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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】装飾物品の射出方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/035 20060101AFI20230906BHJP
   G04B 15/14 20060101ALI20230906BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20230906BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20230906BHJP
   G04B 29/02 20060101ALI20230906BHJP
   G04B 31/008 20060101ALI20230906BHJP
   G04B 37/00 20060101ALI20230906BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20230906BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20230906BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20230906BHJP
   C22C 1/05 20230101ALI20230906BHJP
【FI】
B22F3/035 D
G04B15/14
G04B17/06 Z
G04B19/06 G
G04B29/02 B
G04B31/008
G04B37/00 P
B22F3/02 S
B22F7/00 Z
B22F3/24 G
C22C1/05 F
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022049277
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2022165913
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】21169506.9
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ショパール-ラリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・モロー
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-085355(JP,A)
【文献】特表2017-517006(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136894(WO,A1)
【文献】特表2008-501534(JP,A)
【文献】特開2005-181340(JP,A)
【文献】特表2019-521243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/00-3/26
B29C 45/16
G04B 19/06-19/18
G04B 37/00-37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーン体(6)を構成する第1の部品(6a)および第2の部品(6b)を形成するための型を含み、これらの型は前記第1の部品(6a)および前記第2の部品(6b)のそれぞれの装飾部を形成するための彫込み部を備え、前記第1の部品(6a)の装飾部を形成するために使用される第1の彫込み部は突出構造(5)を有し、前記第2の部品(6b)の装飾部を形成するために使用される第2の彫込み部は開口を備える有底の中空構造(5)を有し、
前記突出構造(5)および前記中空構造(5)は、いずれも1つの要素、又はいくつかの個別要素(5a)から作製され、
前記第2の彫込み部の前記中空構造(5)は、前記第1の彫込み部の前記突出構造(5)のネガティブ部として形成される前記第1の部品(6a)の装飾部に対向して配設され、これにより、前記第2の部品(6b)の装飾部を形成するための空間が前記第1の部品(6a)の装飾部と前記第2の彫込み部とから形成されるように構成されている、射出成形型(3)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの要素(5a)は、1.5mm以下、好ましくは1mm、より好ましくは0.5mmの少なくとも1つの寸法を有し、前記寸法は、それぞれの突出若しくは開口を備える有底の中空要素(5a)の最小高さ(h)又は深さ、及び前記高さ(h)若しくは深さに横断する平面内で前記要素(5)の2つの対向する面を隔てる最小距離(d)から選択することを特徴とする、請求項1に記載の射出成形型(3)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの寸法は、1mm以下であることを特徴とする、請求項2に記載の射出成形型(3)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの寸法は、0.5mm以下であることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の射出成形型(3)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの要素(5a)は、前記要素(5a)における隣接する2つの側壁面間の接合部が横断平面内において0.1mm以下の曲率半径Rを有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の射出成形型(3)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの要素(5a)は、前記要素(5a)における隣接する2つの側壁面間の接合部が横断平面内において0.06mm以下の曲率半径Rを有することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の射出成形型(3)。
【請求項7】
射出によってセラミック又はサーメット物品を製造する方法であって、前記方法は、
-請求項1から6に記載の射出成形型(3)を準備するステップと、
-セラミック又はサーメットからなる少なくとも1つの材料を準備するステップと、
-前記彫込み部の構造(5)のネガティブ部である装飾部(2)を備えるグリーン体(6)を形成するため、前記少なくとも1つの材料を前記射出成形型(3)の前記彫込み部(4)に射出するステップと、
-半加工品を形成するため、前記グリーン体(6)を焼結するステップと、
-前記物品を得るため、前記半加工品を仕上げるステップと
を含む、製造方法。
【請求項8】
2つの異なる材料であって、前記第1の部品(6a)を形成するために前記第1の彫込み部に射出される第1の材料、及び前記第2の部品(6b)を形成するために前記第1の材料によって形成された前記第1の部品(6a)の装飾部を通じて前記第2の彫込み部に射出される第2の材料を備えることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記グリーン体(6)の前記第1の部品(6a)は、前記第1の部品(6a)の厚み方向へ貫通する複数の凹部(7)を含み、前記凹部(7)の一部は、空隙からなる前記第1の部品(6a)の装飾部を形成し、残りの前記凹部(7)は、少なくとも1つの開口(8)を形成し、前記第2の材料は、前記開口(8)へ射出されたのち前記第1の部品(6a)の装飾部を形成する前記凹部(7)を通過して前記第2の彫込み部に流入することを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記開口(8)は、前記グリーン体(6)の前記第1の部品(6a)の一部分上に存在し、前記一部分は、前記半加工品を仕上げるステップの間に除去することを意図することを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1の材料及び前記第2の材料は、色が異なることを特徴とする、請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記射出ステップの間、前記彫込み部(4)は、50℃から170℃、好ましくは、60℃から150℃の間に含まれる温度まで加熱し、前記彫込み部(4)の構造(5)への材料の完全な充填を可能にすることを特徴とする、請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記仕上げステップは、研磨及び/又は機械加工ステップであり、機械加工ステップは、突する装飾部の少なくとも1つの要素(2a)の隆起部を除去し、前記要素(2a)の上面と前記要素(2a)の側部との間の接合部に縁部を生成することを特徴とする、請求項7から請求項12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第2の部品(6b)の内径部が中空となるように切断することで基部(10)を生成し、前記第1の部品(6a)の内径部が中空となるように切断することで上側部品(11)を生成することを特徴とする、請求項8から請求項13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記基部(10)および前記上側部品(11)は、少なくとも2つの別個の色から形成され、第1の色の装飾部(2)は、第2の色の背景上に突出するように形成されることを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記基部(10)は、第1の色をもつ前記第2の材料から作製されかつ突出装飾部(2)を備え、前記基部(10)は、第2の色をもつ前記第1の材料から作製された前記上側部品(11)によって覆われ、前記上側部品(11)は、前記基部(10)の装飾部(2)と相補形状の貫通した凹部(7)を備え、前記上側部品(11)は、前記凹部(7)に前記基部(10)の装飾部(2)が貫通することによりこの装飾部(2)が自身より上に突出した状態で前記基部(10)の上に重なり、これにより、サーメット又はセラミック物品が作製されることを特徴とする、請求項8を間接的に引用する請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記サーメット又はセラミック物品は、中間部品、裏蓋、ベゼル、プッシュピース、バンド連結部、文字板、針、文字板の目盛り、振動質量体、及び板を含むリストから選択される外側部品又はムーブメントの時計構成要素であることを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形型内に突出及び/又は中空構造を機械加工する方法、並びに前記型内へのセラミック材料又はサーメットの射出によって得られる、装飾物品の製造方法に関する。本発明は、前記製造方法により生成される物品、より詳細にはベゼル等の時計構成要素、及び機械加工方法によって得られる型にも関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック又はサーメットの時計構成要素は、射出後に得られたグリーン体を焼結するステップを含む射出方法によって得られる。これらの構成要素は、ベゼル用の目盛り及び数字等の装飾部を有することが多く、こうした装飾部は、射出方法の後に機械加工される。これらの装飾部は、かなり精細な特徴を有し、したがって、高品質の彫刻を得るために極めて高い精度を必要とする。概して、装飾部は、レーザー・アブレーションによって作製され、彫刻時間は、一時間を超えることがある。したがって、この射出後の装飾ステップは、更なる製造費用及び時間を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、新たな製造方法を提案することによって上述の欠点を克服することであり、装飾部は、射出と同時に実行され、射出後の彫刻ステップをなくすようにする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的で、本発明は、材料を型に射出するステップを含む物品の製造方法に関し、型は、突出及び/又は中空構造を有する彫込み部を備え、彫込み部は、製造される物品の装飾部のネガティブ部である。本発明によれば、彫込み部上の突出及び/又は中空構造は、レーザー彫刻又はマイクロフライス加工によって生成される。生成される構造は、極めて微細であり、少なくとも1つの寸法は、1.5mm以下、好ましくは、1mm、より好ましくは0.5mmの寸法を有する。
【0005】
したがって、本発明は、型の彫込み部を機械加工する方法、及びこの機械加工方法により得られた型を準備するステップを含む物品の製造方法に関する。
【0006】
より詳細には、本発明は、射出成形型の彫込み部上に突出及び/又は中空構造をレーザー・アブレーション又はマイクロフライス加工することによって機械加工する方法に関し、前記構造は、1つの要素、又はいくつかの個別要素から作製し、少なくとも1つの要素は、1.5mm以下の少なくとも1つの寸法を有し、前記寸法は、それぞれの突出若しくは中空要素の最小高さ又は深さ、及び前記高さ若しくは深さに横断する平面内で前記要素の2つの対向する面を隔てる最小距離から選択される。
【0007】
より詳細には、本発明は、物品の製造方法に関し、方法は、
-突出及び/又は中空構造を有する少なくとも1つの彫込み部を含む射出成形型を準備するステップと、
-少なくとも1つのセラミック又はサーメット材料を準備するステップと、
-彫込み部の構造のネガティブ部である装飾部を備えるグリーン体を形成するため、前記少なくとも1つの材料を型の前記少なくとも1つの彫込み部に射出するステップと、
-半加工品を形成するため、グリーン体を焼結するステップと、
-物品を得るため、前記半加工品を仕上げるステップと
を含む。
【0008】
したがって、本発明による物品の製造方法は、射出後、物品を装飾するステップをなくすことを可能にする。このことは、製造費用及び時間を著しく低減する。
【0009】
射出中に装飾される物品は、物品上に装飾要素をはんだ付け又は接着剤で留めることによって装飾した物品とは異なり、一体に作製され、装飾部と物品の残りとの間に不連続部分がない。
【0010】
レーザー・アブレーションによって装飾される物品と比較すると、装飾部を射出中に生成する物品は、より光沢があり、粗面状態がより少なく、レーザーが連続的に通過した跡がなく、可能性として、最終研磨ステップをなくすことを可能にする。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として示す好ましい実施形態に対する以下の説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による方法で製造したベゼルの平面図である。
図2A】本発明による方法で製造したベゼルの部分平面図であり、寸法はミリメートルで示す。
図2B】本発明による方法で製造したベゼルの立体図であり、寸法はミリメートルで示す。
図3A】彫込み部を備える型の立体図であり、彫込み部は、射出方法の間に時計ベゼルの突出装飾部を形成することを意図する中空構造を含む。
図3B】前記彫込み部の拡大図である。
図4】彫込み部を備える型の代替的立体図であり、彫込み部は、射出方法の間に時計ベゼルの中空装飾部を形成することを意図する突出構造を含む。
図5a】2つの別個の材料を射出するステップの最後に得られるグリーン体の図である。
図5b】グリーン体を構成する1つの材料の図である。
図5c】グリーン体を構成する1つの材料の図である。
図6図5aのグリーン体の平面図であり、グリーン体の内部構造は、点線である。
図6a図6の軸A-Aに沿った断面図であり、矢印は、射出中に第2の材料が流れる方向を示す。
図7a】2つの別個の材料の射出によって、製造方法の最後に得られる物品の図である。
図7b】物品を構成する1つの材料の図である。
図7c】物品を構成する1つの材料の図である。
図8】物品を仕上げる間、装飾部の隆起部を機械加工するステップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、型の彫込み部上の中空及び/又は突出構造を機械加工する方法に関し、彫込み部は、セラミック又はサーメット材料を射出することを意図する。本発明は、この機械加工方法により得られる型にも関する。本発明は、この射出型を使用する射出によって物品を製造する方法にも関する。本発明は、本製造方法から得られる装飾物品に更に関する。
【0014】
本発明によれば、装飾部は、物品上の突出部及び/又は中空部である。装飾部は、頭字語等の単一要素、又は目盛り及び数字等のいくつかの異なる要素から作製することができる。装飾部において、一部の要素は突出しており、その他の要素は中空であることが可能である。
【0015】
本発明による物品は、時計、宝飾品、ブレスレットの構成要素等の装飾物品とし得る。時計製造分野では、この物品は、中間部品、裏蓋、ベゼル、プッシュピース、バンド連結部、文字板、針、文字板の目盛り等の外側構成要素とし得る。物品は、振動質量体、板等のムーブメントの構成要素であってもよい。例として、物品は、突出装飾部2を有するベゼル1であり、突出装飾部2は、図1に示す目盛り、数字、輪、三角形、ひし形等である個別要素2aから形成される。この例では、全ての要素は、ミニッツサークルとも呼ばれる時間尺度の典型である。更なる例として、要素は、時計りゅうず上の頭字語である単一要素とし得る。
【0016】
物品は、サーメット又はセラミック材料から作製される。したがって、材料は、窒化物、炭化物、及び酸化ジルコニウム等の酸化物から選択される1つ又は複数のセラミックで生成することができる。同様に、物品は、炭化物、窒化物及び/又は酸化物によるセラミック相と、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、金及び銀等の貴金属元素から選択される結合金属相とを含むサーメットにより生成することができる。
【0017】
本発明によれば、物品の装飾部2の要素2aの少なくとも1つは、非常に薄く、少なくとも1つの寸法は、1.5mm以下、好ましくは、1mm、より好ましくは0.5mmである(図2A及び図2B)。寸法は、それぞれの突出及び/又は中空要素2aの最小高さh及び/又は最小深さ、並びに前記高さ/深さに横断する平面内で前記要素2の2つの対向面を隔てる最小距離dから選択される。したがって、ミニッツサークルの輪等の円型、又はミニッツサークルの目盛りの長方形型といった単純な形状の場合、最小距離は、直径及び幅のそれぞれに関連する。数字又は陥没形状(輪、三角形等)等のより複雑な形状の場合、最小距離は、数字又は陥没形状の厚さであり、最小厚さは、数字又は陥没形状内で取った値である。
【0018】
考慮すべき距離d又は高さh/深さは、最小のものである。このことは、高さ又は深さが要素内で可変である場合、高さ又は深さは、1.5mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下でなければならない最小高さ/深さであることを意味する。図示の例では、高さhは、要素内で、全ての要素に対して同じであり、0.3mmの値を有する。同様に、要素は、横断平面において、高さ/深さに応じて可変である寸法を有することができる。したがって、最小距離dが高さ/深さに沿った異なる平面の間で可変である場合、考慮しなければならないのは、最小値である。図示の例では、装飾要素の基部は、上部よりも幅が広く、目盛りの上部では、最小距離0.42mmを有する。装飾部は、非常に薄く、装飾要素の連続面の間の接合部に小さい曲率半径Rも有する。典型的には、曲率半径は、0.1mm以下、好ましくは0.06mm以下である。
【0019】
図3A図3B及び図4で見える型3の彫込み部4は、1つの要素又はいくつかの個別要素5aから作製した突出及び/又は中空構造5を含み、1つの要素又はいくつかの個別要素5aは、生成すべき装飾部のネガティブ部である。図3A及び図3Bの例では、構造は中空である一方で、図4の例では、構造は突出している。物品の装飾部と同様に、構造5の少なくとも1つの要素5aは、1.5mm以下の少なくとも1つの寸法を有し、前記寸法は、それぞれの突出及び/又は中空要素5aの最小高さ又は深さ、並びに前記高さ又は深さに横断する平面内で前記要素5の2つの対向面を隔てる最小距離dから選択される。最小高さ/深さ及び最小距離は、物品の装飾要素(複数可)が示されるように測定すべきである。
【0020】
型の彫込み部の構造に対する機械加工は、マイクロフライス加工又はレーザー・アブレーションによって実行される。マイクロフライス加工は、好ましくは、環状又は半球状フライス・カッタにより実行され、環状又は半球状フライス・カッタは、0.1から3mmの間に含まれる直径、及びフライス・カッタの端部で0.05から0.5mmの間に含まれる角度半径を有する。レーザー・アブレーションは、好ましくは、ピコ秒、ナノ秒又はフェムト秒レーザー等のパルス・レーザーで実施される。典型的には、型は、50超のロックウェル硬度HRCを有する硬化鋼等の金属合金から作製し得る。従来、彫刻前の型の彫込み部は、フライス加工、旋削等によって得ることができる。
【0021】
サーメット又はセラミック物品は、突出及び/又は中空構造を有する彫込み部を備える型に材料を射出することによって生成される。物品の製造方法は、
-突出及び/又は中空構造を有する少なくとも1つの彫込み部を含む、上記した射出成形型を準備するステップと、
-少なくとも1つのセラミック又はサーメット材料を準備するステップと、
-彫込み部の構造のネガティブ部である装飾部を備えるグリーン体を形成するため、前記少なくとも1つの材料を型の彫込み部に射出するステップと、
-半加工品を形成するため、グリーン体を焼結するステップと、
-物品を得るため、半加工品を仕上げるステップと
を含む。
【0022】
方法は、任意で、材料を有機結合剤系(パラフィン、ポリエチレン等)と共に射出してある場合、焼結ステップの前に結合剤を除去するステップを含むことができる。
【0023】
射出ステップの間、彫込み部は、50℃から170℃、好ましくは、60℃から150℃の間に含まれる温度まで加熱し、彫込み部の構造に材料を良好に充填することを可能にする。
【0024】
仕上げステップは、研磨及び/又は機械加工ステップである。装飾部における任意の機械加工は、装飾要素(複数可)2aが突出している場合、装飾要素(複数可)2aの隆起部を除去することであり、図8に概略的に示すように、装飾部の要素の上面と側部との間の接合部に明確な縁部を生成するようにする。
【0025】
本発明による物品の製造方法は、射出ステップの後に彫刻ステップを有さないか、又は物品の装飾部の少なくとも大部分は、射出中に実行される。
【0026】
典型的には、図1によるベゼル1は、酸化ジルコニウムの射出、及び1500℃の温度で、30時間の間、酸化雰囲気下での焼結によって得られる。
【0027】
本発明による製造方法は、例えば、色が異なる材料で物品を生成するために実施することもできる。この場合、目的は、所与の色の装飾部が、別の色の背景上にある物品を生成することである。より詳細には、装飾部は、背景上に突出する。射出ステップは、第1の彫込み部及び第2の彫込み部を使用し、それぞれ、本発明の方法により機械加工される突出構造及び中空構造を有する。第1の彫込み部は、第1の材料を射出する際に使用し、第2の彫込み部は、第2の材料を射出する際に使用する。2つの材料を射出した後のグリーン体を図5aに示す。第1の彫込み部を備える型への第1の材料の射出から得られたグリーン体の第1の部品6aを図5bに示す。第1の部品6aは、突出構造からなる第1の彫込み部によって第1の部品6aの厚さ部を通過するように形成された複数の凹部7、すなわち、第1の彫込み部のネガティブ部として形成された複数の凹部7を含む。これらの凹部7は、少なくとも一つが、グリーン体6の装飾部2の一部なす装飾部を形成し、他の少なくとも一つが、第2の材料を射出するための1つ又は複数の開口8を形成する。これらの開口8は、好ましくは、物品の機械加工中に除去されることを意図するグリーン体の一部分上に存在する。ベゼルの場合、開口8は、陥没させることを意図する中心環状部に存在する。
【0028】
グリーン体のこの第1の部品6aは、装飾部及び開口(複数可)を形成する突出構造を有する第1の彫込み部を備える型に第1の材料を射出した後に得られる。凹部がグリーン体の第1の部品の厚さ部を通過するようにするため、前記突出構造は、第1の彫込み部内の材料の充填高さを超える高さを有する。
【0029】
グリーン体の第2の部品6bは、開口8を介して第1の部品6aの上面6cから下面6dに第2の材料を射出することによって得られる。具体的には、図6a中の矢印によって概略的に示すように、開口8を介して射出された第2の材料は、第1の部品6aの下面6dの下方を通過したのち、装飾部2の一部をなす装飾部としての凹部7を通って下面6dから上面6cに上がり、さらに上面6cの上方に設けられた第2の彫込み部(図示せず)に入る。第2の彫込み部は、グリーン体の装飾部2の一部をなす第1の部品6aの装飾部(凹部7)に対向して配設される中空構造を有し、前記構造は、第1の部品6aの装飾部(凹部7)の形状と同様の形状を有する。これにより、第1の部品6aの装飾部(凹部7)及び第2の彫込み部によって形成される空間を通じて形成される装飾部を備えた第2の部品6bが得られ、したがって、図5に示すように、第1の部品6a及び第2の部品6bから形成されるグリーン体6は、第2の材料からなる第2の部品6bの装飾部の上端が第1の材料からなる第1の部品6aの装飾部を貫通しかつ上に突出する装飾部2を有する。次に、ベゼルを形成するため、従来の様式で、スプルー9を切断し、ベゼルの内径部を中空にして図7aの物品を生成する。
【0030】
製造方法は、物品が2つの別個の材料を含むように示しているが、異なる色のいくつかの装飾部を生成する場合、3つ、4つ等の別個の材料を含む物品とし得る。
【0031】
本発明は、本製造方法から得られる物品にも関する。
【0032】
上記(図7a~図7c)の方法により得られる多色物品の場合、物品1は、突出装飾部2を有する色の基部10を有し、突出装飾部2は、上側部品11と呼ばれる別の色の部品によって覆われ、上側部品11は、基部10の装飾部2と相補形状の凹部7を備え、上側部品11は、凹部7を通過する装飾部2が上側部分11上に突出する状態になることにより、基部10と入れ子になる。
【符号の説明】
【0033】
1 物品又はベゼル
2 装飾部
2a 装飾要素
3 射出成形型
4 彫込み部
5 彫込み部の突出及び/又は中空構造
5a 構造要素
6 グリーン体
6a 第1の材料を有する第1の部品
6b 第2の材料を有する第2の部品
6c 第1の部品の上面
6d 第2の部品の下面
7 凹部
8 開口
9 スプルー
10 物品の基部
11 物品の上側部品
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図6a
図7
図8