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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】人工毛髪用繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/60 20060101AFI20230906BHJP
   D01F 6/90 20060101ALI20230906BHJP
   A41G 3/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
D01F6/60 311A
D01F6/90 301
A41G3/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021501900
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005496
(87)【国際公開番号】W WO2020170921
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2019027336
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】堀端 篤
(72)【発明者】
【氏名】武井 淳
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/092922(WO,A1)
【文献】特開2011-246844(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107904695(CN,A)
【文献】特開2006-257607(JP,A)
【文献】特開2007-119958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/60
D01F 6/90
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド100質量部に対し、臭素系難燃剤5~40質量部と、加工顔料0.01~10質量部を含み、
前記加工顔料は、着色剤と分散剤を含み、
前記着色剤と前記分散剤の合計を100質量%とすると、前記分散剤が20~80質量%であり、
前記分散剤は、モンタン酸金属塩、モンタン酸系ワックス、ポリエチレン系ワックス、フッ素ワックスの1種以上である、人工毛髪用繊維。
【請求項2】
請求項1に記載の人工毛髪用繊維であって、
前記分散剤は、モンタン酸金属塩を含む、人工毛髪用繊維。
【請求項3】
請求項2に記載の人工毛髪用繊維であって、
前記モンタン酸金属塩は、モンタン酸カルシウムである、人工毛髪用繊維。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維であって、
前記着色剤は、Pigment Black 7、Pigment Red 149、Pigment Yellow 147、Solvent Yellow 163及びPigment Violet 19から選択される少なくとも1種である、人工毛髪用繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装脱着可能なかつら、ヘアウィッグ、つけ毛等の人工毛髪に用いられる繊維(以下、単に「人工毛髪用繊維」という。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリアミドと臭素系難燃剤を含有する樹脂組成物を繊維化した人工毛髪用繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-246844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人工毛髪用繊維には、着色のために、黒や赤などの着色剤を添加することがあるが、ポリアミド中での着色剤の分散性が十分でない場合があり、その場合に、押出機を用いて樹脂組成物を繊維化する際に、糸切れや押出機のフィルタの目詰まりが頻繁に発生して、生産性が低下する場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、生産性及び難燃性に優れ、且つ色ムラが抑制された人工毛髪用繊維を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ポリアミド100質量部に対し、臭素系難燃剤5~40質量部と、加工顔料0.01~10質量部を含み、前記加工顔料は、着色剤と分散剤を含み、前記着色剤と前記分散剤の合計を100質量%とすると、前記分散剤が20~80質量%であり、前記分散剤は、モンタン酸金属塩、モンタン酸系ワックス、ポリエチレン系ワックス、フッ素ワックスの1種以上である、人工毛髪用繊維が提供される。
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行っていたところ、上記組成の人工毛髪用繊維が生産性及び難燃性に優れ、且つ色ムラが抑制されることを見出し、本発明の完成に到った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の人工毛髪用繊維は、ポリアミド100質量部に対し、臭素系難燃剤5~40質量部と、加工顔料0.1~10質量部を含み、前記加工顔料は、着色剤と分散剤を含み、前記着色剤と前記分散剤の合計を100質量%とすると、前記分散剤が20~80質量%であり、前記分散剤は、モンタン酸金属塩、モンタン酸系ワックス、ポリエチレン系ワックス、フッ素ワックスの1種以上である。人工毛髪用繊維は、このような組成の樹脂組成物を溶融紡糸することによって製造可能である。
以下、各構成要素について詳述する。
【0009】
<ポリアミド>
ポリアミドは、脂肪族ポリアミドを含むことが好ましく、脂肪族ポリアミドのみで構成されていてもよく、脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドを含むものであってもよい。
【0010】
脂肪族ポリアミドは、芳香環を有さないポリアミドであり、脂肪族ポリアミドとして、ラクタムの開環重合によって形成されるn-ナイロンや、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の共縮重合反応で合成されるn,m-ナイロンが挙げられる。脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6及びポリアミド66が挙げられる。耐熱性の観点からはポリアミド66が好ましい。
【0011】
半芳香族ポリアミドは、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸を縮合重合した骨格を有する。半芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、及びそれらをベースに変性用モノマーを共重合させた変性ポリアミド6T、変性ポリアミド9T、変性ポリアミド10Tが挙げられる。
【0012】
ポリアミドの重量平均分子量(Mw)は、例えば6.5万~15万である。Mwが6.5万以上になると耐ドリップ性が特に良好になる一方、Mwが15万を越えた場合には、材料の溶融粘度が上昇し、繊維化する際の加工性が劣るため、15万以下が好ましい。耐ドリップ性や加工性のバランスを考慮すると、更に好ましくは、Mwが7万~12万である。
【0013】
<臭素系難燃剤>
臭素系難燃剤の添加量は、ポリアミド100質量部に対し、5~40質量部であり、好ましくは、10~30質量部である。上記の範囲において、耐ドリップ性付与の効果と加工性のバランスが良好であるからである。
【0014】
臭素系難燃剤としては、例えば臭素化フェノール縮合物、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ベンジルアクリレート系難燃剤、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリカーボネート樹脂および臭素含有トリアジン系化合物が挙げられる。耐ドリップ性、加工性、原糸の透明性(清澄さ)等のバランスを考慮すると、以下(1)に示す構造式を含む臭素化エポキシ樹脂、または臭素化フェノキシ樹脂が好ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
<加工顔料>
加工顔料は、着色剤と分散剤を含む。着色剤と分散剤を混合することによって製造可能である。加工顔料の添加量は、ポリアミド100質量部に対し、0.01~10質量部であり、好ましくは、0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.2~2質量部である。上記の範囲において、着色性と加工性のバランスが良好である。
【0017】
着色剤は、顔料や染料等であり、着色剤を含有させることにより、予め着色された繊維(いわゆる原着繊維)を得ることができる。
【0018】
着色剤としては、黒系着色剤、赤系着色剤、黄系着色剤、紫系着色剤等が挙げられ、これらのうちの1又は複数種が用いられる。
【0019】
黒系着色剤としては、Pigment Black 7、Solvent Black 7等が挙げられ、難燃性の観点からPigment Black 7が好ましい。
【0020】
赤系着色剤としては、Pigment Red 149、Pigment Red 177、Solvent Red 179等が挙げられ、難燃性の観点からPigment Red 149が好ましい。
【0021】
黄系着色剤としては、Pigment Yellow 147、Solvent Yellow 163、Solvent Yellow 21、Pigment Yellow 184等が挙げられ、難燃性の観点からPigment Yellow 147、又はSolvent Yellow 163が好ましい。
【0022】
紫系着色剤としては、Pigment Violet 19、Pigment Violet 29等が挙げられ、難燃性の観点からPigment Violet 19が好ましい。
【0023】
分散剤は、ポリアミド中での着色剤の分散性を高める機能を有する。分散剤は、モンタン酸金属塩、モンタン酸系ワックス、ポリエチレン系ワックス、フッ素ワックスの1種以上である。好ましいのは、モンタン酸金属塩である。この場合、耐糸切れ性が特に良好になるからである。モンタン酸金属塩としては、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム等が挙げられる。分散剤は、モンタン酸カルシウムであることが特に好ましい。この場合、色ムラの発生が特に抑制されるからである。
【0024】
着色剤と前記分散剤の合計を100質量%とすると、分散剤が20~80質量%であり、30~70質量%が好ましい。分散剤が少なすぎるとロングラン性が悪くなり、分散剤が多すぎると耐糸切れ性が悪化する。
【0025】
<その他の添加剤>
人工毛髪用繊維を構成する樹脂組成物には、必要に応じて添加剤、例えば、難燃助剤、有機微粒子、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、可塑剤、潤滑剤等を含有させることができる。
【0026】
<製造工程>
以下に、人工毛髪用繊維の製造工程の一例を説明する。
本発明の一実施形態の人工毛髪用繊維の製造方法は、溶融紡糸工程と、延伸工程と、熱処理工程を備える。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0027】
(溶融紡糸工程)
溶融紡糸工程では、樹脂組成物を溶融紡糸することによって未延伸糸を製造する。具体的には、まず、上述した樹脂組成物を溶融混練する。溶融混練するための装置としては、種々の一般的な混練機を用いることができる。混錬機としては、たとえば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどがあげられる。これらのうちでは、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。人工毛髪用繊維は、ポリアミドの種類により適正な温度条件のもと、通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより製造することができる。
【0028】
押出機、口金、必要に応じてギヤポンプなどの溶融紡糸装置の温度を例えば270~310℃として溶融紡糸し、冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを実施しながら、引き取り速度を調整して、未延伸糸が得られる。溶融紡糸装置の温度は、樹脂組成物の組成に応じて、適宜調整することができる。また、水槽による冷却に関らず、冷風での冷却による紡糸も可能である。冷却水槽の温度、冷風の温度、冷却時間、引取速度は、吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。
【0029】
本実施形態における人工毛髪用繊維の単繊度は、20~100デシテックスが好ましく、より好ましくは35~80デシテックスである。この単繊度にするためには、溶融紡糸工程直後の繊維(未延伸糸)の繊度を300デシテックス以下にしておくことが好ましい。未延伸糸の繊度が小さければ、細繊度の人工毛髪用繊維を得る為に延伸倍率を小さくて良く、延伸処理後の人工毛髪用繊維に光沢が発生しにくくなることで、半艶~七部艶状態を維持することが容易になる傾向があるためである。
【0030】
溶融紡糸に使用するノズルの断面積は特に限定しないが、0.1~2mmであっても良い。また、人工毛髪用としてのカール特性等の品質面を勘案すれば、1個のノズル孔の断面積が0.5mm以下のノズルから溶融・流出せしめることが好ましい。1個のノズル孔の断面積が0.5mmよりも小さければ、細繊度の未延伸糸、または延熱糸とする為の張力が低く抑えられ、残留歪みが減少し、カール保持性などの品質が低下しにくくなるためである。
【0031】
溶融紡糸の際、ノズル圧力は50MPa以下が好ましい。押出機のスラスト部にかかる負荷が低くなって、押出機に不具合が生じ難くなる傾向にあり、ターンヘッド、ダイ等の接続部から樹脂漏れが生じにくくなる傾向にあるからである。
【0032】
溶融紡糸に使用する金型は、円形、繭形、Y形、H形、およびX形からなる群から選ばれる1種以上のノズル形状の紡糸金型を用いても良い。これらの金型は複雑な形状を有しないため、金型通りの繊維を作製しやすい。加えて、これらの金型を用いて作成した繊維は、形状を保持しやすく、また加工することも比較的容易となる。
【0033】
(延伸工程)
延伸工程では、得られた未延伸糸を150~500%延伸して延伸糸を製造する。このような延伸によって、100デシテックス以下の細繊度の延伸糸を得ることができ、かつ繊維の引張強度を向上させることができる。延伸処理は、未延伸糸を一旦ボビンに巻き取ってから溶融紡糸工程とは別の工程にて延伸する2工程法や、ボビンに巻き取ることなく溶融紡糸工程から連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。また、延伸処理は、1度で目的の延伸倍率まで延伸する1段延伸法、又は2回以上の延伸によって目的の延伸倍率まで延伸する多段延伸法で行なわれる。熱延伸処理を行なう場合における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。延伸倍率は、200~400%が好ましい。延伸倍率は、適度に大きい方が繊維の強度発現が起こり易い傾向にあり、適度に小さい方が延伸処理時に糸切れを発生し難くなる傾向にあるためである。
【0034】
延伸処理の際の温度は、90~120℃が好ましい。延伸処理温度があまりに低いと繊維の強度が低くなると共に糸切れを発生し易くなる傾向にあり、あまりに高いと得られる繊維の触感がプラスチック的な滑り触感になる傾向にあるためである。
【0035】
(熱処理工程)
熱処理工程では、延伸糸に対して155℃以上の熱処理温度で熱処理を行う。この熱処理によって、延伸糸の熱収縮率を低下させることができる。熱処理は、延伸処理の後に連続して行っても、一旦巻き取った後に時間を開けて行うこともできる。熱処理温度は、好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。熱処理温度の上限は、特に規定されないが、例えば、220℃である。
【実施例
【0036】
本発明による人工毛髪用繊維の実施例を、比較例と対比しつつ表を用いて、詳細に説明する。次に、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
吸湿率が1000ppm未満になる様に乾燥したポリアミド、難燃剤、加工顔料を表1~表4の実施例、比較例にある配合比になる様にブレンドを行った。ブレンドした材料は、φ30mm二軸押出機を用いて混練し、紡糸用の原料ペレットを得た。
【0038】
ついで、吸水率が1000ppm以下になる様にペレットを除湿乾燥した後、φ40mm単軸溶融紡糸機を用いて紡糸し、穴径0.5mm/本のダイスから排出した溶融樹脂を、約30℃の水槽を通して冷却しながら、吐出量と巻き取り速度を調整し、設定繊度の未延伸糸を作成した。溶融紡糸機は、スクリューと、金網状フィルタと、ダイスをこの順で備え、ペレットがスクリューで加熱溶融されて溶融樹脂組成物となり、この溶融樹脂組成物がフィルタで濾過された後にダイスから配置されるように構成されている。ダイスの設定温度は、290℃とした。
【0039】
得られた未延伸糸を100℃で延伸し、その後、150℃~200℃でアニールを行い、所定維度の人工毛髪用繊維を得た。延伸倍率は3倍、アニール時の弛緩率は0.5~3%にて行った。アニール時の弛緩率とは、(アニール時の巻き取りローラの回転速度)/(アニール時の送り出しローラの回転速度)で算出される値である。
【0040】
得られた人工毛髪用繊維について、後述する評価方法及び基準に従って、色ムラ、透明性(清澄さ)、難燃性、耐糸切れ性、ロングラン性の評価を行った。その結果を表1~表4に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
表1~表4にある素材は、以下のものを採用した。
ポリアミド66(重量平均分子量90000):デュポン社製、Zytel 42A
ポリアミド6(重量平均分子量90000):自社製
臭素化エポキシ:阪本薬品工業株式会社製、SRT-20000
モンタン酸カルシウム:日東化成工業株式会社製
モンタン酸亜鉛:日東化成工業株式会社製
モンタン酸ナトリウム:日東化成工業株式会社製
モンタン酸エステル系ワックス:クラリアントジャパン株式会社製、LicowaxE
ポリエチレン系ワックス:クラリアントジャパン株式会社製、LicowaxPE520
モンタン酸系ワックス/フッ素系ワックスブレンド品:クラリアントジャパン株式会社製、WaxCompositeG431L
ステアリン酸カルシウム:日東化成工業株式会社製
12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム:日東化成工業株式会社製
Pigment Black 7:自社製
Solvent Black 7:オリエント化学工業社製
Pigment Red 149:クラリアントジャパン社製
Pigment Red 177:BASF社製
Solvent Red 179:オリエント化学工業社製
Pigment Yellow 147:BASF社製
Solvent Yellow 163:BASF社製
Solvent Yellow 21:オリエント化学工業社製
Pigment Yellow 184:BASF社製
Pigment Violet 19:BASF社製
Pigment Violet 29:BASF社製
【0046】
表1~表4中の各評価項目についての評価方法とその基準は、以下の通りである。
【0047】
<色ムラ>
色ムラは、実施例・比較例の人工毛髪用繊維を長さ200mm、重量1.0gに束ね、人工毛髪用繊維処理技術者(実務経験5年以上)が目視により、次の評価基準で評価した。
○:色ムラがない
△:僅かに色ムラが見られるが、人工毛髪用繊維としての使用に問題はない
×:一見して、明らかに色ムラがあり、人工毛髪用繊維としての使用に耐えない
【0048】
<透明性(清澄さ)>
透明性(清澄さ)は、実施例・比較例の人工毛髪用繊維を長さ200mm、重量1.0gに束ね、人工毛髪用繊維処理技術者(実務経験5年以上)が目視により人毛と比較評価を行い、次の評価基準で評価した。
○:人毛と同様な透明性(清澄さ)を有する
△:人毛と比較すると差異が認められるが、概ね人毛に近い透明性(清澄さ)を有する
×:一見して、明らかに白濁しており、人毛との差異が認められる
【0049】
<難燃性>
難燃性は、人工毛髪用繊維を30cmの長さに裁断し、かつ2gになる様な本数に取りわけた繊維束サンプルを使用し、この繊維束の一端を固定して垂直にたらし、その下端に長さ20mmの炎を5秒間接触させた後、離した後の延焼時間を測定して、下記の判定を行った。結果は、3回測定した結果の平均値を使用した。
○:延焼時間が5秒未満
△:延焼時間が5秒以上10秒未満
×:延焼時間が10秒以上
【0050】
<耐糸切れ性>
糸切れ性は、溶融紡糸し、未延伸糸ができる間で、糸切れの発生状況を目視観察し、次のとおり評価した。
○:糸切れが1回以下/1時間
△:糸切れが2~3回/1時間
×:糸切れが4回以上/1時間
【0051】
<ロングラン性>
ロングラン性は、フィルタ交換せずに連続で紡糸できる時間で評価した。
○:48時間以上
△:24~48時間
×:24時間未満
【0052】
<考察>
全ての実施例は、色ムラ、透明性(清澄さ)、難燃性、耐糸切れ性、及びロングラン性の全てにおいて、○又は△の評価結果が得られた。
一方、全ての比較例では、少なくとも1つの評価項目において、評価が×であった。特に、分散剤がモンタン酸金属塩ではない比較例1~2、5~6、9~10、13~14では、耐糸切れ性が良好でなかった。また、分散剤の割合が小さすぎる比較例3,7,11,15では、ロングラン性が良好でなかった。分散剤の割合が大きすぎる比較例4,8,12,16では、耐糸切れ性が良好でなかった。
【0053】
実施例中では、分散剤として、モンタン酸金属塩を使用すると、これ以外のものを使用した場合に比べて耐糸切れ性が特に良好であった。また、モンタン酸カルシウムを使用すると、これ以外のものを使用した場合に比べて、色ムラが特に小さかった。
【0054】
さらに、黒系着色剤では、Pigment Black 7を用いた場合に難燃性が良好であった。赤系着色剤では、Pigment Red 149を用いた場合に難燃性が良好であった。黄系着色剤では、Pigment Yellow 147又はSolvent Yellow 163を用いた場合に難燃性が良好であった。紫系着色剤では、Pigment Violet 19を用いた場合に難燃性が良好であった。