(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ゼロリセット機構を備える、周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構、及びそのような機構を備える、潜水時計等の計時器
(51)【国際特許分類】
G04B 47/06 20060101AFI20230906BHJP
G04B 19/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G04B47/06 E
G04B19/00 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094172
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム・ボスカロリ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナト・モンフェレール
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519613(JP,A)
【文献】特開平8-50029(JP,A)
【文献】特開2017-90443(JP,A)
【文献】特開2015-7613(JP,A)
【文献】特表2009-534674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04C 1/00 - 99/00
G04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)であって、前記
計時器機構は、
-周囲圧力の変動による作用下、機械的に変形するように構成された要素を備える周囲圧力測定デバイス(20)と、
-周囲圧力の変動による作用下で回転するように、前記周囲圧力測定デバイス(20)に運動学的に接続する第1の車組立体(31)と、
-測定圧力表示列(41)に運動学的に接続する測定圧力指示器機関(44)を備える測定圧力指示器機構(40)と
を備え、前記計時器機構(1、1’)は、
-前記第1の車組立体(31)と分離可能な接続であるように構成した第2の車組立体(33)であって、前記第2の車組立体(33)は、前記第2の車組立体(33)が前記第1の車組立体(31)と結合している際、圧力の変動による作用下、前記第1の車組立体(31)の回転によって回転し、前記第2の車組立体(33)は、前記測定圧力指示器機構(40)の前記測定圧力表示列(41)に運動学的に接続する、第2の車組立体(33)と、
-前記測定圧力指示器機関(44)を基準位置に位置させるゼロリセット機構(100)と
を備え、前記ゼロリセット機構(100)は、前記測定圧力指示器機関(44)を前記基準位置に位置させるように、前記第1の車組立体(31)から前記第2の車組立体(33)を分離し、前記第1の車組立体(31)に対する前記第2の車組立体(33)の相対位置を修正するように構成することを特徴とする、計時器機構(1、1’)。
【請求項2】
前記第2の車組立体(33)は、前記第1の車組立体(31)と前記第2の車組立体(33)との間に摩擦トルクが存在するように、前記第1の車組立体(31)と摩擦により組み付けることを特徴とする、請求項1に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項3】
前記ゼロリセット機構(100)は、
-前記第1の車組立体(31)の角度位置を遮断するように構成した遮断機構(120)と、
-駆動トルクが、前記第1の車組立体(31)と前記第2の車組立体(33)との間に存在する摩擦トルクを超えた際、前記測定圧力指示器機関(44)を前記基準位置に配置させるように、前記第2の車組立体(33)に前記駆動トルクを加え、前記第1の車組立体(31)と前記第2の車組立体(33)との間の相対位置を修正するように構成した駆動機構(130)と
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項4】
前記ゼロリセット機構(100)は、ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)を備え、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)は、ユーザが作動することができ、枢動体(11)回りに回転可能であり、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)は、第1の角度段階の間、前記遮断機構(120)を作動させ、次に、第2の角度段階の間、前記駆動機構(130)を作動させるように構成することを特徴とする、請求項3に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項5】
前記遮断機構(120)は、
-前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)と協働し、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)の作用下、運動状態になるゼロリセット・レバー(60)と、
-前記ゼロリセット・レバー(60)によって運動状態になる遮断レバー(70)と
を備え、前記遮断レバー(70)は、前記第1の車組立体(31)の回転が遮断されない静止位置と、前記第1の車組立体(31)の回転が遮断される遮断位置の間で可動であることを特徴とする、請求項4に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項6】
前記遮断レバー(70)は、遮断ビーク(71)を備え、前記遮断ビーク(71)は、前記第1の車組立体(31)と嵌合する遮断列(80)の歯部の2つの連続する歯の間への挿入、及び前記遮断列(80)の角度位置の係止に適合することを特徴とする、請求項5に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項7】
前記遮断レバー(70)の前記遮断ビーク(71)及び前記遮断列(80)の歯部は、前記遮断列(80)に接線力が加えられた際、前記遮断列(80)の係止を保証する外形を有することを特徴とする、請求項6に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項8】
前記ゼロリセット・レバー(60)は、レバー・ビーク(63)を備え、前記レバー・ビーク(63)は、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)の第1の角度段階の間、前記遮断レバー(70)を遮断位置に転換し、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)の第2の角度段階の間、前記遮断レバー(70)を遮断位置で保持するように構成することを特徴とする、請求項5に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項9】
前記遮断レバー(70)は、前記遮断レバー(70)を静止位置に再配置するように構成した戻し機関(73)を備えることを特徴とする、請求項5に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項10】
前記駆動機構(130)は、
-平衡位置(136)を有するゼロリセット・ハートピース(132)であって、前記平衡位置は、前記測定圧力指示器機関(44)の基準位置に対応する、ゼロリセット・ハートピース(132)と、
-前記ゼロリセット・ハートピース(132)を前記平衡位置(136)に再配置するように構成したゼロリセット・ハンマ(131)と
を備えることを特徴とする、請求項3に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項11】
前記駆動機構(130)は、前記測定圧力指示器機構(40)に運動学的に接続する駆動車組立体(133)を備え、前記ゼロリセット・ハートピース(132)は、前記駆動車組立体(133)と一体であり、前記ハンマ(131)の作用を通じて前記ゼロリセット・ハートピース(132)を前記平衡位置(136)に配置すると、前記第1の車組立体(31)に対する前記第2の車組立体(33)の相対位置を修正し、前記測定圧力指示器機関(44)を前記基準位置に位置させることを特徴とする、請求項10に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項12】
前記ゼロリセット機構(100)は、ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)を備え、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)は、ユーザが作動することができ、枢動体(11)回りに回転可能であり、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)は、第1の角度段階の間、前記遮断機構(120)を作動させ、次に、第2の角度段階の間、前記駆動機構(130)を作動させるように構成し、前記ハンマ(131)は、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)と一体であることを特徴とする、請求項10に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項13】
前記ゼロリセット機構(100)は、保持機関(56)を備え、前記保持機関(56)は、保持力を前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)に与え、前記保持力を超える力が前記保持機関(56)上に加えられた際に弾性変形するように構成することを特徴とする、
請求項4又は請求項5に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項14】
前記保持機関(56)は、座屈によって弾性変形するように構成した弾性部分(58)を備えることを特徴とする、
請求項13に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項15】
前記保持機関(56)は、前記ゼロリセット・レバー(60)と協働することを特徴とする、
請求項5を引用する場合の請求項13に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1、1’)。
【請求項16】
計時器機構(1’)は、最大圧力表示列(224)を備える最大圧力指示機構(220)を備え、前記最大圧力表示列(224)は、最大圧力表示車(221)を備え、前記最大圧力指示機構(220)は、前記最大圧力表示車(221)と一体の最大圧力指示器機関(223)を備え、前記駆動機構(130)は、周囲圧力が増大する間、前記最大圧力表示列(224)を徐々に駆動するように構成することを特徴とする、
請求項3に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項17】
前記駆動機構(130)は、
-心棒(135)と一体であり、前記測定圧力表示列(41)と嵌合する駆動車組立体(133)と、
-前記駆動車組立体(133)の前記心棒(135)回りに自由に組み付けた受歯車組立体(232)と、を備え、前記受歯車組立体(232)は、前記最大圧力表示列(224)と嵌合し、前記駆動車組立体(133)は、周囲圧力が増大する間、前記受歯車組立体(232)を駆動するように構成することを特徴とする、請求項16に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項18】
前記駆動機構(130)は、前記駆動車組立体(133)と一体の駆動ピン(234)を備え、前記駆動ピン(234)は、前記受歯車組立体(232)内に配置した開口(235)と協働することを特徴とする、請求項17に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項19】
前記計時器機構(1’)は、前記最大圧力表示列(224)の前進ごとに位置を割り送る割送り機構(240)を備え、前記割送り機構(240)は、割送り車組立体(243)と協働する遮断機関(241)を備えることを特徴とする、請求項16に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項20】
前記割送り車組立体(243)は、
第一の歯車列T1
又は第2の歯車列T2によって前記最大圧力表示車(221)に運動学的に接続し、前記最大圧力表示車(221)と前記割送り車組立体(243)との間の前記
第一の歯車列T1
又は第2の歯車列T2の歯車比は、増倍比であることを特徴とする、請求項19に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項21】
前記割送り車組立体(243)は、
非対称歯部(248)を備える割送り歯車(244)を備え、前記遮断機関(241)は、前記割送り歯車(244)の前記非対称歯部(248)と協働することを特徴とする、請求項19に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項22】
前記遮断機関(241)は、前記ゼロリセット
機構(100)によって分離するように構成した分離可能遮断機関であることを特徴とする、請求項19に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項23】
前記ゼロリセット機構(100)によって分離するように構成した分離可能遮断機関である遮断機関(241)は、前記ゼロリセット・レバー機関コマンド(50)によって分離されるように構成することを特徴とする、
請求項4に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項24】
前記割送り機構(240)は、前記遮断機関(241)が分離された際、戻し要素(247)の作用下、前記最大圧力表示列(224)の再配置を保証するように構成した戻し機関(249)を備えることを特徴とする、請求項22に記載の周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構(1’)。
【請求項25】
請求項1に記載の計時器機構(1、1’)を備える深度計。
【請求項26】
請求項1に記載の計時器機構(1、1’)を備える高度計。
【請求項27】
請求項1に記載の計時器機構(1、1’)を備える測時器ムーブメント。
【請求項28】
請求項27に記載の測時器ムーブメントを備える、
計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、物理変数に関係する情報、例えば周囲圧力を測定し、指示器機関により指示する計時器機構に関し、計時器機構は、ゼロリセット機構を備える。
【0002】
本発明は、より詳細には、周囲圧力に関係する情報を指示し、周囲圧力測定デバイスを備える計時器機構に関し、周囲圧力測定デバイスは、この圧力、又はこの圧力と同等の変数(情報)を表示することを意図する指示器機関に関連付けられ、計時器機構は、指示器機関のゼロリセット機構を備える。
【0003】
本発明は、周囲圧力に関係する情報を指示するそのような計時器機構を備える測時器ムーブメントにも関する。
【0004】
本発明は、そのような計時器機構を一体化する深度計にも関する。
【0005】
本発明は、そのような計時器機構を一体化する高度計又は気圧計にも関する。
【0006】
本発明は、そのような計時器機構を備える測時器ムーブメントを備える潜水時計又は高度計時計等の計時器にも関する。
【背景技術】
【0007】
周囲圧力を測定する深度計又は計時器の分野において、周囲圧力測定デバイスを備える機構が公知であり、この周囲圧力測定デバイスは、周囲圧力又はこの周囲圧力に相当する情報を表示することが意図される指示器機関に関連付けられる。これらの計時器は、潜水時計として最も頻繁に使用される。
【0008】
そのような深度計又は潜水時計は、第2の指示器機関により、ダイバーの瞬間的な深度、及びある時はダイバーが到達した最大深度を指示することを可能にする。これらのデータは、浮上中の停止継続時間及び停止深度を決定するので、ダイバーにとって特に重要である。したがって、ユーザにとってこれらのデータが正確であることが重要である。
【0009】
しかし、現在の潜水時計は、もっぱら潜水中に装着することを意図するものではなく、水上、特に様々な旅行の間、海面から様々な高度で装着される場合がある。
【0010】
たしかに、周囲圧力測定デバイスを備えるそのような潜水時計は、高度の変動又は気象条件の変化のために、大気圧の変動にも反応する。周囲の大気圧が修正されると、理論上のゼロ値周囲で測定圧力指示器機構も変位させる。
【0011】
潜水時計及び深度計は、従来、エラストマ封止体により封止され、エラストマ封止体は、液体、並びに特に、周囲圧力測定デバイスを備える潜水時計及び深度計の様々な使用圧力に耐えるように寸法決定される。封止体は、ヘリウム又は水素等のガスへの透過性を改善するための開発対象となっているが、経時的には、かなり制限された方法でさえ、ガスへの透過性が依然としてある。
【0012】
したがって、例えば、高地での数日の旅行中、潜水時計又は深度計の内部に行き渡る圧力以外の周囲大気圧に長期間露出される間、水素粒子が封止体を通過し、次に、酸素原子がより緩やかに通過することになり、潜水時計又は深度計の内部と外部との間の圧力が再平衡化される。この圧力の再平衡化により、圧力指示器機関は、理論上のゼロの指示器(指針)に相対する基準位置に緩やかに戻る。
【0013】
潜水時計又は深度計の内部と外部との間の圧力が再平衡化されるこの現象は、巻真又はプッシュピースの様々な操作によっても加速し得る。
【0014】
そのような圧力の再平衡化の後、ユーザが、山岳地帯への長期間の滞在後、例えば潜水の実施を目的として海水面に戻った場合、計時器又は深度計の内部と外部との間に差圧があり、したがって、圧力指示器機関の理論上のゼロに不正確な較正があり、この結果、潜水中の瞬間深度が誤って測定される。圧力の再平衡化を開始するには、数日間待つ以外、ユーザに他の解決策がない。
【0015】
この正確さの欠如は、例えば、特にデジタル深度計によってもたらされる正確さに直面するユーザにとって、現在、許容困難である。
【0016】
これらの欠点を改善するため、設計者等は、概して、目盛りの理論上のゼロに対する指示器機関の整合の欠陥を隠すように、圧力の目盛りに表示トリックを使用している。この表示トリックとは、理論上のゼロの指針を、拡張されたゼロ領域と代えることであり、この拡張されたゼロ領域は、周囲圧力のわずかな変動の間、圧力指示器機関の起こり得る位置の変動をカバーするように文字板上に配置される角度区分を形成する。
【0017】
しかし、この表示トリックは、潜水中の実際の周囲圧力を正確に指示することを可能にするものではない。というのは、指示される圧力と、実際の周囲圧力との間にずれが存在する可能性があるためである。このことは、前述したこの情報の重要性を考慮に入れると、問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
この背景において、本発明は、周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構を提案し、計時器機構は、要求に応じて周囲圧力指示器機関をゼロにリセットするゼロリセット機構を備え、上記で挙げた少なくとも1つの問題を解決する、特に、潜水前の周囲圧力指示器機関に対する表示及び較正の欠陥を克服することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明による計時器機構は、革新的な技術解決策を提案し、高まりつつあるユーザからの正確さに対する要件を満たすことを可能にする。本発明による計時器機構は、要求に応じて、潜水の実施前、測定される周囲圧力を指示する機関をリセットし、周囲大気圧の変動による、計時器の内部と外部との間の相対圧力に関する既存の問題を克服することを可能にする。
【0020】
この問題を改善するため、本発明は、有利には、測定圧力指示器機関の機械的な再割送りを使用することを提案し、巻真又はプッシュピースの使用によって生じる、透過性の液体によりガスの出入りが可能になるあらゆる封止問題を克服することを可能にする。
【0021】
この目的で、本発明の一目的は、周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構であり、前記機構は、
-周囲圧力の変動による作用下、機械的に変形するように構成された要素を備える周囲圧力測定デバイスと、
-周囲圧力の変動による作用下で回転するように、周囲圧力測定デバイスに運動学的に接続する第1の車組立体と、
-測定圧力表示列に運動学的に接続する測定圧力指示器機関を備える測定圧力指示器機構と
を備え、前記計時器機構は、
-第1の車組立体と分離可能に接続するように構成した第2の車組立体であって、第2の車組立体は、第2の車組立体が第1の車組立体と結合している際、周囲圧力の変動による作用下、第1の車組立体の回転によって回転し、前記第2の車組立体は、測定圧力指示器機構の測定圧力表示列に運動学的に接続する、第2の車組立体と、
-要求に応じて、前記測定圧力指示器機関を基準位置に配置するゼロリセット機構と
を備え、前記ゼロリセット機構は、前記測定圧力指示器機関を前記基準位置に配置するように、第1の車組立体から第2の車組立体を分離し、第1の車組立体に対する第2の車組立体の相対位置を修正するように構成される。
【0022】
本発明による機構のために、各潜水前、要求に応じて測定圧力指示器機関をゼロにリセットし、潜水中の周囲圧力測定の正確さを最適化することが可能であり、これにより、特に、潜水停止深度におけるいくつかの不確実さを回避することを可能にする。
【0023】
上記の段落で述べた特徴とは別に、本発明による計時器は、個々に考慮される、又は全ての技術的に可能な組合せに従って、以下からの1つ又は複数の更なる特徴を有し得る:
-第2の車組立体は、第1の車組立体と第2の車組立体との間に摩擦トルクが存在するように、前記第1の車組立体と摩擦により組み付けされる、
-ゼロリセット機構は、
〇第1の車組立体の角度位置を遮断するように構成した遮断機構と、
〇駆動トルクが、第1の車組立体と第2の車組立体との間に存在する摩擦トルクを超えた場合、前記測定圧力指示器機関を前記基準位置に配置するように、前記第2の車組立体に駆動トルクを加え、第1の車組立体と第2の車組立体との間の相対位置を修正するように構成した駆動機構と
を備え、
-前記ゼロリセット機構は、ゼロリセット機関コマンドを備え、ゼロリセット機関コマンドは、ユーザが作動させることができ、枢動体回りに回転可能であり、ゼロリセット機関コマンドは、第1の角度段階の間、遮断機構を作動させ、次に、第2の角度段階の間、駆動機構を作動させるように構成される、
-前記遮断機構は、
〇前記ゼロリセット機関コマンドと協働し、ゼロリセット機関コマンドの作用下、運動状態になるゼロリセット・レバーと、
〇前記ゼロリセット・レバーによって運動状態になる遮断レバーと
を備え、前記遮断レバーは、第1の車組立体の回転が遮断されない静止位置と、第1の車組立体の回転が遮断される遮断位置の間で可動である、
-遮断レバーは、遮断ビークを備え、遮断ビークは、第1の車組立体と嵌合する遮断列の歯部の2つの連続する歯の間への挿入、及び前記遮断列の角度位置の係止に適合される、
-遮断レバーの遮断ビーク及び遮断列の歯部は、遮断列に接線力が加えられた際に前記遮断列の係止を保証する外形を有する、
-ゼロリセット・レバーは、レバー・ビークを備え、レバー・ビークは、ゼロリセット機関コマンドの第1の角度段階の間、前記遮断レバーを遮断位置に転換し、ゼロリセット機関コマンドの第2の角度段階の間、遮断レバーを遮断位置で保持するように構成される、
-遮断レバーは、遮断レバーをその静止位置に再配置するように構成した戻し機関を備える、
-駆動機構は、
〇平衡位置を有するゼロリセット・ハートピースであって、前記平衡位置は、測定圧力指示器機関の基準位置に対応する、ゼロリセット・ハートピースと、
〇前記ゼロリセット・ハートピースをその平衡位置に再配置するように構成したゼロリセット・ハンマと
を備える、
-駆動機構は、測定圧力指示器機構に運動学的に接続する駆動車組立体を備え、ゼロリセット・ハートピースは、駆動車組立体と一体であり、ハンマの作用を通じてゼロリセット・ハートピースを平衡位置に配置すると、第1の車組立体に対する第2の車組立体の相対位置を修正し、前記測定圧力指示器機関を前記基準位置に配置する、
-ハンマは、ゼロリセット機関コマンドと一体である、
-ゼロリセット機構は、保持機関を備え、保持機関は、保持力を前記ゼロリセット機関コマンドに与え、保持力を超える力が前記保持機関上に加えられた際に弾性変形するように構成される、
-保持機関は、座屈によって弾性変形するように構成した弾性部分を備える、
-保持機関は、前記ゼロリセット・レバーと直接協働する、
-本発明による機構は、最大圧力表示列を備える最大圧力指示機構を備え、最大圧力表示列は、最大圧力表示車を備え、前記最大圧力指示機構は、最大圧力表示車と一体の最大圧力指示器機関を備え、前記駆動機構は、周囲圧力が増大する間、最大圧力表示列を徐々に駆動するように構成される、
-駆動機構は、
〇心棒と一体であり、測定圧力表示列と嵌合する駆動車組立体と、
〇駆動車組立体の心棒回りに自由に組み付けられる受歯車組立体と
を備え、受歯車組立体は、最大圧力表示列と嵌合し、駆動車組立体は、周囲圧力が増大する間、受歯車組立体を駆動するように構成される、
-駆動機構は、駆動車組立体と一体の駆動ピンを備え、駆動ピンは、受歯車組立体内に配置した開口と協働する、
-前記計時器機構は、最大圧力表示列の前進ごとに位置を割り送る割送り機構を備え、割送り機構は、割送り車組立体と協働する遮断機関を備える、
-割送り車組立体は、歯車列T1、T2によって最大圧力表示車に運動学的に接続し、最大圧力表示車と割送り車組立体との間の歯車列T1、T2の歯車比は、増倍比である、
-割送り車組立体は、割送り歯車を備え、割送り歯車は、非対称歯部、好ましくは小臼歯歯部を備え、前記遮断機関は、割送り歯車の非対称歯部と協働する、
-前記遮断機関は、ゼロリセット機構によって分離されるように構成した分離可能遮断機関である、
-遮断機関は、ゼロリセット機関コマンドによって分離されるように構成される、
-割送り機構は、遮断機関が分離している際、戻し要素の作用下、最大圧力表示列の再配置を保証するように構成した戻し機関を備える。
【0024】
本発明は、本発明によるそのような計時器機構を一体化する深度計、高度計又は気圧計にも関する。
【0025】
本発明は、本発明によるそのような計時器機構を備える、機械式又は電気機械式測時器ムーブメントを備える計時器にも関する。
【0026】
好ましくは、計時器は、潜水時計である。
【0027】
本発明の目的、利点及び特徴は、以下の図面を参照する以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】周囲圧力に関係する情報を指示する、本発明による計時器機構の実施形態の第1の例の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す本発明による計時器機構の実施形態の例の概略上面図である。
【
図3】
図1に示す本発明による計時器機構の実施形態の例の概略底面図である。
【
図4a】本発明による計時器機構の実施形態の第1の例の遮断機構の一部分の様々な位置の図である。
【
図4b】本発明による計時器機構の実施形態の第1の例の遮断機構の一部分の様々な位置の図である。
【
図5】周囲圧力に関係する情報を指示する、本発明による計時器機構の実施形態の第2の例の斜視図であり、計時器機構は、最大圧力指示機構を更に備える。
【
図6】
図5に示す本発明による計時器機構の実施形態の第2の例の概略上面図である。
【
図7】
図5に示す本発明による計時器機構の実施形態の第2の例の概略底面図である。
【
図8】
図5に示す本発明による計時器機構の実施形態の例の割送り車組立体の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面の全てにおいて、共通の要素は、別段に規定されていない限り、同じ参照番号が記載される。
【0030】
概して、測時器の分野及び本出願において、心棒という用語は、歯車又はかなを全体的に支持する円筒形状を有する部品を指定する。
【0031】
実施形態の第1の例
周囲圧力に関係する情報を指示する、本発明による計時器機構1の実施形態の第1の例を
図1から
図3に示す。
【0032】
図1は、周囲圧力に関係する情報を指示する、本発明による計時器機構1の斜視図である。
【0033】
図2及び
図3はそれぞれ、計時器機構1の実施形態の第1の例の上面図及び底面図である。
【0034】
図1から
図3を参照すると、周囲圧力に関係する情報を指示する、本発明による計時器機構1は、第1の車組立体31を備え、第1の車組立体31は、枠(図示せず)上に枢動可能に組み付けられる第1の心棒30と一体である。第1の車組立体31は、周囲圧力測定デバイス20に運動学的に接続される。
【0035】
周囲圧力測定デバイス20は、周囲圧力の変動による作用下、機械的に変形するように構成された要素(図示せず)を備える。
【0036】
周囲圧力の変動による作用下、機械的に変形するように構成された要素は、例えば、フィーラスピンドルを運動状態にする変形可能平坦メンブレンである。
【0037】
周囲圧力の変動による作用下、機械的に変形するように構成された要素は、周囲圧力に応じて圧縮又は膨張するアネロイド筐体を備えるアネロイド・カプセルであってもよい。
【0038】
周囲圧力測定デバイス20は、比較的慣例的なものであるため、本発明による計時器機構1のより良好な可読性及び理解のため、
図1から
図3では詳細に図示しない。
【0039】
周囲圧力測定デバイス20は、周囲圧力の変動による作用下、機械的に変形するように構成した要素(変形可能平坦メンブレン又はアネロイド・カプセル)の変位が、伝達機構により、第1の心棒30の回転の形態で第1の車組立体31に伝達され、第1の車組立体31、したがって、第1の心棒30の角度位置が、周囲圧力測定デバイス20によって測定される周囲圧力に応じて変化するように構成される。
【0040】
例として、周囲圧力測定デバイス20の伝達機構は、運動連鎖の端部に、
図3でより詳細に見えるラック21を備えることができ、ラック21は、第1の車組立体31、又は第1の車組立体31と嵌合する中間車と直接嵌合する。
【0041】
より詳細には、
図1から
図3に示すように、第1の車組立体31は、かな22を備え、かな22は、第1の心棒30と一体であり、周囲圧力測定デバイス20の伝達機構のラック21と嵌合する。
【0042】
したがって、かな22と一体である上記の第1の車組立体31は、周囲圧力測定デバイス20によって測定される周囲圧力に応じて角度が移動する。
【0043】
周囲圧力に関係する情報を指示する、本発明による計時器機構1は、第1の車組立体31と分離可能に接続する第2の車組立体33も備える。
【0044】
第2の車組立体33は、第2の車組立体33が第1の心棒30の回転形状軸に沿って第1の車組立体31からずれるように、第1の車組立体31に重なる。図示の実施形態の例では、第2の車組立体33は、第1の車組立体31の下に配置される。
【0045】
例として、第2の車組立体33は、第1の車組立体31、より詳細には第1の車組立体31が組み付けられる第1の心棒30に摩擦接続され、第1の車組立体31と第2の車組立体33との間にゼロではない摩擦トルクがあるようにする。
【0046】
したがって、2つの車組立体31と33との間に存在する摩擦トルクを超えるトルクが車組立体31、33の一方に加えられない限り、第2の車組立体33は、周囲圧力の変動による作用下、周囲圧力測定デバイス20によって、第1の車組立体31と同じように回転するように構成される。この構成では、第2の車組立体33は、第1の車組立体31と嵌合すると言う。
【0047】
したがって、通常動作において、即ち、次に説明するゼロリセット機構100による外部作用がなければ、摩擦により組み付けられる第1の車組立体31及び第2の車組立体33は、第1の車組立体31の回転により、同じ回転角度で第2の車組立体33も回転させるように一体に構成される。
【0048】
計時器機構1は、第2の車組立体33に運動学的に連結される測定圧力指示器機構40も備える。
【0049】
より詳細には、測定圧力指示器機構40は、第2の車組立体33に運動学的に連結される測定圧力表示列41を備える。測定圧力表示列41は、例えば、枠上に枢動可能に組み付けられる第2の心棒43と一体の測定圧力表示車42と、第2の心棒43上に組み付けられる、ユーザから見える測定圧力指示器機関44、例えば、針とを備える。
【0050】
図1から
図3に示す実施形態の例では、測定圧力表示車42は、第2の車組立体33と直接嵌合する。
【0051】
しかし、必要性及びムーブメントの構成に応じて、測定圧力表示列41は、第2の車組立体33と、測定圧力指示器機関44を支持する測定圧力表示車42との間に配置される更なる中間車組立体を備えることもできる。
【0052】
測定圧力指示器機構40は、文字板上に配置される目盛り(図示せず)と調和して、測定圧力指示器機関44の回転を可能にするように構成される。この測定圧力指示器機関44の回転は、圧力変動に応じて線形であっても、非線形であってもよい。したがって、文字板上の目盛りは、測定圧力指示器機関44の線形回転又は非線形回転に応じて適合される。
【0053】
計時器機構1は、ユーザの要求により、測定圧力指示器機関44の位置を較正、修正し、必要な場合、測定圧力指示器機関44を基準位置に戻すゼロリセット機構100も備え、基準位置は、例えば、理論上のゼロを指示する。
【0054】
以下からわかるように、ゼロリセット機構100は、要求に応じて、周囲圧力測定デバイス20に運動学的に接続される第1の車組立体31と、測定圧力指示器機構40に運動学的に接続される第2の車組立体33との間の相対位置(又は割送り)を修正するように構成される。
【0055】
この目的で、ゼロリセット機構100は、ゼロリセット・レバー機関コマンド50を備え、ゼロリセット・レバー機関コマンド50は、(
図1に見える)プッシュピース又は作動スタッド52を介してユーザが操作することができ、測定圧力指示器機関44の角度位置のゼロリセットが、ユーザの要求により実施されるようにする。
【0056】
ゼロリセット・レバー機関コマンド50は、枠と一体の第1の心棒11回りに枢動可能に組み付けられる。
【0057】
ゼロリセット機構100は、
-ゼロリセット・レバー機関コマンド50によって作動され、要求に応じて、ゼロリセット・レバー機関コマンド50を作動する間、第1の車組立体31の角度位置を遮断するように構成される遮断機構120と、
-ゼロリセット・レバー機関コマンド50によって作動され、要求に応じて、第2の車組立体33の相対位置を修正し、ゼロリセット機能を実施するように基準位置に測定圧力指示器機関44を再配置するように構成される駆動機構130と
を更に備える。
【0058】
遮断機構120は、枠と一体の第2の枢動体12回りに枢動可能に組み付けられるゼロリセット・レバー60を備える。ゼロリセット・レバー60は、例えば、第1のレバー・フィンガピース61によりゼロリセット・レバー機関コマンド50と協働するように構成され、第1のレバー・フィンガピース61は、
図1から
図3に示すように、ゼロリセット・レバー機関コマンド50の一部分を押圧するか、又はゼロリセット・レバー機関コマンド50の本体と一体のピン51を押圧する。
【0059】
ゼロリセット・レバー60は、第1の戻し機関55により、ゼロリセット・レバー機関コマンド50に対して押圧された状態にされ、第1の戻し機関55は、例えば、第2のレバー・フィンガピース62でゼロリセット・レバー60の一部分に作用する。
【0060】
ゼロリセット・レバー機関コマンド50と接触する第1のレバー・フィンガピース61は、第1の戻し機関55と接触する第2のレバー・フィンガピース62よりも第2の枢動体12から径方向に離れていることを留意されたい。
【0061】
図1から
図3に示す実施形態の例によれば、第1の戻し機関55は、ばね羽根によって形成され、ばね羽根は、枠と一体の一部分54と、ゼロリセット・レバー60を静止位置に戻すように構成した弾性部分53とを備える。第1のレバー・フィンガピース61により、ユーザがゼロリセット・レバー機関コマンド50に圧力を加えない場合、ゼロリセット・レバー60は、このゼロリセット・レバー機関コマンド50も静止位置に戻す。
【0062】
遮断機構120は、枠と一体の第3の枢動体13回りに枢動可能に組み付けられる遮断レバー70と、遮断列80とを更に備え、遮断列80は、例えば、遮断車組立体81と中間遮断車組立体91とを備える。
【0063】
遮断機構70は、ゼロリセット・レバー60によって直接作動され、ゼロリセット・レバー機関コマンド50を作動する間、第1の車組立体31の回転の遮断を可能にするように構成される。遮断レバー70及びゼロリセット・レバー60は、第1の車組立体31の回転の遮断が、駆動機構130の作動の前に生じるように構成され、第1の車組立体31に対する第2の車組立体33の角度位置を修正することを可能にする。
【0064】
したがって、本発明によるゼロリセット機構100は、第1の車組立体31の回転を遮断し、次に、引き続き、可能性としては、駆動機構130を介して、第2の車組立体33を駆動することを可能にするように構成される。
【0065】
この目的で、ゼロリセット・レバー60は、レバー・ビーク63を備え、レバー・ビーク63は、ヒール72を形成する遮断レバー70の一部分と協働する。
【0066】
図4a及び
図4bは、それぞれの運動を理解可能にするように、遮断機構120を作動する間の遮断レバー70及びゼロリセット・レバー60の様々な位置を示す。
【0067】
静止位置において、即ち、遮断機構120が稼働位置にない場合、
図4aにより詳細に示すように、レバー・ビーク63は、ヒール72の上面と接触する。
【0068】
ヒール72及びレバー・ビーク63の形状は、
図4bに詳細に示すように、ゼロリセット・レバー60のわずかな枢動により、遮断機構120を稼働遮断位置に急速に転換することを可能にする。
【0069】
このため、静止位置において、レバー・ビーク63と遮断レバー70のヒール72の上面との間の接触は、ゼロリセット・レバー60の第1の枢動度でレバー・ビーク63とヒール72の上面との間の摺動がほとんどないように、明らかである。有利には、静止位置において、レバー・ビーク63と接触するヒール72の上面は、レバー・ビーク63の端部に対して実質的に接線方向に向けられる。
【0070】
遮断レバー70は、遮断レバー70の第1の端部の末端部分を形成する遮断ビーク71を備え、遮断ビーク71は、遮断レバー70をその遮断位置に転換する間、遮断車組立体81の歯部の2つの歯の間に入るように適合される。
【0071】
遮断ビーク71は、詰まることなく、遮断車組立体81の歯部の2つの歯の間に容易に入り、接線力又はトルクが遮断車組立体81上に加えられた際に前記遮断車組立体81の係止の保証に適合する形状を有する。
【0072】
好ましくは、動作間隙は、ゼロリセット・レバー機関コマンドを作動する間、要素に損傷を与えずに遮断ビーク71の挿入及び引出しを促進するように、遮断ビーク71と、遮断車組立体81の歯部の歯との間に構成される。この目的で、遮断ビーク71の幅は、遮断車組立体81の歯部の2つの連続する歯の間隔よりも小さい。
【0073】
好ましくは、遮断ビーク71の形状及び遮断車組立体81の歯部の形状は、遮断レバー70上に後退力又は戻し力が生成されない、したがって、トルクが遮断車組立体81上に加えられた際に遮断車組立体81の歯部の遮断ビーク71を外す危険性がないように構成される。例として、遮断車組立体81は、例えば、NHS外形を有するサイクロイド歯部を有する。
【0074】
遮断ビーク71及び遮断レバー70の形状は、遮断位置において、遮断ビーク71が遮断車組立体81の歯部の歯底に接触しないように構成され、こうして、特定の動作間隙を保証し、機構の破損又は摩耗も防止する。
【0075】
上記で説明し、
図4aに示す位置から、ゼロリセット・レバー60の回転により、第3の枢動体13回りに遮断レバー70の枢動を生じさせ、レバー・ビーク63の端部を少しずつヒール72の丸端部に向かって摺動させ、徐々に、遮断ビーク71を遮断車組立体81の歯部の2つの歯の間に至らせる。
【0076】
遮断ビーク71が遮断車組立体81の歯部の2つの歯の間に配置されると、ヒール72の丸端部は、レバー・ビーク63の上面と摺動接触する。したがって、ゼロリセット・レバー60の更なる枢動は、遮断レバー70の更なる回転(又はこの場合、接触部品の表面状態及び/若しくは外形によるわずかな変動)を生じさせない。更に、ヒール72の丸端部上でレバー・ビーク63が摺動すると、遮断車組立体81の歯部の2つの歯の間で遮断ビーク71を遮断位置で保持することを可能にする。
【0077】
遮断レバー70は、第2の戻し機関73と協働し、遮断レバー70を静止位置に再配置し、ゼロリセット・レバー機関コマンド50を解放する間に遮断車組立体81の歯部から遮断ビーク71を外すことにも留意されたい。
【0078】
例として、第2の戻し機関73は、遮断レバー70の本体と一体であり、遮断レバー70の転換中、枠に対して又は例えばピン74等の枠と一体の要素に対して応力を加えられる。ゼロリセット・レバー機関コマンド50を解放する間、応力下の第2の戻し機関73は、遮断レバー70をその非係合位置、即ち、静止位置に再配置する。
図4aに示すこの静止位置において、遮断ビーク71は、遮断車組立体81の歯部に係合されない。
【0079】
遮断車組立体81は、枠上に枢動可能に組み付けられる第3の心棒83と一体である。遮断車組立体81は、遮断車84と、遮断車84と一体の遮断かな85とを備える。
【0080】
遮断車84は、複数の歯を備える歯部を有する。遮断レバー70の遮断ビーク71の形状は、遮断車84の歯部の歯の形状との協働に適合され、遮断ビーク71は、遮断車84の歯部の2つの歯の間に入ることが可能であるように構成され、遮断車組立体81の回転が固定されるようにする。
【0081】
遮断車組立体81のかな85は、中間遮断車組立体91、より詳細には、中間遮断車組立体91の中間遮断車92と嵌合する。
【0082】
中間遮断車組立体91は、枠上に枢動可能に組み付けられる第4の心棒93と一体であり、第4の心棒93と一体の中間遮断車92と、やはり第4の心棒93と一体のかな94とを備える。中間遮断車組立体91のかな94は、第1の車組立体31と嵌合する。
【0083】
したがって、遮断車84の回転の遮断は、第1の車組立体31の回転、及び周囲圧力測定デバイス20のラック21の位置を一時的に固定する。
【0084】
たった今上記で説明した、第1の車組立体31の角度位置の遮断を可能にする遮断機構120以外に、ゼロリセット機構100は、駆動機構130も備え、測定圧力指示器機関44を初期基準位置に再配置し、ゼロリセット機能を実施することを可能にする。
【0085】
この目的で、駆動機構130は、ゼロリセット・ハートピース132との協働が可能なゼロリセット・ハンマ131を備える。
【0086】
図1から
図3に示す実施形態の例では、ハンマ131は、ゼロリセット・レバー機関コマンド50と一体であり、ゼロリセット・レバー機関コマンド50の枢動により、ゼロリセット・ハートピース132の方向にハンマ131を直接移動させ、ハンマ131をゼロリセット・ハートピース132に衝突させるようにする。
【0087】
代替実施形態によれば、ハンマ131は、ゼロリセット・レバー機関コマンド50から分離し、ゼロリセット・レバー機関コマンド50によって、例えばレバーにより運動状態になる部品とし得る。
【0088】
遮断機構120の作動を意図し、ここではピン51によって表されるゼロリセット・レバー機関コマンド50の部分は、駆動機構130の作動を意図し、ここではハンマ131によって表される部分よりも枢動体11の枢動軸から径方向に離れていることに留意されたい。そのような構成は、特に、ゼロリセット・レバー機関コマンド50に対する同じ回転角度で、駆動機構130上よりも著しい作用を遮断機構120上で得ることを可能にし、遮断レバー70が、ハンマ131がゼロリセット・ハートピース132に衝突する前に実際にその遮断位置にあること、及び駆動機構130が測定圧力表示列41上に応力を付与することを確実にする。
【0089】
ゼロリセット・ハートピース132は、駆動車組立体133と一体であり、駆動車組立体133は、枠上に組み付けられた第5の心棒135と一体である。駆動車組立体133は、測定圧力表示車42と嵌合する駆動車134を備え、測定圧力表示車42は、第2の心棒43と一体であり、測定圧力指示器機関44を支持する。
【0090】
ゼロリセット・ハートピース132の形状は、駆動車組立体133の角度をハートピース132の安定平衡位置136上に再配置することを可能にし、駆動車組立体133のこの安定角度位置は、基準位置、例えば、測定圧力表示車42の理論上のゼロ、したがって、測定圧力指示器機関44の理論上のゼロに対応する。
【0091】
したがって、ゼロリセット・ハートピース132上への十分な力によるハンマ131の作用により、駆動車組立体133を上記の基準位置に効果的に再配置することを可能にする。駆動車組立体133は、測定圧力表示車42と嵌合し、駆動車組立体133の再配置により、測定圧力表示車42の基準位置、したがって、測定圧力指示器機関44の基準位置に再配置させる。
【0092】
ゼロリセット機構100の動作は、以下の通りである。
【0093】
ゼロリセット・レバー機関コマンド50の枢動の第1の角度段階に対応する、ゼロリセット・レバー機関コマンド50を作動させる第1の段階の間、ゼロリセット・レバー機関コマンド50の枢動により、ゼロリセット・レバー60の角度を移動させ、遮断レバー70のヒール72の上面に対するレバー・ビーク63の押圧を介して遮断レバー70を遮断位置に転換させる。したがって、遮断レバー70の遮断ビーク71は、遮断車組立体81の遮断車84の歯部の2つの歯の間に配置される。
【0094】
遮断車組立体81の回転は、ゼロリセット・レバー機関コマンド50の第1の作用度から急速に遮断される。あらゆる他の作用前のそのような遮断により、有利には、圧力測定デバイス20に接続する運動連鎖の様々な列における損傷を防止することを可能にする。
【0095】
この第1の角度段階の終了時に、レバー・ビーク63は、ヒール72の丸端部上でヒール72の転換点に近づき、ゼロリセット・レバー60の更なる枢動により、遮断レバー70、したがって、既に稼働位置にある遮断ビーク71の著しい更なる回転を生じさせないようにする。
【0096】
ゼロリセット・レバー機関コマンド50の第2の角度段階に対応する、ゼロリセット・レバー機関コマンド50を作動する第2の段階の間、ゼロリセット・レバー機関コマンド50の更なる枢動により、ゼロリセット・レバー60の回転を継続させる。しかし、ゼロリセット・レバー60と遮断レバー70との間の接触は、今や摺動しており、ヒール72の丸端部は、レバー・ビーク63の上面65と摺動接触する。したがって、この第2の角度段階の間、遮断レバー70は、遮断位置に保持される。
【0097】
この第2の角度段階により、ハンマ131をゼロリセット・ハートピース132と接触させることも可能にする。ゼロリセット・レバー機関コマンド50上に十分なエネルギーをもたらすことによって、ハートピース132は、ハンマ131が生成するトルクの作用下、安定平衡位置に戻される。このトルクは、概して、ハートピース132のゼロリセット・トルクと呼ばれる。したがって、この第2の角度段階は、駆動車組立体133を基準位置に再配置することを可能にする。基準位置は、ゼロリセット・ハートピース132の安定平衡位置に対応する。
【0098】
圧力測定デバイス20に運動学的に接続される第1の車組立体31の回転は、遮断機構120によって、特に遮断列80によって遮断され、遮断列80の回転は、遮断レバー70によって遮断され、駆動車組立体133の再配置は、測定圧力表示車42を基準位置に再配置し、回転が遮断された第1の車組立体31と、第2の車組立体33との間の相対位置を修正する作用を有し、第2の車組立体33は、第1の車組立体31に対して摩擦により組み付けられ、測定圧力表示車42を介して駆動車組立体133に運動学的に接続される。
【0099】
第1の車組立体31と第2の車組立体33との間のこの相対的な再配置は、一方で、第1の車組立体31の回転が遮断機構120によって遮断されることにより、もう一方で、駆動機構130によって第2の車組立体33に加えられるトルクが、これら2つの車組立体31、33の間に存在する摩擦トルクを超えることにより、可能である。したがって、この第2の角度段階において、2つの車組立体31、33は、瞬間的に分離し、新たに相対的に割り送られる。
【0100】
次に、測定圧力指示器機関44は、圧力測定デバイス20の稼働位置とは無関係に、要求に応じて較正される。したがって、本発明による計時器機構1は、測定デバイスによって測定される圧力の正確な指示に影響する大気圧の変動による、圧力差に関する問題を克服することを可能にする。
【0101】
本発明による計時器機構1は、特に、最初の深度数メートルからの潜水中、周囲圧力を表示する正確さを改善することを可能にする。
【0102】
ゼロリセット機構100は、保持機関56を更に備え、ゼロリセット機構100を固定し、駆動機構130の完全な稼働を保証する。保持機関56は、遮断機構120の稼働を可能にする一方で、駆動機構130の稼働を瞬間的に非稼働位置で保つ一方で、特定の力がゼロリセット・レバー機関コマンド50に加えられないように構成される。
【0103】
保持機関56は、機械的ヒューズと同様の動的挙動を有する、駆動機構130を保護する機関である。
【0104】
図1から
図3に示す実施形態の例では、保持機関56は、枠と一体の一部分57と、ゼロリセット・レバー機関コマンド50の作動に対して保持力を加えるように構成した弾性部分58とを備える。
【0105】
弾性部分58は、ゼロリセット・レバー60上に保持力を加え、保持力を超える力が弾性部分58上に加えられた際に変形するように構成される。
【0106】
ゼロリセット・レバー60は、例えば、ゼロリセット・レバー60の本体に対して突出するスタッド64を備える。スタッド64は、保持機関56の弾性部分58に対して押圧されることを意図する。弾性部分58は、スタッド64の軌道に実質的に接線方向に向けられ、弾性部分58が、ゼロリセット・レバー60、したがって、ゼロリセット・レバー機関コマンド50の枢動に対して保持力を生成するようにする。
【0107】
より詳細には、スタッド64は、保持機関56の弾性部分58の自由端に配置される保持切欠き59に対して押圧される。保持切欠き59は、保持面及び転換点を有し、転換点を越えると、保持機関59は、ゼロリセット・レバー60及びゼロリセット・レバー機関コマンド50の更なる迅速で明らかな転換を可能にし、したがって、駆動機構130を完全に作動させ、ゼロリセット・ハートピース132にハンマ131を接触する状態にすることを可能にする。
【0108】
保持切欠き59は、第1の角度段階の間、スタッド64が保持切欠き59で摺動でき、ゼロリセット・レバー60、したがって、遮断レバー70をその遮断位置(稼働位置)まで枢動可能にするように構成される。遮断レバー70がその稼働位置にある際、保持切欠き59の保持面は、ゼロリセット・レバー60のレバー・ビーク63に実質的に直交し、保持切欠き59が、ゼロリセット・レバー60の更なる転換に対して著しい反力を生成するようにする。この位置から解放し、保持切欠き59の転換点に到達させるには、ユーザは、ゼロリセット・レバー機関コマンド50上に更なる力を与え、座屈によって保持機関56の弾性部分58を弾性変形させなければならならず、弾性部分58の座屈による変形は、ゼロリセット・レバー60の枢動と相まって、保持面上でスタッド64が摺動し、保持切欠き59から解放し、横部分66に沿って摺動することを可能にする。
【0109】
したがって、保持力を無効にするようにユーザによって与えられるエネルギーは、全体として動的効果によって駆動機構130のトリガを保証することを可能にする。ゼロリセット機構100における保持機関56の存在は、ユーザによる不完全なゼロリセットの危険性を克服することを可能にする。
【0110】
保持機関56は、所定の閾値トルクがゼロリセット・レバー機関コマンド50上に加えられた際に、スタッド64が転換点に到達するように構成される。所定の閾値トルクは、弾性部分58が座屈する間、特定の弾性変形に依存し、保持切欠き59の形状によって、及びゼロリセット・レバー60の特定の枢動角度ではスタッド64をもはや保持しないことを可能にする。
【0111】
計時器機構1は、より詳細には
図3で見える、弾性戻し機関26と協働する戻しラック25も備え、ゼロリセット機構100の列に張力を加え、こうして、ゼロリセット機構100と圧力測定デバイス20との間の相対間隙をなくすようにする。
【0112】
戻しラック25は、かな22と嵌合し、弾性戻し機関26は、戻しラック25上、したがって、かな22上で作用し、特に、フィーラスピンドル及び変形可能メンブレン等の圧力測定デバイス20の様々な部品の間の永続的な接触を保証するようにする。
【0113】
実施形態の第2の例
図5から
図7は、本発明による、周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構1’の実施形態の第2の例を示す。
【0114】
より詳細には、
図5は、本発明による、周囲圧力に関係する情報を指示する計時器機構1’の実施形態の第2の例の斜視図であり、計時器機構1’は、最大圧力指示機構を更に備える。
図6は、計時器機構1’の実施形態の第2の例の上面図である。
図7は、
図5に示す、本発明による計時器機構の実施形態のこの第2の例の底面図である。
【0115】
図8は、計時器機構1’の実施形態の例の割送り車組立体の上面図である。
【0116】
この実施形態の第2の例では、計時器機構1’は、次に説明する特徴を除き、実施形態の第1の例と同一である。
【0117】
この本発明の第2の例では、計時器機構1’は、上記した要素の全てを備え、最大到達圧力を指示する機構200も備え、最大圧力指示機構200がゼロにリセットされない限り、例えば、1回又は複数の潜水の間に到達した最大深度の指示を可能にする。
【0118】
そのような最大圧力指示機構200は、最大圧力表示列224を備え、最大圧力表示列24は、枠上に枢動可能に組み付けられる心棒222と一体の少なくとも1つの最大圧力表示車221を備える。最大圧力表示列224は、測定圧力指示列41に運動学的に接続される。
【0119】
図5から
図7に示される実施形態の例では、最大圧力表示車221は、測定圧力表示車42と同軸に組み付けられ、2つの車221、42が重なるようにする。したがって、最大圧力表示車221の心棒222は、測定圧力表示車42の心棒43と同心である。しかし、本発明の文脈から逸脱することなく、最大圧力表示車221及び測定圧力表示車42が非同軸に配置可能であることも想定される。
【0120】
図5から
図7に示される実施形態の例では、最大圧力表示車221及び測定圧力表示車42は、機構の中心に対して中心に置かれる。しかし、概して時間情報を専用に指示する、測時器ムーブメントの中心領域から外側の圧力に関する情報を表示できるように、本発明による機構の中心に対して、特に、本発明による機構を一体化する測時器ムーブメントの中心に対して最大圧力表示車221及び測定圧力表示車42を偏心して配置可能であることも想定される。
【0121】
最大圧力表示車221は、心棒222上に一体に組み付けられる最大圧力指示器機関223、例えば針と一体である。
【0122】
最大圧力表示車221は、測定圧力表示列41によって、又は測定圧力表示列41に運動学的に接続される車組立体によって徐々に駆動することが可能である。
【0123】
この目的で、駆動機構130は、更に、上記した駆動車組立体133と、受歯車組立体232とを備え、受歯車組立体232は、駆動車組立体133の第5の心棒135回りに自由に組み付けられ、最大圧力表示車221と嵌合する。したがって、受歯車組立体232は、駆動車組立体133と同軸である。
【0124】
実施形態のこの第2の例では、駆動車組立体133は、圧力測定デバイスによって測定される周囲圧力が増大する間、駆動車組立体133に対する受歯車組立体232の相対的な位置に依存して、受歯車組立体232を徐々に駆動するように構成した駆動歯車組立体である。
【0125】
この実施形態の第2の例では、駆動機構130は、駆動車組立体133の角度位置が受歯車組立体232の角度位置よりも大きくなる場合、受歯車組立体232の角度位置の前進を可能にするようにも構成される。
【0126】
駆動歯車組立体133による受歯車組立体232の駆動は、駆動車組立体133と一体の駆動ピン234により実施される。
【0127】
駆動ピン234は、駆動車組立体133内、より詳細には、駆動車組立体133の本体内に配置されたオリフィス内で押され、駆動車組立体133の板に対して突出する。駆動ピン234は、受歯車組立体232の本体内に配置された開口235の内部を移動可能であり、駆動ピン234が開口235の一端に対して当接した際に受歯車組立体232を駆動可能であるように構成される。
【0128】
開口235は、円弧形状を有し、円弧形状の角度範囲は、測定圧力表示車42の角度移動に実質的に依存するように構成される。
【0129】
したがって、駆動車組立体133は、周囲圧力が低下する間、及び周囲圧力が受歯車組立体232の有効位置に対応する最大圧力より低いままである場合、受歯車組立体232を駆動することなく、自由に枢動し得る。
【0130】
駆動機構130は、以下のように動作する。測定圧力を指示する機関44及び最大圧力を指示する機関223が基準位置(理論上のゼロ)内にある場合、駆動車組立体133及び受歯車組立体232も初期基準位置にある。この場合、
図5に示すように、駆動ピン234は、受歯車組立体232の開口235の一端に当接する。
【0131】
周囲圧力測定デバイス20によって測定される周囲圧力が増大する間、駆動車組立体133は、第1の回転方向(例えば、反時計回り方向)に従って回転、枢動する。2つの車組立体133、232がそれぞれ同じ基準位置にあると、駆動車組立体133の回転により、受歯車組立体232も回転させ、駆動ピン234は、開口235の一端に当接する。したがって、受歯車組立体232は、測定圧力に対応する角度位置で駆動される。
【0132】
周囲圧力が低下する間、駆動車組立体133は、反対方向(例えば、
図5から
図7に示す構成によれば、時計回り方向)で枢動する。この場合、駆動ピン234は、開口235の内部で自由に移動する。したがって、駆動車組立体133は、圧力が再度ゼロである(例えば、水上にいる)際に、より早期の角度位置内又は初期基準位置内に自由に戻ることができ、上記した圧力が増大する間に測定される最大圧力に対応する角度位置で依然として割り送られる受歯車組立体232は、駆動しない。
【0133】
周囲圧力が再度増大した場合、測定圧力が、受歯車組立体232の有効角度位置に対応する最大圧力を超えると、即ち、駆動車組立体133の駆動ピン234が開口235の端部に戻り当接すると、受歯車組立体232は、駆動車組立体133によって回転される。
【0134】
したがって、受歯車組立体232の角度位置は、上記で説明したゼロリセット・レバー機関コマンド50によってゼロにリセットされない限り、周囲圧力測定デバイス20によって測定される圧力の最大値に対応する。
【0135】
受歯車組立体232、したがって、最大圧力表示車221の角度位置は、分離可能割送り機構240により、機構の最後のゼロリセット以来、周囲圧力の最大測定値に対応する受歯車組立体232の角度位置を割り送るように前進ごとに維持される。
【0136】
分離可能割送り機構240は、周囲圧力が増大する段階の間、分離可能割送り機構240の前進ごとに最大圧力表示車221の角度位置を遮断し、周囲圧力が低減する間、最大圧力表示車21が依然として割り送られるように構成される。
【0137】
分離可能割送り機構240は、分離可能遮断機関、例えば、割送りジャンパ241を備え、割送りジャンパ41は、枠と一体の枢動体242回りに、結合位置と分離位置との間で回転可能である。
【0138】
割送りジャンパ241は、割送り車組立体243と協働し、割送り車組立体243は、割送り歯車244と、割送り歯車244と一体の中心割送りかな245とを備える。中心割送りかな245は、最大圧力表示車221に運動学的に接続される。
【0139】
割送り歯車244は、割送りジャンパ241、より詳細にはジャンパ・ビーク246と協働し、中心割送りかな245により、最大圧力表示車221の前進ごとに最大圧力表示車221の位置を遮断するようにする。
【0140】
割送り歯車244は、非対称歯部248、例えば小臼歯歯部を有し、隙間を伴わず、最大圧力表示車221に起り得る逆戻しを伴わずに、特に非対称歯部248の歯の直線側面のおかげで、明確な割送りを可能にするようにする。
【0141】
しかし、代替実施形態によれば、別の種類の歯部を使用することが可能である。
【0142】
割送りジャンパ241は、ばね羽根250と協働し、ばね羽根250は、割送りジャンパ241に力を加え、初期設定によって結合位置に割送りジャンパ241を配置し、割送りジャンパ241、より詳細にはジャンパ・ビーク246を割送り歯車244の歯の歯底に配置することを保証するようにする。
【0143】
割送り歯車244は、例えば、周囲圧力測定デバイス20によって測定される圧力の理論上のゼロに対応する基準割送り位置を有する。この基準割送り位置が容易に見えるように、割送り歯車244は、有利には、割送り歯車244の板上に配置される、P0を基準とする割送り記号又はマーキングを有する。この割送り記号がジャンパ・ビーク246に相対して位置する場合、割送り歯車244は、
図6に示すように、その基準割送り位置にある。
【0144】
図5から
図8に示すように、割送り歯車244は、360°未満の歯区分を有することができ、360°未満の歯区分は、非割送り領域として公知の1つ又は複数の領域を有することができ、この領域は、1つ又は複数の平滑な角度位置を特徴とする、即ち、少なくとも1つの割送り歯、好ましくは複数の割送り歯がない。有利には、これらの非割送り領域は、割送り歯車244の特定の角度部分上で割送り機能を停止させることを可能にし、設計者が事前に規定する特定の状況に対応する特定の周囲圧力値範囲にわたり、最大圧力指示器機構223の位置を割り送らないようにする。
【0145】
有利には、割送り歯車244は、少なくとも1つの歯又は複数の割送り歯がない少なくとも1つの角度区分を備え、少なくとも1つの角度区分は、P0を基準とする割送り記号の近くに位置し、割送り歯車244が、ジャンパ・ビーク246に対して、この基準割送り位置の近くに割送り歯のない一部分を有するようにする。
【0146】
有利には、割送り歯車244は、割送り歯が配置されていない第1の角度区分Z1を備え、理論上のゼロを超えるわずかな圧力変動、例えば、数メートル未満、例えば1m未満の潜水中に測定される周囲圧力の変動の間は割送りが停止されるか、又は周囲圧力のわずかな修正の間、最大圧力指示器機関223を割り送らないようにする。
【0147】
例えば、
図5から
図8に示す実施形態の例によれば、少なくとも1つの割送り歯のない第1の角度区分Z1は、典型的には、
図8に表されるように割送り記号P0と、非対称歯部248の最初の歯の傾斜側面との間に位置する。
【0148】
有利には、割送り歯車244は、割送り歯が配置されない第2の角度区分Z2も備えることができ、周囲圧力が表示の最大値を超えた際に割送りを停止させるようにする。この表示は、最大圧力専用の表示、例えば文字板上に見える表示である。したがって、最大深度指示器機関223の位置は、表示によって提供される最大値を超えて位置する位置で割り送られることがない。
【0149】
したがって、本発明者等の上記の例では、少なくとも1つの割送り歯のない第2の角度区分Z2は、
図8に表されるように、最後の所望の割送り位置に対応する最後の歯の直線側面の後に配置される、又は割送り記号P0と非対称歯部248の最後の歯の直線側面との間に配置される。
【0150】
最大圧力表示列224のゼロリセットは、ゼロリセット・レバー機関コマンド50によって保証され、測定圧力指示器機関44の角度位置の機構をリセットするようにも働く。
【0151】
ゼロリセット・レバー機関コマンド50は、割送りジャンパ241の枢動ヨークを形成可能な更なるフィンガピース261を備える。ユーザによるゼロリセット・レバー機関コマンド50の作動は、割送りジャンパ241を枢動させ、割送り歯車244の歯部248から解放可能にするように、ばね羽根250の戻し力を克服しなければならない。
【0152】
有利には、フィンガピース261は、ゼロリセット・レバー機関コマンド50の枢動の第2の角度段階の間、割送りジャンパ241上で作用する。ゼロリセット・レバー機関コマンド50の完全な作動が、最大圧力表示列224及び測定圧力表示列41の両方をゼロにリセットするようにする。
【0153】
分離可能割送り機構240は、第3の戻し機関249、例えば戻しラックも備え、第3の戻し機関249は、第3の戻し機関249上に戻し力を加えることが可能な戻し要素247と協働する。第3の戻し機関249は、最大圧力表示列224、より詳細には最大圧力表示車221に運動学的に接続される。したがって、第3の戻し機関249は、最大圧力表示列224及び駆動機構130に張力を加えることを可能にし、様々な歯車列の間に存在する動作間隙によって生じる最大圧力指示器機関223のばたつきを防止する。
【0154】
戻し要素247を介して、第3の戻し機関249も最大圧力表示車221上に戻し力を加え、この戻し力は、割送りジャンパ241がゼロリセット・レバー機関コマンド50によって分離位置に至った際、最大圧力表示車221及び最大圧力指示器機関223を基準位置、例えば、理論上のゼロに再配置させることが可能である。
【0155】
戻し要素247は、例えば、戻しばねである。
【0156】
上記でわかるように、割送り車組立体243は、最大圧力表示車221に運動学的に接続される。
【0157】
図示しない第1の代替実施形態によれば、割送り車組立体243は、例えば中心割送りかな245により、最大圧力表示車221と直接嵌合し、第1の歯車列T1が最大圧力表示車221と割送り車組立体243との間に形成されるようにする。
【0158】
図5から
図7により詳細に示される第2の代替実施形態によれば、分離可能割送り機構240は、割送り車組立体243と最大圧力表示車221との間に配置される中間割送り車組立体270を更に備え、割送り車組立体243が、この中間割送り車組立体270により最大圧力表示車221に運動学的に接続されるようにする。この代替実施形態では、最大圧力表示車221、中間割送り車組立体270及び割送り車組立体243は、第2の歯車列T2を形成する。
【0159】
代替実施形態とは関係なく、歯車列T1又はT2を構成する様々な歯車は、最大圧力表示車221と割送り車組立体243との間にもたらされる歯車比が増倍比であるように構成される。
【0160】
したがって、最大圧力表示車221と割送り車組立体243との間が増倍比である場合、機構は、有利には、最大圧力指示器機関223の可能な割送り位置を増大可能にし、これにより、最大圧力表示の鮮明度を増大可能にする。
【0161】
最大圧力表示車221と割送り車組立体243との間が増倍比の使用により、特に、表示と摩擦駆動機構の正確な結果とを近づける一方で、小型さを最適化し、低減したより単純な設計の機構の提案を可能にする。
【0162】
中間割送り車組立体270の使用は、有利には、最大圧力表示車221の心棒222に近い領域の範囲外に割送り車組立体243をずらすように中間車を生成することを可能にする。したがって、ムーブメント内への最大圧力指示機構20の様々な要素の据付けが容易になり、機構の厚さが最小化される。有利には、中間割送り車組立体270は、概して同じ心棒上に多量の指示器機関を備える機構の中心領域から割送り車組立体243をずらすことを可能にする。したがって、据付けが容易になり、本発明による機構、特に、そのような機構を一体化する測時器ムーブメントの全体の厚さが最小化される。
【0163】
より詳細には、中間割送り車組立体270は、中間割送り車271を備え、中間割送り車271は、一方で、最大圧力表示車221と嵌合し、もう一方で、割送り車組立体243の中心割送りかな245と嵌合する。
【0164】
中間割送り車組立体270は、(
図7で見ることができる)中間割送りかな272も備える。
図5から
図7に示す実施形態の例では、第3の戻し機関249は、戻し力を最大圧力表示列224上に加えるように、中間割送りかな272と嵌合する。そのような据付けは、有利には、第3の戻し機関249の角度移動を低減することを可能にし、したがって、本発明による機構の様々な要素の据付けを容易にする。
【0165】
しかし、本発明の文脈から逸脱することなく、他の構成が可能である。
【0166】
一代替実施形態によれば、第3の戻し機関249は、例えば、割送り車組立体243と協働し、割送り車組立体243の中心割送りかな245上で嵌合し得る。
【0167】
例として、割送り車組立体243は、62歯の機械加工歯を備え、この機械加工歯は、360°の合計円周にわたり73歯を備える割送り車組立体に対応する。
【0168】
したがって、提示する実施形態の例では、割送り車組立体243は、最大圧力指示器機関223の62の割送り位置を実施可能にする。したがって、最大到達圧力の表示をより正確な鮮明度にすることが可能である。
【0169】
実施形態のこの第2の例において、計時器機構1’は、いくつかの更なる部品を用いて、全体サイズを低減した状態で、周囲圧力に関係する情報、及び最大到達圧力に関係する情報を指示することを可能にする。
【0170】
本発明による計時器機構1’は、有利には、単一のゼロリセット・レバー機関コマンド50により、測定圧力指示器機関44及び最大圧力指示器機関201の両方に対するゼロリセット機能を同時に実施することを可能にし、したがって、潜水前の操作を容易にする。
【0171】
有利には、本発明による計時器機構1’は、
-周囲圧力の変動による作用下、機械的に変形するように構成された要素を備える周囲圧力測定デバイス20と、
-周囲圧力の変動による作用下で回転するように、圧力測定デバイスに運動学的に連結した測定圧力指示列41と、
-最大圧力表示車221を備える最大圧力表示列224を備える最大圧力指示機構200であって、最大圧力表示車221と一体の最大圧力指示器機関223を備える最大圧力指示機構200と、
-周囲圧力が増大する間、最大圧力表示列224を徐々に駆動するように構成した駆動機構130と、
-最大圧力表示列224の前進ごとに位置を割り送る割送り機構240と、を備え、割送り機構240は、割送り車組立体243と協働する遮断機関を備え、
割送り車組立体243は、歯車列T1、T2によって最大圧力表示車221に運動学的に接続し、最大圧力表示車221と割送り車組立体243との間の歯車列T1、T2の歯車比は、増倍比である。
【0172】
有利には、割送り車組立体243は、最大圧力表示車221と嵌合する中心割送りかな245を備え、前記歯車列T1が、最大圧力表示車221と中心割送りかな245との協働によって形成されるようにする。
【0173】
有利には、割送り車組立体240は、最大圧力表示車221と割送り車組立体243との間に挿入される中間割送り車組立体270を備え、前記歯車列T2が、最大圧力表示車221と、中間割送り車組立体270と、割送り車組立体243との協働によって形成されるようにする。したがって、中間割送り車組立体270は、中間車として作用し、割送り車組立体243を最大圧力指示器機関223の車組立体からずらすことを可能にし、これにより、本発明による機構のより容易な据え付けを可能にする。
【0174】
有利には、割送り車組立体243は、中間割送り車組立体270と嵌合する中心割送りかな245を備え、前記歯車列T2が、最大圧力表示車221と、中間割送り車組立体270と、中心割送りかな245との協働によって形成されるようにする。
【0175】
有利には、割送り車組立体243は、中心割送りかな245と一体の割送り歯車244を備える。
【0176】
有利には、割送り歯車244は、複数の割送り歯を備える非対称歯部248、好ましくは小臼歯歯部を備え、前記遮断機関は、割送り歯車244の非対称歯部248と協働する。
【0177】
有利には、割送り歯車244は、前記割送り歯車244が少なくとも1つの割送り歯のない少なくとも1つの角度区分を備えるように、360°未満の歯区分を備える。
【0178】
有利には、少なくとも1つの割送り歯のない前記少なくとも1つの角度区分は、割送り車組立体243の基準割送り位置の近くに配置される。
【0179】
有利には、遮断機関は、ゼロリセット・レバー機関コマンド50を介して分離し得る遮断機関、例えば割送りジャンパ41である。
【0180】
有利には、割送り機構240は、第3の戻し機関として知られる戻し機関249を備え、戻し機関249は、戻し要素247の作用下、最大圧力表示列224の再配置を保証するように構成される。
【0181】
有利には、第3の戻し機関249は、割送り車組立体243と協働する。
【0182】
有利には、第3の戻し機関249は、中間割送り車組立体270と協働する。
【0183】
有利には、第3の戻し機関249は、中間割送り車組立体270の中間割送りかな272と協働する。
【0184】
有利には、駆動機構130は、第1の車組立体を形成し、心棒135と一体であり、測定圧力表示列41と嵌合する駆動車組立体133と、第2の車組立体を形成し、駆動車組立体133の心棒135回りに自由に組み付けられる受歯車組立体232とを備え、受歯車組立体232は、最大圧力表示列224と嵌合し、駆動車組立体133は、周囲圧力が増大する間、受歯車組立体232を駆動するように構成される。
【0185】
有利には、駆動機構130は、駆動車組立体133と一体の駆動ピン234を備え、駆動車組立体133は、受歯車組立体232内に配置した開口235と協働する。
【0186】
本発明による計時器機構1、1’は、時間情報に関連する情報を指示するように構成された測時器ムーブメントと組み合わせ得る。
【0187】
本発明は、実施形態の第1の例又は第2の例による、上記したそのような計時器機構1、1’を一体化する深度計、高度計又は気圧計にも関する。
【0188】
本発明は、測時器ムーブメントを備える、潜水時計等の計時器にも関し、測時器ムーブメントは、そのような計時器機構1、1’を備え、周囲圧力に関係する情報を測定、指示し、最大到達圧力を指示し、固有の制御により、周囲圧力及び最大到達圧力を指示する機関をゼロにリセットし、例えば潜水前に計時器機構1、1’を正確に較正することを可能にする。
【符号の説明】
【0189】
1 計時器機構
20 周囲圧力測定デバイス
31 第1の車組立体
33 第2の車組立体
40 測定圧力指示器機構
41 測定圧力表示列
44 測定圧力指示器機関
100 ゼロリセット機構