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特許7344382制御装置用の給電線エラー検知のための監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】制御装置用の給電線エラー検知のための監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/58 20200101AFI20230906BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20230906BHJP
【FI】
G01R31/58
G01R31/54
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022525682
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020077804
(87)【国際公開番号】W WO2021089257
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102019217083.8
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ツーシュラグ,ライナー
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102010001335(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00644429(EP,A2)
【文献】特開2010-223907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置(1)用の給電線エラー検知のための監視装置(10)であって、
前記制御装置(1)内に配置された互いに冗長な少なくとも2つの給電用内部供給線(LB1、LB2)であって、一端が外部供給線(L1_GND、L2_GND)に、他端が前記制御装置(1)の共通の内部供給電位層(C_GND)にそれぞれ電気的に接続されているものと、
前記少なくとも2つ給電用内部供給線(LB1、LB2)の個々の電流を誘導的に検出し、少なくとも1つの対応する測定信号を出力する信号検出部(12)と、
給電線エラー検知のために前記少なくとも1つの測定信号を評価する評価制御ユニット(16)とを備え、
前記少なくとも2つの給電用内部供給線(LB1、LB2)は、前記制御装置(1)の前記共通の内部供給電位層(C_GND)との電気的接続点の上流で、各々が少なくとも1回の巻数を有する少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)をそれぞれ構成し、
前記信号検出部(12)は、前記少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)のそれぞれに対して少なくとも1つの平面型センサコイル(LS1、LS2)を有し、
前記平面型センサコイル(LS1、LS2)は、それぞれ前記少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1,LG2)の1つに対応付けられ、内部スイッチング動作に起因する、前記少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)のうちの対応する供給線コイルの高周波ダイナミック電流を検出する
ことを特徴とする監視装置(10)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)は同一に実装されており、前記少なくとも2つの平面型センサコイル(LS1、LS2)は、前記少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)よりも大きい巻数で同一に実装されていることを特徴とする、請求項1に記載の監視装置(10)。
【請求項3】
前記少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)はそれぞれ、多層回路基板(20)の第1の回路基板層(S1~S10)に配置されており、前記対応付けられた少なくとも1つの平面型センサコイル(LS1、LS2)は、前記第1の回路基板層(S1~S10)上方または下方の第2の回路基板層(S1~S10)に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の監視装置(10)。
【請求項4】
前記平面型センサコイル(LS1、LS2)と前記平面型供給線コイル(LG1、LG2)とは、それぞれ異なる回路基板層(S1~S10)に配置されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の監視装置(10)。
【請求項5】
前記対応付けられた少なくとも1つの平面型センサコイル(LS1、LS2)は、少なくともいくつかの領域において、前記対応する平面型供給線コイル(LG1、LG2)を覆うことを特徴とする、請求項3または4に記載の監視装置(10)。
【請求項6】
信号処理部(14)は、前記信号検出部(12)と前記評価制御ユニット(16)との間に介在して接続され、前記信号処理部(14)は、前記検出された少なくとも1つの測定信号を処理することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の監視装置(10)。
【請求項7】
前記信号処理部(14)は、整流器(14.1)および/またはフィルタ(14.2)および/または増幅器(14.3)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の監視装置(10)。
【請求項8】
制御装置(1)用の給電線エラー検知方法(100)であって、
前記制御装置(1)で、一端が外部供給線(L1_GND、L2_GND)に、他端が共通の供給電位層(C_GND)にそれぞれ接続された互いに冗長な少なくとも2つの給電用内部供給線(LB1、LB2)における電流をそれぞれ誘導的に検出するステップと、
当該検出された電流信号を互いに比較して評価するステップとを備え、
共通の内部供給電位層(C_GND)との電気的接続点の上流でそれぞれ前記少なくとも2つの給電用内部供給線(LB1、LB2)を構成する少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)において内部スイッチング動作に起因して前記少なくとも2つの給電用内部供給線(LB1、LB2)を流れる高周波ダイナミック電流を、前記少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)のうちの対応する平面型供給線コイルに対応付けられた少なくとも1つの平面型センサコイル(LS1、LS2)によって電流として検出する、
ことを特徴とする方法(100)。
【請求項9】
前記少なくとも2つの平面型供給線コイル(LG1、LG2)における電流分布が所定の公差範囲内で同一である場合は、給電線エラーを検知せず、そうでない場合は、給電線エラーを検知することを特徴とする、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項10】
異なる公差範囲によって、前記検知された給電線エラーに対して異なる精度クラスが指定されることを特徴とする、請求項9に記載の方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1に記載の制御装置用の給電線エラー検知のための監視装置に基づく。また、制御装置用の給電線エラー検知方法も本発明の主題である。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、例えばエアバッグ制御装置などの制御装置で、冗長的に実装された接地源を有するものが知られている。この冗長性によって、例えばケーブルの断線やコネクタの酸化接触など、不具合により冗長的に実装された接地線のいずれかが使用できなくなった場合でも、制御装置は妨害されることなく機能し続けることができる。制御装置自体には、少なくとも1つの接地線が冗長としてまだ存在しているため、このような欠陥があっても、まず機能に影響がない。しかし、特に自動車安全水準(ASIL:Automotive Safety Integrity Level)評価の高い制御装置では、検出されない(休眠)エラーが発生しないか、非常に少ないことが理想的である。
【0003】
個々の制御装置の接地電位が大きく異なることを防ぐために、個々の接地線の最大インピーダンスが要求されている。特に個々の制御装置間の通信は、このような接地電位の「接地シフト」と呼ばれるずれの影響を受けやすい。さらに、制御装置と接地の接続が非常に良好でなければ満たすことができないEMC/ESD要件がある。特に冗長的に実装された接地線では、接地線のうち1つインピーダンスが上昇し、場合によっては断線するまで上昇するかどうかの監視が課題となる。低い要求インピーダンスは、やはり冗長的に実装された接地線によって与えられる。このため、一般的には車両バッテリの負極である車両電源装置の接地電位と、各制御装置の接地電位との間の通常の抵抗測定はここで失敗する。
【0004】
独国公開特許第102010001335号によれば、給電線エラーを検知するためのこの種の監視装置を備えた電子装置が知られており、この装置は、装置の外側に位置する少なくとも1つの冗長な給電用供給線を含み、この供給線が装置に少なくとも部分的にまたは完全にエネルギーを供給し、外側に位置する冗長な供給線が、それぞれ装置内部に配置された、例えば導体路などの内部導体に電気接続されている。内部導体は互いに隣接した領域で延在し、内部導体に隣接して、特に内部導体の間には、静磁場および/または時間依存の磁場を測定することができる少なくとも1つの磁場検出ユニットが配置されている。磁場検出ユニットで得られた信号から供給線のエラーを検知し得るエラー信号を取得する給電線エラー検知回路が監視装置内に存在する。最も単純なケースでは、磁場検出ユニットは、特に信号強度を高めるために、高透磁率の材料からなるコイルコアを有する磁気コイルであることが好ましい。コイルコアは、例えば強磁性材料から製造されている。磁気コイルの巻数は、使用スペースに対して可能な限り高い測定感度を得られるように構成されている。一般的に、磁気コイルは、回路基板にコンパクトに実装できるように構成された巻芯を有する。例えば、コイルは、短い寸法の円筒部分を有する糸巻き状の巻芯を有することができる。
【発明の概要】
【0005】
独立請求項1の特徴を有する、制御装置用の給電線エラー検知のための監視装置、および独立請求項8の特徴を有する、制御装置用の給電線エラー検知方法は、それぞれ、それぞれの供給線における電流分布を分析および評価することによって、冗長的に実装された供給線の1つにおけるインピーダンス増加の発見が可能であるという利点を有する。このため、冗長な供給線上の制御装置の帰還電流の高周波成分が、誘導的に評価制御ユニットに伝達される。信号品質を向上させるために、評価制御回路に信号処理部を前置接続してもよい。制御装置には、直流電源から、一般的はバッテリから電流供給される。ハイブリッド車や完全な電気自動車では、必要な直流電圧を供給するために、直流コンバータ電源を使用することも考えられる。この電流は、陽極から制御装置回路を経て直流電源の負極に戻るように流れる。制御装置内の様々なスイッチング動作により、陽極から制御装置ECU内に流れる電流は一定ではない。制御装置におけるこれらのスイッチング動作は、制御装置内の直流コンバータによるものの他、演算ユニット、センサ、アクチュエータなどのスイッチング動作、通信バス(SPI、メモリ用のアドレスバスやデータバスなど)を介した制御装置内部の通信、例えばCAN、フレックスレイ(FlexRay)、イーサネット(Ethernet(登録商標))などの車両バスシステムを介した他の制御装置との外部通信によって発生することがある。この内部スイッチング動作による制御装置の高周波ダイナミック電流の消費によって、冗長な供給線を有する制御装置の給電線エラーを検知して、著しく高いインピーダンスを有するエラー供給線を発見する。
【0006】
本発明の実施形態は、制御装置用の給電線エラー検知のための監視装置を提供し、この装置は、制御装置内に配置された少なくとも2つの互いに冗長な給電用内部供給線であって、一端が外部供給線に、他端が制御装置の共通の内部供給電位層にそれぞれ電気的に接続されているものと、個々の内部供給線の電流を誘導的に検出して少なくとも1つの対応する測定信号を出力する信号検出部と、給電線エラー検知のために少なくとも1つの測定信号を評価する評価制御ユニットとを備える。ここで、2つの内部供給線は、共通の内部供給電位層との電気的接続点の上流で少なくとも1回の巻数を有する平面型供給線コイルをそれぞれ構成し、信号検出部は、供給線コイルのそれぞれに対して少なくとも1つの平面型センサコイルを有し、このセンサコイルは、それぞれ供給線コイルの1つに対応付けられ、内部スイッチング動作に起因する対応供給線コイルの高周波ダイナミック電流を検出する。
【0007】
さらに、このような監視装置で実施できる制御装置用の給電線エラー検知方法が提案される。ここで、制御装置では、一端が外部供給線に、他端が共通の供給電位層にそれぞれ接続された少なくとも2つの互いに冗長な給電用内部供給線においてそれぞれ電流が誘導的に検出され、検出された電流信号は互いに比較されて評価される。ここで、共通の内部供給電位層との電気的接続点の上流にそれぞれ内部供給線を構成する少なくとも2つの平面型供給線コイルにおいて内部スイッチング動作に起因して少なくとも2つの内部供給線を流れる高周波ダイナミック電流は、対応する平面型供給線コイルに対応付けられた少なくとも1つの平面型センサコイルによって電流として検出される。
【0008】
少なくとも2つの冗長な供給線の供給接続が等しく良好である通常の場合、制御装置の供給電流は既存の冗長な供給線間で等しく分割される。評価制御ユニットは、冗長な供給線間の差を評価する。冗長な供給線の電流がほぼ等しく分布している場合、その差は非常に小さいか、ゼロに近づく。例えばケーブルの断線やコネクタの酸化接触などにより、冗長な供給線のインピーダンスが著しく上昇した場合、電流は冗長な供給線間で非対称に分配されるか、残りの供給線のみを経由して流れる。評価制御ユニットは、冗長な供給線間の有意な差を検出し、処理されフィルタリングされた信号をアナログ形式または既にデジタル形式で、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサ、あるいはさらなる処理のための演算ユニットに供給できる。さらに、評価制御ユニット自体をマイクロコントローラやマイクロプロセッサ、または演算ユニットの一部として実施してもよい。その後、演算ユニット上の対応するアプリケーションや機能が、運転者情報のためのさらなるステップを行ったり、エラーをエラーメモリに格納したりすることができる。
【0009】
評価制御ユニットは、本明細書では、検出されたセンサ信号を処理しまたは評価する電気回路であると理解することができる。評価制御ユニットは、少なくとも1つのインターフェースを有することができ、このインターフェースは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアによって構成することができる。ハードウェアによる構成の場合、インターフェースは、例えば、評価制御ユニットの様々な機能を含む、いわゆるシステムASICの一部とすることができる。しかしながら、インターフェースが固有の集積回路であるか、少なくとも部分的に別々の部材で構成されていてもよい。ソフトウェアによる構成の場合、インターフェースは、例えば、他のソフトウェアモジュールと共にマイクロコントローラ上に存在するソフトウェアモジュールであってよい。また、半導体メモリ、ハードディスクメモリ、光メモリなどの機械読み取り可能な担体に格納され、評価制御ユニットでプログラムが実行されると評価を行うために用いられるプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品も有利な点である。
【0010】
供給線とは、本明細書において、制御装置に対応する電圧電位を供給する接地線または電圧供給線であると理解される。例えば、制御装置の冗長的な接地電位の供給を、少なくとも2つの冗長な接地線を介して実装することができる。制御装置では、対応する冗長な内部接地線を共通の接地電位層でまとめることができる。したがって、少なくとも2つの冗長な電源線を介して冗長な電源を実現することができる。制御装置では、対応する冗長な内部接地線を共通の設置電圧層にまとめることができる。
【0011】
従属請求項に挙げられた手段およびさらなる改善された形態により、独立請求項1に記載された、制御装置用の給電線エラー検知のための監視装置、および、独立請求項1に記載された、制御装置用の給電線エラー検知方法に対して有利な改善が可能である。
【0012】
特に、少なくとも2つの平面型供給線コイルを同一に実装できることが有利である。さらに、少なくとも2つの平面型センサコイルは、少なくとも2つの供給線コイルよりも大きい巻数で同一に実装されてもよい。制御装置内の共通電位層や車両内の供給線への影響を最小限に抑えるため、内部スイッチング動作によって発生する、共通の供給電位層上の全ての回路部品から集めた高周波ダイナミック電流が、同一の平面型供給線コイルを通して冗長な内部供給線に導電される。平面型供給線コイルは、制御装置の電流要件を満たすために、広い導体路で比較的少数の「巻数」を有する。内部スイッチング動作によって発生する高周波ダイナミック電流は、平面型供給線コイルに小さな電磁場を誘発する。この電磁場は、1つまたは複数の平面型センサコイルによって取得され、評価制御ユニットに供給することができる。平面型センサコイルは、通常、それぞれの平面型センサコイルが小さな誘導電磁場に対してより高感度になるように、平面型供給線コイルよりも狭い導体路で実質的に多くの「巻数」を含む。回路基板の使用可能スペースに応じて、平面型供給線源コイルや平面型センサコイルは、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形対称、多角形非対称の様々な形状を有することができる。全ての角バリエーションにおいて、導体路の方向変換は、面取りされたまたは丸み付きの導体路案内部で行うことができる。
【0013】
監視装置の有利な実施形態では、少なくとも2つの平面型供給線コイルはそれぞれ、多層回路基板の第1の回路基板層に配置することができ、対応付けられた少なくとも1つの平面型センサコイルは、第1の回路基板層上方または下方の第2の回路基板層に配置することができる。例えば、少なくとも2つの平面型供給線コイルは、同じ第1の回路基板層において互いに隣接して配置されてもよく、平面型供給線コイルに対応付けられた平面型センサコイルは、第1の回路基板層上方または下方に配置された第2の回路基板層において互いに隣接して配置されてもよい。つまり、回路基板は多層プリント回路基板(PCB:printed circuit board)であることが好ましい。代替的に、平面型センサコイルと平面型供給線コイルとをそれぞれ異なる回路基板層に配置してもよい。つまり、例えば、2つの平面型供給線コイルとそれに対応付けられた2つのセンサコイルが、4つの回路基板層に積層体として配置されている。
【0014】
監視装置のさらなる有利な実施形態において、対応付けられた少なくとも1つの平面型センサコイルは、少なくともいくつかの領域において、好ましくは完全に、対応する平面型供給線コイルを覆うことができる。平面型センサコイルは、理想的には、平面型供給線コイルと平面型センサコイルとの間の結合係数を最大化するために、別の回路基板層で平面型供給線コイルの上方またはその間に一致して位置している。
【0015】
監視装置のさらなる有利な実施形態では、信号処理部を、信号検出部と評価制御ユニットとの間に介在させて接続することができ、信号処理部は、検出された少なくとも1つの測定信号を処理することができる。これにより、評価前の信号品質を向上させることができる。信号処理部は、例えば、整流器および/またはフィルタおよび/または増幅器を含んでよい。平面型センサコイルに誘起された電圧は、信号処理部によって信号処理することができる。このため、任意の整流とフィルタリングを行った後、まだ小さな測定信号を増幅することができる。増幅器としては、ここではオペアンプ数段や低雑音設計のアンプが適している。こうして処理された測定信号は、より複雑な評価のためにアナログデジタル変換器に供給され、演算ユニットでさらに処理される。代替的に、コンパレータ回路で簡易的に評価してもよい。
【0016】
制御装置用の給電線エラー検知方法の有利な実施形態では、少なくとも2つの供給線コイルにおける電流分布が所定の公差範囲(公差窓)内で同一である場合、給電線エラーは検知されず、そうでない場合、給電線エラーが検知される。さらに、異なる公差範囲によって、検知された給電線エラーに対して異なる精度クラスを指定することができる。内部供給路における平面型供給線コイルの使用接続形態および配置構成、平面型センサコイルの個数または配置構成、平面型センサコイルに対する平面型供給線コイル間の巻線向き、並びに評価制御ユニットの複雑さに応じて、単純なものから複雑なものまで給電線エラー検知の異なるレベルおよび精度クラスが可能となる。
【0017】
単純な線路エラー検知では、冗長な供給線のうちどの供給線であるかについて明らかにすることなく、冗長な供給線のうち1つのインピーダンスの著しい上昇を検知することができる。さらに、供給線の残りの品質については、明らかにすることができない。より複雑な線路エラー検知では、冗長な供給線のうち、どの供給線のインピーダンスが上昇しているかについて明らかにすることができる。さらに、冗長な供給線は、異なるエラークラスに分類することができる。したがって、インピーダンスの差が狭い公差範囲内であれば、冗長な供給線はエラーなしと分類することができる。インピーダンスの差がわずかに大きくなり、より大きいが許容できる公差範囲内であれば、エラーを内部に保存することができるが、運転者情報を出力することができない。内部で保存されたエラーは、次回の作業の際に診断インターフェースを介して読み出すことができる。インピーダンスの差が著しく大きくなり、許容できる公差範囲外になった場合、エラーを内部に保存し、例えば警告ランプやマルチファンクションディスプレイなどを介して対応する運転者情報を出力することができる。供給線が遮断され、最大インピーダンス差が生じた場合、エラーを内部に保存し、例えば警告ランプやマルチファンクションディスプレイなどを介して対応する運転者情報を出力することができる。これにより、基板面積、評価制御ユニットの使用部品数、ひいてはコストに関して、顧客の要望に合わせてアレンジされたスケーリングおよび最適化を達成することができる。
【0018】
本発明の実施例を図面に示し、以下の説明で詳述する。図面では、同一の参照符号は、同一または類似の機能を行う構成要素または素子を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】制御装置用の給電線エラーを検知するための、本発明に係る監視装置の一実施例を有する制御装置の概略図である。
図2図1の本発明に係る監視装置の信号検出の第1の実施例を、信号検出部が配置された多層回路基板を図示しないで示す概略上面図である。
図3図2の信号検出用の平面型供給線コイルおよび平面型センサコイルの概略透視図と、信号検出部が配置された対応する多層回路基板の概略断面図である。
図4】信号検出部の第2の実施例についての平面型供給線コイルおよび平面型センサコイルの概略透視図と、信号検出部が配置された対応する多層回路基板の概略断面図である。
図5】制御装置用の給電線エラーを検知するための、本発明に係る方法の一実施例の概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図4から分かるように、制御装置1の給電線エラーを検知するための、本発明に係る監視装置10の図示された実施例は、それぞれ制御装置1内に配置された少なくとも2つの互いに冗長な給電用内部供給線LB1、LB2であって、一端が外部供給線L1_GND、L2_GNDに、他端が制御装置1の共通の内部供給電位層C_GNDにそれぞれ電気的に接続されているものと、内部供給線LB1、LB2を流れる電流を誘導的に検出して少なくとも1つの対応する測定信号を出力する信号検出部12と、少なくとも1つの測定信号を給電線エラー検知用に評価する評価制御ユニット16と、を含む。ここで、2つの内部供給線LB1、LB2は、制御装置1の共通の内部供給電位層C_GNDとの電気的接続点の上流で、少なくとも1回の巻数を有する平面型供給線コイルLG1、LG2を構成する。信号検出部12は、平面型供給線コイルLG1、LG2のそれぞれについて、供給線コイルLG1、LG2の1つにそれぞれ対応付けられ、内部のスイッチング動作に起因して対応する供給線コイルLG1、LG2を流れる高周波ダイナミック電流を検出する少なくとも1つの平面型センサコイルLS1、LS2を有する。
【0021】
図1からさらに分かるように、図示の実施例では、制御装置1は、制御装置1内に配置された2つの互いに冗長な給電用内部供給線LB1、LB2による冗長な接地供給部を含み、これらの内部供給線は、一端で外部供給線L1_GND、L2_GNDにそれぞれ接続されている。さらに、詳述されていないさらなる供給線からは、制御装置1に対応する車両の車載電源電圧VBが供給される。さらに、図示の実施例では、制御装置1は、車載電源電圧VBから、制御装置1の演算ユニット7および通信ユニット3の各種内部電圧を生成する直流変換器5を含む。図示の実施例では、演算ユニット7は、監視回路10のアナログ測定信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器7.1を有する。さらに、演算ユニット7は、監視装置10の評価制御ユニット16の機能を担い、測定信号を評価して給電線エラーを検知する。図1からさらに分かるように、図示の監視装置10は、信号検出部12と評価制御ユニット16との間に介在して接続された信号処理部14を含み、この信号処理部14は、検出された少なくとも1つの測定信号を処理する。これに加え、図示の実施例における信号処理部14は、整流器14.1、フィルタ14.2および増幅器14.3を含む。信号処理部14は2つの検出された電流信号を受信し、測定信号としての差分信号を生成し、この差分信号は後段の評価制御ユニット16によってさらに評価され分類される。
【0022】
特に図2図4から分かるように、少なくとも2つの平面型供給線コイルLG1、LG2は、同一に実装されている。少なくとも2つの平面型センサコイルLS1、LS2も同一であるが、少なくとも2つの供給線コイルLG1、LG2より多い巻数で実装されている。
【0023】
図示の実施例では、監視装置10は、2つの内部供給線LB1、LB2を含み、それぞれが平面型供給線コイルLG1、LG2を構成する。ここで、平面型供給線コイルLG1、LG2には、それぞれ平面型センサコイルLS1、LS2が対応付けられている。
【0024】
図2および図3からさらに分かるように、2つの平面型供給線コイルLG1、LG2は、図示された第1の実施例の信号検出部12Aにおける多層回路基板20の第3の回路基板層S3にそれぞれ配置されており、多層回路基板20は、図示の実施例では、6つの回路基板層S1~S6を有する多層プリント回路基板20Aとして実装されている。2つの供給線コイルLG1、LG2に対応付けられた平面型センサコイルLS1、LS2は、それぞれ第3の回路基板層S3下方の第4の回路基板層S4に配置されている。図示の実施例では、他の信号が、第1および第6の回路基板層S1、S6における対応する導体路に案内される。また、コイル信号以外の信号が、第3および第4の回路基板層S3、S4の対応する導体路に案内される。第2の回路基板層S2には、制御装置1の共通電位層C_GND(ここで、共通接地層)が配置されている。平面型供給線コイルLG1、LG2は、第2の回路基板層S2における共通電位層C_GNDに、より詳細には図示しないスルーホールを介して電気的に接続されている。2つの平面型センサコイルLS1、LS2の共通の帰路は、第5の回路基板層S5に配置されており、信号処理部14に接続されている。平面型センサコイルLS1、LS2の対応する端部は、対応するスルーホールを介して、または共通するスルーホールを介して、第5の回路基板層S5における帰路に電気的に接続されている。平面型センサコイルLS1、LS2の他端は、それぞれ対応する導体路を介して信号処理部14に電気的に接続されている。さらに、この回路基板層S5において、対応する導体路を介して他の信号も案内することができる。図2および図3からさらに分かるように、平面型センサコイルLS1、LS2は、それぞれが対応する平面型供給線コイルLG1、LG2を完全に覆うように配置されている。
【0025】
図4からさらに分かるように、信号検出部12Bの図示された第2の実施例の平面型センサコイルLS1、LS2および平面型供給線コイルLG1、LG2は、多層回路基板20Bの異なる回路基板層S4、S5、S6、S7にそれぞれ配置されており、多層回路基板20Bは、図示された実施例において、10個の回路基板層S1~S10を有する多層プリント回路基板20Bとして実装されている。当然ながら、6つまたは10よりも多いまたは少ない回路基板層を有する他の実施形態の多層回路基板20を使用してもよい。
【0026】
図4からさらに分かるように、図示された第2の実施例の信号検出部12Bでは、第1の平面型供給線コイルLG1は第4の回路基板層S4に配置されている。ここで、第4の回路基板層S4における第1の供給線コイルLG1下方の第5の回路基板層S5には、第1の供給線コイルLG1に対応付けられた第1の平面型センサコイルLS1が配置されている。第2の平面型供給線コイルLG2は、図示された第2の実施例の信号検出部12Bにおける第7の回路基板層S7に配置されている。ここで、第7の回路基板層S7における第2の平面型供給線コイルLG2上方の第6の回路基板層S6には、第2の供給線コイルLG2に対応付けられた第2の平面型センサコイルLS2が配置されている。このように、図示された第2の実施例の信号検出部12Bでは、2つの平面型センサコイルLS1、LS2が2つの平面型供給線コイルLG1、LG2の間に配置されている。図示の実施例では、第1、第2、第9、第10の回路基板層S1、S2、S9、S10において、他の信号が対応する導体路に案内されている。また、コイル信号以外の信号は、第4~第7の回路基板層S4~S7において、対応する導体路に案内されている。第3の回路基板層S3には、共通電位層C_GND、ここでは、制御装置1の共通接地層が配置されている。平面型供給線コイルLG1、LG2は、より詳細に図示しないスルーホールを介して第3の回路基板層S3内の共通電位層C_GNDに電気的に接続されている。2つの平面型センサコイルLS1、LS2の共通の帰路は、第8の回路基板層S8に配置され、信号処理部14に接続されている。平面型センサコイルLS1、LS2の対応する端部は、対応するスルーホールを介して第8の回路基板層S8における帰路に電気的に接続されている。平面型センサコイルLS1、LS2の他端は、それぞれ対応する導体路を介して信号処理部14に電気的に接続されている。さらに、他の信号も、この回路基板層S8内の対応する導体路を経由して案内することができる。図4から分かるように、平面型センサコイルLS1、LS2は、対応する平面型供給線コイルLG1、LG2を完全に覆うように配置されている。
【0027】
図5からさらに分かるように、制御装置1の給電線エラーを検知するための本発明に係る方法100の図示された実施例は、制御装置1で、ステップS100では、一端が外部供給線L1_GND、L2_GNDに、他端が共通の供給電位層C_GNDにそれぞれ接続されている少なくとも2つの互いに冗長な給電用内部供給線LB1、LB2における電流を誘導式で検出している。ここで、共通の内部供給電位層C_GNDとの電気的接続点よりも上流でそれぞれ内部供給線LB1、LB2を構成する少なくとも2つの平面型供給線コイルLG1、LG2において内部スイッチング動作に起因して少なくとも2つの内部供給線LB1、LB2を流れる高周波ダイナミック電流は、対応する平面型供給線コイルLG1、LG2に対応付けられた少なくとも1つの平面型センサコイルLS1、LS2によって電流として検出される。ステップS110では、検出された電流信号を比較し、評価する。このため、検出された電流信号から差分信号を生成し、測定信号として評価する。例えば、少なくとも2つの供給線コイルLG1、LG2の電流分布が同一である場合や、判定された電流差が所定の公差範囲(公差窓)内である場合には、給電線エラーは検知されない。そうでない場合は、供給線のエラーが検知される。図示の実施例では、ステップS120において、検知された給電線エラーの任意の分類が実行される。このように、検知された給電線エラーの異なる精度クラスは、異なる公差範囲によって指定される。内部供給路における使用される接続形態および平面型供給線コイルLG1、LG2の配置構成、平面型センサコイルLS1、LS2の個数または配置構成、平面型センサコイルLS1、LS2に対する平面型供給線コイルLG1、LG2間の巻線向き、並びに評価制御ユニット16の複雑さに応じて、単純なものから複雑なものまで給電線エラー検知の異なるレベルおよび精度クラスが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5