堅牢なインダクタコイルを提供する。材料の2つの層103、104を有することにより、表層104材料が基層材料103を周囲環境から保護するために最適化され得る一方で、適切な基層材料103を選択することによって、電気特性要件の両方に応えるための最適化が提供される。したがって、界面109が両方の材料103、104の混合物を含むように接合された表層材料104を有することにより、より強い接合界面に起因した、層103、104の完全性における前述の改善、及び基層103の改善された腐食保護が提供される。これは、その代わりに基層材料の上に被覆が施される、以前の技法と比較して特に有利である。このような被覆は、上述したように基層材料に接合されず、むしろ、材料が明確に分離される材料間の界面を作り出す表面層として施される。これは、被覆が基層の上に、それらの間の化学的及び/又は機械的接合なしで、その代わりにただ材料間に接着効果を作り出すことを用いて堆積されることに起因している。接着効果は、通常、例えば、被覆を基層材料に吹付けによって施し、又は別の方法で堆積させ、その後基層材料の上で乾燥させ、又は別の方法で硬化させることによって達成され得る。したがって、材料層103、104を接合させることによって、その機械的完全性を改善することができ、表層104の亀裂などの故障のリスクを最小化することができる。接合の結果として材料103、104の混合物を含む界面109は、例えば図3で、鉛直方向に沿って(すなわち、インダクタコイル100の溶着面102が延在する平面と垂直をなす方向に)界面109において重なり合うように混合された基層材料及び表層材料103、104と解釈されるべきである。インダクタコイル100のこのような接合は、材料103、104が前述の方向に互いに伝播するように、インダクタコイル100の材料103、104を定められた圧力及び/又は温度にさらすことによって達成され得る。
【0026】
それゆえ、インダクタコイル100により、封止用途及び関連の封止機において保守を容易にすることが可能になる。さらにまた、表層材料104の完全性が上記で明らかにしたように改善されるので、侵食性環境での表面割れのリスクを最小化しながら、例えば図5に見られるように、例えば異なる幾何学的形状で溶着面102を成形することなどによって、包装材料に向かって配置されたインダクタコイル100の表面、すなわち溶着面をカスタマイズすることがより容易である。例えば、表面の凸部及び/又は凹部は、別の方法ではその機械的完全性の故障に、より敏感な場合がある。したがって、溶着面、すなわち外面101を適合させる能力の改善により、異なる封止用途にインダクタコイル100を最適化することが可能になる。
【0027】
表層材料104は、拡散接合によって基層材料103に結合され得る。このような接合により、接合界面109において、基層材料及び表層材料103、104間に強い接合力がもたらされ、それにより、基層材料及び表層材料103、104の機械的完全性が改善され、侵食性環境でより堅牢なインダクタコイル100が提供されることになる。
【0028】
基層材料103は、表層材料104よりも低い抵抗率(ρ)を有してもよい。したがって、表層材料104が望ましい電気的性質に影響を与えることなく耐摩耗性及び耐腐食性のために構成される一方で、基層材料103は、誘導溶着工程を最適化するために必要な電気特性を提供するように適合され得る。インダクタコイル100は、したがって、例えば封止機中の誘導加熱回路のインピーダンス特性に関して、必要とされる公差を満たすことができ、且つ、封止機中の侵食性環境に耐えることができる。
【0029】
インダクタコイル100は、外面101を含む。外面101の少なくとも一部は、表層材料104を含み得る。表層材料104は、したがって、周囲の腐食環境と基層材料103との間のバリアとして配置される。実質的に、周囲媒体に面しているインダクタコイル100の表面全体は、表層材料104を含んで、耐腐食性、又は外側の摩耗への耐性をさらに最適化することができる。
【0030】
特に、インダクタコイル100は、包装材料の誘導加熱のために包装材料に対向配置されるように構成された溶着面102を含み得る。溶着面102は、表層材料104を含み得る。溶着面102は、包装材料と相互作用するために周囲環境にさらされ、したがって、表層材料104を含む溶着面102を有することが特に有利である。インダクタコイル100の外面101のいくつかの部分は、包装材料に直接対向配置されない場合があるが、周囲環境にさらされている場合、外面101のこのような部分が同様に表層材料104を含むことは、有利であり得る。溶着面102は、摩滅などの機械的摩耗に特にさらされる場合がある。表層材料104は、上に論じたようなその機械的完全性の向上に起因してこのような摩耗への耐性を改善することができる。
【0031】
表層104は、所定の厚さ105で基層材料103を覆うことができる。図3は、インダクタコイル100の断面側面図で、一実施例を例示し、ここで表層材料104の厚さ105が示される。厚さ105は、50~150マイクロメートルの範囲内とし得る。この範囲内の厚さ105を有することにより、包装材料に交流を誘導することに関して基層材料103の望ましい機能性を維持すると同時に、特に強く堅牢な表層104が可能になる。インダクタコイル100は、図1の実施例に概略的に例示されるように、引き伸ばされて長手方向107の長さで延在してもよい。表層材料104の厚さ105は、インダクタコイル100の長さに沿って実質的に均一とすることができる。しかしながら、厚さ105が長さに沿って変化し得ることは、想像可能である。例えば、インダクタコイル100のいくつかの部分が機械的摩耗に特にさらされる場合があり、厚さ105を局所的に増加させることにより、例えばこのような特にさらされる部分に沿った摩滅への耐性が改善され得る。
【0032】
表層材料104及び基層材料103は、長さ107に沿ってインダクタコイル100の実質的に長方形又は正方形の断面を形成し得る。図2は、図1の断片(A)の拡大図を例示する。図2に例示されるように、接合された断面の均一な長方形又は正方形の断面を有することにより、別な方法では材料103、104に亀裂を引き起こす場合がある、インダクタコイル100の長さに沿った局在的な弱点の最小化が提供される。
【0033】
インダクタコイル100は、図5の実施例に例示されるように、表層材料104から形成された突条110を含み得る。上述したように表層材料104を基層材料103に接合させることにより、表層材料104中のリスク亀裂を最小化しながらさまざまな幾何学的形状に適合し得る、より堅牢な表面が提供される。突条110などの表面構造は、したがって、侵食性環境で材料の亀裂のリスクを冒すことなく、より小さい曲率半径、すなわち表面構造の輪郭中のより鋭い曲げで形成され得る。したがって、異なる溶着面102を必要とする多様な封止用途及び包装材料へのカスタマイズを容易にすることができる。
【0034】
表層材料104は、銀パラジウム(AgPd)合金を含み得る。AgPd合金は、基層材料103に耐腐食性及び耐摩耗性を提供するのに特に効果的である。実質的に外面101全体、又は溶着面102は、耐腐食性を最適化するために、AgPd合金を含み得る。しかしながら、外面101又は溶着面102の表面領域の一部又は少なくとも大部分がAgPd合金を含む場合、十分な耐腐食性が達成され得ることは、想像可能である。表層材料104が、基層材料103の改善された耐腐食性及び耐摩耗性を提供する他の材料又は合金を含み得ることは、さらに想像可能である。表層材料104は、例えば、以下のもの、Ni、Cr、Ag、Ta、Au、Cu、ステンレス鋼のうちの、任意の材料、又は材料の組み合わせ、又はそれらの多様な合金を含み得る。耐腐食性及び/又は耐摩耗性を提供する他の材料又は合金が同様に基層材料103と共に接合されて上述したような有利な効果を提供してもよい。材料又は材料の組み合わせは、多層表層104を形成するように共に接合されている表層材料104の異なる層に設けることができる。AgPdは、このような場合、その特に有利な化学的及び機械的性質に起因して最外層に設けることができる。例えば拡散接合によって、AgPdを基層材料と共に接合させることにより、界面109において前述の材料の混合物を形成するように基層材料103に接合することによってAgPd合金の有利な性質が表層104の強度及び堅牢性と組み合わされるという点で、相乗的効果が提供される。基層材料103は、Cu、Al、Ag、Au、若しくはこれらのいずれかを含む任意の合金、又は誘導コイル100の望ましい電気的性質を提供する他の材料を含み得る。
【0035】
図1図3及び図5に関連して上述したような少なくとも1つのインダクタコイル100を含む誘導封止装置200が提供される。誘導封止装置200は、少なくとも1つのインダクタコイル100の外面101は別として、少なくとも1つのインダクタコイル100を封入する支持体201を含む。図4は、誘導封止装置200の実施例の略図であり、ここで支持体は、外面101は別として、インダクタコイル100の周りに配置され、事実上インダクタコイル100の溶着面102である。少なくとも外面101は、上述したように、基層材料103と表層材料104との混合物を含む不可逆的な接合界面109を形成するように基層材料103に接合されている表層材料104を含む。誘導封止装置200は、したがって、インダクタコイル100並びに図1図3及び図5に関連して上述した有利な効果を提供する。
【0036】
基層103は、支持体201とかみ合うように構成された、凸部又は凹部108、108’を含み得る。これは、図3の詳細な側面図に例示される。凸部又は凹部108、108’は、図4に見られるように支持体201の対応する合わせ面と容易にかみ合うことができるので、支持体201でのインダクタコイル100の位置合わせは、したがって容易になる。このような係止面は、同様に、基層へのインダクタコイル100の固定の安定性を強化し、誘導封止装置200の全体的な堅牢性に寄与することができる。
【0037】
包装材料を封止するための封止機(図示せず)が提供される。封止機は、図1図3及び図5に関連して上述したような少なくとも1つのインダクタコイル100を含む。それゆえ、封止機は、図4に関連して上述したような誘導封止装置200を同様に含み得る。封止機における包装材料の封止手順は、したがって、上述した有利な効果に起因して改善することができ、特に、封止工程の制御の改善、より確実な封止、及び究極的には誘導封止生産ラインにおける処理能力の向上を可能にすることができる。
【0038】
図6aは、金属箔の少なくとも1つの層を有する包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイル100を製造する方法300のフローチャートを例示する。方法300のステップが説明され例示される順序は、限定的であると解釈されるべきではなく、ステップがさまざまな順序で行われ得ることは、想像可能である。したがって、基層材料103と表層材料104との混合物を含む不可逆的な接合界面109を形成するように表層材料104を基層材料103に接合するステップ301を含む、方法300が提供される。方法300は、インダクタコイル100の外面101に表層材料104を設けるステップ302をさらに含む。方法300は、したがって、図1図5と連携してインダクタコイル100及び誘導封止装置200に関連して上述したような有利な恩恵を提供する。
【0039】
図6bは、金属箔の少なくとも1つの層を有する包装材料の誘導溶着のためのインダクタコイル100を製造する方法300のさらなるフローチャートを例示する。方法300のステップが説明され例示される順序は、限定的であると解釈されるべきではなく、ステップがさまざまな順序で行われ得ることは、想像可能である。表層材料104は、上に論じたように、拡散接合303によって基層材料に接合され得る。
【0040】
方法300は、インダクタコイルの溶着面102に表層材料104を設けるステップ304を含み得る。溶着面102は、包装材料の誘導加熱のために包装材料に対向配置されるように構成される。方法300は、50~150マイクロメートルの範囲内の所定の厚さ105でインダクタコイル100の長手方向107に基層材料103に沿って延在するように表層材料104を設けるステップ305を含み得る。
【0041】
方法300は、表層材料104を含む材料の第1の部分を、基層材料103を含む材料の第2の部分に結合するステップ301’を含み得る。方法300は、材料の第1及び第2の部分にそれらの接合のために圧力及び/又は温度を加えるステップ301’’と、インダクタコイルの外面101に表層材料104が設けられるように材料の接合された第1及び第2の部分からインダクタコイル100を形成するステップ302’とを含み得る。表層材料104は、上記で明らかにしたような特に有利な性質を持つ銀パラジウム(AgPd)合金を含み得る。
【0042】
本発明について具体的な実施例を参照して上に説明した。しかしながら、上述したもの以外の実施例が本発明の範囲内で等しく可能である。本発明の異なる特徴及びステップは、説明されたもの以外の組み合わせで組み合わされてもよい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0043】
より一般には、当業者は、本明細書に説明されたすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であることを意図されており、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される具体的な1つ又は複数の用途に依存することになることを容易に理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b