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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】消音装置およびガス消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/02 20060101AFI20230906BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20230906BHJP
   B05B 1/00 20060101ALI20230906BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A62C31/02
A62C35/02 A
B05B1/00 A
G10K11/16 100
G10K11/16 140
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021055195
(22)【出願日】2021-03-29
(62)【分割の表示】P 2020187220の分割
【原出願日】2010-07-15
(65)【公開番号】P2021104350
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-03-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2009244986
(32)【優先日】2009-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2010023575
(32)【優先日】2010-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2010086586
(32)【優先日】2010-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1151800(EP,A2)
【文献】特開平6-26322(JP,A)
【文献】特開2006-307719(JP,A)
【文献】特開平9-324617(JP,A)
【文献】特表2003-530922(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0700693(EP,A1)
【文献】実開昭56-161110(JP,U)
【文献】実開平5-49051(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に螺合する噴射ヘッドと、
前記噴射ヘッドから噴射される消火ガスが通過する多孔質金属からなる吸音材とを備え、
前記噴射ヘッドは、前記配管から消火ガスが供給されるノズル部と、前記吸音材よりも大径である外周面とを有し、
前記噴射ヘッドの前記ノズル部から高速で噴射された消火ガスを、前記吸音材で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げることで消音し、
前記吸音材は、前記配管に近い側の第一平面、前記第一平面と対向配置されて前記配管から遠い側の第二平面、前記第一平面および前記第二平面の間に設けられた周面とを有しており、前記第一平面から前記第二平面まで前記吸音材が隙間なく詰められており、
前記第二平面および/または前記周面側に消火ガスを放出し、前記第一平面側に消火ガスを放出せず、前記吸音材の前記第二平面は、前記噴射ヘッドに螺合する部材によって支持されている、消音装置。
【請求項2】
請求項1に記載の消音装置と、前記消音装置に消火ガスを供給する前記配管とを備えた、ガス消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に建物の消火対象区画内にNガスまたはハロゲン化物ガスなどの消火ガスを消火剤として放出することによって、消火対象区画内のO濃度を低下させて消火するガス消火設備に関し、さらに詳しくは消火対象区画内に設けられる噴射ヘッドから消火ガスを噴射した際に発生する大音響を低減するために好適に実施することができるガス消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、消火剤としてCOガスおよびNガスおよびハロゲン化物などの消火ガスを消火対象区画内に放出して、その消火対象区画内のO濃度を低下させることによって消火を行うガス消火設備が各種の建物に装備されている。
【0003】
図16は、従来技術のガス消火設備で用いられる消火ガス噴射部1を示す斜視図である。消火ガス噴射部1は、消火ガス供給源2から火災発生時に供給される高圧の消火ガスを噴射する噴射ヘッド3と、噴射ヘッド3が接続される導管4とを備える。
【0004】
導管4は、消火ガス供給源2に接続される主管5と、主管5に介在される分岐管6と、分岐管6によって主管5からの消火ガスが導かれ、前記噴射ヘッド3が接続される枝管7とを有する。主管5は、建物の躯体またはその躯体に固定された基台8およびブラケット9にUボルトなどの締結具10によって締結され、噴射ヘッド3の振動および変位が抑制された状態で設置されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-173565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の技術では、消火ガス供給源2から導管4を経て供給される高圧の消火ガスを噴射ヘッド3から大量に噴射するため、噴射ヘッド3のノズル部112に形成されるノズル孔116から高速で噴射される消火ガス流によって、いわば空気を切り裂くような大音響を発生してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、噴射ヘッドからの消火ガスの噴射流に起因する音響を減衰させることができるガス消火設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(a)高圧の消火ガスを導く導管14と、
(b)導管14に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源15と、
(c)噴射ヘッド13であって、
高圧の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔16が形成されるノズル部12と、
導管14の端部に接続される噴射ヘッド端部とを有する噴射ヘッド13と、
(d)ノズル部12からの消火ガスの放出による音響を減衰させて消火対象区画内の空間へ噴射する消音装置17,17b、17c、17f、17g、17hであって、
噴射ヘッド13に着脱可能である取付け部43を有する消音装置17,17b、17c、
17f、17g、17hとを備えることを特徴とするガス消火設備である。
本発明は、また、
噴射ヘッド13のノズル部12は、噴射ヘッド13における消火ガスの噴射方向下流側(
図2,4,5,13,14,15の左方)に設けられ、
前記噴射ヘッド端部は、噴射ヘッド13における消火ガスの噴射方向上流側(図2,4,
5,13,14,15の右方)に設けられ、
ノズル孔16と、前記噴射ヘッド端部とは、導管14の前記端部の軸線に沿って延びることを特徴とする。
本発明は、また、
噴射ヘッド端部は、第1ねじによって導管14の端部に接続され、
消音装置17,17b、17c、17f、17g、17hは、第2ねじによって噴射ヘッド13のノズル部12に、着脱可能であり、
消音装置17,17b、17c、17f、17g、17hは、導管14の前記端部の軸線に沿って延びる軸線を有することを特徴とする。
本発明は、図2のように、
消音装置17は、筒状の周壁25と、周壁25の軸線方向一端部に、該周壁25の軸線に垂直に形成される端壁26と、周壁25の軸線方向他端部に、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部27とを含み、
端壁26には、周壁25の軸線上にガス放出孔34が該端壁の厚み方向に貫通して形成され、
周壁25、端壁26および取付け部27によって規定される内部空間には、周壁25の内周面に沿って装着された筒状の吸音材33が収容されることを特徴とする。
本発明は、図4のように、
消音装置17bは、
(e)ノズル孔16の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状の周壁35であって、
ノズル孔16の出口から消火ガスの噴射方向下流に拡がった内部空間39を形成する周壁35と、
(f)周壁35の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に形成される端壁36であって、前記周壁35とともに前記内部空間39を規定し、この端壁36には、複数の通気孔38が該端壁36の厚み方向に貫通して形成される端壁36と、
(g)周壁35の軸線方向のノズル部12に近い他端部に形成され、噴射ヘッド13に着脱可能に取付けられる取付け部37と、
(h)前記内部空間39に詰めて装填されて収容される吸音材40であって、
微細な空隙を有し、
噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、前記内部空間39に収容された吸音材40で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記通気孔38から前記消火対象区画内の空間へ放出する吸音材40とを含むことを特徴とする。
本発明は、図5のように、
消音装置17cは、
(i)導管14の前記端部の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状の周壁41であって、
ノズル孔16の出口から消火ガスの噴射方向下流で拡がった内部空間45を形成し、
複数の通気孔44が分布して、該周壁41の厚み方向に貫通して形成される周壁41と、(j)周壁41の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に、該周壁41の軸線に垂直に形成され、前記周壁41とともに内部空間45を規定する端壁42と、
(k)周壁41の軸線方向のノズル部12に近い他端部に形成される取付け部43であって、噴射ヘッド13のノズル部12に、前記第2ねじによって、着脱可能である取付け部43と、
(l)前記内部空間45に隙間なく詰めて装填されて収容される吸音材46であって、微
細な空隙を有し、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、前記内部空間45内で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記通気孔44から前記消火対象区画内の空間へ放出する吸音材46とを含むことを特徴とする。
本発明は、図13のように、
ノズル孔16は、導管14の端部の導管軸線に沿って延びるノズル孔軸線L12を有し、ノズル孔16のノズル孔軸線L12に垂直な断面は、ノズル孔軸線L12に沿って一様であり、
噴射ヘッド13のノズル部12におけるノズル孔16が開口するノズル孔16の出口端部まわりの端面12aは、ノズル孔軸線L12に垂直な仮想平面上に形成され、
消音装置17fは、
(m)ノズル孔軸線L12に沿って延びる周壁軸線L121を有する円筒状の周壁121であって、
ノズル孔16の出口から消火ガスの噴射方向下流に拡がった内部空間124を形成する周壁121と、
(n)周壁121における周壁軸線L121方向のノズル部12から遠ざかった一端部に連なって形成され、前記周壁121とともに前記内部空間124を規定し、透孔122bが周壁軸線L121方向に貫通して形成される端壁122と、
(o)周壁121における周壁軸線L121方向のノズル部12に近い他端部に形成され、噴射ヘッド13に取付けられる取付け部123と、
(p)前記内部空間124に隙間なく詰めて装填されて収容される吸音材125であって、
多孔質材料から成り、
周壁軸線L121に一致する吸音材軸線L125を有する柱状であり、
吸音材125の前記ノズル部12から遠ざかった一端面125bと、前記ノズル部12に近い他端面125cとを有し、
吸音材125の前記ノズル部12に近い前記他端面125cは、吸音材軸線L125に垂直な仮想平面上に形成され、
取付け部123が噴射ヘッド13に取付けられることによって、前記一端面125b側が前記端壁122に支持されるとともに、前記他端面125cと前記ノズル部12の前記端面12aとが面接触し、
微細な空隙を有し、
噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、前記内部空間124に収容された吸音材125で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記透孔122bから前記消火対象区画内の空間へ放出する吸音材125とを含むことを特徴とする。
本発明は、図14のように、
噴射ヘッド13のノズル部12におけるノズル孔16が開口するノズル孔16の出口端部まわりの端面は、ノズル孔16の軸線に垂直な仮想平面上に形成され、
消音装置17gは、
(q)ノズル孔16の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状の周壁131であって、
ノズル孔16の出口から消火ガスの噴射方向下流に拡がった内部空間140を形成する周壁131と、
(r)周壁131の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に形成され、前記周壁131とともに前記内部空間140を規定し、透孔が周壁131の軸線方向に貫通して形成される端壁143と、
(s)周壁131の軸線方向のノズル部12に近い他端部に形成され、噴射ヘッド13に取付けられる取付け部133と、
(t)前記内部空間140に収容される第1、第2および第3吸音材134,135,1
36であって、多孔質金属から成り、周壁131の軸線方向に、前記ノズル部12から端
壁143に、第1吸音材134と、
第3吸音材136と、第2吸音材135とが、この順序で設けられ、
第1吸音材134と第2吸音材135とは、周壁131の軸線に一致する軸線を有する柱
状であり、
第3吸音材136は、周壁131の軸線に一致する軸線を有する筒状であり、
第1吸音材134の前記ノズル部12に近い端面は、第1吸音材134の前記軸線に垂直な仮想平面上に形成され、
第2吸音材135は、前記ノズル部12から遠ざかった端面を有し、
取付け部133が噴射ヘッド13に取付けられることによって、第2吸音材135の前記ノズル部12から遠ざかった前記端面と前記端壁143とが接触するとともに、第1吸音材134の前記ノズル部12に近い前記端面と前記ノズル部12の前記端面とが面接触し、
これらの第1、第2および第3吸音材134,135,136は、
微細な空隙を有し、
噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、前記内部空間140に収容された第1~第3吸音材134,135,136で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記透孔122bから前記消火対象区画内の空間へ放出する第1、第2および第3吸音材134,135,136とを含むことを特徴とする。
本発明は、図15のように、
噴射ヘッド13は、
導管14の端部に接続され、この端部の軸線に追って延び、複数のノズル孔16が厚み方向に貫通して形成される筒部167と、
導管14の端部から遠ざかった筒部167の軸線方向一端部を塞ぐ端壁部165とを有し、
消音装置17hは、
(u)第1吸音材152であって、
筒状に形成され、
噴射ヘッド13の筒部167が挿通され、
噴射ヘッド13の筒部167の外周面であるノズル孔16の出口端部まわりの円弧状端面に、面接触する内周面を有する第1吸音材152と、
(v)ケーシング150であって、
(v1)噴射ヘッド13の筒部167の軸線に沿って延び、第1吸音材152の放射方向に間隔をあけて外囲する筒部157と、
(v2)導管14の端部の近くで筒部157を塞ぎ、噴射ヘッド13に接続されるケーシング端壁部159とを有するケーシング150と、
(w)筒状に形成され、筒部157の内周面に沿って配置され、第1吸音材152の外周面との間に環状の空間170を形成する第2吸音材153と、
(x)ケーシング150の筒部157における導管14の端部から遠ざかった端部に配置され、環状の空間からの消火ガスを消火対象区画内の空間へ放出する第3吸音材156とを含み、
(y)これらの第1、第2および第3吸音材152,153,156は、
微細な空隙を有し、
噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収することを特徴とする。
本発明は、
消音装置17b;17c;17f;17g;17hは、
噴射ヘッド13のノズル部12におけるノズル孔16が開口するノズル孔16の出口端部まわりの端面12aに、吸音材40;46;125;134;152の端面125cが面接触し、吸音材40;46;125;134;152は、微細な空隙を有し、
噴射ヘッド13に形成されたノズル部12のノズル孔16から高速で噴射された消火ガスを、吸音材40;46;125;134;152で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げることを特徴とする。
【0009】
本発明に従えば、消火ガス供給源から導管に供給された高圧の消火ガスは、噴射ヘッドを介して建物内の空間に向けて噴射される。このような噴射ヘッドには消音装置が設けられ、噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射される消火ガスの噴射流に起因する大きな噴射音の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、噴射ヘッドに消音装置が設けられるので、火災発生時に噴射ヘッドのノズル部から消火ガスが噴射されても大きな噴射音が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の一形態のガス消火設備に備えられる消火ガス噴射部11を示す斜視図である。
図2】消音装置17の拡大断面図である。
図3】本発明の一参考例のガス消火設備に備えられる消音装置17aを示す拡大断面図である。
図4】本発明の実施の他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17bを示す拡大断面図である。
図5】本発明の実施のさらに他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17cを示す拡大断面図である。
図6】本発明の他の参考例のガス消火設備の噴射ヘッド50を示す断面図である。
図7図6に示す噴射ヘッド50による効果を説明するための断面図である。
図8】本発明のさらに他の参考例のガス消火設備に備えられる消音装置60を示す拡大断面図である。
図9】本発明のさらに他の参考例のガス消火設備に備えられる消音装置60aを示す拡大断面図である。
図10】本発明のさらに他の参考例のガス消火設備に備えられる消音装置17dを示す拡大断面図である。
図11】消音装置17dによる消音効果を説明するためのグラフである。
図12】本発明のさらに他の参考例のガス消火設備に備えられる消音装置17eを示す拡大断面図である。
図13】本発明の実施のさらに他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17fを示す拡大断面図である。
図14】本発明の実施のさらに他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17gを示す拡大断面図である。
図15】本発明の実施のさらに他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17hを示す拡大断面図である。
図16】従来技術のガス消火設備で用いられる消火ガス噴射部1を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の一形態のガス消火設備に備えられる消火ガス噴射部11を示す斜視図である。本実施形態のガス消火設備は、建物の消火対象区画内に設けられ、高圧の消火ガスを前記消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル部12を有する噴射ヘッド13と、噴射ヘッド13が接続され、噴射ヘッド13に高圧の消火ガスを導く導管14と、導管14に高圧の不活性ガスを供給する消火ガス供給源15と、噴射ヘッド13に設け
られ、ノズル部12に形成されるノズル孔16から噴射される消火ガスの噴射による噴射音などに起因して発生する音響を減衰させる消音装置17とを含む。
【0013】
前記消火ガスは、NガスおよびCOガスなどの不活性ガスまたはハロゲン化物ガスなどの活性ガスによって実現され、このような消火ガスを消火剤として放出することによって、消火対象区画内のO濃度を低下させて消火することができる。
【0014】
前記噴射ヘッド13と消音装置17とによって、前記消火ガス噴射部11を構成する。このような消火ガス噴射部11には、消火ガス供給源15から導管14を経て噴射ヘッド13に供給される。導管14は、消火ガス供給源15に接続される主管23と、主管23に介在される分岐管18と、分岐管18に接続される枝管19とを含み、このような導管14を経て消火ガス供給源15からの高圧の消火ガスが前記噴射ヘッド13に導かれる。導管14は、基台20およびブラケット21にUボルトなどの締結具22によって締結され、振動および変位が抑制された状態で建物の躯体に設置されている。
【0015】
図2は、消音装置17の拡大断面図である。前記消音装置17は、円筒状の周壁25と、周壁25の軸線方向一端部に該周壁25の軸線に垂直に形成される端壁26と、周壁25の軸線方向他端部に、噴射ヘッド13に着脱可能に接続される取付け部27と、周壁25内にその内周面に沿って装着されて収容される円筒状の吸音材33とを含む。このような吸音材33としては、たとえばワイヤメッシュを複数積層して構成されてもよい。前記端壁26には、同一軸線上にガス放出孔34が形成される。
【0016】
このように構成される消音装置17を用いることによって、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスの噴射流に起因する音響振動は、吸音材33によって吸収され、ガス放出孔34から外部へ放出される。これによって、消火ガスの噴射に起因する噴射音の発生を抑制することができる。
【0017】
図2の消音装置17は、筒状の周壁25と、周壁25の軸線方向一端部に、該周壁25の軸線に垂直に形成される端壁26と、周壁25の軸線方向他端部に、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部27とを含む。端壁26には、周壁25の軸線上にガス放出孔34が該端壁の厚み方向に貫通して形成される。周壁25、端壁26および取付け部27によって規定される内部空間には、周壁25の内周面に沿って装着された筒状の吸音材33が収容される。
【0018】
図3は、本発明の一参考例のガス消火設備に備えられる消音装置17aを示す拡大断面図である。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本参考例の消音装置17aは、円筒状の周壁25と、周壁25の軸線方向一端部に該周壁25の軸線に垂直に形成される端壁26と、周壁25の軸線方向他端部に、噴射ヘッド13が一体的に形成される取付け部27と、噴射ヘッド13のノズル部12における消火ガスの噴射方向下流側に臨む部分28に設けられる内筒体29とを含む。
【0019】
内筒体29は、複数の透孔30が形成される直円筒状の筒状部31と、筒状部31の軸線方向一端部に、該筒状部31の軸線に垂直に形成される端板32とを有する。
【0020】
このような消音装置17によって、噴射ヘッド13のノズル部から高速で噴射された消火ガスは、内筒体29内で、この内筒体29の筒状の端板32に衝突し、筒状部31に形成される複数の透孔30から放出された後、さらに筒状部31と周壁25との間の空間を経て、端壁26に形成されるガス放出孔34から外部へ放出され、消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0021】
図4は、本発明の実施の他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17bを示す拡大断面図である。本実施形態の消音装置17bは、円筒状の周壁35と、周壁35の軸線方向一端部に該周壁35の軸線に垂直に形成される端壁36と、周壁35の軸線方向他端部に噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部37とを有する。端壁36には、複数の通気孔38が該端壁36の厚み方向に貫通して形成される。
【0022】
消音装置17bはまた、周壁35、端壁36および取付け部37によって規定される内部空間39に、吸音材40が収容される。この吸音材40としては、ワイヤメッシュを複数積層して構成されてもよい。
【0023】
図4の消音装置17bは、(e)ノズル孔16の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状の周壁35であって、ノズル孔16の出口から消火ガスの噴射方向下流に拡がった内部空間39を形成する周壁35と、(f)周壁35の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に形成される端壁36であって、前記周壁35とともに前記内部空間39を規定し、この端壁36には、複数の通気孔38が該端壁36の厚み方向に貫通して形成される端壁36と、(g)周壁35の軸線方向のノズル部12に近い他端部に形成され、噴射ヘッド13に着脱可能に取付けられる取付け部37と、(h)前記内部空間39に詰めて装填されて収容される吸音材40であって、微細な空隙を有し、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、前記内部空間39に収容された吸音材40で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記通気孔38から前記消火対象区画内の空間へ放出する吸音材40とを含む。
【0024】
このように構成される消音装置17aを備えるガス消火設備によって、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスは、周壁35内の空間を経て端壁36に衝突し、この端壁36に形成される複数の通気孔38から外部へ放出される。このような消音装置の構成によってもまた、大音響が発生することが防がれる。
【0025】
図5は、本発明の実施のさらに他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17cを示す拡大断面図である。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の消音装置17cは、円筒状の周壁41と、周壁41の軸線方向一端部に該周壁41の軸線に垂直に形成される端壁42と、周壁41の軸線方向他端部に、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部43とを有する。周壁41には、複数の通気孔44が該周壁41の厚み方向に貫通して形成される。
【0026】
このような消音装置17cには、周壁41、端壁42および取付け部43によって規定される内部空間45に吸音材46が収容される。この吸音材46としては、たとえばワイヤメッシュを複数積層して構成されてもよい。
【0027】
図5の消音装置17cは、(i)導管14の前記端部の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状の周壁41であって、ノズル孔16の出口から消火ガスの噴射方向下流で周壁41の軸線に垂直に拡がった内部空間45を形成し、複数の通気孔44が分布して、該周壁41の厚み方向に貫通して形成される周壁41と、(j)周壁41の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に、該周壁41の軸線に垂直に形成され、前記周壁41とともに内部空間45を規定する端壁42と、(k)周壁41の軸線方向のノズル部12に近い他端部に形成される取付け部43であって、噴射ヘッド13のノズル部12に、前記第2ねじによって、着脱可能である取付け部43と、(l)前記内部空間45に隙間なく詰めて装填されて収容される吸音材46であって、微細な空隙を有し、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、前記内部空間45内で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記通気孔44から前記消火対象区画内の空間へ放出する吸音材46とを含む。
【0028】
このように構成される消音装置17cを備えるガス消火設備によって、噴射ヘッド13のノズル部12から噴射された消火ガスは、端壁42に衝突してその流速が減衰し、周壁41に形成される複数の通気孔44から外部に放出される。これによって、消火ガスに噴射に起因して大きな音響が発生することが防がれる。
【0029】
図6は、本発明のさらに他の参考例のガス消火設備の噴射ヘッド50を示す断面図であり、図7図6に示す噴射ヘッド50による効果を説明するための断面図である。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本参考例のガス消火設備は、建物内に設けられ、高圧の消火ガスを前記建物内の空間に向けて噴射するノズル部12を有する噴射ヘッド50と、噴射ヘッド50が接続され、噴射ヘッド50に高圧の消火ガスを導く導管14と、導管14に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源15とを含む。
【0030】
噴射ヘッド50のノズル部12には、前記導管14の枝管19の内周面51に滑らかに連なる内周面52を有するノズル孔16が形成される。
【0031】
このように構成される噴射ヘッド50を用いることによって、消火ガス供給源15から導管14に供給された高圧の消火ガスは、噴射ヘッド50のノズル孔16を介して建物内の空間に向けて噴射される。このとき、噴射ヘッド50には導管14の枝管19の内周面51に滑らかに連なる内周面52を有するノズル孔16が形成されるので、噴射ヘッド50のノズル部12から高速で噴射される消火ガスの噴射流、たとえば図7に示す噴射ヘッド50aにおいて、導管14の枝管19の内径D1よりも小さい内径D2のノズル孔16の流入口に臨むエッジ部55などに起因する大きな噴射音の発生を防止することができる。
【0032】
図8は、本発明のさらに他の参考例のガス消火設備に備えられる消音装置60を示す拡大断面図である。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本参考例の消音装置60は、円筒状の周壁61と、周壁61の軸線方向一端部に、枝管19に着脱可能に形成される取付け部62と、周壁61の軸線方向他端部に、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部63と、前記一端部に該周壁61の軸線に垂直に形成される端壁64と、前記他端部に該周壁61の軸線に垂直に形成される端壁65とを有する。
【0033】
端壁64には、少なくとも1つの透孔66が該端壁64の厚み方向に貫通して形成される。少なくとも1つの透孔66は、周壁61の軸線を中心として該端壁64の中央部68に形成され、枝管19から供給される消火ガスの流量を絞る。端壁65には、複数の透孔67が該端壁65の厚み方向に貫通して形成される。複数の透孔67は、周壁61の軸線を中心として該端壁65の中央部69を除く残余の周辺部70に形成される。端壁64,65は、たとえばパンチングメタルによって構成される。
【0034】
このような消音装置60によって、端壁64に形成される透孔66から高速で噴射された消火ガスは、消音装置60内で、端壁65の中央部69に衝突してその流速が減衰し、端壁65に形成される複数の透孔67から、端壁65と噴射ヘッド13とで規定される空間内に放出された後、ノズル部12に形成されるノズル孔16から外部へ放出される。消音装置60は、端壁64に形成される透孔66から高速で噴射された消火ガスを消音装置60内の空間で膨張させることによって、端壁65に形成される透孔67での流速を下げるので、ノズル孔16からの消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0035】
図8に示した参考例では、端壁65の中央部69に透孔67を形成していないが、端壁65の中央部69に透孔67を形成してもよい。端壁65の中央部69に透孔67を形成していない場合の方が、端壁65の中央部69に透孔67を形成する場合よりも、透孔6
6から高速で噴射された消火ガスを跳ね返す量が多く、より流速を下げるので、消音効果は高い。
【0036】
図9は、本発明のさらに他の参考例のガス消火設備に備えられる消音装置60aを示す拡大断面図である。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本参考例の消音装置60aは、円筒状の周壁61と、周壁61の軸線方向一端部に、枝管19に着脱可能に形成される取付け部62と、周壁61の軸線方向他端部に、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部63と、前記一端部に該周壁61の軸線に垂直に形成される端壁64aと、前記他端部に該周壁61の軸線に垂直に形成される端壁65とを有する。
【0037】
端壁64aには、枝管19から供給される高圧の消火ガスを、周壁61および端壁64a,65によって規定される内部空間に噴出する複数のノズル孔71を有する案内部72が、周壁61の軸線上に該内部空間に臨んで形成される。案内部72の複数のノズル孔71は、周壁61の軸線に直交する軸線上に、周壁61の軸線に関して周方向に等角度で間隔をあけて形成される。端壁65には、複数の透孔67が該端壁65の厚み方向に貫通して形成される。複数の透孔67は、周壁61の軸線を中心として該端壁65の中央部69を除く残余の周辺部70に形成される。端壁65は、たとえばパンチングメタルによって構成される。図9に示した参考例では、端壁65の中央部69に透孔67を形成していないが、端壁65の中央部69に透孔67を形成してもよい。
【0038】
このような消音装置60aによって、端壁64aに形成される案内部72のノズル孔71から高速で噴射された消火ガスは、消音装置60a内で、周壁61の内周面に衝突してその流速が減衰し、端壁65に形成される複数の透孔67から、端壁65と噴射ヘッド13とで規定される空間内に放出された後、ノズル部12に形成されるノズル孔16から外部へ放出される。消音装置60aは、ノズル孔71から高速で噴射された消火ガスを消音装置60内の空間で膨張させることによって、端壁65に形成される透孔67での流速を下げるので、ノズル孔16からの消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0039】
図10は、本発明のさらに他の参考例のガス消火設備に備えられる消音装置17dを示す拡大断面図である。消音装置17dは、たとえば消火対象区画の壁面に設けられる噴射ヘッド13に取付けられて好適に使用される。
【0040】
なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本参考例の前記消音装置17dは、円筒状の周壁81と、周壁81の軸線方向一端部に該周壁81の軸線に垂直に形成される端壁82と、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部83を有し、周壁81の軸線方向他端部に該周壁81の軸線に垂直に形成される端壁84と、端壁82と端壁84との間に、周壁81の軸線に垂直に形成される障壁85と、噴射ヘッド13から噴射される消火ガスを、周壁81、端壁82および障壁85によって規定される内部空間である消音室86に導く円筒状の導通管87と、周壁81、端壁84および障壁85によって規定される内部空間である消音室88内の消火ガスを消音装置17dの外部に導く円筒状の通気管89とを含む。
【0041】
周壁81、端壁82および端壁84は、たとえば消音材によって構成される。障壁85には、複数の透孔851が該障壁85の厚み方向に貫通して形成される。障壁85は、たとえばパンチングメタルによって構成される。
【0042】
導通管87は、障壁85を貫通し、消音室86に突き出して配置される。導通管87には、導通管87の軸線方向一端部に噴射ヘッド13に着脱可能に連結される連結部871が形成され、導通管87の軸線方向他端部に端板872が形成される。導通管87の周壁
のうち消音室86に突き出された部分873には、複数の透孔874が導通管87の周壁の厚み方向に貫通して形成される。導通管87のうち複数の透孔874が形成される部分873は、たとえばパンチングメタルによって構成される。通気管89は、障壁85および端壁82を貫通して配置され、消音室88側の開口部に金網891が設けられ、外部への開口部である消火ガス噴射口892から消火ガスを噴射する。通気管89の材料は、たとえば塩化ビニールである。
【0043】
このような消音装置17dによって、導通管87に形成される複数の透孔874から高速で消音室86に噴射された消火ガスは、障壁85に形成される複数の透孔851から消音室88に放出される。透孔851から消音室88に放出された消火ガスは、通気管89を介して消音装置17dの外部へ放出される。消音装置17dは、複数の透孔874から高速で噴射された消火ガスを消音室86内の空間および消音室88内の空間で膨張させることによって、通気管89での流速を下げるので、通気管89からの消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0044】
【表1】
【0045】
表1は、消音装置17dを用いたガス消火設備の実施例1,2についての圧力および流速の計算例を示す。実施例1は、消音装置17dの通気管89の穴径が50mmであり、実施例2は、消音装置17dの通気管89の穴径が80mmである。圧力は、消音室86の圧力であり、流速(m/s)は、通気管89の消火ガス噴射口892での流速である。
【0046】
2気圧の消火ガスを1気圧の大気中に噴射するときの流速は、約340m/sであり、大音響が発生する。消音室86内の圧力を下げることによって、消火ガス噴射口892での流速を下げて、音量を下げることができる。実施例1では、消音室86内の圧力が約1.5気圧であり、消火ガス噴射口892での流速は、約250(m/s)である。実施例2では、消音室86内の圧力が約1.1気圧であり、消火ガス噴射口892での流速は、約100(m/s)である。
【0047】
図11は、消音装置17dによる消音効果を説明するためのグラフである。縦軸が音圧(dB)であり、横軸がノズル部12からの距離(m)である。グラフ91が消音装置を用いない場合のグラフであり、グラフ92が実施例1の場合のグラフであり、グラフ93が実施例2の場合のグラフである。
【0048】
ノズル部12からの距離が2(m)の位置では、消音装置を用いない場合、音圧は約125dBであるが、実施例1では、音圧は約105dBまで下がり、実施例2では、音圧は約100dBまで下がっている。同様に、ノズル部12からの距離が10(m)の位置では、消音装置を用いない場合、音圧は約115dBであるが、実施例1では、音圧は約96dBまで下がり、実施例2では、音圧は約92dBまで下がっている。すなわち、消音装置を用いない場合に比べて、実施例1では、音圧を約20dB下げることができ、実施例2では、音圧を約25dB下げることができる。
【0049】
図12は、本発明のさらに他の参考例のガス消火設備に備えられる消音装置17eを示す拡大断面図である。消音装置17eは、たとえば消火対象区画の天井に設けられる噴射
ヘッド13に取付けられて好適に使用される。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本参考例の前記消音装置17eは、円筒状の周壁81と、周壁81の軸線方向一端部に該周壁81の軸線に垂直に形成される端壁82と、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部83を有し、周壁81の軸線方向他端部に該周壁81の軸線に垂直に形成される端壁84と、端壁82と端壁84との間に、周壁81の軸線に垂直に形成される障壁85と、噴射ヘッド13から噴射される消火ガスを、周壁81、端壁82および障壁85によって規定される内部空間である消音室86に導く円筒状の導通管87と、周壁81、端壁84および障壁85によって規定される内部空間である消音室88内の消火ガスを消音装置17eの外部に導く円筒状の複数の通気管89aとを含む。
【0050】
周壁81、端壁82および端壁84は、たとえば消音材によって構成される。障壁85には、複数の透孔851が該障壁85の厚み方向に貫通して形成される。障壁85は、たとえばパンチングメタルによって構成される。
【0051】
導通管87は、障壁85を貫通し、消音室86に突き出して配置される。導通管87には、導通管87の軸線方向一端部に噴射ヘッド13に着脱可能に連結される連結部871が形成され、導通管87の軸線方向他端部に端板872が形成される。導通管87の周壁のうち消音室86に突き出された部分873には、複数の透孔874が導通管87の周壁の厚み方向に貫通して形成される。導通管87のうち複数の透孔874が形成される部分873は、たとえばパンチングメタルによって構成される。複数の通気管89aは、周壁81の軸線に直交する軸線上に、周壁81の軸線に関して周方向に等角度で間隔をあけて配置され、それぞれ周壁81を貫通して形成される。各通気管89aには、消音装置17eの外部への開口部である消火ガス噴射口892aが形成され、消火ガスをそれぞれの消火ガス噴射口892aから消音装置17eの外部に噴射する。通気管89aの材料は、たとえば塩化ビニールである。
【0052】
このような消音装置17eによって、導通管87に形成される複数の透孔874から高速で消音室86に噴射された消火ガスは、障壁85に形成される複数の透孔851から消音室88に放出される。透孔851から消音室88に放出された消火ガスは、通気管89aを介して消音装置17eの外部へ放出される。消音装置17eは、複数の透孔874から高速で噴射された消火ガスを消音室86内の空間および消音室88内の空間で膨張させることによって、通気管89aでの流速を下げるので、通気管89aからの消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0053】
図13は、本発明の実施のさらに他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17fを示す拡大断面図である。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。消音装置17fは、たとえば消火対象区画の壁面に設けられる噴射ヘッド13に取付けられて好適に使用される。
【0054】
本実施形態の消音装置17fは、筒状の周壁121と、周壁121の軸線方向一端部に該周壁121の軸線に垂直に形成される環状の端壁122と、周壁121の軸線方向他端部に形成され、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部123とを有する。消音装置17fには、噴射ヘッド13、周壁121および端壁122によって規定される内部空間である消音室124が形成される。この消音室124には、柱状の吸音材125が、周壁121の内周面に沿って装着されて収容される。前記周壁121、端壁122および取付け部123を含んでケーシング129を構成する。
【0055】
前記ケーシング129の消音室124に臨む周壁121の内周面121aは、筒状に形成され、消音室124に臨む端壁122の内面122aは、周壁121の軸線L121に垂直な仮想一平面上に形成される。端壁122には、周壁121の軸線L121を中心軸
線とする透孔122bが、該軸線L121方向に貫通して形成される。
【0056】
吸音材125は、柱状であって、その外周面125aは筒状に形成され、吸音材125の軸線L125方向一方側の端面125bおよび他方側の端面125cが、該軸線L125に垂直な仮想一平面上に形成される。噴射ヘッド13のノズル部12における消火ガスの噴射方向下流側の端面12aは、ノズル部12の軸線L12に垂直な仮想一平面上に形成される。
【0057】
消音装置17fは、吸音材125を、その軸線L125が周壁121の軸線L121に一致または略一致するような姿勢で、取付け部123側からケーシング129内の空間に装填される。例えば、吸音材125が直円筒状の場合、取付け部123の内周部に刻設された内ねじに対して、ノズル部12における消火ガスの噴射方向下流側の外周部に刻設された外ねじを螺合させることによって着脱可能に構成される。消音装置17fにおいて、吸音材125は、一方の端面125bと端壁122の内面122aとが面接触し、かつ他方の端面125cとノズル部12の端面12aとが面接触した状態で、消音室124に収容される。すなわち、吸音材125は、消音室124に隙間なく詰まっている。
【0058】
本実施形態では、透孔122bの孔径は有効に消火剤が放出できる大きさに形成される。また、透孔122bの有効な孔径部分は、端壁面側だけでなく、周壁面側にあってもよい。周壁面側に有効な孔径部分を設けることによって、単壁面側の部分の有効面積を小さくすることができるため、消音装置17fを小型化することができる。また、吸音材125をケーシング129内の空間に隙間なく装填することによっても、消音装置17fの小型化を図ることができる。
【0059】
吸音材125は、柱状の空隙が連続した多孔質の金属から成る。このような吸音材125をノズル孔16の直後に設けることによって、消音装置17fは、枝管19側から供給される消火ガスを徐々に減圧膨張し、その流速を下げることができる。これによって、消火ガスの噴射に起因する噴射音の発生を抑制することができる。
【0060】
詳細には、吸音材125が消音室124に隙間なく詰められているので、ノズル孔16から放出される消火ガスを、吸音材125である多孔質の金属内へ直接流入させることができるとともに、多孔質の金属内へ流入した消火ガスを透孔122bから直接放出することができる。このようにノズル孔16から放出される消火ガスを吸音材125へ直接流入させることによって、消火ガスが該ノズル孔16から放出直後に過膨張して衝撃波を発生する前に吸音材125に流入し、急激に減速および拡散する。したがって衝撃波を伴う強い乱れの発生が防がれ、騒音が抑制される。
【0061】
また、吸音材125の微細な空隙によって消火ガスが拡散するため、吸音材125から透孔122bを経て外部へ放出される消火ガスは、流速が減衰しているため、大きな衝撃波を生じることはなく、これによってもまた騒音が抑制される。このようにして、ノズル部12の端面12aと吸音材125の端面125cとの間が離間している場合と比べて、消火ガスの急激な減圧膨張を抑制することができ、さらに、端壁111の内面122aと吸音材125の端面125bとの間が離間している場合と比べて、消火ガスの急激な減圧膨張を抑制することができる。
【0062】
このように、本実施形態の消音装置17fは、吸音材125である多孔質の金属によって、消火ガスを徐々に減圧膨張してその流速を下げることができるので、消火ガスの噴射に起因する噴射音の発生を抑制することができる。さらに、消音装置17fは、消火ガスの急激な減圧膨張を抑制するように構成されているので、急激な減圧膨張に起因する騒音の発生を抑制することができる。
【0063】
図13において、ノズル孔16は、導管14の端部の導管軸線に沿って延びるノズル孔軸線L12を有し、ノズル孔16のノズル孔軸線L12に垂直な断面は、ノズル孔軸線L12に沿って一様である。噴射ヘッド13のノズル部12におけるノズル孔16が開口するノズル孔16の出口端部まわりの端面12aは、ノズル孔軸線L12に垂直な仮想平面上に形成される。消音装置17fは、(m)ノズル孔軸線L12に沿って延びる周壁軸線L121を有する円筒状の周壁121であって、ノズル孔16の出口から消火ガスの噴射方向下流に拡がった内部空間124を形成する周壁121と、(n)周壁121における周壁軸線L121方向のノズル部12から遠ざかった一端部に連なって形成され、前記周壁121とともに前記内部空間124を規定し、透孔122bが周壁軸線L121方向に貫通して形成される端壁122と、(o)周壁121における周壁軸線L121方向のノズル部12に近い他端部に形成され、噴射ヘッド13に取付けられる取付け部123と、(p)前記内部空間124に隙間なく詰めて装填されて収容される吸音材125であって、多孔質材料から成り、周壁軸線L121に一致する吸音材軸線L125を有する柱状であり、吸音材125の前記ノズル部12から遠ざかった一端面125bと、前記ノズル部12に近い他端面125cとを有し、吸音材125の前記ノズル部12に近い前記他端面125cは、吸音材軸線L125に垂直な仮想平面上に形成され、取付け部123が噴射ヘッド13に取付けられることによって、前記一端面125b側が前記端壁122に支持されるとともに、前記他端面125cと前記ノズル部12の前記端面12aとが面接触し、微細な空隙を有し、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、前記内部空間124に収容された吸音材125で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記透孔122bから前記消火対象区画内の空間へ放出する吸音材125とを含む。
【0064】
図14は、本発明の実施のさらに他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17gを示す拡大断面図である。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態において、消音装置17gは、たとえば消火対象区画の壁面に設けられる噴射ヘッド13に取付けられる。
【0065】
本実施形態の消音装置17gは、筒状の周壁131と、周壁131の軸線方向他端部に該周壁131の軸線に垂直に形成される端壁132と、端壁132に連なって形成され、噴射ヘッド13に着脱可能に形成される取付け部133とを有する。周壁131の軸線方向一端部の内周面には、内ねじが刻設されている。消音装置17gには、周壁131、端壁132および噴射ヘッド13によって規定される内部空間である消音室140が形成される。
【0066】
消音室140には、前記軸線方向一端部に設けられる柱状の第1吸音材134と、前記軸線方向他端部に設けられる柱状の第2吸音材135と、第1吸音材134と第2吸音材135との間に設けられる筒状の第3吸音材136と、第1吸音材134を支持する円環状の端板141と、円環状のスペーサ142と、ナット143とが収容される。
【0067】
第1吸音材134および第2吸音材135は、偏平な柱状の多孔質の金属からなる。第1吸音材134は、周壁131の軸線方向一端部に、内周面に沿って装着されて収容され、端壁132の消音室140に臨む一表面および噴射ヘッド13の軸線方向一端部に当接して設けられる。
【0068】
第1吸音材134の前記軸線方向一端部側には、透孔141aを有する円環状の端板141が設けられる。端板141は、第1吸音材134に当接して設けられ、第1吸音材134の前記軸線方向一端部側への移動を規制する。端板141の前記軸線方向一端部側には、第3吸音材136が設けられる。本実施形態では、第3吸音材136は、前述した消
音装置17の吸音材33と同一の部材によって実現される。また第3吸音材136は、多孔質の金属によって実現されてもよい。第3吸音材136は、周壁131の内周面に沿って装着されて収容される。
【0069】
第3吸音材136の前記軸線方向一端部側には、透孔142aを有する円環状のスペーサ142が設けられる。スペーサ142は、第2吸音材135に当接して設けられ、第3吸音材136と第2吸音材135との間隔を維持する。
【0070】
スペーサ142の前記軸線方向一端部側には、第2吸音材135が設けられる。本実施形態において、第2吸音材135は、第1吸音材134と同一形状に形成されるが、第1吸音材134とは異なる形状に形成されても良い。第2吸音材135は、周壁131の内周面に沿って装着されて収容される。
【0071】
第2吸音材135の前記軸線方向一端部側には、ナット143が設けられる。ナット143は、その外周部に外ねじが刻設され、周壁131の開口端側の内周部に刻設された内ねじに螺合した状態で締付けられ、第2吸音材135を前記軸線方向他端部側に押圧しながら支持する。これによって、各吸音材134,135,136、ならびに端板141、スペーサ142が前記軸線方向一端部側へ変位することが規制される。
【0072】
図14において、噴射ヘッド13のノズル部12におけるノズル孔16が開口するノズル孔16の出口端部まわりの端面は、ノズル孔16の軸線に垂直な仮想平面上に形成される。消音装置17gは、(q)ノズル孔16の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状の周壁131であって、ノズル孔16の出口から消火ガスの噴射方向下流に拡がった内部空間140を形成する周壁131と、(r)周壁131の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に形成され、前記周壁131とともに前記内部空間140を規定し、透孔が周壁131の軸線方向に貫通して形成される端壁143と、(s)周壁131の軸線方向のノズル部12に近い他端部に形成され、噴射ヘッド13に取付けられる取付け部133と、(t)前記内部空間140に収容される第1、第2および第3吸音材134,135
,136であって、多孔質金属から成り、周壁131の軸線方向に、前記ノズル部12から端壁143に、第1吸音材134と、第3吸音材136と、第2吸音材135とが、こ
の順序で設けられ、第1吸音材134と第2吸音材135とは、周壁131の軸線に一致
する軸線を有する柱状であり、第3吸音材136は、周壁131の軸線に一致する軸線を有する筒状であり、第1吸音材134の前記ノズル部12に近い端面は、第1吸音材134の前記軸線に垂直な仮想平面上に形成され、第2吸音材135は、前記ノズル部12から遠ざかった端面を有し、取付け部133が噴射ヘッド13に取付けられることによって、第2吸音材135の前記ノズル部12から遠ざかった前記端面と前記端壁143とが接触するとともに、第1吸音材134の前記ノズル部12に近い前記端面と前記ノズル部12の前記端面とが面接触し、これらの第1、第2および第3吸音材134,135,136は、微細な空隙を有し、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、前記内部空間140に収容された第1~第3吸音材134,135,136で拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記透孔122bから前記消火対象区画内の空間へ放出する第1、第2および第3吸音材134,135,136とを含む。
【0073】
本実施形態によれば、消音装置17gは、3つの消音材を収容して設けられる。このように第1吸音材134をノズル孔16の直後に設けることによって、消音装置17gは、枝管19側から供給される消火ガスを、徐々に減圧膨張し、その流速を下げることができる。また第3吸音材136が設けられるので、第3吸音材136によって、消火ガスの噴射流に起因する音響振動を吸収し、消火ガスの噴射に起因する噴射音の発生を抑制することができる。また第2吸音材135が設けられるので、第3吸音材136を通過した消火
ガスをさらに減圧し、その流速を下げることができる。これによって、消火ガスの噴射に起因する噴射音の発生をさらに抑制することができる。
【0074】
図15は、本発明の実施のさらに他の形態のガス消火設備に備えられる消音装置17hを示す拡大断面図である。なお、前述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態において、消音装置17hは、たとえば消火対象区画の壁面に設けられる枝管19に噴射ヘッド13を介して装着される。
【0075】
本実施形態の消音装置17hは、噴射ヘッド13、有底筒状のケーシング150、ケーシング150の開口部に螺着されるナット151、噴射ヘッド13に装着される円筒状の第1吸音材152、ケーシング150に収容され、ケーシング150の内周面に沿って配置される円筒状の第2吸音材153、ケーシング150内で噴射ヘッド13の基端部に装着される円環状の第1挟持片154、ケーシング150内の開口部側に前記噴射ヘッド13の端面に当接した状態で設けられる円板状の第2挟持片155、およびナット151によってケーシング150の開口部に支持された状態で保持される円板状の第3吸音材156を含む。
【0076】
前記ケーシング150は、直円筒状の筒部157と、筒部157の軸線方向一端部から半径方向外方に垂直に突出するフランジ部158と、筒部157の軸線方向他端部から半径方向内方に延びる円環状の端壁部159とを有する。フランジ部158の外周部分には外ねじ160が刻設される。端壁部159には、その中心軸線上に噴射ノズル13の基端部が嵌り込む挿通孔161が形成される。このようなケーシング150は、金属から成る。また第1~第3吸音材152,153,156は、前述と同様な多孔質の金属からなる。
【0077】
ナット151は、直円筒状の筒部162と、筒部162の軸線方向一端部から半径方向内方に突出するフランジ部163とを有する。筒部162の軸線方向他端部の内周面には内ねじ164が刻設され、前記ケーシング150の外ねじ160に螺合する。このようなナット151は、金属から成り、ケーシング150の外ねじ160に螺着させた状態で締付けることによって、前記第3吸音材156の周縁部がケーシング150のフランジ部158とナット151のフランジ部163とによって挟持されるとともに、第3吸音材156と噴射ヘッド13の端壁部165とによって第2挟持片155が挟持されるとともに、第2吸音材153のケーシング150からの抜出しが防止される。
【0078】
噴射ヘッド13は、スパナなどの締付け工具が掛合される掛合部166と、掛合部166に軸線方向に連なる筒部167と、筒部167の軸線方向一端部を塞ぐ端壁部165とを有する。筒部157には、周方向に間隔をあけて、たとえば90°毎にノズル孔16が厚み方向に貫通して形成される。筒部167の前記掛合部166寄りの基部には、外ねじ168が刻設される。この外ねじ168には第1挟持片154の内周部に刻設された内ねじ169が螺合し、第2挟持部155と掛合部166とによってケーシング150の端壁部159を挟持し、噴射ヘッド13がケーシング150に同一軸線上に固定される。第1吸音材152は、前述したように噴射ヘッド13に装着された状態、すなわちケーシング150内で筒部12に装着された状態で、第1および第2挟持片154,155によって軸線方向両側から挟持された状態で保持されている。このような消音装置17hにおいて、第1吸音材152と第2吸音材153との間には、ケーシング150の端壁部159と第3吸音材156とにわたって環状の空間170が形成される。
【0079】
枝管19から噴射ヘッド13に供給された高圧の消火ガスは、噴射ヘッド13の各ノズル孔16から第1吸音材152内へ噴射され、その衝撃波は急激に拡散して減速し、それによって衝撃波を伴なう強い乱れの発生を防ぎ、減音することができる。第1吸音材15
2から空間170に排出された消火ガスは、第2吸音材153に浸入して前記第1吸音材152と同様に急激に拡散されて減速され、筒部150の内周面で反射されて第3吸音材156へ向かう。第3吸音材156に浸入した消火ガスは、前述の第1および第2吸音材152,153と同様に、急激に膨張する前に拡散して失速し、これによってさらに減音され、消火ガスの噴射に起因する噴射音を格段に低減することができる。
【0080】
図15において、噴射ヘッド13は、導管14の端部に接続され、この端部の軸線に追って延び、複数のノズル孔16が厚み方向に貫通して形成される筒部167と、導管14の端部から遠ざかった筒部167の軸線方向一端部を塞ぐ端壁部165とを有し、消音装置17hは、(u)第1吸音材152であって、筒状に形成され、噴射ヘッド13の筒部167が挿通され、噴射ヘッド13の筒部167の外周面であるノズル孔16の出口端部まわりの円弧状端面に、面接触する内周面を有する第1吸音材152と、(v)ケーシング150であって、(v1)噴射ヘッド13の筒部167の軸線に沿って延び、第1吸音材152の放射方向に間隔をあけて外囲する筒部157と、(v2)導管14の端部の近くで筒部157を塞ぎ、噴射ヘッド13に接続されるケーシング端壁部159とを有するケーシング150と、(w)筒状に形成され、筒部157の内周面に沿って配置され、第1吸音材152の外周面との間に環状の空間170を形成する第2吸音材153と、(x)ケーシング150の筒部157における導管14の端部から遠ざかった端部に配置され、環状の空間からの消火ガスを消火対象区画内の空間へ放出する第3吸音材156とを含み、(y)これらの第1、第2および第3吸音材152,153,156は、微細な空隙を有し、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収する。
【0081】
図15に示す実施形態では、噴射ヘッド13の筒部12にその軸線に対して垂直に複数の噴射ノズル16を形成して半径方向外方に消火ガスを噴射するように構成されるが、本発明のさらに他の実施形態では、噴射ヘッド13の筒部にケーシング150の開口部に向けて傾斜したノズル孔16を形成して第1吸音材152を透過したガスがそのまま第3吸音材156に向かって放出されるように構成されてもよく、同様な効果を達成することができる。
【0082】
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)高圧の消火ガスを空間に向けて噴射するノズル部を有する噴射ヘッドと、
噴射ヘッドが接続され、噴射ヘッドに高圧の消火ガスを導く導管と、
導管に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源と、
噴射ヘッドに設けられ、ノズル部からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音装置とを含むことを特徴とするガス消火設備。
【0083】
(2)消音装置は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向一端部に、該周壁の軸線に垂直に形成される端壁と、周壁の軸線方向他端部に、噴射ヘッドに着脱可能に形成される取付け部とを含み、
周壁には、複数の通気孔が該周壁の厚み方向に貫通して形成されることを特徴とするガス消火設備。
消音装置は周壁と端壁と取付け部とを有し、取付け部によって噴射ヘッドに着脱可能に取付けられる。このように消音装置が構成されることによって、噴射ヘッドのノズル部から噴射された消火ガスは、端壁に衝突した後、周壁に形成される複数の透孔から外部に放出され、大きな噴射音の発生が抑制される。
【0084】
(3)消音装置は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向一端部に、該周壁の軸線に垂直に形成される端壁と、周壁の軸線方向他端部に、噴射ヘッドに着脱可能に形成される取付け部とを含み、端壁には、複数の通気孔が該端壁の厚み方向に貫通して形成されることを特徴
とするガス消火設備。
【0085】
消音装置は周壁と端壁と取付け部とを含み、取付け部によって噴射ヘッドに着脱可能に取付けられる。噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射された消火ガスは、周壁内の空間を経て端壁に衝突した後、この端板に形成される複数の透孔から外部へ放出される。このような消音装置の構成によってもまた、消火ガス噴射時に大きな噴射音が発生することが防がれる。
【0086】
(4)周壁、端壁および取付け部によって規定される内部空間には、吸音材が収容されることを特徴とするガス消火設備。
【0087】
前記消音装置の周壁、端壁および取付け部によって規定される内部空間に吸音材が収容されるので、この吸音材によって消火ガスの噴射流の振動が吸収され、これによってより一層噴射音の発生が防がれる。
【0088】
(5)消音装置は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向一端部に、該周壁の軸線に垂直に形成される端壁と、周壁の軸線方向他端部に、噴射ヘッドが一体的に形成される取付け部と、噴射ヘッドのノズル部における消火ガスの噴射方向下流側に臨む部分に設けられる内筒体とを含み、
端壁には、その厚み方向に貫通するガス放出孔が形成され、
内筒体は、複数の透孔が形成される筒状部と、筒状部の軸線方向一端部に、該筒状部の軸線に垂直に形成される端板とを有することを特徴とするガス消火設備。
【0089】
噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射された消火ガスは、内筒体内で、この内筒体の筒状の端板に衝突し、筒状部に形成される複数の透孔から放出された後、さらに筒状体と周壁との間の空間を経て端壁に形成されるガス放出孔から外部へ放出される。これによって消火ガス放出時における噴射音の発生が防がれる。
【0090】
(6)高圧の消火ガスを空間に向けて噴射するノズル部を有する噴射ヘッドと、
噴射ヘッドが接続され、噴射ヘッドに高圧の消火ガスを導く導管と、
導管に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源とを含み、
噴射ヘッドのノズル部には、前記導管の内周面に滑らかに連なる内周面を有するノズル孔が形成されることを特徴とするガス消火設備。
【0091】
消火ガス供給源から導管に供給された高圧の消火ガスは、噴射ヘッドを介して建物内などの空間に向けて噴射される。このような噴射ヘッドには導管の内周面に滑らかに連なる内周面を有するノズル孔が形成されるので、噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射される消火ガスの噴射流に起因して大きな噴射音を発生することが防がれる。
【0092】
(7)高圧の消火ガスを空間に向けて噴射するノズル部を有する噴射ヘッドと、
噴射ヘッドが接続され、噴射ヘッドに高圧の消火ガスを導く導管と、
導管に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源と、
噴射ヘッドと導管との間に設けられ、ノズル部からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音装置とを含むことを特徴とするガス消火設備。
【0093】
消火ガス供給源から導管に供給された高圧の消火ガスは、噴射ヘッドを介して建物内の空間に向けて噴射される。このような噴射ヘッドと導管との間に消音装置が設けられ、噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射される消火ガスの噴射流に起因する大きな噴射音の発生を防止することができる。
【0094】
(8)消音装置は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向一端部に、導管に着脱可能に形成される第1の取付け部と、周壁の軸線方向他端部に、噴射ヘッドに着脱可能に形成される第2の取付け部と、前記一端部に周壁の軸線に垂直に形成される第1の端壁と、前記他端部に周壁の軸線に垂直に形成される第2の端壁とを含み、
第1の端壁には、周壁の軸線を中心として該第1の端壁の中央部に、少なくとも1つの透孔が該第1の端壁の厚み方向に貫通して形成され、
第2の端壁には、複数の透孔が該第2の端壁の厚み方向に貫通して形成されることを特徴とするガス消火設備。
【0095】
消音装置は周壁と第1,第2の端壁と第1,第2の取付け部とを有し、第1,第2の取付け部によって噴射ヘッドおよび導管の間に着脱可能に取付けられる。導管から供給され、第1の端壁に形成される透孔から高速で噴射された消火ガスは、消音装置内で、第2の端壁の中央部に衝突した後、第2の端壁に形成される複数の透孔から、第2の端壁と噴射ヘッドとで規定される空間内に放出された後、噴射ヘッドから外部へ放出される。消音装置は、第1の端壁に形成される透孔から高速で噴射された消火ガスを消音装置内の空間で膨張させることによって、第2の端壁に形成される透孔での流速を下げるので、噴射ヘッドからの消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0096】
(9)消音装置は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向一端部に、導管に着脱可能に形成される第1の取付け部と、周壁の軸線方向他端部に、噴射ヘッドに着脱可能に形成される第2の取付け部と、前記一端部に周壁の軸線に垂直に形成される第1の端壁と、前記他端部に周壁の軸線に垂直に形成される第2の端壁とを含み、
第1の端壁には、導管から供給される高圧の消火ガスを、周壁、第1の端壁および第2の端壁によって規定される内部空間に噴出する複数のノズル孔を有する案内部が、周壁の軸線上に該内部空間に臨んで形成され、該複数のノズル孔は、周壁の軸線に直交する軸線上に周壁の軸線に関して周方向に等角度で間隔をあけて形成され、
第2の端壁には、複数の透孔が該第2の端壁の厚み方向に貫通して形成されることを特徴とするガス消火設備。
【0097】
消音装置は周壁と第1,第2の端壁と第1,第2の取付け部とを有し、第1,第2の取付け部によって噴射ヘッドおよび導管の間に着脱可能に取付けられる。導管から供給され、第1の端壁に形成される案内部のノズル孔から高速で噴射された消火ガスは、消音装置内で、周壁の内周面に衝突した後、第2の端壁に形成される複数の透孔から、第2の端壁と噴射ヘッドとで規定される空間内に放出された後、噴射ヘッドから外部へ放出される。消音装置は、第1の端壁に形成される案内部のノズル孔から高速で噴射された消火ガスを消音装置内の空間で膨張させることによって、第2の端壁に形成される透孔での流速を下げるので、噴射ヘッドからの消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0098】
(10)消音装置は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向一端部に、該周壁の軸線に垂直に形成される第1の端壁と、噴射ヘッドに着脱可能に形成される取付け部を有し、周壁の軸線方向他端部に該周壁の軸線に垂直に形成される第2の端壁と、第1の端壁と第2の端壁との間に、周壁の軸線に垂直に形成される障壁と、噴射ヘッドから噴射される消火ガスを、周壁、第1の端壁および障壁によって規定される内部空間である第1の消音室に導く筒状の導通管と、周壁、第2の端壁および障壁によって規定される内部空間である第2の消音室内の消火ガスを外部に導く筒状の通気管とを含み、
障壁には、複数の透孔が該障壁の厚み方向に貫通して形成され、
導通管には、導通管の軸線方向一端部に噴射ヘッドに着脱可能に連結される連結部が形成され、導通管の軸線方向他端部に端板が形成され、導通管の周壁のうち第1の消音室に突き出された部分には、複数の透孔が該導通管の周壁の厚み方向に貫通して形成され、通気管は、障壁および第1の端壁を貫通して配置されることを特徴とするガス消火設備。
【0099】
消音装置は周壁と第1の障壁と取付け部を有する第2の端壁と障壁とを含み、取付け部によって噴射ヘッドに着脱可能に取付けられる。連結部によって噴射ヘッドに連結される導通管に形成される複数の透孔から第1の消音室に高速で噴射された消火ガスは、障壁に形成される複数の透孔から第2の消音室に放出される。第2の消音室に放出された消火ガスは、通気管を介して消音装置の外部へ放出される。消音装置は、導通管に形成される複数の透孔から高速で噴射された消火ガスを第1の消音室内の空間および第2の消音室内の空間で膨張させることによって、通気管での流速を下げるので、通気管からの消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0100】
(11)消音装置は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向一端部に、該周壁の軸線に垂直に形成される第1の端壁と、噴射ヘッドに着脱可能に形成される取付け部を有し、周壁の軸線方向他端部に該周壁の軸線に垂直に形成される第2の端壁と、第1の端壁と第2の端壁との間に、周壁の軸線に垂直に形成される障壁と、噴射ヘッドから噴射される消火ガスを、周壁、第1の端壁および障壁によって規定される内部空間である第1の消音室に導く筒状の導通管と、周壁、第2の端壁および障壁によって規定される内部空間である第2の消音室内の消火ガスを外部に導く筒状の複数の通気管とを含み、
障壁には、複数の透孔が該障壁の厚み方向に貫通して形成され、
導通管には、導通管の軸線方向一端部に噴射ヘッドに着脱可能に連結される連結部が形成され、導通管の軸線方向他端部に端板が形成され、導通管の周壁のうち第1の消音室に突き出された部分には、複数の透孔が該導通管の周壁の厚み方向に貫通して形成され、
複数の通気管は、周壁の軸線に直交する軸線上に、周壁の軸線に関して周方向に等角度で間隔をあけて配置され、それぞれ周壁を貫通して形成されることを特徴とするガス消火設備。
【0101】
消音装置は周壁と第1の障壁と取付け部を有する第2の端壁と障壁とを含み、取付け部によって噴射ヘッドに着脱可能に取付けられる。連結部によって噴射ヘッドに連結される導通管に形成される複数の透孔から第1の消音室に高速で噴射された消火ガスは、障壁に形成される複数の透孔から第2の消音室に放出される。第2の消音室に放出された消火ガスは、通気管を介して消音装置の外部へ放出される。消音装置は、導通管に形成される複数の透孔から高速で噴射された消火ガスを第1の消音室内の空間および第2の消音室内の空間で膨張させることによって、通気管での流速を下げるので、通気管からの消火ガス放出による音響の発生が抑制される。
【0102】
(12)消音装置は、前記消音装置は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向一端部に、該周壁の軸線に垂直に形成される端壁と、噴射ヘッドに着脱可能に形成される取付け部と、周壁、端壁および噴射ヘッドによって規定される内部空間に収容される、多孔質の金属から成る吸音材とを含むことを特徴とするガス消火設備。
【0103】
吸音材は、多孔質の金属から成り、内部空間に収容される。このような吸音材をノズル孔の直後に設けることによって、枝管側から供給される消火ガスを徐々に減圧膨張し、その流速を下げることができる。これによって、消火ガスの噴射に起因する噴射音の発生を抑制することができる。
【0104】
(13)消音装置は、前記吸音材は、周壁の軸線方向一端部に設けられる第1吸音材と、前記軸線方向他端部に設けられる第2吸音材とを含むことを特徴とするガス消火設備。
【0105】
吸音材は、周壁の軸線方向一端部に設けられる第1吸音材と、前記軸線方向他端部に設けられる第2吸音材とを含むので、ノズル孔の直後で枝管側から供給される消火ガスを第1吸音材によって徐々に減圧膨張し、その流速を下げることができるとともに、噴射直前
に第2吸音材によって消火ガスをさらに減圧膨張し、その流速を下げることができる。これによって、消火ガスの噴射に起因する噴射音の発生をさらに抑制することができる。
【0106】
(14)消音装置は、前記第1吸音材と前記第2吸音材との間に設けられる、第3吸音材をさらに含むことを特徴とするガス消火設備。
【0107】
第1吸音材と第2吸音材との間には、第3吸音材が設けられるので、第3吸音材によって、消火ガスの噴射流に起因する音響振動を吸収し、消火ガスの噴射に起因する噴射音の発生を抑制することができる。
【0108】
また、噴射ヘッドには導管の内周面に滑らかに連なる内周面を有するノズル孔が形成されるので、火災発生時に噴射ノズルのノズル部から消火ガスが噴射されても大きな噴射音が発生することを防止することができる。
【0109】
また、噴射ヘッドと導管との間に消音装置が設けられるので、火災発生時に噴射ノズルのノズル部から消火ガスが噴射されても大きな噴射音が発生することを防止することができる。
【符号の説明】
【0110】
11 ガス噴射部
12 ノズル部
13,50,50a 噴射ヘッド
14 導管
15 消火ガス供給源
16,71 ノズル孔
17,17a~17h,60,60a 消音装置
18 分岐管
19 枝管
20 基台
21 ブラケット
22 締結具
23 主管
25,35,41,61,81 周壁
26,36,42,64,64a,65,82,84 端壁
27,37,43,62,63,83,123 取付け部
28 噴射方向下流側に臨む部分
29 内筒体
30,66,67,851,874 透孔
31 円筒部
32,872 端板
33 吸音材
34 ガス放出孔
38,44 通気孔
39,45 内部空間
40,46 吸音材
51,52 内周面
55 エッジ部72 案内部
85 障壁86,88 消音室
87 導通管89,89a 通気管
125 吸音材134 第1吸音材
135 第2吸音材
136 第3吸音材
871 連結部
891 金網
892,892a 消火ガス噴射口
D1,D2 内径
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