(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】紡績糸、その製造方法及びそれを含む布帛
(51)【国際特許分類】
D02G 3/38 20060101AFI20230906BHJP
D04B 1/16 20060101ALI20230906BHJP
D03D 15/37 20210101ALI20230906BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20230906BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20230906BHJP
D01F 6/62 20060101ALI20230906BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20230906BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20230906BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20230906BHJP
【FI】
D02G3/38
D04B1/16
D03D15/37
D03D15/47
D03D15/283
D01F6/62 303F
D02G3/04
A41D31/00 502A
A41D31/00 503G
A41D31/04 Z
(21)【出願番号】P 2022534032
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024531
(87)【国際公開番号】W WO2022004710
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2020112047
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西山 豊一
(72)【発明者】
【氏名】水橋 秀章
(72)【発明者】
【氏名】山内 洋
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089284(JP,A)
【文献】特開2001-214348(JP,A)
【文献】特開2003-268657(JP,A)
【文献】特開2019-203223(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146787(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3201101(JP,U)
【文献】特開2004-068210(JP,A)
【文献】特表2019-510893(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0000342(KR,A)
【文献】特表2019-535355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/00 - 17/02
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系繊維を15~85質量%、及びポリエステル系繊維を15~85質量%含む紡績糸であって、
前記紡績糸は、無撚状態の無撚繊維群と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成され、
前記紡績糸の気孔率は、60%以下であ
り、
前記紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率は、60%以下であることを特徴とする紡績糸。
【請求項2】
前記巻き付き繊維群の巻き付き角度は、25度以上である請求項
1に記載の紡績糸。
【請求項3】
前記ポリエステル系繊維は、異型断面形状を有するポリエステル系繊維を含む請求項1
又は2に記載の紡績糸。
【請求項4】
前記異型断面形状を有するポリエステル系繊維は、多角型及び3つ以上の凸部を有する多葉型からなる群から選ばれる一種以上の異型断面形状を有するポリエステル系繊維を含む請求項
3に記載の紡績糸。
【請求項5】
前記多葉型のポリエステル系繊維の異型度は、1.5~3.0である請求項
4に記載の紡績糸。
【請求項6】
前記ポリエステル系繊維は、リサイクルポリエステル系繊維を含む請求項1~
5のいずれかに記載の紡績糸。
【請求項7】
前記ポリプロピレン系繊維の繊度は、0.6dtex~2.5dtexであり、前記ポリエステル系繊維の繊度は、0.6dtex~2.5dtexである請求項1~
6のいずれかに記載の紡績糸。
【請求項8】
前記ポリプロピレン系繊維の断面積Sppと前記ポリエステル系繊維の断面積Spetの比Spp/Spetは、1.0~3.0である請求項1~
7のいずれかに記載の紡績糸。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の紡績糸の製造方法であって、
渦流空気精紡において、
ポリプロピレン系繊維を15~85質量%、及びポリエステル系繊維を15~85質量%含むスライバーを準備する工程、
ドラフトゾーンに前記スライバーを供給しドラフトする工程、及び、
ノズル圧が0.4~0.65MPa、紡出速度が250~400m/minの条件で紡出し、巻き取る工程を含むことを特徴とする紡績糸の製造方法。
【請求項10】
紡出速度が250m/min以上350m/min未満である請求項
9に記載の紡績糸の製造方法。
【請求項11】
ノズル圧が0.45MPaより大きく0.65MPa以下である請求項
9又は
10に記載の紡績糸の製造方法。
【請求項12】
スピンドル径は1.0~1.3mmである請求項
9~
11のいずれかに記載の紡績糸の製造方法。
【請求項13】
請求項1~
8のいずれかに記載の紡績糸を含むことを特徴とする布帛。
【請求項14】
前記布帛は、吸水処理されてなる請求項
13に記載の布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系繊維及びポリエステル系繊維を含む紡績糸、その製造方法及びそれを含む布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステル系繊維で構成された布帛に抗ピリング性を持たせることが行われている。例えば、特許文献1には、繊維円周上に存在する3個以上の突起部を繊維長さ方向に連続して有し、繊維断面の異型度(内接円に対する外接円の比)が1.8以上の高異型度ポリエステル短繊維又は中空率8%以上の中空ポリエステル短繊維を含むエア交絡紡績糸で構成され、JIS L 1076 A法におけるピリングが3級以上であるポリエステル短繊維含有布帛が提案されている。特許文献2には、2種以上の異なるポリエチレンテレフタレート短繊維からなる繊維束の外周面に、前記ポリエチレンテレフタレート短繊維の一部が巻き付けられた結束紡績糸であり、前記ポリエチレンテレフタレート短繊維の一部が、前記繊維束の長手方向に対して30度以下の傾斜角度で巻き付けられているポリエステルスパン糸で形成された織物が抗ピリング性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4143904号公報
【文献】実用新案登録第3201101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されているようなポリエステル短繊維を含有する布帛は、汗冷え防止性が十分ではなかった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、抗ピリング性を有するとともに、吸水速乾性及び汗冷え防止性が良好である布帛が得られる紡績糸、その製造方法及びそれを含む布帛を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリプロピレン系繊維を15~85質量%、及びポリエステル系繊維を15~85質量%含む紡績糸であって、前記紡績糸は、無撚状態の無撚繊維群と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成され、前記紡績糸の気孔率は、60%以下であることを特徴とする紡績糸に関する。
【0007】
本発明は、また、前記の紡績糸の製造方法であって、渦流空気精紡において、ポリプロピレン系繊維を15~85質量%、及びポリエステル系繊維を15~85質量%含むスライバーを準備する工程、ドラフトゾーンに前記スライバーを供給しドラフトする工程、及び、ノズル圧が0.4~0.65MPa、紡出速度が250~400m/minの条件で紡出し、巻き取る工程を含むことを特徴とする紡績糸の製造方法に関する。
【0008】
本発明は、また、前記紡績糸を含むことを特徴とする布帛に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、抗ピリング性を有するとともに、吸水速乾性及び汗冷え防止性が良好である布帛が得られる紡績糸、及び抗ピリング性を有するとともに、吸水速乾性及び汗冷え防止性が良好である布帛を提供することができる。また、本発明によれば、抗ピリング性を有するとともに、吸水速乾性及び汗冷え防止性が良好である布帛が得られる紡績糸を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた紡績糸の側面写真(倍率100倍)である。
【
図2】
図2は、同紡績糸の断面写真(倍率270倍)である。
【
図3】
図3は、紡績糸(比較例1)の側面写真(倍率100倍)における、無撚繊維、巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維の説明図である。
【
図4】
図4は、紡績糸における巻き付き繊維群の巻き付き角度の測定方法の説明図である。
【
図5】
図5は、紡績糸における無撚繊維群の露出率の測定方法の説明図である。
【
図6】
図6は、紡績糸の直径の測定方法の説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施態様で使用する一例の押出機の模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発明者らは、ポリエステル系繊維を含む布帛の抗ピリング性を維持しつつ、吸水速乾性及び汗冷え防止性を向上させることについて鋭意検討した。その結果、ポリエステル系繊維に加えてポリプロピレン系繊維を紡績糸に含ませるとともに、該紡績糸を無撚状態の無撚繊維群と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成された構造にし、該紡績糸の気孔率を所定範囲にすることで、該紡績糸を用いた布帛が抗ピリング性を有するとともに、吸水速乾性及び汗冷え防止性に優れることを見出した。さらに、紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率を所定範囲にすることで、該紡績糸を用いた布帛がより高い抗ピリング性を有することを見出した。
【0012】
具体的には、吸水性及び拡散性を有するポリエチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維と、水分を保持し難いポリプロピレン系繊維を所定量併用することで、良好な吸水性と速乾性を両立することができる。
また、ポリエステル系繊維とポリプロピレン系繊維で構成された紡績糸を用いた布帛は、発汗により湿潤した場合、ポリエステル系繊維で水分を吸水拡散するが、ポリプロピレン系繊維は水分を保持し難いため、ポリプロピレン系繊維の周囲には水分が存在し難く、布帛を構成する紡績糸内での水分はポリエステル系繊維周辺に局在する。水は空気の約25倍の熱伝導率を有し、布帛が発汗により湿潤した場合は、布帛の熱伝導率が上昇し皮膚表面から熱を奪い「汗冷え」の原因となるが、ポリエステル系繊維とポリプロピレン系繊維で構成された布帛では、水分はポリエステル系繊維周辺のみに局在するため、湿潤による布帛の熱伝導率の上昇が抑えられる。ポリプロピレン系繊維は低い熱伝導率を有し、比重が小さく嵩高なことに加え、ポリプロピレン系繊維とポリエステル系繊維を含む紡績糸で構成された布帛は、湿潤による熱伝導率の上昇が抑えられるため、発汗により布帛が湿潤した場合でも、布帛により身体から奪われる熱量が少なくなり、汗冷えが抑制される。
さらに、ポリエステル系繊維及びポリプロピレン系繊維を含む紡績糸において、空気の旋回流により繊維が渦巻状に加撚され、該紡績糸は、無撚繊維群(以下、芯繊維ともいう。)と巻き付き繊維群との集合体となる。該紡績糸において、糸の内層が無撚の芯繊維となり、その無撚の芯繊維を巻き付き繊維が覆う構造となることにより、繊維の収束が高まり、繊維と繊維の隙間が細くなる。そのため、湿潤時の毛細管現象が促進され、吸水速乾性がより高まる傾向にある。また、巻き付き繊維の一端が芯繊維の中心に撚り込まれるため、毛羽数が少なく、繊維が抜けにくい紡績糸となるため、抗ピリング性が高まる傾向にある。さらに、該紡績糸の気孔率を所定範囲にすることで、該紡績糸を用いた布帛が高い抗ピリング性を有することになる。好ましくは、糸側面における無撚繊維群の露出率を所定範囲にすることで、該紡績糸を用いた布帛がより高い抗ピリング性を有することになる。
【0013】
前記紡績糸は、ポリプロピレン系繊維を15~85質量%、及びポリエステル系繊維を15~85質量%含む。布帛の抗ピリング性を良好にしつつ、吸水速乾性及び汗冷え防止性を高めることができる。紡績糸の気孔率及び側面における巻き付き繊維の露出率をより低下させて布帛の抗ピリング性をより高める観点から、前記紡績糸は、好ましくは、ポリプロピレン系繊維を20~80質量%、及びポリエステル系繊維を20~80質量%含み、より好ましくは、ポリプロピレン系繊維を30~65質量%、及びポリエステル系繊維を35~70質量%含む。
【0014】
前記紡績糸においては、ポリプロピレン系繊維として、水分率が0.15%未満の通常のポリプロピレン系繊維と、水分率が0.15%以上0.50%未満である親水性ポリプロピレン系繊維とを併用してもよい。水分率が0.15%以上の親水性ポリプロピレン系繊維を用いると、紡績糸の作製時の生産性が向上しやすい。また、水分率が0.50%未満であることにより、該親水性ポリプロピレン系繊維は水分を保持し難く、布帛の汗冷えを抑制しやすい。その場合、紡績糸において、ポリプロピレン系繊維全体に対する親水性ポリプロピレン系繊維の割合は、例えば、5質量%以上であってもよく、特に限定されないが、紡績工程の生産性の観点から、親水性ポリプロピレン系繊維の割合は30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0015】
前記紡績糸は、無撚状態の無撚繊維群(以下、無撚繊維とも記す。)と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群(以下、巻き付き繊維とも記す。)で構成されている。ここで、無撚状態とは、ボルテックス(Vortex、登録商標)糸等の空気精紡にて得られる紡績糸において、糸の内部(中心)の繊維が糸軸に対して平行な状態を意味する。また、糸の側面を観察した際、糸側面を完全に横断し、かつ糸側面に完全に密着しているものを巻き付き繊維とみなす。繊維の一部が糸側面に接しておらず、糸断面の中心方向に対して巻き付き力を発揮できないものは、巻き付き繊維として取り扱わない。無撚繊維及び巻き付き繊維のどれにも該当しない繊維のうち、両端が糸側面に接しているものを浮遊繊維、どちらか一方の端が糸側面から離れているものを毛羽繊維とする。巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維のどれにも該当しない全ての繊維を無撚繊維とみなす。
図3に、一例の紡績糸の側面における無撚繊維、巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維を示している。
【0016】
前記紡績糸の気孔率は、60%以下であり、好ましくは58%以下であり、より好ましくは55%以下であり、さらに好ましくは50%以下である。これにより、繊維が密に充填され巻き付き繊維による無撚繊維への固定が高まり、該紡績糸を含む布帛の抗ピリング性が良好になる。前記気孔率の下限は特に限定されないが、柔らかい風合いの観点から、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。紡績糸の気孔率は、後述するとおりに測定することができる。
【0017】
前記紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率は、60%以下であることが好ましく、より好ましくは55%以下であり、さらに好ましくは50%以下である。これにより、巻き付け繊維群が紡績糸表面を覆いやすく、該紡績糸を含む布帛の抗ピリング性がより良好になる。前記無撚繊維群の露出率の下限は特に限定されないが、風合いと編立性の観点から、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率は、後述するとおりに測定することができる。
【0018】
前記紡績糸は、特に限定されないが、前記巻き付き繊維群の巻き付き角度(以下において、巻き付き繊維角度とも記す。)は、25度以上であることが好ましく、26度以上であることがより好ましい。これにより、無撚繊維に対する巻き付き繊維による固定が高まり、布帛の抗ピリング性がより向上する。前記巻き付き繊維角度の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、85度以下であることが好ましく、60度以下であることがより好ましい。紡績糸における巻き付き繊維群の巻き付き角度は、後述するとおりに測定することができる。
【0019】
前記ポリエステル系繊維は、特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂で構成された繊維を用いることができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、及びこれらの共重合体等が挙げられる。また、ポリエステル樹脂は、石油由来原料及び/又は植物由来原料を用いて縮重合されたバージンのポリエステル、回収されたポリエステル、いわゆるリサイクルポリエステルのいずれであってよい。昨今のCO2排出削減、環境配慮材料が求められるなかで、植物由来原料を用いたバイオマスポリエステル、リサイクルポリエステルが適宜に用いられる。回収されたポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、資源リサイクルを目的として回収された容器(飲料等液体用ペットボトル等)や衣料ポリエステル、産業廃棄物ポリエステル、あるいは繊維、フィルム及びその他の成形品を製造するための種々の工程で発生する不良品あるいは屑ポリエステル等が用いられる。
【0020】
前記ポリエステル系繊維は、前記ポリエステル系樹脂の単一成分繊維であってもよく、ポリエステル同士又はポリエステルと他の樹脂との複合繊維であってよい。中でも、安価であり、繊維にコシを与えやすい観点から、ポリエチレンテレフタレートを好適に用いることができる。環境配慮の観点から、前記ポリエステル系繊維は、リサイクルポリエステル系繊維であることが好ましい。
【0021】
前記ポリエステル系繊維の断面形状は、丸型断面であってもよく、異型断面であってもよい。前記ポリエステル系繊維は、異型断面を有することが好ましく、多角型及び3つ以上の凸部を有する多葉型からなる群から選ばれる一種以上の異型断面形状を有することがより好ましく、3つ以上の凸部を有する多葉型の断面形状を有することがさらに好ましい。ポリエステル系繊維が多角型及び/又は多葉型の断面形状を有することで、糸断面における繊維の充填度が高まるため、紡績糸の気孔率が小さくなり、布帛の抗ピリング性が向上する。
【0022】
多葉型は、特に限定されないが、紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率及び紡績糸の気孔率を低下させる観点から、凸部を3つ有する三葉型(Y型とも称される。)、凸部を4つ有する四葉型(十字型とも称される。)、凸部を5つ有する五葉型(星型とも称される。)等が好ましい。多角形は、特に限定されないが、紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率及び紡績糸の気孔率を低下させる観点から、例えば、三角形、四角形、六角形等が好ましい。
【0023】
前記多葉型ポリエステル系繊維の異型度は、1.5~3.0が好ましく、1.7~2.5であることがより好ましい。異型度が1.5以上であると、糸断面における繊維充填度が高まり、より優れた抗ピリング性を有する紡績糸が得られる。また、異型度が3.0以下であると、紡績性の柔軟性が高まり布帛の風合いが良好となる。多葉型ポリエステル系繊維の異型度は、後述するとおりに測定することができる。
【0024】
前記ポリエステル系繊維の水分率は、0.3%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.7%以上である。前記ポリエステル系繊維の水分率は5.0%以下であることが好ましい。より好ましくは、1.5%以下である。前記ポリエステル系繊維の水分率が上記範囲内にあると、吸水拡散性及び汗冷え防止性能の観点で好ましい。前記ポリエステル系繊維の水分率は、原綿の段階において界面活性剤等で親水処理を行うこと、親水剤をポリエステル系樹脂に含有させること、あるいは、編地等の布帛にした後、後述する吸水処理を行い、吸水性が付与された布帛を得ること等により調整することができる。本発明の1以上の実施形態において、水分率は、JIS L 1015(2010)に準じて測定されるものである。
【0025】
前記ポリエステル系繊維の単繊維強度は2.0~10.0cN/dtexであることが好ましく、3.0~9.0cN/dtexであることがより好ましく、4.0~8.0cN/dtexであることがさらに好ましい。単繊維強度が2.0cN/dtex以上であると、繊維を加工する際の外力(例えば、紡績張力等)を受けても、繊維が切れにくい。また、単繊維強度が10.0cN/dtex以下であると、抗ピリング性がさらによい繊維が得られる。また、前記ポリエステル系繊維は、抗ピリング性及び加工性の観点から、繊維1本当たりの強度が3.0~10.0cNであることが好ましく、4.0~9.0cNであることがより好ましい。
【0026】
前記ポリエステル系繊維の伸度は7.0~50.0%であることが好ましく、10.0~40.0%であることがより好ましく、10.0~30.0%であることがさらに好ましい。伸度が上述した範囲であると、紡績性が良好となる。
【0027】
前記ポリエステル系繊維のヤング率は1000~10000N/mm2であることが好ましく、2000~7000N/mm2であることがより好ましい。ヤング率が1000N/mm2以上であると、ドラフト時の繊維の伸長変形が抑えられ、生産性が向上する。ヤング率が10000N/mm2以下であると、精紡時の繊維の旋回性が良好となり、巻き付き繊維の糸断面の中心方向への巻き付き力が高まり、抗ピリング性がより良好となる。
【0028】
前記ポリエステル系繊維の曲げ剛性は1.0×10-9~1.0×10-4N・mm2であることが好ましく、1.0×10-8~1.0×10-5N・mm2であることがより好ましい。曲げ剛性が1.0×10-9N・mm2以上であると、繊維毛羽が絡みにくいため抗ピリング性が良好となる。曲げ剛性が1.0×10-4N・mm2以下であると、精紡時の繊維の旋回性がより良好となり、巻き付き繊維群の糸断面の中心方向へ巻き付き力が高まり、抗ピリング性がより良好となる。
【0029】
前記ポリエステル系繊維は、常法により製造できる。例えば、紡糸口金を用いてポリエステル系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物を溶融紡糸して未延伸糸とし、得られた未延伸糸を延伸し、繊維処理剤(油剤とも称される。)を付与し、クリンパーで捲縮を付与し、乾燥することによって得ることができる。前記繊維処理剤は、特に限定されないが、親水性油剤であることが好ましい。親水性油剤を付与することにより、静電気が抑えられ、紡績工程での生産性は良くなる傾向にある。
【0030】
前記ポリプロピレン系繊維としては、特に限定されず、ポリプロピレンを含む繊維を用いればよい。前記ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンの含有量が50モル%を超えている、プロピレン及びそれと共重合可能な成分を含む共重合体であってもよい。プロピレンと共重合可能な成分としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、ブテン、メチルペンテン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。ポリプロピレンは、好ましくは、プロピレン単独重合体である。前記ポリプロピレンは、一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0031】
前記ポリプロピレンは、紡糸性の観点から、メルトマスフローレイト(MFR)が5~60g/10分であることが好ましく、7~45g/10分であることがより好ましく、10~40g/10分であることがさらに好ましい。本明細書において、ポリプロピレンのMFRは、ISO1133に準じて、230℃、2.16kg荷重下で測定する。
【0032】
前記ポリプロピレン系繊維は、常法により製造できる。例えば、紡糸口金を用いてポリプロピレン又はポリプロピレンを含む樹脂組成物を溶融紡糸して未延伸糸とし、得られた未延伸糸を延伸し、繊維処理剤を付与し、クリンパーで捲縮を付与し、乾燥することによって得ることができる。前記繊維処理剤は、特に限定されないが、親水性油剤であることが好ましい。親水性油剤を付与することにより、静電気が抑えられ、紡績工程での生産性は良くなる傾向にある。
【0033】
前記ポリプロピレン系繊維は、親水性成分を含んでも良い。通常、親水性成分を含まないポリプロピレン系繊維は、水分率が0.15%未満であるが、親水性成分を含ませることで、水分率が0.15%以上0.50%未満である親水性ポリプロピレン系繊維を得ることができる。
【0034】
前記親水性成分は、水溶性又は水分散性を有するものであればよく、特に限定されない。水溶性の親水性成分としては、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられるが、中でも非イオン界面活性剤であることが好ましい。エステル型非イオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、エーテル型非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル、ポリオキシエチレン(POE)アルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。この中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレン誘導体(両化合物とも例えば花王社製、商品名"エマルゲン")が好ましい。
【0035】
前記水溶性の親水性成分は、分子量が200~5000であることが好ましく、より好ましくは300~3000である。前記水溶性の親水性成分として親水性の界面活性剤を単独で用いる場合は、親水性の界面活性剤の分子量は1000以下であることが好ましい。
【0036】
水分散性の親水性成分としては、例えば、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト等の粘土鉱物、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル等の親水性シリカ、タルク、ゼオライト等の多層構造又はアモルファスの無機粒子、セルロース等の天然高分子多糖類、キチン、キトサン等のアミノ系高分子多糖類等が用いられる。高分子多糖類は、ナノファイバーとして添加するとよい。粘土鉱物やナノファイバー等は固体で添加されるので、保水剤としての効果も奏する。無機粒子の平均粒子径はできるだけ細かいものが好ましく、100nm以下であることが好ましい。なお、平均粒子径は、位相ドラップ法粒子径測定装置で測定したものとする。
【0037】
前記親水性ポリプロピレン系繊維は、ポリプロピレンと、親水性成分を含むマスターバッチ樹脂組成物とを含むポリプロピレン系樹脂組成物を溶融紡糸することで得ることができる。前記ポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン100質量部に対してマスターバッチ樹脂組成物を1~10質量部含むことが好ましい。
【0038】
前記マスターバッチ樹脂組成物は、加熱溶融可能なベース樹脂としてのポリプロピレンと、親水性成分を含む。前記マスターバッチ樹脂組成物は、前記親水性成分を1~10質量%含むことが好ましく、より好ましくは、前記親水性成分を2~8質量%含む。ベース樹脂としてのポリプロピレンは、前記ポリプロピレン系繊維を構成するポリプロピレンと同様のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0039】
前記マスターバッチ樹脂組成物は、さらに相溶化剤を含むことが好ましい。相溶化剤としては、例えば、エチレン-アクリル酸(エステル)コポリマー、エチレン-アクリル酸(エステル)-マレイン酸コポリマー等の極性基(酸無水基)を含むエチレン系コポリマーが好ましい。極性基を含有するエチレン系コポリマーは、極性基を有することにより、親水性成分との親和性が高くなり、また、ポリプロピレンよりも融点が比較的低いので、マスターバッチ樹脂組成物を混練しやすくなる。相溶化剤の融点(DSC法)は、70~110℃であることが好ましく、より好ましくは80~105℃である。
【0040】
前記マスターバッチ樹脂組成物は、さらに前記ベース樹脂のポリプロピレンよりMFRが高い高MFRポリプロピレンを含んでよく、高MFRポリプロピレンのMFRは、前記ベース樹脂のMFRよりも10倍以上高いことが好ましい。例えば、高MFRポリプロピレンはMFRが100~3000g/10分であることが好ましく、より好ましくは500~2500g/10分である。高MFRポリプロピレンは、一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0041】
前記マスターバッチ樹脂組成物の製造方法は、ベース樹脂のポリプロピレンと、親水性成分を溶融混練し、冷却してチップ化する一次加工工程と、前記チップ化した樹脂組成物に、高MFRポリプロピレンを溶融混練し、冷却してチップ化する二次加工工程を含むことが好ましい。なお、「チップ」を「ペレット」と称する場合がある。
【0042】
前記一次加工工程において、まず押出機を使用し、減圧ラインを備えた混練チャンバーに、押し出し部を連続して接続し、前記混練チャンバー内に、親水性成分(液状)又は必要に応じて水等の溶媒に溶解又は分散された親水性成分と、ベース樹脂のポリプロピレンとを供給し、混合と同時に前記減圧ラインから溶媒を気体の状態で除去し、次いで、押し出し部から樹脂組成物を押し出すことにより、樹脂組成物が得られる。さらに相溶化剤を加えるとベース樹脂と親水性成分の混合が効率的となるため好ましい。また、前記二次加工工程において、場合によっては親水性成分のうち固体の親水性成分として保水剤を加えるのが好ましい。
【0043】
図7は本発明の一実施態様で使用する押出機の模式的説明図である。この押出機1は、原料供給口2と、樹脂溶融部3と、混練分散部4と、減圧ライン5と、押し出し部6と、取り出し部7で構成されている。まず、樹脂溶融部3の原料供給口2からポリマー(加熱溶融可能なベース樹脂)と、親水性成分(液状)又は必要に応じて水に溶解させた親水性成分を供給する。供給前に両者を混合しておいても良い。次に混練分散部4に送り、混練分散部4では複数枚の混練プレートが回転しており、ここでポリマーと水に溶解させた親水性成分は均一混合される。次いで減圧ライン5から水分が水蒸気の状態で除去される。次いで押し出し部6から樹脂組成物が押し出され、冷却して取り出し部7から取り出され、冷却後カットすればペレット状の樹脂組成物(一次加工樹脂)となる。
【0044】
前記親水性ポリプロピレン系繊維は、ポリプロピレンと、親水性成分を含むマスターバッチ樹脂組成物とを含むポリプロピレン系樹脂組成物を用いる以外は、常法により製造できる。例えば、紡糸口金を用いてポリプロピレンと、親水性成分を含むマスターバッチ樹脂組成物とを含むポリプロピレン系樹脂組成物を溶融紡糸して未延伸糸とし、得られた未延伸糸を延伸し、繊維処理剤(油剤)を付与し、クリンパーで捲縮を付与し、乾燥することにより得ることができる。
【0045】
紡績工程での静電気の発生を抑制すること、それに伴い混打綿工程の生産性が向上する観点から、前記紡績糸は、親水性ポリプロピレン系繊維を含むことが好ましい。ポリプロピレン系繊維として親水性ポリプロピレン系繊維のみを用いる場合、親水性ポリプロピレン系繊維を上述した混合率の範囲で用いることができる。
【0046】
前記ポリプロピレン系繊維の断面形状は特に限定されず、丸型断面であってもよく、異型断面であってもよい。取扱性の観点から、丸型断面であることが好ましい。ポリプロピレン系繊維は、一般的に他の合成繊維より摩擦係数が高く、丸型断面でも無撚繊維への巻き付き繊維による十分な固定を確保しやすい。
【0047】
前記ポリプロピレン系繊維は、ポリプロピレンの単一成分繊維であってもよく、ポリプロピレン同士又はポリプロピレンと他の樹脂との複合繊維であってよい。ポリプロピレン系繊維を着色する場合は、顔料をポリプロピレンに混合するか、染色するか、染料に染まり易い成分と芯鞘型等の形状に複合化するとよい。
【0048】
前記ポリプロピレン系繊維の単繊維強度は1.8~9.0cN/dtexであることが好ましく、2.0~8.0cN/dtexであることがより好ましく、3.0~7.5cN/dtexであることがさらに好ましい。単繊維強度が1.8cN/dtex以上であると、繊維を加工する際の外力(例えば、紡績張力等)を受けても、繊維が切れにくい。また、単繊維強度が9.0cN/dtex以下であると、抗ピリング性がさらによい繊維が得られる。また、前記ポリプロピレン系繊維は、抗ピリング性及び加工性の観点から、繊維1本当たりの強度が4.5~16.5cNであることが好ましく、6.0~13.0cNであることがより好ましい。
【0049】
前記ポリプロピレン系繊維の伸度は5~70%であることが好ましく、10~40%であることがより好ましい。伸度が5~70%であると、やわらかな風合いの繊維が得られる。
【0050】
前記ポリプロピレン系繊維のヤング率は1000~8000N/mm2であることが好ましく、1500~6000N/mm2であることがより好ましい。ヤング率が1000N/mm2以上であると、ドラフト時の繊維の伸長変形が抑えられ、生産性が向上する。ヤング率が8000N/mm2以下であると、精紡時の繊維の旋回性が良好となり、巻き付き繊維群の糸断面の中心方向への巻き付き力が高まり、抗ピリング性がより良好となる。
【0051】
前記ポリプロピレン系繊維の曲げ剛性は1.0×10-9~1.0×10-5N・mm2であることが好ましく、1.0×10-8~1.0×10-6N・mm2であることがより好ましい。曲げ剛性が1.0×10-9N・mm2以上であると、繊維毛羽が絡みにくいため、抗ピリング性がより良好となる。曲げ剛性が1.0×10-5N・mm2以下であると、精紡時の繊維の旋回性が良好となり、巻き付き繊維群の糸断面の中心方向へ巻き付き力が高まり、抗ピリング性がより良好となる。
【0052】
前記紡績糸は、ポリプロピレン系繊維及びポリエステル系繊維に加えて他の繊維を含んでも良い。他の繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン系繊維以外のポリオレフィン系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維、アセテート繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ウレタン系繊維、セルロース系繊維、天然繊維、及び動物繊維等が挙げられる。前記紡績糸は、用途及び目的等に応じて、適宜他の繊維を20質量%以下含んでもよく、15質量%以下含んでもよく、10質量%以下含んでもよく、5質量%以下含んでもよい。前記紡績糸は、抗ピリング性、吸水速乾性及び汗冷え防止性をより高める観点から、実質的にポリプロピレン系繊維及びポリエステル系繊維からなることが特に好ましい。
【0053】
前記紡績糸において、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維及び他の繊維は、特に限定されないが、例えば、単繊維繊度が0.1~100dtexであってもよい。前記紡績糸を衣料に用いる場合は、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維及び他の繊維は、単繊維繊度が0.4~5dtexであることが好ましく、0.5~3.5dtexであることがより好ましく、0.6~2.5dtexであることがさらに好ましい。
【0054】
前記紡績糸において、特に限定されないが、紡績糸の側面における無撚繊維の露出率及び気孔率を低下させ、布帛の抗ピリング性をより向上させる観点から、前記ポリプロピレン系繊維の断面積Sppと前記ポリエステル系繊維の断面積Spetの比Spp/Spetは、1.0~3.0であることが好ましく、1.0~2.5であることがより好ましい。繊維が丸断面同士の場合は繊維断面積が異なると糸断面における繊維の充填が密になりにくいため、抗ピリング性が悪化しやすいが、異型断面の繊維、特に異型断面のポリエステル系繊維を用いる事で糸断面における繊維の充填度が高まり、特に、前記断面積比の範囲において抗ピリング性が向上しやすい。繊維の断面積Sと繊維断面積比Spp/Spetは、後述するとおりに測定することができる。なお、前記ポリプロピレン系繊維及び/又は前記ポリエステル系繊維が同族繊維を2種類以上混合する場合は、各々の繊維の断面積Sを繊維本数の割合から平均して求めることができる。
【0055】
前記紡績糸において、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維及び他の繊維は、特に限定されないが、例えば、繊維長が24~55mmであることが好ましく、28~55mmであることがより好ましく、32~54mmであることがさらに好ましい。
【0056】
前記紡績糸は、特に限定されないが、例えば、抗ピリング性をより高める観点から、長さ3mm以上の毛羽数が30本/10m以下であることが好ましく、10本/10m以下であることがより好ましい。また、長さ5mm以上の毛羽数が5本/10m以下であることが好ましく、3本/10m以下であることがより好ましい。紡績糸の毛羽数は、後述するとおりに測定することができる。
【0057】
前記紡績糸の番手は、特に限定されないが、英式綿番手で5~70の範囲であってもよく、好ましくは10~60であり、より好ましくは15~50である。
【0058】
前記紡績糸の紡績方法は、空気精紡であればよく、特に限定されないが、布帛の抗ピリング性、吸水速乾性及び汗冷え防止性を高める観点から、渦流空気精紡法にて作製することが好ましい。予め、渦流空気精紡において、ポリプロピレン系繊維を15~85質量%、及びポリエステル系繊維を15~85質量%含むスライバーを準備し、前記スライバーをドラフトゾーンに供給してドラフトし、その後、ノズル圧が0.4~0.65MPa、紡出速度が250~400m/minの条件で紡出して巻き取ることで紡績糸を得ることができる。前記渦流空気精紡は、特に限定されないが、例えば、村田機械株式会社製のボルテックス精紡機(VORTEX精紡機)を用いることができる。
【0059】
前記渦流空気精紡において、紡出速度が400m/min以下であると、巻き付き繊維が巻き付きやすい上、繊維が旋回しやすく、紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率及び気孔率を低下させやすくなる。紡出速度が250m/min以上であると、生産性も良好になる。紡出速度は250m/min以上350m/min未満であることがより好ましく、250m/min以上345m/min以下であることがさらに好ましい。
【0060】
前記渦流空気精紡において、ノズル圧が0.4MPa以上であると、繊維の旋回がよくなり、紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率及び気孔率を低下させやすくなる。ノズル圧が0.65MPa以下であると、生産性も良好になる。ノズル圧は0.45MPaより大きく0.65MPa以下であることが好ましく、0.48MPa以上0.63MPa以下であることがより好ましい。
【0061】
前記渦流空気精紡に用いる紡績機において、紡績糸の側面における無撚繊維群の露出率及び気孔率を低下させやすい観点から、紡績糸の太さが英式綿番手30±5である場合、スピンドル径(スピンドルの孔の口径)は1.0~1.3mmであることが好ましく、1.1~1.3mmであることがより好ましく、1.15~1.3mmであることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の1以上の実施形態において、布帛は、上述した紡績糸を含む。布帛は、編物であってもよく、織物であってもよい。前記布帛は、抗ピリング性、吸水速乾性及び汗冷え防止性を高める観点から、前記紡績糸を50質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上含むことがより好ましく、85質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことがさらにより好ましく、100質量%からなることが特に好ましい。前記布帛は、本発明の効果を阻害しない範囲において、前記紡績糸に加えて、他の糸、例えば他の紡績糸及び/又はフィラメント糸を含んでも良い。なお、前記布帛は、単層構造であってもよく、二層以上の層を含んでもよい。
【0063】
編物の場合、単面編みの天竺編みでもよく、単面編みの変形編みである鹿の子編み、メッシュ編み、裏毛編みであってもよく、両面編でのスムース編み、ダンボール編み、ワッフル編みでもよい。両面編みの場合、前記紡績糸は表面層及び/又は裏面層に用いることができる。表面層及び裏面層のいずれにも前記紡績糸を用いることで、より吸水速乾性及び保温性が向上する。
【0064】
織物の場合、平織、綾織、朱子織等の一重織でもよく、二重織でもよい。
【0065】
前記布帛は、精練工程の後に染色加工や仕上げ加工してもよい。前記布帛は、染色加工や仕上げ加工時に、吸水処理、SR(Soil release)処理、抗菌処理、帯電防止処理等を同時に施してもよい。
【0066】
前記布帛は、吸水速乾性を高める観点から、吸水処理が施されていることが好ましい。吸水処理により、ポリエステル系繊維の吸水性を高めることができる。汗冷え防止性の観点から、吸水処理はポリプロピレン系繊維に対しては吸水性付与効果がないか、効果の極めて低いものが好ましく、ポリプロピレン系繊維は、水分の保持し難い繊維のままであることが望ましい。吸水処理は、例えば吸水処理剤を用いて行うことができる。吸水処理剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤等を用いることができ、具体的には、日華化学株式会社製「ナイスポールPR-99」等の市販品を適宜使用することができる。なお、吸水処理は、繊維や紡績糸の段階で行ってもよい。
【0067】
前記布帛は、JIS L 1076 A法に基づき、ICI形試験機を使用して測定したピリングが3級以上であることが好ましく、3.5級以上であることがより好ましく、4級以上であることがさらに好ましい。
【0068】
前記布帛は、吸水速乾性が高い観点から、蒸散性(II)試験(ボーケン規格BQE A 028準拠)における蒸散率が試験開始20分後で30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。また、前記布帛は、特に限定されないが、保湿性等の観点から、蒸散性(II)試験(ボーケン規格BQE A 028準拠)における蒸散率が試験開始20分後で70%以下であることが好ましい。蒸散性(II)試験は、吸水性と速乾性の両方を複合的に評価する試験であり、蒸散率は、具体的には後述するとおりに測定する。
【0069】
前記布帛は、汗冷え防止性に優れる観点から、カトーテック社製のKES-F7(サーモラボ)を用いて測定した湿潤時の熱伝導率が9.5×10-4W/cm・℃以下であることが好ましく、9.0×10-4W/cm・℃以下であることがより好ましい。
【0070】
前記布帛は、保温性が高い観点から、カトーテック社製のサーモラボ2を用いてドライコンタクト法で測定した保温率が14.0%以上であることが好ましく、15.0%以上であることがより好ましい。
【0071】
前記布帛は編物の場合、例えば、蒸れ感を低減する観点から、通気抵抗が0.200kPa・s/m以下であることが好ましく、0.150kPa・s/m以下であることがより好ましい。また、前記布帛は、透け感の観点から、通気抵抗が0.005kPa・s/m以上であることが好ましい。通気抵抗の具体的な測定方法は後述のとおりである。
【0072】
前記布帛は、編物の場合、例えば、保温性の観点から、厚みが0.50mm以上であることが好ましく、0.60mm以上であることがより好ましい。また、前記布帛は、特に限定されないが、例えば、着用感の観点から、厚みが4.0mm以下であることが好ましい。
【0073】
前記布帛は、編物(例えば天竺)の場合、例えば、軽量性の観点から、嵩密度が0.220g/cm3以下であることが好ましく、0.200g/cm3以下であることがより好ましく、0.180g/cm3以下であることがさらに好ましいまた、前記布帛は、外観保持の観点から、嵩密度が0.100g/cm3以上であることが好ましい。嵩密度の具体的な測定方法は後述のとおりである。
【0074】
前記布帛は、編物の場合、軽量性等の着用性の観点から、例えば、目付が450g/m2以下であることが好ましく、400g/m2以下であることがより好ましく、300g/m2以下であることがさらに好ましく、200g/m2以下であることが特に好ましい。また、前記布帛は、特に限定されないが、透け感の観点から、目付が50g/m2以上であることが好ましい。
【0075】
前記布帛は、衣料や資材等に用いることができる。衣料としては、例えばスポーツ衣料類、ホームウェア類、肌着類、アウターウェア類等が挙げられる。特に発汗の多いシーンで着用するスポーツ衣料類や直接肌に触れる肌着類には好ましく使用することができる。スポーツ衣料類であれば、アウトドアシャツ、トレーニングウェア、スウェットシャツ・パンツ、ポロシャツ等が挙げられる。肌着類であれば、Tシャツ、ブリーフ、トランクス、キャミソール、ショーツ等が挙げられる。資材としては、例えば裏地類、靴材類、サポーター類、靴下類、カーペット類、寝具類等が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0077】
(測定方法)
(1)メルトマスフローレイト(MFR)
ISO1133に準じて、230℃、2.16kg(21.2N)荷重下で測定した。
(2)水分率
JIS L 1015(2010)に準じ、温度20℃、相対湿度65%の標準状態下で測定した。
(3)繊維の単繊維強度、伸度及びヤング率
JIS L 1015(2010)に準じて、単繊維強度、伸度及びヤング率を測定した。
(4)繊維の断面積と断面積比
繊維の単繊維繊度(T[dtex])から次の式(1)で断面積(S[m
2])を算出した。ただし、T:繊度[dtex]、ρ:密度[g/cm
3]とする。ポリプロピレン系繊維の密度は0.91[g/cm
3]を用いた。ポリエステル系繊維の密度は1.38[g/cm
3]を用いた。ここで、Sppはポリプロピレン系繊維の断面積とし、Spetはポリエステル系繊維の断面積として、該紡績糸において繊維の断面積比を(Spp/Spet)と定義した。
【数1】
(5)繊維の断面2次モーメント
繊維の断面形状を丸型断面は円に近似させ、Y型断面は正三角形へ近似させ、十字型断面は正十字形に近似させることで、それぞれ断面2次モーメントを算出した。繊維繊度と密度から算出した断面積を利用した。ポリプロピレン系繊維の密度は0.91[g/cm
3]を用いた。ポリエステル系繊維の密度は1.38[g/cm
3]を用いた。算出方法を次に示した。
(a)丸断面の場合
次の式(2)により断面形状を円に近似させ、繊維断面の半径(r[m])を算出した。ただし、T:繊度[dtex]、ρ:密度[g/cm
3]とする。算出した半径(r[m])を用いて、次の式(3)により断面2次モーメント(Ic)を算出した。
【数2】
(b)Y断面の場合
次の式(4)により断面形状を正三角形に近似させ、正三角形の1辺の長さ(b[m])を算出した。ただし、T:繊度[dtex]、ρ:密度[g/cm
3]とする。算出した1辺の長さ(b[m])を用いて、次の式(5)により断面2次モーメント(It)を算出した。
【数3】
(c)十字断面の場合
次の式(6)により断面形状を正十字形に近似させ、正十字形の1辺の長さ(t[m])を算出した。ただし、T:繊度[dtex]、ρ:比重[g/cm
3]とする。ここで正十字形とは同じ大きさの正方形5個を組み合わせてなる十字型であり、その正方形の1辺の長さが正十字型の1辺の長さである。算出した1辺の長さ(t)を用いて、次の式(7)により断面2次モーメント(Ics)を算出した。
【数4】
(6)曲げ剛性
繊維のヤング率と断面2次モーメントを乗ずることで、繊維の曲げにくさを表す指標である曲げ剛性を求めた。
(7)異型度
(a)繊維の断面は、断面形状を保持するためにエポキシで包埋した後にミクロトーム(Leica EM UC6)を用いてガラスナイフで面出しを施した。
(b)繊維断面をKEYENCE製電子顕微鏡VE-9800(倍率2000倍)にて撮影した。得られた画像の1本の繊維断面における外接円と内接円の半径を求め、外接円の半径を内接円の半径で除すことで異型度を求めた。5本の平均値を代表値とした。
(c)繊維断面の形状が歪なために、突起数と同じ数の接点を有する外接円と内接円の作図が難しい場合は、突起数より1つ少ない接点を有する外接円と内接円を導出に用いた。外接円は突起数より1つ少ない数の接点で外接し最小のものとした。内接円は突起数より1つ少ない接点で接し最大のものとした。
(8)巻き付き繊維角度
糸の側面画像において、糸側面を完全に横断し、かつ糸側面に完全に密着しているものを巻き付き繊維とみなした。繊維の一部が糸側面に接しておらず、糸断面の中心方向に対して巻き付き力を発揮できないものは、巻き付き繊維として取り扱わない。糸の中心の無撚繊維及び巻き付き繊維のどれにも該当しない繊維のうち、両端が糸側面に接しているものを浮遊繊維、どちらか一方の端が糸側面から離れているものを毛羽繊維とした。巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維のどれにも該当しない全ての繊維を無撚繊維とみなした。
また、糸断面の中心方向に対して、隣接する繊維に対して接しており、かつ糸断面において最も外側に位置する繊維を最外端繊維とした。最外端繊維は巻き付き繊維であることもあり、無撚繊維であることもある。繊維のどちらか一方の端又は一部が、糸の断面方向に対して隣接する繊維から離れている場合は最外端繊維から除外した。
(a)糸を水平に置いて、KEYENCE製電子顕微鏡VE-9800を用いて、1mm以上の糸長を含むように糸の側面の画像を取得した。
(b)取得した糸の側面画像の左端と右端で、それぞれ糸断面の中心方向に対して最外端繊維同士の中点を得て、2点間を直線で結び糸軸を得た。得られた糸軸を基準線とした。例えば、
図4においてA及びBは、それぞれ糸の側面画像の左端と右端の中点であり、Laは基準線である。
(c)基準線と巻き付き繊維なす鋭角を測定し、巻き付き繊維角度とした。例えば
図4において、基準線Laと巻き付き繊維のなす角度αを巻き付き繊維角度とした。
(d)隣接する10箇所の巻き付き繊維について角度αを測定し、その最大値と最小値を取り除いた8箇所の平均値をその画像の代表値とした。
(e)1つのサンプルについて異なる箇所の画像5枚を取得し、さらに画像5枚の平均値を求め、その糸の代表値とした。
(9)無撚繊維の露出率
巻き付き繊維、無撚繊維及び最外端繊維は、(8)記載のとおりに確認した。
(a)糸を水平に置いて、KEYENCE製電子顕微鏡VE-9800を用いて、3mm以上の糸長を含むように糸の側面の画像を取得した。
(b)最外端繊維と糸の外界の境界線を輪郭線と定義した。糸の上下の輪郭線の長さをそれぞれ求めた。例えば、
図5ではLpが上の輪郭線であり、Luが下の輪郭線である。
(c)上下の輪郭線のそれぞれについて、巻き付き繊維に接していない部分の長さを求める。
(d)輪郭線の中で巻き付き繊維のない箇所の長さの和を求め、輪郭線の長さで除して100倍することで、輪郭線の中で巻き付き繊維に触れていない箇所の長さの割合を算出した。これを無撚繊維群の露出率と定義した。上下の輪郭線それぞれについて算出し、その平均値をその画像の代表値とした。
(e)1つのサンプルについて異なる箇所の画像5枚を取得し、さらに画像5枚の平均値を求め、その糸の代表値とした。
(10)気孔率、見掛け密度
最外端繊維は、(8)に記載のとおりに確認した。
(I)糸の側面観察からの紡績糸直径の算出
糸の側面は、KEYENCE製電子顕微鏡VE-9800により(倍率40倍から100倍にて)張力のない状態の糸の側面を撮影した。例えば
図6に示されているように、糸の任意の箇所の糸の最外端繊維に対して糸の長手方向へ接線Ltをひき、接線Ltに対する垂線Lsを糸の中心軸(長手方向)に対して垂直に下ろした。垂線Ltと糸を構成する最外端繊維の交点をCとした。さらに、垂線Ltと糸の中心軸を挟み交点Cの反対側の最外端繊維の交点をDとした。CD間の距離を測定して糸の直径とした。1つのサンプルに対して異なる箇所の画像5枚を撮影した。各画像について5箇所の糸直径を求め、その画像の代表値とした。さらに画像5枚の平均値を求め、その糸サンプルの代表値とした。
(II)紡績糸の見掛け密度の算出
単位長さあたりの重さを正量番手(JIS L 1095 9.4.1 正量テックス及び番手)から算出した。(I)で測定した紡績糸直径を用いて、糸の断面を円に近似させることで算出した体積で、単位長さあたりの重さを除算することで糸の見掛け密度を定義した。見掛け密度が小さいほど糸の単位長さあたりの嵩が大きい。
(III)気孔率の算出方法
任意の糸を構成する繊維素材と同じ比重で、かつその糸と同じ重さになる円柱の体積Vmを算出した。さらに(I)で測定した糸直径を用いて、その糸の断面を円に近似させて糸の体積Vyを算出した。VmをVyで除算し100倍すると糸の中に繊維が占める体積の割合が得られた。これを100から減算することで糸内の空気の占める割合である気孔率が導出された。ただし算出にはJIS L 1096:2010 8.11 見掛け比重及び気孔容積率に記載される繊維比重を用いた。
(11)糸の断面観察
糸の断面は、断面形状を保持するためにエポキシで包埋した後にミクロトーム(Leica EM UC6)を用いてガラスナイフで面出しを施し、KEYENCE製電子顕微鏡VE-9800(倍率270倍)にて撮影した。
(12)毛羽数
JIS L 1095(2010) 9.22.2 B法に準じて測定した。毛羽試験機としてF-INDEX TESTER(敷島紡績株式会社)を用い、試験条件は、糸速30m/分、試験長10m、N=30とした。
(13)英式綿番手
JIS L 1095(2010) 9.4.1の一般紡績糸の正量テックス・番手測定の綿番手測定方法に準じて測定した。
(14)紡績工程の生産性
紡績工程内の各工程(I)混打綿、(II)カード、(III)練条、(IV)精紡における生産性を以下の5段階基準で評価し、その平均点を総合評価点とした。
5:良好
4:概ね良好
3:普通
2:トラブル多い
1:生産不可
(15)布帛の編立性
布帛作製時の編立性を以下の5段階基準で評価した。
5:良好
4:概ね良好
3:普通
2:トラブル多い
1:生産不可
(16)抗ピリング性
JIS L 1076 A法に基づき、ICI形試験機を使用してピリング試験を行い、ピリングの発生の程度を確認した。
(17)吸水速乾性
一般財団法人ボーケン品質評価機構の蒸散性(II)試験(ボーケン規格BQE A 028)に準じて、20分後の蒸散率を求めた。ボーケン一般製品基準は30%以上である。蒸散率は、具体的には以下の方法で測定・算出した。
(a)直径約9cmの試験片とシャーレの質量(W)を測定した。
(b)シャーレに水0.1mLを滴下し、その上に試験片を載せ、合計質量(W0)を測定した。
(c)標準状態(20℃,65%RH)下に放置して所定時間ごとの合計質量(Wt)を測定し、20分後の蒸散率(%)を算出した。
蒸散率(%)={(W0-Wt)/(W0-W)}×100
(18)汗冷え防止性
(a)布帛の湿潤時の熱伝導率に基づいて汗冷え防止性を評価した。ここで汗冷えは、濡れた布帛へ皮膚から熱が伝導し体温が奪われる現象のことである。水の熱伝導率は空気の約25倍であり、発汗により生地が湿潤すると布帛の熱伝導率が上昇し、体温が奪われやすくなる。布帛の湿潤時の熱伝導率が低いほど、汗冷え防止性が高いことを意味する。
(b)カトーテック社製のKES-F7(サーモラボ)を用いて評価した。測定環境は20℃、65%RHとした。下記において、測定機器の部位の名称はメーカーの説明書に従った。
(c)サーモクールに8cm四方のサンプル布をセットし、生地の中央に0.1mLの蒸留水を滴下して試験体を作製した。クールボックスの設定温度は20℃とした。
(d)作製直後の試験体にBT-Boxをのせ、BT板が30℃で安定するために必要な電力量を測定した。この時の電力量を熱損失Hwsとした。BT板(30℃)からサーモクール(20℃)へ熱が流れるため、BT板の温度を30℃に保つためにはサーモクールへ流れる分の熱量を供給しなければならず、この熱量をBT板へ供給する電力量として測定した。この測定は蒸留水の滴下後2分以内に終え、滴下から2分後にBT-Boxを試験体から外した。これは試験体から水分が蒸発できるようにするためである。
(e)次の式により熱伝導率を算出した。
K[W/cm・℃]=熱損失[W]×布帛厚み[cm]÷BT板とサーモクールの温度差[℃]÷熱板の面積[cm
2]
布帛の湿潤時の熱伝導率が低いほど、汗冷えしにくい、すなわち汗冷え防止性が高いことを意味する。
(19)保温性
カトーテック社製のサーモラボ2を用いてドライコンタクト法で保温率を測定し、保温性を評価した。具体的には、一定の空気流れ(30cm/s)において、環境温度+10℃に設定した熱板から試験片(20×20cm)を介して放射された熱量(消費電力)を測定し保温率を求めた。保温率の数字が大きいほど保温性が高いと判定している。
(20)通気抵抗
カトーテック(株)製のKES-F8通気性試験機を用いて測定した。プランジャー/シリンダーのピストン運動によって定流量空気を試料に送り、大気中へ試料を通して放出、吸引する機構で、放出・吸引時の圧力から通気抵抗を算出した。測定条件はSENS:M、SPEED:0.2とした。
(21)風合い
得られた布帛の風合いについて、肌触り及び夏物衣料のドライタッチ感のそれぞれを以下の5段階で評価した。
5 良好
4 概ね良好
3 普通
2 やや劣る
1 劣る
(22)目付、厚み及び嵩密度
目付及び厚みは、JIS L 1096(2010)に準じて測定した。嵩密度は、目付及び厚みに基づいて算出した。
【0078】
<マスターバッチ樹脂組成物の製造例1>
(1)水溶性の親水性成分として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王(株)製、エマルゲン1108、有効成分100質量%、分子量473)を準備した。
(2)ベース樹脂として、ポリプロピレン(MFR20g/10分)のペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)を準備した。
(3)
図7に示す押出機の原料供給口2からベース樹脂ペレット80質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを4質量%含むポリプロピレン(MFR800g/10分)12.5質量部、親水性成分2.5質量部と、相溶化剤(エチレン-アクリル酸-マレイン酸共重合体、MFR80g/10分(190℃、2.16kg)、融点(DSC法)98℃)5質量部を供給した。
(4)押出機内における加工温度を170~190℃に設定した。樹脂溶融部3では回転軸に沿って供給物を前に送り、混練分散部4では複数枚の混練プレートが回転しており、ここでベース樹脂と親水性成分は均一混合され、次いで減圧ライン5を真空(負圧)にすることで同時に水分を取り除いた。
(5)次いで、押し出し部6から樹脂組成物を押出、冷却して取り出し口7から取り出した。
(6)ペレタイザーに導き、ペレット化して、直径2mm、高さ2mmの円柱形のポリプロピレン系マスターバッチ樹脂組成物を得た。
【0079】
<繊維の製造例1-1>
ポリプロピレン(MFR10g/10分)のペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)100質量部を溶融紡糸用の押出機の原料供給口から供給し、常法の溶融紡糸機を用いて、押出機で溶融混練した後、溶融紡糸した。その後、公知の延伸機を用いて延伸、常用の親水性の繊維処理剤を付着量が0.30質量%となるように付与し、クリンパーで捲縮を付与し、カットして、単繊維繊度が約1.69dtex、繊維長が38mmのポリプロピレン系繊維(以下において、PP繊維a-1とも記す。)を作製した。PP繊維a-1の水分率は0.10%であった。
【0080】
<繊維の製造例1-2>
ポリプロピレン(MFR10g/10分)のペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)100質量部を溶融紡糸用の押出機の原料供給口から供給し、常法の溶融紡糸機を用いて、押出機で溶融混練した後、溶融紡糸した。その後、公知の延伸機を用いて延伸、常用の親水性の繊維処理剤を付着量が0.30質量%となるように付与し、クリンパーで捲縮を付与し、カットして、単繊維繊度が約1.51dtex、繊維長が38mmのポリプロピレン系繊維(以下において、PP繊維a-2とも記す。)を作製した。PP繊維a-2の水分率は0.10%であった。
【0081】
<繊維の製造例2>
ポリプロピレン(MFR10g/10分)のペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)100質量部を溶融紡糸用の押出機の原料供給口から供給し、常法の溶融紡糸機を用いて、押出機で溶融混練した後、溶融紡糸した。その後、公知の延伸機を用いて延伸、常用の親水性の繊維処理剤を付着量が0.30質量%となるように付与し、クリンパーで捲縮を付与し、カットして、単繊維繊度が約1.21dtex、繊維長が38mmのポリプロピレン系繊維(以下において、PP繊維bとも記す。)を作製した。PP繊維bの水分率は0.10%であった。
【0082】
<繊維の製造例3-1>
(1)ポリプロピレン(MFR40g/10分)のペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)100質量部と、マスターバッチ樹脂組成物の製造例1で得られたマスターバッチ樹脂組成物2質量部と、カーボンブラック0.4質量部、フタロシアニンブルー2.0質量部、低立体規則性ポリプロピレン(商品名『エルモーデュ』S400、出光興産株式会社製)0.2質量部を混合した。
(2)(1)の混合した樹脂組成物(ペレット)を溶融紡糸用の押出機の原料供給口から供給し、常法の溶融紡糸機を用いて、押出機で溶融混練した後、溶融紡糸した。その後、公知の延伸機を用いて延伸、常用の親水性の繊維処理剤を付着量が0.30質量%となるように付与し、クリンパーで捲縮を付与し、カットして、単繊維繊度が約1.72dtex、繊維長が38mmの親水性ポリプロピレン系繊維(以下において、親水性PP繊維c-1とも記す。)を作製した。親水性PP繊維c-1の水分率は0.20%であった。
【0083】
<繊維の製造例3-2>
(1)ポリプロピレン(MFR40g/10分)のペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)100質量部と、マスターバッチ樹脂組成物の製造例1で得られたマスターバッチ樹脂組成物2質量部と、カーボンブラック0.4質量部、フタロシアニンブルー2.0質量部、低立体規則性ポリプロピレン(商品名『エルモーデュ』S400、出光興産株式会社製)0.2質量部を混合した。
(2)(1)の混合した樹脂組成物(ペレット)を溶融紡糸用の押出機の原料供給口から供給し、常法の溶融紡糸機を用いて、押出機で溶融混練した後、溶融紡糸した。その後、公知の延伸機を用いて延伸、常用の親水性の繊維処理剤を付着量が0.30質量%となるように付与し、クリンパーで捲縮を付与し、カットして、単繊維繊度が約1.80tex、繊維長が38mmの親水性ポリプロピレン系繊維(以下において、親水性PP繊維c-2とも記す。)を作製した。親水性PP繊維c-2の水分率は0.20%であった。
【0084】
<繊維の製造例4>
(1)ポリプロピレン(MFR40g/10分)のペレット(直径2mm、高さ2mmの円柱形)100質量部と、マスターバッチ樹脂組成物の製造例1で得られたマスターバッチ樹脂組成物2質量部と、カーボンブラック2.2質量部、低立体規則性ポリプロピレン(商品名『エルモーデュ』S400、出光興産株式会社製)0.2質量部を混合した。
(2)(1)の混合した樹脂組成物(ペレット)を溶融紡糸用の押出機の原料供給口から供給し、常法の溶融紡糸機を用いて、押出機で溶融混練した後、溶融紡糸した。その後、公知の延伸機を用いて延伸、常用の親水性の繊維処理剤を付着量が0.30質量%となるように付与し、クリンパーで捲縮を付与し、カットして、単繊維繊度が約1.87dtex、繊維長が38mmの親水性ポリプロピレン系繊維(以下において、親水性PP繊維dとも記す。)を作製した。親水性PP繊維dの水分率は0.20%であった。
【0085】
(実施例1)
製造例1-1で得られたPP繊維a-1を40質量部とポリエチレンテレフタレート繊維(東洋紡株式会社製、品名「ピラミダル」、ダルタイプ、Y型断面、異型度2.10、単繊維繊度1.45dtex、繊維長38mm、水分率0.55%)を60質量部混打綿工程、カード工程、練条工程に順次投入し、スライバーを得た。次に、VORTEX精紡機(村田機械株式会社製、型番「VORTEX 861」)を用い、得られたポリプロピレン系繊維40質量%及びポリエチレンテレフタレート繊維60質量%からなるスライバーをドラフトゾーンに供給してドラフトした後、ノズル圧0.55MPa、紡出速度300m/分の条件で紡出し、巻き取ることで紡績糸(MVS糸)を作製した。スピンドル径は1.2mmであった。
【0086】
上記で得られた紡績糸を用いて、丸編機を用いて天竺組織の編物を編成した。得られた編地を精練した後、分散染料とポリエステル用吸水剤(日華化学社製、商品名ナイスポールPR-99)を同浴で130℃40分間染色及び吸水加工し、その後、吸水仕上げを行い、加工布帛を作製した。
【0087】
(実施例2)
PP繊維a-1に変えて、製造例3-1で得られた親水化PP繊維c-1を用い、ノズル圧、紡出速度及びスピンドル径を下記表1に示したとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、及び加工布帛を作製した。
【0088】
(実施例3)
PP繊維a-1に変えて、製造例4で得られた親水化PP繊維dを用いた以外は、実施例1と同様にして紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、及び加工布帛を作製した。
【0089】
(実施例4)
製造例1-2で得られたPP繊維a-2を40質量部とリサイクルポリエチレンテレフタレート繊維(Wuhe(Jiangsu) Differential Fiber社製、ダルタイプ、十字断面、異型度2.13、単繊維繊度1.75dtex、繊維長38mm、水分率0.50%)を60質量部混打綿工程、カード工程、練条工程に順次投入し、スライバーを得た。次に、VORTEX精紡機(村田機械株式会社製、型番「VORTEX 861」)を用い、得られたポリプロピレン系繊維40質量%及びリサイクルポリエチレンテレフタレート繊維60質量%からなるスライバーをドラフトゾーンに供給してドラフトした後、ノズル圧0.60MPa、紡出速度280m/分の条件で紡出し、巻き取ることで紡績糸(MVS糸)を作製した。スピンドル径は1.2mmであった。
得られた紡績糸(MVS糸)を用いた以外は、実施例1と同様にして、天竺組織の編物、及び加工布帛を作製した。
【0090】
(実施例5)
リサイクルポリエチレンテレフタレート繊維として、Shanghai Different Chemical Fiber社製のリサイクルポリエチレンテレフタレート繊維(商品名「Cool smart」、ダルタイプ、十字断面、異型度1.76、単繊維繊度1.62dtex、繊維長38mm、水分率0.40%)を用いた以外は、実施例4と同様にして、紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、加工布帛を作製した。
【0091】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレート繊維(東洋紡株式会社製、品名「ピラミダル」、ダルタイプ、Y型断面、異型度2.10、単繊維繊度1.45dtex、繊維長38mm、水分率0.55%)を95質量部と、ポリエチレンテレフタレート繊維(CHINA SHANGHAI DIFFERENT CHEMICAL FIBER CO.,LTD.製、カチオン可染、品名「超柔麗」、単繊維繊度1.37dtex、繊維長38mm、丸型断面、水分率0.56%)を5質量部混打綿工程、カード工程、練条工程に順次投入し、スライバーを得た。
得られたスライバーを用い、スピンドル径を1.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、及び加工布帛を作製した。
【0092】
(比較例2)
ポリエチレンテレフタレート繊維(CHINA SINOPEC YIZHENG CHEMICAL FIBER CO.,LTD.から入手、レギュラータイプ、単繊維繊度1.27dtex、繊維長38mm、丸型断面、水分率0.59%)を95質量部と、ポリエチレンテレフタレート繊維(CHINA SHANGHAI DIFFERENT CHEMICAL FIBER CO.,LTD.製、カチオン可染、品名「超柔麗」、単繊維繊度1.37dtex、繊維長38mm、丸型断面、水分率0.56%)を5質量部混打綿工程、カード工程、練条工程に順次投入し、スライバーを得た。
得られたスライバーを用いた以外は、実施例1と同様にして紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、加工布帛を作製した。
【0093】
(比較例3)
製造例2で得られたPP繊維bを40質量部とポリエチレンテレフタレート繊維(東洋紡株式会社製、品名「ピラミダル」、ダルタイプ、Y型断面、異型度2.10、単繊維繊度1.45dtex、繊維長38mm、水分率0.55%)を60質量部混打綿工程、カード工程、練条工程、粗紡工程に順次投入し、60ゲレン/12ydの粗糸を得た。次に得られたポリプロピレン系繊維40質量%及びポリエステル系繊維60質量%からなる粗糸を2本用い、リング精紡機にて43.2倍のドラフトを付与し撚り係数3.73で撚糸し、英式綿番手36sの紡績糸(サイロ糸)を作製した。具体的には、二本のポリプロピレン系繊維40質量%及びポリエステル系繊維60質量%からなる粗糸を、ガイドバー及びトランペットを介して、バックローラ、ミドルローラ、エプロン及びフロントローラからなるドラフトゾーンに並列に供給し、ドラフトされた粗糸(繊維束)を、スネルワイヤー、トラベラー及びリングを介して撚糸して、2本の繊維束が引き揃えられ撚られた紡績糸(サイロ糸)を得た。該紡績糸を用い、実施例1と同様にして天竺組織の編物及び加工布帛を作製した。
【0094】
(比較例4)
製造例1-2で得られたPP繊維a-2を32質量部と製造例4で得られたPP繊維dを8質量部とリサイクルポリエチレンテレフタレート繊維(Wuhe(Jiangsu)Differential Fiber社製、ダルタイプ、丸型断面、単繊維繊度1.14dtex、繊維長38mm、水分率0.60%)60質量部を用いた以外は、実施例4と同様にして、紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、加工布帛を作製した。
【0095】
(比較例5)
製造例1-2で得られたPP繊維a-2を40質量部とリサイクルポリエチレンテレフタレート繊維(Wuhe(Jiangsu)Differential Fiber社製、ダルタイプ、丸型断面、単繊維繊度1.14dtex、繊維長38mm、水分率0.60%)60質量部を用いた以外は、実施例4と同様にして、紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、加工布帛を作製した。
【0096】
(比較例6)
製造例4で得られたPP繊維dを40質量部とポリエチレンテレフタレート繊維(Jiangyin Xinlun Chemical Fiber Co.,Ltd(三房巷集団)製、ダルタイプ、丸型断面、単繊維繊度1.34dtex、繊維長38mm、水分率0.59%)60質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、加工布帛を作製した。
【0097】
(比較例7)
製造例3-2で得られたPP繊維c-2を40質量部とポリエチレンテレフタレート繊維(Jiangyin Xinlun Chemical Fiber Co.,Ltd(三房巷集団)製、ダルタイプ、丸型断面、単繊維繊度1.34dtex、繊維長38mm、水分率0.59%)60質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、加工布帛を作製した。
【0098】
(比較例8)
製造例1-2で得られたPP繊維a-2を40質量部とリサイクルポリエチレンテレフタレート繊維(Wuhe(Jiangsu)Differential Fiber社製、ダルタイプ、丸型断面、単繊維繊度1.31dtex、繊維長38mm、水分率1.05%)60質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、紡績糸(MVS糸)、天竺組織の編物、加工布帛を作製した。
【0099】
実施例及び比較例の紡績糸において、巻き付き繊維群の巻き付き繊維角度、無撚繊維群の露出率、気孔率、見かけ密度、英式綿番手、及び毛羽数を上述したとおりに測定し、その結果を下記表1~3に示した。実施例及び比較例の編物の抗ピリング性、吸水速乾性、汗冷え防止性、保温性、通気抵抗、風合い、目付、厚み及び嵩密度を上述したとおりに評価・測定し、その結果を下記表1~3に示した。下記表1には、上述したとおりに測定した繊維の物性も示した。下記表1において、PETはポリエチレンテレフタレート繊維を意味し、PPはポリプロピレン系繊維を意味し、親水性PPは親水性ポリプロピレン系繊維を意味し、「-」は未測定を意味し、構成本数は、紡績糸の番手と繊維の単繊維繊度に基づいて算出したものである。また、下記表4には、紡績工程の生産性及び布帛の編立性の結果も併せて示した。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
図1に実施例1で得られた紡績糸の側面写真(倍率100倍)を示し、
図2に同紡績糸の断面写真(倍率270倍)を示した。
図1~
図2から分かるように、過流空気精紡による紡績糸は、内部の無撚状態の無撚繊維群と、該無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成されている。実施例の紡績糸は、ポリプロピレン系繊維とポリエステル系繊維を所定の範囲で混合し、上記構成を取ることにより、繊維の充填が密になり、気孔率が低い状態にあることが確認できる。特に、実施例1~5では、異型断面ポリエステル系繊維を用いることで、繊維の充填が密になり、気孔率が低く毛細管現象が促進されやすい状態にあることが確認できる。
【0105】
上記表1の結果から分かるように、実施例の紡績糸を用いた布帛は、ピリングが3級以上であり、抗ピリング性が良好であった。また、実施例の紡績糸を用いた布帛は、吸水速乾性及び汗冷え防止性にも優れており、肌触りの良さとドライ感を兼ね備えた風合いであった。また、実施例4及び5のようにリサイクルポリエステル系繊維を含む布帛も、抗ピリング性が良好であり、吸水速乾性及び汗冷え防止性にも優れており、肌触りの良さとドライ感を兼ね備えた風合いであった。
【0106】
一方、ポリプロピレン系繊維を含まず、ポリエステル繊維のみからなる紡績糸を用いた比較例1及び2の布帛は、湿潤状態の熱伝導率が9.5×10-4W/cm・℃を超えており、汗冷えしやすかった。また、ポリプロピレン系繊維とポリエステル系繊維を混紡してなる紡績糸でも、その気孔率が60%を超える場合には、比較例3~8のように布帛のピリングが3級未満であり、抗ピリング性の確保が困難であった。
【符号の説明】
【0107】
1 押出機
2 原料供給口
3 樹脂溶融部
4 混練分散部
5 減圧ライン
6 押し出し部
7 取り出し部