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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】炭素注入用のホスフィン複合ガス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
H01L21/265 W
H01L21/265 603A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022109146
(22)【出願日】2022-07-06
(62)【分割の表示】P 2019524265の分割
【原出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2022137154
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】62/426,251
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ツェ-ジェン
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0118232(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0020102(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0151572(US,A1)
【文献】特開2001-093431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を基板に注入する方法であって、
イオン源チャンバ内において、酸化炭素ガスと、ホスフィンを含む複合ガスと、をイオン化して炭素イオン及び酸化リンを生成する工程と、
前記炭素イオンを前記基板内に注入する工程と、を含んでおり、
前記イオン源チャンバは、ランタンタングステンから形成される、または、前記ランタンタングステンによって被覆される1つ以上の構成要素を含み、
前記酸化炭素ガスは、二酸化炭素であり、かつ、以下の反応式Iにしたがって前記ホスフィンと反応する、方法。
I.24CO+8PH+4LaW→22C+24OH+2CO+2La+4W+P+P10
【請求項2】
前記1つ以上の構成要素は、カソード、カソードシールド、反射電極、ライナ、円弧スリット、源チャンバ壁、ライナ、開口プレート、引出電極及びアークチャンバ本体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ランタンタングステンは、1~3重量%の量のランタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
炭素イオンをワークピースに注入するための方法であって、
酸化炭素ガスとホスフィンガスとの混合物をイオン源チャンバに供給する工程と、
イオン化された炭素と、酸化リンを含む副生成物と、の供給流を生成するために有効な化学量論によって、前記酸化炭素ガス及び前記ホスフィンガスを、前記イオン源チャンバを用いてイオン化する工程と、
前記イオン源チャンバから前記酸化リンを排気する工程と、
プラズマ内における前記イオン化された炭素を抽出してイオンビームを形成する工程と、
前記ワークピースを前記イオンビームに曝露して、前記イオン化された炭素を前記ワークピースに注入する工程と、を含む、方法。
【請求項5】
前記酸化炭素ガスは、一酸化炭素、二酸化炭素、亜酸化炭素、炭素含有ガス及び酸素ガス混合物並びにそれらの組み合わせからなるガスの群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン源チャンバと、前記イオン源チャンバを含むイオン注入システムとは、ランタンタングステンから形成される、または、前記ランタンタングステンによって被覆される1つ以上の構成要素を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化炭素ガスは、二酸化炭素であり、かつ、以下の反応式Iにしたがって前記ホスフィンガスと反応する、請求項5に記載の方法。
I.24CO+8PH+4LaW→22C+24OH+2CO+2La+4W+P+P10
【請求項8】
前記ランタンタングステンは、1~3重量%の量のランタンを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2016年11月24日に出願された米国特許出願第62/426,251号の非仮出願であり、その内容については、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔背景〕
半導体デバイスの製造において、イオン注入は、半導体に不純物をドープ(ドーピング)するために使用される。イオン注入システムは、n型またはp型材料ドーピングを生じさせるために、または、集積回路の製造中にパッシベーション層を形成するために、イオンビームからのイオンによって半導体ウエハ等のワークピースをドープするためによく利用される。そのようなビーム処理は、集積回路の製造中に半導体材料を製造するために、所定のエネルギーレベルで、かつ、制御された濃度で、特定のドーパント材料の不純物をそのウエハに選択的に注入するためによく使用される。半導体ウエハをドーピングするために使用される場合、イオン注入システムは、所望の外因性材料(extrinsic material)を生成するために、選択されたイオン種をワークピースの内部に注入する。
【0003】
一般的なイオン注入装置は、イオン源と、イオン抽出装置と、質量分析装置と、ビーム輸送装置と、ウエハ処理装置と、を含む。イオン源は、所望の原子または分子のドーパント種のイオンを生成する。これらのイオンは、抽出システム、一般的には一組の電極によってイオン源から抽出され、これらの電極はイオン源からのイオンの流れにエネルギーを与え、かつ、イオンの流れを方向付けることにより、イオンビームを形成する。所望のイオンは、質量分析装置、一般的には、抽出されたイオンビームの質量分散または質量分離を行う磁気双極子において、イオンビームから分離される。ビーム輸送装置、一般的には一連の焦点調節機構を含む真空システムは、イオンビームの所望の特性を維持しながら、イオンビームをウエハ処理装置に輸送する。最終的には、半導体ウエハは、ウエハハンドリングシステムを用いて、ウエハ処理装置の内外へと輸送される。当該ウエハハンドリングシステムは、処理されるウエハをイオンビームの前に配置し、処理されたウエハをイオン注入装置から取り出すために、1つ以上のロボットアームを含んでもよい。
【0004】
イオン源(一般的には、アークイオン源とも称される)は、イオン注入装置で使用されるイオンビームを生成し、ウエハ処理のために適切なイオンビームに成形されるイオンを生成するための加熱フィラメントカソードを含むことができる。例えば、Sferlazzoらの米国特許第5,497,006号は、イオン化電子をガス閉じ込めチャンバ内に放出するために、ベースによって支持され、ガス閉じ込めチャンバに対して配置されたカソードを有するイオン源を開示している。Sferlazzoらのカソードは、ガス閉じ込めチャンバ内に部分的に延びるエンドキャップを有する管状導電体である。フィラメントは、その管状本体内に支持され、電子衝撃によってエンドキャップを加熱する電子を放出し、それによって、イオン化電子をガス閉じ込めチャンバ内に熱電子的に(thermionically)放出する。
【0005】
炭素は、多種多様な材料改質用途のための半導体産業において広く使用されているドーパントとして出現している。例えば、炭素注入は、複合ドーパントの拡散を阻止するために、または、ドープ領域の安定性を高めるためによく使用される。この点に関して、二酸化炭素及び/または一酸化炭素は、炭素注入のために一般的に使用される2つのドーパントガス源である。炭素分子の解離からの残留酸素は、チャンバライナ(chamber liners)を酸化し、カソードシールドを損傷し、イオン源の早期故障を引き起こす可能性がある。さらに、二酸化炭素及び/または一酸化炭素の分解による残留炭素の堆積及び剥離は、イオン源の寿命を短くすることも知られている。
【0006】
〔概要〕
本明細書では、炭素を基板に注入するための方法及びシステムが開示される。1つ以上の実施形態では、炭素を基板に注入するための方法は、イオン源チャンバ内で酸化炭素ガス源と、ホスフィンを含む複合ガスと、をイオン化して炭素イオン及び酸化リンを生成することと、炭素イオンを基板内に注入することと、を含む。
【0007】
1つ以上の実施形態では、炭素イオンをワークピースに注入するための方法は、(1)酸化炭素ガスとホスフィンガスとの混合物をイオン源に供給することと、(2)イオン化された炭素と、酸化リンを含む副生成物と、の供給流を生成するために有効な化学量論によって、酸化炭素ガス及びホスフィンガスを、イオン源を用いてイオン化することと、(3)プラズマ内におけるイオン化された炭素を抽出してイオンビームを形成することと、(4)ワークピースをイオンビームに曝露して、イオン化された炭素をワークピースに注入することと、を含む。
【0008】
本開示は、本開示の様々な特徴の以下の詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0009】
〔図面の簡単な説明〕
ここで図面を参照すると、同様の素子には同様の番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の複数の態様による例示的なイオン注入システムのブロック図である。
【0011】
図2は、本開示で使用するための例示的なイオン源の斜視図を示す。
【0012】
図3は、本開示で使用するための例示的なアークチャンバの斜視図を示す。
【0013】
図4は、20時間の動作後の従来のタングステンカソード及びシールドを示す。
【0014】
図5は、20時間の動作後のランタン入りタングステンカソード及びシールドを示す。
【0015】
図6は、複合ガスを用いずに30時間運転させた後の従来のアークチャンバを示す。
【0016】
図7は、複合ガスを用いずに様々な原材料を用いて30時間運転させた後のランタン入りタングステンアークチャンバを示す。
【0017】
図8は、純タングステン及びランタン入りタングステンの放出特性のグラフを示す。
【0018】
図9は、様々な化合物の様々な特性を示すチャートである。
【0019】
〔詳細な説明〕
本開示は、一般的に、一酸化炭素及び/または二酸化炭素等の炭素ガス源との複合ガスとしてホスフィン(PH)ガスを利用する炭素注入に関する。1つ以上の実施形態では、複合ガスとしてホスフィンを用いる炭素注入は、ランタン入りタングステンから形成された少なくとも1つの導電性構成要素をその中に含むイオン注入システムと組み合わせられる。有利なことに、例えば、カソード及びカソードシールドのようなイオン注入導電性構成要素の複合ガスとしてホスフィンを使用することにより、酸化を最小限にすることが観察される。さらに、とりわけ円弧スリットを含むアークチャンバの内部の構成上の炭素堆積物の許容可能なレベルが、酸化タングステン形成(すなわち、WO(ここで、xは1~6である))における顕著な減少と同様に観察されている。生成される炭素イオンは、対象となるワークピースにイオン注入するのに適した高速度で選択的に引き出され、加速されることが可能である。炭素注入は、一般的に、1~30keVのエネルギーの範囲内であり、その投与量は、用途に応じて、少量から中間のE13s~中間のE15sまで(from low to mid E13s to mid E15s)変化する。
【0020】
したがって、本開示は、ここで、図面を参照して説明され、同様の参照番号は、全体を通して、同様の要素を示すために使用され得る。これらの態様の説明は、単に例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の説明では、説明目的のために、本発明の完全な理解を提供するために、様々な特定の詳細が記載されている。しかし、本開示は、これらの具体的な詳細を用いずに実施され得ることが、当業者にとって明らかである。さらに、本開示の範囲は、添付の図面を参照して以下に説明される実施形態または例によって限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されることを意図するものである。
【0021】
また、図面は、本開示の実施形態の複数の態様の例示を与えるために提供されており、したがって、概略的なものとしてのみ見なされるべきであることにも留意されたい。特に、図面に示される構成要素(コンポーネント)は、必ずしも互いに一定の縮尺ではなく、図面内の様々な構成要素の配置は、それぞれの実施形態の明確な理解を提供するように選択され、本開示の実施形態による実施における様々な構成要素の実際の相対位置の表現であると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書で説明される様々な実施形態及び実施例の特徴は、特に断らない限り、互いに組み合わせることができる。
【0022】
また、以下の説明では、図面に示した、または、本明細書で説明した機能ブロック、装置、構成要素、回路要素、または他の物理的もしくは機能的ユニット間の任意の直接接続または直接結合も、間接接続または間接結合によって実装できることを理解されたい。さらに、図面に示される機能ブロックまたはユニットは、一実施形態では、別個の特徴または回路として実装されてもよく、さらに、または代替として、別の実施形態では、共通の特徴または回路で完全にまたは部分的に実装されてもよいことを理解されたい。例えば、複数の機能ブロックは、信号プロセッサ等の共通のプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして実装されてもよい。さらに、以下の説明において有線ベースであるとして説明される任意の接続は、反対のことが言及されない限り、無線通信として実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0023】
本開示の一態様によれば、図1は、例示的なイオン注入システム100を示す。本実施例におけるイオン注入システム100は、一般的に、端末102、ビームラインアセンブリ104及びエンドステーション106を含む。
【0024】
一般的に言えば、端末102内のイオン源108は、電源110に結合されて、ドーパントガス112(すなわち、原料ガス)を複数のイオンにイオン化して、イオン源からイオンビーム114を形成する。イオンビーム114は、質量分析器117の入口116を通って、開口118から出てエンドステーション106に向かう。エンドステーション106では、イオンビーム114が、チャック122、例えば、静電チャックに選択的にクランプされるか、または、取り付けられるワークピース120に衝突する。一旦、ワークピース120の格子に埋め込まれると、注入されたイオンは、ワークピースの物理的及び化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造及び金属仕上げ並びに材料科学研究における様々な用途に使用される。
【0025】
本開示のイオンビーム112は、ペンシルビームもしくはスポットビーム、リボンビーム、走査ビームまたは任意の他の形態等、任意の形態をとることができ、そのような形態は全て、本開示の範囲内に含まれると考えられる。当該任意の他の形態は、イオンがエンドステーション106に向けられる形態である。
【0026】
例示的な一態様によれば、エンドステーション106は、真空チャンバ126等の処理チャンバ124を含み、処理環境128がその処理チャンバに関連付けられる。処理環境128は、一般的に、処理チャンバ124内に存在し、一実施例では、処理チャンバ124に結合され、かつ、処理チャンバ126を実質的に排気するように構成された真空源130(例えば、真空ポンプ)によって生成される真空を含む。さらに、イオン注入システム100の全体的な制御のために、コントローラ132が設けられている。
【0027】
イオン源108(イオン源チャンバとも称される)は、例えば、高融点金属(W,Mo,Ta等)及びグラファイトを使用して、適切な高温性能を提供するように構成することができ、それによって、そのような材料は、半導体チップの製造業者によって一般的に受け入れられている。原料ガス(ソースガス)112は、イオン源108内で使用され、原料ガスは、本質的に導電性であってもなくてもよい。しかし、一旦、原料ガス112が分解または断片化されると、イオン化されたガスの副生成物は、非常に高い腐食性を有しうる。本開示において、原料ガスは、酸化炭素と少なくともホスフィンとを複合ガスとして含む混合物である。
【0028】
より長い原料寿命、増加したイオンビームの電流、イオンビームの安定性及び非専用種の操作に対するデバイスの製造業者からの要求は、従来のイオン源の設計をそれらの限界まで押し上げてきた。しかし、これらの要求の各々は、相互に排他的ではなく、それによって、1つ以上の性能特性は、一般的には、早期に故障しないイオン源を提供するために犠牲にされる。
【0029】
一酸化炭素(CO)及び/または二酸化炭素(CO)及び/または亜酸化炭素(C)のような分解する酸化炭素から生成される酸化物の高い腐食性の性質によって、イオン源108及びそれに関連する構成要素を構成するために使用される従来の高融点金属に挑む。例えば、WO及びWOの形成は、内部ソースの構成要素上において、酸化タングステンから放出される残留酸素がある閾値以下になるまで、11B及び49BFのような他の種へのイオン注入遷移に悪影響を及ぼし得る。
【0030】
1つ以上の実施形態では、本開示は、イオン源108に関連する構成要素(例えば、内部のアークチャンバ構成要素)のために、ランタン入りタングステン合金を利用する、またはランタン入りタングステン合金を、所定の割合の希土類金属と合金化された他の高融点金属と一緒に利用する。多くの場合、このようなランタン入りタングステン構成要素を設けることにより、残留酸素による損傷を防止することができる。例えば、Oとランタンとの反応は、2000℃を超える温度で安定性が非常に高い保護表面層を生じ、一方、酸化タングステンは、揮発性が非常に高く(例えば、ハロゲンサイクル)、イオン源の寿命を短くし、イオンビームの不安定性を増大させる。さらに、本開示のイオン源は、当該イオン源の仕事関数が低く、カソード先端上の炭化タングステンまたは酸化物の形成量が減少したため、改善されたカソード電子の放出を提供する。したがって、炭素注入のためのカソード電子の放出を減少することができる。
【0031】
アーク内部構成要素を構成するために、ランタン入りタングステン合金を利用する、またはランタン入りタングステン合金を、所定の割合の希土類金属と合金化された他の高融点金属と一緒に利用することに加えて、アークチャンバ本体及びアークチャンバの下流にあるイオン注入システムの他の構成要素も、そのような材料を利用して構成することができる。例えば、引出電極光学部材(例えば、抑制開口及び接地開口)及び任意の他の下流に位置するイオンビーム画定開口、ライナ及びイオンビームストライクプレートは、このようなランタン入りタングステン材料から形成され得る。抽出された酸素イオンによるエッチングまたはスパッタリングを受けやすい任意の構成要素は、そのような材料から形成される候補として考慮され、従来のシステムで形成される揮発性腐食性導電性ガスは、一般的には、重要な絶縁体を被覆する。
【0032】
例えば、図2に示すイオン源200では、六フッ化タングステンまたは他の得られた材料は、カソード204、反射電極(リペラ)206及びイオン源のアークチャンバ208に関連する円弧スリット光学部材(図示せず)の表面等、イオン源の様々な内部構成要素203の表面202上で分解してもよい。これは、式に示すようにハロゲンサイクルと呼ばれるが、結果として得られる材料は、壁210またはライナ212またはアークチャンバ208の他の構成要素、並びに汚染物質214(例えば、固体状態の粒子状汚染物質)の形態の円弧スリット上に沈殿及び/または凝縮して戻ることもできる。ライナ212は、例えば、アークチャンバ208の本体216に動作可能に結合された交換可能な部材215を備え、前記ライナは、グラファイトまたは様々な他の材料から構成される。交換可能な部材215は、例えば、アークチャンバ208の動作期間後に容易に交換することができる摩耗表面を提供する。
【0033】
内部構成要素203上に堆積される汚染物質214の別の発生源は、カソードが間接的に加熱されるとき(例えば、タングステンまたはタンタルから構成されるカソード)、カソード204から生じ、それによって、間接的に加熱されるカソードは、イオン源プラズマ(例えば、熱電子放出)を開始及び維持するために使用される。間接的に加熱されたカソード204及び反射電極206(例えば、アンチカソード)は、例えば、アークチャンバ208の本体216に対して負の電位にある。そして、カソード及び反射電極の両方は、イオン化されたガスによってスパッタリングされ得る。反射電極206は、例えば、タングステン、モリブデン、またはグラファイトから構成され得る。アークチャンバ208の内部構成要素203上に堆積される汚染物質214のさらに別の発生源は、ドーパント材料(図示せず)それ自体である。時間の経過に伴い、これらの汚染物質214の堆積膜は、応力の発生による剥離が起こり得る。このため、イオン源200の寿命が短くなる。
【0034】
本開示は、有利なことに、炭素注入中のエッチング及び汚染の問題を軽減するために、イオン注入システムにおけるランタン入りタングステン合金の使用を含み得る。1つ以上の実施形態では、ホスフィンは、一酸化炭素及び/または二酸化炭素等の酸化炭素源との複合ガスとして利用され、複数の実施形態では、本明細書に記載のランタン入りタングステン合金のイオン源の構成要素と組み合わせて利用される。1つ以上の他の実施形態では、イオン注入システムの導電性構成要素は、タングステン等で形成される。炭素注入のための複合ガスとしてのホスフィンの使用及びランタンタングステン合金で形成または被覆された構成要素は、多くの利点を提供する。
【0035】
例えば、炭素注入のためのドーパントガスとして一酸化炭素及び/または二酸化炭素を使用する場合の主な故障モードは、カソード及びカソードシールドの酸化及びその後の質量の減少である。長時間運転する場合、カソードシールドが非常に高速で酸化することは珍しいことではなく、源の早期故障につながる。酸化炭素ガス源との複合ガスとしてのホスフィンの導入は、ホスフィン分子の分解による炭化水素の形成を増加させ、これは、内面上に堆積されるのではなく、イオン源チャンバから容易にポンプ輸送され得る。理論に結び付けられることは望まれないが、リンの存在は、それぞれ23.8℃及び422℃の比較的低い融点を有するP及びP10等の酸化リンの生成をもたらすと考えられる。これらの化合物は、蒸気の形態でチャンバからポンプ輸送することができ、それによって、カソード及びカソードシールドの酸化を有意に最小限にする。これは、一般的にカソード以外の最も熱い構成要素であるカソードシールドにとって特に有利となり得る。その結果、利用可能な酸素の量に基づいて、カソードシールドの酸化速度と炭素堆積物との間のバランスを達成することができる。さらに、ランタン入りタングステン構成要素の任意の使用は、安定したランタン酸化化合物、例えば、Laの形成によるカソードシールドの酸化速度をさらに低下させる。
【0036】
ホスフィン複合ガスに対する酸化炭素の比率は、原子質量単位(amu)のスペクトル分析に基づいて酸化リンの形成を検出することによって容易に最適化することができる。この比率は、酸化リンがもはや検出できなくなり、相対的なビーム電流が望ましい量に維持されると最適化される。ホスフィン複合ガスは、異なるストリングからの別のガスとして挿入することができ、または所望の比率が決定されると、同じボトル内で事前に混合することができる。イオン源内の動作圧力は、低圧から中間のE-5Torrまでの範囲である。高電流のイオン源の寿命は、種の使用に伴って変化するが、数百時間となり得る。
【0037】
さらに、本明細書に記載されるような1つ以上の内部のアークチャンバ構成要素を構成するためのランタンタングステン合金の使用は、ハロゲンサイクルを最小限にし、制御する。Laの保護膜は、二酸化炭素についての以下の反応式Iに一般的に示されるように、酸化炭素ガスから製造され、これは2300Cまで熱的に安定する。
【0038】
I.24CO+8PH+4LaW→22C+24OH+2CO+2La+4W+P+P10
WLaOはタングステン粒子の境界内に存在するので、WLaOは連続的に表面に拡散し、保護被覆を補充する。これは、同様に、揮発性高融点ガスの形成を低減する。タングステン、酸素またはフッ素を含むアークチャンバ内にランタンをスパッタリング、エッチングまたは蒸発させると、ランタンは、MoF、WF及びTaF等の反応性が高く不安定な成分を形成しない。代わりに、ランタンの存在は、安定した酸化物またはフッ化物の化合物の形成をもたらし、これらはまた、アークチャンバの内面上に堆積され、これは、内面をさらに保護する。
【0039】
図3は、本開示を利用することができる例示的なイオン源300(アークチャンバまたはイオン源チャンバとも呼ばれる)を示す。図3のアークチャンバ300は、図2のアークチャンバ208と多くの点で類似している。図3に示すように、アークチャンバ300は、アークチャンバの内部領域304を画定する本体302を有する。アークチャンバ300は、例えば、1つ以上の電極304を備える。1つ以上の電極305は、例えば、カソード306及び反射電極308を含む。アークチャンバ300は、例えば、アークチャンバからイオンを抽出するための円弧スリット310をさらに備える。1つ以上のライナ312は、アークチャンバ300の本体302に動作可能に結合される。本体302は、例えば、本体に動作可能に連結される、または一体化される1つ以上の壁314をさらに備えてもよい。一実施例では、カソードシールド316は、一般的に、カソード306の周囲を取り囲む。
【0040】
本開示によれば、1つ以上の電極305(例えば、カソード306及び反射電極308のうち1つ以上)、カソードシールド316は、ランタン入りタングステンを含む、またはランタン入りタングステンから構成される。さらに、アークチャンバ300のライナ312、壁314及び/または抽出口310のうちの1つ以上は、ランタン入りタングステンを含むことができる、またはランタン入りタングステンから構成され得る。本開示は、ランタン入りタングステンが、従来のイオン源で使用される純粋なタングステンと比較して、化学的浸食に対してより耐性を有することを現在認識している。現在考慮されている理論は、ランタン入りタングステンが、アークチャンバ300内で行われるイオン化プロセスの間に、露出した表面上に酸化ランタン層を形成するというものである。この酸化ランタン層は、従来の化学品よりも化学的に安定しているため、一般的に、さらなる腐食を抑制する。ホスフィンを複合ガスとして利用することは、酸化を最小限にし、動作寿命を延ばすことが期待され得る。
【0041】
図4は、COを20時間流し込んだ後の従来のカソード400及びそれに対応するカソードシールド402(例えば、カソードを覆う管状部材)を示しており、カソード及びカソードシールドはタングステンで形成されている。図4に示すように、カソードシールド402の激しい酸化404と、カソード側の壁406上への熱分解によるその後の堆積と、が存在する。図4に示すように、カソードシールド402は、そのカソードシールドが2つの構成要素408A,408Bに有害に分離されるように酸化されている。
【0042】
図5は、COを20時間流し込んだ後のカソード500及び対応するカソードシールド502を示し、カソード及びカソードシールドはランタンタングステンから構成される。図5に示すように、カソードシールドの酸化状態での減少及びカソード側の壁504上へのタングステン堆積の減少は、図4の従来のカソード及びシールドと比較すると容易に明らかである。
【0043】
図6は、複合ガスを用いることなくGeFを30時間流し込んだ後の従来のアークチャンバ410内の従来のカソードを示す。カソード400及び反射電極414上へのタングステン412の過剰な堆積及びアークチャンバライナ416,418のエッチングが明らかに存在する。
【0044】
図7は、GeF、SiF及びBFをそれぞれ10時間、複合ガスを用いることなく流し込んだ後、ランタンタングステンから形成された1つ以上の構成要素(例えば、カソード500、カソードシールド502、反射電極510、チャンバ壁512、抽出開口(図示せず)、ライン(lines)514等のうちの1つ以上)を有するアークチャンバ508を示す。図7に示すように、アークチャンバ内の露出面516の全ては、ランタン入りタングステンで形成されているが、このような例は、限定的であると考慮されるべきではない。図6に示すように、1つ以上のアークチャンバライナ514のエッチングの兆候が最小である場合、カソード及び反射電極上へのタングステンの意味のある堆積はない(例えば、ハロゲンサイクルは存在しない)。
【0045】
図8は、純タングステン及びランタン入りタングステンの放出特性を示すグラフ600であり、4A/cmの最大安定放出は、1900Kにおいて生じている(参照:例えば、トリウム入りタングステンでは、2100Kにおいて3A/cm)。例えば、純タングステンに関する熱電子放出は、~2300Kにおいて、100分の1未満である。
【0046】
図9は、フッ素及び酸素と反応した後の様々な材料の特性を示す表700である。例えば、酸化ランタンは、通常の二酸化タングステンよりも約1000℃高い融点を有し、これは、酸化ランタンがはるかに安定していることを意味する。上述したアークチャンバライナは、一般的には約700~800℃で動作し、カソードは約2500℃で動作し、カソードシールドは約2000℃で動作する。その結果、ランタン入りタングステン構成要素は、フッ素と反応した後に高温で容易に分解しない安定した化合物を提供する。
【0047】
酸素とともに炭素(または酸素とともに任意のガス)を流し込む場合、アークチャンバ内にかなりの量の二酸化タングステン及び三酸化タングステンを形成することができる。ホウ素へのその後の遷移が望まれる場合、イオン源は、その中に配置された酸素が除去されるまで不安定である。したがって、酸素が除去されるまで、イオン源に関連する従来のチューニング溶液(previous tuning solution)はうまく機能しない。したがって、本開示によれば、二酸化タングステンは形成されないので、ランタン入りタングステンはチャンバの不動態化(passivating)を提供し、それゆえに、チャンバを保護し、大量のWOまたはWOを形成しない。
【0048】
一実施例によれば、イオン源(例えば、光学プレート)からイオンを抽出するのに利用される引出電極をタングステンで作ることができる。例えば、フッ素が従来のタングステン引出電極で利用される場合、フッ素は開口をスパッタリングし、結合して腐食性のフッ化タングステン(WF)ガスを形成する。さらに、絶縁体が引出プレートの間に設けられることが多く、それによってフッ化タングステンが絶縁体(Al)を侵食し、それがさらに絶縁体上に有害な導電性被覆を生成する。したがって、本開示によれば、開口プレートは、ランタン入りタングステンから形成され、それゆえに、そのような有害な導電を軽減する。
【0049】
本開示は、イオン源、引出電極光学部材及びソースチャンバの出口等のAMU磁石の上流の構成要素が、ランタン入りタングステンから構成されることを熟慮する。イオン源チャンバに関連する任意のライナ、アークスリット、カソード、反射電極及びカソードシールド等のアークチャンバの内部構成要素は、ランタン入りタングステンから構成されてもよい。さらに、AMUの入口開口は、ランタン入りタングステンから構成することもできる。その上、AMUのさらに下流の構成要素(例えば、ビームラインに沿った任意の場所)は、同様の方法でランタン入りタングステンから構成されてもよい。
【0050】
本発明は、特定の1つ以上の実施形態に関して示され、説明されたが、上述の実施形態は、本発明の複数の実施形態の実施のための例としてのみの役目を果たし、本発明の適用は、これらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に上述の構成要素(アセンブリ、装置、回路等)によって実行される種々の機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」に対する参照を含む)は、他に示されていなければ、例え開示された構成に構造的に同等でなくても、本明細書で図示された本発明の例示的な実施形態において、その機能を果たすものであれば、説明された構成要素の特定された機能を実行する(即ち、機能的に同等である)いずれかの構成要素に相当するものと意図されている。さらに、本発明の特定の特徴が複数の実施形態のうちのただ一つに対して開示されてきたが、そのような特徴は、任意の所定又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上他の特徴と組み合わされ得るものである。したがって、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されることが意図される。
【0051】
本明細書は、最良の形態を含めて、本発明を開示するために、また、当業者が本発明を作成し、使用することを可能にするために、実施例を使用する。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含んでもよい。構成要素が特許請求の範囲に記載のものと相違ない場合、又は特許請求の範囲に記載のものとそれほど相違ない同等の構成要素を含む場合、このような他の例は特許請求の範囲内であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本開示の複数の態様による例示的なイオン注入システムのブロック図である。
図2】本開示で使用するための例示的なイオン源の斜視図を示す。
図3】本開示で使用するための例示的なアークチャンバの斜視図を示す。
図4】20時間の動作後の従来のタングステンカソード及びシールドを示す。
図5】20時間の動作後のランタン入りタングステンカソード及びシールドを示す。
図6】複合ガスを用いずに30時間運転させた後の従来のアークチャンバを示す。
図7】複合ガスを用いずに様々な原材料を用いて30時間運転させた後のランタン入りタングステンアークチャンバを示す。
図8】純タングステン及びランタン入りタングステンの放出特性のグラフを示す。
図9】様々な化合物の様々な特性を示すチャートである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9