(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】正極集電体、正電極シート、電気化学装置及び装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20230906BHJP
H01M 4/13 20100101ALN20230906BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2021556478
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 CN2019125149
(87)【国際公開番号】W WO2020238156
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】201910471353.2
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(74)【代理人】
【識別番号】100222106
【氏名又は名称】大竹 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼欣
(72)【発明者】
【氏名】王▲シ▼▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】黄起森
(72)【発明者】
【氏名】李▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】李▲銘▼▲領▼
(72)【発明者】
【氏名】彭佳
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼向▲輝▼
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/157263(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/127561(WO,A1)
【文献】特表2006-512722(JP,A)
【文献】特開2001-297633(JP,A)
【文献】特開2016-121308(JP,A)
【文献】特開2002-059362(JP,A)
【文献】特開2011-068727(JP,A)
【文献】特開2011-079284(JP,A)
【文献】特開2004-103475(JP,A)
【文献】特開2020-047577(JP,A)
【文献】特開2019-102429(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107221676(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料系支持層と、前記支持層の少なくとも一つの面に設けられたアルミニウム系導電層と、を備え、
前記アルミニウム系導電層の厚さD
1、前記支持層の引張強度T及び前記支持層の厚さD
2の関係は、下記式1を満たし、
0.01≦(200×D
1)/(T×D
2)≦0.5 式1
前記式1において、D
1及びD
2の単位は同じであり、Tの単位はMPaであり、
前記支持層の引張強度Tは、100MPa≦T≦400MPaを満た
し、
前記支持層は、高分子材料の一種類又は複数種類を含み、前記高分子材料は、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアセチレン、シリコーンゴム、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレングリコール、ポリ窒化硫黄類、ポリフェニル、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピリジン、セルロース、デンプン、タンパク質、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、上記材料の誘導体、上記材料の架橋物及び上記材料の共重合体のうちの一種類又は複数種類であり、
前記アルミニウム系導電層は、アルミニウムとアルミニウム合金のうちの一種類又は複数種類を含み、前記アルミニウム合金におけるアルミニウム元素の質量の百分率含有量は、80wt%以上であり、
前記アルミニウム系導電層の厚さD
1
は、30nm≦D
1
≦2μmを満たし、
前記支持層の厚さD
2
は、1μm≦D
2
≦10μmを満たす、
正極集電体。
【請求項2】
前記アルミニウム系導電層の厚さD
1、前記支持層の引張強度T及び前記支持層の厚さD
2の関係は、下記式1.1を満たす、
0.05≦(200×D
1)/(T×D
2)≦0.3 式1.1
請求項1に記載の正極集電体。
【請求項3】
前記支持層の引張強度Tは、150MPa≦T≦300MPaである、
請求項1又は2に記載の正極集電体。
【請求項4】
前記支持層のヤング率E≧2GPaである、
請求項1又は2に記載の正極集電体。
【請求項5】
前記アルミニウム系導電層は、気相蒸着層又は電気メッキ層である、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の正極集電体。
【請求項6】
前記支持層は、添加剤を含み、前記添加剤は、金属材料及び無機非金属材料のうちの一種類又は複数種類を含む、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の正極集電体。
【請求項7】
保護層をさらに備え、
前記保護層は、前記アルミニウム系導電層と前記支持層との間に設けられ、及び/又は、前記保護層は、前記アルミニウム系導電層の前記支持層とは反対側の面に設けられている、
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の正極集電体。
【請求項8】
前記保護層は、金属、金属酸化物、及び導電性カーボンのうちの一種類又は複数種類を含む、
請求項
7に記載の正極集電体。
【請求項9】
前記保護層の厚さD
3は、1nm≦D
3≦200nm、かつ、D
3≦0.1D
1を満たす、
請求項
7又は
8に記載の正極集電体。
【請求項10】
正極集電体と、前記正極集電体に設けられた正極活物質層と、を備え、
前記正極集電体は、請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の正極集電体である、
正電極シート。
【請求項11】
正電極シートと、負電極シートと、電解質と、を備え、
前記正電極シートは、請求項
10に記載の正電極シートである、
電気化学装置。
【請求項12】
請求項
11に記載の電気化学装置を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年05月31日付けで提出された発明名称「正極集電体、正電極シート、電気化学装置」の中国特許出願第201910471353.2号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本願は、電気化学装置の技術分野に関し、具体的に、正極集電体、正電極シート、電気化学装置及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池などの電気化学装置は、高い充放電性能を備え、環境に優しいため、電気自動車や消費系電子製品に広く利用されている。集電体は、電気化学装置における重要な構成であり、それは活物質層に支持を提供するだけではなく、また活物質層に生成された電流を集めて外部に出力することに用いられる。従って、集電体は、電極シート及び電気化学装置の性能に対して重要な影響を与える。
【0004】
従って、良好な性能を有する正極集電体は必要となる。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本願は、正極集電体を提供し、該正極集電体は、高分子材料系支持層と、支持層の少なくとも一種類の面上に設けられたアルミニウム系導電層と、を備え、ここで、アルミニウム系導電層の厚さD1、支持層の引張強度T及び支持層の厚さD2の関係は、式1を満たし、
0.01≦(200×D1)/(T×D2)≦0.5 式1
式1において、D1及びD2の単位は同じであり、Tの単位はMPaである。
【0006】
第2の態様において、本願は、正電極シートを提供し、該正電極シートは、正極集電体と、正極集電体に設けられた正極活物質層と、を備え、ここで、正極集電体は、本願の第1の態様による正極集電体である。
【0007】
第3の態様において、本願は、電気化学装置を提供し、該電気化学装置は、正電極シートと、負電極シートと、電解質と、を備え、ここで、正電極シートは、本願の第2の態様による正電極シートである。
【0008】
第4の態様において、本願は、装置を提供し、本願の第3の態様による電気化学装置を備える。
【0009】
本願による正極集電体は、高分子材料系支持層と、支持層に設けられたアルミニウム系導電層と、を備え、かつ、アルミニウム系導電層の厚さD1、支持層の引張強度T及び支持層の厚さD2の関係は式1を満たす。該正極集電体は、適度な靭性と良好な導電及び集電の性能を兼ね備える。適度な靭性は、正極集電体が高い力学的性能及び機械的性能を有することが確保できる。それにより、電気化学装置の製造加工及び動作過程において、正極集電体は一定の変形を受けることができるので、破断と破裂が発生しない。これは、正極集電体の加工可能性及び使用中の安定性を向上させるため、後続の加工及び使用中の正極集電体の破断又は亀裂の発生を効果的に防止することができ、正極集電体及びそれを用いる正電極シートと電気化学装置の製造過程での良品率及び使用中の信頼性を顕著に向上させることができる。導電及び集電の性能が良い正極集電体を採用することで、電化学装置に高い電化学性能を有させる。なお、本願による正極集電体を用いると、電気化学装置の重量エネルギー密度を向上することができる。
【0010】
本願の装置は、本願により提供される電気化学装置を備えるため、少なくとも上記電気化学装置と同じ利点を有する
【0011】
本願の実施例の技術的手段をより明確に説明するために、以下、本願の実施例で必要とされる図面を簡単に説明するが、当業者であれば、これらの図面に基づいて、創造的な作業なしで他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】は、本願の一実施例による正極集電体の構造模式図である。
【
図2】は、本願の他の実施例による正極集電体の構造模式図である。
【
図3】は、本願の他の実施例による正極集電体の構造模式図である。
【
図4】は、本願の他の実施例による正極集電体の構造模式図である。
【
図5】は、本願の他の実施例による正極集電体の構造模式図である。
【
図6】は、本願の一実施例による正電極シートの構造模式図である。
【
図7】は、本願の実施例による電池の模式図である。
【
図8】は、本願の実施例による電池モジュールの模式図である。
【
図9】は、本願の実施例による電池パックの模式図である。
【
図11】は、本願の実施例による装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願の発明の目的、技術的手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下、本願を実施例と合わせてより詳細に説明する。本明細書に記載の実施例は、単に本願を説明するためのものであり、本願を限定するものではないことを理解すべきである。
【0014】
簡単のために、本明細書ではいくつかの数値範囲のみを明確に開示している。ただし、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよい。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はその範囲に含まれる。従って、各点又は単一の数値は、それ自体の下限又は上限として、任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成してもよい。
【0015】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」及び「以下」は、その数を含み、「一種類又は複数種類」のうち「複数種類」は、二種類及び二種類以上を意味することに留意すべきである。
【0016】
本願の上記発明の概要は、本願に開示の各実施形態又は各実現形態を説明することを意図するものではない。以下の記載は、例示的な実施形態をより具体的に例示して説明する。本願全体を通して、様々な組み合わせの形で使用できる一連の実施例によってガイダンスが提供される。各例において、列挙は代表的なグループとしてのみ使用され、網羅的であると解釈されるべきではない。
正極集電体
正極集電体
【0017】
本願の第1の態様は、正極集電体を提供する。
図1は、本願の一実施例による正極集電体10の構造模式図である。
図1を参照すると、正極集電体10は、積層された高分子材料系支持層101及びアルミニウム系導電層102を備える。支持層101は、厚さ方向に互いに対向する第1の面101aと第2の面101bを有し、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第1の面101a及び第2の面101bに設けられている。
【0018】
なお、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第1の面101a及び第2の面101bのいずれかに設けられていてもよい。例えば、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第1の面101aに設けられていてもよい。勿論、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第2の面101bに設けられていてもよいと理解すべきである。
【0019】
簡単のために、正極集電体10の脆性パラメータCを以下のように定義し、
C=(200×D1)/(T×D2) 式1
ここで、200は係数であり、D1はアルミニウム系導電層102の厚さであり、Tは支持層101の引張強度であり、D2は支持層101の厚さであり、D1及びD2の単位は同じであり、Tの単位はMPaである。
【0020】
正極集電体10の脆性パラメータCは、0.01≦C≦0.5を満たす。
【0021】
式1は、支持層101の少なくとも一方の面にアルミニウム系導電層102が設けられた正極集電体10に適用され、更に、支持層101の対向する2つの面にそれぞれアルミニウム系導電層102が設けられた正極集電体10に適用され、特に、支持層101の対向する2つの面にそれぞれアルミニウム系導電層102が設けられ、かつ両側のアルミニウム系導電層102の厚さが等しい又はほぼ等しい正極集電体10に適用される。上記ほぼ等しいとは、両側のアルミニウム系導電層102の厚さの差が10%以下であり、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、3%、2%又は1%を超えないことを指す。
【0022】
いくつかの実施例において、「アルミニウム系導電層102の厚さD1」とは、支持層101の片側に位置するアルミニウム系導電層102の厚さを指す。
【0023】
別の実施例において、「アルミニウム系導電層102の厚さD1」とは、支持層101の両側に位置するアルミニウム系導電層102の平均厚さを指し、すなわち、支持層101の両側に位置するアルミニウム系導電層102の厚さの和の半分を指す。
【0024】
例えば、支持層101の片面にアルミニウム系導電層102が設けられた正極集電体10に対し、「アルミニウム系導電層102の厚さD1」とは、支持層101の片側のアルミニウム系導電層102の厚さを指す。支持層101の対向する2つの面にそれぞれアルミニウム系導電層102が設けられ、かつアルミニウム系導電層102の厚さが等しい又はほぼ等しい正極集電体10に対し、「アルミニウム系導電層102の厚さD1」とは、支持層101の片側のアルミニウム系導電層102の厚さ又は支持層101の両側のアルミニウム系導電層102の平均厚さを指す。支持層101の対向する2つの面にそれぞれアルミニウム系導電層102が設けられ、かつ厚さの差が10%以上である正極集電体10に対し、「アルミニウム系導電層102の厚さD1」とは、支持層101の両側のアルミニウム系導電層102の平均厚さを指す。このように、式1によりよく適用することができる。
【0025】
当該技術分野で公知の機器及び方法を用いて支持層101の引張強度Tを測定することができ、例えば、アメリカのINSTRON 3365型万能引張試験機を用いて測定する。例示的な測定方法は以下のとおりであり、例えば、支持層101を、例えば幅が15mmであり且つ長さが150mmであるストライプ状のサンプルに切断し、その後、サンプルを万能引張試験機の対向する2つの治具に取り付け、長さが50mmであり、引張速度が5mm/minとなるように設定して引張試験を行い、サンプルが破断されるまでに引張を停止し、破断時のサンプルが受けられた最大引張力Fを記録し、T=F/Sに基づいて支持層101の引張強度Tを算出し、ここで、Sはサンプルの初期の断面積である。サンプルの幅とサンプルの厚さの積でSを算出し、上記サンプルの厚さは即ち支持層101の厚さD2である。
【0026】
アルミニウム系導電層102の厚さD1及び支持層101の厚さD2は、例えば、マイクロメータなどの当該技術分野の公知の機器及び方法を用いて測定することができる。
【0027】
本願の正極集電体10は、高分子材料系支持層101と支持層101に設けられたアルミニウム系導電層102を備え、かつ正極集電体10の脆性パラメータCは、0.01≦C≦0.5を満たす。これにより、正極集電体10が適度な靭性を有しているので、正極集電体が高い力学的性能及び機械的性能を有することが確保できる。電気化学装置の製造加工及び電気化学装置の動作過程において、該正極集電体10は一定の変形を受けることができるので、破断と破裂が発生しない。これは、正極集電体10の加工可能性及び使用中の安定性の向上に有利であるため、加工中及び使用中の正極集電体の破断又は亀裂の発生を効果的に防止することができる。従って、本願によれば、正極集電体10及びそれを用いる正電極シートと電気化学装置の製造過程での良品率及び使用中の信頼性を顕著に向上させることができる。
【0028】
電気化学装置の製造加工及び動作過程において、正極集電体10は破断又は亀裂が発生しにくいことは、一方、正極集電体10の導電性及び集電性を効果的に発揮するように確保でき、他方、正極活物質層の破断又は亀裂の発生を防止し、その内部の導電回路網の連続性を保持することができ、正極活物質層の性能を効果的に発揮するように確保できる。本願の正極集電体10を用いることにより電気化学装置の使用寿命を延長するのに有利である。
【0029】
正極集電体10の脆性パラメータCが上記範囲内であると、正極集電体10が良好な導電性及び集電性能を有することを確保する。正電極シート及び電気化学装置の低抵抗、電気化学装置分極の低減に有利であるため、電気化学装置が高い電気化学的性能を有し、ここで、電気化学装置は、高い倍率性能及びサイクル性能を有する。
【0030】
また、高分子材料系支持層101の密度が金属の密度よりも低いため、本願の正極集電体10を用いるのは、電気化学装置の重量を低減することができ、電気化学装置のエネルギー密度が更に向上できる。
【0031】
いくつかの選択可能な実施例において、正極集電体10の脆性パラメータCは、C≦0.5、C≦0.48、C≦0.45、C≦0.42、C≦0.4、C≦0.38、C≦0.36、C≦0.35、C≦0.32、C≦0.3、C≦0.28又はC≦0.25であってもよく、さらに、C≧0.01、C≧0.05、C≧0.08、C≧0.1、C≧0.12、C≧0.15、C≧0.17、C≧0.19、C≧0.2又はC≧0.22であってもよい。
【0032】
本発明者により、正極集電体10の脆性パラメータCを適正な範囲内にして、電気化学装置のエネルギー密度をよりよく改善するとともに、正極集電体10及び正電極シートが高い過電流の性能を有することが確保できる。該正極集電体10を用いた電気化学装置の総合性能は良好である。好ましくは、正極集電体10の脆性パラメータCは0.05~0.3である。該正極集電体10は、上記効果をよりよく発揮することができる。
【0033】
いくつかの実施例において、アルミニウム系導電層102の厚さD1は、30nm≦D1≦3μmであることが好ましい。例えば、アルミニウム系導電層102の厚さD1は、D1≦3μm、D1≦2.5μm、D1≦2μm、D1≦1.8μm、D1≦1.5μm、D1≦1.2μm、D1≦1μm、D1≦900nm、D1≦750nm、D1≦450nm、D1≦250nm又はD1≦100nmであってもよく、さらに、D1≧30nm、D1≧80nm、D1≧100nm、D1≧150nm、D1≧300nm、D1≧400nm、D1≧600nm、D1≧800nm、D1≧1μm又はD1≧1.6μmであってもよい。
【0034】
従来の金属集電体(アルミニウム箔など)に対して、厚さが小さいアルミニウム系導電層102が支持層101の面に設けられるのは、正極集電体10の重量を顕著に低減することができ、これにより、電気化学装置の重量を低減して電気化学装置のエネルギー密度を顕著に向上させる。
【0035】
また、アルミニウム系導電層102の厚さD1はアルミニウム系導電層102に高い導電性能を持たせる。これは、正極集電体10が高い導電性及び集電性を有するのに有利であるので、電気化学装置の性能を向上させる。そして、加工及び使用過程において、該アルミニウム系導電層102が破断しにくいため、正極集電体10が高い破断靭性を有し、正極集電体10が良好な機械的安定性及び動作安定性を有することが確保できる。特に、アルミニウム系導電層102の厚さD1が適正な範囲内にあると、電気化学装置に釘刺し等の異常が発生した場合に、アルミニウム系導電層102に生成されたバリが小さいため、生成された金属バリが電極に接触するリスクを低減し、電気化学装置の安全性を改善することができる。
【0036】
好ましくは、300nm≦D1≦2μmである。より好ましくは、500nm≦D1≦1.5μmである。特に好ましくは、800nm≦D1≦1.2μmである。
【0037】
いくつかの実施例において、アルミニウム系導電層102はアルミニウム及びアルミニウム合金のうちの一種類又は複数種類を含む。アルミニウム合金におけるアルミニウムの質量の含有量は、80wt%以上が好ましく、90wt%以上がより好ましい。
【0038】
いくつかの実施例において、支持層101の引張強度Tは、100MPa≦T≦400MPaであることが好ましく、150MPa≦T≦300MPaであることがより好ましい。支持層101の引張強度が適正な範囲内にあると、正極集電体10が高い力学的性能を有するのに有利であるため、該正極集電体10が破断又は亀裂が発生しにくい。そして、該支持層101は過度に展延したり変形したりすることがないので、アルミニウム系導電層102が破断又は亀裂が発生することをさらに防止するとともに、支持層101とアルミニウム系導電層102との間に強い結合力を有し、アルミニウム系導電層102が剥離しにくい。従って、該正極集電体10を用いれば、電気化学装置の使用寿命及びサイクル性能を向上させるのに有利である。
【0039】
適正な引張強度Tによって、支持層101はアルミニウム系導電層102に対して良好な支持作用を果たす。
【0040】
いくつかの実施例において、支持層101のヤング率E≧2GPaである。該支持層101は剛性を有し、アルミニウム系導電層102に対して良好な支持作用を果たし、正極集電体10全体の強度を確保する。そして、正極集電体10の加工中に支持層101が過度に展延したり変形したりすることがなく、支持層101及びアルミニウム系導電層102の破断を更に防止するとともに、支持層101とアルミニウム系導電層102との間の結合力が強くなり、剥離しにくくなる。従って、正極集電体10の機械的安定性及び動作安定性を向上させるため、サイクル寿命などの電気化学装置の性能を向上させる。
【0041】
好ましくは、支持層101のヤング率Eは、2GPa≦E≦20GPaを満たす。例えば、Eは、2GPa、3GPa、4GPa、5GPa、6GPa、7GPa、8GPa、9GPa、10GPa、11GPa、12GPa、13GPa、14GPa、15GPa、16GPa、17GPa、18GPa、19GPa、または20GPaである。これにより、支持層101は、適度な剛性及び靭性を有し、支持層101及びこれを用いた正極集電体10が加工中に巻回時の柔軟性を有するように保証できる。
【0042】
支持層101のヤング率Eは、当該技術分野で公知の方法を用いて測定することができる。例えば、アメリカのINSTRON 3365型万能引張試験機を用いた。一例として、支持層101を15mm×200mmのサンプルに切断し、マイクロメータでサンプルの厚さh(μm)を測定し、引張試験機を用いて常温常圧(25℃、0.1MPa)で引張測定を行い、初期位置を設定して治具間のサンプル長さを50mmに設定し、引張速度が5mm/minであり、破断にまるまでの引張荷重L(N)、装置変位y(mm)を記録すると、応力ε(GPa)=L/(15×h)となり、歪みη=y/50であり、応力-歪み曲線を描き、初期線形領域の曲線を取ると、この曲線の傾きがヤング率Eである。
【0043】
いくつかの実施例において、支持層101の厚さD2は、1μm≦D2≦30μmを満たす。支持層101の厚さD2は高い機械的強度を有し、加工中及び使用中に破断が発生しにくく、アルミニウム系導電層102に対して良好な支持及び保護の作用を果たしたため、正極集電体10の機械的安定性及び動作安定性を向上させる。同時に、該支持層101により、電気化学装置が小型化及び軽量化となるので、電気化学装置の体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度を向上させる。
【0044】
いくつかの選択可能な実施例において、支持層101の厚さD2は、D2≦30μm、D2≦25μm、D2≦20μm、D2≦18μm、D2≦15μm、D2≦12μm、D2≦10μm又はD2≦8μmであってもよく、さらに、D2≧1μm、D2≧1.5μm、D2≧2μm、D2≧3μm、D2≧4μm、D2≧5μm、D2≧6μm、D2≧7μm、D2≧9μm又はD2≧16μmであってもよい。好ましくは、1nm≦D2≦20μmである。より好ましくは、1μm≦D2≦15μmである。より好ましくは、2μm≦D2≦10μmである。特に好ましくは、2μm≦D2≦8μmである。更に好ましくは、2μm≦D2≦6μmである。
【0045】
支持層101は、高分子材料のうちの一種類又は複数種類を含む。いくつかの実施例において、高分子材料としては、例えば、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリイン系、シロキサンポリマー、ポリエーテル系、ポリアルコール系、ポリスルホン系、多糖類ポリマー、アミノ酸系ポリマー、ポリ窒化硫黄系、芳香環ポリマー、芳香族複素環ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、上記材料の誘導体、上記材料の架橋物、及び上記材料のコポリマーのうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0046】
いくつかの好ましい実施例において、前記高分子材料は、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6とも呼ばれる)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66とも呼ばれる)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(PMIA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレンゴム(PPE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、ポリアセチレン(Polyacetylene、PAと略称)、シリコーンゴム(Silicone rubber)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース、デンプン、タンパク質、ポリフェニル、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PAN)、ポリチオフェン(PT)、ポリピリジン(PPY)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、上記材料の誘導体、上記材料の架橋物、及び上記材料のコポリマーのうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0047】
いくつかの実施例において、更に好ましくは、支持層101は、添加剤を含むものであってもよく、添加剤は、金属材料及び無機非金属材料のうちの一種類又は複数種類であってもよい。金属材料の添加剤は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銀及び銀合金のうちの一種類又は複数種類であってもよい。無機非金属材料の添加剤は、例えば、炭素系材料、酸化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩及び酸化チタンのうちの一種類又は複数種類であり、さらに、例えば、ガラス材料、セラミック材料、及びセラミック複合材料のうちの一種類又は複数種類である。炭素系材料の添加剤としては、例えば、黒鉛、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類である。
【0048】
添加剤としては、金属材料で被覆される炭素系材料、例えば、ニッケルで被覆される黒鉛粉及びニッケルで被覆される炭素繊維のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0049】
いくつかの実施例において、支持層101としては、絶縁性高分子材料及び絶縁性高分子系複合材料のうちの一種類又は複数種類を用いることが好ましい。絶縁性高分子系複合材料は、上記高分子材料のうちの一種類又は複数種類を含み、及び上記添加剤のうちの一種類又は複数種類を含み、且つ電気絶縁性を有する。このような支持層101は、体積抵抗率が高く、電気化学装置の安全性の向上に有利である。
【0050】
好ましくは、支持層101は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)及びポリイミド(PI)のうちの一種類又は複数種類を含む。
【0051】
いくつかの実施例において、支持層101は、単層構造であってもよいし、2層、3層、4層等の2層以上の複合層構造であってもよい。
【0052】
図2は、本願の一実施例による他の正極集電体10の構造模式図であり、
図2を参照すると、支持層101は、第1のサブレイヤ1011、第2のサブレイヤ1012、及び第3のサブレイヤ1013が積層された複合層構造である。複合層構造の支持層101は、互いに対向する第1の面101aと第2の面101bを有し、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第1の面101a及び第2の面101bに積層して設けられている。勿論、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第1の面101aのみに設けられていてもよいし、支持層101の第2の面101bのみに設けられていてもよい。
【0053】
支持層101が2層以上の複合層構造である場合、各のサブレイヤの材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
発明者の詳細な調査により、特に、支持層101の厚さD2が10μm以下であり、更に、8μm以下である場合、正極集電体10の脆性パラメータは、正極集電体10の力学的性能及び機械的性能に対して、より重要な一つのパラメータであり、正極集電体10の加工可能性、作製の良品率、使用中の信頼性等に対して大きな影響を与える。
【0055】
いくつかの実施例において、正極集電体10は、保護層103をさらに選択的に含んでもよい。
図3乃至
図5を参照すると、保護層103は、アルミニウム系導電層102と支持層101の間に設けられる。また、保護層103は、アルミニウム系導電層102の支持層101とは反対側の面に設けられる。あるいは、アルミニウム系導電層102と支持層101の間と、アルミニウム系導電層102の支持層101とは反対側の面との両方にいずれも保護層103が設けられる。
【0056】
保護層103はアルミニウム系導電層102を保護し、アルミニウム系導電層102の化学腐食や機械的破壊等の損傷を防止し、正極集電体10の動作安定性及び使用寿命を確保し、よって、電気化学装置が高い安全性及び電気化学的性能を有するのに有利である。また、保護層103は、さらに正極集電体10の強度を高めることができる。
【0057】
なお、
図3乃至
図5では、支持層101の片面にアルミニウム系導電層102を有し、アルミニウム系導電層102自体の厚さ方向において互いに対向する二つの面の一方又は両方に保護層103を有している。しかし、他の実施例では、支持層101の互いに対向する2つの面にそれぞれアルミニウム系導電層102を有していてもよく、いずれか一方のアルミニウム系導電層102自体の厚さ方向において互いに対向する2つの面の一方又は両方に保護層103を有していてもよく、2つのアルミニウム系導電層102自体の厚み方向において互いに対向する2つの面の一方又は両方に保護層103を有していてもよいことを理解すべきである。
【0058】
いくつかの実施例において、保護層103は、金属、金属酸化物、及び導電性カーボンのうちの一種類又は複数種類を含む。
【0059】
金属は、例えば、ニッケル、クロム、ニッケル系合金及び銅系合金のうちの一種類又は複数種類である。ニッケル系合金は、純ニッケルを基体として1種又は複数種の他の元素を加えてなる合金であり、好ましくは、ニッケル-クロム合金である。ニッケル-クロム合金は、金属ニッケル及び金属クロムからなる合金であって、選択可能的に、ニッケル-クロム合金におけるニッケルとクロムとの重量比は、1:99~99:1であり、例えば、9:1である。銅系合金は、純銅を基体として1種又は複数種の他の元素を加えてなる合金であり、好ましくは、ニッケル銅合金である。選択可能的に、ニッケル銅合金におけるニッケルと銅との重量比は、1:99~99:1であり、例えば、9:1である。
【0060】
金属酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、及び酸化ニッケルのうちの一種類又は複数種類である。
【0061】
導電性カーボンは、黒鉛、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類であってもよく、さらに、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、及びグラフェンのうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0062】
いくつかの実施例において、保護層103は、ニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金、酸化アルミにムム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、黒鉛、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0063】
いくつかの例として、
図3を参照すると、正極集電体10は、積層された支持層101、アルミニウム系導電層102、及び保護層103を含む。ここで、支持層101は、自体の厚さ方向において互いに対向する第1の面101a及び第2の面101bを有し、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第1の面101a及び第2の面101bの少なくとも一方に積層されており、保護層103は、アルミニウム系導電層102の支持層101とは反対側の面に積層されている。
【0064】
アルミニウム系導電層102の支持層101とは反対側の面に設けられている保護層103(上部保護層と略称する)は、アルミニウム系導電層102に対して化学的腐食や機械的破壊からの保護作用を果たす。特に、上部保護層は、正極集電体10と正極活物質層との間の界面を改善し、正極集電体10と正極活物質層との結合力を向上させる。上部保護層は金属保護層又は金属酸化物保護層であれば、上記保護作用をより良く果たすことができる。
【0065】
さらに、正極集電体10の上部保護層は、金属酸化物保護層であることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロム等であり、金属酸化物保護層は、硬度及び機械的強度が高く、比面積がより大きく、耐食性に優れ、アルミニウム系導電層102をより良好に保護できる。また、金属酸化物保護層は、正極集電体10の釘刺しの安全性を更に改善することができる。
【0066】
別の例として、
図4を参照すると、正極集電体10は、積層された支持層101、アルミニウム系導電層102、及び保護層103を含む。ここで、支持層101は、自体の厚さ方向において互いに対向する第1の面101a及び第2の面101bを有し、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第1の面101a及び第2の面101bの少なくとも一方に積層され、保護層103は、アルミニウム系導電層102と支持層101の間に積層されている。
【0067】
アルミニウム系導電層102と支持層101の間に設けられた保護層103(下部保護層と略称する)は、アルミニウム系導電層102に対して化学的腐食や機械的破壊からの保護作用を果たすとともに、下部保護層は、アルミニウム系導電層102と支持層101との結合力を高め、アルミニウム系導電層102と支持層101との分離を防ぎ、アルミニウム系導電層102に対する支持及び保護作用を高めることができる。
【0068】
選択可能的に、下部保護層は、金属酸化物又は金属保護層であり、金属酸化物保護層は、耐食性が高く、比面積が大きいため、アルミニウム系導電層102と支持層101との界面結合力をより高めることができ、下部保護層がアルミニウム系導電層102を保護する役割をより良く果たすようにし、電気化学装置の性能を向上させることができる。そして、金属酸化物保護層は、硬度がより高く、機械的強度がより良好であり、正極集電体10の強度の向上により有利である。金属保護層は、アルミニウム系導電層102に対して化学的腐食や機械的破壊からの保護作用を果たすとともに、正極集電体10の導電性能を向上できるので、電気化学装置の性能を向上させる。正極集電体10の下部保護層は金属酸化物保護層であることが好ましい。
【0069】
さらに別の例として、
図5を参照すると、正極集電体10は、積層された支持層101、アルミニウム系導電層102、及び保護層103を含む。ここで、支持層101は、自体の厚さ方向において互いに対向する第1の面101a及び第2の面101bを有し、アルミニウム系導電層102は、支持層101の第1の面101a及び第2の面101bの少なくとも一方に積層され、アルミニウム系導電層102と支持層の間、及び、アルミニウム系導電層102の支持層101とは反対側の面にはいずれにも保護層103が設けられている。
【0070】
アルミニウム系導電層102の2つの面にはいずれにも保護層103が設けられており、導電層102をより十分に保護して、正極集電体10に高い総合性能を持たせる。
【0071】
アルミニウム系導電層102の二つの面の保護層103は、材料が同じであっても異なっていてもよく、厚さが同じであっても異なっていてもよいことと理解すべきである。
【0072】
いくつかの実施例において、保護層103の厚さD3は、1nm≦D3≦200nm、且つ、D3≦0.1D1であることが好ましい。保護層103の厚さD3は、D3≦200nm、D3≦180nm、D3≦150nm、D3≦120nm、D3≦100nm、D3≦80nm、D3≦60nm、D3≦55nm、D3≦50nm、D3≦45nm、D3≦40nm、D3≦30nm又はD3≦20nmであってもよく、更に、D3≧1nm、D3≧2nm、D3≧5nm、D3≧8nm、D3≧10nm、D3≧12nm、D3≧15nm又はD3≧18nmであってもよい。好ましくは、5nm≦D3≦200nmであり、より好ましくは、10nm≦D3≦200nmである。
【0073】
「保護層103の厚さD3」とは、アルミニウム系導電層102の片側に位置する保護層103の厚さを指す。即ち、正極集電体10が上部保護層を含む場合、上部保護層の厚さDaは、1nm≦Da≦200nm、且つ、Da≦0.1D1であり、さらに、5nm≦Da≦200nmであり、よりさらに、10nm≦Da≦200nmである。正極集電体10が下部保護層を含む場合、下部保護層の厚さDbは、1nm≦Db≦200nm、且つ、Db≦0.1D1であり、さらに、5nm≦Db≦200nmであり、よりさらに、10nm≦Db≦200nmである。
【0074】
保護層103の厚さD3は、アルミニウム系導電層102に対して保護作用を効果的に果たすことに適するとともに、電気化学装置により高いエネルギー密度を持たせることが確保できる。
【0075】
アルミニウム系導電層102の二つの面に保護層103が設けられている場合、即ち、正極集電体10が上部保護層及び下部保護層を含む場合、Da>Dbであることが好ましい。これにより、上部保護層及び下部保護層が協働して導電層102に対して化学的腐食や、機械的破壊からの保護作用を果たすとともに、電気化学装置に高いエネルギー密度を持たせるのに有利である。より好ましくは、0.5Da≦Db≦0.8Daであり、上部保護層及び下部保護層の相乗的な保護作用をより良好に発揮することができる。
【0076】
保護層103を配置するか否かが正極集電体10の脆性パラメータCに与える影響は無視できることと理解すべきである。
【0077】
アルミニウム系導電層102は、支持層101に機械的圧延、接着、気相蒸着法、化学めっき、電気めっきのうちの少なくとも一種類によって形成してもよく、ここで、気相蒸着法、電気めっき法が好ましく、即ち、アルミニウム系導電層102はそれぞれ気相蒸着層、電気めっき層である。アルミニウム系導電層102を気相蒸着法や電気めっき法によって支持層101に形成することにより、アルミニウム系導電層102と支持層101との間の結合をより強くさせ、正極集電体10の性能を向上させる。
【0078】
気相蒸着法は、物理気相蒸着法であることが好ましい。物理気相蒸着法は、蒸発法及びスパッタ法のうちの少なくとも一種類が好ましく、ここで、蒸発法は、真空蒸着法、熱蒸発法及び電子ビーム蒸着法のうちの少なくとも一種類が好ましく、スパッタ法は、マグネトロンスパッタ法が好ましい。
【0079】
一例として、真空蒸着法によりアルミニウム系導電層102を形成してもよい。面清浄処理された支持層101を真空蒸着チャンバ内に置き、金属蒸発室内の金属ワイヤを1300℃~2000℃の高温で溶融且つ蒸発し、蒸発した金属は真空チャンバ内の冷却システムを経て、最後に支持層101の面に蒸着され、アルミニウム系導電層102を形成することを含む。
【0080】
保護層103を有する場合、保護層103は、気相蒸着法、インサイチュ形成法及びコーティング法のうちの少なくとも一種類によりアルミニウム系導電層102に形成してもよい。気相蒸着法は、上述のような気相蒸着法であってもよい。インサイチュ形成法は、インサイチュ不動態化法、即ち、金属面に金属酸化物不動態化層をインサイチュ形成する方法が好ましい。コーティング法は、ロールコーティング、押出コートコーティング、ナイフコーティング及びグラビアコーティングの少なくとも一種類が好ましい。
【0081】
好ましくは、保護層103は、気相蒸着法及びインサイチュ形成法のうちの少なくとも一つの手段によりアルミニウム系導電層102に形成される。これにより、アルミニウム系導電層102と保護層103との間に高い結合力を持たせるのに有利であり、これにより、正極集電体10に対する保護層102の保護作用がより良好に発揮され、正極集電体10の動作性能が確保される。
【0082】
アルミニウム系導電層102と支持層101の間に保護層103(即ち、下部保護層)が設けられる場合、下部保護層が支持層101に形成された後に、アルミニウム系導電層102が下部保護層上に形成されても良い。下部保護層を気相蒸着法及びコーティング法のうちの少なくとも一つの手段により支持層101に形成してもよく、ここで、気相蒸着法が好ましい。アルミニウム系導電層102は、下部保護層に機械的圧延、接着、気相蒸着法、化学めっきのうちの少なくとも一つの手段によって形成してもよく、ここで、気相蒸着法が好ましい。
正電極シート
【0083】
本願の第2の態様は、正電極シートを提供する。正電極シートは、積層された正極集電体、及び正極活物質層を含み、ここで、正極集電体は、本願の第1の態様によるいずれかの正極集電体である。
【0084】
本願の正電極シートは、本願の第1の態様による正極集電体を用いたため、高い力学的性能、高い製造の良品率、及び高い使用安全性と信頼性を有するとともに、軽量化及び高い電気化学性能を両立させる。
【0085】
図6は、一例とする正電極シート30を示す。
図6を参照すると、正電極シート30は、積層された正極集電体10、及び正極活物質層20を含み、正極集電体10は、自体の厚さ方向において互いに対向する両面を有し、正極活物質層20は、正極集電体10の二つの面に積層されている。勿論、正極活物質層20は、正極集電体10の2つの面のいずれかに積層されていてもよいと理解すべきである。
【0086】
正極活物質層は、活性イオンの可逆的な挿入・脱離が可能な当該技術分野で公知の正極活物質をさらに採用してもよく、本願には限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池用の正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合酸化物には他の遷移金属又は非遷移金属又は非金属を添加して得られた複合酸化物のうちの一種類又は複数種類であってもよい。ここで、遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Ti、Zn、V、Al、Zr、Ce及びMgのうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0087】
一例として、正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、かんらん石構造のリチウム含有リン酸塩のうちの一種類又は複数種類であってもよい。例えば、正極活物質は、LiMn2O4、LiNiO2、LiCoO2、LiNi1-yCoyO2(0<y<1)、LiNiaCobAl1-a-bO2(0<a<1、0<b<1、0<a+b<1)、LiMn1-m-nNimConO2(0<m<1、0<n<1、0<m+n<1)、LiMPO4(Mは、Mn、Co及びFeのうちの一種類又は複数種類であってもよい)、及びLi3V2(PO4)3のうちの一種類又は複数種類である。
【0088】
いくつかの実施例において、正極活物質層20は、接着剤を含んでいてもよく、本願において、接着剤の種類は特に限定されない。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの一種類又は複数種類である。
【0089】
いくつかの実施例において、正極活物質層20は、さらに導電剤を含んでいてもよく、本願において、導電剤の種類は特に限定されない。一例として、導電剤は、例えば、黒鉛、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類である。
【0090】
正電極シート30は、当技術分野の従来の方法、例えばコーティング法によって製造できる。一例として、正極活物質と選択可能な導電剤及び接着剤とを溶媒で分散させて、均一な正極スラリーを取得し、ここで、溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよい。その後、正極スラリーを正極集電体10に塗布し、乾燥等の工程を経て、正電極シートを得る。
電気化学装置
【0091】
本願の第3の態様は、電気化学装置を提供する。電気化学装置は、正電極シートと、負電極シートと、電解質と、を含み、上記正電極シートは、本願の第2の態様によるいずれかの正電極シートである。
【0092】
電気化学装置に関する実施例は、電池、上記電池を含む電池モジュール、上記電池を含む電池パックであってもよい。電池に関する実施例は、一次電池、二次電池であってもよい。具体的な例には、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池を含むが、これらを限定しない。
【0093】
本願の電気化学装置は、本願の第2の態様による正電極シートを用い、これにより、より高い総合的な電気化学性能を有し、ここで、より高くエネルギー密度、倍率性能、サイクル性能及び安全性能を有する。
【0094】
いくつかの実施例において、負電極シートは、負極集電体、及び負極集電体上に設けられた負極活物質層を含む。例えば、負極集電体は、自体の厚さ方向において互いに対向する両面を有し、負極活物質層は、負極集電体の2つの面、又は、該2つの面のいずれかに積層していてもよい。
【0095】
負極活物質層は、活性イオンの可逆的な挿入・脱離が可能な当該技術分野で公知の負極活物質を用いてもよく、本願には限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池用の負極活物質は、金属リチウム、天然黒鉛、人工黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略記)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-カーボン複合体、SiO、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO2、スピネル構造のチタン酸リチウム、及びLi-Al合金のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0096】
選択可能に、負極活物質層は、さらに導電剤を含んでいてもよい。本願において、導電剤の種類は特に限定されない。一例として、導電剤は、黒鉛、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類である。
【0097】
選択可能に、負極活物質層は、さらに接着剤を含んでいてもよく、接着剤の種類は特に限定されない。一例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの一種類又は複数種類である。
【0098】
負電極シートは、当該技術分野の従来方法、例えばコーティング法によって製造できる。一例として、負極活物質と選択可能な導電剤及び接着剤とを溶媒で分散させて、均一な負極スラリーを形成し、ここで、溶媒は脱イオン水であってもよい。その後、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥等の工程を経た後、負電極シートを得る。
【0099】
負極集電体は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン及び銀のうちの一種類又は複数種類を含み、例えば、銅及び銅合金のうちの一種類又は複数種類である。銅合金の銅元素の含有量は、80wt%以上が好ましく、90wt%がより好ましい。
【0100】
いくつかの実施例において、電解質は、固体電解質であってもよく、非水電解液であってもよい。電解質塩を有機溶媒で分散させて非水電解液を取得する。電解液において、電気化学反応にイオンを搬送するための媒体としての有機溶媒は、当該技術分野の任意の有機溶媒を用いてもよい。イオン供給源としての電解質塩は、当該技術分野の任意の電解質塩であってもよい。
【0101】
例えば、リチウムイオン二次電池用の有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルケトン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0102】
例えば、リチウムイオン二次電池用の電解質リチウム塩としては、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0103】
電解液には、さらに添加剤が選択的に含まれていてもよく、ここで、具体的には、添加剤の種類が限られず、必要に応じて選択すればよい。添加剤は、例えば、負極成膜用の添加剤を含んでいてもよいし、正極成膜用の添加剤を含んでいてもよいし、電気化学装置の特定の性能を改善できる添加剤を含んでいてもよい。例えば、電気化学装置の過充電性能を改善する添加剤、電気化学装置の高温性能を改善する添加剤、電気化学装置の低温性能を改善する添加剤等を含んでいてもよい。
【0104】
一例として、添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、1,3-プロペンスルトン(PST)、トリス(トリメチルシラン)リン酸エステル(TMSP)及びトリス(トリメチルシラン)ホウ酸エステル(TMSB)のうちの一種類又は複数種類を含んでもよい。
【0105】
電気化学装置が電解液を用いる場合、正電極シートと負電極シートの間に隔離の作用を果たすセパレータが設けられる。セパレータの種類は特に限定されることなく、公知の良好な化学的安定性や機械的安定性を有する多孔質構造のセパレータを任意に選択でき、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデンのうちの一種類又は複数種類であってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであっても異なっていてもよい。
【0106】
いくつかの実施例において、電気化学装置は電池であってもよい。電池は、正電極シートと、負電極シートと、電解質とを封入する包装材料を備えている。一例として、正電極シート、負電極シートとセパレータが、積層又は巻回によって積層構造の電極組立体又は巻回構造の電極組立体に形成され、該電極組立体が包装材料内に封入される。電解質は、電極組立体に浸す電解質を用いてもよい。電池における電極組立体の数は一種類または複数であってもよく、必要に応じて調整できる。
【0107】
いくつかの実施例において、電池の包装材料は、例えば、袋状のソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックは、プラスチックフィルムパックであってもよく、ポリプロピレンPP、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリブチレンサクシネートPBSなどのうちの一種類以上を含んでもよい。電池の包装材料は、例えば、アルミニウムシェルのような硬質シェルであってもよい。
【0108】
本願は、電池の形状に特に制限はなく、円筒形、角形、又は他の任意の形状であってもよい。
図7は、一例としての角形構造の電池5である。
【0109】
いくつかの実施例において、電池は、電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整されてもよい。
【0110】
図8は、一例としての電池モジュール4である。
図8を参照すると、電池モジュール4において、複数の電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次に配置されてもよい。もちろん、他の任意の形態で配置することもできる。さらに、複数の電池5は、締結具により固定されることができる。
【0111】
電池モジュール4は、選択可能的に複数の電池5が収容される収容空間を有するハウジングをさらに備えてもよい。
【0112】
いくつかの実施例において、上記の電池モジュールは、電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整されてもよい。
【0113】
図9及び
図10は、一例としての電池パック1である。
図9及び
図10を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に配置された複数の電池モジュール4とが含まれていてもよい。電池ボックスは、上部ボックス2と下部ボックス3を備え、上部ボックス2は、下部ボックス3を覆うように配置され、電池モジュール4を収容する密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の形態で電池ボックス内に配置される。
装置
【0114】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様の電気化学装置を備える装置を提供する。上記電気化学装置は、上記装置の電源として用いられてもよいし、該装置のエネルギー蓄積手段として用いられてもよい。該装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー蓄積システムなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記装置は、その使用要件に応じて、電池、電池モジュール、又は電池パックなどの異なる電気化学装置を選択することができる。
【0115】
図11は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。該装置の電気化学装置の高電力および高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用してもよい。
【0116】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。該装置に対して軽量化を必要とし、電源として二次電池を用いることができる。
実施例
【0117】
以下の実施例は、本願に開示の内容をより具体的に説明する。これらの実施例は、単に説明のためのものであり、本願の開示の範囲内での様な修正及び変更は、当業者にとっては明らかである。特に明記しない限り、以下の実施例で説明される全ての部、百分率、及び比率は、重量に基づいており、実施例で使用される全ての試薬は市販されている、又は常法に従って合成されており、さらに処理することなく直接使用することができる。また、実施例で使用される装置は市販されている。
製造方法
【0118】
従来の負極集電体の製造
厚さが8μmである銅箔を用いる。
【0119】
従来の負電極シートの製造
負極活物質の黒鉛、導電性カーボンブラック、増粘剤 カルボキシメチルセルロースナトリウム、接着剤 スチレンブタジエンゴムエマルジョンを96.5:1.0:1.0:1.5の重量比で脱イオン水で十分に攪拌混合し、均一な負極スラリーを形成させる。負極集電体に負極スラリーを塗布し、乾燥などの工程を経た後、負電極シートを得た。
【0120】
正極集電体の製造
所定の厚さの高分子材料系支持層を選択して面洗浄処理を行い、面清浄処理された支持層を真空チャンバ内に置き、金属蒸発室内の高純度アルミワイヤを1300℃~2000℃の高温で溶融蒸発させ、蒸発した金属は真空チャンバ内の冷却システムを経て、最後に、支持層の2つの面に蒸着され、アルミニウム系導電層を形成する。
【0121】
従来の正極集電体の製造
厚さが12μmであるアルミニウム箔を用いる。
【0122】
正電極シートの製造
正極活物質のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333)、導電性カーボンブラック、接着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を93:2:5の重量比で適量のN-メチルピロリドン(NMP)溶媒で十分に攪拌混合して、均一な正極スラリーを形成させ、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥などの工程を経た後、正電極シートを得た。
【0123】
電解液の調製
体積比が3:7であるエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)を均一に混合して有機溶媒を得て、1 mol/LのLiPF6を上記の有機溶媒で均一に溶解させる。
【0124】
リチウムイオン二次電池の製造
正電極シート、セパレータ、負電極シートを順次に積層し、ここで、セパレータは、PP/PE/PP複合フィルムを使用し、その後、電池コアとして巻回し、ハウジングに入れ、上記電解液を電池コアに注入し密封してリチウムイオン二次電池を取得する。
測定部分
【0125】
1.正極集電体の測定
1)正電極シートの脆性パラメータの測定
支持層101を、幅が15mmであり且つ長さが150mmであるサンプルに切断し、その後、サンプルをアメリカのINSTRON 3365型万能引張試験機の上下の2つの治具に取り付け、初期位置を設定して治具の間のサンプルの長さを50mmに設定し、伸張速度が50mm/minであり、引張試験を行い、サンプルが破断されるまでに引張を停止し、破断時のサンプルが受けられた最大引張力Fを記録し、T=F/Sに基づいて支持層101の引張強度Tを算出し、ここで、Sはサンプルの初期の断面積であり、サンプルの幅とサンプルの厚さ(即ち支持層101の厚さD2)の積に等しい。
【0126】
マイクロメータ(high accuracy micrometer)を用いてアルミニウム系導電層の厚さD1及び支持層の厚さD2を測定する。
【0127】
正電極シートの脆性パラメータC=(200×アルミニウム系導電層の厚さD1)/(支持層の引張強度T×支持層の厚さD2)。
【0128】
2)正極集電体の破断伸長率の測定
正極集電体を15mm×200mmのサンプルに切断し、アメリカのINSTRON 3365型万能引張試験機を用いて、常温常圧(25℃、0.1MPa)で引張測定を行い、初期位置を設定して治具の間のサンプルの長さを50mmに設定し、引張速度が5mm/minになるように設定し、破断になるまでの装置変位y(mm)を記録し、最終的に算出すると、破断伸長率は(y/50)×100%であった。
【0129】
2.電池の性能の測定
(1)サイクル性能の測定
45℃で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vまで定電流充電し、その後、電流が0.05Cの以下に定電圧充電し、1Cの倍率で定電流で2.8Vまで放電したものを一回の充放電サイクルとし、今回の放電容量を初回目サイクルの放電容量とする。リチウムイオン二次電池を上記方法で1000回の充放電サイクルを行い、1000回目サイクルの放電容量を記録し、リチウムイオン二次電池の1C/1Cで1000回サイクル後の容量保持率を算出する。
【0130】
リチウムイオン二次電池の45℃で1C/1Cでサイクル1000回後の容量保持率(%)=1000回目サイクルの放電容量/初回目サイクルの放電容量×100%。
測定結果
【0131】
1.正極集電体が電気化学装置の重量エネルギー密度を改善する作用
【表1】
【0132】
表1において、正極集電体の重量百分率は、単位面積当たりの正極集電体の重量を単位面積当たりの従来の正極集電体の重量で割った百分率である。
【0133】
本願の正極集電体の重量は、従来のアルミニウム箔正極集電体と比較して、ある程度に軽減されるため、電気化学装置の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0134】
2.保護層が正極集電体及び電気化学装置の電気化学性能に対する影響
【表2-1】
【0135】
表2-1において、「*」は、表1の正極集電体7を使った上で保護層を設けることを表す。「**」は、表1の正極集電体3を使った上で保護層を設けることを表す。
【表2-2】
【0136】
表2-2により、本願の正極集電体を用いた電気化学装置のサイクル寿命は良好であり、これは従来の正極集電体を用いた電気化学装置のサイクル性能と相当である。これは、本願の複合正極集電体を用いるのは、正電極シート及び電気化学装置の電気化学的性能に悪い影響与えない。特に、保護層を設ける複合正極集電体により製造された電気化学装置に対し、45℃、1C/1Cで1000回サイクル後の容量保持率をさらに向上でき、電気化学装置の信頼性がより良好になる。
【0137】
3.正極集電体の脆性パラメータC及びそれが正極集電体の力学性能に対する影響
【表3】
【0138】
表3において、アルミニウム合金はAlMg合金であり、その構成は、Al 90wt%、Mg 10wt%である。
【0139】
表3の結果によると、正極集電体の脆性パラメータCが0.01~0.5にあると、正極集電体の破断伸長率を改善することができ、正極集電体の破断伸長率は2%以上であり、更に、3%以上である。これにより、正極集電体が高い力学的性能及び機械的性能を持つことが確保できる。電気化学装置の製造加工及び動作過程において、該正極集電体10は一定の変形を受けることができるので、破断と破裂が発生しない。これは、正極集電体10の加工可能性及び使用中の安定性の向上に有利であるため、加工中及び使用中の正極集電体の破断又は亀裂を効果的に防止することができる。従って、本願によれば、正極集電体及びそれを用いる正電極シートと電気化学装置の製造過程での良品率及び使用中の信頼性を顕著に向上させることができる。
【0140】
以上、本願の具体的な実施形態について説明したが、本願の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本願に開示の技術的範囲内において、様な等価な修正又は置換が容易に考えられ、これらの修正又は置換は、本願の範囲内に含まれるべきである。従って、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準ずるものとする。