(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ウェアラブル監視装置用の超音波変換器システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/04 20060101AFI20230906BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20230906BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61B8/04 ZDM
A61B5/022 400H
A61B5/026 140
(21)【出願番号】P 2021510291
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(86)【国際出願番号】 US2019030653
(87)【国際公開番号】W WO2019213559
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520429945
【氏名又は名称】モノヴォ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】シャートリフ ジャロム
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ アダム カレオ
(72)【発明者】
【氏名】ムニョス ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ホグストロム クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】クロワード ポール
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0228657(US,A1)
【文献】特表2014-533974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって着用されたときにパルス通過時間を測定するよう構成されたウェアラブル監視装置であって、前記監視装置は、
前記監視装置をユーザの体肢に固定するよう構成され、第1のバンド、および前記ユーザの体肢によって規定される長手方向に沿って前記第1のバンドから一定の距離離れて配置された第2のバンドを備えたウェアラブル取付け具を有し、
前記ウェアラブル取付け具の前記第1のバンドに取り付けられた第1の変換器アレイを有し、前記第1の変換器アレイは、超音波エネルギーを送ったり受け取ったりするための複数の独立変換器素子を含み、
前記ウェアラブル取付け具の前記第2のバンドに取り付けられた第2の変換器アレイを有し、前記第2の変換器アレイは、超音波エネルギーを送ったり受け取ったりするための複数の独立変換器素子を含み、
前記第1のバンド及び前記第2のバンドは、摺動可能な連結部を介して連結され、且つ、前記摺動可能な連結部に沿って前記長手方向の周りに互いに対して回転するように構成され、
前記第1および前記第2の変換器アレイに作動的に結合されたエレクトロニクス組立体を有し、前記エレクトロニクス組立体は、前記第1の変換器アレイと前記第2の変換器アレイとの間のパルス通過時間を算定するよう構成されている、監視装置。
【請求項2】
前記ウェアラブル取付け具は、前記第1の変換器アレイに結合された前記第1のバンドおよび前記第2の変換器アレイに結合された前記第2のバンドを有する、請求項1記載の監視装置。
【請求項3】
前記ウェアラブル取付け具は、前記第1の変換器アレイと前記第2の変換器アレイを構造的に離隔する長手方向区分を有する、請求項1または2記載の監視装置。
【請求項4】
前記ウェアラブル取付け具は、第1の変換器アレイを収納した第1のハウジングおよび前記第2の変換器アレイを収納した別個の第2のハウジングを有する、請求項1~3のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項5】
前記第1のハウジングは、第1の受け具内に摺動可能に設けられ、前記第1のハウジングは、前記第1の受け具内におけるその相対位置を調節することによって横方向に沿って位置的に調節可能である、請求項4記載の監視装置。
【請求項6】
前記第2のハウジングは、第2の受け具内に摺動可能に設けられ、前記第2のハウジングは、前記第2の受け具内におけるその相対位置を調節することによって横方向に沿って位置的に調節可能である、請求項5記載の監視装置。
【請求項7】
前記エレクトロニクス組立体の少なくとも一部分は、前記第1のバンドまたは前記第2のバンドの一部分を形成するコンパートメント内に収容されている、請求項2に記載の監視装置。
【請求項8】
前記第1のバンドと前記第2のバンドとの間の前記一定の距離は、1.5~6インチ(3.81~15.24cm)から2~4インチ(5.08~10.16cm)の範囲である、請求項2に記載の監視装置。
【請求項9】
前記第1または前記第2の変換器アレイのうちの少なくとも一方は、長さが0.5~4インチ(1.27~10.16cm)から1~2.5インチ(2.54~6.35cm)の範囲である、請求項1~8のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項10】
前記第1または前記第2の変換器アレイのうちの少なくとも一方は、5~30個の独立変換器素子、8~25個の独立変換器素子、または12~20個の独立変換器素子を含む、請求項1~9のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項11】
前記第1または前記第2の変換器アレイのうちの少なくとも一方は、1.5MHz~7MHzの範囲、または2MHz~5MHzの範囲の周波数で超音波を発生させるよう構成されている、請求項1~10のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項12】
各変換器素子は、送信器および対応の受信器を含む、請求項1~11のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項13】
前記送信器は、前記第1の変換器アレイの一方の側で整列し、前記受信器は、前記第1の変換器アレイの逆の側で整列している、請求項12記載の監視装置。
【請求項14】
前記送信器および前記受信器は、ブロック上に位置決めされ、前記ブロックは、前記送信器および前記受信器が角度の付けられた表面上に載るよう角度が付けられている、請求項12または13記載の監視装置。
【請求項15】
前記第1および前記第2の変換器アレイは各々、圧電材料の層を含む、請求項1~14のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項16】
前記第1および前記第2の変換器アレイは各々、前記第1および前記第2の変換器アレイを前記ユーザの体肢に音響結合するとともに前記監視装置が着用されたときに前記体肢を絶縁する音響的に透明な材料の層を含む、請求項1~15のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項17】
前記音響的に透明な材料は、ゲルパッドである、請求項16記載の監視装置。
【請求項18】
前記エレクトロニクス組立体は、前記監視装置を1つまたは2つ以上の外部コンピュータシステムに通信可能に結合するよう構成された通信モジュールを含む、請求項1~17のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項19】
前記通信モジュールは、
ブルートゥース(Bluetooth)機能を含む、請求項18記載の監視装置。
【請求項20】
前記エレクトロニクス組立体は、運動センサを含む、請求項1~19のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項21】
前記エレクトロニクス組立体は、前記第1または前記第2の変換器アレイのうちの少なくとも一方に関し、前記変換器アレイ内に設けられていて超音波エネルギーを送信する送信器素子の特定のサブセットを決定するよう構成されたマイクロプロセッサを含
む、請求項1~20のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項22】
前記エレクトロニクス組立体は、前記第1または前記第2の変換器アレイのうちの少なくとも一方に関し、前記変換器アレイ内に設けられていて反射された超音波信号を得る受信器素子の特定のサブセットを決定するよう構成されたマイクロプロセッサを含
む、請求項1~21のうちいずれか一に記載の監視装置。
【請求項23】
ある動脈距離(arterial distance)を渡るパルス通過時間を算定する方法であって、前記方法は、
請求項1~22のうちいずれか一に記載のウェアラブル監視装置を用意するステップと、
前記ウェアラブル監視装置をユーザ上に作動可能な位置で位置決めするステップと、
前記ウェアラブル監視装置を作動させて1つまたは2つ以上のパルス通過時間測定値を得るステップとを含む、方法。
【請求項24】
前記ウェアラブル監視装置は、前記ユーザの上腕上に位置決めされる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ウェアラブル監視装置は、前記第1および前記第2の変換器アレイが前記ユーザの上腕動脈に隣接して内腕上に位置するよう位置決めされる、請求項24記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
患者の血圧を算定することは、患者の健康を監視する上で重要である。血圧を測定するために用いられる従来技術が多数存在する。血圧を測定する一般的な方法の中には、聴診法や振動測定法(オシロメトリック法)がある。これらの方法は、非侵襲性であり、インフレート可能なカフの使用を必要とする。聴診では医師が測定を行うことが必要であり、他方、オシロメトリック法は電子システムによって自動的に実施可能である。非侵襲性ではあるがこれらの方法は、間欠的であり、したがって、これら方法が血圧測定をどれほど多く行うことができるかについては制限がある。加うるに、インフレート可能なカフは、患者によっては不快な場合がある。
【0002】
別の従来方法は、動脈カテーテルの端部に設けられた圧力センサを用いる直接圧力測定法を含む。この技術は、連続測定値をもたらすという利点を有する。しかしながら、この技術はまた、カテーテルを挿入する侵襲的な手技ならびにカテーテルを配置して監視するための熟練医療従事者の注意深い労力を必要とする。かくして、血圧を測定する現行の方法は、間欠的監視(例えば、聴診法およびオシロメトリック法)を採用するか侵襲的手技(例えば、圧力センサ動脈カテーテル)を採用するかで苦慮している。
【0003】
したがって、従来技術の欠点を解決することができる血圧監視システムおよび方法の実現について要望されていながら長年の間解決されないでいる課題が存在する。特に、信頼性のある血圧測定値を連続方式で非侵襲的に提供することができる改良型システムおよび方法が要望されている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、オプションとして血圧を推定するために利用可能なパルス通過時間(pulse transit time:PTT)を算定する監視システム、ウェアラブル(着用可能な)監視装置、および関連方法を記載する。パルス通過時間(PTT)は、心拍から生じる血圧パルスが動脈樹中の2つの互いに異なる部位に達するのに要する時間である。また、得られたPTT測定値を利用すると、パルス波速度(pulse wave velocity:PWV)および/または血圧を算定することができる。
【0005】
一実施形態では、ウェアラブル監視装置は、各々がウェアラブル取付け具および各々が一定の距離を互いに構造的に隔てられた第1の変換器アレイと第2の変換器アレイを有する。第1および第2の変換器アレイは、超音波エネルギーを送ったり受け取ったりするための複数の独立変換器素子を含む。ウェアラブル監視装置は、第1および第2の変換器アレイに作動的に結合されたエレクトロニクス組立体をさらに有する。エレクトロニクス組立体は、第1の変換器アレイと第2の変換器アレイとの間の一定の距離を渡るPTTを算定するための1つまたは2つ以上の制御コンポーネント、例えばマイクロプロセッサおよび関連記憶装置を含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、ウェアラブル監視装置は、ウェアラブル取付け具を有し、このウェアラブル取付け具は、動脈血流を測定することができる適当な場所で監視装置をユーザに固定するための1つまたは2つ以上のバンドを含むのが良い。好ましい具体化例では、監視装置は、第1および第2の変換器アレイが上腕動脈の近くでユーザの内腕上に位置するように差し向けられた状態でユーザの内腕上に着用されるよう構成されている。
【0007】
幾つかの実施形態では、変換器アレイのうちの一方または両方は、約5~30個、約8~25個、または12~20個の独立変換器素子を含む。アレイ内に多数の独立変換器素子を用いることにより、有益には、読みの質が向上する。すなわち、変換器素子のうちの少なくとも1つがユーザの動脈に対して適正に位置決めされて有効超音波信号を通すとともに/あるいは有効反射ドップラー信号を受け取るという見込みが向上する。かくして、各アレイ中に変換器素子が一度に1つしか必要とされない。
【0008】
変形例として、他のより従来型のアレイ、例えばビーム形成法を用いるアレイを利用しても良い。しかしながら、各アレイ中に一度に単一の変換器素子を利用するよう構成された図示の変換器アレイが単純で堅牢であり、しかも費用効果の良い設計として好ましい。
【0009】
変換器アレイは、約0.5~4インチ(1.27~10.16cm)、または約1~2.5インチ(2.54~6.35cm)の長さを有するのが良い。監視装置を着用すると、変換器アレイは、上腕動脈に対して横方向に(例えば、実質的にこれと直交して)差し向けられ、それによりアレイ素子から出る少なくとも1つの超音波ビームが動脈の一部分と交差する可能性が増大する。変形例として、フェーズドアレイビーム形成および関連の超音波信号処理を用いる従来型超音波画像化で用いられる他のアレイを使用しても良い。
【0010】
好ましい方法は、期待するような専用アレイ素子対(送信器および受信器)を用いることであり、というのは、アレイおよび処理エレクトロニクスがより簡単でありかつより堅牢だからである。最後に、アレイ(例えば、1つという少ない素子から成るが、好ましくは少なくとも3つの素子から成る)を横方向に位置決めするのが良く、このアレイは、アレイを動脈の最も近くの適正な位置に効果的に位置決めするためのステッピングモータ、歯車、および/または他の直線運動機構体によって動かせるよう構成されているのが良い。隣り合う素子からの信号強度を用いると、動脈の一部分が各アレイと交差するようアレイを動かすための方向を決定することができる。
【0011】
幾つかの実施形態では、マイクロプロセッサまたは他の適当な制御素子は、変換器アレイ内に設けられていて超音波エネルギーを送信する送信器素子の特定のサブセットを選択するとともに/あるいは変換器アレイ内に設けられていて反射した超音波信号を得る受信器素子の特定のサブセットを選択するよう動作する。これは、現在見受けられる多くの医療超音波システムとは対照的であり、これら医療超音波システムは、一般に、全ての変換器素子を同時に選択して電子的操縦型またはフェーズドアレイ(ESA)として機能して超音波エネルギーを集束させる。かかる方法では、比較的複雑な3D超音波信号処理が必要である。
【0012】
追加の特徴および追加の利点は、以下の説明中に部分的に記載される。理解されるべきこととして、上記の発明の要約と以下の詳細な説明の両方は、例示かつ説明上のためだけであり、本発明を任意特定の組み合わせ実施形態に限定するものと読むべきではない。
【0013】
特定の説明を添付の図面に記載された実施形態によって提供する。理解されるように、これらの図面は、本発明の例示の実施形態のみを記載しており、したがって、本発明の範囲の限定と解されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】近位センサ組立体および遠位センサ組立体を有する例示の監視装置を示す図である。
【
図1B】超音波を上腕動脈に差し向けるようユーザの上腕上に配置されることによる
図1Aの監視装置の一具体化例を示す図である。
【
図2A】近位センサ組立体と遠位センサ組立体の両方を有する監視装置の別の実施形態を示す図である。
【
図2B】近位センサ組立体と遠位センサ組立体の両方を有する監視装置の別の実施形態を示す図である。
【
図2C】超音波を上腕に差し向けるようユーザの上腕上に配置されることによる
図2Aおよび
図2Bの監視装置の具体化例を示す図である。
【
図3】ユーザの腕および監視装置の断面図であり、超音波エネルギーを上腕動脈の方へ差し向ける超音波変換器アレイを示す図である。
【
図4A】例示の超音波変換器アレイを示す図であり、かかる超音波変換器アレイを形成するために利用できる種々のコンポーネントおよび層を示す図である。
【
図4B】例示の超音波変換器アレイを示す図であり、かかる超音波変換器アレイを形成するために利用できる種々のコンポーネントおよび層を示す図である。
【
図4C】例示の超音波変換器アレイを示す図であり、かかる超音波変換器アレイを形成するために利用できる種々のコンポーネントおよび層を示す図である。
【
図4D】例示の超音波変換器アレイを示す図であり、かかる超音波変換器アレイを形成するために利用できる種々のコンポーネントおよび層を示す図である。
【
図5】監視装置内に配置可能なエレクトロニクス組立体を概略的に示す図である。
【
図6】エレクトロニクス組立体の超音波エレクトロニクスならびに近位および遠位変換器アレイを作動させるための例示のシステムを概略的に示す図である。
【
図7】超音波変換器アレイにより提供される超音波データに基づいてPTT測定値を生じさせるためのシステムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1Aは、ユーザの血圧の連続かつ非侵襲性監視を可能にするよう構成された例示のウェアラブル監視装置100を示している。監視装置100は、監視装置が密接配置される動脈を通るパルス通過時間(PTT)を測定することによって機能する。代表的な実施形態では、監視装置100は、ユーザの上腕上に着用されるよう構成され、PTTを測定するために上腕動脈を使用する。しかしながら、本明細書において説明する特徴は、他の解剖学的場所、例えば脚または手首への配置可能に寸法決めされた実施形態でも利用可能である。
【0016】
ウェアラブル監視装置100は、各々がそれぞれハウジング108,110内に収容された2つの別々の超音波変換器アレイ(1つは近位側、1つは遠位側)を利用する。これらアレイは、上腕動脈上への連続波ドップラー超音波を提供するよう動作する。連続波ドップラーが好ましいが、具体例の中には、他のモダリティ、例えばパルス化波ドップラーを利用するものがあっても良い。超音波アレイは、上腕動脈を通って流れる血液の速度(例えば、換算係数内まで)を測定する。
【0017】
監視装置100は、超音波を用いて近位側アレイのところの血流パルスと遠位側アレイのところの血流パルスとの時間遅延を監視することによってPTTを測定する。作用を説明すると、2つの場所の各々のところの信号を測定して同一の心臓事象相互間の時間差を求める。心臓事象は、例えば、心収縮の開始、ピーク心収縮速度、および/または終わりの心収縮速度であるのが良い。かくして、心臓事象が所与の場合、第1の超音波アレイ(すなわち、近位側アレイ)が信号を測定する時点と第2の超音波アレイ(すなわち、遠位側アレイ)の信号を測定する時点との間の時間は、各アレイ相互間のPTTを表す。
【0018】
監視装置100の構造は、別個の変換器アレイが互いに一定の距離を置いた状態に維持されるようにするような構造である。これは、計算されたPTTおよび超音波アレイ相互間の一定の距離が所与の場合、パルス波速度(PWV)の簡単かつ明瞭な計算を可能にする。PWVは、血圧と強く相関する。例えば、適当な回数の直接的な血圧測定(例えば、従来型聴診法による)を得て監視装置が最初に患者に用いられたときの較正曲線を定めることによってユーザの測定PWVを血圧と相関させることができる。
【0019】
図示の監視装置100は、第1のバンド102および第2のバンド104を備えたウェアラブル取付け具を有する。ユーザによって着用されると、一方のバンドは、動脈血流に関して近位側に配置され、他方は、遠位側に配置される。各バンド102,104は各々、バンドを個々のユーザに合うように個別的に寸法決めすることができるカップラ116をさらに有する。カップラ116は、バックル、留め金、ループまたは当該技術分野において知られている他の適当な締結手段として形成されるのが良い。各バンド102,104の端部分は、面ファスナー材料の対応の区分を有するのが良い。図示の実施形態は、2つの別々のバンド102,104を示している。
【0020】
他の実施形態は、異なる数のバンドを有しても良くかつ/あるいは1つまたは2つ以上のバンドを留め金または他の締結構造体で置き換えても良い。例えば、少なくとも2つのバンドまたはこれと均等な締結構造体が好ましいが、一実施形態は、ユーザへの固定のために単一のバンドを採用する一方で、ハウジング108,110とこれらハウジング内に収容された変換器アレイとの間の一定の距離を保つよう他の長手方向構造体(例えば、長手方向区分106)を利用しても良い。
【0021】
設けられている長手方向区分106は、第1のバンド102を第2のバンド104から離隔するとともに各バンドの別々の測定箇所相互間の離隔距離を構造的に維持するよう機能する。例えば、長手方向区分106は、第1のハウジング108と第2のハウジング110(およびかくして動脈内速度測定箇所)を約1.5~6インチ(3.81~15.24cm)またはより好ましくは約2~4インチ(5.08~10.16cm)だけ離隔するよう寸法決めされているのが良い。この離隔距離範囲は、有益には、正確なPTT結果を得るのに十分な距離を設けるための必要性と、装置100の全長を実用的であって快適な使用に足るほど短く保つための必要性とのバランスを取る。測定箇所相互間の長い距離を有する装置は、精度を幾分高めることができるが、装置のウェアラビリティ(着用性)と快適さの低下との間のトレードオフの関係によって、距離の追加が価値あるものとは判明しなかった。
【0022】
図示の長手方向区分106は、装置100の内側部上に設けられた受け具112,114相互間に延びる単一の材料片として示されている。他の実施形態は、追加的にまたは代替的に、測定箇所相互間の距離を固定するための他の構造的特徴部を有しても良い。例えば、他の実施形態は、装置100の外側、上側、下側、および/または他の領域に沿って延びる1つまたは2つ以上の長手方向区分を有しても良い。
【0023】
さらに別の実施形態は、ユーザの腕の周囲を完全にくるみまたは実質的にくるむ長手方向区分を有しても良い。しかしながら、より好ましい実施形態は、長手方向区分106の幅および円周方向被覆率を制限することによって、通気性および快適さを得るために嵩を最小限に抑えるとともに開放空間を増大させる。例えば、バンド102,104の相互間の場所のところの装置100の周囲は、この装置が典型的な大人向きに寸法決めされるとともに/あるいはかかる典型的な大人によって着用されたときに約50%~約90%開いている。
【0024】
各バンド102,104はまた、それぞれ、受け具112,114を有する。受け具112,114は、ハウジング108,110が受け具112,114内で摺動することができるとともにこれら受け具に対して調節可能であるように寸法決めされている。これは、有益には、装置100が着用されているときにハウジング108,110の位置決めの微調整を可能にする。1つまたは2つ以上のコンパートメント115もまた、回路板、バッテリ、追加のセンサ、および/または以下に詳細に説明するような他のコンポーネントを収容するよう装置100に組み込まれても良い。
【0025】
図1Bは、ユーザの腕10上への装置100の配置状態を概略的に示している。ハウジング108,110は、上腕動脈11に隣接するよう腕10の内側上に位置決めされる。上腕動脈11は典型的には真っ直ぐではなく、かつユーザごとにばらつきがある場合があるので、ハウジング108,110を信号を改善する位置まで横方向に調節するのが良い。個々のユーザは、解剖学的構造および/または個々のユーザが装置を着用する特定の仕方において様々であるが、ハウジング108,110を調節することができることにより、適当な信号が多種多様な用途で得られる見込みが増大する。ハウジング108,110の調節性に加えて、装置の融通性は、超音波変換器アレイを用いることによって高められ、これについては以下にさらに詳細に説明する。
【0026】
図2Aおよび
図2Bは、ウェアラブル監視装置100と多くの構造的および機能的特徴を共有する変形実施形態としてのウェアラブル監視装置600を示している。
図2Aは、装置600の外側の等角図であり、
図2Bは、装置600の内側の等角図である。
【0027】
装置100の場合と同様、図示の装置600は、第1のバンド602、第2のバンド604、および1組のカップラ616を有する。カップラ616は、ここでは、ストラップアタッチメントとして図示されているが、これらカップラは、追加的にまたは代替的に、本明細書において説明する他の結合手段のうちの任意のものとして構成されても良い。
【0028】
別々のバンド602,604を隔てるための別個の長手方向区分を用いるのではなく、バンド602,604は、連結部606に沿って互いに連結されている場合であっても、アレイハウジング608,610が互いに適当な距離を隔てて維持されるよう寸法決めされている。装置100の場合と同様、アレイハウジング相互間の距離は、測定精度とウェアラビリティおよび快適さとのバランスを効果的に取るために約1.5~6インチ(3.81~15.24cm)、またはより好ましくは約2~4インチ(5.08~10.16cm)であるのが良い。
【0029】
図2Bに最も良く示されているように、アレイハウジング608,610は、バンド602,604を摺動可能な連結部606に沿って互いに対して摺動させることによって互いに対して調節可能である。装置100の場合と同様、かかる調節性により、効果的な測定のための効果的な装置位置決めが可能である。図示のように、バンド602,604は各々、患者の腕に対する形状が合致する嵌まり合いをもたらす湾曲した輪郭形状を有し、それによりアレイハウジング608,610(これらは、同一の湾曲した輪郭形状を辿る)が患者の皮膚に対して効果的にインターフェースすることができるようにする。
【0030】
図2Cは、ユーザの腕10上への装置600の配置状態を示している。アレイハウジング608,610は、上腕動脈11に隣接して位置するよう腕10の内側上に位置決めされている。上腕動脈11は典型的には真っ直ぐではなくかつユーザごとにばらつきがある場合があるので、バンド602,604は、信号を改善する位置まで摺動可能な連結部606に沿って摺動可能に調節されるのが良い。個々のユーザは、解剖学的構造および/または個々のユーザが装置を着用する特定の仕方において様々であるが、バンド602,604を調節することができることにより、適当な信号が多種多様な用途で得られる見込みが増大する。
【0031】
図3は、監視装置およびユーザの腕10の断面図である。この図では、第1の変換器アレイ118は、ハウジング108内に見える。図示のように、アレイ118は、装置の周囲の一部分をまたぐ複数の超音波変換器(すなわち、変換器素子)を含む。図示されていないが、類似の超音波変換器アレイがハウジング110内に存在していることは理解されよう。
【0032】
アレイ118内に多数の独立変換器素子を用いることにより、有益には、良好な読みを得る見込みが高まる。少数の変換器を備えた変換器構成と比較して、アレイ118内の少なくとも1つの変換器の超音波ビーム120が上腕動脈11と交差するとともに少なくとも1つの変換器が戻り信号を効果的に受け取るよう位置決めされる見込みが高い。変換器アレイ118は、好ましくは、典型的な大人によって着用されたときに装置の周囲の約5%~約25%にまたがる横方向/円周方向長さを有する。これにより、有益には、上腕動脈11に達する可能性が低くかつ信号ノイズを発生させる可能性が潜在的に高い過度のかつ不必要な被覆率をもたらすことなく、患者の腕10の断面の有効な被覆率が得られる。変換器アレイ118は、例えば、長さが約0.5~4インチ(1.27~10.16cm)、または長さがより好ましくは約1~2.5インチ(2.54~6.35cm)、例えば長さが約1.5インチ(3.81cm)であるのが良い。
【0033】
超音波アレイ118は、上腕動脈11の一般的な深さのところにピント合わせされている。超音波の侵入深さは、上腕動脈11内の動いている血液によって起こるドップラー偏移を検出するのに十分であるべきであるが、望ましくない信号を拾うのを回避するよう制限されるべきである。代表的な用途では、標的侵入深さは、約1~1.6インチ(2.54~4.06cm)、またはより好ましくは約0.2~1.0インチ(0.51~2.54cm)であり、ただし、特定の患者に関する理想的な侵入深さは、ばらつきがあって良い。超音波周波数はまた、侵入深さを決定する上での要因である。周波数は、約1.5MHz~約7MHz、またはより好ましくは約2MHz~約5MHzであるのが良い。代表的な用途では、これら範囲内の超音波周波数は、効果的には、信号を得るに十分な侵入深さのための必要性と過度の侵入および信号ノイズを制限する要望とのバランスを取る。
【0034】
図4A~
図4Dは、例示の変換器アレイ218の構成における連続した層を示している。変換器アレイ218は、上述の実施形態のうちの任意のものでは変換器アレイとして使用できる。
図4Aに示されているように、アレイ218は、アレイ218の一方の側上で整列した複数の送信器区分222およびアレイ218の反対側上に整列した複数の受信器区分224を含む。互いに反対側に位置する各送信器と受信器は、別個の変換器素子225を形成する。変換器素子225は、銅および/または他の適当な導電性材料で作られかつ装置の他のコンポーネントへの結合を可能にするリード線227を有する。
【0035】
導電性材料の形状は、信号の送信または受信中にアクティブ状態になる圧電材料の面積を定める。本明細書において図示されているように、これは、楕円の半分の形をしている。この形状は、同様なサイズの長方形素子と比較して、ビーム軸線回りに半径方向に一層一様な超音波エネルギービームパターンを達成する。この形状はまた、高さ寸法方向(ドップラー送信器/受信器対から成る素子相互間)における密なビームパターンを達成するとともに方位角寸法方向(送信器アレイか受信器アレイかのいずれかの素子相互間)における広幅のビームパターンを達成する。表面が楕円形の素子は、有益には、動脈に沿う良好なドップラー点解像度を達成する一方で、アレイ中のドップラー対素子相互間で切り換えたときに良好な感度(例えば、約-6デシベル以上)を維持する。かくして、楕円の表面付き素子が好ましく、ただし、円形、長方形、または他の形状を備えた素子もまた、他の実施形態で使用できる。
【0036】
多数の独立して機能する変換器素子の使用により、高い融通性が得られるとともにドップラー変位の測定の品質が向上する。これは、所与の読みの場合、最も強い信号を有する備えた変換器を選択することができるからである。これは、測定ごとに、一使用期間から次の使用期間(例えば、ユーザが装置を取り外し、後でこれを僅かに異なる位置に再び取り付ける場合)に、および/またはユーザごと(例えば、解剖学的差異または着用の好みに起因して)に変わる場合がある。多数の変換器素子の中から選択することができるということにより、様々な環境中における装置の効果的な動作が可能である。約5~約30個の変換器素子、もしくはより好ましくは約8~25個の変換器素子、またはさらにより好ましくは約12~20個の変換器素子を含むことにより、過剰な測定精度を与えず、しかも装置に対して過剰のバルクおよび/または出費を必要としないでこれらの利点が得られる。図示の実施形態は、18個の独立して機能する変換器素子225を有する。
【0037】
整列した送信器区分222は、隔離領域226によって整列状態の受信器区分224から隔てられるのが良い。隔離領域226は、各送信器区分226をその反対側の受信器区分224から電気的にかつ音響的に離隔して電気信号および超音波が送信器区分222から受信器区分224に直接伝搬するのを最小限に抑えまたは阻止するよう機能する。
【0038】
変換器素子225は、ブロック226上に位置決めされている。ブロック226は、超音波信号の効果的なピント合わせを達成するための有益な位置に変換器素子225を差し向けるよう機能する。図示のように、ブロック226は、上面(すなわち、装置が着用されたときのユーザの腕の最も近くに位置する最も内側の表面)が角度の付いた凹状の形状を呈するよう傾斜/角度が付けられている。ブロック226は、好ましくは、空気の音響インピーダンスとほぼ同じ音響インピーダンスを備えた材料で作られる。これは、生じた超音波がブロック226を通って伝搬するのを阻止するのを助け、それにより、その代わりに、超音波がブロックから遠ざかってユーザに向かって伝搬することができる。
【0039】
図4Bは、変換器素子225上への圧電材料228の配置状態を示しており、圧電材料228の一部が送信器区分222上に配置され、もう1つの別の部分が受信器区分224上に配置されている。送信器側の圧電材料228は、電圧に応答して寸法および形状を変化させ、それにより超音波を発生させる。受信器側の圧電材料228は、反射した超音波を受け取ってこれらを電気信号に変換する。
【0040】
図4Cは、圧電材料228への第2の電気接続部となって回路を閉じるための接地電極230の配置状態を示している。接地電極は、銅および/または他の適当な導電性材料で作られている。これら遮蔽かつ接地電極は、電気的接続が望まれる場所を除き、絶縁材料で被覆されるのが良い。図示のように、これら電極は、圧電材料228を実質的に覆い、それにより電磁遮蔽を可能にするよう追加されるのが良い。
【0041】
図4Dは、アレイ218上への音響的に透明な材料232の配置状態を示している。音響的に透明な材料232は、ユーザの腕と超音波アレイの電極との間の電気的絶縁を行う一方で、依然として、超音波がアレイ218から腕の中に入って腕から反射してアレイ218の方へ戻ることができるようにするよう機能する。この材料はまた、アレイの角度を血管中の血液の流れに対して関係をなして設定するために使用されるのが良い。これは、いわゆるドップラー角度である。ドップラー信号が最も大きい好ましい角度は、0°である。そのためには、変換器を血管内でかつ血管の軸線に沿って配置する必要があるが、これは実行可能ではない。約30°の角度が達成可能であり、この角度は、良好な結果をもたらすことが判明した。音響的に透明な材料232はまた、超音波が材料内で反響するのを阻止するよう超音波を僅かに減衰させることができる。音響的に透明な材料232は、ユーザが装置を着用したときにアレイ218をユーザの皮膚に音響的に結合するゲルパッドを含むのが良い。ゲルパッドは、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、カルボマー、アガロース、ゼラチン、他の適当なゲル化剤、またはこれらの組み合わせを含むのが良い。
【0042】
図5は、監視装置100内、例えばコンパートメント115内に配置されるのが良いエレクトロニクス組立体300を概略的に示している。超音波エレクトロニクスモジュール352が各変換器アレイ318(図示していてここでは簡単にするために単一アレイ318と称する)に各変換器アレイ318に通信可能に結合されている。超音波エレクトロニクス組立体352は、変換器アレイ318を駆動するよう構成されている。例えば、超音波エレクトロモジュール352は、励起電圧を変換器アレイ318の送信器区分に提供するとともに変換器アレイ318の受信器区分によって生じた戻り信号を受け取ってこれらをディジタル化するよう構成されているのが良い。
【0043】
エレクトロニクス組立体300は、超音波エレクトロニクス組立体352に通信可能に結合されたマイクロプロセッサ350(すなわち、コントローラ、論理装置など)をさらに含む。マイクロプロセッサ350は、超音波エレクトロニクス組立体352の論理制御を可能にするとともに超音波エレクトロニクス組立体352からの測定された信号を受信するよう構成されている。例えば、マイクロプロセッサ350は、変換器アレイ318から得られた測定信号に基づいてPTTを測定するために特定の演算を実行するよう構成されているのが良い。
【0044】
エレクトロニクス組立体300は、マイクロプロセッサ350に通信可能に結合された通信モジュール356をさらに含む。通信モジュール356は、この実施形態では、ブルートゥース(登録商標)・ロー・エネルギー(Bluetooth Low Energy:BLE)モジュールとして図示されているが、他の通信機能および他形式のネットワーク、例えばインターネット(Internet)、セルラーRFネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)などを追加的にまたは代替的に利用することができる。通信モジュール356により、エレクトロニクス組立体は、測定されたPTT読みを含むデータを外部コンピュータシステム、例えばスマートホン、タブレット、パーソナルコンピュータ、および/または保健医療施設または保健医療提供者と関連したコンピュータシステムに伝えることができる。
【0045】
エレクトロニクス組立体300は、ここでは一連の発光ダイオード(LED)として示されたディスプレイ組立体360をさらに含むのが良い。ディスプレイ組立体360は、マイクロプロセッサ350に通信可能に結合されており、このディスプレイ組立体は、音声および/または視覚的効果を介して情報をユーザに提供するよう構成されている。例えば、ディスプレイ組立体360は、LEDに加えてまたはLEDの代替手段として、スピーカー、情報ディスプレイスクリーン、ステータスアイコン、または他のディスプレイ特徴のうちの1つまたは2つ以上を含むのが良い。これらディスプレイ特徴は、装置の電力または動作状態、バッテリレベル、装置作動モード、通信/ペアリング状態、エラー状態(またはエラー状態がないこと)、検出された生体信号に関連した警告メッセージ、または患者にとって有益な他の装置状態のうちの1つまたは2つ以上を指示するよう構成されているのが良い。ユーザが装置とインターフェースすることができるようにするユーザインターフェース366もまた、入力制御部(例えば、ボタン、ダイヤル、スイッチなど)に組み込まれるのが良い。
【0046】
エレクトロニクス組立体300は、マイクロプロセッサ350、超音波エレクトロニクスモジュール352、通信モジュール356、運動センサ358、ディスプレイモジュール360、および/またはエレクトロニクス組立体300内に含まれるのが良い他のコンポーネントに電力供給するためのバッテリ362および関連の電源364をさらに含む。運動センサ358は、監視装置の1つまたは2つ以上の運動および/または位置状態を測定するのを慣性測定ユニットまたは装置(IMU)を有するのが良い。一実施形態では、運動センサ358は、3軸ジャイロスコープ、3軸加速度計、および3軸磁力計(場合によっては3軸コンパスと呼ばれる)を含む9軸センサである。他の実施形態は、他の運動センサ、例えば3軸ジャイロスコープおよび3軸加速度計を含む6軸センサを利用することができる。
【0047】
運動センサ358を用いて検出された運動/位置データは、改善されるとともに/あるいは較正された生体信号測定値を得るよう変換器アレイ318を用いて得られた読みと関連して利用されるのが良い。例えば、超音波測定から導き出されたPTT読みを利用すると、ユーザの血圧を計算するとともに監視することができる。しかしながら、これら読みは、少なくとも部分的には、測定中、ユーザの腕の位置、特に心臓に対する腕の高さで決まる場合がある。
【0048】
運動センサ358を用いて検出された運動/位置データは、有益には、監視装置の測定された位置に基づく較正を実施可能にすることによってかかる意味の精度を高めることができる。一実施形態では、例えば、類似の運動センサを有する別個の二次監視装置が別個の監視装置に対する一次的腕装用型監視装置の位置の検出を可能にするようユーザの比較的固定された場所(例えば、ユーザの胴体)のところに位置決めされるのが良い。
【0049】
図6は、超音波エレクトロニクスならびに近位および遠位変換器アレイを作動させるための例示のシステム400を概略的に示している。このシステム400は、上述の実施形態のうちの任意のものに利用できる。この実施形態では、近位および遠位センサの各々は、互いに類似して構成され、近位センサのコンポーネントは、添え字“a”を有し、遠位センサの同一のコンポーネントは、同一の数字について添え字“b”を有する。簡略化のために、以下の説明は、代表的には、添え字を用いないで各近位および遠位コンポーネントを単数の状態でひとまとめに言及しており、ただし、理解されるように、この説明は、近位センサおよび遠位センサコンポーネントの各々に当てはまる。
【0050】
図示のように、発振器(オシレータ)466が送信器アレイ472のところで超音波の発生を促進するための信号を提供する。発振器466は、例えば約2MHz~約5MHzの周波数を有する正弦波信号を発生させることができる。送信増幅器468が信号を送信マルチプレクサ470に送る前に生じた信号を増幅するために使用されるのが良い。通信機アレイ472および対応の受信器アレイ474は、例えば
図4A~
図4Dに示された実施形態では、一緒になって変換器アレイを形成している。
【0051】
マイクロプロセッサ450は、送信マルチプレクサ470に制御可能に連係されており、このマイクロプロセッサは、送信器アレイ470内の送信器素子のどの特定のサブセットが超音波をユーザの組織中に送るために用いられるかを決定するよう動作する。マイクロプロセッサ450はまた、受信マルチプレクサ476に制御可能に連係されており、このマイクロプロセッサは、受信器アレイ474内の受信素子のどの特定のサブセットが反射ドップラー信号を得るために用いられるかを決定するよう動作する。この決定は、多くの仕方で実施できる。例えば、マイクロプロセッサ450は、別々の送信器および受信器素子の幾つかの組み合わせを試験するとともに戻り信号の相対強度および/または品質を評価するサンプリングプロトコルによって当初かつ/あるいは定期的に稼働するのが良い。次に、最も良い信号を提供する1つまたは2つ以上の送信器素子および1つまたは2つ以上の受信器素子の組み合わせを利用し、ついには、別のサンプリングプロトコルが起こるようにする。かかるサンプリングプロトコルは、所定のスケジュールに従って動作するのが良くかつ/あるいは例えば初期の較正プロセスの一部分の間、要求に応じて動作するのが良い。
【0052】
送信器アレイ472(またはアレイ472内の送信器素子の選択されたサブセット)は、好ましくは、連続波(continuous wave:CW)モードで作動され、このことは、送信器が作動周波数で信号を連続的に伝送していることを意味する。CWモードが好ましいが、他の実施形態は、他のモード、例えばパルス化波モードで動作するよう構成されても良い。送信された超音波信号は、送信器アレイ472から放射し、そしてユーザの腕の中の組織を通って伝搬する。超音波エネルギーのうちの何割かは、受信器アレイ474に戻される。反射信号の周波数は、変換器アレイの視界(FOV)内の物体の相対速度に比例して偏移され、かかる物体は、上腕動脈を通って変換器アレイを越えて流れる血液を含む。受信器アレイ474(またはアレイ474内の受信器素子の選択されたサブセット)は、反射超音波を受け取りそして超音波エネルギーを電子電圧信号に変換するよう動作する。
【0053】
電圧信号は、受信マルチプレクサ476を通過した後、適当な受信増幅器478を用いて増幅されるのが良く、この受信増幅器478は、この実施例では、低ノイズ増幅器(LNA)として示されている。次に、ミキサ480を用いて発振器466によって生じた信号のキャリヤ部分を増幅された信号から除去するのが良い。ミキサ480は、キャリヤ信号(すなわち、2~5MHz信号)および増幅器478から送られた増幅済み信号を受信する。好ましくは、混合信号の同相(I)成分と直交(Q)成分の両方をミキサ480のところで発生させる。これにより、システム400は、接近している粒子に起因するドップラー周波数偏移と後退している粒子に起因する偏移との差を検出することができる。
【0054】
次に、近位センサと遠位センサの両方からのI成分とQ成分をアナログ‐ディジタル変換器(ADC)482によってサンプリングして変換器アレイから受け取ったドップラー信号をディジタル化するとともにプロセッサ450による次の処理を実施可能にしてPTTを求めるのが良い。ADC482は、好ましくは、信号品質を維持するとともに信号の劣化を回避するのに十分なサンプリングレートで作動される。例えば、適当なサンプリングレートは、毎秒約10,000個のサンプル(10kSPS)であるのが良い。
【0055】
図7は、超音波変換器アレイによって提供された超音波データに基づいてPTT測定値を発生させるためのシステム500を示している。システム500は、例えば、装置のマイクロプロセッサ、例えばマイクロプロセッサ350および/または450内に設けられるのが良い。近位センサ502および遠位センサ504からのディジタル化信号は、ほぼ同じ演算を受けるのが良い。
図7では、近位センサ502に関連付けられたモジュールおよび/または演算は、添え字“a”を有し、遠位センサ504に関連付けられたモジュールおよび/または演算は、添え字“b”を有する。簡略化のために、これらモジュールおよび/または演算について限定のための添え字なしで単数で言及し、理解されるように、同一の演算は、信号の両方の組について同一の仕方で実施されるのが良い。
【0056】
図示のように、ディジタル化信号は、フィルタ584に通されるのが良い。この実施例では、約2.5kHzのコーナー周波数を備えた低域フィルタを用いてかかる信号をフィルタリング処理し、ただし、他のフィルタリングパラメータを利用して信号品質を高めるのを助けても良い。フィルタリング処理された信号のコピーをノイズ推定器586に送る。ノイズ推定器586は、フィルタリング処理された信号の連続したセグメントの標準偏差を計算することによって動作し、次に最も低い計算済み標準偏差をノイズレベルとして選択する。決定されたノイズレベルに基づいて、パイロット信号発生器588がパイロット信号(実数部および虚数部を有する)を発生させ、パイロット信号をフィルタリング処理された信号のもう1つのコピーに追加する。
【0057】
次に、組み合わせ状態の信号を平均周波数推定器590に送り、この平均周波数推定器は、信号の平均周波数成分のおおまかなエンベロープを発生させるよう動作する。平均周波数推定器もまた、よりクリアな信号を生じさせるよう当該技術分野において知られた1つまたは2つ以上の平滑化技術を用いてエンベロープを平滑化させるよう動作することができる。次に、エンベロープをピークファインダーモジュール592に送り、このピークファインダーモジュールは、エンベロープ内のピークの存在場所を突き止めるよう動作する。各ピークは、それぞれの変換器アレイを越えて流れる動脈内血液の速度が最大値にあった時点に対応している。
【0058】
各ピークの識別後、別々の近位エンベロープと遠位エンベロープを比較モジュール594で比較し、この比較モジュールは、対応の近位ピークと遠位ピークとの時間差を算定する。かかる比較の各々により、PTT推定値596が生じる。システム500は、所定の期間にわたってこれらPTT推定値のセレクションをグループ分けし、平均値(すなわち、中間値または中央値)を測定されたPTTとして報告するのが良い。
【0059】
本明細書で用いられる例えば「ほぼ」、「約」、および「実質的に」のような用語は、所望の機能を依然として実行しまたは所望の結果を依然として提示された量または条件に近い量または条件を表している。例えば、「ほぼ」、「約」、および「実質的」という用語は、提示された量または条件から10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満だけ外れた量または条件を意味する場合がある。
【0060】
本明細書で説明した任意特定の実施形態に関して説明した特定の素子またはコンポーネントを本明細書において説明した他の実施形態と関連して説明した素子で置き換えることができまたはこれらと組み合わせることができる。例えば、
図5~
図7に示されているシステムまたはプロセス実施形態のうちの任意のものは、
図1A~
図4Dに示された監視装置および/または変換器アレイ実施形態のうちの任意のものを利用することができる。