(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】フィーダ適合判断装置、およびフィーダ適合判断方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20230906BHJP
H05K 13/08 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H05K13/02 B
H05K13/08 A
(21)【出願番号】P 2020549895
(86)(22)【出願日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2018037888
(87)【国際公開番号】W WO2020075257
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2020-12-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-123894(JP,A)
【文献】特開2009-123893(JP,A)
【文献】特開2017-037886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の装着作業を実行する部品装着機に装備されたときに前記部品の供給動作を行うフィーダの前記供給動作の信頼性に相関する指標を固有状態とし、実行予定の前記装着作業において供給する前記部品の種類に対応して前記フィーダに要求される前記固有状態である要求状態を設定する要求設定部と、
前記部品装着機による前記装着作業の開始以前に、
前記部品装着機に装備されているか否かに関係なくフィーダデータに登録されている全部の前記フィーダからテープリールの仕様が適合しない前記フィーダ、他の部品装着機で稼働中の前記フィーダ、およびメンテナンス実施中の前記フィーダを除外して前記部品装着機に装備される候補となる複数の候補フィーダとし、複数の前記候補フィーダの現在の前記固有状態である現在状態を取得する現状取得部と、
前記要求状態および前記現在状態に基づいて、
複数の前記候補フィーダの適合を判断
し、前記現在状態が前記要求状態を満たす前記フィーダを案内する適合判断部と、を備え、
前記現状取得部は、前記部品装着機による前記装着作業の開始後に、前記部品装着機に装備された前記フィーダの前記現在状態を再度取得し、前記適合判断部は、前記要求状態および再度取得した前記現在状態に基づいて、前記フィーダの適合を再度判断する、
フィーダ適合判断装置。
【請求項2】
前記現状取得部および前記適合判断部は、前記部品装着機による前記装着作業の開始以前に動作し、加えて、前記部品装着機による前記装着作業の開始後にエラーが発生した場合に再度動作する、請求項1に記載のフィーダ適合判断装置。
【請求項3】
前記現状取得部は、前記候補フィーダの前記供給動作の履歴、前記候補フィーダに実施したメンテナンスの履歴、および、前記候補フィーダの前記供給動作の良否を判定した検査結果の少なくとも一項目に基づいて前記現在状態を取得する、請求項1または2に記載のフィーダ適合判断装置。
【請求項4】
実行予定の前記装着作業において供給する前記部品の複数の種類の一部に対して、前記候補フィーダの適合を判断する、請求項1~
3のいずれか一項に記載のフィーダ適合判断装置。
【請求項5】
前記固有状態は、
1)前記供給動作を行った回数を表す動作回数
2)前記供給動作が良好でなかった回数を表すエラー回数
3)前記エラー回数を前記動作回数で除算したエラー率
4)前記フィーダに実施したメンテナンスの回数を表すメンテナンス回数
5)前回の前記メンテナンスからの経過日数
のうちの一項目、または複数項目の組み合わせで示される、請求項1~
4のいずれか一項に記載のフィーダ適合判断装置。
【請求項6】
部品の装着作業を実行する部品装着機に装備されたときに前記部品の供給動作を行うフィーダの前記供給動作の信頼性に相関する指標を固有状態とし、実行予定の前記装着作業において供給する前記部品の種類に対応して前記フィーダに要求される前記固有状態である要求状態を設定する要求設定ステップと、
前記部品装着機による前記装着作業の開始以前に、
前記部品装着機に装備されているか否かに関係なくフィーダデータに登録されている全部の前記フィーダからテープリールの仕様が適合しない前記フィーダ、他の部品装着機で稼働中の前記フィーダ、およびメンテナンス実施中の前記フィーダを除外して前記部品装着機に装備される候補となる複数の候補フィーダとし、複数の前記候補フィーダの現在の前記固有状態である現在状態を取得する現状取得ステップと、
前記要求状態および前記現在状態に基づいて、
複数の前記候補フィーダの適合を判断
し、前記現在状態が前記要求状態を満たす前記フィーダを案内する適合判断ステップと、
前記部品装着機による前記装着作業の開始後に、前記部品装着機に装備された前記フィーダの前記現在状態を再度取得する再度現状取得ステップと、
前記要求状態および再度取得した前記現在状態に基づいて、前記フィーダの適合を再度判断する再度適合判断ステップと、
を備えるフィーダ適合判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着機の装着作業において供給する部品の種類と、この部品の供給動作を行うフィーダとの適合を判断するフィーダ適合判断装置、およびフィーダ適合判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実行して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業を実行する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実行する部品装着機がある。多くの部品装着機は、キャリアテープを使用して部品の供給動作を行うフィーダを交換可能に装備する。フィーダの供給動作の信頼性が低下すると、吸着ノズルで部品を吸着できない吸着エラーが発生して、部品の浪費および生産効率の低下を招く。特許文献1には、この種の吸着エラーを抑制する一技術例が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたフィーダ部品種決定方法は、位置精度測定ステップと、部品種決定ステップとを有する。位置精度測定ステップでは、フィーダの少なくとも一部について、供給位置での位置精度を測定する。部品種決定ステップでは、フィーダの位置精度と、部品の外形寸法および許容位置精度の少なくとも一方とに基づいて、フィーダとキャリアテープの部品種の組み合わせを決定する。これによれば、許容位置精度の厳しい極小部品に対しても吸着エラーを抑制でき、基板製品の生産効率を高められる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、許容位置精度の厳しい極小部品の吸着エラーを抑制できる点は好ましいが、極小部品は一般的に安価である。このため、仮に極小部品の吸着エラーが発生しても、生産が継続される場合が多く、生産効率の低下や経済的損失は軽微となる。これに対して、高価な部品は、許容位置精度の高低に関わらず、吸着エラー時の部品の廃棄が大きな経済的損失に直結する。さらに、吸着エラーの原因を調査して対策を講じることになるため、エラー対応に要する時間的損失および人的損失が大きくなりがちである。
【0006】
一方、フィーダの供給動作の信頼性は、個体差に影響されるだけでなく、現在の状態にも相関する。このため、状態が低下したフィーダを使用して高価な部品や支給数の限られた部品を供給すると、損失発生のおそれが増大する。したがって、部品の種類およびフィーダの状態を考慮して、使用するフィーダの適合を判断することが必要となる。なお、特許文献1では、供給位置での位置精度を測定するが、測定に要する時間が必要であり、かつ、手間がかかって煩わしい。
【0007】
本明細書では、少なくとも部品の廃棄による経済的損失を効果的に削減でき、その他の各種損失の削減にも資することが可能なフィーダ適合判断装置、およびフィーダ適合判断方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、部品の装着作業を実行する部品装着機に装備されたときに前記部品の供給動作を行うフィーダの前記供給動作の信頼性に相関する指標を固有状態とし、実行予定の前記装着作業において供給する前記部品の種類に対応して前記フィーダに要求される前記固有状態である要求状態を設定する要求設定部と、複数の前記フィーダのうち前記部品装着機に装備される候補となる候補フィーダの現在の前記固有状態である現在状態を取得する現状取得部と、前記要求状態および前記現在状態に基づいて、前記候補フィーダの適合を判断する適合判断部と、を備えるフィーダ適合判断装置を開示する。
【0009】
また、本明細書は、部品の装着作業を実行する部品装着機に装備されたときに前記部品の供給動作を行うフィーダの前記供給動作の信頼性に相関する指標を固有状態とし、実行予定の前記装着作業において供給する前記部品の種類に対応して前記フィーダに要求される前記固有状態である要求状態を設定する要求設定ステップと、複数の前記フィーダのうち前記部品装着機に装備される候補となる候補フィーダの現在の前記固有状態である現在状態を取得する現状取得ステップと、前記要求状態および前記現在状態に基づいて、前記候補フィーダの適合を判断する適合判断ステップと、を備えるフィーダ適合判断方法を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示するフィーダ適合判断装置やフィーダ適合判断方法では、実行予定の装着作業において供給する部品の種類に対応してフィーダに要求される要求状態を設定する。その一方で、候補となるフィーダの現在状態を取得し、要求状態および現在状態に基づいて、フィーダの適合を判断する。これによれば、高価であるなどの理由によりエラーを極力回避すべき部品の種類に対応して高い要求状態を設定し、現在状態の良好なフィーダを組み合わせて使用することができる。したがって、実際に発生するエラーを減少させることができ、少なくとも部品の廃棄による経済的損失を効果的に削減できる。さらには、エラー発生時の調査や対策に要する時間的損失および人的損失の削減や、生産効率の低下の抑制にも資することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】フィーダを使用する部品装着機の構成例を模式的に示す平面図である。
【
図2】実施形態のフィーダ適合判断装置の機能構成、および関連部分の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】フィーダ適合判断装置の動作を示す動作フローの図である。
【
図4】動作フローの実行に際して表示部に表示される要求設定画面の図である。
【
図5】動作フローの実行に際して表示部に表示される現状取得/判断画面の図である。
【
図6】フィーダ適合判断装置の装着作業開始後の動作を示す動作フローの図である。
【
図7】応用形態のフィーダ適合判断装置の動作を示す動作フローの図である。
【
図8】応用形態の動作フローの実行に際して表示部に表示されるフィーダ案内画面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.部品装着機1の構成例
まず、実施形態のフィーダ適合判断装置7(
図2参照)が適合すると判断したフィーダ3を使用する部品装着機1の構成例について説明する。
図1は、フィーダ3を使用する部品装着機1の構成例を模式的に示す平面図である。部品装着機1は、部品を基板Kに装着する装着作業を実行する。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう方向がY軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、複数のフィーダ3、部品移載装置4、部品カメラ5、および制御部6などが基台10に組み付けられて構成される。
【0013】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、および基板クランプ機構などで構成される。コンベアベルトは、基板Kを載置した状態でガイドレール21、22に沿って輪転することにより、基板Kを作業実行位置まで搬入する。基板クランプ機構は、作業実施位置の基板Kを押し上げてクランプし、位置決めする。部品の装着作業が終了すると、基板クランプ機構は基板Kを解放する。続いて、コンベアベルトは、基板Kを搬出する。
【0014】
複数のフィーダ3は、基台10上のパレット部材11に設けられた複数の溝形状のスロットに着脱可能に装備される。フィーダ3は、本体部31の前側にテープリール39が装填される。本体部31の後側寄りの上部に、部品を供給する供給位置32が設定される。テープリール39には、多数のキャビティにそれぞれ部品を収納したキャリアテープが巻回されている。フィーダ3は、図略のテープ送り機構によりキャリアテープを供給位置32まで送る。これにより、フィーダ3は、キャビティから部品を採取可能とする供給動作を順次行う。
【0015】
部品移載装置4は、基板搬送装置2やフィーダ3よりも上方に配設される。部品移載装置4は、フィーダ3から部品を採取して基板Kに装着する。部品移載装置4は、ヘッド駆動機構40、移動台44、装着ヘッド45、吸着ノズル46、およびマークカメラ47などで構成される。ヘッド駆動機構40は、一対のY軸レール41、42、Y軸スライダ43、および図略の駆動モータを含んで構成される。Y軸レール41、42は、Y軸方向に延び、相互に離隔して平行配置される。X軸方向に長いY軸スライダ43は、両方のY軸レール41、42にまたがって装架され、Y軸方向に移動する。移動台44は、Y軸スライダ43に装架され、X軸方向に移動する。ヘッド駆動機構40は、Y軸スライダ43をY軸方向に駆動するとともに、Y軸スライダ43上の移動台44をX軸方向に駆動する。
【0016】
移動台44は、装着ヘッド45およびマークカメラ47を保持する。装着ヘッド45は、1本または複数本の吸着ノズル46を下側に有する。吸着ノズル46は、図略の昇降駆動部に駆動されて昇降動作する。吸着ノズル46は、供給位置32の上方から下降し、負圧の供給により部品の吸着動作を実行する。また、吸着ノズル46は、基板Kの上方に駆動され、正圧の供給により部品の装着動作を実行する。装着ヘッド45や吸着ノズル46は、複数種類あり、自動または手動で交換される。マークカメラ47は、位置決めされた基板Kに付設された位置マークを撮像して、基板Kの正確な作業実行位置を検出する。
【0017】
部品カメラ5は、基板搬送装置2とフィーダ3との間の基台10の上面に、上向きに設けられる。部品カメラ5は、移動台44がフィーダ3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル46が吸着している状態の部品を撮像する。取得された画像データは、画像処理され、画像処理結果として部品の吸着姿勢が取得される。画像処理結果は、吸着ノズル46の装着動作に反映される。
【0018】
制御部6は、基台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御部6は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。なお、制御部6は、複数のCPUが機内に分散配置されて構成されてもよい。制御部6は、予め記憶した装着シーケンスにしたがって、部品の装着作業を制御する。装着シーケンスは、生産する基板製品の種類ごとに異なる。
【0019】
2.フィーダ3の固有状態
次に、フィーダ3の固有状態について説明する。本明細書において、フィーダ3の固有状態とは、供給動作の信頼性に相関する指標を意味する。フィーダ3の固有状態は、フィーダ3の個体の別により相違する。また、フィーダ3の固有状態は、時間の経過とともに変化し得る。例えば、フィーダ3は、部品の供給動作を行った動作回数が増加してくると、一般的にはエラーが発生しやすくなる傾向を示す。フィーダ3の現在の固有状態を現在状態Cnowと呼称する。また、使用するフィーダ3に要求される固有状態を要求状態Creqと呼称する。
【0020】
フィーダ3の固有状態は、次の五項目のうちの一項目、または複数項目の組み合わせで示される。さらに、現在状態Cnowおよび要求状態Creqも同様に示される。
1)供給動作を行った回数を表す動作回数
2)供給動作が良好でなかった回数を表すエラー回数
3)エラー回数を動作回数で除算したエラー率
4)フィーダ3に実施したメンテナンスの回数を表すメンテナンス回数
5)メンテナンスからの経過日数
【0021】
動作回数およびエラー回数は、フィーダ3の使用開始からの通算回数でもよいし、メンテナンス実施後の回数でもよい。後者の場合、動作回数およびエラー回数は、メンテナンスが実施された都度クリアされ、その後カウントアップされる。動作回数の増加に伴って摩耗や疲弊などが生じるため、フィーダ3の固有状態は低下傾向を示す。また、エラー回数が多いことは、フィーダ3の固有状態が良好でない(低い)ことを示す。
【0022】
エラー回数は、吸着エラーだけがカウントされて求められてもよい。吸着エラーは、吸着ノズル46が部品を吸着できなかったエラーであり、部品カメラ5の撮像によって判定される。一方、装着エラーは、吸着ノズル46が部品を吸着しながらも、基板Kに良好に装着できなかったエラーである。このため、エラー回数は、吸着エラーおよび装着エラーの両方がカウントされて求められてもよい。なぜなら、フィーダ3の固有状態の低下が装着エラーの原因となり得るからである。例えば、フィーダ3の供給位置32における部品の位置誤差が増加すると、吸着ノズル46は部品の所定の吸着位置を外して吸着することになる。これにより、吸着ノズル46に対する部品の位置ずれや移動途中の部品の落下などが増加して、装着エラーの原因となる。
【0023】
エラー率は、エラー回数の絶対数でなく、エラーの発生確率で表される項目である。エラー率が高いことは、フィーダ3の固有状態が良好でないことを示す。なお、エラー回数およびエラー率に代えて、装着成功回数および装着成功率を用いても、技術的意義は変わらない。
【0024】
フィーダ3のメンテナンスは、所定の推奨動作回数ごとに行われる場合が多い。要求状態Creqの一項目である動作回数は、この推奨動作回数よりも小さく設定することができる。例えば、100,000回の推奨動作回数に対し、要求状態Creqの動作回数を 20,000回以下に設定できる。また、使用頻度が低い場合などを考慮して、所定の推奨期間ごとにメンテナンスが行われる場合もある。要求状態Creqの一項目であるメンテナンスからの経過日数は、この推奨期間よりも短く設定することができる。例えば、180日の推奨期間に対し、要求状態Creqの経過日数を90日以下に設定できる。
【0025】
メンテナンスの実施により、フィーダ3の固有状態は良好に回復するが、100%の回復は難しい。したがって、メンテナンス回数が多いことは、フィーダ3の固有状態が良好でないことを示す。さらに、フィーダ3の固有状態は、メンテナンス実施後の時間経過に伴って徐々に低下する傾向がある。したがって、メンテナンスからの経過日数が長いことは、フィーダ3の固有状態が良好でないことを示す。
【0026】
上述したように、フィーダ3の固有状態は、動作回数の増加や時間の経過に伴って徐々に低下する。このため、保有されている複数のフィーダ3の現在状態Cnowは、様々にばらついている。そして、実行予定の装着作業において、現在状態Cnowの良好なフィーダ3を使用することがエラーの減少につながる。これを実現させるため、装着作業に使用するフィーダ3には、高い要求状態Creqが設定される。フィーダ3の現在状態Cnowおよび要求状態Creqは、フィーダ適合判断装置7で用いられる。
【0027】
3.実施形態のフィーダ適合判断装置7の機能構成
実施形態のフィーダ適合判断装置7の説明に移る。
図2は、実施形態のフィーダ適合判断装置7の機能構成、および関連部分の機能構成を示す機能ブロック図である。フィーダ適合判断装置7は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置を用いて構成される。本実施形態において、フィーダ適合判断装置7は、部品装着機1と別体とされている。これに限定されず、フィーダ適合判断装置7は、部品装着機1の制御部6に組み込まれていてもよい。
【0028】
図2に示されるように、フィーダ適合判断装置7および部品装着機1に対して共通に、データベース8が設けられる。データベース8は、部品データ81およびフィーダデータ82を含む。部品データ81は、部品の種類ごとに詳細なデータが保存および蓄積されて構築される。
【0029】
部品データ81は、具体的には部品の各部寸法や外観色などを表す形状データ、テープリール39やキャリアテープなどの形態を表す供給形態データ、および部品の吸着に用いる吸着ノズル46の種類や移動台44の移動速度などを表す取り扱い条件データ、などを含む。部品データ81は、部品装着機1の制御部6が装着シーケンスにしたがった制御を実行する際に参照される。
【0030】
フィーダデータ82は、フィーダ3の個体ごとに詳細なデータが保存および蓄積されて構築される。フィーダデータ82は、具体的には供給動作の履歴を表す動作履歴データSd、および実施されたメンテナンスの履歴を表すメンテナンス履歴データMdを含む。動作履歴データSdは、前述した動作回数およびエラー回数の情報を含んでいる。動作履歴データSdは、部品装着機1に装備されたフィーダ3から制御部6を介して、データベース8のフィーダデータ82に蓄積される。
【0031】
また、メンテナンス履歴データMdは、フィーダメンテナンス装置9からフィーダデータ82に蓄積される。フィーダメンテナンス装置9は、搬入されたフィーダ3を自動でメンテナンスするものである。なお、オペレータがフィーダ3をメンテナンスしてもよい。この場合、オペレータは、メンテナンス履歴データMdの入力操作を行い、フィーダデータ82に保存する。
【0032】
フィーダ適合判断装置7は、
図2に示されるように、入力部75および表示部76が付設されている。入力部75として、汎用のキーボード、マウス、およびバーコードリーダを例示でき、これらに限定されない。バーコードリーダは、フィーダ3やテープリール39に貼設されたバーコードを解読して個体を識別する。ここで、テープリール39の各々と、収納されている部品の種類との対応付けが予め行われており、対応付けの情報が部品データ81に保存される。また、表示部76として、汎用のディスプレー装置を例示でき、これに限定されない。
【0033】
フィーダ適合判断装置7は、要求設定部71、現状取得部72、および適合判断部73を備える。フィーダ適合判断装置7は、部品装着機1で実行予定の装着作業において供給する部品の複数の種類の一部のみを対象として、候補となるフィーダ3の適合を判断する。判断対象となる部品の種類は、例えば、部品単価が所定額以上という条件で採用される。この採用基準は、エラーが発生して部品を廃棄する場合の経済的損失が大きいことから定められる。
【0034】
また、支給数の限られた部品や長納期の部品の種類が、判断対象に採用されてもよい。この採用基準は、エラーが頻発して部品数が不足すると補充が難しく、時間的損失が大きいことから定められる。部品の種類を採用する採用基準は、エラーを極力回避するという観点で、他にも自由に設定することができる。
【0035】
一方、極小部品の如く単価の低い部品に対して煩雑な判断の手順を実施することは、必ずしも得策にならない。上述したように、エラーを極力回避すべき部品の種類に判断対象を絞り込むことで、判断に要する時間を短縮することができる。また、判断対象に採用しなかった部品の種類では、フィーダ3を選択する大きな自由度が残される。なお、フィーダ適合判断装置7は、供給する全部の部品を対象とすることもできる。
【0036】
要求設定部71は、判断対象に採用された部品の種類に対応して、フィーダ3に要求される要求状態Creqを設定する。要求状態Creqは、供給動作の信頼性が高くなるように適宜設定される。この設定動作は、実際にはオペレータが入力部75から入力設定操作を行うことで実行される。さらに、要求状態Creqを示す項目も、オペレータが前記された五項目の中から自由に選択設定できるようになっている。要求設定部71は、入力設定された要求状態Creqを表示部76に表示して、オペレータの確認を受ける。さらに、要求設定部71は、要求状態Creqを適合判断部73に送るとともに、部品データ81に保存する。
【0037】
さらに、部品の種類ごとに選択設定する項目数を変更したり、要求状態Creqのレベルを変えたりすることができる。例えば、特別に高価な部品の種類に対応して、五項目すべてを選択するとともに、要求状態Creqを最高レベルに設定することができる。そして、比較的高価な部品の種類に対応して、三項目を選択するとともに、要求状態Creqを中庸レベルに設定することができる。
【0038】
現状取得部72は、保有されている複数のフィーダ3のうち部品装着機1に装備される候補となるフィーダ3(候補フィーダ)の現在状態Cnowを取得する。この取得動作は、現状取得部72がフィーダデータ82にアクセスして情報を取得し、必要に応じて情報処理を行うことで実行される。現状取得部72は、取得した現在状態Cnowを適合判断部73に送る。
【0039】
このように、現状取得部72は、既存の情報の取得および処理を行って現在状態Cnowを取得することができる。したがって、フィーダ3の位置精度を測定する方法と比較して簡易であり、測定設備は不要であり、オペレータの手間も省力化され、所要時間も短くて済む。
【0040】
適合判断部73は、まず、要求設定部71から要求状態Creqを受け取り、現状取得部72から現在状態Cnowを受け取る。適合判断部73は、次に、要求状態Creqと現在状態Cnowを比較して、候補となるフィーダ3の適合を判断する。詳細には、適合判断部73は、現在状態Cnowが要求状態Creqを満たす場合に、実行予定の装着作業におけるフィーダ3の使用を許容する。また、適合判断部73は、現在状態Cnowが要求状態Creqを満たさない場合に、実行予定の装着作業におけるフィーダ3の使用を禁止する。適合判断部73は、判断結果Jを表示部76に表示して、オペレータに通知する。
【0041】
4.実施形態のフィーダ適合判断装置7の動作
次に、実施形態のフィーダ適合判断装置7の動作について説明する。
図3は、フィーダ適合判断装置7の動作を示す動作フローの図である。この動作フローは、一部オペレータの操作や作業も含んでいる。
図4は、動作フローの実行に際して表示部76に表示される要求設定画面Dsp1の図である。
図5は、動作フローの実行に際して表示部76に表示される現状取得/判断画面Dsp2の図である。
図4および
図5に矩形で示された表示欄は、当初空欄であり、動作フローの中で表示内容が定まって表示される。
【0042】
図4の要求設定画面Dsp1の上部には、部品の種類の表示欄が設けられる。具体的には、テープリール39に付設されたリールバーコードの表示欄、および部品ナンバーの表示欄が設けられる。この表示欄は、いずれか一方だけでもよいし、逆に、部品の種類に付属するその他の情報が併せて表示されてもよい。
【0043】
部品の種類の表示欄の下側には、表示された部品の種類を判断対象に採用するか否かを入力するスイッチSW1およびスイッチSW2が設けられる。スイッチSW1は、「はい」と表記されており、判断対象に採用するスイッチである。スイッチSW2は、「いいえ」と表記されており、判断対象から除外するスイッチである。スイッチSW1およびスイッチSW2は、入力部75のマウスのカーソルを重ねてクリックすることにより選択操作されるソフトウェアスイッチである。なお、後述する複数のスイッチ(SW11、SW12、SW13、SW14、SW15、SW21、SW31、SW32、SW33、SW41、SW42、SW51、SW52)は、スイッチSW1およびスイッチSW2と同様のソフトウェアスイッチである。
【0044】
さらに、要求設定画面Dsp1の下部には、要求状態Creqを示す五項目の項目表記欄が設けられる。そして、各項目の前側には、スイッチ(SW11、SW12、SW13、SW14、SW15)がそれぞれ設けられる。また、各項目の後側には、要求値の表示欄がそれぞれ設けられる。スイッチ(SW11、SW12、SW13、SW14、SW15)にチェックマークが入力されることにより、当該の項目が要求状態Creqとして選択される。
【0045】
また、選択された項目に対して、要求値の表示欄への入力が可能となる。なお、動作回数のみは、要求値の下限(~回以上)および上限(~回以下)の2欄が設けられている。要求設定画面Dsp1の下端には、現状取得/判断画面Dsp2に移行するために、「次へ」と表記されたスイッチSW21が設けられる。
【0046】
図5の現状取得/判断画面Dsp2の上部には、候補となるフィーダ3を選択する表示欄が設けられる。具体的には、フィーダIDの表示欄、およびフィーダ名の表示欄が設けられる。その下側には、選択されたフィーダ3の現在状態Cnowを示す五項目の項目表記欄が設けられる。そして、各項目の後側には、現在値の表示欄がそれぞれ設けられる。さらに、その後側には、現在状態Cnowの各項目が要求状態Creqを満たしているか否かを示す適合の表示欄がそれぞれ設けられる。適合の表示欄は、選択されていない項目では空欄とされ、選択された項目では適合を表す○印、または不適合を表す×印が表示される。
【0047】
現状取得/判断画面Dsp2の下部には、判断結果を表示する「使用許可」および「使用禁止」の表示欄が設けられる。現状取得/判断画面Dsp2の下端には、「次の部品」と表記されたスイッチSW31、「フィーダの変更」と表記されたスイッチSW32、および、「要求状態の変更」と表記されたスイッチSW33が設けられる。
【0048】
スイッチSW31は、次の部品を対象として、要求設定画面Dsp1に戻るスイッチである。スイッチSW32は、フィーダ3を選択し直すスイッチである。スイッチSW33は、部品を変更しないで要求状態Creqを変更するために、要求設定画面Dsp1に戻るスイッチである。
【0049】
図3の動作フローのステップS1で、オペレータは、部品装着機1で実行予定の装着作業を設定する。換言すると、オペレータは、制御部6に記憶させて実行させる装着シーケンスを選択設定する。この設定により、
図4の要求設定画面Dsp1が表示部76に表示される。次のステップS2で、フィーダ適合判断装置7は、装着シーケンスに記述された最初の部品を選択して、その種類を特定する。これにより、部品の種類を表す部品ナンバー「P0011」が自動的に表示される。さらに、部品データ81に保存された対応付けの情報が検索されて、ひとつまたは複数のリールバーコードが表示される。
【0050】
なお、フィーダ適合判断装置7が最初の部品を自動で選択するのでなく、オペレータが選択操作を行ってもよい。この場合、オペレータは、入力部75のバーコードリーダまたはキーボードを用いてリールバーコードを入力する。また、手元にテープリール39が無い場合でも、オペレータは、部品ナンバーを入力すればよい。
【0051】
次のステップS3で、オペレータは、表示された部品の種類を判断対象に採用するか否かを判断して、スイッチSW1またはスイッチSW2を選択操作する。判断対象に採用した場合のステップS4で、フィーダ適合判断装置7の要求設定部71は、要求状態Creqを設定する。具体的には、オペレータが要求設定画面Dsp1の所望する項目のスイッチ(SW11、SW12、SW13、SW14、SW15)にチェックマークを入力し、次いで要求値を入力する。この入力操作にしたがって、要求設定部71は設定動作を行う。仮に表示されている要求値が誤っている場合、オペレータは要求値を変更入力できる。ステップS4は、要求設定ステップに相当する。
【0052】
図4の例で、三つのスイッチ(SW11、SW13、SW15)にチェックマークが入力されている。つまり、所望する項目として動作回数、エラー率、およびメンテナンスからの経過日数が選択されている。そして、動作回数の要求値は、0回以上で 20,000回以下に設定されている。また、エラー率の要求値は、0.2%以下に設定されている。さらに、メンテナンスからの経過日数の要求値は、90日以内に設定されている。
【0053】
なお、動作回数に下限値を設けたのは、フィーダ3の初期故障型の不具合が懸念される場合を想定したものである。例えば、動作回数の要求値を 1,000回以上と設定することにより、実際の動作回数の僅少なフィーダ3を除外して、動作回数 1,000回以上の安定したフィーダ3を使用することができる。
【0054】
次に、オペレータがスイッチSW21を選択操作すると、動作フローの実行は、ステップS5に進められる。このとき、
図5の現状取得/判断画面Dsp2が表示部76に表示される。ステップS5で、オペレータは、部品装着機1に装備する候補となるフィーダ3を選択する。具体的に、オペレータは、候補となる手持ちのフィーダ3に貼設されたバーコードを入力部75のバーコードリーダに読み取らせる。または、オペレータは、キーボードを用いてフィーダIDを入力する。あるいは、オペレータは、フィーダデータ82に登録されている全部のフィーダの一覧表(図略)から1台のフィーダ3を選択する。これにより、現状取得/判断画面Dsp2の例では、フィーダID「FN-0201」およびフィーダ名「狭幅用02」が表示される。
【0055】
次のステップS6で、現状取得部72は、表示されているフィーダ3の現在状態Cnowを取得する。取得された現在状態Cnowは、現在値の表示欄に表示される。
図5の例で、動作回数の現在値 2,000回、およびエラー回数の現在値1回が表示される。さらに、現状取得部72は、エラー回数を動作回数で除算して、エラー率 0.05%を求め、表示する。また、メンテナンス回数の現在値3回、およびメンテナンスからの経過日数の現在値40日が表示される。ステップS6は、現状取得ステップに相当する。
【0056】
次のステップS7で、適合判断部73は、要求状態Creqと現在状態Cnowを比較して、フィーダ3の適合を判断する。適合判断部73は、まず、選択されている三項目の各々について、現在状態Cnowが要求状態Creqを満たすか否かを判断する。
図5の例では、選択された動作回数、エラー率、およびメンテナンスからの経過日数の各項目で、条件が満たされている。したがって、3箇所の適合の表示欄には、適合を表す○印が表示される。
【0057】
適合判断部73は、次に、適合の表示欄に不適合を表す×印が無ければ当該フィーダ3の使用を許可し、1個でも×印が有れば当該フィーダ3の使用を禁止する。適合判断部73は、最終的な判断結果Jを現状取得/判断画面Dsp2の下部に表示する。
図5の例では、「使用許可」が高輝度で表示され、当該フィーダ3の使用が許可される。適合と判断されて使用が許可された場合のステップS21で、オペレータは、当該の部品の種類と当該フィーダ3とを対応付ける。すなわち、当該の部品を収納したテープリール39を当該フィーダ3に装填する。ステップS7は、適合判断ステップに相当する。
【0058】
ステップS7で不適合と判断された場合には、「使用禁止」が高輝度で表示される。この場合、オペレータは、スイッチSW32を選択操作する。これにより、動作フローの実行はステップS5に戻される。2度目のステップS5で、オペレータは、フィーダ3を変更選択することができるようになる。具体的に、オペレータは、手持ちの次のフィーダ3、または、フィーダ3の一覧表の次のフィーダ3を選択する。以下、適合するフィーダ3が見つかるまで、ステップS5からステップS7までのループ動作が繰り返される。
【0059】
しかしながら、要求状態Creqのレベルが高過ぎたりすると、適合するフィーダ3が存在しない場合が生じる。この場合、オペレータは、スイッチSW33を選択操作する。すると、動作フローの実行はステップS4に戻される(
図3の破線の矢印参照)。これにより、要求設定画面Dsp1が再表示されて、要求状態Creqを変更設定できるようになる。この後、変更された要求状態Creqに基づいて、ステップS5からステップS7までが再度実行される。
【0060】
また、ステップS3で、オペレータが表示された部品の種類を判断対象から除外した場合、動作フローの実行はステップS8に分岐される。ステップS8で、オペレータは、要求状態Creqや現在状態Cnowを特に考慮せず、使用するフィーダ3を決定してよい。この後、動作フローの実行は、ステップS21に合流される。
【0061】
ステップS21に続くステップS22で、オペレータは、スイッチSW31を選択操作する。フィーダ適合判断装置7は、装着シーケンスに記述された全部の部品に対応する動作が終了したか否かを判定する。終了していない場合、動作フローの実行はステップS2に戻される。2回目以降のステップS2で、フィーダ適合判断装置7は、装着シーケンスに記述された2番目以降の部品を選択する。これ以降、全部の部品に対する動作フローが繰り返して実行される。
【0062】
ステップS22で、全部の部品に対応する動作が終了している場合、動作フローの実行はステップS23に進められる。この時点で、全部の部品のテープリール39がフィーダ3に装填済みとなっており、装着作業の準備が整っている。したがって、部品装着機1は装着作業を開始できる状態となり、動作フローは終了する。
【0063】
実施形態のフィーダ適合判断装置7では、実行予定の装着作業において供給する部品の種類に対応してフィーダ3に要求される要求状態Creqを設定する。その一方で、候補となるフィーダ3の現在状態Cnowを取得し、要求状態Creqおよび現在状態Cnowに基づいて、フィーダ3の適合を判断する。これによれば、高価であるなどの理由によりエラーを極力回避すべき部品の種類に対応して高い要求状態Creqを設定し、現在状態Cnowの良好なフィーダ3を組み合わせて使用することができる。したがって、実際に発生するエラーを減少させることができ、少なくとも部品の廃棄による経済的損失を効果的に削減できる。さらには、エラー発生時の調査や対策に要する時間的損失および人的損失の削減や、生産効率の低下の抑制にも資することが可能となる。
【0064】
5.フィーダ適合判断装置7の装着作業開始後の動作
次に、フィーダ適合判断装置7の装着作業開始後の動作について説明する。フィーダ適合判断装置7は、装着作業開始以前に動作するが、装着作業開始後に動作することは必須でない。それでも、装着作業の途中でエラーが発生した場合などに、フィーダ適合判断装置7は、その時点でフィーダ3が適合しているか否かを再度判断するように動作してもよい。
図6は、フィーダ適合判断装置7の装着作業開始後の動作を示す動作フローの図である。
【0065】
図6のステップS31で、部品装着機1は装着作業を実行する。このとき、部品装着機1に装備されたフィーダ3は、部品の供給動作を実行する。次のステップS32で、フィーダ適合判断装置7は、フィーダ3のエラーを監視する。エラーが発生しない間、ステップS31およびステップS32からなるループ動作が継続され、基板製品の生産が進捗する。エラーが発生すると、動作フローの実行は、ステップS33に進められる。
【0066】
ステップS33で、オペレータは、エラーを発生させた当該フィーダ3を目視により調査する。調査項目として、テープリール39の装填状態、キャリアテープの送り状態やカバーテープの剥離状態、フィーダ3のエラー表示や内部状態などがある。次のステップS34で、調査の結果に基づいて、動作フローの実行が分岐される。調査で異常が見つからなかった場合のステップS35で、フィーダ適合判断装置7は、当該フィーダ3から供給される部品の種類が判断対象に採用されているか否かを判定する。
【0067】
判断対象から除外されている場合、動作フローの実行はステップS31に戻されて、装着作業が継続される。判断対象に採用されている場合のステップS36で、現状取得部72は、当該フィーダ3の現在状態Cnowを再度取得する。ここで、装着作業が実行されたことにより、当該フィーダ3の現在状態Cnowは、装着作業開始以前から変化している。
【0068】
次のステップS37で、適合判断部73は、再度取得した現在状態Cnowと、部品データ81に保存された要求状態Creqとを比較して、適合しているか否かを判断する。例えば、エラーが発生した時点で、現在状態Cnowのエラー回数が増加して、要求状態Creqを満たさなくなる場合が生じ得る。また例えば、現在状態Cnowの動作回数やメンテナンスからの経過日数が増加していて、要求状態Creqを満たしていない場合が生じ得る。
【0069】
適合している場合、動作フローの実行はステップS31に戻されて、装着作業が継続される。適合していない場合のステップS38で、適合判断部73は、フィーダ3を交換するように案内する。また、ステップS34で異常が有った場合にも、動作フローの実行はステップS38に進められる。次のステップS39で、部品装着機1は停止して、フィーダ3の交換作業が終了するまで待機する。
【0070】
フィーダ適合判断装置7が装着作業開始後に動作することで、フィーダ3の時間的に変化する現在状態Cnowに応じて、再度判断を行うことができる。これにより、実際に発生するエラーをさらに一層確実に減少させることができ、部品の廃棄による経済的損失をさらに一層確実に削減できる。
【0071】
6.応用形態のフィーダ適合判断装置7
次に、応用形態のフィーダ適合判断装置7について説明する。応用形態では、動作フローの一部が変形される。
図7は、応用形態のフィーダ適合判断装置7の動作を示す動作フローの図である。
図7を
図3と比較すればわかるように、実施形態のステップS5からステップS7までが、応用形態のステップS11からステップS14までに置き換えられる。これに伴い、
図5の現状取得/判断画面Dsp2に代えて、
図8に示される画面が使用される。
図8は、応用形態の動作フローの実行に際して表示部76に表示されるフィーダ案内画面Dsp3の図である。
【0072】
図7の動作フローのステップS1~ステップS4で、判断対象に採用された部品の種類に対応して、要求状態Creqが設定される。次のステップS11で、現状取得部72は、フィーダデータ82に登録されている全部のフィーダ3のうちから候補となる複数のフィーダ3(候補フィーダ)を選択する。
【0073】
例えば、現状取得部72は、テープリール39の仕様、例えばリール直径やキャリアテープの幅寸法が適合しないフィーダ3を除外する。さらに、現状取得部72は、他の部品装着機で稼働中のフィーダ3や、メンテナンス実施中のフィーダ3を除外する。そして、現状取得部72は、除外した以外の多数のフィーダ3を候補に選択する。次のステップS12で、現状取得部72は、選択した複数のフィーダ3の現在状態Cnowを取得する。
【0074】
取得された現在状態Cnowは、
図8のフィーダ案内画面Dsp3に一覧表示される。
図8の例では、フィーダIDが「FN-0201」、「FN-0202」、および「FN-0301」の3台のフィーダ3の現在状態Cnowが表示されている。一覧表は、左スクロールを行うスイッチSW41、および右スクロールを行うスイッチSW42が選択操作されることで、表示内容が移動する。これにより、4台目以降のフィーダ3の現在状態Cnowが表示される。ステップS12は、現状取得ステップに相当する。
【0075】
次のステップS13で、適合判断部73は、複数のフィーダ3の適合を判断する。適合判断部73は、まず、選択されているそれぞれの項目について、現在状態Cnowが要求状態Creqを満たすか否かをフィーダ3ごとに判断する。
図8の例では、フィーダID「FN-0202」のフィーダ3において、メンテナンスの経過日数が120日と、要求値の90日以内を満たしていない。したがって、不適合を表す×印が表示欄内に示される。そして、他の適合している項目については、適合を表す○印が表示欄内に示される。
【0076】
適合判断部73は、次に、×印が無いフィーダ3の使用を許可し、1個でも×印が有るフィーダ3の使用を禁止する。適合判断部73は、最終的に、判断結果Jを一覧表の最下段に表示する。
図8の例で、フィーダID「FN-0201」および「FN-0301」のフィーダ3には「許可」が表示され、フィーダID「FN-0202」のフィーダ3には「禁止」が表示される。換言すると、適合判断部73は、現在状態Cnowが要求状態Creqを満たすフィーダ3を案内する。ステップS13は、適合判断ステップに相当する。
【0077】
なお、フィーダ案内画面Dsp3において、使用を許可するフィーダ3を優先的に前側に表示し、使用を禁止するフィーダ3を後側に表示してもよい。また、現状取得部72は、他の部品装着機で稼働中のフィーダ3や、メンテナンス実施中のフィーダ3を除外しない別法を用いることができる。別法において、適合判断部73は、当該のフィーダ3の現在状態Cnowが要求状態Creqを満たす場合に、他の部品装着機における稼働やメンテナンスが終了した後の使用を許可する。
【0078】
次のステップS14で、オペレータは、使用が許可されたフィーダ3の中の1台を決定する。次のステップS21で、オペレータは、当該の部品の種類と決定したフィーダ3とを対応付ける。すなわち、当該の部品を収納したテープリール39を決定したフィーダ3に装填する。次のステップS22で、オペレータは、「次の部品」と表記されたスイッチSW51を選択操作する。フィーダ適合判断装置7は、装着シーケンスに記述された全部の部品に対応する動作が終了したか否かを判定して、動作フローの実行をステップS2に戻すか、または、ステップS23に進める。
【0079】
なお、要求状態Creqのレベルが高過ぎて適合するフィーダ3が存在せず、ステップS14を実行できない場合も生じる。この場合、オペレータは、「要求状態の変更」と表記されたスイッチSW52を選択操作する。すると、
図7には省略されているが、動作フローの実行はステップS14からステップS4に戻される。これにより、要求設定画面Dsp1が再表示されて、要求状態Creqを変更設定できるようになる。この後、変更された要求状態Creqに基づいて、ステップS11からステップS14までが再度実行される。
【0080】
応用形態のフィーダ適合判断装置7では、候補となる複数のフィーダ3を判断対象とし、一括して使用可否を判断するので、判断の処理が効率的になる。反面、使用許可されたフィーダ3の所在が不明であったりするおそれが生じる。所在が明らかなフィーダ3を使用するという観点では、実施形態にて例示した手持ちのフィーダ3の適合を判断することが好ましい。
【0081】
7.実施形態のその他の応用および変形
なお、実施形態において、フィーダ適合判断装置7は、装着作業開始後のエラーの発生で実質的に動作するが、これに限定されない。例えば、現状取得部72は、装着作業開始後にフィーダ3の現在状態Cnowを定期的に取得し、適合判断部73は、定期的に判断を行うように構成してもよい。これによれば、例えば、フィーダ3の動作回数の現在値が徐々に増加して要求値の 20,000回を超過した時点で、適合判断部73は、エラーの発生に関係なくフィーダ3の交換を案内することができる。
【0082】
また、実施形態で説明したフィーダ適合判断装置7とオペレータの役割分担は一例であって、フィーダ適合判断装置7のさらなる自動化も可能である。これに伴い、表示部76に表示される画面(要求設定画面Dsp1、現状取得/判断画面Dsp2、フィーダ案内画面Dsp3)も、適宜変更可能である。また、実施形態のフィーダ適合判断装置7は、実施形態のフィーダ適合判断方法として実施することもできる。その他にも、実施形態および応用形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1:部品装着機 3:フィーダ 6:制御部 7:フィーダ適合判断装置 71:要求設定部 72:現状取得部 73:適合判断部 75:入力部 76:表示部 8:データベース 81:部品データ 82:フィーダデータ 9:フィーダメンテナンス装置 Creq:要求状態 Cnow:現在状態 Sd:動作履歴データ Md:メンテナンス履歴データ J:判断結果