(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】緩衝装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/027 20060101AFI20230906BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20230906BHJP
F16L 55/04 20060101ALI20230906BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230906BHJP
F04B 53/00 20060101ALN20230906BHJP
F04B 11/00 20060101ALN20230906BHJP
【FI】
F16L55/027
F16F15/023 Z
F16L55/04
G10K11/16 100
F04B53/00 B
F04B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020547188
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2019059518
(87)【国際公開番号】W WO2019214903
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】102018003848.4
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591204333
【氏名又は名称】ハイダック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HYDAC TECHNOLOGY GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト バルテス
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クロフト
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008015763(DE,A1)
【文献】特開2004-092701(JP,A)
【文献】国際公開第2016/142032(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第00721860(GB,A)
【文献】米国特許第2101782(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/027
F16F 15/023
F16L 55/04
G10K 11/16
F04B 53/00
F04B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧供給回路内
の緩衝装置であって、緩衝室(10)を包囲する緩衝ハウジング(2)を有し、前記緩衝ハウジングは、少なくとも1つの流体入口(6)と、少なくとも1つの流体出口(8)と、前記流体入口(6)と前記流体出口(8)との間に延在する流体収容室と、を有しており、装置の作動中に、前記流体入口(6)から来た流体流は、前記流体出口(8)へ向けて、前記緩衝室(10)を通過しており、前記流体収容室の
内部の壁部は、
前記緩衝ハウジング(2)の対向する端部壁(12、14)の間の前記流体流の方向に対して横切る、少なくとも1つの延在方向において、案内部材(16)として延在する、緩衝装置において、
前記緩衝室(10)内に、流体が流れることができ、かつ、一定の領域において流速を変化させる、複数の案内部材(16)が設けられてお
り、
前記案内部材(16)は、前記端部壁(12、14)と一体である中空体の形式で設けられている、ことを特徴とする、緩衝装置。
【請求項2】
少なくとも部分的に曲折する流体流を形成しながら、少なくともいくつかの前記案内部材(16)が、隣接する列(28)の前記案内部材(16)に対してオフセットして配置されるように、前記案内部材(16)は、互いに列(28)を成して配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記流体入口(6)から来る流れの方向に対して横切る、それぞれの列(28)における前記案内部材(16)の数は、横方向に最大に延在した前記緩衝室(10)の方向において1つずつ増加し、前記流体入口(6)における列(28)の前記案内部材(16)の数と前記流体出口(8)における列(28)の前記案内部材(16)の数とが同一になるまで、前記最大の数の列から前記流体出口(8)の方向に1つずつ減少する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の緩衝装置。
【請求項4】
前記緩衝ハウジング(2)及び/又は前記緩衝室(10)は、円筒形状又は多角形状に形成されており、かつ、前記案内部材(16)は、少なくとも部分的
に同一に形成されており、前記緩衝ハウジング(2)の互いに対向する端部壁(12、14)の間で延在している、ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の緩衝装置。
【請求項5】
少なくともいくつか
の前記案内部材(16)の両方の端部(22)において、前記緩衝ハウジング(2)の割り当てられた
前記端部壁(12、14)と、それぞれ結合している、ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の緩衝装置。
【請求項6】
少なくともいくつか
の前記案内部材(16)は、円筒形状の中央部分(18)を有する、連続した中空体として形成されており、前記中央部分の端部側には、円錐部(20)が連結されており、各前記円錐部は、前記緩衝ハウジング(2)の
割り当てられた前記端部壁(12、14)の方向に拡大されている、ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の緩衝装置。
【請求項7】
前記流体入口から前記流体出口へ向けて前記緩衝ハウジング(2)
の中央を通る中
央縦断面において、8角形状中空部(24)が
隣り合う前記案内部材(16)の間に形成されて
いる、ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の緩衝装置。
【請求項8】
前記流れの方向を横切る、前記緩衝ハウジング(2)を通る中央の横断面において、前記案内部材(16)は、これらの間に、6角形状中空部(26)を画定しており、前記6角形状中空部には、前記流体が前記流れの方向に流れる、ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の緩衝装置。
【請求項9】
少なくともいくつか
の前記案内部材(16)の両方の端部(22)において、前記緩衝ハウジング(2)の割り当てられた
前記端部壁(12、14)と、それぞれ結合しており、
少なくともいくつか
の前記案内部材(16)は、円筒形状の中央部分(18)を有する、連続した中空体として形成されており、前記中央部分の端部側には、円錐部(20)が連結されており、各前記円錐部は、前記緩衝ハウジング(2)の前記割り当てられた端部壁(12、14)の方向に拡大されており、
前記円錐部(20)に沿って前記端部壁(12、14)が結合する、隣り合う前記案内部材(16)の端部(22)は、互いにわずかな間隔を有する、又は、互いに接触している、ことを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載の緩衝装置。
【請求項10】
少なくとも、前記案内部材(16)と一体的に形成されている前記緩衝ハウジング(2)は、3Dプリント処理によって得られる、ことを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1項に記載の緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に油圧供給回路内の、脈動のような圧力変動を緩衝又は回避するための、好ましくはサイレンサの形式の、緩衝装置に関するものであって、緩衝室を包囲する緩衝ハウジングを有し、その緩衝ハウジングが少なくとも1つの流体入口と、少なくとも1つの流体出口と、流体入口と流体出口の間に延在する流体収容室を有し、装置の駆動中に、流体入口から来た流体流は、流体出口へ向かって緩衝室を横切り、かつ、流体収容室の壁部が、案内部材として少なくとも1つの広がり方向において流体流の方向に対して横断する方向に延在している。
【背景技術】
【0002】
この種の緩衝装置は、従来技術である。音ダンパー又はサイレンサと称される、この種の油圧ダンパーは、特に油圧ポンプの駆動によって、該当する油圧システムに周期的に重ね合わされる圧力脈動によって引き起こされる振動を減少させるために用いられる。冒頭に挙げた種類の緩衝装置を、いわゆるディスクサイレンサの形式で開示している、特許文献1に示されるように、緩衝室を形成する円筒形状のディスク形状の流体収容室内に、流体流が流れつくことができる案内部材が設けられている。この案内部材は、突出部によって形成されており、その突出部は天井部分として用いられる端部壁と一体的に形成されており、かつ、緩衝室内へその底まで張り出すように延びている。案内部材を配置することによって、流速の部分的な上昇と緩衝効率の改良が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102015003016号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術に基づいて本発明の課題は、特に好ましい作動の挙動を特徴とする、冒頭で挙げた種類の緩衝装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この課題は、全体として特許請求項1の特徴を有する緩衝装置によって解決される。
【0006】
特許請求項1の特徴部分によれば、本発明の重要な特徴は、緩衝室内に、流体が流れることができ、かつ、流速を一定の領域で変化させる複数の案内部材が設けられていることにある。案内部材の数に従って、変化する流速を有する複数の分割された領域が生じる。そのほかに、案内部材の分割された配置が、流路の分割をもたらすため、全体として緩衝効率の向上を達成することができる。
【0007】
好ましくは、案内部材は、少なくともいくつかの案内部材が、少なくとも部分的に曲折する流体流を形成しながら、隣接する列の案内部材に対してオフセットするように、互いに列を成して配置することができる。従って、流速が変化するだけでなく、流体入口から流体出口への流体流の基本方向も変化する。
【0008】
有利なことに、配置は、流体入口からの流れの方向に対して横切る、それぞれの列内の案内部材の数が、緩衝室の横方向に最大に広がる方向に、それぞれ1つの案内部材ずつ増加し、かつ、流体入口と流体出口において列内の案内部材の数が同数になるまで、流体出口の方向に最大の数からそれぞれ1つの案内部材ずつ減少することができる。
【0009】
好ましい実施例において、緩衝ハウジング及び/又は緩衝室は、円筒状及び/又は多角形状に形成されており、案内部材は、少なくとも部分的に、好ましくは全てが、同じ大きさに形成されて、緩衝ハウジングの互いに対向する端部壁の間で延在する。
【0010】
特に好ましい実施例において、案内部材の少なくとも一部、好ましくは、全てが、それらの2つの端部において、緩衝ハウジングのそれぞれ対応づけられた端部壁と結合する。サイレンサとしての作動中に、圧力容器としての緩衝ハウジングが、しばしば曝される高い圧力水準において、ハウジングの2つの端部壁の間に、案内部材によって形成される接続によって、少ない組立て重量において、圧縮強度及び構造強度の際立った改良と共に剛性の著しい増大がもたらされる。
【0011】
好ましくは、案内部材の少なくとも一部、好ましくは、全ては、円筒状の中央部分を有する、連続した中空体として形成することができ、その中央部分の終端側には、円錐部が連結されており、円錐部は、緩衝ハウジングの割り当て可能な端部側の方向に拡張されている。端部壁を結合する挿入部の形成が、組立て重量に対して構造強度を著しく増大させる。円錐部によって、緩衝ハウジング内に特に好ましい緩衝状況が生じる。
【0012】
その場合に、配置は、緩衝ハウジングを通る中央の縦断面において、8角形状中空部が形成されており、案内部材は、その中へ隣接して挿入されており、かつ/又は、流れ方向に対して横切る、緩衝ハウジングを通る中央の横断面において、案内部材は、それぞれが、流体流の流れ方向に通じる、案内部材の間の6角形状中空部が確定されている。
【0013】
案内部材は、好ましくは、隣接し合う案内部材の、円錐部に沿って結合する端面において、互いにわずかな間隔をもつか、あるいは互いに接触するように、配置することができる。
【0014】
緩衝装置を形成する場合に、好ましくは、少なくとも、一体的に形成された案内部材を有する緩衝ハウジングは、好ましくは、金属材料から3Dプリント処理によって得ることができる。さらに、好ましくは流体入口と流体出口も上述したプリント処理によって得られ、かつ、全体としての緩衝装置の一体的な構成要素である。
【0015】
以下、図面に示す実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係る緩衝装置の実施例の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に比べて拡大して示す、緩衝ハウジングの中央の縦断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図2に相当する、緩衝ハウジングの中央の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照して、本発明に係る緩衝装置をいわゆるディスクサイレンサの例で説明し、ディスクサイレンサは、
図1に示すように、円筒形状の緩衝ハウジング2を有している。側壁4の直径方向に対向する2つの箇所に、流体入口6と流体出口8とが配置されており、流体入口6と流体出口8とは、緩衝室を形成する流体収容室10への接続を形成する。流体収容室10は、それぞれ平坦な円形ディスクの形状を有する2つの上壁又は端部壁12、14の間の円筒形状のディスク形状を有している。
【0018】
流体室10内において、流体入口6から流体出口8へ流体を導く流路内に、多数の案内部材16が配置されており、これらは、あるパターンによって配置されている。
図2及び
図3から読み取ることができるように、図面では一部にだけ番号を振られた案内部材16は、それぞれ中空体によって形成されており、中空体は、一体的に形成されると共に、端部壁12から端部壁14へ延在されており、案内部材16は、それぞれの端部壁12、14と一体的に形成されている。案内部材16の等しく形成された中空体は、それぞれ円筒形状の中央部分18を有しており、中央部分の終端側には、円錐部20がそれぞれ連続しており、円錐部は、それぞれ割り当てられた端部壁12又は14の方向に拡大されており、円錐部の端部22(一部のみ番号を付されている)が、端部壁に結合している。
【0019】
図1が示すように、案内部材16(一部のみに番号が付されている)のうちの1つの案内部材16の端部22を見ることができ、案内部材16のパターンは、列28を有する列配置(
図2)であって、それらの列は、直線かつ互いに対して平行に、流体入口6と流体出口8の間の接続ラインに対して垂直に延在している。流体入口6から、及び、流体出口8から始まって、緩衝室の中心へ向けた方向において、列28あたりの案内部材16の数は、それぞれ1つの案内部材16ずつ増加している。図示される実施例において、5つの列28及びそれぞれ流体入口6と流体出口8に最も近い列28内に3つの案内部材16を有しており、図示される実施形態のパターンは、全部で19個の案内部材16を有する。
【0020】
図示される例において、列28内の案内部材16は、1つの列28の案内部材16が次の列28の案内部材に対して、それぞれ1つの案内部材16だけオフセットするように配置されており、かつ、案内部材16は、互いに対して、それぞれ割り当てられた前壁12、14と結合する端部22が、互いに対して小さい間隔を有するか、又は、
図1に示すように、互いに接触するように、隣接して配置されている。この配置において、
図2に示すように、流体入口6から流体出口8へ向かって緩衝ハウジング2の中央を通る縦断面において、隣り合う案内部材16の間に8角形状中空部24が形成されている。緩衝ハウジング2の中央を通り、かつ、流体入口6と流体出口8の間の接続ラインに対して垂直に延びる切断平面を有する断面においては、案内部材16はそれらの間に6角形状中空部26を画定し、流体流は、その主流方向において、通過する。
【0021】
本発明において設けられる、端部壁12、14と一体的な中空体の形式の、多数の案内体16は、軽量構造であるにもかかわらず、緩衝ハウジング2を高い圧力水準に適した圧力容器として形成する選択肢を提供し、案内部材を通じた流れの効果は、効率的な緩衝を保証する。好ましくは一体的な緩衝ハウジング2は、3Dプリント処理によって実体化することができる。