(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】良否確認システム及びブリスタ包装システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20230906BHJP
B65B 57/02 20060101ALI20230906BHJP
B65B 57/10 20060101ALI20230906BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G01N21/85 A
B65B57/02 D
B65B57/10 A
B65D75/36
(21)【出願番号】P 2021029499
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】大谷 剛将
(72)【発明者】
【氏名】井野口 禎
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063994(JP,A)
【文献】特開2013-049453(JP,A)
【文献】特開2006-214814(JP,A)
【文献】特開2000-186915(JP,A)
【文献】特開2015-166053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/85
B65B 57/02
B65B 57/10
B65D 75/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内容物が収容されてなるシート状包装体におけるシート部分、及び、前記内容物のうちの少なくとも一方を確認対象物とした、該確認対象物の良否確認システムであって、
個々のシート状包装体について、シート状包装体を識別するための個体識別情報と前記確認対象物の良否判定結果とを対応付けて記憶する統合システムと、
前記確認対象物の良否判定結果に係る情報を表示可能な表示手段と、
外部から前記個体識別情報を取得するための識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段により取得された前記個体識別情報を利用して、前記統合システムから、該個体識別情報に対応するシート状包装体に係る前記確認対象物の良否判定結果を受け取り可能な判定結果受取手段と、
前記表示手段において、前記判定結果受取手段により受け取られた前記確認対象物の良否判定結果に係る情報を表示させる表示制御手段とを有し、
前記内容物は、収容時の向きに応じてシート状包装体の表側から見たときにおける収容状態が少なくとも二種類の異なる状態となり、かつ、シート状包装体により収容されているときに前記収容状態が維持されるものであり、
前記個体識別情報は、少なくとも複数の前記内容物に係る複数の前記収容状態に基づくものであることを特徴とする良否確認システム。
【請求項2】
前記個体識別情報は、少なくとも、複数の前記内容物に係る複数の前記収容状態と、複数のシート状包装体に対し共通で設けられた情報表示部のシート状包装体における相対位置とに基づくものであることを特徴とする請求項1に記載の良否確認システム。
【請求項3】
前記識別情報取得手段は、
シート状包装体を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像データに基づき、該画像データに係るシート状包装体の前記個体識別情報を認識可能な識別情報認識手段とを備えるとともに、
前記識別情報認識手段による前記個体識別情報の認識により、前記個体識別情報を取得するように構成されており、
前記識別情報認識手段は、少なくとも前記画像データにおける前記内容物に係る前記収容状態を利用して、前記個体識別情報を認識可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の良否確認システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の良否確認システムと、
シート状包装体として、容器フィルムのポケット部に前記内容物が収容された状態で、該ポケット部の開口を塞ぐようにして前記容器フィルムにカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するブリスタ包装機とを備えたブリスタ包装システムであって、
前記ブリスタ包装機は、
前記容器フィルムの前記ポケット部に前記内容物を充填する充填手段と、
前記ポケット部に前記内容物が収容された前記容器フィルムに対し、前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなるブリスタフィルムを切離してブリスタシートを得る切離手段と、
前記充填手段及び前記切離手段の間において、少なくとも前記確認対象物を撮像可能な検査用撮像手段と、
前記検査用撮像手段により取得された画像データに基づき前記確認対象物の良否を判定する良否判定手段とを有し、
前記統合システムは、前記良否判定手段による前記確認対象物の良否判定結果を記憶し、
前記表示制御手段は、前記表示手段において、前記検査用撮像手段により得られた画像データを表示可能に構成されていることを特徴とするブリスタ包装システム。
【請求項5】
前記検査用撮像手段により取得された画像データに基づき、該画像データに係るシート状包装体の前記個体識別情報を特定する識別情報特定手段を備え、
前記統合システムは、前記識別情報特定手段により特定された前記固体識別情報を記憶することを特徴とする請求項4に記載のブリスタ包装システム。
【請求項6】
前記充填手段を制御し、前記ポケット部に充填される前記内容物の向きを変動させることで、個々の前記内容物に係る前記収容状態を制御可能な収容状態制御手段を備えることを特徴とする請求項4に記載のブリスタ包装システム。
【請求項7】
前記統合システムに記憶する前記個体識別情報は、前記収容状態制御手段による前記充填手段の制御に係る情報に基づくものであることを特徴とする請求項6に記載のブリスタ包装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容してなるシート状包装体におけるシート部分や内容物の良否を確認するための良否確認システム、及び、該システム及びブリスタ包装機を有してなるブリスタ包装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブリスタシートやSP(Strip Package)包装体など、錠剤やカプセル錠などの各種内容物を収容してなるシート状包装体が広く知られている。
【0003】
シート状包装体の製造過程においては、所定の検査装置を用いて内容物やシート部分の良否を判定することで、シート状包装体の良否が判定される。不良判定に係るシート状包装体(不良シート)は、例えば所定の排出手段により排出されて不良品用のホッパなどに貯留される。
【0004】
ところで、検査が正常に行われているか否かの確認等を行うために、作業者が、目視等により不良シートにおける不良内容を特定するとともに、特定された不良内容と検査装置による良否判定結果とを比較するといったことが行われることがある。また、生産コストの増大抑制を図るために、不良シートから良品の内容物を取出して回収するといったことが行われることがある。内容物の取出・回収は、例えば手作業で行われる。
【0005】
ここで、目視等により特定された不良内容と検査装置による良否判定結果とを比較したり、良品の内容物を取出して回収したりする等の、不良シートを対象とした各種作業を行うためには、不良シートに係る良否判定結果を個別に知る必要がある。
【0006】
この点、従前においては、所定の格納装置に不良シートを積み重ねて格納し、格納装置からの不良シートの排出が要求されたときに、最も下に位置する不良シートが格納装置から排出されるとともに、所定の表示装置において、排出された不良シートに係る良否判定結果を表示させる装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。より詳しくは、該装置では、シート状包装体ごとに通し番号が設定されており、不良シートにおける該通し番号と、格納装置からの排出順に係る番号(排出順番号)とが関連付けて記憶されている。また、通し番号と良否判定結果とが関連付けて記憶されている。そして、不良シートの排出が要求されると、格納装置からの排出回数と同数となる排出順番号が特定されるとともに、特定された排出順番号に関連付けられた通し番号が特定される。そして、特定された通し番号に関連付けられた良否判定結果が、表示装置にて表示される。これにより、排出された不良シートに係る良否判定結果を表示させることが可能となっている。
【0007】
また近年では、個々のシート状包装体に対し、これらを個別に識別するための識別用タグ情報を設けておき、識別用タグ情報を読み取ることで、その識別用タグ情報が付されたシート状包装体の良否判定結果を表示させるシステムが知られている(例えば、特許文献2等参照)。このシステムでは、識別用タグ情報と良否判定結果とが対応付けて記憶されており、MRメガネにより識別用タグ情報を読み取ることで、該MRメガネにおける透過表示領域にて良否判定結果を表示させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-21759号公報
【文献】特開2020-63994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1に記載の装置では、機械的なトラブルや作業者の不適切な行動(装置のメーカ側で想定していない行動)により、排出された不良シートと表示される良否判定結果との対応関係が不正確になるおそれがある。例えば、本来最も下に位置するはずの不良シートが格納装置に格納されていないといった事態が生じた場合、格納された不良シートと良否判定結果とが1つずつずれた状態となる。このような状態になると、不良シートが排出されたときに、該不良シートとは異なる不良シートに係る良否判定結果が誤って表示されることになってしまう。
【0010】
また、上記特許文献2に記載のシステムでは、個々のシート状包装体に対し、これらを識別するための情報(識別用タグ情報)を設ける必要がある。そのため、シート状包装体の製造に係るコストの増大を招くおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シート状包装体と良否判定結果との対応関係が不正確になることをより確実に防止可能であるとともに、個々のシート状包装体に対しこれらを識別するための情報を設ける必要のない良否確認システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0013】
手段1.複数の内容物が収容されてなるシート状包装体におけるシート部分、及び、前記内容物のうちの少なくとも一方を確認対象物とした、該確認対象物の良否確認システムであって、
個々のシート状包装体について、シート状包装体を識別するための個体識別情報と前記確認対象物の良否判定結果とを対応付けて記憶する統合システムと、
前記確認対象物の良否判定結果に係る情報を表示可能な表示手段と、
外部から前記個体識別情報を取得するための識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段により取得された前記個体識別情報を利用して、前記統合システムから、該個体識別情報に対応するシート状包装体に係る前記確認対象物の良否判定結果を受け取り可能な判定結果受取手段と、
前記表示手段において、前記判定結果受取手段により受け取られた前記確認対象物の良否判定結果に係る情報を表示させる表示制御手段とを有し、
前記内容物は、収容時の向きに応じてシート状包装体の表側から見たときにおける収容状態が少なくとも二種類の異なる状態となり、かつ、シート状包装体により収容されているときに前記収容状態が維持されるものであり、
前記個体識別情報は、少なくとも複数の前記内容物に係る複数の前記収容状態に基づくものであることを特徴とする良否確認システム。
【0014】
尚、「内容物」としては、印刷・刻印の内容や形状、色などの相違により表裏の区別が付く錠剤や、印刷の内容や形状、色などの相違によりボディ及びキャップの区別が付くカプセル錠等を挙げることができる。
【0015】
上記手段1によれば、内容物は、収容時の向きに応じてシート状包装体を表側から見たときにおける収容状態が少なくとも二種類の異なる状態となり、かつ、シート状包装体に収容された状態において、その収容状態が維持されるものとされる。そして、シート状包装体を識別するための個体識別情報は、少なくとも複数の内容物に係る複数の収容状態に基づくものとされる。例えば、内容物が表裏の区別の付く錠剤である場合、1の錠剤に係る収容状態としては、シート状包装体を表側から見たときに、該錠剤の表面を視認可能な状態と該錠剤の裏面を視認可能な状態とが想定されるところ、個体識別情報は、少なくとも各錠剤におけるこのような収容状態の相違に基づくものとされる。
【0016】
つまり、上記手段1によれば、いわば個々のシート状包装体の個性と言える内容物の収容状態を個体識別情報として利用する。そのため、個々のシート状包装体を識別するために、個々のシート状包装体に対しこれらを識別するための情報を設ける必要がない。また、識別用タグ情報などの識別用の情報を別途付与するための手段を設ける必要もない。これにより、シート状包装体の製造に係るコストの増大や設備の大型化を効果的に抑制することができる。
【0017】
また、統合システムでは、個々のシート状包装体について、個体識別情報と確認対象物(シート部分や内容物)の良否判定結果とが対応付けて記憶される。そのため、個体識別情報を利用して、シート状包装体及び良否判定結果を確実に紐付けることができる。これにより、シート状包装体と良否判定結果との対応関係が不正確になることをより確実に防止できる。
【0018】
加えて、例えば外部から個体識別情報が入力されること等により、識別情報取得手段によって個体識別情報が取得されると、表示手段にて、該個体識別情報に係る良否判定結果の情報を表示させることができる。従って、目視等により不良品のシート状包装体における不良内容を特定した上で、特定された不良内容と良否判定結果とを比較するといった作業を容易に行うことができる。また、良否判定結果に基づき良品の内容物と不良品の内容物とを簡便に区別することができるため、良品の内容物を取出して回収するといった作業を容易に行うことができる。
【0019】
手段2.前記個体識別情報は、少なくとも、複数の前記内容物に係る複数の前記収容状態と、複数のシート状包装体に対し共通で設けられた情報表示部のシート状包装体における相対位置とに基づくものであることを特徴とする手段1に記載の良否確認システム。
【0020】
上記手段2によれば、個体識別情報は、少なくとも、内容物に係る収容状態と、複数のシート状包装体に共通で設けられた情報表示部(例えば、「製品名」等の内容物に関する情報を示す表示部)の相対位置とに基づくものとされる。従って、個体識別情報が収容状態のみに基づく場合と比べて、個体識別情報の種類をより多くすることができる。これにより、複数のシート状包装体において個体識別情報が偶然一致するといった事態をより確実に防止することができる。その結果、統合システムに記憶された複数のシート状包装体に係る良否判定結果の中から、目当てのシート状包袋体に係る良否判定結果をより確実に抽出し、表示手段にてその良否判定結果に係る情報をより確実に表示させることができる。
【0021】
手段3.前記識別情報取得手段は、
シート状包装体を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像データに基づき、該画像データに係るシート状包装体の前記個体識別情報を認識可能な識別情報認識手段とを備えるとともに、
前記識別情報認識手段による前記個体識別情報の認識により、前記個体識別情報を取得するように構成されており、
前記識別情報認識手段は、少なくとも前記画像データにおける前記内容物に係る前記収容状態を利用して、前記個体識別情報を認識可能であることを特徴とする手段1又は2に記載の良否確認システム。
【0022】
上記手段3によれば、撮像手段により得られた画像データにおける収容状態を利用して、該画像データに係るシート状包装体の個体識別情報が認識されて、該個体識別情報が取得される。従って、良否判定結果に係る情報を表示させるための個体識別情報の取得にあたっては、手作業で個体識別情報を入力する等の必要はなく、撮像手段によりシート状包装体を撮像すれば済む。これにより、作業性や利便性を向上させることができる。また、個体識別情報の入力ミスなどに伴い、本来表示させるべき良否判定結果とは異なる良否判定結果が表示されることをより確実に防止できる。
【0023】
手段4.手段1乃至3のいずれかに記載の良否確認システムと、
シート状包装体として、容器フィルムのポケット部に前記内容物が収容された状態で、該ポケット部の開口を塞ぐようにして前記容器フィルムにカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するブリスタ包装機とを備えたブリスタ包装システムであって、
前記ブリスタ包装機は、
前記容器フィルムの前記ポケット部に前記内容物を充填する充填手段と、
前記ポケット部に前記内容物が収容された前記容器フィルムに対し、前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなるブリスタフィルムを切離してブリスタシートを得る切離手段と、
前記充填手段及び前記切離手段の間において、少なくとも前記確認対象物を撮像可能な検査用撮像手段と、
前記検査用撮像手段により取得された画像データに基づき前記確認対象物の良否を判定する良否判定手段とを有し、
前記統合システムは、前記良否判定手段による前記確認対象物の良否判定結果を記憶し、
前記表示制御手段は、前記表示手段において、前記検査用撮像手段により得られた画像データを表示可能に構成されていることを特徴とするブリスタ包装システム。
【0024】
上記手段4によれば、表示手段において、良否判定に用いられた画像データを表示させることができる。そのため、良否判定結果及び画像データを確認しながら作業を行うことができ、作業性や利便性を一層向上させることができる。
【0025】
また、良否判定結果に用いられた画像データとシート状包装体の実物とを比較することで、良否判定結果に係る情報として、該シート状包装体に係るものが表示されているか(該シート状包装体と異なるシート状包装体に係る情報が誤って表示されていないか)を確認することができる。これにより、誤った良否判定結果に基づき不適切な作業が行われることをより確実に防止できる。
【0026】
手段5.前記検査用撮像手段により取得された画像データに基づき、該画像データに係るシート状包装体の前記個体識別情報を特定する識別情報特定手段を備え、
前記統合システムは、前記識別情報特定手段により特定された前記固体識別情報を記憶することを特徴とする手段4に記載のブリスタ包装システム。
【0027】
上記手段5によれば、識別情報特定手段によって、検査用撮像手段により撮像された画像データに基づき、該画像データに係るシート状包装体の個体識別情報が特定される。そして、統合システムは、識別情報特定手段によって特定された個体識別情報を記憶する。従って、統合システムに記憶する個体識別情報を実際のシート状包装体から自動的に得ることができる。
【0028】
また、統合システムに記憶する個体識別情報は、良否判定に用いられる画像データに基づき取得されるため、該個体識別情報を取得するための特別なデータが不要となる。これにより、システムの簡素化を図ることができる。
【0029】
手段6.前記充填手段を制御し、前記ポケット部に充填される前記内容物の向きを変動させることで、個々の前記内容物に係る前記収容状態を制御可能な収容状態制御手段を備えることを特徴とする手段4に記載のブリスタ包装システム。
【0030】
上記手段6によれば、収容状態制御手段によって、個々の内容物に係る収容状態を制御することができる。従って、シート状包装体ごとに、収容状態ひいては個体識別情報を個別に決定することができる。これにより、複数のシート状包装体において個体識別情報が偶然一致するといった事態を一層確実に防止することができる。
【0031】
手段7.前記統合システムに記憶する前記個体識別情報は、前記収容状態制御手段による前記充填手段の制御に係る情報に基づくものであることを特徴とする手段6に記載のブリスタ包装システム。
【0032】
上記手段7によれば、統合システムに記憶する個体識別情報は、収容状態制御手段による充填手段の制御に係る情報に基づくものとされる。従って、統合システムに記憶する個体識別情報を簡便に得ることができ、システムの簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図5】ブリスタ包装システムの概略構成を示す模式図である。
【
図6】検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】第一検査装置にて記憶される錠剤の良否判定結果の一例を示す図である。
【
図8】第二検査装置にて記憶される錠剤及びシート部分の良否判定結果の一例を示す図である。
【
図9】第三検査装置にて記憶される錠剤及びシート部分の良否判定結果の一例を示す図である。
【
図10】統合システムにて記憶される良否判定結果及び個体識別情報の一例を示す図である。
【
図11】統合システムにて記憶される個体識別情報の一例を模式的に示す図である。
【
図13】MRメガネに設けられた制御処理装置などの概略構成を示すブロック図である。
【
図14】透過表示部にて表示される良否判定結果に係る情報や画像データ、透過表示部を通して視認可能なPTPシートなど、MRメガネを装着した作業者が得られる視覚情報の一例を示すための模式図である。
【
図15】PTPシートが回転したときに、この回転に合わせて、透過表示部にて表示される良否判定結果に係る情報が移動することを示す模式図である。
【
図16】MRメガネにPTPシートを近づけたときに、MRメガネ及びPTPシート間の距離変化に合わせて、透過表示部にて表示される良否判定結果に係る情報の位置及び大きさが変化することを示す模式図である。
【
図17】MRメガネで行われる動作処理を示すフローチャートである。
【
図18】別の実施形態において、統合システムにて記憶される個体識別情報の一例を模式的に示す図である。
【
図19】別の実施形態において、情報表示部を利用した個体識別情報について説明するためのPTPシートの平面図である。
【
図20】別の実施形態において、内容物としてカプセル錠を収容するPTPシートの平面図である。
【
図21】別の実施形態における充填装置などの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、PTPシートの構成について詳しく説明する。
【0035】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。本実施形態では、PTPシート1が「シート状包装体」及び「ブリスタシート」に相当する。
【0036】
容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明又は半透明の熱可塑性樹脂材料により形成されている。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。勿論、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
【0037】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(
図4参照)がシート状に打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。本実施形態では、PTPフィルム6が「ブリスタフィルム」に相当する。
【0038】
PTPシート1(容器フィルム3)には、2つのポケット部2が含まれるシート小片7に切り離すことができるように複数の切離用スリット8が形成されている。また、PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。
【0039】
各ポケット部2には、「内容物」としての錠剤5が1つずつ収容されている。錠剤5は、PTPシート1の表側(ポケット部2の突出側)から見たときに、ポケット部2を通して視認可能とされている。
【0040】
錠剤5は、平面視円形状をなす円盤状の素錠であって、側面5aと、該側面5aを挟む表面5b及び裏面5cとを有した構成となっている。そして、
図3に示すように、表面5b及び裏面5cには、錠剤5に関する製品情報を示す文字や記号、数字、図形などが印刷されてなる第一印刷部5g及び第二印刷部5kがそれぞれ設けられている。尚、錠剤5に関する製品情報としては、「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」及び「ロット番号」などを挙げることができる。
【0041】
第一印刷部5g及び第二印刷部5kは、錠剤5における文字や数字等が印刷された部位である。本実施形態では、所定の文字(
図3では「AB」)の印刷された部位である第一印刷部5gが表面5bに設けられ、所定の数字(
図3では「12」)の印刷された部位である第二印刷部5kが裏面5cに設けられている。
【0042】
本実施形態においては、表面5b及び裏面5cに形状や色の差異はないため、第一印刷部5gの設けられた面が表面5bであり、第二印刷部5kの設けられた面が裏面5cであるといえる。そして、両印刷部5g,5kはそれぞれ異なる内容とされているため、錠剤5は、表裏の区別がつくものとなっている。これにより、錠剤5は、ポケット部2に対する収容時の向きに応じて、PTPシート1の表側(ポケット部2の突出側)から見たときにおける収容状態が二種類の異なる状態となる。すなわち、本実施形態において、収容状態は、表面5b(第一印刷部5g)を視認可能な「表状態」、又は、裏面5c(第二印刷部5k)を視認可能な「裏状態」となる。
【0043】
加えて、錠剤5は、ポケット部2に収容されているときに表裏反転しないように、ポケット部2に対する相対的な形状が設定されている。これにより、錠剤5は、PTPシート1に収容されているときに「表状態」又は「裏状態」のままで維持される。
【0044】
次に、
図5を参照して、上記PTPシート1を製造するためのPTP包装機10と、製造されたPTPシート1における錠剤5及びシート部分(例えば両フィルム3,4の取着部分)の良否を確認するための良否確認システム60とを備えたブリスタ包装システム100の構成について説明する。本実施形態では、錠剤5及びシート部分が「確認対象物」に相当する。また、PTP包装機10が「ブリスタ包装機」を構成する。まず、PTP包装機10の概略構成について説明する。
【0045】
図5に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0046】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0047】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0048】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、充填装置21、第一検査装置22及び第二検査装置23が順に配設されている。本実施形態では、充填装置21が「充填手段」を構成する。
【0049】
充填装置21は、例えば、錠剤5を一列に並んだ状態で収容する筒状のシュート、及び、該シュートの出口を開閉可能なシャッタ(それぞれ不図示)を備えており、所定のタイミングにて前記シャッタを開くことでポケット部2に錠剤5を充填する。
【0050】
本実施形態では、前記シュートに収容される錠剤5の向きを特段調節しない構成となっている。そのため、各ポケット部2に充填された錠剤5は、「表状態」となる場合もあるし、「裏状態」となる場合もある。すなわち、本実施形態において、錠剤5の収容状態は、ポケット部2ごとにランダムに決定されるようになっている。
【0051】
第一検査装置22及び第二検査装置23は、最終的にPTPシート1となる部位における確認対象物(錠剤5及びシート部分)を検査し、該確認対象物の良否を判定する。検査装置22,23のより詳細な構成に関しては後述する。
【0052】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0053】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、両フィルム3,4が両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することにより、両フィルム3,4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。本実施形態では、フィルム受けロール20及び加熱ロール25が「取着手段」を構成する。
【0054】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0055】
フィルム受けロール20とテンションロール27との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、第三検査装置26が設けられている。第三検査装置26は、最終的にPTPシート1となる部位における確認対象物(錠剤5及びシート部分)を検査し、該確認対象物の良否を判定する。尚、第三検査装置26のより詳細な構成に関しては後述する。
【0056】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0057】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリット8を形成する機能を有する。また、刻印装置34は、PTPフィルム6における所定位置に刻印を付す機能を有する。尚、
図1等では、刻印の図示を省略している。
【0058】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜く。これにより、PTPシート1が得られる。本実施形態では、シート打抜装置37が「切離手段」を構成する。
【0059】
得られたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される。但し、上記検査装置22,23,26のうちの少なくとも1つによって不良品と判定されたPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、不良シート排出機構45によって別途排出され、不良品用ホッパ44へと貯留される。作業者は、この不良品用ホッパ44から不良品のPTPシート1を取出して確認することができるようになっている。
【0060】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0061】
次に、上記検査装置22,23,26のより具体的な構成について
図6を参照しつつ説明する。各検査装置22,23,26は、それぞれ照明装置50、検査用カメラ51及び良否判定装置52を備えている。本実施形態では、検査用カメラ51が「検査用撮像手段」を構成し、良否判定装置52が「良否判定手段」を構成する。
【0062】
照明装置50は、ポケット部2の開口部側又は突出部側から、容器フィルム3やPTPフィルム6等、最終的にPTPシート1となる部位に対し所定の光(例えば近赤外光や可視光)を照射する。
【0063】
検査用カメラ51は、照明装置50から検査対象に照射された光を撮像する。本実施形態では、検査用カメラ51として、照明装置50から照射される光の波長領域に感度を有するCCDカメラが採用されている。また、第二検査装置23の検査用カメラ51として、色識別可能なようにカラーCCDカメラが採用されている。尚、CCDカメラに代えて、CMOSカメラを採用してもよい。
【0064】
検査用カメラ51の撮像により得られた画像データ(輝度画像データ又はカラー画像データ)は、検査用カメラ51内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で良否判定装置52に入力される。
【0065】
良否判定装置52は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAMなどを備えた、いわゆるコンピュータシステムとして構成されている。良否判定装置52は、画像メモリ53、検査結果記憶装置54、判定用メモリ55、検査条件記憶装置56、カメラタイミング制御装置57及びCPU及び入出力インターフェース58を備えている。
【0066】
画像メモリ53は、検査用カメラ51により得られた画像データを記憶する。この画像メモリ53に記憶された画像データに基づいて検査が実行される。勿論、検査の実行に際し、画像データに対し加工処理を施してもよい。例えばマスキング処理や、シェーディング補正などの処理を施すことが考えられる。シェーディング補正は、容器フィルム3等の撮像範囲全体を照明装置50の光で均一に照らすことは技術的に限界があることから、位置の相違により生じる光の明度のばらつきを補正するためのものである。尚、画像データに対し二値化処理を行うことで得た二値化画像データなども画像メモリ53に記憶される。
【0067】
検査結果記憶装置54は、良否判定結果のデータや該データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶する。第一検査装置22の検査結果記憶装置54は、PTPシート1を特定するための通し番号と、該PTPシート1に対応する、10個の錠剤5に係る良否判定結果とを関連付けて記憶する。一方、第二検査装置23及び第三検査装置26の各検査結果記憶装置54は、前記通し番号と、10個の錠剤5及びシート部分に係る良否判定結果とを関連付けて記憶する。前記通し番号は、CPU及び入出力インターフェース58により設定される。尚、10個の錠剤5のそれぞれの良否判定結果は、これら錠剤5を特定するための錠剤番号J1~J10と関連付けて記憶される(
図7等参照)。さらに、検査結果記憶装置54は、錠剤5が不良判定された場合に、不良判定の原因となった検査項目を記憶する。
【0068】
判定用メモリ55は、判定に用いられる各種情報を記憶するためのものである。各種情報には、良否を判定するための判定基準(例えば閾値等)や二値化処理を行うための二値化用閾値、検査対象範囲を画定するためのデータ(例えば、画像データ中における錠剤5部分を特定するための情報や、PTPシート1の外縁とポケット部2との相対位置関係に関する設計データなど)などが含まれる。
【0069】
検査条件記憶装置56は、不良判定の日時や検査に用いられた検査条件等を記憶する。
【0070】
カメラタイミング制御装置57は、検査用カメラ51の撮像タイミングを制御する。かかる撮像タイミングはPTP包装機10に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3やPTPフィルム6を所定量送るごとに検査用カメラ51による撮像が行われる。
【0071】
CPU及び入出力インターフェース58は、検査装置22,23,26における各種制御を司る。CPU及び入出力インターフェース58は、PTP包装機10の構成装置との間で情報を送受信可能とされている。これにより、上述した不良シート排出機構45などを制御すること等が可能となる。
【0072】
また、CPU及び入出力インターフェース58は、上記の通り、最終的にPTPシート1となる部位ごとに通し番号を設定する。そして、この設定された通し番号が錠剤5及びシート部分の良否判定結果とともに検査結果記憶装置54に記憶される。通し番号は、容器フィルム3の搬送方向上流側に向けて1つずつ増大していく態様となる。
【0073】
さらに、CPU及び入出力インターフェース58は、統合システム70との間で情報の送受信を行うことが可能とされている。本実施形態において、CPU及び入出力インターフェース58は、統合システム70に対し、錠剤5及びシート部分の良否判定結果とこれらに関連付けて記憶された通し番号とを、良否判定が行われる度に送信する。また、CPU及び入出力インターフェース58は、統合システム70に対し、これら良否判定結果の情報とともに、この良否判定結果を得るときに利用した、検査用カメラ51による画像データを送信する。
【0074】
上記のように構成された良否判定装置52は、検査用カメラ51により得られた画像データに基づき、錠剤5やシート部分の良否判定を実行する。良否判定装置52では、例えば、画像データに対する二値化処理や二値化画像データに対する塊処理などを行うとともに、判定用メモリ55に記憶された各種情報に基づき錠剤5などの良否を判定する。
【0075】
次に、各検査装置22,23,26の構成についてより詳しく説明する。
【0076】
第一検査装置22は、シール前に容器フィルム3のポケット部2突出部側から検査を行う透過光式の検査装置である。第一検査装置22では、照明装置50が容器フィルム3のポケット部2開口部側に配置され、検査用カメラ51が容器フィルム3のポケット部2突出部側に設けられている。そして、照明装置50から照射される光(近赤外光)のうち、容器フィルム3を透過した光を二次元撮像する構成となっている。
【0077】
第一検査装置22は、「錠剤割れ」、「錠剤破片混入」、「欠錠」、「錠剤形状・大きさ違い」、「錠剤欠け」及び「錠剤表面剥離」といった検査項目についての検査を行う。「錠剤割れ」に関する検査では、錠剤5に割れが発生しているか否かが判定される。「錠剤破片混入」に関する検査では、ポケット部2内に、錠剤5の破片など、錠剤5以外の異物が存在するか否かが判定される。「欠錠」に関する検査では、ポケット部2内に錠剤5が充填されているか否かが判定される。「錠剤形状・大きさ違い」に関する検査では、錠剤5の形状や大きさが、製造品種と適合しているか否かが判定される。「錠剤欠け」に関する検査では、錠剤5に欠けが発生しているか否かが判定される。「錠剤表面剥離」に関する検査では、錠剤5の表面層が剥離しているか否かが判定される。
【0078】
第二検査装置23は、シール前に容器フィルム3のポケット部2突出部側及び開口部側(錠剤5の表裏面側)から検査を行う透過光式及び反射光式の両機能を備えた検査装置である。第二検査装置23では、照明装置50が容器フィルム3のポケット部2突出部側及び開口部側の両側に1つずつ配置され、2つの検査用カメラ51が容器フィルム3のポケット部2開口部側に設けられている。そして、ポケット部2突出部側の照明装置50から照射される光(可視光)のうち、容器フィルム3を透過した光が一方の検査用カメラ51により二次元撮像され、ポケット部2開口部側の照明装置50から照射される光(可視光)のうち、錠剤5などに反射した光が他方の検査用カメラ51(カラーCCDカメラ)により二次元撮像される構成となっている。
【0079】
第二検査装置23は、上述した「錠剤割れ」、「錠剤破片混入」、「欠錠」、「錠剤形状・大きさ違い」及び「錠剤欠け」といった検査項目に加えて、「錠剤色」という検査項目に関する検査を行う。「錠剤色」に関する検査では、錠剤5の色が製造品種と適合しているか否かが判定される。
【0080】
また、第二検査装置23は、「シート上錠剤粉」、「シート上毛髪」及び「シート上異物」といった検査項目に関する検査を行う。すなわち、第二検査装置23は、容器フィルム3(シート部分)に関する良否判定も行う。「シート上錠剤粉」に関する検査では、シート部分に錠剤粉など大きさが数mm(例えば5mm)未満の小さな異物が存在するか否かが判定される。「シート上毛髪」に関する検査では、シート部分に毛髪などの線状異物が存在するか否かが判定される。「シート上異物」に関する検査では、シート部分に大きさが数mm(例えば5mm)以上という大きな異物が存在するか否かが判定される。
【0081】
第三検査装置26は、シール後に容器フィルム3(PTPフィルム6)のポケット部2突出部側から検査を行う反射光式の検査装置である。第三検査装置26では、それぞれ照明装置50及び検査用カメラ51が容器フィルム3(PTPフィルム6)のポケット部2突出部側に配置されている。そして、第三検査装置26では、照明装置50から照射される光(近赤外線)のうち、検査対象を反射した光を二次元撮像する構成となっている。
【0082】
第三検査装置26は、上述した「錠剤割れ」、「錠剤破片混入」、「欠錠」、「錠剤形状・大きさ違い」、「錠剤欠け」、「シート上錠剤粉」、「シート上毛髪」及び「シート上異物」といった検査項目に加えて、「錠剤上異物」、「錠剤上毛髪」及び「ノーシール・しわ」といった検査項目に関する検査を行う。「錠剤上異物」に関する検査では、錠剤5上に、大きさが数mm(例えば5mm)以上という大きな異物が存在するか否かが判定される。「錠剤上毛髪」に関する検査では、錠剤5上に、毛髪などの線状異物が存在するか否かが判定される。「ノーシール・しわ」に関する検査では、両フィルム3、4が適正に取着されているか否かが判定される。
【0083】
検査装置22,23,26は、上述した錠剤5に関する各検査項目の全てで良判定された場合に、錠剤5が良品であると判定し、各検査項目のうちの少なくとも1つで不良判定された場合に、錠剤5が不良品であると判定する。そして、検査装置22,23,26は、検査結果記憶装置54に、PTPシート1一枚分の10個の錠剤5のそれぞれの良否判定結果と通し番号とを関連付けて記憶する(
図7,8,9参照)。
【0084】
また、検査装置23,26は、上述したシート部分に関する各検査項目の全てで良判定された場合に、シート部分が良品であると判定し、各検査項目のうちの少なくとも1つで不良判定された場合に、シート部分が不良品であると判定する。そして、検査装置23,26は、検査結果記憶装置54に、シート部分の良否判定結果と通し番号とを関連付けて記憶する(
図7~9参照)。
【0085】
尚、
図7~9では、良品判定を「○」で示し、不良品判定を「×」で示す。また、
図7~9における空欄は、良否判定結果を取得する前(つまり、検査前)であることを示す。さらに、10個の錠剤5は、収容されたポケット部2の位置に対応するJ1からJ10までの錠剤番号で特定される。本実施形態においては、
図3に示すように、左列のポケット部2に収容される錠剤5の錠剤番号が上から順にJ1,J2,J3,J4,J5とされ、右列のポケット部2に収容される錠剤5の錠剤番号が上から順にJ6,J7,J8,J9,J10とされる。
【0086】
次いで、良否確認システム60の構成について説明する。
図5に示すように、良否確認システム60は、統合システム70及びMRメガネ80を備えている。
【0087】
まず、統合システム70について説明する。統合システム70は、CPU、ROM、RAM及び記憶媒体などを備えた、いわゆるコンピュータシステムにより構成されている。統合システム70は、検査装置22,23,26との間で情報の送受信を可能に構成されており、識別情報特定部71と、検査装置22,23,26から送信された良否判定結果などを記憶する統合記憶装置72とを備えている。本実施形態では、識別情報特定部71が「識別情報特定手段」を構成する。
【0088】
識別情報特定部71は、第三検査装置26の検査用カメラ51により取得された画像データに基づき、該画像データに係るPTPシート1の個体識別情報を特定する。より詳しくは、識別情報特定部71は、予め記憶された、画像データ中における錠剤5部分を特定するための情報及び錠剤5の表裏を判別するための情報などに基づき、画像データに係るPTPシート1の個体識別情報を特定する。
【0089】
ここで、個体識別情報とは、個々のPTPシート1を識別するための情報であって、本実施形態では、10個の錠剤5に係るそれぞれの収容状態に基づくものである。本実施形態において、個体識別情報は、各錠剤5における収容状態の組み合わせ、すなわち、錠剤番号J1~J10で特定される10個の錠剤5の収容状態(「表状態」又は「裏状態」)の組み合わせで表現される。
【0090】
そして、統合システム70は、識別情報特定部71により特定されたPTPシート1の個体識別情報を通し番号と関連付けて統合記憶装置72に記憶する(
図11参照)。通し番号に関する情報は、画像データとともに、第三検査装置26から統合システム70へと送信される。
【0091】
尚、
図11では、理解を容易とするために、個体識別情報として、「表状態」を白抜き丸で示し、「裏状態」を黒塗り丸で示したPTPシート1の模式的な画像を示している。実際には、個体識別情報として、錠剤番号J1~J10に係る各錠剤5の各収容状態を示す情報が統合記憶装置72に記憶される。例えば、個体識別情報は、1ビット目が錠剤番号J1の錠剤5における収容状態を示し、2ビット目が錠剤番号J2の錠剤5における収容状態を示し、同様に、3~10ビット目がそれぞれ錠剤番号J3~J10の錠剤5における収容状態を示す10ビットのビット列で表現することができる。この場合、例えば、
図3で示すPTPシート1の個体識別情報は、「0011110010」となる。「0」は「表状態」を示し、「1」は「裏状態」を示す。
【0092】
ここで、本実施形態における個体識別情報は1024種類となるため、PTPシート1の生産数によっては、複数のPTPシート1において個体識別情報が偶然一致するといったことが生じ得る。しかしながら、本実施形態における個体識別情報は、特に不良品のPTPシート1に係る良否判定結果などを確認する際に用いられるものであるところ、不良品のPTPシート1が発生する確率は通常非常に低い。従って、不良品のPTPシート1同士で個体識別情報が一致するといった事態はほとんど生じない。また、仮に不良品のPTPシート1同士で個体識別情報が一致したとしても、個体識別情報がない場合と比べて、PTPシート1に係る良否判定結果などの確認は著しく容易となる。
【0093】
統合システム70の説明に戻る。統合システム70は、統合記憶装置72に対し、個体識別情報とともに、各検査装置22,23,26から送信された良否判定結果を統合して記憶する。良否判定結果の統合及び記憶は、通し番号を基準として行われる。その結果、統合記憶装置72には、個々のPTPシート1について、PTPシート1を識別するための個体識別情報と該PTPシート1に係る確認対象物(錠剤5及びシート部分)の良否判定結果とが対応付けて記憶される(
図10参照)。
【0094】
さらに、本実施形態において、統合システム70は、個体識別情報と、各検査装置22,23,26から送信された検査用の画像データとを対応付けて記憶する。
【0095】
また、統合システム70は、MRメガネ80から個体識別情報が送信されると、この個体識別情報に対応するPTPシート1の確認対象物(錠剤5及びシート部分)に係る良否判定結果と、検査用の画像データとをMRメガネ80(後述する無線通信装置84)へと送信する。
【0096】
このとき、統合システム70は、各検査装置22,23,26で良判定された錠剤5については、良品であるという判定結果をMRメガネ80へと送信し、各検査装置22,23,26のうちの少なくとも1つにて不良判定された錠剤5については、不良品であるという判定結果をMRメガネ80へと送信する。また、統合システム70は、各検査装置23,26で良判定されたシート部分については、良品であるという判定結果をMRメガネ80へと送信し、各検査装置23,26のうちの少なくとも1つにて不良判定されたシート部分については、不良品であるという判定結果をMRメガネ80へと送信する。
【0097】
例えば、
図10に示す例において、統合システム70は、MRメガネ80から通し番号が「3」のPTPシート1に係る個体識別情報を受信すると、この個体識別情報に対応する錠剤5の良否判定結果を参酌し、10個の錠剤5のうち、錠剤番号J2の錠剤5と錠剤番号J9の錠剤5とについては、不良品であるという判定結果をMRメガネ80へと送信し、その他の錠剤番号の錠剤5については、良品であるという判定結果をMRメガネ80へと送信する。また、統合システム70は、MRメガネ80から通し番号が「3」のPTPシート1に係る個体識別情報を受信すると、この個体識別情報に対応するシート部分の良否判定結果を参酌し、シート部分が不良品であるという判定結果をMRメガネ80へと送信する。尚、良品であるという良否判定結果、及び、不良品であるという良否判定結果のうちの一方のみをMRメガネ80へと送信してもよい。
【0098】
次に、MRメガネ80について説明する。MRメガネ80は、統合システム70との間で無線により情報の送受信を可能に構成されている。MRメガネ80は、
図12に示すように、カメラ81、表示部82、制御処理装置83、無線通信装置84、左フレーム85及び右フレーム86を備えている。本実施形態では、カメラ81が「撮像手段」を構成する。尚、MRメガネ80は、駆動用のバッテリ(図示せず)を内蔵している。
【0099】
カメラ81は、左フレーム85の前側位置に前向きに配設されている。尚、カメラ81の配設位置を適宜変更してもよい。カメラ81は、後述する透過表示部822、823を通して作業者が見る現実環境(例えばPTPシート1等)を撮像することで画像データを取得する。取得した画像データは、制御処理装置83に送信される。
【0100】
表示部82は、左右に並んだ窓を形成する前フレーム821と、これら窓に配置された透過表示部822、823とを有している。本実施形態では、透過表示部822,823が「表示手段」を構成する。
【0101】
透過表示部822、823は、MRメガネ80を作業者が装着した状態において、該作業者の両方の目と対向する位置に配置されるようになっている。透過表示部822,823は、透明又は半透明であり、作業者は、透過表示部822、823を通して現実環境を見ることが可能である。
【0102】
また、透過表示部822、823は、例えば透過型の液晶パネルなど情報表示手段を備えており、作業者の視野と重なるようにして情報を表示可能となっている。すなわち、透過表示部822,823は、いわゆる拡張現実表示機能を有している。尚、このような拡張現実表示機能を実現する光学的な技術としては、例えばホログラム技術を挙げることができるが、これ以外の手法によって拡張現実表示機能を実現してもよい。
【0103】
制御処理装置83は、左フレーム85の側面の前寄り位置に配設されている。尚、制御処理装置83の配設位置を適宜変更してもよい。制御処理装置83は、CPU、RAM及びROM等を有しており、予め記憶された所定のソフトウェアによって作動する。制御処理装置83は、
図13に示すように、画像処理部831、識別情報送信部832、判定結果受取部833及び表示制御部834を備えている。本実施形態では、判定結果受取部833が「判定結果受取手段」を構成し、表示制御部834が「表示制御手段」を構成する。
【0104】
画像処理部831は、カメラ81から送信された画像データに画像処理を施すことで、個体識別情報を認識したり、透過表示部822,823における情報の表示位置などを設定したりするためのものである。画像処理部831には、個体識別情報を認識するための情報、視野内にあるPTPシート1の位置及び姿勢に関する状態を把握するための情報、MRメガネ80から視野内にあるPTPシート1までの距離を把握するための情報、及び、錠剤番号J1~J10に関する情報などが予め記憶されている。また、画像処理部831には、PTPシート1の位置及び姿勢に関する状態と、MRメガネ80からPTPシート1までの距離とに基づき、透過表示部822,823における各種情報の表示位置や表示大きさなどを設定するための設定手法(設定アルゴリズム)が予め記憶されている。
【0105】
さらに、画像処理部831は、画像データにおけるPTPシート1の有無を判定するとともに、画像データ中におけるPTPシート1を特定する機能を有する。PTPシート1の有無に係る判定及びPTPシート1の特定は、予め記憶された、錠剤5を特定するための情報やPTPシート1の設計情報(例えば、PTPシート1の外縁に対するポケット部2の相対位置やポケット部2の数などの情報)を用いて行われる。
【0106】
画像処理部831は、識別情報認識部831a、シート状態認識部831b、距離認識部831c及び表示設定部831dを備えている。本実施形態では、識別情報認識部831aが「識別情報認識手段」を構成する。
【0107】
識別情報認識部831aは、カメラ81により得られた画像データに基づき、該画像データ中のPTPシート1(画像処理部831により特定されたPTPシート1)の個体識別情報を認識するためのものである。識別情報認識部831aは、作業者の視野内にあるPTPシート1をカメラ81により撮像して得られた画像データに所定の画像認識処理を施すとともに、予め記憶された個体識別情報を認識するための情報(例えば、錠剤5の表裏を判別するための情報や錠剤番号J1~J10に関する情報など)を利用することで、該PTPシート1の個体識別情報を認識する。この個体識別情報の認識により、画像データ中のPTPシート1の個体識別情報が取得される。
【0108】
識別情報の認識・取得についてより詳しく説明すると、識別情報認識部831aは、画像データに画像認識処理を施して錠剤5を抽出した上で、錠剤5の表裏を判別するための情報を利用して、抽出した錠剤5が「表状態」であるか「裏状態」であるかを特定する。そして、識別情報認識部831aは、このような処理をPTPシート1に含まれる全ての錠剤5に対し行うとともに、予め記憶された錠剤番号J1~J10に関する情報を利用することで、錠剤番号J1~J10に係る各錠剤5の各収容状態を把握する。その結果、各錠剤5の収容状態に基づくPTPシート1の個体識別情報が認識・取得される。本実施形態では、カメラ81及び識別情報認識部831aが、外部から個体識別情報を取得するための識別情報取得部87を構成する。また、識別情報取得部87が「識別情報取得手段」に相当する。
【0109】
シート状態認識部831bは、作業者の視野内にあるPTPシート1をカメラ81により撮像して得られた画像データに基づき、該PTPシート1の位置及び姿勢に関する状態を認識するためのものである。シート状態認識部831bは、画像データに対し所定の画像処理を施すことで、PTPシート1の外縁や錠剤5、ポケット部2などの位置情報を抽出するとともに、抽出した位置情報と予め記憶されたPTPシート1の位置及び姿勢に関する状態を把握するための情報とに基づき、PTPシート1の位置及び姿勢に関する状態を認識する。
【0110】
また、シート状態認識部831bは、予め記憶された錠剤番号J1~J10に関する情報やPTPシート1の位置及び姿勢に関する状態などに基づき、位置情報を抽出した錠剤5に関する錠剤番号J1~J10を特定する。
【0111】
距離認識部831cは、作業者の視野内にあるPTPシート1をカメラ81により撮像して得られた画像データに基づき、MRメガネ80から該PTPシート1までの距離を認識するためのものである。距離認識部831cは、例えば、画像データに対し画像処理を施すことで、PTPシート1の外縁や錠剤5、ポケット部2などの大きさ情報を抽出するとともに、抽出した大きさ情報と、予め記憶されたMRメガネ80から視野内にあるPTPシート1までの距離を把握するための情報とに基づき、MRメガネ80から該PTPシート1までの距離を認識する。
【0112】
表示設定部831dは、シート状態認識部831bにより認識されたPTPシート1の位置や姿勢に関する状態と、距離認識部831cにより認識された距離とに基づき、透過表示部822,823における情報の表示位置や表示大きさなどの表示態様を設定する。表示態様の設定は、上述した設定手法(設定アルゴリズム)に従って行われる。
【0113】
本実施形態において、表示設定部831dは、錠剤5を特定するための錠剤番号J1~J10と関連付けて、透過表示部822,823における円形のマークM(
図14等参照)の表示位置及び表示大きさを設定する。マークMの表示位置及び表示大きさは、透過表示部822,823を通して視認される実物の錠剤5を囲むことが可能なものに設定される。
【0114】
さらに、表示設定部831dは、PTPシート1のシート部分と関連付けて、矩形のマークN(
図14等参照)の表示位置及び表示大きさを設定する。マークNの表示位置及び表示大きさは、透過表示部822,823を通して視認される実物のPTPシート1(シート部分)の周囲に位置し、MRメガネ80及び該PTPシート1間の距離によっては該PTPシート1を囲むことが可能なものに設定される。尚、
図14等では、マークM,Nを太線で示している。
【0115】
識別情報送信部832は、識別情報認識部831aにより認識された個体識別情報を無線通信装置84へと送信するためのものである。
【0116】
判定結果受取部833は、無線通信装置84を介して統合システム70から送信された、錠剤5及びシート部分の良否判定結果や検査時に用いられた画像データなどを受け取るためのものである。判定結果受取部833では、識別情報認識部831aにより認識された個体識別情報に対応するPTPシート1における各錠剤5及びシート部分の良否判定結果(錠剤番号J1~J10を含む)や、検査時における該PTPシート1の画像データが受け取られる。つまり、判定結果受取部833は、MRメガネ80を通して作業者がPTPシート1を見たとき、そのPTPシート1に係る錠剤5及びシート部分の良否判定結果やそのPTPシート1の検査に係る画像データを受け取り可能に構成されている。
【0117】
表示制御部834は、判定結果受取部833により受け取られた錠剤5等の良否判定結果に係る情報や画像データを透過表示部822,823にて表示させるためのものである。表示制御部834は、表示設定部831dにより設定された情報の表示態様や良否判定結果などを用いて、判定結果受取部833により受け取られた良否判定結果に係る情報などを透過表示部822,823にて表示させる。
【0118】
本実施形態において、表示制御部834は、不良品判定された錠剤5に対応してマークMを表示させる。より詳しくは、表示制御部834は、錠剤5の良否判定結果に基づき不良品判定された錠剤5の錠剤番号J1~J10を特定するとともに、特定された錠剤番号J1~J10に関連付けられたマークMの表示態様(表示位置及び表示大きさ)に従って、マークMを表示させる。これにより、例えば錠剤番号J2,J9の錠剤5が不良品判定されている場合、この錠剤番号J2,J9の錠剤5を囲むようにマークMが表示される(
図14~16参照)。
【0119】
さらに、表示制御部834は、不良品判定されたシート部分に対応してマークNを表示させる。より詳しくは、表示制御部834は、表示設定部831dにて設定されたマークNの表示態様(表示位置及び表示大きさ)に従ってマークNを表示させる。これにより、PTPシート1の周囲にマークNが表示される(
図14~16参照)。
【0120】
また、表示制御部834は、透過表示部822,823の左右に、検査用カメラ51により得られた検査用の画像データ(本実施形態では、錠剤5等の不良判定の要因となった画像データ)を表示させる。より具体的には、表示制御部834は、透過表示部822,823の左に、不良判定の要因となった画像データの全体を表示し、透過表示部822,823の右に、不良品判定された錠剤5に対応する拡大画像データを表示する(
図14~16参照)。
【0121】
さらに、表示制御部834は、透過表示部822,823を通して見るPTPシート1に画像データが重ならないように、該画像データの表示位置や表示大きさ、表示の有無などを調節する。尚、画像データに加えて又は代えて、詳細な検査結果(例えば、不良判定された検査項目など)を表示するように構成してもよい。
【0122】
表示制御部834による表示制御により、透過表示部822,823においては、作業者の視野内にある実物のPTPシート1の錠剤5に関連付けて、該錠剤5の良否判定結果に係る情報が表示される。本実施形態では、MRメガネ80を装着した作業者が不良品用ホッパ44から取出した不良品のPTPシート1を見たとき、
図14に示すように、透過表示部822,823において、作業者の視野内にあるPTPシート1の錠剤5のうちの不良判定されたものを囲むようにして、錠剤5の良否判定結果に係る情報としてのマークMが表示される。また、シート部分が不良である場合には、透過表示部822,823において、PTPシート1(シート部分)を囲むようにして、シート部分の良否判定結果に係る情報としてマークNが表示される。さらに、透過表示部822,823において、PTPシート1の左右の位置に、該PTPシート1に関する画像データが表示される。
【0123】
また、PTPシート1を回転させた場合などPTPシート1の位置や姿勢に関する状態が変化した場合には、表示設定部831dにより情報の表示態様が更新設定され、その結果、
図15に示すように、移動した錠剤5及びシート部分に追従するようにしてマークM,Nが移動表示される。尚、
図15では、
図14に示すPTPシート1を回転させたときに、その回転に伴う錠剤5及びシート部分の位置変化に合わせて、マークM,Nが移動表示される例を示している。
【0124】
加えて、PTPシート1をMRメガネ80に近づけた場合など、MRメガネ80からPTPシート1までの距離が変化した場合には、表示設定部831dにより情報の表示態様が更新設定され、その結果、
図16に示すように、移動した錠剤5及びシート部分に合わせるようにして位置や大きさの変更されたマークM,Nが表示される。尚、
図16では、
図14に示すPTPシート1をMRメガネ80に近づけたときに、視野内に占める錠剤5及びシート部分の大きさが拡大するとともに視野内における錠剤5及びシート部分の位置が変化することに合わせて、マークM,Nが表示される例を示している。
【0125】
無線通信装置84は、制御処理装置83と一体的に設けられており、統合システム70及びMRメガネ80間における無線通信を担う。
【0126】
左フレーム85及び右フレーム86は、前フレーム821の左右両端から後方に向けて延設されている。左フレーム85及び右フレーム86の後部を耳に掛けることで、作業者はMRメガネ80を装着することができる。
【0127】
尚、上述のMRメガネ80として、市販の汎用製品を利用してもよいし、専用のカスタム製品を利用してもよい。
【0128】
次いで、作業者がMRメガネ80を装着して使用したときにおける該MRメガネ80の動作について説明する。
【0129】
図17に示すように、まず、ステップS11において、MRメガネ80のカメラ81によって現実環境が撮像される。撮像により得られた画像データは、画像処理部831へと送信される。
【0130】
次いで、ステップS12において、画像データにおけるPTPシート1の有無が判定されるとともに、画像データ中のPTPシート1が特定される。ここで、画像データにPTPシート1が存在しない場合(ステップS12:NO)、ステップS11へと戻る。一方、画像データにPTPシート1が存在する場合(ステップS12:YES)、画像データ中のPTPシート1を特定し、ステップS13へと移行する。
【0131】
ステップS13では、画像データ中におけるPTPシート1に基づき、該PTPシート1の個体識別情報が認識される。次いで、ステップS14にて、認識された個体識別情報が統合システム70へと送信される。個体識別情報を受信した統合システム70は、この個体識別情報に対応するPTPシート1の錠剤5及びシート部分に関する良否判定結果などをMRメガネ80側へと送信する。
【0132】
その後、ステップS15にて、判定結果受取部833により、錠剤5及びシート部分の良否判定結果などが受け取られる。
【0133】
さらに、続くステップS16にて、ステップS11で得られた画像データに基づき、透過表示部822,823における良否判定結果等の表示態様が設定される。尚、表示態様の設定は、ステップS12からステップS16までの間に行われればよい。例えば、統合システム70との間で情報の送受信を行う間に、表示態様の設定を行ってもよい。
【0134】
その後のステップS17では、透過表示部822,823において、設定された表示態様を用いて錠剤5やシート部分の良否判定結果などが表示される。以降においては、上述したステップS11~S17の処理が繰り返し行われることで、作業者がPTPシート1を動かした場合等、画像データ中におけるPTPシート1の位置や向き、距離が変化した場合には、その変化に追従するようにして透過表示部822,823における良否判定結果等の表示態様が変化することとなる。尚、ステップS11~S17の処理を繰り返し行う際に、ステップS13にて認識される個体識別情報に変化がない場合には、ステップS14,S15の処理をスキップするように構成してもよい。
【0135】
以上詳述したように、本実施形態によれば、いわば個々のPTPシート1の個性と言える各錠剤5の収容状態を個体識別情報として利用する。そのため、個々のPTPシート1を識別するために、個々のPTPシート1に対しこれらを識別するための情報を設ける必要がない。また、識別用タグ情報などの識別用の情報を別途付与するための手段(装置)を設ける必要もない。これにより、PTPシート1の製造に係るコストの増大や設備の大型化を効果的に抑制することができる。
【0136】
また、統合システム70では、個々のPTPシート1について、個体識別情報と確認対象物(シート部分や錠剤5)の良否判定結果とが対応付けて記憶される。そのため、個体識別情報を利用して、PTPシート1及び良否判定結果を確実に紐付けることができる。これにより、PTPシート1と良否判定結果との対応関係が不正確になることをより確実に防止できる。
【0137】
加えて、識別情報取得部87によって個体識別情報が取得されると、透過表示部822,823にて、該個体識別情報に係る良否判定結果を表示させることができる。従って、目視等により不良品のPTPシート1における不良内容を特定した上で、特定された不良内容と良否判定結果とを比較するといった作業を容易に行うことができる。また、良否判定結果に基づき良品の錠剤5と不良品の錠剤5とを簡便に区別することができるため、良品の錠剤5を取出して回収するといった作業を容易に行うことができる。
【0138】
さらに、カメラ81により得られた画像データにおける収容状態を利用して、識別情報認識部831aにより該画像データに係るPTPシート1の個体識別情報が認識されて、該個体識別情報が取得される。従って、良否判定結果に係る情報を表示させるための個体識別情報の取得にあたっては、手作業で個体識別情報を入力する等の必要はなく、カメラ81によりPTPシート1を撮像すれば済む。これにより、作業性や利便性を向上させることができる。また、個体識別情報の入力ミスなどに伴い、本来表示させるべき良否判定結果とは異なる良否判定結果が表示されることをより確実に防止できる。
【0139】
加えて、透過表示部822,823では、良否判定に用いられた検査用の画像データを表示させることができる。そのため、良否判定結果に係る情報及び検査用の画像データを確認しながら作業を行うことができ、作業性や利便性を一層向上させることができる。
【0140】
さらに、良否判定結果に用いられた画像データとPTPシート1の実物とを比較することで、良否判定結果に係る情報として、該PTPシート1に係るものが表示されているか(該PTPシート1と異なるPTPシート1の良否判定結果に係る情報が誤って表示されていないか)を確認することができる。これにより、誤った良否判定結果に基づき不適切な作業が行われることをより確実に防止できる。
【0141】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0142】
(a)上記実施形態において、個体識別情報は、複数の錠剤5に係る複数の収容状態のみに基づくものとされている。これに対し、個体識別情報は、
図18に示すように、複数の錠剤5に係る複数の収容状態と、PTPシート1における情報表示部9(
図19参照)の相対位置とに基づくものであってもよい。
【0143】
ここで、情報表示部9は、複数のPTPシート1に対し共通で設けられるものであり、個々のPTPシート1ごとに異なるものではない。情報表示部9で示す内容としては、例えば、「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」及び「ロット番号」などを挙げることができる。本例において、情報表示部9は、「製品名」を示す「C錠」と「含量」を示す「50mg」とによって構成されている。また、情報表示部9は、例えば、カバーフィルム4に印刷形成される。勿論、情報表示部9は、例えばバーコードなど、専用の機器を用いることで内容を読み取り可能なものであってもよい。
【0144】
さらに、PTPシート1における情報表示部9の相対位置としては、例えば、検査用の画像データにおけるPTPシート1の端縁に相当する部分から特定の情報表示部9までの距離L(
図19参照)を用いることができる。この場合、
図18に示すように、通し番号が「1」のPTPシート1における個体識別情報は、各錠剤5の収容状態と前記相対位置としての距離L1とに基づくものとされる。同様に、通し番号が「2」~「4」のPTPシート1における個体識別情報は、各錠剤5の収容状態と、前記相対位置としての距離L2,L3,L4とに基づくものとされる。
【0145】
上記のような個体識別情報を利用することで、個体識別情報が収容状態のみに基づく場合と比べて、個体識別情報の種類をより多くすることができる。これにより、複数のPTPシート1において個体識別情報が偶然一致するといった事態をより確実に防止することができる。その結果、統合システム70に記憶された複数のPTPシート1に係る良否判定結果の中から、目当てのPTPシート1に係る良否判定結果をより確実に抽出し、透過表示部822,823にてその良否判定結果に係り情報をより確実に表示させることができる。
【0146】
尚、PTPシート1における情報表示部9の相対位置として、距離L以外の要素を用いてもよい。例えば、前記相対位置として、ポケット部2又は切離用スリット8から情報表示部9までの距離などを用いてもよい。勿論、前記相対位置として、複数種類の情報を用いてもよい。
【0147】
また、PTP包装機10は、情報表示部9が予め付されたカバーフィルム4をフィルム受けロール20及び加熱ロール25へと供給するものであってもよいし、情報表示部9が未形成のカバーフィルム4に対し情報表示部9を形成する表示部形成装置を備えたものであってもよい。表示部形成装置は、例えばロール状に巻回されたカバーフィルム4と両ロール20,25との間に設けられた印刷装置(例えば、インクジェット印刷機やオフセット印刷機、凸版印刷機或いはフレキソ印刷機等)によって構成することができる。
【0148】
(b)個体識別情報は、収容状態やPTPシート1における情報表示部9の相対位置以外の要素であって、個々のPTPシート1で共通に設けられるものの、個々のPTPシート1間で態様(形状など)が相違し得る要素に基づくものであってもよい。このような要素としては、例えば、PTPシート1に形成されるシール目の該PTPシート1における相対位置などを挙げることができる。シール目は、容器フィルム3及びカバーフィルム4を取着する際に、加熱ロール25の外周に設けられた突起(例えば、網目状の突起)がカバーフィルム4に強く圧接されることで形成される。シール目の態様は、個々のPTPシート1で相違し得るため、個体識別情報として、この態様の相違を利用することができる。
【0149】
(c)上記実施形態では、「内容物」として、平面視円形状をなす円盤状の錠剤5を挙げているが、錠剤の形状に関しては、例えば平面視円形状のみならず、平面視多角形状、平面視楕円形状、平面視長円形状等であってもよい。
【0150】
また、例えば錠剤には、医薬のみならず、飲食用に用いられる錠剤なども含まれる。さらに、錠剤には、素錠のみならず、糖衣錠やフィルムコーティング錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠などが含まれる。
【0151】
加えて、内容物は錠剤に限定されるものではなく、
図20に示すように、端部が閉塞した円筒状のボディ91と、該ボディ91の開口部を塞ぐようにして該ボディ91に嵌合されたキャップ92とを有してなるカプセル錠90であってもよい。カプセル錠90は、印刷の内容や形状、色などの相違によりボディ91及びキャップ92の区別が付くものとされる。また、カプセル錠90は、収容時の向きに応じてPTPシート1の表側から見たときにおける収容状態が二種類の異なる状態となり、かつ、PTPシート1により収容されているときに前記収容状態が維持されるものとされる。本例において、収容状態は、PTPシート1の幅方向一端縁側にボディ91が配置される「右向き状態」又は前記一端縁側にキャップ92が配置される「左向き状態」となる。
【0152】
勿論、内容物は、錠剤及びカプセル錠に限定されるものではなく、収容時の向きに応じて収容状態が複数の異なる状態となり、かつ、PTPシート1により収容されているときに前記収容状態が維持されるものであればよい。
【0153】
(d)上記実施形態において、PTPシート1は10個の錠剤5を収容しており、個体識別情報は1024種類とされているが、個体識別情報の種類数については適宜変更してもよい。但し、個体識別情報の種類数を十分に多いものとすべく、1のPTPシート1に収容される内容物の数を6個以上とすることが好ましい。
【0154】
(e)上記実施形態では、収容状態が二種類となるように構成されているが、収容状態が三種類以上となるように構成してもよい。例えば、内容物を、立方体形状をなすとともに各面に異なる内容の印刷部が形成されてなるものとした場合、内容物の収容時の向きに応じて収容状態を少なくとも六種類の異なる状態とすることができる。
【0155】
(f)上記実施形態では、印刷部5g,5kにおける内容の相違を利用して、錠剤5の表裏の区別が付くように構成されている。これに対し、表面5b及び裏面5cにおいて、刻印の内容、形状又は色などを相違させることで、錠剤5の表裏の区別が付くように構成してもよい。勿論、両面5b,5cのうちの一方のみに印刷部や刻印、割線などを設けることによって、錠剤5の表裏の区別が付くように構成してもよい。
【0156】
(g)上記実施形態では、不良品の錠剤5に対応してマークMを表示したり、不良品のシート部分に対応してマークNを表示したりすることで、透過表示部822,823にて錠剤5及びシート部分の良否判定結果に係る情報を表示するように構成されているが、良否判定結果に係る情報の表示態様を適宜変更してもよい。例えば、文字情報によって、良否判定結果に係る情報を表示するように構成してもよい。
【0157】
また、シート部分の良否判定結果に係る情報については、不良発生部分を特定可能な情報を合わせて表示してもよい。
【0158】
(h)上記実施形態では、錠剤5の収容状態は特段制御されておらず、ランダムに決定されるようになっている。これに対し、充填装置21を制御し、ポケット部2に充填される錠剤5の向きを変動させることで、個々の錠剤5の収容状態を制御可能に構成してもよい。このような構成は、例えば、次のようにして実現することができる。
【0159】
すなわち、
図21に示すように、充填装置21は、多数の錠剤5を貯留可能に貯留部211と、貯留部211から錠剤5を供給する供給シュート212と、供給シュート212から供給された錠剤5を吸着しつつ回転することで、錠剤5を下流へと搬送しつつ、最終的にポケット部2へと充填する複数のロータリドラム213a,213b,213cとを備えたものとされる。
【0160】
ロータリドラム213a,213b,213cの外周には、錠剤5を吸着するための複数の吸着部213dが設けられている。この吸着部213dは、ロータリドラム213a,213b,213cの周方向に並んでおり、この周方向に並ぶ吸着部213dの列は、容器フィルム3におけるポケット部2の列数と同数(本実施形態では5列)設けられている。
【0161】
また、充填装置21は、ロータリドラム213aに対応する第一印刷用カメラ214及び第一印刷装置215と、ロータリドラム213bに対応する第二印刷用カメラ216及び第二印刷装置217とを備えたものとされる。尚、ロータリドラム213cに対応して、第一印刷用カメラ214及び第一印刷装置215を設けてもよい。
【0162】
各印刷用カメラ214,216は、錠剤5の表面5b又は裏面5cを撮像し、印刷装置215,217による錠剤5の印刷範囲を特定するための画像データを取得する。
【0163】
各印刷装置215,217は、それぞれ所定のインクジェット方式(例えばピエゾ方式やサーマル方式)の印刷ヘッドを用いて錠剤5に対し非接触で印刷を行うものであり、ロータリドラム213a,213bの軸方向に並ぶ5つの吸着部213d(錠剤5)に対応する、5つの印刷ヘッド(不図示)を備えている。各印刷ヘッドは、複数の吐出ノズル(不図示)を有している。そして、吐出ノズルから可食性インクの液滴を吐出することで、錠剤5に印刷部5g,5kが形成される。インクの吐出対象となる吐出ノズルを選択することで、第一印刷部5g又は第二印刷部5kを選択的に形成することができる。
【0164】
また、本例では、ポケット部2に錠剤5を充填したときに、第一印刷装置215により形成された第一印刷部5g又は第二印刷部5kが、ポケット部2の底壁部側に配置される。従って、錠剤5の収容状態は、第一印刷装置215によって、第一印刷部5g及び第二印刷部5kのうちのどちらを形成したかによって決定される。尚、ポケット部2の底壁部とは、ポケット部2のうち、収容された錠剤5の表面5b又は裏面5cと対向する部位である。
【0165】
さらに、充填装置21に加えて、充填装置21の各機構部(供給シュート212、ロータリドラム213a,213b,213c、カメラ214,216,218、印刷装置215,217)を制御する収容状態制御部219が設けられる。収容状態制御部219は「収容状態制御手段」に相当する。
【0166】
ここで、収容状態制御部219は、CPUやROM、RAMなどを備えたコンピュータシステムにより構成されている。収容状態制御部219には、各印刷部5g,5kを形成するための印刷データ(印刷内容に係るデータ)や、印刷装置215,217による印刷内容を制御するための印刷制御データなどが予め記憶されている。
【0167】
収容状態制御部219は、各印刷用カメラ214,216により取得された画像データに基づき、錠剤5の位置に応じた適切な位置に印刷部5g,5kを形成するように各印刷装置215,217を制御する。
【0168】
また、収容状態制御部219は、前記印刷制御データに基づき各印刷装置215,217を制御することで、第一印刷装置215により第一印刷部5g又は第二印刷部5kを選択的に形成する。これにより、結果的にポケット部2に充填される錠剤5の向きが変動することとなり、個々の錠剤5に係る収容状態が制御される。例えば個体識別情報を「0000011111」とする場合、収容状態制御部219は、ロータリドラム213a,213bの軸方向に並ぶ一列分の錠剤5(錠剤番号J6~J10の錠剤5)の全てに第二印刷部5kを形成した後、次の一列分の錠剤5(錠剤番号J1~J5の錠剤5)の全てに第一印刷部5gを形成するように、第一印刷装置215を制御する。これにより、個体識別情報が「0000011111」のPTPシート1を得ることができる。
【0169】
上記のように構成することで、収容状態ひいては個体識別情報をPTPシート1ごとに個別に決定することができる。従って、複数のPTPシート1において個体識別情報が偶然一致するといった事態を一層確実に防止することができる。
【0170】
尚、PTPシート1ごとに個体識別情報を個別に決定可能な装置としては、上記の他に、例えば、表面5bが下向きになった状態で錠剤5をポケット部2に充填する第一充填装置と、裏面5cが下向きになった状態で錠剤5をポケット部2に充填する第二充填装置と、両充填装置を制御可能な収容状態制御部とを備えた装置を挙げることができる。両充填装置は、容器フィルム3の搬送方向に並ぶポケット部2の各列に対応してそれぞれ設けられる。従って、ポケット部2の列数が5列である場合、第一充填装置及び第二充填装置は、それぞれ5つずつ設けられる。また、収容状態制御部は、ポケット部2ごとに錠剤5の充填元となる装置を第一充填装置及び第二充填装置の中から選択し、選択した充填装置からポケット部2へと充填を行うように該充填装置を制御する。これにより、ポケット部2に充填される錠剤5の向きを変動させて、個々の錠剤5に係る収容状態を制御することができる。
【0171】
(i)上記実施形態において、統合システム70に記憶する個体識別情報は、検査用の画像データに基づき識別情報特定部71によって取得されたものとされている。これに対し、統合システム70に記憶する個体識別情報を、収容状態制御部219による充填装置21(特に印刷装置215,217)の制御に係る情報に基づくものとしてもよい。例えば、統合システム70は、前記印刷制御データに基づきPTPシート1の個体識別情報を取得し、この個体識別情報を統合記憶装置72に記憶するものであってもよい。
【0172】
この場合には、統合システム70に記憶する個体識別情報を簡便に得ることができ、システムの簡素化を図ることができる。
【0173】
(j)上記実施形態において、識別情報取得部87は、カメラ81及び識別情報認識部831aにより構成されているが、識別情報取得部は、外部から個体識別情報を取得可能なものであればよい。従って、例えば、個体識別情報を入力可能な入力手段(例えばキーボードやタッチパネルなど)によって識別情報取得部を構成してもよい。
【0174】
(k)上記実施形態では、MRメガネ80を用いて、外部からの個体識別情報の取得や、良否判定結果などの表示を行うように構成されているが、MRメガネを用いなくてもよい。例えば、MRメガネ80に代えて、制御処理装置83と同様の機能を担う端末装置(例えばコンピュータ等)と、カメラ81と同様の機能を担う「撮像手段」としての撮像装置と、透過表示部822,823と同様に良否判定結果に係る情報などを表示可能な「表示手段」としての表示装置とを用いてもよい。この場合、撮像装置によってPTPシート1を撮像することで得られた画像データに基づき、端末装置によって該PTPシート1の個体識別情報が取得される。そして、取得された個体識別情報が端末装置から統合システム70に送信されることで、統合システム70から該個体識別情報に係る良否判定結果などが端末装置に受け渡される。その上で、端末装置から表示手段に対し、受け渡された良否判定結果に係る情報などが出力されることで、該表示手段にて良否判定結果に係る情報などを表示することができる。
【0175】
また、MRメガネ80に代えて、端末装置、撮像装置及び表示装置としての機能を一体的に備えたスマートフォンやタブレットPCなどを用いてもよい。
【0176】
(l)MRメガネ80(識別情報取得部87)によって取得された個体識別情報と同一の個体識別情報を有する不良品のPTPシート1が複数存在する場合に対応すべく、これら不良品のPTPシート1の良否判定結果に係る情報などを透過表示部822,823にて選択的に表示可能とする機能を設けてもよい。勿論、複数のPTPシート1に係る良否判定結果などが一度に表示されるように構成してもよい。
【0177】
(m)上記実施形態では、錠剤5及びシート部分が「確認対象物」に相当し、錠剤5及びシート部分の良否がそれぞれ判定されるとともに、透過表示部822,823にて錠剤5及びシート部分の良否判定結果に係る情報が表示されるように構成されている。これに対し、錠剤5及びシート部分のうちの一方の良否が判定されるとともに、透過表示部822,823にて一方の良否判定結果に係る情報が表示されるように構成してもよい。この場合、錠剤5及びシート部分のうちの一方が「確認対象物」に相当する。
【0178】
(n)上記実施形態では、「シート状包装体」としてPTPシート1を挙げているが、「シート状包装体」は、PTPシート以外のブリスタシートやSP(Strip Package)包装体などであってもよい。
【0179】
(o)上記実施形態において、容器フィルム3は透明又は半透明であり、PTPシート1の表側からポケット部2を通して錠剤5が視認可能とされている。つまり、錠剤5は、目視により視認可能とされている。これに対し、容器フィルム3を不透明な材料により構成し、錠剤5を目視により視認することができないように構成してもよい。この場合、錠剤5の収容状態は、例えばX線カメラなどを用いることで把握することができる。
【0180】
(p)上記実施形態では、ポケット部2に錠剤5が充填されていない場合、すなわち、「欠錠」が生じた場合の個体識別情報について特に記載していないが、「欠錠」を一種の収容状態と捉えて、個体識別情報を設定してもよい。例えば、「欠錠」を、基本的な収容状態(上記実施形態における「表状態」及び「裏状態」)とは異なる収容状態として捉えるようにしてもよい。また、便宜上、「欠錠」を、基本的な収容状態のうちの1つ(上記実施形態における「表状態」及び「裏状態」のうちの1つ)として捉えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0181】
1…PTPシート(シート状包装体、ブリスタシート)、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤(内容物)、9…情報表示部、10…PTP包装機(ブリスタ包装機)、20…フィルム受けロール(取着手段)、21…充填装置(充填手段)、25…加熱ロール(取着手段)、37…シート打抜装置(切離手段)、51…検査用カメラ(検査用撮像手段)、52…良否判定装置(良否判定手段)、60…良否確認システム、70…統合システム、71…識別情報特定部(識別情報特定手段)、81…カメラ(撮像手段)、87…識別情報取得部(識別情報取得手段)、219…収容状態制御部(収容状態制御手段)、822,823…透過表示部(表示手段)、831a…識別情報認識部(識別情報認識手段)、833…判定結果受取部(判定結果受取手段)、834…表示制御部(表示制御手段)。