(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ガス状汚染物質の除去における改善された効率性のための表面改質炭素及び吸着剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/28 20060101AFI20230906BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20230906BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20230906BHJP
C01G 45/02 20060101ALI20230906BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20230906BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20230906BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B01J20/28 A
B01J20/18 E
B01J20/20 D
C01G45/02
A61L9/00 C
A61L9/014
B01D53/04 110
(21)【出願番号】P 2021202905
(22)【出願日】2021-12-14
(62)【分割の表示】P 2019545706の分割
【原出願日】2017-11-03
【審査請求日】2021-12-15
(32)【優先日】2016-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519161665
【氏名又は名称】コロンバス・インダストリーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】COLUMBUS INDUSTRIES, Incorporated
【住所又は居所原語表記】2938 St. Rte. 752, Ashville, Ohio 43103, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】ガウル、ヴィヴェカナンド
(72)【発明者】
【氏名】ポンティウス、エリック
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-339629(JP,A)
【文献】特開平03-288545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0255283(US,A1)
【文献】米国特許第05998328(US,A)
【文献】米国特許第08664153(US,B1)
【文献】国際公開第2007/072739(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102198405(CN,A)
【文献】特表2015-509832(JP,A)
【文献】特表2019-534159(JP,A)
【文献】特開2016-199426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28、20/30-20/34
A61L 9/00-9/22
B01D 53/02-53/12、53/34-53/73、
53/74-53/85、53/92、53/96
F24F 1/00-9/00
C01G 45/02
C01B 32/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流中の揮発性有機化合物と反応するための材料を製造する方法であって、
(a)
マンガン酸化物ナノ粒子を形成するために、少なくとも一つのマンガン前駆体化合物を還元剤と共に水相で溶解する工程と、
(b)第1の多孔質吸着材の表面に有する内部に伸びる細孔に前記
マンガン酸化物ナノ粒子が均一に分布して付着するように、前記第
1の多孔質吸着材に前記
マンガン酸化物ナノ粒子含む溶液を噴霧する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
ガス流中の揮発性有機化合物と反応するための材料を製造する方法であって、
(a)
マンガン酸化物ナノ粒子を形成するために、少なくとも一つのマンガン前駆体化合物を還元剤と共に水相で溶解する工程と、
(b)第1の多孔質吸着材の表面に有する内部に伸びる細孔に前記
マンガン酸化物ナノ粒子が均一に分布して付着するように、前記第
1の多孔質吸着材を前記
マンガン酸化物ナノ粒子含む溶液に浸漬する工程と、
を含む方法。
【請求項3】
前記溶液が噴霧された前記第1の多孔質吸着材を150°C以下の温度で乾燥させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液に浸漬された前記第1の多孔質吸着材を150°C以下の温度で乾燥させる工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶解する工程が、前記マンガン前駆体化合物を還元剤と共に水相で溶解し、それを振り混ぜる工程からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記溶解する工程が、前記マンガン前駆体化合物を前記第1の多孔質吸着材の0.5~5重量%の範囲で、還元剤と共に水相で溶解する工程からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記マンガン前駆体化合物が、100~400ナノメートルの範囲内にある
マンガン酸化物ナノ粒子を形成するために、前記マンガン前駆体化合物と前記還元剤との反応が低くなる濃度に維持される前記還元剤と組み合わされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記
マンガン酸化物ナノ粒子が付着した前記第
1の多孔質吸着材をポリマー繊維構造体に適用する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガスから汚染物質を除去するのに使用される材料に関し、より詳細には空気からアルデヒドのような汚染ガスを除去するのに使用される材料に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドは反応性の高い有機化合物であり、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、トルアルデヒド、及びレチンアルデヒドを含む。ホルムアルデヒドは十分なレベルでヒトに吸入されると有害であり、揮発性有機化合物、又はVOCと見なされる。アルデヒドは新たに製造されたポリマーの周囲の空気中に時折見出され、住宅建物に存在する。従って、住宅建物の空気からアルデヒドを除去することが望ましい。
【0003】
家等の住宅建物において空気から汚染物質を除去する1つの一般的な方法は、家の集中冷暖房システムで使用されているフィルタに、家の中を循環する際に空気から汚染物質を吸着する材料を施すことである。このような暖房及び冷房システムは、ファンを使用して空気を家の各部屋に移動させながら、同時に同じ部屋のほとんどまたは全てから空気を吸い込むことが知られている。このようにして、空気が集中システムを通って循環され、フィルタが空気から粒子を濾過及び/又はその他の方法で除去する間、処理材は空気がフィルタを通過するときに空気から汚染ガス分子を吸収する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のフィルタは、ビルのセントラル暖房及び冷房システムで使用されるフィルタに対する吸着(物理吸着又は化学吸着)機構のために処理された活性炭を含んでいた。これらのフィルタは、ホルムアルデヒド等の汚染物質を取り込むために、大きなメッシュサイズ又はペレット状のカーボンを使用する。従って、先行技術は、吸着機構のために処理されたカーボンによってホルムアルデヒドを除去する。任意の建物の居住者に対するホルムアルデヒドの悪影響を減らすために、より多くのホルムアルデヒドを除去すること、又はより速い速度でホルムアルデヒドを除去することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示されるのは、遷移金属、金属酸化物及び錯体を含浸させることによって実施することができる、表面改質された活性炭及び他の多孔質吸着剤である。これらの表面改質された多孔質吸着剤は、それらの細孔内に金属酸化物を受け取り、例えばHVACフィルタに添加されることによって室内空気と接触させるようにすることができる。これは、VOCのより高い吸着、及びフィルタ又は他の空気接触構造を通過する空気中のVOC、特にホルムアルデヒドの酸化における触媒活性をもたらし、それによって建物の居住者によって呼吸される空気流からVOCを除去することができる。
【0006】
活性炭は、チタニア、モレキュラーシーブ、ゼオライト及びアルミナと同様に、考えられる多孔質吸着剤の一つである。ホルムアルデヒド及び他のアルデヒド等のVOCの接触酸化の追加のメカニズムを得るために、活性炭はMnOxベースのナノ粒子で含浸されてよく、これは予め調製されてもよく、またはインサイチュで調製されてもよい。MnOxナノ粒子と活性炭とのこの組み合わせは、より速い反応速度でより高い酸化能を有し、それはより高い濾過効率及びより長い濾過寿命をもたらす。活性炭に加えて多孔質基材に、マンガン系粒子及び/又はナノ粒子(ゼオライトを含むが限定されない)を含浸させることができる。
【0007】
また、本明細書に開示されるのは、織布シート、不織バット、又は繊維ウェブなどの繊維構造であり、それはポリマーであってよい。繊維構造は、繊維構造上に触媒部位を作り出す金属酸化物及びイオン懸濁液のコーティングを有してもよい。この繊維構造はフレーム内に配置され、集中冷暖房システムにおけるフィルタとして設置されてもよい。得られた濾過媒体を、空気流中の揮発性有機化合物(VOC)、特にホルムアルデヒドを酸化するための空気濾過媒体として使用することが考えられる。これは、家屋、集合住宅、オフィスビル、工場、その他の任意の構造であり得る建物の暖房、空調及び換気(HVAC)システムの空気経路内に形成されたダクトのフレーム内に媒体を配置することによって達成することができる。触媒ナノ金属酸化物(例えば、酸化マンガン)で被覆されたポリマーウェブは、吸収及び汚染物質のより有害でない物質への触媒作用による分子ガス及び/又はVOCの除去において高められた効率を有する。
【0008】
ポリマーウェブ媒体は、ナノサイズの酸化マンガン及びカリウムイオンで被覆することができる。濾過媒体は、HVACシステムにおいて、単独で、または活性炭と組み合わせて使用することができる。本明細書に記載されるように、媒体は、市販の、又はインサイチュで調製されたMnOx系ナノ粒子を含浸させた活性炭を施して、ホルムアルデヒド等のVOCの接触酸化によってVOC/ガスを除去するためのメカニズムを与え得る。これは、より速い速度でより高い除去能力をもたらし、より高い濾過効率及びより長いフィルタ寿命をもたらす。従って、酸化マンガンのナノ粒子でコーティングされたこのポリマーウェブの利点は、コーティングされたウェブがより多くのVOCを分解することができ、そしてより速い速度で、より高いCADR及びCCMの達成を助けることである。
【0009】
酸化マンガンで被覆されたポリマー繊維構造体は、CO2へ空気流からVOC(特にホルムアルデヒド)を分解及び/又は酸化するための強力な触媒として作用する。ウェブは、触媒被覆ウェブを単独で又は空気濾過システムにおいて活性炭と組み合わせて使用することにより、ガス状の汚染物質(ホルムアルデヒドの蒸気及び他のガスを含む)を除去するための先行技術の構造よりも高い触媒能を有する。さらに、ナノマンガン酸化物粒子(MnOx)を合成し、ポリマーウェブを被覆するための技術も開示される。
【0010】
触媒活性を付加する本明細書に開示される濾過媒体は、空気流からホルムアルデヒド及び分子ガス及び/又は蒸気を除去する。触媒活性は、触媒酸化マンガンおよびカリウムイオンで被覆されたポリマーウェブ層を使用することによってカーボンフィルタに加えることができる。あるいは、又はさらに、触媒活性は、2つの層の間にMnOxを含浸させた粒状吸着剤を取り込むこと、又はMnOxを含浸させた活性炭を繊維ウェブに付着させることによって微粒子フィルタに加えることができる。気相用の空気濾過媒体は、粒状フィルタウェブとカーボンフィルタとの組み合わせであってもよく、ペレット状のカーボン、顆粒状、又はシート状の固定化カーボンで反応(及び/又は吸収)し、それによって気流からガス状汚染物質を取り除くことができる。
【0011】
本明細書に開示される製品は、ホルムアルデヒド及び他の揮発性有機化合物(VOC)を除去するためのより高い濾過効率に関して、新しいエアフィルタの規格を満たすであろう。特に、より高いクリーンエア供給率(CADR)でホルムアルデヒドを除去するために中国当局によって導入されたGBT 18801試験プロトコルは、好適に、開示された製品によって達成される。
【0012】
本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の表面改質炭素を固定化する高濾過媒体であり、空気流からホルムアルデヒド及び他の蒸気/ガスを除去するためのより高い吸着及び触媒活性を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、MnOx粒子が分散された高多孔質炭素顆粒を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、複数の異なる物質について多量の空気からホルムアルデヒドを除去するのに必要な時間の実験から得られた実験データのグラフ図である。
【
図3】
図3は、実験から得られた実験データのグラフ図であり、汚染物質によるフィルタの破過時間が4つのサンプルのそれぞれについて示される。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態を示す概略的な側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態を示す概略的な側面図である。
【
図6】
図6は、
図5の線5-5に沿って本発明の実施形態を示す概略的な断面端面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態を示す概略的な側面図である。
【
図8】
図8は、
図7の線8-8に沿って本発明の実施形態を示す概略的な断面端面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態を配置した暖房、換気、および冷却システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に示されている本発明の好ましい実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語が使用されるだろう。しかしながら、本発明がそのように選択された特定の用語に限定されることは意図されておらず、そして各特定の用語は同様の目的を達成するために同様の方法で機能する全ての技術的な均等物を含む。例えば、接続されたという単語またはそれに類似した用語がしばしば用いられる。それらは直接接続に限定されず、そのような接続が当業者によって同等であると認識される場合に他の要素を介した接続を含む。
【0015】
2016年11月3日に出願された米国仮特許出願第62/416,899号、2017年2月24日に出願された米国仮特許出願第62/463,144号、2016年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/422,943号は参照により本出願に組み込まれる。
【0016】
4mm程度の粗いものから10ミクロン程度の微細なものまで任意の粒径分布の活性炭を、微細分散ナノ粒子として調製された酸化マンガン(MnOx)やそのような錯体で含浸すること等によって処理することができる。MnOxのナノ粒子は、100~400ナノメートルの範囲内にあることが好ましい。
【0017】
これらのナノ粒子は市販されており、活性炭又は他の基材に塗布することができる。あるいは、粒子はインサイチュで化学的還元剤とそれらの前駆体、例えば過マンガン酸カリウム/ナトリウム、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、及び/又は硫酸マンガン、並びに当業者に知られている他のもの等によって形成されてよい。このMnOx含浸炭素を、ある割合(10~60%)のKOH及びKCl等のイオンのアルカリ塩を含浸した炭素と混合して、接触酸化の活性を高めることができる。
【0018】
得られたMnOx含浸活性炭又は他の基材は、吸着特性に加えて触媒特性を有する。提案される1つのMnOx含浸基材は、炭素の0.5~5.0重量%の範囲の濃度のMnOx粒子を有する活性炭である。提案される含浸基材は、ゼオライトの0.5~2.0重量%の範囲の濃度のMnOx粒子を有するゼオライトである。
【0019】
ホルムアルデヒド等のVOCの接触酸化の効果をそのようなVOCの物理吸着および化学吸着と組み合わせるために、多孔質炭素又は他の基材に、微細な炭素粒子上に酸化マンガン及び場合によっては水酸化物も含浸させ、マンガン結晶の触媒部位を均一に分散させる。このMnOx含浸炭素は、接触酸化の活性をさらに高めるために、ある割合のイオンのアルカリ塩(KOH及びKCl等)含浸炭素とブレンドすることができる。
【0020】
気相用の空気濾過媒体は、微粒子フィルタと炭素フィルタとの組み合わせであり得る。炭素フィルタは、炭素ペレット、顆粒、又はシート状の固定化炭素から形成することができ、顆粒を保持するためのハニカム構造を有する場合がある。
【0021】
表面改質は、酸化マンガンを湿式含浸することによって、1つ以上の多くの形態及び広範囲の粒度分布で、炭素に施すことができる。酸化マンガンは、マンガン前駆体化合物(過マンガン酸カリウム/ナトリウム、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン及び硫酸マンガン等)をそれらの還元剤(シュウ酸アンモニウム、水酸化アンモニウム及びアニリン等)と共に水相で分解することによって調製することができる。液相に懸濁した状態で形成された酸化マンガン粒子は、湿式プロセスとそれに続く150℃以下の温度での乾燥によって活性炭の多孔質表面に分散される。
【0022】
酸化マンガン粒子を形成する反応速度は、粒径に影響を与える。前駆体と還元剤が急速に組み合わされると、大きな粒子が沈殿することになり、これは望ましくない。しかしながら、前駆体及び還元剤が制御された方法で、例えば、反応を遅くするために意図的に低濃度に保たれた還元剤で希釈化された形態(水中)で、形成される粒子は要望通り極めて小さい。アルカリイオン電荷を有する炭素は、水酸化/塩化物/ヨウ化カリウム等のカリウム前駆体化合物を水に溶解することによって調製することができる。炭素をこの溶液で約1時間含浸又は浸漬し、次いで同様に150℃より低い温度で乾燥させる。
【0023】
マンガン前駆体は、通常、含浸させる炭素の0.5~5重量%の範囲で使用され、炭素の初期容量の1~100%(例えば、20%)過剰の脱イオン水を使用して調製される。水酸化アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、オレイン酸又はアニリンのような還元剤は、マンガン前駆体を非常に小さいサイズの酸化マンガン粒子に変えるために使用される。次いで、酸化マンガンナノ粒子を活性炭上に均一に広げるスプレー及び/又は浸漬プロセスによって、微細な酸化マンガンナノ粒子を含むこの懸濁液をカーボンに含浸させる。
【0024】
アルカリ/K+イオン前駆体は、通常、炭素の0.5~10重量%の範囲で使用され、上記のように、1~100%過剰の炭素の初期容量の脱イオン水を使用して調製される。
【0025】
一つの方法において、市販の酸化マンガン(MnO4)粉末が購入され、1.0gのMnO4粉末が100mlの水に懸濁された。この懸濁液は次いで100gの市販の活性炭に噴霧され乾燥された。この炭素のCADR試験結果は、下記の方法で製造されたMnOx炭素のそれと類似していた。
【0026】
別の方法では、1.0gの過マンガン酸カリウム又は酢酸マンガンが120mlの水に溶解された。数滴の水酸化アンモニウム又はシュウ酸溶液(この溶液は500mlの水中に50.0gの希釈物である)が添加され、この混合物が30分間振り混ぜられて、液体中に懸濁した酸化マンガンナノ粒子が形成された。次に、この懸濁液が本明細書で言及されたサイズ範囲の活性炭粒子100.0gに噴霧され、30分間浸漬された。最後に、炭素中の最終含水率が炭素の重量の約1%未満になるまで炭素を低温(150℃未満)で乾燥させ、これは約20~24時間かかった。
【0027】
酸化マンガンを含浸させた上記の炭素は、空気流からVOC、特にホルムアルデヒドを除去するための吸着特性と触媒特性の両方を有する。酸化マンガンは、湿式法によって微粒子状に調製され、活性炭顆粒の細孔内に分散される。ホルムアルデヒド(HCHO)分子は、吸着されて触媒MnOx粒子と反応し、そして以下に提案されるメカニズムによってCO2及びH2Oに酸化される。
HCHO + O2 → CO2 + H2O
【0028】
このようなマンガン酸化物を添加した表面改質炭素は、ホルムアルデヒドのCO2への分解/酸化並びに他のVOCの分解及び/又は酸化のための強力な触媒として作用する。さらに、この材料は、気相濾過における物理吸着及び化学吸着によってそのような有機気体分子を吸着するための高効率吸着剤として作用する。
【0029】
MnOx(例えば、MnO
2及び他の酸化マンガン)を添加した表面改質炭素の得られた形態が
図1に示される。
図1の概略図から分かるように、MnOx粒子は多孔質基材顆粒の細孔内に、その外面上又は外面に向かって広く均一に分布している。本明細書に記載の濃度では、炭素基材上のそのようなMnOx粒子は、吸着特性に加えて触媒特性を有する。これらのMnOx粒子は、従来のHVACシステム又は部屋若しくは建物の濾過装置に取り付けられているフィルタを通って流れる周囲の空気からホルムアルデヒド及び他のVOCを除去するためにフィルタに取り付けることができる。ホルムアルデヒドの触媒作用は有害な化学物質をはるかに害の少ないCO
2とH
2Oに酸化する。吸着特性は、吸着によって空気からVOCを除去する。この組み合わせは、MnOxの非常に小さい粒子の単位質量当たりの表面積に起因して生じる。一例として、MnOx粒子は、100~400ナノメートルの範囲のサイズであり得る。活性炭もまた、単位質量当たりの表面積が大きく、800~1300m
2/gの範囲であり得る。好ましい活性炭は約1,000m
2/gの表面積を有する。
【0030】
得られる炭素の1つの利点は、それが吸着活性と触媒活性との組み合わせによって、他の生成物よりも多くのVOCを、より速い反応速度で分解することができることである。別の利点は、炭素は、より粗いメッシュサイズからより微細なメッシュサイズまでの任意のサイズの粒子であり得ることである。さらに、炭素を不織濾過媒体中に2層の間などで固定化して、フィルタの所定の空間にこれらの利点を付与することができる。
【0031】
接触酸化による効率の向上を裏付けるために、出願人は、異なる炭素及びゼオライトサンプルのホルムアルデヒドCADRを比較した。結果は
図2に示される。試験では、1m
3のチャンバにVOC発生器を使用して約1.2ppmのホルムアルデヒドを充填し、30分間自然に減衰させた。この間、温度は22℃に維持され、相対湿度は約50%に保たれた。濃度が安定すると、チャンバ内の空気浄化装置の電源が入れられ、チャンバからホルムアルデヒドが完全に除去されるまで時間対濃度が記録された。結果は、本発明に従って製造された生成物がいずれのタイプの市販の炭素単独よりも速くホルムアルデヒドを除去したことを示している。さらに、表面改質炭素及び表面改質ゼオライトは、未処理(未加工)カーボン及びゼオライトと比較して、チャンバの洗浄において著しく高い効率(CADR)を示すことが分かる。
【0032】
本発明は、炭素又は他の吸着剤基材の細孔に分散されたナノマンガン酸化物粒子(MnOx)が存在することで従来技術と異なっており、その結果特定の形態及び特性の組み合わせがもたらされる。これは、ホルムアルデヒド蒸気及び他のガスを含むガス状汚染物質を除去するための吸着及び触媒活性をもたらす。
【0033】
MnOxを炭素に含浸させて、他の炭素粒子に含浸させたある割合のイオンのアルカリ塩(KOH及びKCl等)と混合する組み合わせは、接触酸化の活性をさらに高める。媒体の構造的一体性及び処理された炭素若しくはバインダとのその形成は重要である。本発明は、炭素に加えてある割合の表面改質吸着剤、例えば、チタニア、モレキュラーシーブ、ゼオライト及びアルミナ等を含むことにより相乗効果を生じさせてさらにより高い性能を与えることを企図する。既存のハニカムフィルタでは、触媒炭素による触媒作用とハニカムフィルタ中の炭素による吸着を行う2つのVOC除去メカニズムがあるように、この触媒炭素で構造体を被覆することが考えられる。
【0034】
水相でMnOx粒子を調製する方法は、過マンガン酸カリウム又は酢酸マンガン若しくは硫酸マンガン等のマンガン前駆体で開始することができ、そしてこれらの微細懸濁MnOx粒子を炭素粒子に含浸させることができる。開始の炭素粒径は、高いマイクロポロシティ及びテクスチャ特性を有しながら、4mm程度の粗さから10ミクロン程度の微細なものとすることができる。触媒MnOx微粒子が炭素上に均一に分散しているため、得られるフィルタは、ガス状汚染物質のより高い濾過効率でのより長い寿命を有する。
【0035】
上述の化合物は、ホルムアルデヒドのような様々な気体分子を分解するための触媒特性を付与するインサイチュで調製されたナノ酸化マンガン(nMnOx)粒子懸濁液を活性炭に含浸させる。ホルムアルデヒドは「アルデヒド」化合物のクラスの塩基性化合物であることが知られている。他のそのような化合物はアセトアルデヒドであり、これは類似の性質を有しそして同等又はそれ以上の毒性の大気汚染物質であると考えられている。同じnMnOx含浸炭素は、接触酸化によってホルムアルデヒドと同様にアセトアルデヒドを除去することができる。これに関連して、生成物は、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを含むアルデヒド基の化合物等のVOCの接触酸化へ拡張される。
【0036】
遷移金属及び金属酸化物、特に酸化マンガンの湿式含浸による活性炭及び他の多孔質吸着剤の表面改質が本明細書に開示される。活性炭顆粒は、任意のメッシュサイズ及び任意の形態であり得るが、好ましくは4~8mm、8~16mm、20~50mm及び50~200mmの米国メッシュサイズの範囲内にある。ゼオライトを使用する場合、好ましいサイズは12~30mmメッシュサイズである。活性炭ペレットは、2~3mmの大きさの範囲で使用され得る。このMnOx含浸炭素は、KOH及びKClのようなイオンのアルカリ塩を含浸させた他の炭素と混合して触媒酸化の活性を高めることができる。
【0037】
目的は、活性炭によるより高い吸着及び触媒作用によって空気流からガス種を除去することである。前記のより高い吸着及び触媒活性は、様々な化学処理及び活性金属/酸化物の含浸によって作り出すことができる。化学処理によって、我々は化学吸着活性部位であると考えられている炭素基底面上に様々な官能基を作り出す。これらの部位は気体分子によって占められ、官能基とガス分子との間に結合を形成し、次第に飽和状態になる。言い換えれば、化学的に処理された炭素(例えば、カリウムイオンを含む活性炭)は、ガス種を除去するための化学吸着のキャパシティが制限される。しかしながら、説明されたnMnOx粒子の含浸方法によって調製された触媒炭素は、気体分子を分解する機能を有し、残存活性部位は各サイクル後に再生される。
【0038】
ガスを除去するために化学吸着メカニズムと触媒メカニズムとを組み合わせることが考えられる。2つの方法が考えられる。第一のアプローチは、2つの炭素を物理的に混ぜ合わせることである。化学的に処理された炭素とnMnOx含浸触媒炭素を様々な割合で混合して効果を組み合わせることができる。ホルムアルデヒド及び他の気体除去効率は、化学吸着炭素と触媒炭素とを混合することによって著しく増加することが観察されている。様々なブレンドのホルムアルデヒドの破過及び飽和容量を決定するための実験の結果を示す
図3に見られるように、効果は著しく増加する。最短の破過時間は触媒nMnOx炭素単独によるものであり、次の最短時間は化学的に処理された炭素単独によるものである。この関連で最良の製品を意味する破過までの最長時間は、nMnOxを含浸させた炭素とカリウムイオン(例えば、KCl、KOH、KI等)のようなイオンのアルカリ塩で化学的に処理した炭素の50/50混合物の物理的ブレンドである。2番目に高い時間は、nMnOxを含浸させた40%の炭素とイオンのアルカリ塩で化学的に処理された60%の炭素との混合物である。汚染物質の漏出までの最長時間は、このように、nMnOxを含浸させた活性炭50%とイオンのアルカリ塩で化学的に処理された炭素50%との混合物に見られる。
【0039】
第2のアプローチは、最初に触媒酸化マンガンを含浸させ、次いで化学試薬で処理することによって、同じ炭素上に化学吸着及び触媒作用の二重の効果を作り出すことである。nMnOx炭素を調製する第一工程は本明細書で説明される。第二の処理は同じ炭素について行われる。このためにKI、KOH等のような化学試薬は、処理されるべき炭素の10~25%体積において水に溶解され、次いでnMnOx炭素に均一に噴霧される。
【0040】
別の実施形態は、ポリマー繊維構造体を本明細書に記載の同じ酸化マンガン粒子及びカリウムイオンでコーティングして作製されてよく、単独で又は本明細書に記載のカーボンフィルタと組み合わせて使用する際、VOCを酸化するためエアフィルタに追加の触媒活性を与えることができる。水相でMnOx粒子を調製し(過マンガン酸カリウム、酢酸マンガン、又は硫酸マンガン等のマンガン前駆体から出発して)、これら微細懸濁MnOx粒子を炭素に含浸させることができる。次の工程は、空気流から分子状ガス汚染物質/VOCを除去するためのより高いCADR及びCCMを達成するために、ポリマーウェブ上にMnOx粒子をコーティングすることである。第一工程では、マンガン前駆体化合物を1~30%w/vの範囲で水に溶解し、カリウムイオン前駆体を10~30%w/vの範囲で繊維のコーティングのために溶解する。第二工程において、ナノ酸化マンガンの担持量は1~5%である。
【0041】
含浸炭素で繊維を被覆して得られる生成物が
図4に概略的に示されており、そこでは不織バット100のような濾材がガス流110の流れの中に置かれている。媒体の拡大図は、不織バット100内の多孔質吸着剤粒子120を示す。粒子120は、MnOxを含浸させ、カリウムイオンで処理し、いくつかの含浸させたものといくつかの処理されたものの両方又は組み合わせとすることができる。
図5及び
図6に示す代替の実施形態では、繊維状媒体のバット200が、その中に含浸炭素粒子が保持されている材料のシート又はパネル210を挟んでいる。パネル210は、2枚の織布又は不織布の気体透過性材料とすることができる。従って、バット200は粒子を濾過し、一方パネル210内に保持された含浸炭素粒子はVOCの変換を触媒してそれを吸着し、それによって媒体バット200を通過するガスからVOCを除去することができる。他の代替の実施形態が
図7及び
図8に示され、ここでは、不織布構造に形成されたポリマー繊維であり得る媒体バット300が、バット300の繊維に接着された多孔質の吸着剤粒子を有している。吸着剤粒子は、本明細書の開示に従って金属酸化物ナノ粒子で含浸され、いくつかの吸着剤粒子は、イオンのアルカリ塩によって処理され得る。
【0042】
ポリマー層へのこれらの触媒MnOx粒子の均一なコーティングにより、そのような媒体は、本明細書に記載の活性炭フィルタと組み合わせて使用された場合に、ガス状汚染物質のより高い濾過効率でのより長い寿命を有する。このように、触媒酸化マンガン及びカリウムイオンで被覆された高分子不織ウェブ繊維を作製することが考えられる。この繊維ウェブは、空気濾過媒体中で、個々に、またはカーボンフィルタと組み合わせて使用することができる。
【0043】
酸化マンガンコーティングは、過マンガン酸カリウム/ナトリウム等のマンガン化合物のコロイド溶液で繊維構造をコーティングすることから開始して、複数の工程で調製することができる。これらは、本明細書に記載の活性炭顆粒を被覆するMnOxナノ粒子の形成に使用される前駆体と同じであり得る。ナノ酸化マンガン粒子は、例えば、MnOxナノ粒子の懸濁液をウェブ構造に塗布することによって、得られるウェブ構造に適用される。このように、金属酸化物錯体溶液は、酸化マンガン(MnOx)で、化学剤/還元剤を用いて、過マンガン酸カリウム/ナトリウム又は酢酸マンガン又は硫酸マンガンのようなそれらの前駆体で調製され、水性形態で調製されたナノ酸化マンガン粒子は、ポリマー繊維又はウェブを被覆する。
【0044】
本明細書に記載のように、酸化マンガンは、過マンガン酸カリウム、酢酸マンガン及び硫酸マンガン等のマンガン前駆体化合物を溶解し、水相におけるシュウ酸アンモニウム、水酸化アンモニウム及びアニリンを含む化学剤とのそれらの酸化還元反応によって調製され得る。
【0045】
様々な濃度のMnOx粒子の様々な濃度を有するポリマー繊維構造は、過マンガン酸カリウム、酢酸マンガン、又は硫酸マンガンなどのマンガン前駆体で開始する。このナノマンガン酸化物被覆繊維ウェブは、触媒活性を相乗作用させるために従来のハニカムフィルタにおいてコーティングされてよい。
【0046】
酸化マンガン前駆体は、前駆体を水又は他の何らかの液体で希釈するときに繊維に塗布することができる。酸化マンガンナノ粒子は、上述の懸濁液を繊維に塗布することによって繊維に塗布することができる。繊維上の酸化マンガン前駆体はVOCを触媒するいくつかの効果を有し得、そして繊維上の酸化マンガンナノ粒子もまたVOCを触媒するいくつかの効果を有し得る。得られた生成物の触媒作用は、そのように(酸化マンガン前駆体及び酸化マンガンナノ粒子で)被覆された繊維に、米国特許第9,199,189号及び/又は米国特許出願公開第2016/0023186号(両方とも参照により本明細書に組み入れられる)に示されるような活性炭フィルタを付加することによって強化され得る。
【0047】
本発明の一実施形態が、
図9の従来の暖房、換気及び冷却(HVAC)システム400内に配置されて示されている。HVACシステム400は、空気調和炉430に隣接してフィルタ420を保持し、送風ファン440は、建物内の部屋からエアリターン410を通じて空気を引き込み、フィルタ420を通じ、空気調和炉430を通じ、建物の部屋へとサプライ450を出る。本明細書に記載の任意のフィルタ、及び任意の濾材、あるいは媒体又はフィルタへの添加剤を、
図9に示されるフィルタ420が配置されている場所に配置することができる。それによって空気又は他のガスがフィルタ420を通って流れ、ホルムアルデヒド等のVOCがH
2O及びCO
2への反応を触媒され、本明細書に記載の添加剤に吸着する。
【0048】
図面に関するこの詳細な説明は、主に本発明の目下の好ましい実施形態の説明として意図されており、本発明が構築又は利用され得る唯一の形態を表すことを意図するものではない。記載は、例示された実施形態に関連して本発明を実施する設計、機能、手段、及び方法を説明する。しかしながら、同じ又は均等な機能及び特徴は、本発明の思想及び範囲内に包含されることも意図される様々な実施形態によって達成されてもよく、そして本発明又は続く特許請求の範囲を逸脱することなく様々な修正が採用され得る。