(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】眼科装置及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/15 20060101AFI20230906BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/113
(21)【出願番号】P 2022103273
(22)【出願日】2022-06-28
(62)【分割の表示】P 2018165195の分割
【原出願日】2018-09-04
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】小野 佑介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将行
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143918(JP,A)
【文献】特開平11-104085(JP,A)
【文献】特開2013-153791(JP,A)
【文献】特開平01-242029(JP,A)
【文献】特開2015-195922(JP,A)
【文献】特開2004-141563(JP,A)
【文献】特開2009-165540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと、
固視標を表示する視標表示部、及び前記対物レンズを通して前記視標表示部に表示された前記固視標の光束を被検眼に投射する光学系を有する固視標提示部と、
前記固視標提示部を制御して、前記固視標の光束が前記対物レンズを通過する位置である視標位置を制御する位置制御部と、
前記視標表示部による前記固視標の表示を制御する視標表示制御部と、
を備え、
前記位置制御部は、前記対物レンズの中で前記対物レンズの光軸を中心とする一定範囲内の領域をレンズ中心部とし且つ前記レンズ中心部の外側の領域をレンズ周辺部とした場合において、前記視標位置の目標位置が前記レンズ中心部内である場合に、前記視標位置を前記目標位置に限定する限定制御を前記固視標提示部に実行させ、前記目標位置が前記レンズ周辺部内である場合に、前記視標位置を前記レンズ中心部内の基準位置から前記目標位置まで移動させる移動制御を前記固視標提示部に実行させ、
前記視標表示制御部が、前記視標表示部に表示させる前記固視標を前記固視標の中心を基準として回転させる、又は前記固視標の拡大及び縮小を反復させることで、前記固視標の表示態様を時間的に変化させ
、
前記位置制御部が前記固視標提示部に前記移動制御を実行させる場合に、前記視標位置の軌跡を示す軌跡像の表示を前記視標表示部に実行させる軌跡表示制御部を備え、
前記光学系が、前記対物レンズを通して前記視標表示部に表示された前記軌跡像の光束を前記被検眼に投射する眼科装置。
【請求項2】
前記対物レンズにおける前記被検眼の視線位置を検出する視線位置検出部を備え、
前記視線位置検出部の検出結果に基づき、前記視線位置を示す視線位置情報を前記視標表示部に表示させる情報表示制御部を備え、
前記光学系が、前記対物レンズを通して前記視標表示部に表示された前記視線位置情報の光束を前記被検眼に投射する請求項1
に記載の眼科装置。
【請求項3】
対物レンズと、
固視標を表示する視標表示部、及び前記対物レンズを通して前記視標表示部に表示された前記固視標の光束を被検眼に投射する光学系を有する固視標提示部と、
前記固視標提示部を制御して、前記固視標の光束が前記対物レンズを通過する位置である視標位置を制御する位置制御部と、
前記視標表示部による前記固視標の表示を制御する視標表示制御部と、
を備え、
前記位置制御部は、前記対物レンズの中で前記対物レンズの光軸を中心とする一定範囲内の領域をレンズ中心部とし且つ前記レンズ中心部の外側の領域をレンズ周辺部とした場合において、前記視標位置の目標位置が前記レンズ中心部内である場合に、前記視標位置を前記目標位置に限定する限定制御を前記固視標提示部に実行させ、前記目標位置が前記レンズ周辺部内である場合に、前記視標位置を前記レンズ中心部内の基準位置から前記目標位置まで移動させる移動制御を前記固視標提示部に実行させ、
前記視標表示制御部が、前記視標表示部に表示させる前記固視標を前記固視標の中心を基準として回転させる、又は前記固視標の拡大及び縮小を反復させることで、前記固視標の表示態様を時間的に変化させ、
前記対物レンズにおける前記被検眼の視線位置を検出する視線位置検出部を備え、
前記視線位置検出部の検出結果に基づき、前記視線位置を示す視線位置情報を前記視標表示部に表示させる情報表示制御部を備え、
前記光学系が、前記対物レンズを通して前記視標表示部に表示された前記視線位置情報の光束を前記被検眼に投射する眼科装置。
【請求項4】
前記対物レンズにおける前記被検眼の視線位置を検出する視線位置検出部を備え、
前記位置制御部が、前記固視標提示部に前記移動制御を実行させる場合に、前記視線位置検出部の検出結果に基づき、前記視線位置に対する前記視標位置の位置ずれを補正する補正制御を前記固視標提示部に実行させる請求項1
に記載の眼科装置。
【請求項5】
対物レンズと、
固視標を表示する視標表示部、及び前記対物レンズを通して前記視標表示部に表示された前記固視標の光束を被検眼に投射する光学系を有する固視標提示部と、
前記固視標提示部を制御して、前記固視標の光束が前記対物レンズを通過する位置である視標位置を制御する位置制御部と、
前記視標表示部による前記固視標の表示を制御する視標表示制御部と、
を備え、
前記位置制御部は、前記対物レンズの中で前記対物レンズの光軸を中心とする一定範囲内の領域をレンズ中心部とし且つ前記レンズ中心部の外側の領域をレンズ周辺部とした場合において、前記視標位置の目標位置が前記レンズ中心部内である場合に、前記視標位置を前記目標位置に限定する限定制御を前記固視標提示部に実行させ、前記目標位置が前記レンズ周辺部内である場合に、前記視標位置を前記レンズ中心部内の基準位置から前記目標位置まで移動させる移動制御を前記固視標提示部に実行させ、
前記視標表示制御部が、前記視標表示部に表示させる前記固視標を前記固視標の中心を基準として回転させる、又は前記固視標の拡大及び縮小を反復させることで、前記固視標の表示態様を時間的に変化させ、
前記対物レンズにおける前記被検眼の視線位置を検出する視線位置検出部を備え、
前記位置制御部が、前記固視標提示部に前記移動制御を実行させる場合に、前記視線位置検出部の検出結果に基づき、前記視線位置に対する前記視標位置の位置ずれを補正する補正制御を前記固視標提示部に実行させる眼科装置。
【請求項6】
前記位置制御部が、前記補正制御として、前記視標位置の移動速度の制御、又は前記視標位置の位置制御を前記固視標提示部に実行させる請求項
4又は5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記目標位置が複数の場合、前記位置制御部が、前記目標位置ごとに順番に前記限定制御又は前記移動制御を前記固視標提示部に実行させ、
前記位置制御部が、前記目標位置を前記レンズ中心部内の位置から前記レンズ周辺部内の位置に切り替える場合に、前記レンズ中心部内の前記目標位置を前記基準位置とする請求項1から6のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項8】
対物レンズと、
固視標を表示する視標表示部、及び前記対物レンズを通して前記視標表示部に表示された前記固視標の光束を被検眼に投射する光学系を有する固視標提示部と、
前記固視標提示部を制御して、前記固視標の光束が前記対物レンズを通過する位置である視標位置を制御する位置制御部と、
前記視標表示部による前記固視標の表示を制御する視標表示制御部と、
を備え、
前記位置制御部は、前記対物レンズの中で前記対物レンズの光軸を中心とする一定範囲内の領域をレンズ中心部とし且つ前記レンズ中心部の外側の領域をレンズ周辺部とした場合において、前記視標位置の目標位置が前記レンズ中心部内である場合に、前記視標位置を前記目標位置に限定する限定制御を前記固視標提示部に実行させ、前記目標位置が前記レンズ周辺部内である場合に、前記視標位置を前記レンズ中心部内の基準位置から前記目標位置まで移動させる移動制御を前記固視標提示部に実行させ、
前記視標表示制御部が、前記視標表示部に表示させる前記固視標を前記固視標の中心を基準として回転させる、又は前記固視標の拡大及び縮小を反復させることで、前記固視標の表示態様を時間的に変化させ、
前記目標位置が複数の場合、前記位置制御部が、前記目標位置ごとに順番に前記限定制御又は前記移動制御を前記固視標提示部に実行させ、
前記位置制御部が、前記目標位置を前記レンズ中心部内の位置から前記レンズ周辺部内の位置に切り替える場合に、前記レンズ中心部内の前記目標位置を前記基準位置とする眼科装置。
【請求項9】
対物レンズと、固視標を表示する視標表示部、及び前記対物レンズを通して前記視標表示部に表示された前記固視標の光束を被検眼に投射する光学系を有する固視標提示部と、前記固視標提示部を制御して、前記固視標の光束が前記対物レンズを通過する位置である視標位置を制御する位置制御部と、前記視標表示部による前記固視標の表示を制御する視標表示制御部と、を備える眼科装置の作動方法において、
前記位置制御部が、前記対物レンズの中で前記対物レンズの光軸を中心とする一定範囲内の領域をレンズ中心部とし且つ前記レンズ中心部の外側の領域をレンズ周辺部とした場合において、前記視標位置の目標位置が前記レンズ中心部内の場合に、前記視標位置を前記目標位置に限定する限定制御を前記固視標提示部に実行させ、前記目標位置が前記レンズ周辺部内の場合に、前記視標位置を前記レンズ中心部内の基準位置から前記目標位置まで移動させる移動制御を前記固視標提示部に実行させ、
前記視標表示制御部が、前記視標表示部に表示させる前記固視標を前記固視標の中心を基準として回転させる、又は前記固視標の拡大及び縮小を反復させることで、前記固視標の表示態様を時間的に変化させ
、
前記対物レンズにおける前記被検眼の視線位置を検出し、
前記位置制御部が、前記固視標提示部に前記移動制御を実行させる場合に、前記視線位置の検出結果に基づき、前記視線位置に対する前記視標位置の位置ずれを補正する補正制御を前記固視標提示部に実行させる眼科装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼に固視標を提示する眼科装置及びその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置による眼科検査(検査、測定、撮影等、被検眼のデータを取得するための各種行為を含む)では、被検眼の所望の部位を検査するために固視が行われる。固視は、被検眼に対して固視標を提示し、この固視標を被検眼に注視させることにより実現される。
【0003】
固視としては、内部固視が良く知られている(特許文献1又は2参照)。内部固視は、ドットマトリクス液晶ディスプレイ及びマトリクス発光ダイオードなどの視標表示部により表示された固視標(輝点像)の光束を、光学系により対物レンズを通して被検眼に投射(投影)する固視方式である。この内部固視では、被検眼に対する固視標の提示位置を自由に設定することができる。
【0004】
例えば、眼底の黄斑のデータを取得する場合には、視標表示部内の黄斑に対応する表示位置に表示された固視標の光束が、光学系により対物レンズのレンズ中心部を通して被検眼に投射される。この固視標を被検眼が固視(注視)することにより、黄斑が検査(撮影)位置に誘導される。
【0005】
また、眼底の眼底周辺部のデータを取得する場合には、視標表示部内の眼底周辺部に対応する表示位置に表示された固視標の光束が、光学系により対物レンズのレンズ周辺部を通して被検眼に投射される。この固視標を被検眼が固視することにより、被検眼が大きく回旋されるため、眼底周辺部が検査位置に誘導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-038687号公報
【文献】特開2017-143919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、黄斑の検査のように対物レンズのレンズ中心部を通して固視標を被検眼に提示する場合、固視標が被検者の視野範囲の中央領域に位置するため、被検眼の視線方向を固視標に誘導する固視誘導が容易である。その結果、被検眼は固視標を容易に固視することができる。一方、眼底周辺部等の検査のように対物レンズのレンズ周辺部を通して固視標を被検眼に提示する場合、固視標が被検者の視野範囲の中央領域に存在しないため、被検眼が固視標を見失うおそれがあり、被検眼の固視誘導が困難である。このため、固視標の光束が対物レンズを通過する位置に応じて、被検眼に対する最適な固視標の提示方法が異なるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、固視標の光束が対物レンズを通過する位置に対応した最適な方法で被検眼に対して固視標を提示する眼科装置及びその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するための眼科装置は、対物レンズと、固視標を表示する視標表示部、及び対物レンズを通して視標表示部に表示された固視標の光束を被検眼に投射する光学系を有する固視標提示部と、固視標提示部を制御して、固視標の光束が対物レンズを通過する位置である視標位置を制御する位置制御部と、を備え、位置制御部は、対物レンズの中で対物レンズの光軸を中心とする一定範囲内の領域をレンズ中心部とし且つレンズ中心部の外側の領域をレンズ周辺部とした場合において、視標位置の目標位置がレンズ中心部内である場合に、視標位置を目標位置に限定する限定制御を固視標提示部に実行させ、目標位置がレンズ周辺部内である場合に、視標位置をレンズ中心部内の基準位置から目標位置まで移動させる移動制御を固視標提示部に実行させる。
【0010】
この眼科装置によれば、目標位置がレンズ中心部内である場合には限定制御を行うことで被検眼の固視位置を目標位置に速やかに誘導し、逆に目標位置がレンズ周辺部内である場合には移動制御を行うことで被検眼の固視位置を基準位置から目標位置に向けて確実に誘導することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、位置制御部が固視標提示部に移動制御を実行させる場合に、視標位置の軌跡を示す軌跡像の表示を視標表示部に実行させる軌跡表示制御部を備え、光学系が、対物レンズを通して視標表示部に表示された軌跡像の光束を被検眼に投射する。これにより、被検眼の固視位置を目標位置に向けて確実に誘導することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、対物レンズにおける被検眼の視線位置を検出する視線位置検出部を備え、視線位置検出部の検出結果に基づき、視線位置を示す視線位置情報を視標表示部に表示させる情報表示制御部を備え、光学系が、対物レンズを通して視標表示部に表示された視線位置情報の光束を被検眼に投射する。これにより、被検者が目標位置と視線位置とのずれ量及びずれ方向を認識することができるので、被検眼の固視位置を目標位置まで確実に誘導させることができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、対物レンズにおける被検眼の視線位置を検出する視線位置検出部を備え、位置制御部が、固視標提示部に移動制御を実行させる場合に、視線位置検出部の検出結果に基づき、視線位置に対する視標位置の位置ずれを補正する補正制御を固視標提示部に実行させる。これにより、被検眼の固視位置を目標位置まで確実に誘導させることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、位置制御部が、補正制御として、視標位置の移動速度の制御、又は視標位置の位置制御を固視標提示部に実行させる。
【0015】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、視標表示部による固視標の表示を制御する視標表示制御部であって、且つ視標表示部に表示させる固視標の表示態様を時間的に変化させる又は予め定められた特定の画像を固視標として視標表示部に表示させる視標表示制御部を備える。これにより、被検者の注意を引くことができるので被検眼を固視標に誘導し易くなる。
【0016】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、基準位置が、対物レンズの光軸の位置である。
【0017】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、目標位置が複数の場合、位置制御部が、目標位置ごとに順番に限定制御又は移動制御を固視標提示部に実行させ、位置制御部が、目標位置をレンズ中心部内の位置からレンズ周辺部内の位置に切り替える場合に、レンズ中心部内の目標位置を基準位置とする。これにより、被検眼の固視位置を目標位置まで誘導させる際の誘導時間を短くすることができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、位置制御部が、視標位置の制御として、視標表示部に表示される固視標の表示位置の制御を行う。
【0019】
本発明の目的を達成するための眼科装置の作動方法は、対物レンズと、固視標を表示する視標表示部、及び対物レンズを通して視標表示部に表示された固視標の光束を被検眼に投射する光学系を有する固視標提示部と、固視標提示部を制御して、固視標の光束が対物レンズを通過する位置である視標位置を制御する位置制御部と、を備える眼科装置の作動方法において、位置制御部が、対物レンズの中で対物レンズの光軸を中心とする一定範囲内の領域をレンズ中心部とし且つレンズ中心部の外側の領域をレンズ周辺部とした場合において、視標位置の目標位置がレンズ中心部内の場合に、視標位置を目標位置に限定する限定制御を固視標提示部に実行させ、目標位置がレンズ周辺部内の場合に、視標位置をレンズ中心部内の基準位置から目標位置まで移動させる移動制御を固視標提示部に実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、固視標の光束が対物レンズを通過する位置に対応した最適な方法で被検眼に対して固視標を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の眼科装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】被検眼に提示される固視標の一例を説明するための説明図である。
【
図4】被検眼に提示される固視標の一例を説明するための説明図である。
【
図5】被検眼に提示される固視標の一例を説明するための説明図である。
【
図6】被検眼に提示される固視標の一例を説明するための説明図である。
【
図7】眼底の検査対象部位と視標表示部の表示面内での固視標の表示位置との関係の一例を示した説明図である。
【
図8】被検者側から見た対物レンズの正面拡大図である。
【
図9】表示制御部による限定制御を説明するための説明図である。
【
図10】表示制御部による移動制御を説明するための説明図である。
【
図11】表示制御部による移動制御を行う場合の基準位置の変形例を説明するための説明図である。
【
図12】眼科装置による被検眼の検査処理、特に被検眼に対する固視標の提示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第2実施形態の眼科装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図14】第2実施形態の演算制御ユニットの機能ブロック図である。
【
図15】プルキンエ像を利用する視線位置検出部の視線位置検出方法を説明するための説明図である。
【
図16】被検眼の撮像画像データに基づき被検眼Eの視線方向を検出する方法を説明するための説明図である。
【
図17】第2実施形態の表示制御部による移動制御を説明するための説明図である。
【
図18】第2実施形態の表示制御部による補正制御を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態の眼科装置]
図1は、第1実施形態の眼科装置1の構成の一例を示す概略図である。眼科装置1は、眼底カメラと、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いて断層像を得る光干渉断層計と、を組み合わせた複合機である。
【0023】
図1に示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100、及び演算制御ユニット200等を備える。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底EfのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理及び制御処理等を実行するパーソナルコンピュータ等の演算処理装置である。
【0024】
[眼底カメラユニット]
眼底カメラユニット2は、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系として、照明光学系10及び撮影光学系30を備える。照明光学系10は眼底Efに対して照明光を照射する。撮影光学系30は、眼底Efで反射された照明光の眼底反射光を、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサ35,38に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100から出力された信号光を眼底Efに導くと共に、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット100に導く。
【0025】
照明光学系10は、観察光源11、反射ミラー12、集光レンズ13、可視カットフィルタ14、撮影光源15、ミラー16、リレーレンズ17,18、絞り19、リレーレンズ20、孔開きミラー21、ダイクロイックミラー46、及び対物レンズ22等を備える。
【0026】
撮影光学系30は、既述の対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及び孔開きミラー21の他に、ダイクロイックミラー55、合焦レンズ31、ミラー32、ハーフミラー39A、視標表示部39、ダイクロイックミラー33、集光レンズ34、イメージセンサ35、ミラー36、集光レンズ37、及びイメージセンサ38等を備える。
【0027】
観察光源11は、例えばハロゲンランプ又はLED(Light Emitting Diode)光源等が用いられ、観察照明光を出射する。観察光源11から出射された観察照明光は、反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。さらに、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17,18、絞り19、及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。
【0028】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。さらに、この眼底反射光は、ハーフミラー39Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、眼底反射光を撮像(受光)して撮像信号を出力する。表示装置3には、イメージセンサ35から出力された撮像信号に基づく観察画像が表示される。なお、撮影光学系30のピントが被検眼Eの前眼部Eaに調整されている場合には前眼部Eaの観察画像が表示装置3に表示され、撮影光学系30のピントが眼底Efに調整されている場合には眼底Efの観察画像が表示装置3に表示される。
【0029】
撮影光源15は、例えばキセノンランプ又はLED光源等が用いられ、撮影照明光を出射する。撮影光源15から出射された撮影照明光は、既述の観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光の眼底反射光と同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりイメージセンサ38の受光面に結像される。
【0030】
イメージセンサ38は、眼底反射光を撮像(受光)して撮像信号を出力する。表示装置3には、イメージセンサ38から出力された撮像信号に基づく撮影画像が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3とは、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0031】
視標表示部39は、例えば、ドットマトリクス液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びマトリクス発光ダイオード(LED)などの各種表示装置(デバイス)が用いられる。この視標表示部39は固視標90を表示する。また、視標表示部39は、ドットマトリクスLCD等であるので、固視標90の表示態様(形状等)及び表示位置を任意に設定可能である。なお、視標表示部39は、固視標90の他に視力測定用視標なども表示可能である。
【0032】
視標表示部39に表示された固視標90の光束は、その一部がハーフミラー39Aにて反射された後、ミラー32、合焦レンズ31、ダイクロイックミラー55、孔開きミラー21の孔部、ダイクロイックミラー46、及び対物レンズ22を経て被検眼Eに投射される。これにより、被検眼Eに対して固視標90及び視力測定用視標などを提示することができる。なお、既述のハーフミラー39Aから対物レンズ22までが本発明の光学系に相当する。従って、本実施形態では撮影光学系30の一部が本発明の固視標提示部として機能する。
【0033】
さらに、眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50及びフォーカス光学系60を備える。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する眼底カメラユニット2の位置合わせ(アライメント)を行うためのアライメント指標を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるためのスプリット指標を生成する。
【0034】
アライメント光学系50は、既述の対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、孔開きミラー21、及びダイクロイックミラー55の他に、LED51、絞り52,53、及びリレーレンズ54を備える。また、フォーカス光学系60は、既述の対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及び孔開きミラー21の他に、LED61、リレーレンズ62、スプリット指標板63、二孔絞り64、ミラー65、集光レンズ66、及び反射棒67を備える。
【0035】
アライメント光学系50のLED51から出射されたアライメント光は、絞り52,53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの前眼部Eaの角膜に投射される。
【0036】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及び孔開きミラー21の孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過した後、合焦レンズ31、ミラー32、ハーフミラー39A、ダイクロイックミラー33、及び集光レンズ34を経てイメージセンサ35の受光面に入射する。
【0037】
イメージセンサ35は、アライメント光の角膜反射光を撮像(受光)して撮像信号を出力する。これにより、表示装置3に、既述の前眼部Eaの観察画像と共にアライメント指標が表示される。そして、ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメント(オートアライメント)を行ってもよい。
【0038】
反射棒67の反射面は、フォーカス光学系60によるフォーカス調整が行われる場合に照明光学系10の光路上にセットされる。LED61から出射されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離された後、二孔絞り64、ミラー65、及び集光レンズ66を経て反射棒67の反射面に一旦結像され、この反射面にてリレーレンズ20に向けて反射される。さらにフォーカス光は、リレーレンズ20、孔開きミラー21、ダイクロイックミラー46、及び対物レンズ22を経て眼底Efに投射される。
【0039】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってイメージセンサ35により撮像される。イメージセンサ35は、フォーカス光の眼底反射光を撮像して撮像信号を出力する。これにより、表示装置3に観察画像と共にスプリット指標が表示される。後述の演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31等を移動させてピント合わせを自動で行う。また、ユーザがスプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0040】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT計測用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、光路長変更部41と、ガルバノスキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45と、が設けられている。
【0041】
光路長変更部41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT計測用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正、及び干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、例えばコーナーキューブと、これを移動する機構と、を含む。
【0042】
ガルバノスキャナ42は、OCT計測用の光路を通過する信号光の進行方向を変更する。これにより、眼底Efを信号光で走査することができる。ガルバノスキャナ42は、たとえば、信号光をX方向に走査するガルバノミラーと、Y方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含む。これにより、信号光をXY平面上の任意の方向に走査することができる。
【0043】
眼底カメラユニット2には2台の前眼部カメラ300が設けられている。各前眼部カメラ300は、前眼部Eaを異なる方向から実質的に同時に撮影する。また、各前眼部カメラ300は、照明光学系10の光路及び撮影光学系30の光路から外れた位置に設けられている。そして、各前眼部カメラ300は、被検眼Eが実質的に同じ位置(向き)にある状態での被検眼Eの撮影画像をそれぞれ取得する。各撮影画像は、演算制御ユニット200による被検眼Eの特徴部位の三次元位置の解析に用いられる。
【0044】
[OCTユニット]
OCTユニット100は、眼底EfのOCT画像の取得に用いられる光学系を備える。この光学系は、従来のOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、眼底Efを経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出する。この検出結果(検出信号)は、OCTユニット100から演算制御ユニット200へ出力される。なお、OCTユニット100の光学系の具体的な構成については公知技術(例えば上記特許文献1及び2参照)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0045】
[演算制御ユニット]
図2は、演算制御ユニット200の機能ブロック図である。
図2に示すように、演算制御ユニット200は、統括制御部202、記憶部204、画像形成部206、及びデータ処理部208等を備える。なお、本実施形態において演算制御ユニット200内の「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されても構わない。また、演算制御ユニット200には、既述の眼底カメラユニット2の各部、表示装置3、及びOCTユニット100の他に、操作部210が接続されている。操作部210は、操作レバー、キーボード、マウス、及びタッチパネル式のモニタ等の公知の操作デバイスであり、検者による各種の入力操作を受け付ける。
【0046】
統括制御部202は、検者による操作部210への入力操作に応じて、眼底カメラユニット2、表示装置3、及びOCTユニット100の各部の動作を統括制御する。なお、
図2では、統括制御部202の各種機能の中で固視標90の表示制御に係る機能のみを図示し、他の機能については公知技術であるので具体的な図示は省略する。
【0047】
統括制御部202の機能は、各種のプロセッサ(Processor)を用いて実現できる。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、統括制御部202の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0048】
記憶部204は、統括制御部202のプロセッサが実行する制御プログラムの他、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、及び被検眼情報(被検者情報を含む)などを記憶する。また、記憶部204は、詳しくは後述する対応情報212を記憶している。
【0049】
画像形成部206は、OCTユニット100から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。なお、OCT画像の具体的な形成方法は、従来のOCT装置と同様である。データ処理部208は、画像形成部206により形成されたOCT画像、及び既述の眼底カメラユニット2により取得された画像(眼底像及び前眼部像)に対して画像処理等を施す。
【0050】
[固視標の提示(表示)制御]
統括制御部202は、被検眼Eに固視標90の提示を行う場合、記憶部204から読み出した制御プログラムを実行することにより表示制御部214として機能する。なお、表示制御部214は、本発明の位置制御部、軌跡表示制御部、及び視標表示制御部に相当する。
【0051】
図3から
図6は、表示制御部214が視標表示部39に表示させる固視標90、すなわち被検眼Eに提示される固視標90の一例を説明するための説明図である。ここでは、表示制御部214は本発明の視標表示制御部として機能する。
【0052】
図3から
図5に示すように、表示制御部214は、視標表示部39に固視標90を表示させる場合に固視標90の表示態様を時間的に変化させる。例えば、
図3に示すように、表示制御部214は、固視標90の中心を基準として回転(自転)する固視標90を視標表示部39に表示させる。また、
図4に示すように、表示制御部214は、拡大及び縮小を反復する固視標90を視標表示部39に表示させる。さらに、
図5に示すように、表示制御部214は、自転する数字を含む固視標90であって且つ時間経過に応じて数字が入れ替わる表示態様の固視標90を視標表示部39に表示させる。このように視標表示部39に表示される固視標90の表示態様を時間変化させることで、被検者の注意を引くことができる。これにより、被検眼Eを固視標90に誘導し易くなる。
【0053】
図6に示すように、表示制御部214は、予め定められた特定の画像(動物、乗り物、及びフィクションに登場するキャラクター等)を固視標90として視標表示部39に表示させてもよい。この場合にも、被検者の注意を引くことができるので被検眼Eを固視標90に誘導し易くなる。
【0054】
表示制御部214は、検者により操作部210に入力された眼底Efの検査(撮影)対象部位の指定操作に基づき、視標表示部39に表示させる固視標90の表示位置を制御する。そして、表示制御部214は、視標表示部39に表示される固視標90の表示位置を制御することで、固視標90の光束が対物レンズ22を通過する位置である視標位置を、対物レンズ22の光軸OA(
図8参照)に対して垂直方向(XY方向:
図1参照)に制御する。すなわち、表示制御部214に被検眼Eに提示する固視標90の提示位置を上述の垂直方向に制御する。以下、既述の指定操作に対応した表示位置で視標表示部39に表示された固視標90の光束が対物レンズ22を通過する位置を「目標位置」という。
【0055】
図7は、眼底Efの検査対象部位と視標表示部39の表示面内での固視標90の表示位置との関係の一例を示した説明図である。
【0056】
図7に示すように、符号「M」は、被検眼Eの両眼の眼底Efの黄斑に対応した固視標90の表示位置である。なお、この表示位置Mは、対物レンズ22の光軸OA(
図8参照)の位置に対応している。すなわち、表示位置Mで表示された固視標90の光束は、対物レンズ22の光軸OAを通る。
【0057】
符号「CR」は、被検眼Eの右眼の眼底Efの眼底中心に対応する固視標90の表示位置であり、符号「CL」は、被検眼Eの左眼の眼底Efの眼底中心に対応する固視標90の表示位置である。符号「DR」は、被検眼Eの右眼の眼底Efの視神経乳頭に対応する固視標90の表示位置であり、符号「DL」は、被検眼Eの左眼の眼底Efの視神経乳頭に対応する固視標90の表示位置である。符号「P」は、被検眼Eの両眼の眼底Efの眼底周辺部の8個の位置に対応する固視標90の表示位置である。
【0058】
なお、視標表示部39に表示される固視標90の表示位置は
図7に示した位置に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。また、他の検査対象部位(例えば黄斑と視神経乳頭との中間位置)に対応する表示位置を追加してもよい。
【0059】
視標表示部39に表示された固視標90の光束は、既述の通り、ハーフミラー39Aからダイクロイックミラー46を経た後、対物レンズ22を通して被検眼Eに投射される。これにより、被検眼Eに固視標90を提示して、被検眼Eに固視標90を固視させることができる。
【0060】
図8は、被検者側から見た対物レンズ22の正面拡大図である。
図8及び既述の
図7に示すように、視標表示部39の表示位置Mで表示された固視標90の光束は、対物レンズ22の後述のレンズ中心部22a内の視標位置TM(光軸OAに相当)を通って被検眼Eに投射される。これにより、被検眼E(右眼及び左眼)が視標位置TM上の固視標90を固視することで、OCTユニット100から出射される信号光の照射位置(スキャン位置)に眼底Efの黄斑が移動される。
【0061】
視標表示部39の表示位置CRで表示された固視標90の光束は、レンズ中心部22a内の視標位置TCRを通って被検眼Eに投射される。また、視標表示部39の表示位置CLで表示された固視標90の光束は、レンズ中心部22a内の視標位置TCLを通って被検眼Eに投射される。これにより、被検眼Eの右眼が視標位置TCR上の固視標90を固視したり、或いは左眼が視標位置TCL上の固視標90を固視したりすることで、眼底Efの眼底中心が既述の信号光の照射位置に移動される。
【0062】
視標表示部39の表示位置DRで表示された固視標90の光束は、対物レンズ22の後述のレンズ周辺部22b内の視標位置TDRを通って被検眼Eに投射される。また、視標表示部39の表示位置DLで表示された固視標90の光束は、レンズ周辺部22b内の視標位置TDLを通って被検眼Eに投射される。これにより、被検眼Eの右眼が視標位置TDR上の固視標90を固視したり、或いは左眼が視標位置TDL上の固視標90を固視したりすることで、眼底Efの視神経乳頭が既述の信号光の照射位置に移動される。
【0063】
視標表示部39の各表示位置Pでそれぞれ表示された固視標90の光束は、レンズ周辺部22b内の各視標位置TPをそれぞれ通って被検眼Eに投射される。これにより、被検眼E(右眼及び左眼)が各視標位置TPのいずれかの視標位置TP上の固視標90を固視することで、眼底Efの8か所の眼底周辺部のいずれかが既述の信号光の照射位置に移動される。
【0064】
レンズ中心部22aは、対物レンズ22の光軸OAを中心とする一定範囲内の領域であり、本実施形態では既述の視標位置TM及び視標位置TCR,TCLを含む。ここで、対物レンズ22の視標位置TM及び視標位置TCR,TCLをそれぞれ通過した固視標90を被検眼Eが固視する場合に、固視標90は被検者の視野範囲の中央領域に位置するため、被検眼Eを大きく回旋させる必要はない。このため、被検眼Eを容易に固視標90に誘導することができる。従って、レンズ中心部22aは、対物レンズ22の中で被検眼Eを固視標90に容易に誘導することが可能な領域である。
【0065】
なお、レンズ中心部22aは、対物レンズ22の中で
図8に示す範囲に限定されるものではなく、視標位置TMのみを含む範囲であったり、或いは視標位置TDR,TDLまでを含む範囲であったり、眼底Efの他の検査対象部位(黄斑と視神経乳頭との中間位置等)に対応する視標位置を含む範囲であったりしてもよい。
【0066】
レンズ周辺部22bは、対物レンズ22の中で既述のレンズ中心部22aの外側の領域であり、本実施形態では既述の視標位置TDR,TDL及び視標位置TPを含む。ここで、対物レンズ22の視標位置TDR,TDL及び視標位置TPをそれぞれ通過した固視標90を被検眼Eが固視する場合に、固視標90は被検者の視野範囲の中央領域に存在しないので、被検眼Eを大きく回旋させる必要がある。このため、被検眼Eが固視標90を見失うおそれがあり、被検眼Eを固視標90に誘導することが困難である。
【0067】
従って、表示制御部214は、検査対象部位に対応する目標位置(各視標位置TP,TCR,…TP)がレンズ中心部22a内及びレンズ周辺部22b内のいずれであるかに応じて、視標表示部39による固視標90の表示制御方法を切り替える。これにより、目標位置がレンズ中心部22a内及びレンズ周辺部22b内のいずれであるかに応じて、固視標90の視標位置の位置制御方法が異なる。
【0068】
この際に、既述の
図3に示した記憶部204には、複数の検査対象部位と、検査対象部位ごとの視標表示部39による固視標90の表示制御方法と、の対応関係を示す対応情報212が記憶されている。固視標90の表示制御方法には、レンズ中心部22a内の目標位置(視標位置TM,TCR,TCL)に対応した限定制御と、レンズ周辺部22b内の目標位置(視標位置TDR,TDL,TP)に対応した移動制御と、が含まれる。
【0069】
そして、表示制御部214は、操作部210に対する指定操作で指定された検査対象部位に基づき、記憶部204内の対応情報212を参照することで、目標位置がレンズ中心部22a内である場合には視標表示部39に限定制御を実行させ、目標位置がレンズ周辺部22b内である場合には視標表示部39に移動制御を実行させる。
【0070】
図9は、表示制御部214による限定制御を説明するための説明図である。なお、
図9に示す例では、検査対象部位として被検眼E(右眼)の眼底Efの眼底中心が指定されたものとする。
【0071】
図9に示すように、表示制御部214は、目標位置が視標位置TCRである場合、対応情報212に基づき、レンズ中心部22a内の視標位置TCRに対応した限定制御を視標表示部39に実行させる。この場合、表示制御部214は、固視標90の視標位置が目標位置(ここでは視標位置TCR)に限定されるように、視標表示部39を制御する。具体的に表示制御部214は、視標表示部39内での固視標90の表示位置を表示位置CRに限定する。これにより、後述の移動制御とは異なり、固視標90を被検眼Eに速やかに提示することができる。
【0072】
図10は、表示制御部214による移動制御を説明するための説明図である。なお、
図10に示す例では、検査対象部位として被検眼E(右眼及び左眼のいずれでも可)の眼底Efの眼底周辺部の1箇所が指定されたものとする。この場合に、表示制御部214は本発明の位置制御部として機能する。
【0073】
図10の符号XAに示すように、表示制御部214は、目標位置が視標位置TPである場合、対応情報212に基づき、レンズ周辺部22b内の視標位置TPに対応した移動制御を視標表示部39に実行させる。最初に表示制御部214は、固視標90の視標位置がレンズ中心部22a内の所定の基準位置に一致(略一致を含む)するように、視標表示部39に固視標90を表示させる。ここで本実施形態の基準位置は光軸OAの位置であり、表示制御部214は、視標表示部39の表示位置Mに固視標90を表示させる。これにより、固視標90が被検者の視野範囲の中央領域に位置するので、被検眼Eが固視標90を容易に固視することができる。
【0074】
次いで、表示制御部214は、図中の矢印αで示すように、固視標90の視標位置が基準位置から指定操作で指定された目標位置(ここでは視標位置TP)に向けて移動するように、視標表示部39の表示制御を行う。なお、矢印αは固視標90の移動方向を示したものであり、この矢印αが視標表示部39に実際に表示されていないくともよいし或いは表示されていてもよい。
【0075】
具体的に表示制御部214は、視標表示部39内での固視標90の表示位置を表示位置Mから表示位置Pに向けて移動させる。この際に固視標90の移動速度は、被検眼Eが固視標90を見失わない速度に設定されている。これにより、
図10の符号XBに示すように、固視標90の視標位置が基準位置(光軸OA)から目標位置(視標位置TP)に向けてゆっくり移動するため、被検眼Eの固視位置を基準位置から目標位置に向けて誘導することができる。
【0076】
また、表示制御部214は、視標表示部39に既述の移動制御を実行させる場合に、基準位置に対応する表示位置Mから目標位置に対応する表示位置Pに向けて移動する固視標90の軌跡像92を視標表示部39に表示させる。この場合、表示制御部214は本発明の軌跡表示制御部として機能する。
【0077】
視標表示部39に表示された軌跡像92の光束は、固視標90の光束と共にハーフミラー39Aから対物レンズ22を通して被検眼Eに投射される。その結果、対物レンズ22上において基準位置から目標位置(視標位置TP)に向けて移動する固視標90の視標位置の軌跡を示す軌跡像92が被検眼Eに提示される。これにより、被検眼Eの固視位置を基準位置から視標位置TPまで確実に誘導することができる。
【0078】
このように表示制御部214は、操作部210に対する指定操作で指定された目標位置がレンズ中心部22a内である場合には視標表示部39に限定制御を実行させ、この目標位置がレンズ周辺部22b内である場合には視標表示部39に移動制御を実行させる。
【0079】
なお、被検眼EのOCT検査では被検眼Eに対して複数の目標位置を順番に提示する場合がある。この場合、表示制御部214は、操作部210に対する指定操作で指定された複数の目標位置ごとに、目標位置がレンズ中心部22a内或いはレンズ周辺部22b内であるかに応じて、限定制御又は移動制御を視標表示部39に順番に実行させる。
【0080】
図11は、表示制御部214による移動制御を行う場合の基準位置の変形例を説明するための説明図である。ここでは、目標位置をレンズ中心部22a内の位置(視標位置TCR:符号XIA参照)からレンズ周辺部22b内の位置(視標位置TP:符号XIB参照)に切り替える場合を例に挙げて説明を行う。
【0081】
図11に示すように、表示制御部214は、1つ前の目標位置、すなわちレンズ中心部22a内の視標位置TCRを基準位置として、この基準位置から固視標90の視標位置を新目標位置に向けて移動させる移動制御を視標表示部39に実行させる。
【0082】
このように目標位置をレンズ中心部22a内の位置からレンズ周辺部22b内の位置に切り替える場合に、先のレンズ中心部22a内の目標位置を基準位置とすることで、固視標90の視標位置を光軸OAに合せる必要がなくなる。このため、被検眼Eの固視位置を視標位置TPまで誘導させる際の誘導時間を短くすることができる。
【0083】
[眼科装置の作用]
図12は、上記構成の眼科装置1による被検眼Eの検査処理、特に被検眼Eに対する固視標90の提示処理の流れ(本発明の眼科装置の作動方法に相当)を示すフローチャートである。
【0084】
図12に示すように、眼科装置1での所定の検査準備処理が完了した後、検者が操作部210に対して眼底Efの検査対象部位の指定操作を行う(ステップS1)。そして、統括制御部202の表示制御部214は、指定操作で指定された検査対象部位に基づき、記憶部204内の対応情報212を参照して、視標表示部39による固視標90の表示制御方法を決定する(ステップS2)。
【0085】
表示制御部214は、対応情報212に基づき、目標位置がレンズ中心部22a内の視標位置TM,TCR,TCL等である場合、既述の
図9で説明したように視標表示部39に限定制御を開始させる(ステップS3)。この場合、視標表示部39は、固視標90の表示位置を目標位置に対応する位置(表示位置M,CR,CL等)に限定する。これにより、視標表示部39で表示された固視標90の光束が、ハーフミラー39Aから対物レンズ22を経て被検眼Eに投射される。その結果、被検眼Eに固視標90が提示される(ステップS4)。
【0086】
目標位置がレンズ中心部22a内である場合、固視標90が被検者の視野範囲の中央領域に位置するので、被検眼Eが固視標90を容易に固視することができる。また、この場合には、移動制御のような固視標90の移動は行わないので、被検眼Eの固視位置を速やかに目標位置に誘導することができる。
【0087】
一方、表示制御部214は、対応情報212に基づき、目標位置がレンズ周辺部22b内の視標位置TDR,TDL,TP等である場合、既述の
図10で説明したように視標表示部39に移動制御を開始させる(ステップS5)。最初に表示制御部214は、視標表示部39の表示位置Mに固視標90を表示させる。これにより、視標表示部39に表示された固視標90の光束がハーフミラー39Aから対物レンズ22を経て被検眼Eに投射され、対物レンズ22の光軸OAに対応する基準位置にて固視標90が被検眼Eに提示される(ステップS6)。その結果、被検眼Eが固視標90を容易に固視することができる。
【0088】
次いで、表示制御部214は、視標表示部39内での固視標90の表示位置を表示位置Mから目標位置に対応する表示位置(表示位置DR,DL,P)に向けて所定速度で移動させる。これにより、固視標90の視標位置が基準位置から目標位置に向けてゆっくり移動する(ステップS7)。これにより、被検眼Eの固視位置を基準位置から目標位置に向けて誘導することができる。
【0089】
また、同時に表示制御部214は、視標表示部39を制御して、表示位置Mから目標位置に対応する表示位置に向けて移動する固視標90の軌跡像92を表示させる(ステップS8)。これにより、軌跡像92の光束がハーフミラー39Aから対物レンズ22を経て被検眼Eに投射される。その結果、目標位置に向けて移動する固視標90の視標位置の軌跡像92が被検眼Eに提示されるので、被検眼Eの固視位置を目標位置に向けて確実に誘導することができる。
【0090】
以下、固視標90の視標位置が目標位置に到達するまで、既述のステップS7,S8の処理が繰り返し実行される(ステップS9)。これにより、被検眼Eの固視位置が目標位置に誘導される。
【0091】
また、既述のステップS2からステップS9までの処理と並行して或いは前後して、統括制御部202は、照明光学系10の照明光の光量の設定と、撮影光学系30の観察照明光の光量の設定を行う(ステップS10)。なお、各光量の設定方法については公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0092】
次いで、前眼部Eaに対する眼底カメラユニット2のアライメントと、眼底Efに対する眼底カメラユニット2のフォーカス調整とが、統括制御部202の制御の下において自動で実行、或いは操作部210に対する操作入力により手動で実行される(ステップS11)。そして、眼底カメラユニット2及びOCTユニット100等による眼底Efの撮影画像及びOCT画像の撮影が実行される(ステップS12)。なお、ステップS11,S12の各処理についても公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0093】
以下、検査対象部位を変更する場合には、上述のステップS1からステップS12までの処理が繰り返し実行される(ステップS13)。なお、既述の
図11で説明したように、1つ前の目標位置がレンズ中心部22a内の視標位置TM,TCR,TCLである場合、表示制御部214は、既述の
図12に示したステップS6において、先の目標位置を基準位置として、視標表示部39に固視標90を表示させる。これにより、被検眼Eの固視位置を目標位置まで誘導させる際の誘導時間を短くすることができる。
【0094】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、検査対象部位に対応する目標位置がレンズ中心部22a内である場合には視標表示部39に限定制御を実行させ、且つ目標位置がレンズ周辺部22b内である場合には視標表示部39に移動制御を実行させることができる。これにより、目標位置がレンズ中心部22a内である場合には被検眼Eの固視位置を目標位置に速やかに誘導し、逆に目標位置がレンズ周辺部22b内である場合には被検眼Eの固視位置を基準位置から目標位置に向けて確実に誘導することができる。その結果、固視標90の光束が対物レンズ22を通過する位置に対応した最適な方法で被検眼Eに対して固視標90を提示することができる。
【0095】
[第2実施形態の眼科装置]
図13は、第2実施形態の眼科装置1の構成の一例を示す概略図である。この第2実施形態の眼科装置1は、既述の移動制御時において被検眼Eが注視している対物レンズ22上の視線位置を検出し、この視線位置の検出結果を既述の移動制御に反映する。
【0096】
図13に示すように、第2実施形態の眼科装置1は、眼底カメラユニット2がさらに視線位置検出光学系70を備える点を除けば上記第1実施形態の眼科装置1と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0097】
視線位置検出光学系70は、ミラー71と、赤外LED72と、ピンホール73と、集光レンズ74と、ミラー75と、結像レンズ76と、ミラー77と、イメージセンサ78と、半導体位置検出素子(Position Sensitive Detector)であるPSD79と、を備える。
【0098】
ミラー71は、既述のダイクロイックミラー46と対物レンズ22との間に配置されており、例えばダイクロイックミラーが用いられる。このミラー71は、既述の照明光、観察照明光、及び信号光等(その反射光を含む)を透過させる。また、ミラー71は、後述のミラー75から入射した近赤外光を対物レンズ22に向けて反射すると共に、対物レンズ22から入射した近赤外光の反射光をミラー75に向けて反射する。
【0099】
赤外LED72は、近赤外光をピンホール73に向けて出射する。ピンホール73は、赤外LED72から入射した近赤外光を点光源とした後、この点光源の近赤外光を集光レンズ74に向けて出射する。集光レンズ74は、ピンホール73から入射した近赤外光をミラー75に向けて出射する。
【0100】
ミラー75は、例えばハーフミラーが用いられる。このミラー75は、集光レンズ74から入射した近赤外光の一部をミラー71に向けてそのまま透過させる。これにより、ミラー75を透過した近赤外光は、ミラー71により対物レンズ22に向けて反射され、この対物レンズ22を通して被検眼Eに入射する。そして、被検眼Eにて反射された近赤外光の反射光が、対物レンズ22を通してミラー71に入射し、このミラー71によりミラー75に向けて反射される。ミラー75は、ミラー71から入射した反射光の一部を結像レンズ76に向けて反射する。
【0101】
結像レンズ76は、ミラー75から入射した反射光をミラー77に向けて出射する。ミラー77は、結像レンズ76から入射した反射光の一部をイメージセンサ78に向けて反射すると共に、結像レンズ76から入射した反射光の残りをそのまま透過させてPSD79に向けて出射する。
【0102】
イメージセンサ78は、CMOS型又はCCD型であり、その撮像面にはミラー77によって反射された反射光が被検眼Eの像として結像する。イメージセンサ78は、撮像面に結像された被検眼Eの像を撮像して、その撮像画像データ150(
図15参照)を統括制御部202(
図14参照)へ出力する。
【0103】
PSD79の受光面には、ミラー77から入射した反射光が入射する。PSD79は、その受光面における反射光の受光位置を検出可能なセンサであり、受光位置を示す受光信号を統括制御部202(
図14参照)へ出力する。なお、PSD79の代わりにラインセンサを用いてもよい。
【0104】
図14は、第2実施形態の演算制御ユニット200の機能ブロック図である。
図14に示すように、第2実施形態の演算制御ユニット200は、統括制御部202が表示制御部214の他に視線位置検出部216として機能する点を除けば、第1実施形態の演算制御ユニット200の同じ構成である。
【0105】
視線位置検出部216は、既述の視線位置検出光学系70と共に本発明の視線位置検出部を構成する。視線位置検出部216は、既述の
図12に示した移動制御開始(ステップS5)に合わせて赤外LED72を点灯させると共に、イメージセンサ78から入力される被検眼Eの撮像画像データ150(
図15参照)及びPSD79から入力される受光信号に基づき、対物レンズ22上で被検眼Eが注視している視線位置を検出する。
【0106】
図15は、プルキンエ像151を利用する視線位置検出部216の視線位置検出方法(角膜検出方式)を説明するための説明図である。
図15の符号XVAに示すように、被検眼Eの角膜表面上には、点光源の近赤外光の入射により、近赤外光の反射像であるプルキンエ像151が生じる。このプルキンエ像151の位置は、被検眼Eの視線方向の変化に応じて変化する。
【0107】
従って、
図15の符号XVBに示すように、視線位置検出部216は、イメージセンサ78から入力される被検眼Eの撮像画像データ150と、PSD79から入力される受光信号とに基づき、被検眼Eにおけるプルキンエ像151の位置座標C1を検出する。そして、視線位置検出部216は、位置座標C1が示すプルキンエ像151の位置と瞳孔中心との相対位置に基づいて、被検眼Eの視線方向を検出する。なお、プルキンエ像151を利用した視線方向の検出方法は公知技術であり、その詳細な説明は省略する。また、本実施形態ではPSD79を用いているが、PSD79を省略して、イメージセンサ78から入力される撮像画像データ150のみに基づいてプルキンエ像151の位置座標C1を検出してもよい。
【0108】
図16は、被検眼Eの撮像画像データ150に基づき被検眼Eの視線方向を検出する方法(強膜反射方式、暗瞳孔法)を説明するための説明図である。なお、この方法では被検眼Eへの点光源の近赤外光の入射は省略することができる。視線位置検出部216は、
図16の符号XVIAに示すようにイメージセンサ78から被検眼Eの撮像画像データ150を取得した後、
図16の符号XVIBに示すように、被検眼Eの撮像画像データ150を所定の輝度しきい値で二値化する。被検眼Eの瞳孔はその周囲の領域と比較して低輝度であるので、撮像画像データ150を二値化すると、被検眼Eの瞳孔に対応する領域が黒画素領域となり、瞳孔の周囲の領域が白画素領域となる。これにより、被検眼Eの撮像画像データ150から被検眼Eの瞳孔領域を特定することができる。
【0109】
そして、
図16の符号XVICに示すように、視線位置検出部216は、二値化された被検眼Eの撮像画像データ150から、被検眼Eの瞳孔領域(黒画素領域)の中心座標C2を求め、求めた中心座標C2と既知の眼球の幾何学的構造とに基づいて、被検眼Eの視線方向を検出する。なお、強膜反射方式(暗瞳孔法)による視線方向の検出は公知技術であるので、その詳細な説明は省略する。
【0110】
図14に戻って、視線位置検出部216は、検出した被検眼Eの視線方向と、既知の撮影光学系30の撮影倍率とに基づき、被検眼Eが注視している対物レンズ22上の視線位置(注視点)の位置座標を検出し、この視線位置の位置座標の検出結果を表示制御部214へ出力する。そして、視線位置検出部216は、被検眼Eの視線位置の検出を一定時間ごとに繰り返し実行し、新たな視線位置の位置座標の検出結果を表示制御部214へ逐次出力する。
【0111】
図17は、第2実施形態の表示制御部214による移動制御を説明するための説明図である。
図17の符号XVIIAに示すように、第2実施形態の表示制御部214は、既述の第1実施形態と同様に視標表示部39を制御して、固視標90の視標位置の基準位置から目標位置への移動と、被検眼Eへの軌跡像92の投射とを実行する。
【0112】
さらに、第2実施形態の表示制御部214は、視線位置検出部216の検出結果に基づき、視標表示部39に既述の視線位置を示す視線位置情報94を表示させる。この場合、表示制御部214は本発明の情報表示制御部として機能する。そして、視標表示部39に表示された視線位置情報94の光束は、既述の固視標90及び軌跡像92の光束と共に、ハーフミラー39Aから対物レンズ22を経て被検眼Eに投射される。これにより、被検眼Eに固視標90、軌跡像92、及び視線位置情報94が提示される。
【0113】
視線位置情報94は、例えば目標位置を示す矢印等の記号が用いられる。これにより、被検者は、目標位置と視線位置とのずれ量及びずれ方向を認識することができる。
【0114】
そして、表示制御部214には、視線位置検出部216から新たな視線位置の検出結果が逐次入力される。このため、
図17の符号XVIIBに示すように、対物レンズ22上での被検眼Eの視線位置が目標位置に向けて移動すると、これに応じて被検眼Eに提示される視線位置情報94の位置も更新される。これにより、被検者は、視線位置が目標位置に近づいていることを認識することができる。その結果、被検眼Eの固視位置を目標位置まで確実に誘導させることができる。
【0115】
また、表示制御部214は、視線位置検出部216の検出結果に基づき、対物レンズ22上での固視標90の視標位置と対物レンズ22上での視線位置との位置ずれを補正する補正制御を、視標表示部39に実行させてもよい。
【0116】
図18は、第2実施形態の表示制御部214による補正制御を説明するための説明図である。
図18の符号XVIIIA及び符号XVIIIBに示すように、表示制御部214は、移動制御時において視標表示部39を制御することで、固視標90の視標位置を基準位置から目標位置に向けて移動させ、且つ被検眼Eへの軌跡像92及び視線位置情報94の投射を実行させる。
【0117】
この際に、表示制御部214は、視線位置検出部216の検出結果に基づき、対物レンズ22上での固視標90の視標位置と視線位置との間に位置ずれが生じている場合に、視標表示部39上での固視標90の移動速度(対物レンズ22上での視標位置の移動速度)を減速させる補正制御を実行する。なお、表示制御部214は、視標位置と視線位置との位置ずれ量の増加に応じて、固視標90の移動速度の減速量を増加させる。これにより、目標位置に向けて移動する固視標90に対して被検眼Eの視線位置を確実に追随させることができるので、被検眼Eの固視位置を目標位置まで確実に誘導させることができる。
【0118】
図18の符号XVIIICに示すように、表示制御部214は、固視標90の移動速度を遅くさせる代わりに或いは遅くさせるのに加えて、視線位置検出部216の検出結果に基づき、対物レンズ22上での固視標90の視標位置と視線位置とを一致させるように、視標表示部39を補正制御してもよい。
【0119】
具体的に表示制御部214は、視線位置検出部216の検出結果に基づき、対物レンズ22上での固視標90の視標位置と視線位置との間に位置ずれが生じている場合、図中の矢印βで示すように、視標表示部39内での固視標90の表示位置を視線位置情報94に一致させる位置制御を行う。これにより、対物レンズ22上での固視標90の視標位置と視線位置とを一致させることができる。このため被検眼Eが固視標90を見失った場合でも再び固視標90を固視することができる。
【0120】
次いで、表示制御部214は、視標表示部39を制御して、固視標90の視標位置を再び目標位置に向けて移動させる(矢印α参照)。以下、表示制御部214は、移動制御が完了するまでの間、上述の位置ずれが生じる毎に視標表示部39の補正制御を繰り返し実行する。これにより、目標位置に向けて移動する固視標90に対して被検眼Eの視線位置を確実に追随させることができるので、被検眼Eの固視位置を目標位置まで確実に誘導させることができる。
【0121】
[その他]
上記各実施形態の移動制御では、視標表示部39に表示される固視標90の表示位置を移動させることにより、固視標90の視標位置を基準位置から目標位置に移動させているが、光スキャナを用いて固視標90の光束を走査することにより固視標90の視標位置を基準位置から目標位置に移動させてもよい。この場合の光スキャナとしては、既述のガルバノスキャナ42の他に、共振型スキャナ(レゾナントスキャナ)及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナ等が用いられる。
【0122】
上記各実施形態では、被検眼Eに対して軌跡像92の提示を行っているが、この軌跡像92の提示は省略してもよい。
【0123】
上記第2実施形態の視線位置検出部216による視線位置検出方法は、既述の
図15及び
図16で説明した方法に限定されるものではない。例えば、検者の目頭等の基準点と被検眼Eの虹彩等の動点との位置関係を用いる方法、及び眼電位センサを用いて被検眼Eの動きを検出する方法などの公知の視線位置検出方法を用いることができる。
【0124】
上記各実施形態では表示制御部214による移動制御を実行する場合に、固視標90の視標位置を基準位置から目標位置に向けて直線状(最短距離)の経路で移動させているが、曲線状等の各種の非直線状の経路で移動させてもよい。
【0125】
上記各実施形態では、眼科装置1として光干渉断層計と眼底カメラとの複合機を例に挙げて説明を行ったが、光干渉断層計、眼底カメラ、走査型レーザ検眼鏡、レーザ治療装置(光凝固装置)、及び視野計などの被検眼Eに固視標90を提示する各種眼科装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0126】
1…眼科装置,
2…眼底カメラユニット,
10…照明光学系,
22…対物レンズ,
22a…レンズ中心部,
22b…レンズ周辺部,
30…撮影光学系,
39…視標表示部,
70…視線位置検出光学系,
90…固視標,
92…軌跡像,
94…視線位置情報,
200…演算制御ユニット,
202…統括制御部,
210…操作部,
212…対応情報,
214…表示制御部,
216…視線位置検出部