(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】手術ナビゲーションシステム
(51)【国際特許分類】
A61G 13/00 20060101AFI20230906BHJP
A61G 13/12 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61G13/00 A
A61G13/12 A
(21)【出願番号】P 2022523162
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 US2020056013
(87)【国際公開番号】W WO2021076909
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-05-23
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517237861
【氏名又は名称】インテグリティ インプランツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTEGRITY IMPLANTS INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 100, 354 Hiatt Drive, Palm Beach Gardens, Florida 33418, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン,ジョン,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】フランク,ケビン,ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】フォーリー,ケビン,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン,デーヴィッド,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティス,ジェフ
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05613254(US,A)
【文献】特表2017-501823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0248650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00-12
A47C 27/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者安定化面であって、
(a)少なくとも2つの対向する内側および下側に傾斜する骨盤支持パッド
を備える、患者安定化面であり、
(b)前記骨盤支持パッドは、
30~90の異なるショアA硬度を有する少なくとも3つの発泡材層を含み、
(c)
前記少なくとも3つの発泡材層のうち患者境界層は、前記少なくとも3つの
発泡材層のうち最も密度が低く、
前記少なくとも3つの発泡材層のうち最下層は、前記少なくとも3つの
発泡材層のうち最も
高いショアA硬度を有し、
(d)前記少なくとも3つの発泡材層の各層は、前記患者境界層が最も薄くかつ前記最下層が最も厚いように、前記患者境界層から前記最下層まで段階的に増加する厚さを有する、患者安定化面。
【請求項2】
前記少なくとも3つの発泡材層の各層は、前記患者境界層から前記最下層まで
段階的に増加する
ショアA硬度を有する、請求項1に記載の患者安定化面。
【請求項3】
前記
少なくとも3つの発泡材層は
、粘弾性ポリウレタン発泡材で
形成される、請求項1に記載の患者安定化面。
【請求項4】
(i)前記患者境界層は、
30~40の
ショアA硬度を有し、(ii)
前記少なくとも3つの発泡材層のうち中間層は、50~70の
ショアA硬度を有し、(iii)
前記最下層は、70~90の
ショアA硬度を有する、請求項3に記載の患者安定化面。
【請求項5】
前記骨盤支持パッドは、脚部支持パッド、胴体支持パッド、および腕部支持パッドを更に含むOR台に固定される、請求項1に記載の患者安定化面。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
画像ガイド手術または手術ナビゲーションの分野において、手術室内の(多くの場合、「位置特定カメラ」と呼ばれる)カメラは、3次元空間における手術ツールの位置を追跡する。この位置情報は、位置特定カメラからコンピュータに転送される。コンピュータのモニタは、コンピュータにアップロードされている、手術処置に関連する患者の解剖学的構造の多平面3次元放射線画像を表示する。手術室内に位置する患者の解剖学的構造は、位置特定カメラによって追跡されるプローブまたはレジストレーションアレイを用いて放射線画像データにレジストされる。画像ガイド手術において、レジストレーションは、対応する患者の解剖学的構造(手術空間)の3次元座標に相関するように3次元放射線画像データセット(画像空間)を変換するプロセスである。関連する解剖学的構造のレジストレーション後、たとえば
図1に示すようなナビゲーションシステム100は、ディスプレイ102上に表示された放射線画像の解剖学的構造に対する追跡された手術ツールの位置を提示し得る。追跡対象の手術ツールまたは器具は、IRマーカ要素を有する自身の追跡アレイ103を有し、それによってシステムは、位置特定カメラ101を介して手術器具を検出および追跡することが可能である。このプロセスを正確にするために、位置特定カメラと患者の解剖学的構造との間の3次元空間関係が知られていて保持される必要がある。位置特定カメラが動いた場合、または手術中に患者の解剖学的構造が動いた場合、ナビゲーションシステムの精度は落ちる。この問題を補償するために、動的基準フレーム104として知られる追跡対象ツールは、患者の解剖学的構造との関係を固定される。患者の解剖学的構造および位置特定カメラが互いに対し動くと、それらの3次元関係は、ナビゲーションシステムコンピュータによって再計算され、レジストレーションソリューションが更新される。一般に、動的基準フレームは、手術部位105の付近で患者の解剖学的構造に固定されたクランプに固定される。
【0002】
上記の手段は、画像ガイド手術の精度を維持する役割を果たし得るが、欠点を有する。動的基準フレームを追跡するために、位置特定カメラは、基準フレーム104上のマーカの空間座標をx軸、y軸、およびz軸で測定する。これらの測定値の精度は、カメラとマーカとの間の視野角によって変化する。たとえば顕微鏡、様々な器具、および術野に進入する追加の手術室従事者などの物が入るように、動的基準フレームの位置を特定するための視線を維持するようにカメラを動かすことは一般的な慣習である。同様に、患者は、たとえば手術台を回転または昇降させる時に生じるように、手術中にしばしば位置を変えられる。このような場合、カメラが動的基準フレーム上のマーカに対し動くと、ナビゲーションエラーが意図せず誘発される。
【0003】
画像ガイド手術中にカメラと動的基準フレームとの間の相対的な動きを最小限にし、または無くす器具および技術が未だ必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の1つの実施形態は、コンピュータシステムを用いる手術ナビゲーション方法である。この方法は、(a)患者の手術部位に対しカメラを固定し、カメラが手術部位に対し動かないようにすることと、(b)患者を支持する手術台に対し、手術部位を含む患者の身体部分を拘束し、身体部分が手術台に対し動かないようにすることと、(c)カメラによって、トラッカアレイを有する医療器具の位置を検出することとを含む。
【0005】
他の実施形態は、手術部位の上にレジストレーションアレイを配置することと、レジストレーションアレイを用いてカメラにレジストされる3D放射線画像を生成することとを含む。レジストレーションアレイは患者から取り除かれ、その後、カメラは、手術処置中の手術器具の位置を追跡する。
【0006】
本発明の追加の実施形態は、少なくとも2つの対向する内側および下側に傾斜した骨盤支持パッドを含むOR台である。骨盤支持パッドは、異なる密度を有する少なくとも3つの発泡材層を有し、患者境界層は、少なくとも3つの層のうち最も低い密度であり、最下層は、最も密度が高い層である。固定シートは、骨盤支持パッドに対し患者を固定するために用いられる。
【0007】
以下の図面および詳細な説明において、追加の実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来技術による手術ナビゲーションシステムを示す。
【
図2A】本発明の手術ナビゲーションシステムのハードウェアを含むワークステーションを示す。
【
図2B】手術ナビゲーションシステムを操作するために必要なソフトウェアを実行するコンピュータシステムの図を示す。
【
図3A】本発明に係るOR台の患者支持フレームを示す。
【
図3B】OR台の骨盤支持パッドに載った患者の臀部の断面図を示す。
【
図4】手術部位の放射線画像の作成中に用いられる手術ナビゲーションシステムを示す。
【
図5A】手術部位の上に位置する器具ガイドを示す。
【
図5B】患者の骨格構造にカメラを取り付ける方法を示す。
【
図6A】手術ナビゲーションシステムの1つの位置整合ユーザインタフェース方法を示す。
【
図6B】器具の位置が整合していない状態の位置整合ユーザインタフェース方法を示す。
【
図6C】器具がリーチ内にある状態の位置整合ユーザインタフェース方法を示す。
【
図6D】器具の位置が整合している状態の位置整合ユーザインタフェース方法を示す。
【
図7】器具ガイドと共に用いられている手術器具を示す。
【
図8】複数のマーカアレイを用いて位置整合を決定する方法を概念的に示す。
【
図9A】手術ナビゲーションシステムによって生成された適切な位置整合の画像を示す。
【
図9B】手術ナビゲーションシステムによって生成された位置整合エラーの画像を示す。
【
図10】手術部位における手術器具と手術ガイドとの位置整合を概念的に示す。
【
図12】マーカアレイ位置エラーを示すシステムユーザインタフェースを示す。
【
図13A】放射線画像体積内のマーカアレイを概念的に示す。
【
図13B】マーカアレイ要素を識別するためのソフトウェア方法を概念的に示す。
【
図14】初期ナビゲーション画像の取得およびレジストのフローチャートを示す。
【
図15】自動レジストレーションアルゴリズムのフローチャートを示す。
【
図16】レジストレーションプレートの位置を特定するアルゴリズムのフローチャートを示す。
【
図17】レジストレーションプレートの基準を識別するアルゴリズムのフローチャートを示す。
【
図18】プレートの平面にない点を除去するアルゴリズムのフローチャートを示す。
【
図19】器具ガイドの位置整合を決定するステップのフローチャートを示す。
【
図20】不慮のマーカアレイの動きを決定するステップのフローチャートを示す。
【
図21】器具経路の位置整合を決定するステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のナビゲーションシステム1において用いられる構成要素の一例が
図2Aに提示される。これらの構成要素は、システムステーションまたは可動カート2を含む。ステーション2には、ディスプレイ5と、たとえば従来のキーボード6またはマウス7などのユーザインタフェース部品が設置される。
図2は、ステーション2に取外し可能に設置された光学センサ10(たとえばカメラ11)および経路システム25も示し、これらはいずれも後に詳しく説明される。
【0010】
ナビゲーションシステムは、
図2Bにシステム図として示されるコンピュータシステム220を含む。コンピュータシステム220は、メモリ222、プロセッサ224、上述したディスプレイ5、ネットワークインタフェース228、および入力デバイス230を含んでよい。メモリ222は、アプリケーション236および/またはCTデータ234を格納してよい。アプリケーション236は、プロセッサ224によって実行されると、ディスプレイ5にユーザインタフェース238を提示させ得る。プロセッサ224は、汎用プロセッサ、他のタスクを行うために汎用プロセッサを空けておきながら特定のグラフィック処理タスクを行うように構成された専用グラフィック処理ユニット(GPU)、および/または任意の数のそのようなプロセッサまたはその組み合わせであってよい。キーボード6およびマウス7は、データ入力デバイスの機能を果たす。あるいは、ディスプレイ5は、タッチ感知式および/または音声起動式であってよく、ディスプレイ5が入力および出力デバイスの両方の機能を果たすことができる。ネットワークインタフェース228は、有線または無線でネットワークに接続するように構成され得る。ネットワークインタフェース228を介して、コンピューティングシステム220は、たとえばカメラ11および経路システム25などの関連デバイスからのデータを受信し、それらにコマンドを送信する。またコンピューティングシステム220は、手術の計画および実行中に用いるために、たとえば病院サーバ、インターネットサーバ、または他の同様のサーバなどのサーバから、患者の画像データ、たとえばコンピュータ断層撮影(CT)画像データを受信してもよい。アプリケーション236は、メモリ222に格納されプロセッサ224によって実行される1または複数のソフトウェアプログラムであってよい。ソフトウェアプログラムは、ナビゲーション画像および様々なユーザインタフェースの生成を含む、後述するコンピュータ関連機能を実行する。
【0011】
本発明の多くの態様は、医療画像のソフトウェア操作に関連するが、本発明の1つの実施形態は、OR台の改善に関連する。後に明らかになるその理由として、本発明の特定の実施形態の1つの重要な特徴は、OR台に対して移動しないように手術を受けている患者の解剖学的構造を固定することである。
図3Aおよび
図3Bは、手術処置中に移動しないように患者を固定するために役立つ安定化面をもたらすよう改良されたOR台を提示する。
図3Aは、たとえば脚部支持パッド71、骨盤支持パッド75、および頭部支持パッド73などの一連の患者支持面またはパッドを有するレール型OR台70(たとえばアレンアドバンスドまたはジャクソン放射線透過性OR台)の上部を示す。支持パッドは、場合によっては、「台アダプタ」とも称され得る。
図3Bは、骨盤支持パッド75上に位置するうつ伏せ姿勢の患者の骨盤または臀部構造の断面を示し、骨盤支持パッド75の構造も同様に示す。この骨盤支持パッド75の実施形態は、少なくとも3つの発泡材層を含み、各層は異なる密度または剛性を有し、最上層(または「患者境界層」)76は最も低い剛性の層であり、最下層78は最も高い剛性の層である。最下層78は、非常に剛性の高い裏当て層79に(たとえば接着剤によって)固定され、裏当て層79は、OR台のレールに連結された支持ブラケット74に取り付けられる。
【0012】
1つの実施形態例において、最上層76は、Aスケールのショア硬度で30~40の剛性または硬度を有し、中間層77は、50~70の硬度を有し、最下層78は、70~90の硬度を有し、裏当て層79は、更に高い硬度を有する。一般に、層厚さは、0.5センチメートル~10センチメートル、好適には1~5センチメートルで変動する。特定の実施形態において、層は、最上層76から最下層78に向かって厚さが増加する。好適な実施形態において、層は、粘弾性ポリウレタン発泡材で形成される。
【0013】
図4および
図5は、OR台70上のうつ伏せ姿勢の患者を示す。この位置において、2つの対向する内側および下側に傾斜した骨盤支持パッド75は、患者の骨盤または臀部構造を支える役割を果たし、患者の体重によって患者の位置を安定させることが理解される。また
図4は、患者の骨盤および胸椎領域を更に不動にするために一連の患者固定シート85が患者の上でどのように延伸し、患者の両側でOR台に固定されるかも提示する。一般に、固定シートは、患者の身体に加わる力を分散させ、血液循環を抑制しないように、幅4インチ~18インチの通気性のある伸縮性布シートまたはバンドである。一例において、固定シートは、コネチカット州スタンフォード所在のInterventional Systems USAが販売するiFIX Fleeceストリップであってよい。ただし、固定シートは代替として、共柔軟性伸縮包帯、十分なパッド材を有するカスタム設計ベルト、または手術プロセスに干渉せずに関連する患者の解剖学的構造をOR台に安全かつ確実に固定するための実質的に全ての手段であってよい。
【0014】
図5Aは、OR台に固定された患者を用いて、カメラ11が手術視野90に対し動かないように光学センサ(たとえば
図5Aのカメラ11)を固定することを含む本発明の1つの方法の視覚化を可能にする。
図5Aの実施形態において、この相対的な固定は、上述したように患者をOR台に固定し、その後、任意の従来の手段によってカメラ11をOR台に固定することによって実現される。
図5Aは、OR台のレールを把持するベッド取付けブラケット13と、取付けブラケット13をカメラ11に連結する複数の位置決めアームセグメント14A~14Cとを示す。係止スリーブ16Aは、位置決めアームセグメント14Bがアームセグメント14Bに対し回転することができるように緩められてよく、その後、係止スリーブ16Aは、アームセグメントの相対位置を係止するために締められる。またアームセグメント14Bは、アームセグメント14Aから伸縮自在に延びてもよく、係止スリーブ16Aは、この伸縮関係も固定する。同様に、係止ヒンジ15は、位置決めアームセグメント14Cが14Bに対し回転し、その後、所望の相対位置で係止されることを可能にする。係止スリーブ16Bは、カメラ11がアームセグメント14Cに対し回転し、その後、定位置で係止されることを可能にする。この機械構造を用いることにより、カメラ11は、手術処置に干渉せず、かつ手術処置中に用いられる任意の追跡アレイ(たとえば、後にその機能が詳しく説明される
図5Aの追跡アレイ40)をその視野内に維持するような位置にある。例示した実施形態において、カメラ11は、カナダのキッチナー所在のIntellijoint Surgical社が販売する単眼式位置特定カメラであってよい。
【0015】
図5Aは、患者およびカメラをOR台に固定することによる手術部位とカメラとの相対的な固定を示すが、この相対的な固定は、他の方法によって確保されてもよい。たとえば、OR台が手術室の床に確実に固定されている場合、カメラも同様にORの床に固定され得る。患者がOR台に対し不動である場合、カメラおよび手術部位は、互いに相対的に固定される。また
図5Bに示す追加の実施形態において、カメラ11は、患者の骨格構造に固定されてよく、その一例は、患者の寛骨または他の骨盤骨にピンで留められた、または患者の脊椎骨に直接的に締着されたロッド20または同様の構造に取り付けられたカメラ11であってよい。この後者の方法において、骨盤に対して比較的動きのない手術部位(たとえば腰椎)の場合、OR台に対する患者の固定はさほど重要ではない場合がある。好適な実施形態において、カメラ11は、加速度計および/または重力計を備える。これらのセンサは、カメラ11のあらゆる不慮の動き(たとえば、手術従事者が意図せずカメラに当たること)を検出する役割を果たしてよい。これらのセンサがカメラの動きを検出した場合、システムは、カメラと手術部位との相対的な固定を変化させた可能性があるカメラの動きに関する警告を生成してよい。
【0016】
上述したように、手術室内に位置する患者の解剖学的構造は、カメラによって追跡され得るプローブまたはレジストレーションアレイを用いて放射線画像データにレジストされる。
図4は、手術部位における患者の解剖学的構造の放射線画像を作成するために配置された手術中のX線撮像システム200(たとえばミネソタ州ミネアポリス所在のMedtronic社が販売するO-arm Imaging System)を示す。手術部位の上に、レジストレーションアレイ60が配置される。レジストレーションアレイ60の更に詳しい説明は後述される。ここでは、レジストレーションプロセスが、患者の解剖学的構造に対し固定されレジストレーションアレイ60を検出するカメラ11を用いて、OR台上に位置する対応する患者の解剖学的構造の3次元座標と相関するように3次元放射線画像データを変換し得ることに留意するだけでよい。
【0017】
一般に、手術ナビゲーションシステムは、何らかの種類の手術器具位置整合ガイドを用いる。位置整合ガイドは、多くの場合、円筒形チューブまたはスリーブであり、その中を通って、たとえばオウル、ドライバ/ねじアセンブリなどの手術器具が方向付けられる。
図5Aを見ると、本発明の他の態様は、手術器具と共に位置整合ガイドを用いるための準備として手術視野の上に位置整合ガイドを配置するためのシステムおよび方法(および関連ソフトウェア)である。
図5Aに提示するように、器具ガイド37は、経路システム25全体の一部である標的化プラットフォーム26に取り付けられる。ロボットアーム27は、標的化プラットフォーム26から延び、器具ガイド37に連結される。ロボットアーム27を用いて、標的化プラットフォーム26は、器具ガイド37を短い距離(数センチメートル)で伸縮させ、また回転させることもできる。標的化プラットフォーム26は、上述したようなカメラ11を支持するものと同様の一連の調節可能位置決めアームによってOR台に固定される。(場合によっては「第1のマーカアレイ」と称される)器具ガイド追跡アレイ40が器具ガイド37に固定されることにより、カメラ11は、器具ガイド37の位置および向きを追跡することができる。例示した実施形態において、標的化プラットフォーム26は、オーストリアのキッツビュール所在のiSYS Medizintechnik社(通称、Interventional Systems)が販売するMicromate(登録商標)パーソナルロボット支援システムであってよい。
【0018】
器具ガイド37を適切に配置するために、手術器具またはインプラント部品(たとえば椎弓根スクリュー)の予定経路に器具ガイドを位置整合させる必要がある。標的化プラットフォーム26は、器具ガイド37に比較的小さな調整しか行うことができないので、器具ガイド37が予定経路の比較的近く(数センチメートル範囲内)に配置されるように、手術要員が標的化プラットフォーム26を手動で配置する必要がある。その後、この標的化プラットフォームの大まかな位置が、標的化プラットフォームを支持する調節可能位置決めアーム上の係止ヒンジおよび係止スリーブによって定位置に固定され得る。
図5Aは、本明細書で説明される標的化プラットフォーム26の様々な機能を無線で制御するために用いられ得る制御ユニット35も示す。
【0019】
図6A~6Dは、この標的化プラットフォーム26および器具ガイド37の最初の大まかな位置決めを実現する際に手術従事者を支援するための新規的なユーザインタフェースを示す。
図6Aに提示するように、器具ガイド追跡アレイ40は、カメラ11の視野内に位置する。このユーザインタフェースを制御する一般的なアルゴリズムは、
図19に提示される。
図19のステップ301は、手術従事者が放射線画像にインプラント部品の経路を重ね合わせることを可能にするソフトウェアによる手術計画の入力を考慮する。ステップ302において、コンピュータシステムは、予定経路の画像座標をカメラ座標に変換する。これにより、ステップ303において、コンピュータシステムは、手術計画の各経路を表す円盤または「経路目標」を表示することができる。
図6Bは、予定インプラント経路の1つ(たとえば手術計画における最初のインプラント部品)の位置および向きを表すこの経路目標47の表示を示す。同様に、ディスプレイ上には、カメラによって検出された器具ガイドの位置および向きを表す3次元アーチファクト46も示される。例示した実施形態において、経路目標47は、環形状として示され、環内径48を有する。3次元アーチファクト46は、環内径48に近い径を有する円筒形状である(したがって「円筒形46」とも称される)。ソフトウェアは、カメラ11からのデータを介して、3次元における器具ガイド追跡アレイ40の動きを追跡する。カメラデータに応答して、ソフトウェアは、カメラの視野内で器具ガイドが動くと同時にディスプレイ上の円筒形46の画像を更新する。これは、システムが器具ガイドの位置および向きを受信し、この情報をカメラ座標に変換する、
図19のステップ304に表される。ステップ306において、円筒形46の更新された位置がディスプレイ上に示される。円筒形46が経路目標47と位置整合していない場合、システムは、器具ガイドの次の位置を受信する。
【0020】
図6Aに提示するように、器具ガイドは、ユーザとディスプレイとの間に位置する。ソフトウェアは、器具ガイド37の動きが、ディスプレイ上の円筒形46に関して同じユーザ視点の動きをもたらすように、円筒形46の位置を表示および更新する。たとえば、ユーザ視点から見て器具ガイドの左方向への動きは、円筒形46の左方向への動きとしてディスプレイ上に示される。同様に、ユーザの方向に向かう器具ガイドの動きは、ディスプレイ上の円筒形46の下方向への動きとしてディスプレイ上に示される。同様に、器具ガイド37の回転は、ディスプレイ上の円筒形46の同じ方向への回転として表される。
【0021】
上述したように、標的化プラットフォーム26のロボットアームは、限られた範囲の機械的「リーチ」、すなわち、標的化プラットフォーム自体が器具ガイドの位置決めを制御することが可能な距離を有する。
図6Cに提示するように、予定経路からの器具ガイドの距離が標的化プラットフォームの機械的リーチの範囲内であることをシステムが検出すると、ソフトウェアは、その通りのインジケータ(たとえば、
図6Cに示す「リーチ内」インジケータ)をディスプレイ上に示す。標的化プラットフォームの機械的リーチの範囲内で器具ガイドおよびロボットアームがユーザによって動かされた後、コンピュータは、制御を引き受け、標的化プラットフォームおよびロボットアームに、ロボットアームが自動的に器具ガイドを予定インプラント経路と位置整合させることを可能にする命令を提供する。これは、
図19の同じステップ305~306に基本的に従って実現され得る。器具ガイドが予定経路と位置整合すると、
図19のステップ306の条件は肯定となる。
図6Dにおいて、円筒形46は経路目標47の中心に示され、たとえば「位置整合」などのインジケータが表示される。
【0022】
本発明の他の実施形態は、手術処置中の手術器具のより正確な経路推定を生成するためのシステムおよび方法である。
図7は、手術部位の上で位置整合した器具ガイド37およびその経路アレイ40を示す。また、器具ガイド37を介して手術器具55(たとえばオウル)を挿入しているユーザも示される。手術器具55には、(場合によっては「第2の追跡アレイ」または「第2のマーカアレイ」とも称される)手術器具追跡アレイ50が固定される。理解されるように、医療器具の追跡アレイに関するカメラ11の検出に基づいて、ナビゲーションシステムソフトウェアは、追跡アレイの向き(およびそれに伴う医療器具の向き)を決定し、その後、手術部位における患者の解剖学的構造の放射線画像に重ね合わせられた医療器具の推定経路をシステムに表示し得る(たとえば
図9Aおよび
図9Bを参照)。
【0023】
器具追跡アレイ50のIRマーカ要素52に基づく器具経路の計算は、いくつかの応用に関して許容可能であり得るが、多くの場合、最も正確な器具経路を実現可能にすることが望ましい。
図8は、器具経路を推定する新規的なアプローチを示し、これは、器具ガイド追跡アレイ40のIRマーカ要素42と共に器具追跡アレイ50のIRマーカ要素を用いる。
図8の例において、カメラは、8つのIRマーカ要素を検出し、基本的に、画像捕捉時の2つの追跡アレイを瞬間的な単一剛体の8マーカ要素アレイとして扱う。器具追跡アレイ50が(たとえば手術器具の前端が器具ガイドを通って患者の体内へ移動すると同時に)ガイド追跡アレイ40に対する位置を変更しても、システムソフトウェアは、カメラ11によって検出される「8マーカ要素アレイ」の変化に基づいて更新された経路を計算する。言い換えると、システムは、第1の時間フレームにおいて、器具追跡アレイ50およびガイドトラッカアレイ40の両方のIRマーカ要素の位置に基づいて経路を計算し、その後、第2の時間フレームにおいて、器具追跡アレイ50およびガイドトラッカアレイ40のIRマーカ要素のその後の位置に基づいて更新された経路を計算する。
【0024】
理解されるように、IRマーカアレイの数が多いほど、またIRマーカ要素間の地理的間隔が大きいほど、より正確な経路推定の提供に適している。この技術には多数の変形例が存在し得る。一例として、
図8には、器具追跡アレイ50のIRマーカ要素52がガイド追跡アレイ40のIRマーカ要素42とは異なる空間配置を有することが示され得る。これにより、システムは、2つの追跡アレイを区別し、場合によっては、器具および/または手術処置の特定の状況が与えられた場合により正確な経路推定を生成する可能性が高い場合、経路計算において一方の追跡アレイのIRマーカ要素に他方よりも大きな重みを与えることが可能である。
【0025】
本発明の追加の態様は、手術器具の許容可能な位置整合度を示すためのシステムおよび方法である。詳しくは
図10に模式的に提示するように、システムは、器具先端部56および器具後部57の両方の位置を識別する。一例において、これは、器具追跡アレイ50のみに基づいて行われてよい。システムは、器具の寸法、および追跡アレイ50がどのように器具に固定されているかを知っているので、追跡アレイ50の位置を決定することにより、システムは、器具先端部および後部の位置を計算することが可能である。他の例において、器具ガイド37の下端が(ガイド追跡アレイ40の位置に基づいて同様の方法を用いて)決定され、器具ガイドの下端の位置が、器具先端部の位置の推定に用いられる。更に追加の代替例として、
図8で説明される方法は、器具の先端部および後部の決定に用いられ得る。
【0026】
器具先端部および後部の位置が計算されると、先端部および後部の位置に基づいて推定器具経路58が計算され得る。
図10に提示するように、その後、予定手術経路45と推定器具経路58との比較が行われ得る。予定手術経路45と、たとえば器具先端部56における推定器具経路58との間のオフセット距離「d」は、予定経路からの器具経路の変動を決定するために計算され得る。当然、このオフセット距離「d」は、後部において、または器具に沿った考えられるどの位置においても計算され得る。オフセット距離「d」が設定閾値を超過する場合、システムは、位置不整合の警告をディスプレイ上に提示する(たとえば
図9Bを参照)。同様に、位置不整合の警告は、手術器具の画像を赤色でディスプレイ上に提示することも含んでよい。同様に、手術器具の画像は、オフセット距離が閾値未満である場合、緑色でディスプレイ上に提示され得る。特定の実施形態例において、この閾値は、約2mm以下である。
【0027】
図21は、医療器具と予定手術経路との許容可能な位置整合を決定し示すための1つの方法のフローチャートである。ステップ320および321において、システムは、それぞれのトラッカアレイ、および器具ガイドおよび手術器具とそれぞれのトラッカアレイとの間の既知の寸法関係に基づいて、器具ガイドおよび手術器具(たとえばオウル)の先端部および後部の位置を決定する。ステップ322において、器具ガイドの先端部および後部は、延長線を生成するための2点として用いられる。器具ガイドは予定手術経路を辿るように向けられているので、この延長線もまた、予定手術経路に沿っている。ステップ323において、システムは、この直線上の、手術器具の先端部(および/または後部)との最接近点を見つける。ステップ324は、オウル先端部と、直線上の最接近点との間の距離を計算する。ステップ325において、この距離が所与の閾値未満である場合、ステップ327において、システムは、直線に対する先端部の最接近点を用いて放射線画像上に手術器具を表示する。この距離が閾値を超過する場合、ステップ326は、オウルおよび器具ガイドに関して赤色状態を表示する。
【0028】
図4を参照して上述したように、本発明の特定の実施形態は、放射線画像を生成する時にレジストレーションアレイ60を用いることを含む。
図11は、レジストレーションアレイ60の1つの実施形態を更に詳しく示す。このレジストレーションアレイ60の例は、プレート部63から外に延びるマーカフレーム(またはマーカ支持構造)61で形成される。マーカフレーム61は、IRマーカ要素62を支持し、プレート部63における開口部列は、後に詳しく説明される「基準」64を形成する。
【0029】
図14は、本発明の1つの実施形態によって行われるソフトウェア機能の全体的概観を提供する。スタート250において、システムは、ステップ251におけるセットアップ状態を表示する。一般に、次のステップ(252)は、放射線画像を取得する命令を表示する。システムは、ステップ253において放射線画像を受信し、ステップ254において自動的に画像をカメラにレジストする。レジストレーションプロセスの特定の態様は、本明細書のどこかで更に詳しく説明される。画像は、取得されレジストされた後、ステップ255において表示される。ステップ256は、手術従事者が手術計画を有効化し、そのような計画を表示することを可能にする。たとえば、患者の解剖学的構造における椎弓根スクリューの位置が決定され、計画プロセスの一部として放射線画像上に表示され得る。ステップ257は、器具ガイドを手術部位の上の適切な経路に位置整合する際に支援するためのガイダンスビュー(その一例が上述される)を表示する。ステップ258は、器具がカメラの視野内に入ると同時に放射線画像に関連して器具を表示する(たとえば
図9A)。
【0030】
放射線画像を生成する前に、レジストレーションアレイ60は、手術部位上または手術部位に隣接した位置にある。
図4は、テープによって手術部位で患者に固定されているレジストレーションアレイ60を示すが、放射線撮像の完了後にレジストレーションアレイ60が容易に取外し可能であれば、他の固定手段が用いられてもよい。多くの撮像/レジストレーション技術において、放射線画像が生成されている間、レジストレーションアレイが手術部位に対し動かないことが重要である。したがって、本発明の他の態様は、撮像プロセス中の動きに関してレジストレーションアレイを監視するための方法である。このプロセスの一例は、
図20のフローチャートに提示される。ステップ310において、コンピュータシステムは、カメラ11によって、レジストレーションアレイ60(または具体的にはレジストレーションアレイ60上のIRマーカ要素62)の動きに関する監視を開始する。ステップ311において、開始位置は、カメラ11によって最も新たに検出された現在位置と等しく設定される。ドウェルカウンタが0に設定される。ステップ312~315のループにおいて、コンピュータシステムは、継続的に(たとえばシステムのフレーム速度で)レジストレーションアレイの現在位置を決定し、その後、開始位置とその時点の現在位置との差(変位または距離)を決定する。本明細書で用いられる場合、「フレーム速度」とは、システムがトラッカアレイの位置を計算し、それぞれの器具の位置をディスプレイ上で更新することが可能な速度を意味する。ステップ314における距離の差が距離閾値を超過しない限り、ステップ315においてドウェルカウンタはインクリメントされ、ループは継続する。この距離閾値は変動し得るが、一例において、距離閾値は1mmである。
【0031】
距離が距離閾値を超過する場合、ステップ316は、ドウェルカウンタがステップ316においてカウンタ閾値を超過するかを決定する。この条件が満たされない場合、開始位置は、その時点の現在位置に再設定される。この条件が満たされる場合、システムはアレイ動作エラーインジケータを表示する。カウンタ閾値は、距離閾値を超過していない間の所与の時間量を表す(ドウェルカウンタがインクリメントされるループの数に関して表される)。基本的に、レジストレーションアレイが認識可能な程度、すなわちレジストレーションプロセスに許容不可能なエラーがもたらされる程度に動いていない時間である。当然、ソフトウェアループをカウントするのではなく、カウンタ閾値は、単に指定された時間量であってよく、ドウェルカウンタは、経過した時間であってよい。実際に、
図20のアルゴリズムは、レジストレーションアレイの位置に一連の小刻みの変化が存在する場合、たとえばOR従事者が手術部位の上でレジストレーションアレイを固定する間にレジストレーションアレイがカメラの視野内で絶えず動いている場合、エラーまたは警告をトリガしない。しかし、残りの静止した期間の後にレジストレーションアレイが動いた場合、この動きが(たとえば放射線撮像プロセス中の)不慮のものである可能性が高く、エラー通知が生成される。1つの実施形態において、ステップ316における閾値時間は、3秒に設定されるが、他の実施形態において、閾値時間はわずか1秒であってもよい。
【0032】
図12は、システムが放射線画像の生成中にレジストレーションアレイの動きを検出した場合に生成され得るエラーメッセージの一例を提示する。カメラがその視野内でアレイを検出できなかった場合、またはシステムが放射線画像内でレジストレーションアレイのプレートを検出できなかった場合、同様のエラーメッセージが生成され得る。
【0033】
本発明の更に追加の態様は、
図11に示すレジストレーションアレイ60の構造に関する。プレート部63は略長方形であり、プレート部に形成された一連の「基準」64を有することが分かる。
図11において、基準は、プレートに形成された開口部または鋭角の窪みであるが、突起部、すなわち隆起やプレート部に付着した球体であってもよい。
図11は12の基準を示すが、より少ないまたは多い数の基準64があってもよく、多くの実施形態は少なくとも6つの基準を有する。マーカ支持構造61は、長方形プレート部63の短辺の一方またはその付近(たとえばプレートの全長の20%以内)に上向きに延びる。マーカ支持構造63は、プレート部63を含む平面に対し略垂直な(たとえば垂直から+/-30°の範囲内の)平面にある。マーカ支持構造の好適な実施形態は、少なくとも4つの球形IRマーカ要素62を含む。
【0034】
図13Aは、画像体積95を有する3D放射線画像の捕捉と共に用いられるレジストレーションアレイ60を提示する。この実施形態において、プレート部63の長さは、画像体積95の長さと概ね一致しなければならず、プレート部63の長さは、画像体積の長さの75%以上である。多くの実施形態において、プレート部63は、150mm~300mmの長さおよび50mm~150mmの幅を有する。
【0035】
図13Aに示すように放射線画像の画像体積95がプレート部63を含む場合、基準64は、カメラ11によって見える3D空間に対し放射線画像をレジストする際に支援するために用いられ得る。ただし、画像をレジストする前に、コンピュータシステムで実行しているソフトウェアによって3D画像データ内で基準が識別される必要がある。
図15のフローチャートに提示するように、ステップ260において画像体積が受信され、その後ステップ261において、体積は、レジストレーションプレートが発見されると予想される体積後部(たとえば半分)を含むようにクロップされる。この(場合によっては「第1の」画像体積と称される)体積をクロップすることにより、プレートを探索する際に処理されるデータの量が低減されるので、処理時間が低減される。ステップ262において、他の画像要素(たとえば
図13Aに示す骨構造)に対してプレート部63に関連する画像要素を区別すると思われる画像特徴に関して初期閾値が設定される。1つの実施形態において、閾値を較正する画像特徴はグレースケールであり、すなわち、プレートに関連する画像特徴は、他の画像要素とは異なるグレースケール値である可能性が高い。ステップ263および264は、クロップされた画像体積のその他の部分からプレートが識別され得るかを決定する。否である場合、閾値が増大(たとえばグレースケール値が増大)され、プレートを発見するために他の試みがなされる。したがって、レジストレーションプレートを発見するためのプロセスは、画像閾値を反復的に増大させるステップを含む。
【0036】
ステップ263においてプレートを発見するためのアルゴリズムの一例が
図16に示される。
図16のステップ273は、第1のクロップされた体積で開始し、ステップ274において、体積内の全ての物体を識別するために連結成分解析を行う。次にステップ275において、サイズ、形状、および体積を含む各物体の幾何学的特徴が決定される。最後にステップ276において、プレートの幾何学的特徴に最も合致する物体が結果として選択される。
【0037】
図15およびステップ264に戻り、プレートが発見された場合、ステップ266は、プレート内の基準を探索するための準備として、識別されたプレートに関連する「第2の」画像体積(たとえばプレート体積の約120%)をクロップする。ステップ267において、プログラムは、一例として
図17に示すアルゴリズムを用いて、基準の探索を開始する。ステップ280における第2の画像体積は、初期処理ステップであるステップ281、282、および283における膨張、エロージョン、およびマスキングを受ける。
図13Bに提示するように、(基準開口部を示す)第2の画像体積の初期バージョンは、大部分が埋められた基準開口部を示す画像を生成するために膨張される。次に、エロージョンにより、基準開口部のあらゆる視覚的な痕跡が消される。その後、初期画像は、基準開口部の鏡像、すなわち基準開口部に代わる一連の小さな円筒形を構成する最終的な表現を作成するためにエロージョン処理された画像のマスクとして用いられる。次に
図17において、ステップ284は、この最新の基準画像における全ての物体(たとえば、ここでは円筒形が基準を表す)を発見するために連結成分解析を用いる。ステップ285は、ステップ284において発見された全ての物体の幾何学的形状を計算し、ステップ286は、たとえば伸長および体積などの幾何学的特徴を用いて、予想される円筒形サイズおよび基準の形状と合致しない物体を削除する(外れ値を除去する)。ステップ287において、その他の物体に関して点間距離(IDP)が計算され、各物体に関するIDPエラーを計算するために、これらの物体の位置が、元のプレートにおける基準の既知のグリッド間隔と比較される。ステップ288において、グリッド間隔に対応しない(すなわち許容不可能なIDPエラーを有する)全ての物体が外れ値として除去される。
【0038】
最後に、ステップ289において、大半の基準と同じ平面(すなわちプレートの推定平面)にない全ての物体を識別し除去するために、ランダムサンプルコンセンサス(RANSAC)解析が用いられる。
【0039】
図18は、RANSAC解析の一例を提示する。ステップ291において、IDPエラー解析の後に存在する物体を表す点のセットが確立される。ステップ292において、3つの点が、平面を画定するためにランダムに選択され、次にステップ293が、全ての点に関して平面との距離を計算する。ステップ294は、平面またはその付近にない点を除去する。ステップ295において、残っている点の数が所与の最小値(すなわち予想される基準の数)以下である場合、プロセスは再開され、新たな平面が画定される。残っている点の数が最小値より大きい場合、ステップ296において、残っている点が基準に対応すると推定される。
図15に戻り、マーカアレイ座標(すなわち、レジストレーションプレートの上に延びるマーカ要素を視野に入れているカメラによって決定された座標)内の基準モデルに対応するように、ステップ269において基準の位置が分類される。言い換えると、システムは、基準と、レジストレーションアレイ60上のIRマーカ要素との間の位置関係を知っているので、カメラの座標系における基準の位置が生成され得る。最後に、
図15のステップ270において、カメラ座標から画像座標に点を変換する基準レジストレーションが計算される。
【0040】
「約」という用語は、一般に、近似する数値、および小さな変動が開示される実施形態の実施に大きな影響を及ぼさない数値を意味する。数値制限が用いられる場合、文脈によって特に指示されない限り、「約」とは、数値が、+/-5%、+/-10%、または特定の実施形態において+/-15%、場合によっては+/-20%も、変動し得ることを意味する。同様に、「実質的に」とは、一般に、この用語が修飾する特徴の少なくとも85%~99%を意味する。たとえば、「実質的に全て」とは、85%以上、90%以上、または95%以上などを意味する。
【0041】
本開示の好適な実施形態が説明されたが、説明された実施形態は典型例にすぎず、本発明の範囲は、本明細書の閲読によって当業者が自然に思い至る多数の変形および修正を伴う全ての範囲の均等物を認める添付の特許請求の範囲のみによって定義されるべきであることが理解される。