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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】電池制御装置、及び電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230906BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20230906BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230906BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/02 H
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021069926
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022035969
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020138461
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】大野 ちひろ
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119788(JP,A)
【文献】特開2013-128347(JP,A)
【文献】特開2013-090525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/02
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の電池セルと、各電池セルをバイパスするバイパス線、前記バイパス線に設けられた第1スイッチ、及び各電池セルと前記バイパス線の一端との間に設けられた第2スイッチを備える複数のバイパス回路とを備える電池システムを制御する電池制御装置であって、
各電池セルの残量が所定値に低下するまで、各電池セルに対応する前記第1スイッチをオープンにし、各電池セルに対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、各電池セルから放電し、
各電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に当該電池セルに対応する前記第2スイッチをオープンにし、当該電池セルに対応する前記第1スイッチをクローズにすることにより、当該電池セルをバイパスし、
全ての又は一部を除く複数の電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に全ての又は一部を除く複数の電池セルに対応する前記第1スイッチをオープンにし、当該電池セルに対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、全ての又は一部を除く複数の電池セルから放電させる電池制御装置。
【請求項2】
前記所定値は、各電池セルの残電流容量、各電池セルの充電率、及び各電池セルの電圧の何れか一つの値である請求項1に記載の電池制御装置。
【請求項3】
直列に接続された複数の電池セルと、各電池セルをバイパスするバイパス回路とを備える電池システムを制御する電池制御装置であって、
各電池セルの残量が所定値に低下するまで各電池セルから放電し、
各電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に当該電池セルを前記バイパス回路によりバイパスし、
全ての又は一部を除く複数の電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に全ての又は一部を除く複数の電池セルから放電させ、
前記所定値は、各電池セルの放電電流の許容値である放電電流制限値と、電力供給先のシステムが省電力モードで稼働するために必要な電流値であるシステム最小電流値と、前記システム最小電流値よりも高く前記放電電流制限値の最大値よりも低く電力供給先のシステムの電力消費に制限がかかる閾値であるシステム標準電流値とに基づいて設定されている電池制御装置。
【請求項4】
前記所定値は、前記放電電流制限値と前記システム標準電流値とが一致する残量以上に設定されている請求項3に記載の電池制御装置。
【請求項5】
前記第2スイッチをオープンにし、前記第1スイッチをクローズにすることにより各電池セルをバイパスする処理の実行中の前記電池システムの総電圧は、前記電池システムの最低許容総電圧以上であり、又は、前記第2スイッチをオープンにし、前記第1スイッチをクローズにすることにより各電池セルをバイパスする処理の実行中の放電電力制限値は、最低許容放電電力以上である請求項1又は2に記載の電池制御装置。
【請求項6】
直列に接続された複数の電池と、各電池をバイパスするバイパス線、前記バイパス線に設けられた第1スイッチ、及び各電池と前記バイパス線の一端との間に設けられた第2スイッチを備える複数のバイパス回路とを備える電池システムを制御する電池制御装置であって、
放電完了までの残放電量が他の電池に比して少ない電池を優先的に当該電池に対応する前記第2スイッチをオープンにし、当該電池に対応する前記第1スイッチをクローズにすることによりバイパスすることで、複数の電池の放電完了までの残放電量の差を減少させる第1の処理と、
前記第1の処理の後に、複数の電池に対応する前記第1スイッチをオープンにし、複数の電池に対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、複数の電池の放電を完了させる第2の処理と
を実行する電池制御装置。
【請求項7】
前記第1の処理において、複数の電池の放電完了までの残放電量を、前記第1の処理の開始時点での最小値以下まで減少させる請求項6に記載の電池制御装置。
【請求項8】
前記第1の処理の実行中の前記電池システムの総電圧は、前記電池システムの最低許容総電圧以上であり、又は、前記第1の処理の実行中の放電電力制限値は、最低許容放電電力以上である請求項6又は7に記載の電池制御装置。
【請求項9】
直列に接続された複数の電池セルと、
各電池セルをバイパスするバイパス線、前記バイパス線に設けられた第1スイッチ、及び各電池セルと前記バイパス線の一端との間に設けられた第2スイッチを備える複数のバイパス回路と、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとを制御する電池制御装置と
を備え、
前記電池制御装置は、
各電池セルの残量が所定値に低下するまで、各電池セルに対応する前記第1スイッチをオープンにし、各電池セルに対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、各電池セルから放電し、
各電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に当該電池セルに対応する前記第2スイッチをオープンにし、当該電池セルに対応する前記第1スイッチをクローズにすることにより、当該電池セルを前記バイパス回路によりバイパスし、
全ての又は一部を除く複数の電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に全ての又は一部を除く複数の電池セルに対応する前記第1スイッチをオープンにし、当該電池セルに対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、全ての又は一部を除く複数の電池セルから放電させる電池システム。
【請求項10】
直列に接続された複数の電池と、
各電池をバイパスするバイパス線、前記バイパス線に設けられた第1スイッチ、及び各電池と前記バイパス線の一端との間に設けられた第2スイッチを備える複数のバイパス回路と、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとを制御する電池制御装置と
を備え、
前記電池制御装置は、
放電完了までの残放電量が他の電池に比して少ない電池を優先的に当該電池に対応する前記第2スイッチをオープンにし、当該電池に対応する前記第1スイッチをクローズにすることにより前記バイパス回路によりバイパスすることで、複数の電池の放電完了までの残放電量の差を減少させる第1の処理と、
前記第1の処理の後に、複数の電池に対応する前記第1スイッチをオープンにし、複数の電池に対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、複数の電池の放電を完了させる第2の処理と
を実行する電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置、及び電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のバッテリ(以下、電池セルという)が直列に接続されたバッテリ装置(以下、電池パックという)の放電を制御する放電システムとして、各電池セルの状態に基づいて放電を避ける電池セルを選択し、その放電を避ける電池セルをバイパスして他の電池セルから放電させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-31247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の放電システムでは、放電終止電圧まで放電した電池セルを放電を避ける電池セルとして選択し、その電池セルをバイパスして他の電池セルから放電させることを順次実行できれば、全ての電池セルについて放電容量を余すことなく放電させることができる。
【0005】
しかしながら、各電池セルには、放電電流の許容値である放電電流制限値と、電力供給先のシステムが省電力モードで稼働するために必要な電流値であるシステム最小電流値とが設定されている。ここで、放電電流制限値は、電池残量の減少に伴って低下するので、放電電流制限値がシステム最小電流値まで低下した電池セルについては、放電を避ける電池セルとして選択しなければならない。従って、全ての電池セルについて放電容量を余すことなく放電させることができないと共に、所望の出力が得られる時間が短くなる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、全て又は一部を除く複数の電池セルについて放電容量を効率良く使って放電させると共に、所望の出力が得られる時間を伸ばすことができる電池制御装置、及び電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池制御装置は、直列に接続された複数の電池セルと、各電池セルをバイパスするバイパス線、前記バイパス線に設けられた第1スイッチ、及び各電池セルと前記バイパス線の一端との間に設けられた第2スイッチを備える複数のバイパス回路とを備える電池システムを制御する電池制御装置であって、各電池セルの残量が所定値に低下するまで、各電池セルに対応する前記第1スイッチをオープンにし、各電池セルに対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、各電池セルから放電し、各電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に当該電池セルに対応する前記第2スイッチをオープンにし、当該電池セルに対応する前記第1スイッチをクローズにすることにより、当該電池セルをバイパスし、全ての又は一部を除く複数の電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に全ての又は一部を除く複数の電池セルに対応する前記第1スイッチをオープンにし、当該電池セルに対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、全ての又は一部を除く複数の電池セルから放電させる。
【0008】
本発明の電池制御装置において、前記所定値は、各電池セルの残電流容量、各電池セルの充電率、及び各電池セルの電圧の何れか一つの値であってもよい。
【0009】
本発明の電池制御装置直列に接続された複数の電池セルと、各電池セルをバイパスするバイパス回路とを備える電池システムを制御する電池制御装置であって、各電池セルの残量が所定値に低下するまで各電池セルから放電し、各電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に当該電池セルを前記バイパス回路によりバイパスし、全ての又は一部を除く複数の電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に全ての又は一部を除く複数の電池セルから放電させ、前記所定値は、各電池セルの放電電流の許容値である放電電流制限値と、電力供給先のシステムが省電力モードで稼働するために必要な電流値であるシステム最小電流値と、前記システム最小電流値よりも高く前記放電電流制限値の最大値よりも低く電力供給先のシステムの電力消費に制限がかかる閾値であるシステム標準電流値とに基づいて設定されてい
【0010】
本発明の電池制御装置において、前記所定値は、前記放電電流制限値と前記システム標準電流値とが一致する残量以上に設定されていてもよい。
【0011】
本発明の電池制御装置において、前記第2スイッチをオープンにし、前記第1スイッチをクローズにすることにより各電池セルをバイパスする処理の実行中の前記電池システムの総電圧は、前記電池システムの最低許容総電圧以上であり、又は、前記第2スイッチをオープンにし、前記第1スイッチをクローズにすることにより各電池セルをバイパスする処理の実行中の放電電力制限値は、最低許容放電電力以上であってもよい。
【0012】
本発明の電池制御装置は、直列に接続された複数の電池と、各電池をバイパスするバイパス線、前記バイパス線に設けられた第1スイッチ、及び各電池と前記バイパス線の一端との間に設けられた第2スイッチを備える複数のバイパス回路とを備える電池システムを制御する電池制御装置であって、放電完了までの残放電量が他の電池に比して少ない電池を優先的に当該電池に対応する前記第2スイッチをオープンにし、当該電池に対応する前記第1スイッチをクローズにすることによりバイパスすることで、複数の電池の放電完了までの残放電量の差を減少させる第1の処理と、前記第1の処理の後に、複数の電池に対応する前記第1スイッチをオープンにし、複数の電池に対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、複数の電池の放電を完了させる第2の処理とを実行する。
【0013】
本発明の電池制御装置において、前記第1の処理において、複数の電池の放電完了までの残放電量を、前記第1の処理の開始時点での最小値以下まで減少させてもよい。
【0014】
本発明の電池制御装置において、前記第1の処理の実行中の前記電池システムの総電圧は、前記電池システムの最低許容電圧以上であり、又は、前記バイパス回路により各電池セルをバイパスする処理の実行中の放電電力制限値は、最低許容放電電力以上であってもよい。
【0015】
本発明の電池システムは、直列に接続された複数の電池セルと、各電池セルをバイパスするバイパス線、前記バイパス線に設けられた第1スイッチ、及び各電池セルと前記バイパス線の一端との間に設けられた第2スイッチを備える複数のバイパス回路と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとを制御する電池制御装置とを備え、前記電池制御装置は、各電池セルの残量が所定値に低下するまで、各電池セルに対応する前記第1スイッチをオープンにし、各電池セルに対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、各電池セルから放電し、各電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に当該電池セルに対応する前記第2スイッチをオープンにし、当該電池セルに対応する前記第1スイッチをクローズにすることにより、当該電池セルを前記バイパス回路によりバイパスし、全ての又は一部を除く複数の電池セルの残量が前記所定値に低下した場合に全ての又は一部を除く複数の電池セルに対応する前記第1スイッチをオープンにし、当該電池セルに対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、全ての又は一部を除く複数の電池セルから放電させる。
【0016】
本発明の電池システムは、直列に接続された複数の電池と、各電池をバイパスするバイパス線、前記バイパス線に設けられた第1スイッチ、及び各電池と前記バイパス線の一端との間に設けられた第2スイッチを備える複数のバイパス回路と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとを制御する電池制御装置とを備え、前記電池制御装置は、放電完了までの残放電量が他の電池に比して少ない電池を優先的に当該電池に対応する前記第2スイッチをオープンにし、当該電池に対応する前記第1スイッチをクローズにすることにより前記バイパス回路によりバイパスすることで、複数の電池の放電完了までの残放電量の差を減少させる第1の処理と、前記第1の処理の後に、複数の電池に対応する前記第1スイッチをオープンにし、複数の電池に対応する前記第2スイッチをクローズにすることにより、複数の電池の放電を完了させる第2の処理とを実行する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、残量が所定値以下に低下した電池セルをバイパスし、その他の全ての又は一部を除く複数の電池セルから放電させる制御を順次実行する。そして、全ての又は一部を除く複数の電池セルの残量が所定値に揃った後に、全ての又は一部を除く複数の電池セルのバイパスを解除して全ての又は一部を除く複数の電池セルから放電させる。また、本発明によれば、放電完了までの残放電量が他の電池に比して少ない電池を優先的にバイパスすることで、複数の電池の放電完了までの残放電量の差を減少させ、その後に、複数の電池の放電を完了させる。これによって、全ての又は一部を除く複数の電池セルについて放電容量を効率良く使って放電させることができると共に、所望の出力が得られる時間を伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電池制御装置を備える電池システムの概略を示す図である。
図2図2は、所定値の設定方法について説明するためのグラフである。
図3図3は、電池制御装置による電池パックの放電制御について説明するためのタイミングチャートである。
図4図4は、本発明の他の実施形態に係る電池制御装置を備える電池システムの概略を示す図である。
図5図5は、比較例の放電制御について説明するためのタイミングチャートである。
図6図6は、図5のタイミングチャートに示す比較例の放電制御について説明するための表である。
図7図7は、本発明の他の実施形態の放電制御について説明するためのタイミングチャートである。
図8図8は、図7のタイミングチャートに示す本発明の他の実施形態の放電制御について説明するための表である。
図9図9は、図8の表に示す放電制御の変形例について説明するための表である。
図10図10は、図7のタイミングチャートに示す放電制御の変形例について説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池制御装置100を備える電池システム1の概略を示す図である。この図に示すように、電池システム1は、電池パック10と、バイパス回路20と、電池制御装置100とを備える。電池パック10は、直列に接続されたn個(nは2以上の整数)の電池セルC1~Cnを備える車載用あるいは定置用の電源である。特に限定するわけではないが、本実施形態の電池パック10は、中古電池を再生したものであり、各電池セルC1~Cnの劣化度に差がある。電池セルC1~Cnは、例えば、リチウムイオンバッテリ、リチウムイオンキャパシタ等の二次電池であり、外部系統ESから電力を供給されて充電され、充電された電力を放電して外部系統ESに電力を供給する。なお、電池システム1は、直列に接続されたn個(nは2以上の整数)の電池モジュール又は電池パックと、バイパス回路20とを備えてもよい。
【0021】
電池パック10は、複数の電圧測定部12と、電流測定部13と、電池温度測定部14とを備える。電圧測定部12は、各電池セルC1~Cnの正極端子と負極端子との間に接続されている。この電圧測定部12は、各電池セルC1~Cnの端子間電圧を測定する。
【0022】
電流測定部13は、電池パック10の電流経路に設けられている。この電流測定部13は、電池パック10の充放電電流を測定する。また、電池パック10には、電池温度測定部14が設けられている。この電池温度測定部14は、電池パック10の電池温度を測定する。
【0023】
バイパス回路20は、各電池セルC1~Cn毎に設けられたn個(nは2以上の整数)のバイパス回路B1~Bnを備える。バイパス回路B1~Bnは、それぞれ、バイパス線BLと、スイッチS1,S2とを備える。バイパス線BLは、各電池セルC1~Cnをバイパスする電力線である。スイッチS1は、バイパス線BLに設けられている。このスイッチS1は、例えば機械的スイッチである。スイッチS2は、各電池セルC1~Cnの正極とバイパス線BLの一端との間に設けられている。このスイッチS2は、例えば半導体スイッチである。
【0024】
始端の電池セルC1と終端の電池セルCnとは外部系統ESに接続されている。全てのバイパス回路B1~BnにおいてスイッチS1がオープンになりスイッチS2がクローズになった場合に、全ての電池セルC1~Cnから外部系統ESに放電する。他方で、何れかのバイパス回路B1~BnにおいてスイッチS2がオープンになり、スイッチS1がクローズになった場合に、当該バイパス回路B1~Bnに対応する電池セルC1~Cnがバイパスされる。
【0025】
電池制御装置100は、電池パック10とバイパス回路20とに接続され、各電池セルC1~Cnの監視及び制御と各バイパス回路B1~Bnの切り替え制御とを実行する。本実施形態の電池制御装置100は、各電池セルC1~Cnの残電流容量に基づいて、各バイパス回路B1~Bnを切り替える。
【0026】
電池制御装置100は、測定値取得部101と、残量算出部102と、記憶部103と、バイパス制御部104とを備える。
【0027】
測定値取得部101は、電圧測定部12と電流測定部13と電池温度測定部14とに接続されている。この測定値取得部101は、電圧測定部12と電流測定部13と電池温度測定部14とから測定値を取得して記憶部103に記憶させる。
【0028】
残量算出部102は、測定値取得部101が取得した測定値に基づいて各電池セルC1~Cnの残量を算出する。本実施形態の残量算出部102は、測定値取得部101が取得した各電池セルC1~Cnの電圧値の変化に基づいて各電池セルC1~Cnの残電流容量を算出し記憶部103に記憶させる。なお、各電池セルC1~Cnの残電流容量の算出には他の公知の方法を用いてもよい。
【0029】
記憶部103は、測定値取得部101が取得した測定値と残量算出部102が算出した算出値とを記憶する。また、記憶部103は、電池制御装置100が実行するプログラムを記憶している。
【0030】
バイパス制御部104は、残量算出部102により算出された各電池セルC1~Cnの残電流容量に基づいて、各バイパス回路B1~BnのスイッチS1,S2のオープン/クローズの切り替えを制御する。具体的には、バイパス制御部104は、各電池セルC1~Cnの残電流容量が所定値Rpを超えている場合に、対応するバイパス回路B1~Bnについて、スイッチS1をオープンにしスイッチS2をクローズにする。即ち、この場合には、当該電池セルC1~Cnはバイパスされない。他方で、バイパス制御部104は、各電池セルC1~Cnの残電流容量が所定値Rp以下まで低下した場合に、対応するバイパス回路B1~Bnについて、スイッチS2をオープンにし、スイッチS1をクローズにする。即ち、この場合には、当該電池セルC1~Cnはバイパスされる。
【0031】
ここで、バイパス制御部104は、一旦バイパス状態にした電池セルC1~Cnについては、他の全ての電池セルC1~Cnの残電流容量が上記所定値Rpに低下するまで、バイパス状態を継続する。その後、バイパス制御部104は、全てのバイパス回路B1~Bnについて、スイッチS1をオープンにしスイッチS2をクローズにすることで、全ての電池セルC1~Cnから一斉に放電させる。
【0032】
図2は、上記所定値Rpの設定方法について説明するためのグラフである。この図の上側のグラフは、電池セルC1の残電流容量と当該電池セルC1の放電電流制限値との関係を示している。また、この図の下側のグラフは、電池セルC1,C2の残電流容量と当該電池セルC1,C2の放電電流制限値との関係を示している。ここで、放電電流制限値は、電池セルC1~Cnを構成する各部の性能を維持したり損傷を防止したりする観点から設定されている放電電流の許容値である。
【0033】
図2のグラフに示すように、電池セルC1,C2の残電流容量が最大(満充電:Rmax)の状態から減少していく間に、電池セルC1,C2の放電電流制限値は、始めは一定であるものの途中から減少する。ここで、各電池セルC1~Cnの放電電流制限値は、同一ではなく、各電池セルC1~Cn間で相互に異なっている。また、各電池セルC1~Cnの放電電流制限値と残電流容量との関係は、同一ではなく、各電池セルC1~Cn間で相互に異なっている。特に、本実施形態の電池パック10は、中古の電池パックを再生したものであり、各電池セルC1~Cnの劣化度に差があるものである。そのため、本実施形態の電池パック10では、各電池セルC1~Cnの相互間での放電電流制限値のバラツキや放電電流制限値と残電流容量との関係のバラツキが大きくなっている。
【0034】
さらに、電池パック10から電力を供給する外部系統ESの稼働状況に対応するという観点から、各電池セルC1~Cnには、システム標準電流値とシステム最小電流値とが設定されている。システム標準電流値は、システム最小電流値よりも高い電流値であり、外部系統ESの電力消費に制限をかけるか否かの閾値である。例えば、外部系統ESが電気自動車の場合、システム標準電流値は、車両の仕様において定められた速度の中で制限なく走行する際の最大消費の電流値に相当する。各電池セルC1~Cnの放電電流制限値がシステム標準電流値以下になった場合には、電気自動車の走行速度が時速60km/h以下に制限され、外部系統ESは省電力モードで稼働される。他方で、システム最小電流値は、外部系統ESが省電力モードで稼働するために必要な最大電流値である。例えば、外部系統ESが電気自動車の場合、システム最小電流値は、車両が時速60km/h以下で走行している時の最大消費電流値に相当する。各電池セルC1~Cnの放電電流制限値がシステム最小電流値以下になった場合には、時速60km/hの走行が保障できないと判断され、電欠状態として車両の駆動が停止される。
【0035】
ここで、上記所定値Rpは、放電電流制限値とシステム最小電流値とが一致する時点での残電流容量R0と、上記所定値Rpとの差ΔR(=Rp-R0)が、全ての電池セルC1~Cnに亘って一定となるように設定されている。さらに、上記所定値Rpは、放電電流制限値とシステム標準電流値とが一致する時点での残電流容量R1以上に設定されている。さらに、本実施形態では、上記所定値Rpは、放電電流制限値が最大値Imaxから減少し始める時点での残電流容量R2以上に設定されている。
【0036】
図3は、電池制御装置100による電池パック10の放電制御について説明するためのタイミングチャートである。このタイミングチャートに示すように、全ての電池セルC1~Cnが満充電された状態から放電させる場合を例に取って説明する。
【0037】
電池制御装置100は、全ての電池セルC1~Cnが満充電された状態では、全ての電池セルC1~Cnから放電させる。即ち、全てのバイパス回路B1~Bnについて、スイッチS1をオープンにしスイッチS2をクローズにする。電池制御装置100は、残量算出部102により算出される各電池セルC1~Cnの残電流容量を監視しており、各電池セルC1~Cnの残電流容量が所定値Rpを超えているか否かを常時判定している。
【0038】
電池制御装置100は、残電流容量が所定値Rpの電池セル(例えば図示するようにC1)を検出した場合に、当該電池セルC1に対応するバイパス回路B1について、スイッチS2をオープンにし、スイッチS1をクローズにする。即ち、電池制御装置100は、残電流容量が所定値Rpまで低下した電池セルC1をバイパスし、その他の全ての電池セルC2,C3,…,Cnから放電させる。
【0039】
電池制御装置100は、残電流容量が所定値Rp以下の電池セルC2~Cnが検出される度に、当該電池セルC2~Cnをバイパスし、その他の全ての電池セルC3~Cnから放電させる制御を順次実行する。例えば、図示するように、電池制御装置100は、残電流容量が所定値Rpの電池セルC2に対応するバイパス回路B2について、スイッチS2をオープンにし、スイッチS1をクローズにする。即ち、電池制御装置100は、残電流容量が所定値Rpまで低下した電池セルC2をバイパスし、その他の全ての電池セルC3,…,Cnから放電させる。
【0040】
電池制御装置100は、全ての電池セルC1~Cnの残電流容量が所定値Rpに低下するまで上記処理を実行し、全ての電池セルC1~Cnの残電流容量が所定値Rpに低下した後、全ての電池セルC1~Cnのバイパス回路B1~Bnについて、スイッチS1をオープンにしスイッチS2をクローズにする。即ち、電池制御装置100は、全ての電池セルC1~Cnの残電流容量が所定値Rpに揃った後に、全ての電池セルC1~Cnのバイパスを解除して全ての電池セルC1~Cnから放電させる。これにより、全ての電池セルC1~Cnの放電電流制限値が同時にシステム最小電流値まで低下することになる。従って、全ての電池セルC1~Cnについて放電容量をより多く使って放電させることができる。
【0041】
ここで、放電電流制限期間を除いて放電電力を一定に維持した場合、残電流容量が所定値Rpに低下した電池セルC1~Cnを順次バイパスしていくので、放電電圧は順次低下していくが、放電電流は順次上昇していく。従って、電池パック10の1回の放電サイクル中の長期間に亘って所望の出力を得ることができる。
【0042】
また、放電電流を制限する期間を、電池パック10の1回の放電サイクルにおける一期間(終期)に集約することができる。特に、電気自動車において、電池セルC1~Cnの放電電流制限値が、システム標準電流値を境に上下した場合には、省電力モードと当該モードの解除とが繰り返されることになり、ユーザが不快に感じる。ここで、本実施形態では、上記所定値Rpが、放電電流制限値とシステム標準電流値とが一致する時点での残電流容量R1以上に設定されている。これによって、電気自動車において、省電力モードと当該モードの解除とが繰り返されることを防止でき、ユーザの不快感を除去できる。
【0043】
ここで、負荷の動作を保証する観点から、放電時の電池システム1の総電圧[V]が最低許容総電圧Vを下回ることを防止する必要がある。最低許容総電圧Vは、例えば負荷の仕様に基づいて設定されるものであり、系統連携型定置用の電池システムであれば、DC/ACインバータの入力電圧により決定され、車載用の電池システムであれば、モータのインバータの入力電圧の範囲により決定される。そこで、本実施形態では、放電開始時から放電完了時まで、電池システム1の総電圧[V]を最低許容総電圧V以上に維持するように、バイパス回路B1~Bnによる電池セルC1~Cnのバイパス制御を実行する。
【0044】
また、本実施形態では、バイパス回路B1~Bnによる電池セルC1~Cnのバイパス制御を実行している間、放電電力制限値[W]を、最低許容放電電力P以上に維持にする。ここで、放電電力制限値[W]は、電池セルC1~Cnの放電電流制限値の中の最小値に電池システム1の総電圧を乗じることにより得られる値である。なお、最低許容放電電力Pは、一定の値であってもよく、諸条件により変動する値であってもよい。
【0045】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0046】
例えば、上記実施形態では、各電池セルC1~Cnの残量を、残電流容量で規定したが、各電池セルC1~Cnの残量は、各電池セルC1~Cnの充電率(SOC)や電圧で規定してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、全ての電池セルC1~Cnについて、放電電流制限値がシステム最小電流値に低下するまで放電させる制御を実行したが、例えば、劣化の進んだ電池セルや温度の高い電池セルを除いた複数の電池セルについて、同様の制御を実行してもよい。
【0048】
図4は、本発明の他の実施形態に係る電池制御装置200を備える電池システム1’の概略を示す図である。この図に示す電池システム1’は、電池パック10と、バイパス回路20と、電池制御装置200とを備える。なお、上記実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、上記実施形態についての説明を援用する。
【0049】
本実施形態の電池制御装置200は、上記実施形態の残量算出部102に代えて、残放電容量算出部202を備える。この電池制御装置200は、電池パック10とバイパス回路20とに接続され、各電池セルC1~Cnの監視及び制御と各バイパス回路B1~Bnの切り替え制御とを実行する。電池制御装置200は、各電池セルC1~Cnの放電完了までの残放電容量RDに基づいて、各バイパス回路B1~Bnを切り替えることにより電池パック10の放電を制御する。なお、以下の説明では、各電池セルC1~Cnの放電完了までの残放電容量RDを、単に残放電容量RDと称する。この残放電容量RDは、各電池セルC1~Cnの放電時に、放電終止電圧に到達するまでに放電可能な容量である。
【0050】
残放電容量算出部202は、測定値取得部101が取得した測定値に基づいて各電池セルC1~Cnの残放電容量RDを算出し記憶部103に記憶させる。本実施形態の残放電容量算出部202は、各電池セルC1~Cnの残放電容量RD[Ah]を、下記(1)式により算出する。
RD[Ah]=CC×SOC/100 …(1)
但し、CCは、各電池セルC1~Cnの現在の電池容量(本実施形態では電流容量[Ah])であり、残放電容量算出部202が下記(2)式により算出する。SOCは、各電池セルC1~CnのSOC(State Of Charge)[%]であり、電流積算法、開放電圧から求める方法(電圧法)、電流積算法と電圧法とを組み合わせた方法等の種々の公知の方法を用いて推定することができる。
【0051】
CC[Ah]=C×SOH/100 …(2)
但し、Cは、各電池セルC1~Cnの新品時の電流容量(Ah)であり、記憶部103が記憶している。また、SOHは、各電池セルC1~CnのSOH(State Of Health)であり、残放電容量算出部202が、測定値取得部101が取得した測定値に基づいて推定する。
【0052】
各電池セルC1~CnのSOHの算出方法としては、SOCの経時変化あるいは/及び内部抵抗の経時的増加を用いて推定する種々の公知の方法を用いればよい。SOHの推定方法としては、充放電試験による方法、電流積算法による方法、開回路電圧の測定による方法、端子電圧の測定による方法、モデルに基づく方法(以上はSOCの経時変化を用いる方法)、交流インピーダンス測定による方法、モデルに基づき、適応デジタルフィルタで求める方法、I-V特性(電流電圧特性)からの線型回帰(I-V特性の直線の傾き)による方法、ステップ応答による方法(以上、内部抵抗の経時的増加を用いて推定する方法)等を例示できる。
【0053】
記憶部103は、測定値取得部101が取得した測定値と残放電容量算出部202が算出した各電池セルC1~Cnの残放電容量RDの算出値とを記憶する。また、記憶部103は、電池制御装置200が実行するプログラムを記憶している。
【0054】
バイパス制御部104は、残放電容量算出部202により算出された各電池セルC1~Cnの残放電容量RDに基づいて、各バイパス回路B1~BnのスイッチS1,S2のオープン/クローズの切り替えを制御する。具体的には、バイパス制御部104は、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDの差が減少するように、残放電容量RDが他の電池セルC1~Cnに比して小さい電池セルC1~Cnを優先的に各バイパス回路B1~Bnによりバイパスする(第1の処理)。また、バイパス制御部104は、第1の処理の実行中に、全ての電池セルC1~Cnの残放電容量RDが均等化されるように、各電池セルC1~Cnを各バイパス回路B1~Bnによりバイパスする。そして、第1の処理の実行後に、バイパス制御部104は、残放電容量RDが均等化された全ての電池セルC1~Cnをバイパス回路B1~Bnにより直列接続し、直列接続された全ての電池セルC1~Cnから放電完了まで放電させる(第2の処理)。
【0055】
バイパス制御部104は、バイパスする各電池セルC1~Cnに対応する各バイパス回路B1~Bnについて、スイッチS2をオープンにし、スイッチS1をクローズにする。他方で、バイパス制御部104は、直列接続する電池セルC1~Cnに対応するバイパス回路B1~Bnについて、スイッチS1をオープンにし、スイッチS2をクローズにする。
【0056】
図5は、比較例の放電制御について説明するためのタイミングチャートである。また、図6は、図5のタイミングチャートに示す比較例の放電制御について説明するための表である。これらの図に示すように、比較例の放電制御では、8個の電池セルC1~C8の放電を制御する。
【0057】
図5及び図6に示すように、8個の電池セルC1~C8の初期の残放電容量RDを、それぞれ、100[Ah],99[Ah],98[Ah],95[Ah],90[Ah],89[Ah],87[Ah],86[Ah]とする。比較例の放電制御では、まず、時間t0において、バイパス制御部(図示省略)は、8個の電池セルC1~C8を直列接続し、直列接続する。時刻t0~t1の間に、直列接続された8個の電池セルC1~C8の何れか一つの残放電容量RDが0[Ah]になるまで、8個の電池セルC1~C8から放電される。具体的には、8個の電池セルC1~Cnの放電量が86[Ah]であり、初期の残放電容量RDが86[Ah]で最小であった電池セルC8が全放電になる。
【0058】
次に、時間t1において、バイパス制御部は、全放電になった電池セルC8をバイパス回路B8によりバイパスし、7個の電池セルC1~C7を直列接続された状態にする。時間t1~t2の間に、直列接続された7個の電池セルC1~C7の何れか一つの残放電容量RDが0[Ah]になるまで、7個の電池セルC1~C7から放電される。具体的には、7個の電池セルC1~C7の放電量が1[Ah]であり、残放電容量RDが1[Ah]で最小であった電池セルC7が全放電になる。
【0059】
次に、時間t2において、バイパス制御部は、全放電になった電池セルC7をバイパス回路B7によりバイパスし、6個の電池セルC1~C6を直列接続された状態にする。時間t2~t3の間に、直列接続された6個の電池セルC1~C6の何れか一つの残放電容量RDが0[Ah]になるまで、6個の電池セルC1~C6から放電される。具体的には、6個の電池セルC1~C6の放電量が2[Ah]であり、残放電容量RDが2[Ah]で最小であった電池セルC6が全放電になる。
【0060】
次に、時間t3において、バイパス制御部は、全放電になった電池セルC6をバイパス回路B6によりバイパスし、5個の電池セルC1~C5を直列接続された状態にする。時間t3~t4の間に、直列接続された5個の電池セルC1~C5の何れか一つの残放電容量RDが0[Ah]になるまで、5個の電池セルC1~C5から放電される。具体的には、5個の電池セルC1~C5の放電量が1[Ah]であり、残放電容量RDが1[Ah]で最小であった電池セルC5が全放電になる。
【0061】
次に、時間t4において、バイパス制御部は、全放電になった電池セルC5をバイパス回路B5によりバイパスし、4個の電池セルC1~C4を直列接続された状態にする。時間t4~t5の間に、直列接続された4個の電池セルC1~C4の何れか一つの残放電容量RDが0[Ah]になるまで、4個の電池セルC1~C4から放電される。具体的には、4個の電池セルC1~C4の放電量が5[Ah]であり、残放電容量RDが5[Ah]で最小であった電池セルC4が全放電になる。
【0062】
次に、時間t5において、バイパス制御部は、全放電になった電池セルC4をバイパス回路B4によりバイパスし、3個の電池セルC1~C3を直列接続された状態にする。時間t5~t6の間に、直列接続された3個の電池セルC1~C3の何れか一つの残放電容量RDが0[Ah]になるまで、3個の電池セルC1~C3から放電される。具体的には、3個の電池セルC1~C3の放電量が3[Ah]であり、残放電容量RDが3[Ah]で最小であった電池セルC3が全放電になる。
【0063】
次に、時間t6において、バイパス制御部は、全放電になった電池セルC3をバイパス回路B3によりバイパスし、2個の電池セルC1,C2を直列接続された状態にする。時間t6~t7の間に、直列接続された2個の電池セルC1,C2の何れか一つの残放電容量RDが0[Ah]になるまで、2個の電池セルC1,C2から放電される。具体的には、2個の電池セルC1,C2の放電量が1[Ah]であり、残放電容量RDが1[Ah]で最小であった電池セルC2が全放電になる。
【0064】
最後に、時間t7において、バイパス制御部は、全放電になった電池セルC2をバイパス回路B2によりバイパスし、1個の電池セルC1を接続された状態にする。時間t7~t8の間に、接続された1個の電池セルC1の残放電容量RDが0[Ah]になるまで、1個の電池セルC1から放電される。具体的には、1個の電池セルC1の放電量が1[Ah]であり、残放電容量RDが1[Ah]であった電池セルC1が全放電になる。
【0065】
ここで、負荷の動作を保証する観点から、放電時の電池システムの総電圧が最低許容総電圧Vを下回ることを防止する必要がある。最低許容総電圧Vは、例えば負荷の仕様に基づいて設定されるものであり、系統連携型定置用の電池システムであれば、DC/ACインバータの入力電圧により決定され、車載用の電池システムであれば、モータのインバータの入力電圧の範囲により決定される。
【0066】
しかしながら、比較例の放電制御では、直列接続する電池セルC1~C8の数が1個~3個と少なくなる時点で、電池システムの総電圧が最低許容総電圧Vを下回るおそれがある。そこで、本実施形態の放電制御では、放電開始時から放電完了時まで、電池システム1の総電圧を最低許容総電圧V以上に維持するように、上記の第1の処理及び第2の処理を実行する。以下、本実施形態の放電制御について詳細に説明する。
【0067】
図7は、本実施形態の放電制御について説明するためのタイミングチャートである。また、図8は、図7のタイミングチャートに示す本実施形態の放電制御について説明するための表である。これらの図に示すように、本実施形態の放電制御では、8個の電池セルC1~C8の放電を制御する。
【0068】
図7及び図8に示すように、初期の8個の電池セルC1~C8の残放電容量RDを、それぞれ、100[Ah],99[Ah],98[Ah],95[Ah],90[Ah],89[Ah],87[Ah],86[Ah]とする。本実施形態の放電制御では、バイパス制御部104(図1参照)が、複数の電池セルC1~C8の残放電容量RDの差が減少するように、残放電容量RDが他に比して相対的に小さい電池セルC1~C8を優先的にバイパスする(第1の処理)。この第1の処理では、バイパス制御部104が、初期の残放電容量RDが最小の電池セル(図示する一例ではC8)を当該処理の開始から終了まで連続してバイパスし、その他の電池セル(図示する一例ではC1~C7)をバイパスしたり直列接続したりすることにより、全ての電池セルC1~C8の残放電容量RDを、初期の残放電容量RDの最小値(図示する一例では86Ah)に揃える。また、第1の処理では、バイパス制御部104が、初期の残放電容量RDが最大の電池セル(図示する一例ではC1)を、当該処理の開始から終了までの間、バイパスすることなく接続し、その他の電池セル(図示する一例ではC2~C7)を残放電容量RDが小さいほどバイパスする回数が多くなるように接続したりバイパスしたりすることにより、残放電容量RDの差を漸次的に減少させる。なお、ここでの第1の処理は、一例であり、適宜変更してもよい。
【0069】
ここで、第1の処理では、バイパス制御部104が、電池システム1’の総電圧が最低許容総電圧V以上という条件が満たされるように、バイパスする電池セルC1~C8を選択する。図示する一例では、バイパス制御部104が、第1の処理の開始から終了までの間、3個以上の電池セルC1~C7を直列接続することにより、電池システム1’の総電圧を最低許容総電圧Vよりも高い状態に維持する。
【0070】
図7に示す第1の処理の一例では、まず、時間t1において、バイパス制御部104が、残放電容量RDが最小の電池セルC8に加えて、初期の残放電容量RDが他に比して相対的に小さい電池セルC5,C6,C7をバイパスし、初期の残放電容量RDが他に比して相対的に大きい電池セルC1,C2,C3,C4を直列接続する。時間t1~t2の間に、直列接続された4個の電池セルC1~C4から放電される。この4個の電池セルC1~C4からの放電量は7[Ah]である。なお、例えば、この4個の電池セルC1~C4からの放電量を9[Ah]として、電池セルC4の残放電容量RDを目標値の86[Ah]まで減少させることも可能である。
【0071】
次に、時間t2において、バイパス制御部104は、電池セルC5~C8に加えて、電池セルC3をバイパスし、その他の電池セルC1,C2,C4を直列接続する。時間t2~t3の間に、直列接続された3個の電池セルC1,C2,C4から放電される。この3個の電池セルC1,C2,C4からの放電量は2[Ah]である。これにより、電池セルC4の残放電容量RDが目標値の86[Ah]まで減少する。
【0072】
次に、時間t3において、バイパス制御部104は、残放電容量RDが目標値まで減少した電池セルC4を電池セルC5~C8と共にバイパスし、バイパスしていた電池セルC3を接続する。時間t3~t4の間に、直列接続された3個の電池セルC1,C2,C3から放電される。この3個の電池セルC1,C2,C3からの放電量は1[Ah]である。
【0073】
次に、時間t4において、バイパス制御部104は、残放電容量RDが目標値まで減少した電池セルC4,C8と共に電池セルC2,C6をバイパスし、バイパスしていた電池セルC5,C7を接続する。時間t4~t5の間に、直列接続された4個の電池セルC1,C3,C5,C7から放電される。この4個の電池セルC1,C3,C5,C7からの放電量は1[Ah]である。これにより、電池セルC7の残放電容量RDが目標値の86[Ah]まで減少する。また、電池セルC1,C2,C3,C5,C6の残放電容量RDが89[Ah]に揃う。
【0074】
次に、時間t5において、バイパス制御部104は、残放電容量RDが目標値まで減少した電池セルC4,C7,C8をバイパスし、バイパスしていた電池セルC2,C6を接続する。時間t5~t6の間に、直列接続された5個の電池セルC1,C2,C3,C5,C6から放電される。この5個の電池セルC1,C2,C3,C5,C6からの放電量は3[Ah]である。これにより、電池セルC1,C2,C3,C5,C6の残放電容量RDが目標値の86[Ah]まで減少し、全ての電池セルC1~C8の残放電容量RDが目標値の86[Ah]に揃う。
【0075】
次に、時間t6において、バイパス制御部104は、全ての電池セルC1~C8を直列接続する。時間t6から放電完了までの間に、直列接続された全ての電池セルC1~C8から放電される(第2の処理)。第2の処理における全ての電池セルC1~C8からの放電量は86[Ah]である。これにより、全ての電池セルC1~C8が全放電となる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の電池制御装置200は、上記比較例のように放電が完了した電池セルC1~Cnを順次バイパスするのではなく、残放電容量RDが他の電池セルC1~Cnに対して相対的に小さい電池セルC1~Cnを優先的にバイパス回路B1~Bnによりバイパスすることで、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDの差を減少させる第1の処理を実行する。そして、電池制御装置200は、第1の処理の実行後に、全ての電池セルC1~Cnを直列接続してそれらから放電完了まで放電させる。これにより、第1の処理の実行後から全ての電池セルC1~Cnの放電が完了するまでの間、全ての電池セルC1~Cnを直列接続した状態を維持できる。従って、この間に、電池システム1’の総電圧を、上記比較例に比して高い状態に維持できる。また、総電圧を高い状態に維持できることにより、電池パック10から所望の放電電力を出力できる時間を、上記比較例に比して長くすることができる。
【0077】
また、本実施形態の電池制御装置200は、第1の処理において、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDを、第1の処理の開始時点での最小値まで減少させる。これにより、全ての電池セルC1~Cnの放電完了のタイミングを揃え、放電が完了した電池セルC1~Cnをバイパスするタイミングを揃えることができる。
【0078】
さらに、本実施形態の電池制御装置200は、第1の処理の実行中の電池システム1’の総電圧が、電池システム1’の最低許容総電圧V以上に維持されるように、バイパスする電池セルC1~Cnを選択する。これによって、第1の処理において、電池システム1’の総電圧が電力系統(図示省略)の最低許容総電圧Vを下回ることを防止したうえで、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDを揃えることができる。
【0079】
図10は、図7のタイミングチャートに示す放電制御の変形例について説明するためのタイミングチャートである。この図に示す放電制御では、第1の処理の実行中の放電電力制限値[W]を、最低許容放電電力P以上に維持にする。ここで、放電電力制限値[W]は、電池セルC1~Cnの放電電流制限値の中の最小値に電池システム1の総電圧を乗じることにより得られる値である。なお、最低許容放電電力Pは、一定の値であってもよく、諸条件により変動する値であってもよい。
【0080】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0081】
例えば、上記実施形態では、各電池セルC1~Cnの放電完了までの残放電量を、電流容量である残放電容量RD[Ah]で規定したが、各電池セルC1~Cnの放電完了までの残放電量は、当該指標と相関があるもので規定すればよく、SOCやOCV(開放電圧)等により規定してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、第1の処理において、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDを、第1の処理の開始時点での最小値まで減少させたが、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDを、第1の処理の開始時点での最小値を下回るまで減少させてもよい。
【0083】
また、最終的に全ての電池セルC1~Cnの残放電容量RDを使い切る、全ての電池セルC1~Cnの放電完了のタイミングを揃える、という観点から、第1の処理において、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDを揃えることが好ましい。しかしながら、第1の処理において、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDを揃えることも必須ではなく、第1の処理において、複数の電池セルC1~Cnの残放電容量RDの差が減少していればよい。
【0084】
さらに、各時間で接続する電池セルC1~C8の組み合わせや各時間での各電池セルC1~C8からの放電量は一例であり、例えば、図9の表に示すように、各時間で接続する電池セルC1~C8の組み合わせを選択したり各時間での各電池セルC1~C8からの放電量を調整したりしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 :電池システム
1’ :電池システム
10 :電池パック
20 :バイパス回路
100 :電池制御装置
200 :電池制御装置
B1~Bn :バイパス回路
C1~Cn :電池セル
Rp :所定値
R1 :残電流容量(残量)
RD :残放電容量(残放電量)
:最低許容総電圧
:最低許容放電電力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10