(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】連続的な電力調整を有する電気的に作動するエアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/57 20200101AFI20230906BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20230906BHJP
【FI】
A24F40/57
A24F47/00
(21)【出願番号】P 2020519340
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2018077032
(87)【国際公開番号】W WO2019068821
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-04
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0196263(US,A1)
【文献】特表2014-519850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00~47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置であって、
電力供給源と、
電気ヒーターと、
前記電力供給源と前記電気ヒーターの間に接続された電力制御回路とを備え、前記電力制御回路がアナログ回路であり、前記電力制御回路が、
前記電力供給源から前記電気ヒーターに供給される電力を決定するように、かつ前記電気ヒーターに供給される前記電力に比例する電力測定電圧を出力するように構成された電力測定ユニットと、
前記電力測定ユニットに接続された、かつ前記電力測定電圧と基準電圧の間の差に基づいて電圧差信号を出力するように構成された電圧コンパレータと、
前記電力供給源と前記電気ヒーターの間に接続された、かつ前記電圧差信号に応答する電力調整器とを備え、前記電力調整器が、前記電圧差信号を所定の範囲内に戻すために、または前記電圧差信号を最小化するために、前記電気ヒーターに供給され
る電流または電圧を調節するように構成され、
前記電力測定ユニット、前記電圧コンパレータ、および電力調整器がすべて、アナログ回路構成要素を使用して実行される、エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記電力調整器が、前記電圧差信号が前記所定の範囲外である場合にのみ、前記電気ヒーターに供給される前記電流を調節するように構成されている、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記電力調整器が、前記電圧コンパレータの出力に接続された基部を有するバイポーラ接合トランジスタを備える、請求項1または2に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記電力測定ユニットが、前記電気ヒーターに印加される電圧を、前記電気ヒーターに印加される電流を示す電圧で乗算して、前記電力測定電圧を提供するように構成された乗算ユニットを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記電力測定ユニットが、前記電気ヒーターに印加される前記電流を示す出力電圧を提供するように構成された電流測定ユニットを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
マイクロコントローラをさらに備え、前記マイクロコントローラが前記基準電圧を提供するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記マイクロコントローラが、前記装置の動作中に前記基準電圧を変化させるように構成されている、請求項6に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記マイクロコントローラが、ユーザー吸入の検出数に基づいて前記基準電圧を変化させるように構成されている、請求項7に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記マイクロコントローラが、前記装置の起動後の時間に基づいて前記基準電圧を変化させるように構成されている、請求項7に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
前記装置が手持ち式装置である、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項11】
前記電気ヒーターが、前記電力制御回路に取り外し可能なように連結されていて、前記電気ヒーターの交換を可能にする、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項12】
前記装置が、ユーザー吸入のためのエアロゾルを発生するように構成されていて、使用時にユーザー吸入が前記電気ヒーターを通過して空気を引き出し、前記装置がメモリを備え、かつ前記電気ヒーターに供給される電流または電圧の変化をユーザー吸入の示しとして記録するように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項13】
電気加熱式エアロゾル発生システムの電気ヒーターへの電力供給を調節するための方法であって、前記エアロゾル発生システムが、電力供給源、電気ヒーター、および前記電力供給源と前記電気ヒーターの間に接続された電力制御回路を備え、
前記電力制御回路が、
前記電力供給源から前記電気ヒーターに供給される電力を決定するように、かつ前記電気ヒーターに供給される前記電力に比例する電力測定電圧を出力するように構成された電力測定ユニットと、
前記電力測定ユニットに接続された、かつ前記電力測定電圧と基準電圧の間の差に基づいて電圧差信号を出力するように構成された電圧コンパレータと、
前記電力供給源と前記電気ヒーターの間に接続された、かつ前記電圧差信号に応答する電力調整器とを備え、
前記電力制御回路がアナログ回路であり、前記電力測定ユニット、前記電圧コンパレータ、および電力調整器がすべて、アナログ回路構成要素を使用して実行され、前記方法が、
前記電力供給源から前記電気ヒーターに供給される電力を決定する、かつ前記電気ヒーターに供給される前記電力に比例する電力測定電圧を発生する工程と、
前記電力測定電圧と基準電圧の間の差に基づいて電圧差信号を発生する工程と、
前記電圧差信号を所定の範囲内に維持するために、または前記電圧差信号を最小化するために、前記電気ヒーターに供給される電流または電圧を調節する工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式エアロゾル発生システム、特に抵抗加熱式エアロゾル発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱式エアロゾル発生システムは、エアロゾル形成基体を加熱してエアロゾルを発生させる。電気加熱式エアロゾル発生システムの一例は、電気加熱式の喫煙システムである。電気加熱式の喫煙システムにおいて、たばこまたは紙巻たばこのプラグなどのエアロゾル形成基体は、揮発性化合物が放出される温度まで加熱されて、ユーザーが吸入できるエアロゾルを形成する。
【0003】
こうしたシステムにおいて、エアロゾル形成基体の温度は、たばこ製品の燃焼が起こる温度未満に制御する必要がある。そのため、電気加熱式のエアロゾル発生装置では、ヒーターの温度を制御する必要がある。これは主に、望ましい特性を有するエアロゾルが発生されることを確実にする。しかし、消費者満足度については、吸入ごとに一貫した量のエアロゾルが生成されることが重要である。
【0004】
ヒーターの温度は、ヒーターに供給される電圧または電流の大きさを制限することによって制御しうる。別の方法として、電流がパルスで供給される場合、電流の負荷サイクルまたはパルス幅を変更して、ヒーター温度を制御しうる。
【0005】
ところが、抵抗ヒーターの一つの問題は、ヒーターの電気抵抗が経時的に増大する傾向があり、典型的に温度によって変化することである。大量生産された製品において、電気抵抗はまた、ヒーターごとに異なりうる。これは、単純な電圧制御または電流制御を使用して達成される温度を制御することが、経時的に、またはヒーターごとに一貫した結果をもたらさないことを意味する。
【0006】
この理由から、電気加熱式エアロゾル発生システムは典型的に、温度が確実に調整されるように、一部の種類の温度センサーを含む。マイクロプロセッサも、感知された温度に基づいて電源を制御するために必要である。しかし、これらの構成要素は比較的複雑であり、電力を消費する。手持ち式の電池式システムでは、可能な限り電力消費量を最小化することが望ましい。
【0007】
単純であり、システム自体が著しい電力を消費しない温度調整のためのシステムを提供することが望ましい。特に、温度センサーまたは温度に関連する計算を実施するためのマイクロプロセッサの使用を必要としないことが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第一の態様において、
電力供給源と、
電気ヒーターと、
電力供給源と電気ヒーターの間に接続された電力制御回路とを備え、電力制御回路が、
電力供給源から電気ヒーターに供給される電力を決定するように、かつ電気ヒーターに供給される電力に比例する電力測定電圧を出力するように構成された電力測定ユニットと、
電力測定ユニットに接続された、かつ電力測定電圧と基準電圧の間の差に基づいて電圧差信号を出力するように構成された電圧コンパレータと、
電力供給源と電気ヒーターの間に接続された、かつ電圧差信号に応答する電力調整器とを備え、電力調整器が、電圧差信号を所定の範囲内に戻すために、または電圧差信号を最小化するために、電気ヒーターに供給される電流または電圧を調節するように構成された、エアロゾル発生装置が提供されている。
【0009】
装置は、エアロゾル形成基体を加熱してエアロゾル形成基体内の揮発性化合物を気化することによって動作しうる。気化された化合物はその後、気流中で冷却されてエアロゾルを形成する。エアロゾル発生装置は、ユーザーが吸入するためのエアロゾルを発生するように構成されていることが好ましい。本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。こうした揮発性化合物は、エアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。エアロゾル形成基体は好都合なことに、エアロゾル発生物品または喫煙物品の一部であってもよい。 本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基体と相互作用してエアロゾルを発生する装置に関する。
【0010】
ジュール加熱の結果として電気ヒーターによって発生した熱は、ヒーターに印加された電力に、その電力が印加された時間を乗算したものに比例する。所与の熱質量では、質量の温度の変化は、それに印加された熱に比例する。そのため、電気ヒーターの近傍にあるエアロゾル形成基体の温度の変化は、ヒーターに印加された電力に、その電力が供給された時間を乗算したものに比例する。
【0011】
本発明によるシステムは、温度を制御するための電流の単純な調整を提供する。電力制御回路は、非常に多くの電力を消費しない構成要素を使用して実行することができる。特に、別個の温度センサーは必要ない。
【0012】
その上、システムの電力/温度関係がヒーター抵抗とは独立しているため、それぞれの電気ヒーターを較正する必要がない。これは、置き換え可能または交換可能なヒーターを使用するようにシステムが設計されている場合に、特に有用である。本発明によるシステムはまた、ヒーター抵抗ドリフトの問題を無くす。
【0013】
本発明によるシステムはまた、電池が放電し古くなるにつれて電池の電圧が低下する問題に対処する。
【0014】
有利なことに、電力制御回路はアナログ回路である。言い換えれば、電力測定ユニット、電圧コンパレータ、および電力調整器はすべて、アナログ回路構成要素を使用して実行される。これには、電力制御が定期的にまたは断続的に実施されるのではなく、連続的に実行されるという利点がある。必要な電圧または負荷サイクルを計算する、または標的値のルックアップテーブルを保存するための処理工程は必要ない。
【0015】
調整されているが連続的なDC電流を使用することは、負荷サイクル変調を使用して電流調整したパルスを使用するよりも、装置内の電子部品にとってストレスが少ない。特に、連続的であるがより低いDC電流の使用は、経時的にエレクトロマイグレーションを減少させ、そのため装置の信頼性を向上させる。
【0016】
本発明による装置は、負荷サイクル変調装置が動作する方法で最大限可能な放電電流を提供するための電池を必要としない。これは電池寿命を改善する。
【0017】
本発明による装置は、小さくて低電力の低コストな信頼できる装置の製造を可能にする。
【0018】
一実施形態において、電力調整器は、電圧差信号が所定の範囲外である場合のみ、電気ヒーターに供給される電流を調節するように構成されている。
【0019】
別の実施形態において、電力調整器は、印加される電力が標的の電力に向かって調節されるように、電気ヒーターに供給される電流を調節するように構成されている。
【0020】
エアロゾル発生装置は、起動後の所定の時間にわたり、ヒーターに電力を供給するように構成されうる。所定の時間は、単一のユーザー吸煙または吸入に対応するか、または複数のユーザー吸煙にわたる、装置の使用セッションに対応しうる。例えば、ヒーターは各起動後、2秒間電力供給されてもよい。その場合、ヒーターは、ユーザー吸煙が検出された時に、または吸煙の直前にユーザーがボタンを作動させた時にのみ起動されうる。別の方法として、別の実施例において、ヒーターは、従来の紙巻たばこを喫煙するためにかかる典型的な時間に対応して、起動後6分間、電力を供給されうる。その6分間中に、ユーザーは装置で数回の吸煙を行いうる。ヒーターの起動時間がどうであれ、一定の電力、または所定の電力プロファイルに対応する電力が起動中に提供されうる。電力制御回路のアナログ構成要素の使用は、起動中に電力調整が連続的に起こることを意味する。
【0021】
電力調整器は、電圧コンパレータの出力に接続された基部を有するバイポーラ接合トランジスタを備えうる。別の方法として、電力調整器は、単一の抵抗低電流ドロップレギュレータなどのドロップアウトレギュレータであってもよい。こうした調整器の一例は、Linear Technology Corporation( 2085 E Technology Cir, Tempe, AZ 85284、米国)のLT3083である。
【0022】
電力測定ユニットは、電気ヒーターに印加される電圧を、電気ヒーターに印加される電流を示す電圧で乗算して、電力測定電圧を提供するように構成された乗算ユニットを備えうる。
【0023】
電力測定ユニットは、電気ヒーターに印加される電流を示す出力電圧を提供するように構成された電流測定ユニットを備えうる。電流測定ユニットはオペアンプを備えうる。オペアンプは、既知の電気抵抗の感知抵抗器を横切って接続されてもよい。別の方法として、電流測定ユニットは、例えばLinear Technology CorporationのLTC1966センサーなどのホール効果センサーであってもよい。
【0024】
エアロゾル発生装置はマイクロコントローラをさらに備えうる。マイクロコントローラは基準電圧を提供するように構成されうる。マイクロコントローラは、装置の動作中に基準電圧を変化させるように構成されうる。これは、装置の動作時間の間、一貫したエアロゾルを生成するために有益でありうる。例えば、紙巻たばこなどの固体エアロゾル形成基体を加熱する時に、エアロゾル形成基体内の揮発性化合物の量は加熱中に枯渇し、一貫したエアロゾルを発生させるために、消耗した基体により大きい電力を印加する必要がある場合がある。基準電圧の変化は、起動後の時間もしくは別の測定される変数(装置でのユーザー吸煙など)に基づいて非連続的もしくは段階的であってもよく、または連続的であってもよい。例えば、基準電圧は装置上の各ユーザー吸煙の後に変化するか、または吸煙n回ごとの後に変化してもよく、nは1より大きい整数である。一実施例において、基準電圧は装置の初期起動後、連続的なユーザー吸煙ごとに増大する。マイクロコントローラは、検出されたユーザー吸入数に基づいて基準電圧を変化させるように構成されうる。別の方法として、または追加的に、マイクロコントローラは、装置の起動後の時間に基づいて基準電圧を変化させるように構成されうる。
【0025】
基準電圧は、電圧調整器または分圧器などの異なる定電圧源によって供給されうる。
【0026】
一実施形態において、電圧コンパレータはオペアンプを備える。オペアンプへの入力は、基準電圧および電力測定電圧としうる。電流制限抵抗器は、オペアンプの出力に接続されてもよい。
【0027】
電気ヒーターは、電気ヒーターの交換を可能にするために、電力制御回路に取り外し可能なように連結されうる。例えば、ヒーターは、エアロゾル形成基体が枯渇した時に交換される消耗品カートリッジ内に、エアロゾル形成基体と一緒に提供されうる。本発明の電力制御回路は、使用前に各交換電気ヒーターを較正する必要がない手段以外の方法で動作する。
【0028】
電気ヒーターは抵抗ヒーターであってもよい。ヒーターは電気抵抗性の材料を含みうる。適切な電気抵抗性の材料には例えば、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、およびセラミック材料製・金属材料製の複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル白金、金、銀が挙げられる。適切な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル含有、コバルト含有、クロム含有、アルミニウム含有、チタン含有、ジルコニウム含有、ハフニウム含有、ニオビウム含有、モリブデン含有、タンタル含有、タングステン含有、スズ含有、ガリウム含有、マンガン含有、金含有、および鉄含有合金、ならびにニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、ならびに鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。複合材料において、電気抵抗性材料は、必要とされるエネルギー伝達の動態学および外部の物理化学的特性に応じて随意に、断熱材料内に包埋、断熱材料内に封入、もしくは断熱材料で被覆されてもよく、またはその逆も可である。
【0029】
電気ヒーターは、内部発熱体、または外部発熱体、または内部発熱体と外部発熱体の両方を備えることができ、ここで「内部」および「外部」はエアロゾル形成基体に言及する。内部発熱体は任意の適切な形態を取りうる。例えば、内部発熱体は加熱用ブレードの形態を取りうる。加熱用ブレードは、プラチナまたは別の適切な材料から形成され、ブレードの片側または両側に蒸着された、一つ以上の抵抗性加熱トラックを有するセラミック基体から形成されうる。別の方法として、内部ヒーターは、異なる導電性部分または電気抵抗性の金属チューブを有するケーシングまたは基体の形態を取りうる。別の方法として、内部発熱体は、エアロゾル形成基体の中心を貫通する一つ以上の加熱用の針または棒としうる。その他の代替としては、加熱ワイヤーまたはフィラメント、例えばNi-Cr(ニッケルクロム)、白金、タングステン、または合金ワイヤーもしくは加熱プレートが挙げられる。随意に、内部発熱体は剛直な担体材料内またはその上に配置されうる。こうした一つの実施形態において、電気抵抗性のある発熱体は、温度と比抵抗の間で明確な関係を有する金属を使用して形成されうる。こうした例示的な装置において、金属は、セラミック材料などの適切な断熱材料上にトラックとして形成された後、ガラスなどの別の断熱材料内に挟まれることができる。この様態で形成されたヒーターは、動作中の発熱体の加熱と、その温度の監視との両方に使用されうる。
【0030】
外部発熱体は任意の適切な形態を取りうる。例えば、外部発熱体は、ポリイミドなどの誘電性基体上の一つ以上の可撓性の加熱箔の形態を取りうる。可撓性の加熱箔は、基体を受容するくぼみの周辺部に適合する形状にすることができる。別の方法として、外部発熱体は、金属のグリッド(複数可)、可撓性プリント基板、成形回路部品(MID)、セラミックヒーター、可撓性炭素繊維ヒーターの形態を取ってもよく、または適切な形状の基体上にプラズマ蒸着などの被覆技法を使用して形成されてもよい。外部発熱体はまた、温度と比抵抗の間に明確な関係を有する金属を使用して形成されてもよい。こうした例示的な装置において、金属は適切な断熱材料の二層の間のトラックとして形成されうる。この様態で形成された外部発熱体は、動作中の外部発熱体の加熱と、その温度の監視との両方に使用されうる。
【0031】
一実施形態において、電気ヒーターは、導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または布を含む。導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定してもよく、隙間は10 μm~100 μmの幅を有してもよい。
【0032】
導電性フィラメントは160~600メッシュUS(±10%)(すなわち、1インチ当たりのフィラメント数が160~600個(±10%))のサイズのメッシュを形成してもよい。隙間の幅は25 μm~75 μmであることが好ましい。メッシュの総面積に対する間隙の面積の比であるメッシュの開口部分の面積率は25~56%が好ましい。メッシュは、異なるタイプの織り構造または格子構造を使用して形成されてもよい。別の方法として、導電性フィラメントは、互いに平行に配設されたフィラメントのアレイから成る。
【0033】
導電性フィラメントは8μm~100μmの直径を有することができ、8μm~50μmの直径であることが好ましく、8μm~39μmの直径であることがより好ましい。フィラメントは丸い断面を有してもよく、または扁平な断面を有してもよい。
【0034】
導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは布の面積は小さくてもよく、25mm2以下であることが好ましく、手持ち式システムへの組み込みが許容されることが好ましい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは布は、例えば5mm×2mmの寸法の長方形であってもよい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは布は、ヒーター組立品の面積の10%~50%の面積を覆うことが好ましい。導電性フィラメントのメッシュまたはアレイは、ヒーター組立品の面積の15~25%の面積を覆うことがより好ましい。
【0035】
フィラメントは、シート材料(箔など)のエッチングによって形成されてもよい。これは、ヒーター組立品が平行のフィラメントのアレイを備える時に、特に有利である場合がある。発熱体がフィラメントのメッシュまたは布を含む場合、フィラメントは個別に形成されてもよく、まとめて編まれてもよい。
【0036】
導電性フィラメント用の好ましい材料は、304、316、304L、および316Lステンレス鋼である。
【0037】
動作時、ヒーターは有利なことに、伝導の手段によってエアロゾル形成基体を加熱する。ヒーターは基体と、または基体が付着している担体と、少なくとも部分的に接触する場合がある。別の方法として、内部または外部のいずれかの発熱体からの熱は、熱伝導性要素の手段によって基体に伝導しうる。
【0038】
動作中、エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生装置内に完全に収容されうる。その場合、ユーザーはエアロゾル発生装置のマウスピースで吸煙しうる。別の方法として、動作中、エアロゾル形成基体を含有する喫煙物品は、エアロゾル発生装置内に部分的に収容されうる。その場合、ユーザーは直に喫煙物品で喫煙しうる。発熱体は装置の中のくぼみ内に位置付けられることができ、ここでくぼみは、使用時に発熱体がエアロゾル形成基体内にあるように、エアロゾル形成基体を受容するように構成されている。
【0039】
喫煙物品は実質的に円筒状でありうる。喫煙物品は実質的に細長くてもよい。喫煙物品はまた、長さと、その長さに対して実質的に直角を成す円周とを有してもよい。エアロゾル形成基体は実質的に円筒状であってもよい。エアロゾル形成基体は実質的に細長くてもよい。エアロゾル形成基体はまた、長さと、その長さに対して実質的に直角を成す円周とを有してもよい。
【0040】
エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は固体構成要素と液体構成要素の両方を備えてもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0041】
エアロゾル形成基体が固体エアロゾル形成基体である場合、固体エアロゾル形成基体は、薬草の葉、たばこ葉、たばこの茎の断片、再構成たばこ、均質化したたばこ、押し出し成形たばこ、キャストリーフたばこ、および膨化たばこのうちの一つ以上を含む、例えば粉末、顆粒、ペレット、断片、スパゲッティ、細片、またはシートのうちの一つ以上を含んでもよい。固体エアロゾル形成基体は、ばらの形態になっていてもよく、または適切な容器もしくはカートリッジ内で提供されてもよい。随意に、固体エアロゾル形成基体は、基体の加熱に伴い放出される追加的なたばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含有してもよい。固体エアロゾル形成基体はまた、例えば追加的なたばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含むカプセルも含有してもよく、こうしたカプセルは固体エアロゾル形成基体の加熱中に溶けてもよい。
【0042】
本明細書で使用される「均質化したたばこ」は、粒子状たばこを凝集することによって形成された材料を意味する。均質化したたばこは、シートの形態であってもよい。均質化したたばこ材料は、乾燥質量基準で5%超のエアロゾル形成体含有量を有してもよい。別の方法として、均質化したたばこ材料は、乾燥質量基準で5~30重量%のエアロゾル形成体含有量を有してもよい。均質化したたばこ材料シートは、たばこ葉ラミナおよびたばこ葉茎のうちの一方または両方を粉砕またはその他の方法で細分することによって得られた粒子状たばこを凝集することによって形成されてもよい。別の方法として、または追加的に、均質化したたばこ材料シートは、例えばたばこの処理、取り扱いおよび輸送中に形成されたたばこダスト、たばこの微粉、その他の粒子状たばこ副産物のうちの一つ以上を含んでもよい。均質化したたばこ材料シートは、粒子状たばこの凝集を助けるために、一つ以上の本来備わっている結合剤(すなわち、たばこ内在性結合剤)、一つ以上の外来的な結合剤(すなわち、たばこ外来性結合剤)、またはこれらの組み合わせを含んでもよいが、別の方法として、または追加的に、均質化したたばこ材料シートは、たばこおよび非たばこ繊維、エアロゾル形成体、湿潤剤、可塑剤、風味剤、充填材、水性および非水性の溶剤、ならびにこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないその他の添加物を含んでもよい。
【0043】
随意に、固体エアロゾル形成基体は、熱的に安定な担体上に提供されてもよく、またはその中に包埋されてもよい。担体は、粉末、顆粒、ペレット、断片、スパゲッティ、細片またはシートの形態を取ってもよい。別の方法として、担体は、その内表面上、もしくはその外表面上、またはその内表面および外表面の両方の上に堆積された固体基体の薄い層を有する、管状の担体であってもよい。こうした管状の担体は、例えば紙、または紙様の材料、不織布炭素繊維マット、低質量の目の粗いメッシュ金属スクリーン、もしくは穿孔された金属箔、または任意の他の熱的に安定した高分子マトリクスで形成されてもよい。
【0044】
固体エアロゾル形成基体は、例えばシート、発泡体、ゲル、またはスラリーの形態で担体の表面上に堆積されてもよい。固体エアロゾル形成基体は担体の表面全体の上に堆積されてもよく、または別の方法として、使用中に不均一な風味送達を提供するためのパターンで堆積されてもよい。
【0045】
上記では、固体エアロゾル形成基体を参照したが、その他の形態のエアロゾル形成基体をその他の実施形態で使用しうることが当業者に明らかであろう。例えば、エアロゾル形成基体は液体エアロゾル形成基体としうる。液体エアロゾル形成基体が提供される場合、エアロゾル発生装置は、液体を保持する手段を備えることが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基体は容器内に保持されうる。別の方法として、または追加的に、液体エアロゾル形成基体は多孔性担体材料の中に吸収されうる。多孔性担体材料は、任意の適切な吸収性のプラグまたは本体、例えば発泡性の金属またはプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維またはセラミックで作成しうる。液体エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生装置を使用する前に、多孔性担体材料内に保持されてもよく、または別の方法として、液体エアロゾル形成基体材料は、使用中にまたは使用の直前に多孔性担体材料の中へと放出されてもよい。例えば、液体エアロゾル形成基体はカプセル内に提供されてもよい。カプセルのシェルは、加熱に伴い溶融し、液体エアロゾル形成基体を多孔性担体材料の中に放出することが好ましい。カプセルは随意に、液体と組み合わせた固体を含有してもよい。
【0046】
別の方法として、担体は、たばこ成分が組み込まれた不織布繊維または繊維の束としうる。不織布繊維または繊維の束は、例えば炭素繊維、天然セルロース繊維、またはセルロース誘導体繊維を含みうる。
【0047】
電力供給源は、例えばDC電圧源などの任意の適切な電源であってもよい。一実施形態において、電力供給源はリチウムイオン電池である。別の方法として、電源は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、またはリチウム系電池(例えば、リチウムコバルト電池、リチウム鉄リン酸塩電池、チタン酸リチウム電池、またはリチウムポリマー電池)であってもよい。 電源は、再充電を必要としてもよく、また1回以上の喫煙体験のために十分なエネルギーの貯蔵を可能にする容量を有してもよい。例えば、電源は従来の紙巻たばこ1本を喫煙するのにかかる一般的な時間に対応する約6分間、または6分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の例において、電源は所定の回数の吸煙、またはヒーターの不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0048】
エアロゾル発生装置はハウジングを備えることが好ましい。ハウジングは細長いことが好ましい。ハウジングは任意の適切な材料または材料の組み合わせを含んでもよい。適切な材料の例としては、金属、合金、プラスチック、もしくはこれらの材料のうちの一つ以上を含有する複合材料、または食品もしくは医薬品用途に適切な熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリエチレンが挙げられる。材料は軽く、かつ脆くないことが好ましい。
【0049】
エアロゾル発生装置は携帯型であることが好ましい。エアロゾル発生装置は電気加熱式の喫煙システムであってもよく、従来の葉巻たばこや紙巻たばこに匹敵するサイズを有してもよい。エアロゾル発生装置は喫煙システムであってもよい。喫煙システムの全長は、およそ30mm~およそ150mmであってもよい。喫煙システムの外径は、およそ5mm~およそ30mmであってもよい。
【0050】
エアロゾル発生装置は一体型の装置であってもよい。別の方法として、エアロゾル発生装置は、相互に分離可能であるが、動作中は接続されている二つ以上の部分品を備えうる。例えば、エアロゾル発生装置は、電源および電力制御回路の一部またはすべてを含むメインハウジングと、エアロゾル形成基体およびマウスピースを含むカートリッジ部分とを備えうる。電気ヒーターは、メインハウジング内、カートリッジ部分内、または別個のヒーター部分内にあってもよい。
【0051】
電気ヒーターは、ユーザーが装置上のボタンを作動させることに応答して起動されてもよく、または装置が閾値を超えることによって感知された気流量に応答して起動されてもよい。エアロゾル発生装置は、この目的のための気流センサーを備えうる。別の方法として、または追加的に、気流は、電気ヒーターの温度の変化を検出することによって決定されうる。ヒーターを通過するかなりの気流は、ヒーターに対して冷却効果を有する。
【0052】
装置は、ユーザーの吸入のためにエアロゾルを発生させるように構成されてもよく、使用時にユーザーの吸入は電気ヒーターを通過して空気を引き出しうる。装置はメモリを備えてもよく、ユーザーの吸入の示しとして電気ヒーターに供給される電流または電圧の変化を記録するように構成されてもよい。電気ヒーターを通過する気流は、ヒーターを冷却する傾向があり、これは電気ヒーターの電気抵抗を変化させる。ヒーターの電気抵抗の偏差は、ヒーターに印加される特定の電力を維持するために必要な電流または電圧の偏差を引き起こす。ユーザー吸入の示しは、所定の基準電圧プロファイルに従って基準電圧を変更するために、マイクロコントローラによって使用されうる。
【0053】
本発明の第二の態様において、電気ヒーターエアロゾル発生システム内の電気ヒーターへの電力供給を調整するための方法が提供されていて、エアロゾル発生システムは、電力供給源、電気ヒーター、および電力供給源と電気ヒーターの間に接続された電力制御回路を備え、方法は、
【0054】
電力供給源から電気ヒーターに供給される電力を決定する、かつ電気ヒーターに供給される電力に比例する電力測定電圧を発生する工程と、
【0055】
電力測定電圧と基準電圧の差に基づいて電圧差信号を発生する工程と、
電圧差信号を所定の範囲内に維持するために、または電圧差信号を最小化するために、電気ヒーターに供給される電流または電圧を調節する工程とを含む。
【0056】
方法は、アナログ回路を使用して実行されることが好ましい。このようにして、電力が供給されている間、電気ヒーターへの電力は連続的に調整される。
【0057】
ここで本発明による実施例を、添付図面を参照しながら、詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、電気加熱式エアロゾル発生システムの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明による電気加熱式エアロゾル発生システムのための電力制御システムの構成要素の概略図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すタイプの電力制御システムの回路図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すタイプの電気加熱式エアロゾル発生システムの電力プロファイルの例である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1では、電気加熱式のエアロゾル発生装置1の実施形態の構成要素を簡略化された方法で示す。特に、電気加熱式のエアロゾル発生装置1の要素は
図1において、正確な比率で描かれていない。本実施形態の理解に関連性のない要素は、
図1を簡略化するために省略されている。
【0060】
電気加熱式エアロゾル発生システムは、エアロゾル発生装置1と、例えば紙巻たばこなどのエアロゾル形成基体2とを備える。エアロゾル形成基体2は、装置1のハウジング内に押し込まれて、電気ヒーター40と熱的に近接するようになる。エアロゾル形成基体2は、異なる温度で様々な揮発性化合物を放出する。電気ヒーターに供給される電力を制御することによって、これらの揮発性化合物の放出または形成を制御することができる。
【0061】
装置1内には、電気エネルギー供給源60、例えば再充電可能リチウムイオン電池がある。電力制御回路100は、発熱体40および電気エネルギー供給源60に接続されている。マイクロコントローラ70は、電力制御回路100および電気エネルギー供給源に接続されている。
【0062】
この例では、発熱体40は、装置のハウジング内の剛直なブレード形状の基体上に位置付けられている。ブレード形状の基体は、この例では紙巻たばこであるエアロゾル形成基体を貫通することができる。しかし、その他の形態の発熱体を使用できることは明らかである。特に、発熱体はエアロゾル形成基体の外側に位置付けられてもよい。
【0063】
使用時に、電力がヒーターに供給されて、エアロゾル形成基体を加熱する。ユーザーは、エアロゾル形成基体のマウスピース端を吸い、ヒーターおよびエアロゾル形成基体を通過して空気を引き出す。ヒーターによって気化され、気流に混入されたエアロゾル形成基体内の化合物は、ユーザーの口に入る前に冷却されてエアロゾルを形成する。
【0064】
電力制御回路100の基本的な要素は、
図2ではバッテリー60およびヒーター40とともに概略的に示されている。電力制御回路100は、電流測定ユニット20、電力測定ユニット30、電圧コンパレータ10、電力調整器12を備える。電力調整器は、電圧コンパレータ10からの出力に基づいて、ヒーター40に印加される電流または電圧を調節するように構成されている。電圧コンパレータは、基準電圧V
refを電力測定ユニット30の出力と比較するように、かつV
refと電力測定ユニット30の出力との間の差を表す電圧を出力として提供するように構成されている。電力測定ユニットは、ヒーターに供給される電力を測定するように構成されている。電力測定ユニットは、電流測定ユニット20からヒーター40に印加される電流を表す電圧、および電力調整器によってヒーター40に印加される電圧を入力として受信する。電力測定ユニットは、入力信号の産物を表す電圧を出力として提供する。電力調整器12は、電圧コンパレータからの出力を最小化する働きをするように、または電圧コンパレータからの出力が所定の範囲外である場合はヒーター40に印加される電力を調節するように構成されている。
【0065】
図3は、
図2の電力制御回路の一実施形態を示す。リチウムイオン電池60は、電力制御回路100を通して電気ヒーター40に接続されている。電池60は、ヒーター40を通して電流を生じさせる電圧V
dcを発生させる。ヒーターはジュール効果の結果として加熱する。電力制御回路100は、ヒーターに印加される電力を測定し、測定に基づいて印加される電力を調節する。電力制御回路は、
図2に示す通り、同じ機能的構成要素を備える。
【0066】
ヒーターに印加される電力は、電流測定ユニット20を使用して電流を測定することによって、および測定された電流をヒーターに印加される電圧で乗算することによって決定される。電流測定ユニットは、電気ヒーター40と直列に接続された既知の電気抵抗の抵抗器201と、オペアンプ202とを備える。抵抗201を通る電流は、電気ヒーター40を通る電流と等しい。抵抗器201を通る電流は、抵抗器201を通した電圧をその電気抵抗で割った電圧と等しい。オペアンプ202は、オペアンプへの一つの入力が抵抗器201のハイサイドに接続されていて、オペアンプへのもう一方の入力が抵抗器201のローサイドに接続されているように、抵抗器201に接続されている。従って、オペアンプの出力は、電気ヒーター40を通した電流に比例する電圧VIである。オペアンプの出力は、電力測定ユニットである乗算器30に接続されている。乗算器30へのもう一方の入力は、ヒーター40を通した電圧Vloadである。
【0067】
乗算器30の出力は、ヒーターに印加される電力に比例する電圧Vmeasuredである。この電圧は電圧コンパレータ10への入力である。 電圧コンパレータ10はオペアンプ101を備える。オペアンプ101への負の入力は、Vmeasuredである。オペアンプへの正の入力は、基準電圧Vrefである。マイクロプロセッサ70は、電力制御回路に基準電圧Vrefを提供する。マイクロプロセッサは、電池60によって電力供給される。
【0068】
オペアンプ101の出力は、VmeasuredとVrefの間の差であり、これはΔVである。電流制限抵抗器102は、オペアンプ101の出力と電力調整器12の間に提供されていて、電力調整器への電気の流れを制限する。同様に、電流制限抵抗器50は、ヒーター40と直列に接続されていて、ヒーター40を通る電流を制限する。
【0069】
電力調整器はNPNトランジスタ12である。電圧コンパレータの出力は、トランジスタ12の基部に接続されている。ΔVが特定の範囲内である場合、トランジスタ12を通る電流は変化しない。ただし、ΔVが正であり(VmeasuredがVref未満である場合)、かつ閾値より大きい場合は、トランジスタ12を通る電流を増大させて、ヒーター40に送達される電力を増大させる。ΔVが負であり(VmeasuredがVrefより大きい場合)、かつ閾値より大きい場合は、トランジスタ12を通る電流を減少させて、ヒーター40に送達される電力を減少させる。このようにして、供給電力の値が調整され、特にVrefの値に依存して特定の範囲内に保持される。
【0070】
電力調整が連続的であり、サンプリングを必要としないように、電力制御回路100は制御ループとして働き、アナログ構成要素を使用する。Vrefが一定の場合、ヒーターに供給される電力は所定の範囲内に留まる。
【0071】
V
refの値を調整することによって、装置の動作中にヒーター40に供給される電力を調節することが可能である。
図4は、
図1に図示したタイプの装置の動作中に、V
refが変化する可能性がある一例を図示する。時間t
0で、装置はユーザーが装置上の「オン」ボタンを押すことによって起動される。ヒーター40およびエアロゾル形成基体2を動作温度まで素早く上げるために、V
refは最初に、比較的高い値に設定されている。これは、ユーザーができるだけ早く最初の吸煙をすることを可能にする。設定時間の後、または温度測定に基づいて、時間t
1で、V
refをより低い値に減少させる。これは、望ましいエアロゾルを発生できる動作温度にヒーター40を維持するためである。
【0072】
各吸煙のために十分な量のエアロゾルが生成されることを確実にするために、エアロゾル発生基体が枯渇するにつれてヒーターに印加される電力を増大させることが望ましい場合がある。電力は、ユーザーの各吸煙の後、またはユーザーの一定回数の吸煙の後に増大させうる。例えば、
図4に示す通り、時間P
1で、3回のユーザー吸煙の完了後、V
refが増大する。第四および第六のユーザー吸煙の完了に対応する時間P
2およびP
3でも、V
refが増大する。別の方法として、V
refの増大は、単に装置の起動後の所定の時間に行われてもよい。
【0073】
ユーザー吸煙は、装置内の専用の気流センサーを使用して検出されてもよい。別の方法として、ユーザー吸煙は、ヒーター40の電気抵抗の変化を監視することによって検出されうる。ユーザー吸煙の結果としてヒーターを通過する気流は、ヒーターに対して冷却効果を有し、ヒーターの電気抵抗の変化につながる。ヒーターの電気抵抗の変化は、Vloadの変化と、それに応じたVIの増大とにつながる。VloadまたはVIを監視することによって、ユーザー吸入の開始および終了を検出することができる。この情報を使用して、基準電圧Vrefの変更をトリガすることができる。
【0074】
制御回路は、
図1に図示した装置を参照して説明されてきたが、その他のタイプのエアロゾル発生装置に適用可能であることが明らかである。特に、エアロゾル発生基体の外部に位置付けられたヒーターを有する装置で使用されうる。例えば、ヒーター40は、エアロゾル発生装置内のくぼみを囲む可撓性のヒーターとして実行されてもよく、ここでくぼみはエアロゾル形成基体を受容するように構成されている。別の実施例において、エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基体と一体型であり、かつエアロゾル形成基体が枯渇した時に廃棄されるように設計されてもよい。さらなる実施例において、ヒーター40は、使い捨てのカートリッジ内にエアロゾル形成基体とともに提供され、電源および電力制御回路は再使用可能な主要ユニット内に提供されうる。
【0075】
さらに、制御回路は、装置の動作中に電力をヒーターに連続的に供給する装置に関して説明されてきたが、ユーザーの吸煙中または吸入中のみ電力をヒーターに供給するように構成された装置にも適用可能である。例えば、マイクロプロセッサは、装置内の吸煙センサーによってユーザー吸煙が検出されるまでゼロのVrefを提供するように、またその次に、ユーザー吸煙の検出後、次のユーザー吸煙が検出されるまでゼロのVrefに戻る前に、Vrefの正の値を所定の時間(例えば2秒間)提供するように構成されうる。Vrefの値は吸煙ごとに変化しうる。