(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】セル内部短絡故障の検出方法、装置、デバイス及び媒体
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20230906BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20230906BHJP
【FI】
G01R31/396
G01R31/52
(21)【出願番号】P 2022542954
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 CN2021081241
(87)【国際公開番号】W WO2022001197
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】202010616755.X
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼浴▲滄▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼小波
(72)【発明者】
【氏名】李▲ティン▼
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/130258(WO,A1)
【文献】特開2010-231939(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104617330(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106932722(CN,A)
【文献】特表2022-545033(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131427(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G01R 31/50-31/74
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パック
において、予め設けられた条件
としてセル内部短絡故障が複数回検出された場合、前記電池パックのm個のセルの複数の時点での電気信号値をそれぞれ取得し
、mは3以上
の整数であり、
前記電池パックの目標セルに対して、
前記目標セルの前記複数の時点での電気信号値を利用して、前記目標セルの電気信号値の変動度合いを示す前記目標セルの第1のパラメータを算出することと、
前記目標セルの第1のパラメータと、前記m個のセルにおける前記目標セル以外のセルである他のセルの、前記他のセルの前記複数の時点での電気信号値を利用して、前記他のセルの電気信号値の変動度合いを示す前記他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いを示す、前記ばらつき度合いと正の相関関係を有する第2のパラメータを算出することと、
前記第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいという条件で、前記目標セルに内部短絡故障が発生したと特定することと、
を実行する、
コンピュータにより実現されるセル内部短絡故障の検出方法。
【請求項2】
nが1よりも大きい整数である場合、
前記予め設けられた条件は、セル内部短絡故障に対するその前のn-1回の検出中において、前記目標セルの第2のパラメータがいずれも予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいことをさらに含む、
請求項1に記載のコンピュータにより実現されるセル内部短絡故障の検出方法。
【請求項3】
前記予め設けられたパラメータ閾値は、前記m個のセルの数と正の相関関係にある、
請求項1又は2に記載のコンピュータにより実現されるセル内部短絡故障の検出方法。
【請求項4】
前記目標セルの第1のパラメータは、前記目標セルの前記複数の時点での電気信号値の標準偏差である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータにより実現されるセル内部短絡故障の検出方法。
【請求項5】
前記第2のパラメータは、変動係数であり、
前記目標セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いを示す第2のパラメータを算出することは、
前記m個のセルの第1のパラメータのばらつき度合いを示す目標標準偏差、及び前記m個のセルの第1のパラメータの平均値を算出することと、
前記目標セルの第1のパラメータと前記平均値との差分値である目標差分値の、前記目標標準偏差に対する比を算出し、前記比を前記目標セルの変動係数として特定することと、を含む、
請求項4に記載のコンピュータにより実現されるセル内部短絡故障の検出方法。
【請求項6】
電池パック
において、予め設けられた条件
としてセル内部短絡故障が複数回検出された場合、前記電池パックのm個のセルの複数の時点での電気信号値をそれぞれ取得する
(mは3以上
の整数である)データ取得モジュールと、
前記電池パックの目標セルに対して、前記目標セルの前記複数の時点での電気信号値を利用し、前記目標セルの電気信号値の変動度合いを示す前記目標セルの第1のパラメータを算出する第1の算出モジュールと、
前記電池パックの目標セルに対して、前記目標セルの第1のパラメータと、前記m個のセルにおける前記目標セル以外のセルである他のセルの、前記他のセルの前記複数の時点での電気信号値を利用して、前記他のセルの電気信号値の変動度合いを示す前記他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いを示す、前記ばらつき度合いと正の相関関係を有する第2のパラメータを算出する第2の算出モジュールと、
前記電池パックの目標セルに対して、前記第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいという条件で、前記目標セルに内部短絡故障が発生したことを特定する故障検出モジュールと、
を備える、
セル内部短絡故障の検出装置。
【請求項7】
nが1よりも大きい整数である場合、
前記予め設けられた条件は
、充放電動作状況でのセル内部短絡故障に対するその前のn-1回の検出中において、前記目標セルの第2のパラメータがいずれも予め設けられたパラメータ閾値より大きいことをさらに含む、
請求項6に記載のセル内部短絡故障の検出装置。
【請求項8】
前記予め設けられたパラメータ閾値は、前記m個のセルの数と正の相関関係にある、
請求項6又は7に記載のセル内部短絡故障の検出装置。
【請求項9】
プログラムを記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記プログラムを実行して、請求項1~5のいずれか一項に記載のセル内部短絡故障の検出方法を実行するプロセッサと、
を備える、
セル内部短絡故障の検出デバイス。
【請求項10】
コンピュータプログラムコマンドが記憶されているコンピュータ記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムコマンドがプロセッサにより実行される時に請求項1~5のいずれか一項に記載のセル内部短絡故障の検出方法を実現するコンピュータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年6月30日に提出された名称が「セル内部短絡故障の検出方法、装置、デバイス及び媒体」である中国特許出願202010616755.Xの優先権を主張し、該出願の全ての内容は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本願は、電池技術分野に関し、特にセル内部短絡故障の検出方法、装置、デバイス及び媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
新エネルギーの発展に伴い、ますます多くの分野で新エネルギーを動力としている。高エネルギー密度、リサイクル可能な充電、安全で環境にやさしいなどの利点を有するため、電池パックは、新エネルギー自動車、家電、エネルギー貯蔵システムなどの分野に広く応用される。
【0004】
しかし、近年、電池パックのプロモーションに伴い、セル内部短絡による事故が発生したことがあり、例えば電池温度が急激に上昇し、発煙、発火さらに爆発の熱暴走事故により、市場の電池パックへの受け入れ度合いに深刻な影響を与えている。
【0005】
しかしながら、セルは、内部短絡が発生してから最終的に安全事故が発生するまで数時間を経る必要がある。したがって、この数時間内にどのように内部短絡を早期に検出するかは、電池パックの安全にとって重要である。
【発明の概要】
【0006】
本願の実施例に係るセル内部短絡故障の検出方法、装置、デバイス及び媒体により、内部短絡が発生したセルを正確に検出することができる。
【0007】
第1の態様において、電池パックが予め設けられた条件にある場合、それぞれ電池パックのm個のセルの複数の時点での電気信号値を取得することを含み、ここで、予め設けられた条件は、現在、セル内部短絡故障に対するn回目の検出過程にあることを含み、m、nは、正の整数であることを含み、
電池パックの目標セルに対して、
目標セルの複数の時点での電気信号値を利用して、目標セルの電気信号値の変動度合いを示す目標セルの第1のパラメータを算出することと、
目標セルの第1のパラメータと、m個のセルにおける目標セル以外のセルである他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示す、ばらつき度合いと正の相関関係を有する第2のパラメータを算出することと、
第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいという条件で、目標セルに内部短絡故障が発生したと特定することと、
を実行するセル内部短絡故障の検出方法を提供する。
【0008】
本願の実施例におけるセル内部短絡故障の検出方法によれば、現在前記充放電動作状況でのセル内部短絡故障に対するn回目の検出過程において、目標セルの複数の時点での電気信号値に基づいて、第1のパラメータを算出することができる。同じ電池パックに属するm個のセルに対して、内部短絡故障が発生した故障セルの電気信号変化レートは、正常セルの電気信号変化レートと異なり、それに応じて、故障セルの電気信号変動度合いは、他の正常セルの電気信号変動度合いと異なる。第1のパラメータは、電気信号の変動度合いを示すことができるため、故障セルの第1のパラメータも正常セルの第1のパラメータと異なる。電池パックのm個のセルに故障セルが存在する場合、故障セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いは、正常セルよりも大きい。したがって、各セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示すことができる第2のパラメータを利用し、第2のパラメータは前記ばらつき度合いと正の相関関係を有するため、あるセルの第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きい場合、内部短絡が発生したセルを正確に検出する。
【0009】
いくつかの実施形態において、nが1よりも大きい整数である場合、予め設けられた条件は、セル内部短絡故障に対するその前のn-1回の検出過程において、目標セルの第2のパラメータがいずれも予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいことをさらに含む。
【0010】
本実施形態において、その前のn回の検出過程における第2のパラメータに基づいて、電池パックに内部短絡故障が発生するか否かを検出することができ、それにより、偶発的な要因による内部短絡故障の正確性への影響を避け、セル内部短絡故障の検出精度を向上させることができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、予め設けられた参照閾値は、m個のセルの数と正の相関関係を有する。
【0012】
本実施形態において、セルの合計と予め設けられた参照閾値との間の関係を考慮することができ、それにより、セル内部短絡故障の検出精度を向上させる。
【0013】
いくつかの実施形態において、目標セルの第1のパラメータは、目標セルの複数の時点での電気信号値の標準偏差である。
【0014】
本実施形態において、目標セルの複数の時点での電気信号値の標準偏差を目標セルの第1のパラメータとすることで、標準偏差の大きさにより目標電気的な複数の時点での電気信号値の変動度合いを正確に反映することができ、さらにセル内部短絡故障の正確性を向上させる。
【0015】
いくつかの実施形態において、第2のパラメータは、変動係数であり、
目標セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示す第2のパラメータを算出することは、
m個のセルの第1のパラメータのばらつき度合いを示す目標標準偏差、及びm個のセルの第1のパラメータの平均値を算出することと、
目標セルの第1のパラメータと平均値との差分値である目標差分値と、目標標準偏差との比を算出し、比を目標セルの変動係数として特定することと、を含む。
【0016】
本実施形態において、無次元の変動係数を第2のパラメータとすることで、充放電過程において異なる時間帯の第2のパラメータを統一することができ、さらに異なる時間帯の目標セルに内部短絡故障が存在するか否かの判別基準により統一しやすい。
【0017】
第2の態様において、電池パックは現在にセル内部短絡故障に対するn回目の検出過程にあることを含む予め設けられた条件にある場合、それぞれ電池パックのm個(m、nは、正の整数である)のセルの複数の時点での電気信号値を取得するデータ取得モジュールと、
電池パックの目標セルに対して、目標セルの複数の時点での電気信号値を利用し、目標セルの第1のパラメータを算出するために用いられ、第1のパラメータは、目標セルの電気信号値の変動度合いを示す第1の算出モジュールと、
電池パックの目標セルに対して、目標セルの第1のパラメータと、m個のセルにおける目標セル以外のセルである他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示す、ばらつき度合いと正の相関関係を有する第2のパラメータを算出するために用いられる第2の算出モジュールと、
電池パックの目標セルに対して、第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいという条件で、目標セルに内部短絡故障が発生したことを特定する故障検出モジュールと、
を含むセル内部短絡故障の検出装置を提供する。
【0018】
本願の実施例におけるセル内部短絡故障の検出装置によれば、現在前記充放電動作状況でのセル内部短絡故障に対するn回目の検出過程において、目標セルの複数の時点での電気信号値に基づいて、第1のパラメータを算出することができる。同じ電池パックに属するm個のセルに対して、内部短絡故障が発生した故障セルの電気信号変化レートは、正常セルの電気信号変化レートと異なり、それに応じて、故障セルの電気信号変動度合いは、他の正常セルの電気信号変動度合いと異なる。第1のパラメータは、電気信号の変動度合いを示すことができるため、故障セルの第1のパラメータも正常セルの第1のパラメータと異なる。電池パックのm個のセルに故障セルが存在する場合、故障セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いは、正常セルよりも大きい。したがって、各セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示すことができる第2のパラメータを利用し、第2のパラメータは前記ばらつき度合いと正の相関関係を有するため、あるセルの第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きい場合、内部短絡が発生したセルを正確に検出する。
【0019】
いくつかの実施形態において、nが1よりも大きい整数である場合、予め設けられた条件は、充放電動作状況でのセル内部短絡故障に対するその前のn-1回の検出過程において、目標セルの変動係数は、いずれも予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいことをさらに含む。
【0020】
本実施形態において、その前のn回の検出過程における第2のパラメータに基づいて、電池パックに内部短絡故障が発生するか否かを検出することができ、それにより、偶発的な要因による内部短絡故障の正確性への影響を避け、セル内部短絡故障の検出精度を向上させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、予め設けられた参照閾値は、m個のセルの数と正相関関係を有する。
【0022】
本実施形態において、セルの合計と予め設けられた参照閾値との間の関係を考慮することができ、それにより、セル内部短絡故障の検出精度を向上させる。
【0023】
第3の態様において、プログラムを記憶した記憶装置と、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、第1の態様又は第2の態様の任意の選択可能な実施形態に係るセル内部短絡故障の検出方法を実行するプロセッサと、を含むセル内部短絡故障の検出デバイスを提供する。
【0024】
本願の実施例におけるセル内部短絡故障の検出デバイスによれば、現在前記充放電動作状況でのセル内部短絡故障に対するn回目の検出過程において、目標セルの複数の時点での電気信号値に基づいて、第1のパラメータを算出することができる。同じ電池パックに属するm個のセルに対して、内部短絡故障が発生した故障セルの電気信号変化レートは、正常セルの電気信号変化レートと異なり、それに応じて、故障セルの電気信号変動度合いは、他の正常セルの電気信号変動度合いと異なる。第1のパラメータは、電気信号の変動度合いを示すことができるため、故障セルの第1のパラメータも正常セルの第1のパラメータと異なる。電池パックのm個のセルに故障セルが存在する場合、故障セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いは、正常セルよりも大きい。したがって、各セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示すことができる第2のパラメータを利用し、第2のパラメータは前記ばらつき度合いと正の相関関係を有するため、あるセルの第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きい場合、内部短絡が発生したセルを正確に検出する。
【0025】
第4の態様において、コンピュータプログラムコマンドが記憶されたコンピュータ記憶媒体であって、コンピュータプログラムコマンドがプロセッサにより実行される時に第1の態様又は第2の態様の任意の選択可能な実施形態に係るセル内部短絡故障の検出方法を実現するコンピュータ記憶媒体を提供する。
【0026】
本願の実施例におけるセル内部短絡故障の検出デバイスによれば、現在前記充放電動作状況でのセル内部短絡故障に対するn回目の検出過程において、目標セルの複数の時点での電気信号値に基づいて、第1のパラメータを算出することができる。同じ電池パックに属するm個のセルに対して、内部短絡故障が発生した故障セルの電気信号変化レートは、正常セルの電気信号変化レートと異なり、それに応じて、故障セルの電気信号変動度合いは、他の正常セルの電気信号変動度合いと異なる。第1のパラメータは、電気信号の変動度合いを示すことができるため、故障セルの第1のパラメータも正常セルの第1のパラメータと異なる。電池パックのm個のセルに故障セルが存在する場合、故障セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いは、正常セルよりも大きい。したがって、各セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示すことができる第2のパラメータを利用し、第2のパラメータは前記ばらつき度合いと正の相関関係を有するため、あるセルの第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きい場合、内部短絡が発生したセルを正確に検出する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下は本願の実施例に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下の図面は、本願のいくつかの実施例のみである。当業者であれば、創造的労働をしない前提で、さらに図面に基づいて他の図面を得ることができる。図面において、図面は、実際の比率に応じて描かれていない。
【
図1】例示的な内部セルの合計が30である電池パックの充電過程において正常セル及び故障セルの電圧の時間変化を示す図である。
【
図2】例示的な内部セルの合計が192である電池パックの充電過程において正常セル及び故障セルの電圧の時間変化を示す図である。
【
図3】本願の実施例に係るセル内部短絡故障の検出方法の概略フローチャートである。
【
図4】本願の実施例に係る例示的なセル内部短絡故障の検出方法の概略フローチャートである。
【
図5】本願の実施例に係る例示的な電池パックのセルに対する変動係数のシミュレーション概略図である。
【
図6】本願の実施例に係る別の例示的な電池パックのセルに対する変動係数のシミュレーション概略図である。
【
図7】本願の実施例に係る例示的なセル内部短絡故障の検出方法の概略フローチャートである。
【
図8】本願の実施例に係るセル内部短絡故障の検出デバイスの構造概略図である。
【
図9】本願の実施例におけるセル内部短絡故障の検出デバイスの例示的なハードウェアアーキテクチャの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面及び実施例を参照して本願の実施形態をさらに詳細に説明する。以下、実施例の詳細な説明及び図面は、本願の原理を例示的に説明するために用いられるが、本願の範囲を限定するものではない。即ち、本願は、説明した実施例に限定されない。
【0029】
説明すべきこととして、本願の説明において、特に説明がない限り、「複数」の意味は二つ以上である。用語「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」などが指示する方位又は位置関係は、本願を説明しやすく、説明を簡略化するためのみであり、示された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構造・操作しなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本願を限定するものと理解すべきではない。また、用語「第1」、「第2」、「第3」などは、単に説明の目的で用いられ、相対的な重要性を指示又は暗示することとは理解できない。
【0030】
次の説明に使用される方向用語は、いずれも図面に示す方向であり、本願の具体的な構造を限定するものではない。また、説明すべきこととして、本願の説明において、明確な規定及び限定がない限り、用語「取り付け」、「接続」、「連続」は、広義に理解されるべきである。例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続であってもよく、又は一体的な接続であってもよく、また、直接接続であってもよく、中間媒体を介する間接接続であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0031】
以下、本願の各態様の特徴及び例示的な実施例を詳細に説明する。本願の目的及び利点をより明確にするために、以下に図面及び実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、ここで説明する具体的な実施例は本願を説明するためのみに設けられたものであり、本願を限定するものではない。当業者であれば、本願がこれらの具体的な細部のいくつかの細部を必要とせずに実施されることができる。以下の実施例の説明は、本願の例示を示すことにより本願をよりよく理解するためである。
【0032】
なお、本明細書において、第1の及び第2のなどのような関係用語は一つの実体又は操作を他の実体又は操作と区別するために用いられ、必ずしもこれらの実体又は操作の間にいかなるこのような関係又は順序が存在することを要求又は暗示するものではない。また、用語「含む」、「有する」又は任意の他の変形は非排他的な包含をカバーすることを意図する。それにより、一連の要素を含む過程、方法、物品又は設備は、それらの要素を含むだけでなく、明確に列挙されない他の要素又はこのような過程、方法、物品又は設備に固有の要素を含む。より多くの制限がない場合に、語句「…を含む」で限定された要素は、前記要素を含む過程、方法、物品又は設備において他の同じ要素が存在することを排除しない。
【0033】
本願の実施例は、セル内部短絡故障の検出方法、装置、デバイス及び媒体を提供し、電池のセルに対して内部短絡故障検出を行う応用シーンに適用することができる。例えば、静的状態にある電池におけるセルに対して内部短絡故障検出を行う具体的な応用シーンであり、また、例えば充電状態にある電池におけるセルに対して内部短絡故障検出を行う具体的な応用シーンであり、さらに例えば放電状態にある電池におけるセルに対して内部短絡故障検出を行う具体的な応用シーンである。例示的には、本願の実施例における電池パックは、エネルギー貯蔵装置における電池パックであってもよく、又は、電動車両にける電池パックであってもよい。
【0034】
本願をよりよく理解するために、本願の実施例は、内部短絡等の概念を具体的に説明する。
【0035】
内部短絡とは、主にセル内部の物理的接触による短絡をいう。例えば、銅箔とアルミニウム箔のバリがセパレータを突き破るか、又は、リチウム原子のデンドライトがセパレータを突き破ることによる短絡などに起因する内部短絡である。これらの細かい針状金属は、一定の抵抗値を有するため、短絡電流がそれほど大きくない可能性がある。内部短絡故障が速やかに発見されないと、内部短絡により電池温度が急激に上昇し、発煙、発火さらに爆発の熱暴走事故が発生する可能性があり、電池安全性、電池の耐用年数に深刻に影響を与える。電池を装着した電気自動車に対して、電池が内部短絡故障を発生すると、この電気自動車に対する市場の受け入れ度合いに深刻な影響を与える。
【0036】
したがって、セル内部短絡故障を検出することができる検出手段を必要とする。
【0037】
出願人は、多数の試験データとシミュレーション結果から、内部短絡故障が発生したセルに対して、その電圧変化傾向が正常セル電圧と異なることを見つけた。例えば、
図1は、例示的な内部セルの合計が30である電池パックの充電過程において正常セル及び故障セルの電圧の時間変化を示す図である。
図2は、例示的な内部セルの合計が192である電池パックの充電過程における正常セルと故障セルの電圧の時間変化を示す図である。
【0038】
図1及び
図2から分かるように、電池パック内部のセルの数に関わらず、内部短絡故障が発生した故障セルに対して、充電過程において、熱暴走が発生するその前の一定の期間内に、その電圧は、依然として上昇状態を維持するが、上昇の度合いが正常セルの電圧と異なる。
【0039】
上記発見に対して、本願の実施例は、セル内部短絡故障の検出手段を提供する。
【0040】
本願をよりよく理解するために、以下に、図面を参照して、本願の実施例に係るセル内部短絡故障の検出方法、装置、デバイス及び媒体を詳細に説明する。注意すべきことは、これらの実施例は、本願の開示する範囲を限定するものではない。
【0041】
図3は、本願の実施例に係るセル内部短絡故障の検出方法の概略フローチャートである。
図3に示すように、本実施例におけるセル内部短絡故障の検出方法300は、以下のステップS310~S340を含むことができる。
【0042】
S310には、電池パックが予め設けられた条件にある場合、それぞれ電池パックのm個のセルの複数の時点での電気信号値を取得する。
【0043】
まず、本願の実施例における電池パックに対して、電池パックは、高電圧電池パッケージ、低電圧バッテリ、電池モジュールなどのm個のセルを含む電池装置であってもよく、ここで、mは、正の整数である。本発明の実施例は、電池パックの具体的な形式を限定しない。
【0044】
次に、予め設けられた条件に対して、予め設けられた条件は、現在、セル内部短絡故障に対するn回目の検出過程にあることを含み、ここで、nは、正の整数である。すなわち、電池が出荷される前、又は、電池が出荷され使用される過程において、電池パックに対して複数回の内部短絡故障検出を行うことができる。
【0045】
いくつかの実施例において、その前のn-1回の検出過程の故障検出結果を考慮する必要がなく、n回目の検出過程の検出結果を利用して目標セルに内部短絡故障が発生するか否かを確認することができる。
【0046】
別のいくつかの実施例において、偶発的要因による内部短絡故障の正確性への影響を避けるために、予め設けられた条件は、セル内部短絡故障に対するその前のn-1回(ここで、nは1よりも大きい整数である)の検出過程において、目標セルの第2のパラメータは、いずれも予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいこと、をさらに含む。すなわち、その前のn回の検出過程において、検出過程毎に一つの第2のパラメータを算出する必要があり、且つ検出過程毎に算出された第2のパラメータはいずれも予め設けられたパラメータ閾値よりも大きい必要がある。
【0047】
説明すべきこととして、本願の実施例における数値nは、相対的な数字を表してもよく、電池パックに対する故障検出を開始するn回目に限定されなく、予め設けられた時間ごとに検出回数を0にリセットしてもよく、又は、ある検出過程において第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも小さい場合に検出回数を0にリセットしてもよい。
【0048】
本願の実施例におけるn回の故障検出は、電池パックが静的動作状況、充電動作状況及び放電動作状況での故障検出であってもよい。いくつかの実施例において、予め設けられた条件は、電池パックが目標充放電動作状況にあることをさらに含む。すなわち、現在の検出は、電池が充電状態又は放電状態でのn回目の故障検出過程であってもよい。
【0049】
いくつかの状況で、静的動作状況、すなわち充放電電流が0である時に各単体セル間の電圧差によりセルに内部短絡故障が発生するか否かを判断する必要がある。しかしながら、電圧差により内部短絡故障を判断する手段は、誤診断を引き起こしやく、且つ内部短絡が深刻である時のみに効果的に識別することができ、故障の修復時間を深刻に短縮するだけでなく、電池が静的動作状況にある具体的な検出シーンのみに適用され、複雑な充放電動作状況における内部短絡検出要求を満たすことができない。本願の実施例に係る検出方法は、電池パックが静的動作状況、充電動作状況又は放電動作状況にあるか否かに関わらず、セル内部短絡故障のみを検出することができ、検出方法の汎用性を向上させる。
【0050】
次に、電気信号値は、正常セルと故障セルとの間に差異性のある電気信号の数値である。例示的には、電圧値又は電流値であってもよい。本願を理解しやすくするために、本願の実施例の下記部分は、主に電圧値を例として具体的に説明する。
【0051】
最後に、S310に対して、電池パックの各セルについて、p個の時点の電気信号値を取得することができる。すなわち、p個の時点におけるi番目の時点に対して、それぞれm個のセルの電圧値を取得する必要がある。ここで、pは、1よりも大きい整数であり、iは、pよりも大きくない任意の正の整数である。
【0052】
S320には、電池パックの目標セルに対して、目標セルの複数の時点での電気信号値を利用し、目標セルの第1のパラメータを算出する。
【0053】
まず、目標セルとは、電池パックにおける内部短絡故障診断を行う必要があるセルを指す。例示的に、検出過程において、m個のセルを順次に目標セルとして故障検出を行うことができる。すなわち、そのうちのいずれか一つのセル、例えばj番目のセルに対して、それに対する内部短絡故障検出を完了した後、次のセル、即ちj+1番目のセルを目標セルとして、それに対して内部短絡故障検出を行ってもよい。ここで、j+1は、m以上の正の整数である。次に、第1のパラメータは、目標セルの電気信号値の変動度合いを示すために用いられる。目標セルのp個の電気信号値の差が小さければ、すなわち目標セルのp個の電気信号値の変動度合いが小さければ、第1のパラメータが小さい。逆に、目標セルのp個の電気信号値の差が大きければ、すなわち目標セルのp個の電気信号値の変動度合いが大きければ、第1のパラメータが大きい。
【0054】
いくつかの実施例において、第1のパラメータは、m個の時点のセル値の標準偏差、平均差又は分散などであってもよいが、これを限定しない。
【0055】
具体的な実施例において、第1のパラメータを標準偏差とすることを例とし、目標セルの標準偏差σjは、式(1)を満たす。
【0056】
【0057】
ここで、目標セルは、m個のセルにおけるj番目のセルであり、jは、m以下の任意の正の整数である。Vijは、j番目のセルのi番目の時点での電圧値であり、iは、p以下の任意の正の整数である。
【0058】
S330には、電池パックの目標セルに対して、目標セルの第2のパラメータを算出する。
【0059】
ここで、目標セルの第2のパラメータについて説明する。
【0060】
目標セルの第2のパラメータは、目標セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示すために用いられる。ここで、他のセルは、m個のセルにおける目標セル以外のセルである。具体的には、第2のパラメータは、m個のセルの第1のパラメータの標準偏差又は変動係数であってもよい。一例では、充放電過程において、セル電圧は、時間変化に伴って徐々に増大するため、異なる時間帯の第2のパラメータを統一しやすいために、第2のパラメータは、無次元の変動係数を選択することができる。説明すべきこととして、他のセルの第1のパラメータの算出方法は、目標セルの第1のパラメータの算出方法と同じであり、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0061】
第2のパラメータは、このばらつき度合いと正の相関関係を有する。すなわち、目標セルの第1のパラメータと他のm-1個のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いが大きいほど、目標セルの第2のパラメータが大きい。引き続き
図1を例とし、正常セルの変化曲線の間に位相差が小さく、且つ主に一つの領域内に集まる。目標セルに対して、その変化曲線が正常セルの変化曲線の集合領域に近いほど、その第2のパラメータが小さい。逆に言えば、その変化曲線が正常セルの変化曲線の集合領域から離れるほど、その第2のパラメータが大きい。
【0062】
いくつかの実施例において、目標セルの第2のパラメータが変動係数であれば、目標セルの変動係数Bjは、式(2)を満たす。
【0063】
【0064】
ここで、σjは、目標セルの第1のパラメータであり、σmeanは、m個のセルの第1のパラメータの平均値であり、σσは、目標標準偏差である。
【0065】
それに応じて、
図4は、本願の実施例に係る例示的なセル内部短絡故障の検出方法の概略フローチャートである。
図4に示すように、S330の具体的な実施形態は、ステップS331及びS332を含むことができる。
【0066】
S331には、目標標準偏差σσ、及びm個のセルの第1のパラメータの平均値σmeanを算出する。
【0067】
ここで、目標標準偏差σσは、m個のセルの第1のパラメータのばらつき度合いを示すために用いられ、目標標準偏差σσの算出式は、式(3)である。
【0068】
【0069】
ここで、m個のセルの第1のパラメータの平均値σmeanの算出式は、式(4)である。
【0070】
【0071】
S332には、目標差分値dと目標標準偏差σσとの比d/σσを算出し、且つ比d/σσを目標セルの変動係数Bjとして特定する。
【0072】
ここで、目標差分値dは、目標セルの第1のパラメータσjと平均値σmeanとの差である。
【0073】
S340には、電池パックの目標セルに対して、第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいという条件で、目標セルに内部短絡故障が発生したことと特定する。
【0074】
いくつかの実施例において、予め設けられたパラメータ閾値とm個のセルの数は、正の相関関係を有する。説明を容易にするために、本願の実施例の下記部分は、第2のパラメータを変動係数とすることを例とし、予め設けられたパラメータ閾値を展開して具体的に説明する。
【0075】
【0076】
上記表1に示すように、出願人は、多くの試験データ及びシミュレーション結果に基づいて、セルデータに応じて予め設けられたパラメータ閾値を段階的に設定する。電池パックにおけるセルの合計が50よりも小さければ、予め設けられたパラメータ閾値を4に設定することができる。すなわち、目標セルの変動係数Bjが4よりも大きければ、目標セルが故障セルであると特定する。電池パックにおけるセルの合計が50~100の間にあれば、予め設けられたパラメータ閾値を5に設定することができる。すなわち、目標セルの変動係数Bjが5よりも大きければ、目標セルが故障セルであると特定する。電池パックにおけるセルの合計が100~150の間にあれば、予め設けられたパラメータ閾値を6に設定することができる。すなわち、目標セルの変動係数Bjが6よりも大きければ、目標セルが故障セルであると特定する。電池パックにおけるセルの合計が150よりも大きければ、予め設けられたパラメータ閾値を10に設定することができる。すなわち、目標セルの変動係数Bjが10よりも大きければ、目標セルが故障セルであると特定する。
【0077】
例示的に、電池パックにおけるセルの数量が30である場合、本願の実施例の電池パックのセルの変動係数の例示的なシミュレーション結果は、
図5に示すとおりであってもよい。
図5に示すように、故障セルの変動係数Bの多数の時間が4~6の間に変動し、正常セルの変動係数Bは、基本的に2を超えず、すなわち、正常セルの変動係数Bは、0~2の間に変動する。
【0078】
別の例では、電池パックにおけるセルの数が192である場合、本願の実施例の電池パックのセルの変動係数の例示的なシミュレーション結果は、
図6に示すとおりであってもよい。
図6に示すように、故障セルの変動係数Bは、多くの場合に10~12の間に変動し、正常セルの変動係数Bの最大値は、4よりわずかに大きく、正常セルの変動係数Bは、基本的に0~4の間に変動する可能性がある。
【0079】
図5及び
図6を比較して分かるように、電池パックにおけるセルの数が192である場合の予め設けられたパラメータ閾値と電池パックにおけるセルの数が30である場合の予め設けられたパラメータ閾値がいずれも4であれば、電池パックにおけるセルの数量が多い場合、正常セルを内部短絡故障が発生したと誤診断する可能性がある。また、電池パックにおけるセルの数が30である場合の予め設けられたパラメータ閾値と電池パックにおけるセルの数が192である場合の予め設けられたパラメータ閾値がいずれも10であれば、電池パックにおけるセルの数量が少ない場合、内部短絡故障が発生した故障セルを診断することができない可能性がある。
【0080】
本願の実施例におけるセル内部短絡故障の検出方法によれば、現在前記充放電動作状況でのセル内部短絡故障に対するn回目の検出過程において、目標セルの複数の時点での電気信号値に基づいて、第1のパラメータを算出することができる。同じ電池パックに属するm個のセルに対して、内部短絡故障が発生した故障セルの電気信号変化レートは、正常セルの電気信号変化レートと異なり、それに応じて、故障セルの電気信号変動度合いは、他の正常セルの電気信号変動度合いと異なる。第1のパラメータは、電気信号の変動度合いを示すことができるため、故障セルの第1のパラメータも正常セルの第1のパラメータと異なる。電池パックのm個のセルに故障セルが存在する場合、故障セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いは、正常セルよりも大きい。したがって、各セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示すことができる第2のパラメータを利用し、第2のパラメータと前記ばらつき度合いが正の相関関係を有するため、あるセルの第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きい場合、内部短絡が発生したセルを正確に検出する。
【0081】
本願をよりよく理解するために、
図7は、本願の実施例に係る例示的なセル内部短絡故障の検出方法の概略フローチャートである。
図7に示すように、セル内部短絡故障の検出方法700は、S710~S790を含む。
【0082】
S710には、電圧データを収集し、t×m電圧行列を確立する。具体的には、電池パックの充電過程において、電池パックの全てのm個のセルの全行程で合計t秒内の電圧データを収集し、かつm個のセルのt秒の電圧データに基づいてt×m電圧行列を確立する。
【0083】
ここで、t×m電圧行列は、具体的に以下に示す。
【0084】
【0085】
ここで、t×m電圧行列におけるi行目のデータは、i秒目のm個のセルのそれぞれの電圧データであり、電圧行列におけるj列目のデータは、j番目のセルのt秒内の電圧データである。例示的に、本実施例におけるtは、96秒に等しい。
【0086】
S720には、パラメータnを取得する。ここで、nの初期値は、1である。
【0087】
S730には、t×m電圧行列からm個のセルのn秒目からn+p-1秒目までの電圧データを切り出し、かつn回目の検出過程におけるp×m電圧行列を確立する。
【0088】
ここで、p×m電圧行列は、具体的に以下に示す。
【0089】
【0090】
S740には、前のステップのp×m電圧行列を利用し、各セルのn秒目からn+p-1秒目までの標準偏差σを算出し、1×m標準偏差行列を生成する。具体的には、p×m電圧行列における各列のp個の電圧データを利用して、算出して標準偏差σを得ることができる。
【0091】
ここで、m個のセルの標準偏差は、1×m標準偏差行列として示すことができる。
【0092】
【0093】
標準偏差σの具体的な内容は、本願の上記実施例の第1のパラメータの算出方式に対する関連説明を参照することができ、詳細な説明を省略する。
【0094】
S750には、前のステップの1×m標準偏差行列を利用して、m個のセルの標準偏差の平均値σmean及び標準偏差σσを算出する。
【0095】
ここで、平均値σmean及び標準偏差σσの具体的な内容は、本願の上記実施例のS330で平均値σmean及び目標標準偏差σσに対する関連説明を参照することができ、詳細な説明を省略する。
【0096】
S760には、前のステップで算出して得られた平均値σmean及び標準偏差σσを利用し、各セルのn秒目からn+p-1秒目までの変動係数を算出する。
【0097】
S780には、前のステップで算出して得られた任意のセルjの変動係数Bjが予め設けられた閾値xよりも大きければ、セルjに内部短絡故障が発生したと特定する。
【0098】
S790において、nをn+1に更新し、ステップS710に戻り、n=t+1-pまで、すなわち全ての電圧データに対する処理を完了するまで処理を続ける。
【0099】
電池が内部短絡が発生してから最終的に熱暴走するまでに数時間をかかる必要があることが多いため、本願の実施例では、内部短絡が発生してからその前のn秒、例えば96秒の電圧データを利用して、セルに内部短絡故障が発生するか否かを判断することができ、内部短絡故障の初期に故障セルを速やかに識別することができ、熱暴走の発生を最大限避け、電池の安全を最大限保証する。
【0100】
同じ出願構想に基づいて、本願の実施例は、セル内部短絡故障の検出方法以外に、それに対応するセル内部短絡故障の検出デバイスを提供する。以下に、図面を参照して、本願の実施例に係る装置を詳細に説明する。
図8は、本願の実施例に係るセル内部短絡故障の検出デバイスの構造概略図である。
【0101】
図8に示すように、セル内部短絡故障の検出デバイス800は、データ取得モジュール810、第2の算出モジュール830及び故障検出モジュール840を含む。
【0102】
データ取得モジュール810は、電池パックが予め設けられた条件にある場合、それぞれ電池パックのm個のセルの複数の時点での電気信号値を取得するために用いられる。
【0103】
ここで、予め設けられた条件は、現在セル内部短絡故障に対するn回目の検出過程中にあることを含み、m、nは、正の整数である。
【0104】
第1の算出モジュール820は、電池パックの目標セルに対して、目標セルの複数の時点での電気信号値を利用して、目標セルの第1のパラメータを算出するために用いられる。
【0105】
ここで、第1のパラメータは、目標セルの電気信号値の変動度合いを示す。
【0106】
第2の算出モジュール830は、電池パックの目標セルに対して、目標セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示す第2のパラメータを算出するために用いられる。
【0107】
ここで、第2のパラメータは、ばらつき度合いと正の相関関係を有し、他のセルは、m個のセルにおける目標セル以外のセルである。
【0108】
故障検出モジュール840は、電池パックの目標セルに対して、第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいという条件で、目標セルに内部短絡故障が発生したことを特定する。
【0109】
いくつかの実施例において、nが1よりも大きい整数である場合、予め設けられた条件は、セル内部短絡故障に対するその前のn-1回の検出過程において、目標セルの第2のパラメータがいずれも予め設けられたパラメータ閾値よりも大きいことをさらに含む。
【0110】
いくつかの実施例において、予め設けられた参照閾値とm個のセルの数は、正の相関関係を有する。
【0111】
いくつかの実施例において、目標セルの第1のパラメータは、目標セルの複数の時点での電気信号値の標準偏差である。
【0112】
いくつかの実施例において、第2のパラメータは、変動係数である。
【0113】
第2の算出モジュール830は、具体的には、第1の算出ユニット及び第2の算出ユニットを含む。
【0114】
第1の算出ユニットは、m個のセルの第1のパラメータのばらつき度合いを示す目標標準偏差を算出し、且つm個のセルの第1のパラメータの平均値を算出するために用いられる。
【0115】
第2の算出ユニットは、目標差分値と目標標準偏差との比を算出し、比を目標セルの変動係数として特定するために用いられる。
【0116】
ここで、目標差分値は、目標セルの第1のパラメータと平均値との差分値である。
【0117】
本願の実施例におけるセル内部短絡故障の検出デバイスによれば、現在前記充放電動作状況でのセル内部短絡故障に対するn回目の検出過程において、目標セルの複数の時点での電気信号値に基づいて、第1のパラメータを算出することができる。同じ電池パックに属するm個のセルに対して、内部短絡故障が発生した故障セルの電気信号変化レートは、正常セルの電気信号変化レートと異なり、それに応じて、故障セルの電気信号変動度合いは、他の正常セルの電気信号変動度合いと異なる。第1のパラメータは、電気信号の変動度合いを示すことができるため、故障セルの第1のパラメータも正常セルの第1のパラメータと異なる。電池パックのm個のセルに故障セルが存在する場合、故障セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとのばらつき度合いは、正常セルよりも大きい。したがって、各セルの第1のパラメータと他のセルの第1のパラメータとの間のばらつき度合いを示すことができる第2のパラメータを利用し、第2のパラメータは前記ばらつき度合いと正の相関関係を有するため、あるセルの第2のパラメータが予め設けられたパラメータ閾値よりも大きい場合、内部短絡が発生したセルを正確に検出する。
【0118】
本願の実施例に係るセル内部短絡故障の検出デバイスのその他の詳細については、以上の
図1~
図7に示す実施例を参照して説明されたセル内部短絡故障の検出方法と類似し、それに対応する技術的効果を達成することができ、説明を簡潔化するために、ここでは、重複の説明を省略する。
【0119】
図9は、本願の実施例に係るセル内部短絡故障の検出デバイスのハードウェアを示す構成図である。
【0120】
セル内部短絡故障の検出デバイスは、プロセッサ901、及びコンピュータプログラムコマンドを記憶したストレージ902を含むことができる。
【0121】
具体的には、上記プロセッサ901は、中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)、又は、特定の集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)を含むことができ、又は、本願の実施例の一つ又は複数の集積回路を実施するように構成されてもよい。
【0122】
ストレージ902は、
データやコマンドのための大容量のストレージを含んでもよい。例えば、ストレージ901は、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)、フレキシブルディスクドライブ、フラッシュメモリ、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ又はユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)ドライブ又は二つ以上のこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例において、、ストレージ901は、消去可能又は消去不可(又は固定)の媒体を含むことができる、又は、ストレージ901は不揮発性固体メモリである。いくつかの実施例において、ストレージ902は、セル内部短絡故障の検出デバイスの内部又は、外部で配置されてもよい。
【0123】
いくつかの実施例において、ストレージ902は、リードオンリーメモリ(ROM)であってもよい。一実施例において、該ROMは、マスクプログラムのROM、プログラム可能なROM(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、電気的消去再書込なROM(EAROM)又はフラッシュメモリ又は二つ以上のこれらの組み合わせであってもよい。
【0124】
ストレージ902は、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体デバイス、光記憶媒体デバイス、フラッシュメモリデバイス、電気、光学又は、他の物理/有形のメモリ記憶デバイスを含むことができる。したがって、一般的に、ストレージは、コンピュータ実行可能なコマンドを含む一つ以上のソフトウェアをコーディングした有形(非一時的)コンピュータ可読記憶媒体(例えば、ストレージデバイス)を含み、かつ該ソフトウェアが実行される(例えば、一つ又は、複数のプロセッサである)場合、それは、本開示の一態様に係る方法で説明された操作を操作して実行することができる。
【0125】
プロセッサ901は、ストレージ902に記憶されたコンピュータプログラムコマンドを読み出して実行することにより、
図1~
図7に示される実施例における方法を実現し、かつ
図1~
図7に示される実施例に基づいてその方法/ステップが達成する対応する技術的効果を実行する。説明を簡潔化するために、ここで重複の説明を省略する。
【0126】
一例において、セル内部短絡故障の検出デバイスは、さらに通信インタフェース903及びバス910を含むことができる。ここで、
図9に示すように、プロセッサ901、ストレージ902、通信インタフェース903は、バス910を介して接続され且つ相互間の通信を完了する。
【0127】
通信インタフェース903は、主に本願の実施例における各モジュール、装置、ユニット及び/又はデバイスの間の通信を実現するために用いられる。
【0128】
バス910は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれら双方を含み、オンラインデータ流量課金デバイスを相互に結合する。例えば非制限であり、バスは、アクセラレーテッド・グラフィクス・ポート(AGP)若しくはその他のグラフィック専用バス、EISA(Extended Industry Standard Architecture)バス、フロントサイドバス(FSB)、ハイパートランスポート(HT)インターコネクト、業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、インフィニバンド・インターコネクト、LPC(low-pin-count)バス、メモリバス、マイクロ・チャネル・アーキテクチャ(MCA)バス、コンピュータ用拡張バスアーキテクチャ(PCI)バス、PCIエクスプレス(PCI-X)バス、シリアルATA(SATA)バス、VLB(Video Electronics Standards Association local)バス、若しくはその他の好適なバス、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。バス910は、一つ以上のバスを含んでいてもよい。本願の実施例は特定のバスを図示して説明しているが、本願はいかなる好適なバス又はインターコネクトをも意図している。
【0129】
該セル内部短絡故障の検出デバイスは、本願の実施例におけるセル内部短絡故障の検出方法を実行することができ、それにより、
図1~
図8を参照して説明されたセル内部短絡故障の検出方法及び装置を実現する。
【0130】
また、上記実施例におけるセル内部短絡故障の検出方法を結合し、本願の実施例は、コンピュータ記憶媒体を提供して実現することができる。該コンピュータの記憶媒体にコンピュータプログラムコマンドが記憶され、該コンピュータプログラムコマンドがプロセッサにより実行される時に上記実施例における任意のセル内部短絡故障の検出方法を実現する。
【0131】
本願は、上記で説明され、図に示された特定の構成及び処理に限定されないことを明確にする必要がある。容易であるため既知の方法の詳細な説明についてはここでは省略する。上記実施例では、いくつかの具体的な工程を例として説明し、示している。しかし、本願の方法の過程は、記述され且つ示された具体的な工程に限定されない。当業者であれば、本願の主旨を理解した上で、様々な変更、修正及び追加を行い、又は工程の間の順序を変更することができる。
【0132】
以上の構成ブロック図に示された機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの組み合わせとして実現されてもよい。ハードウェア方式で実現する場合、例えば電子回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、適切なファームウェア、プラグイン、機能カードなどであってもよい。ソフトウェア方式で実現する場合、本願の要素は、必要なタスクを実行するためのプログラム又はコードセグメントである。プログラム又はコードセグメントは、機械可読媒体に記憶されてもよく、又は搬送波に搬送されたデータ信号により伝送媒体又は通信リンクに伝送されてもよい。「機器可読媒体」は、情報の記憶又は送信可能な任意の媒体を含むことができる。機械可読媒体の例として、電子回路、半導体メモリ装置、ROM、フラッシュメモリ、消去可能なROM(EROM)、フレキシブルディスク、CD-ROM、光ディスク、ハードディスク、光ファイバ媒体、無線周波数(RF)リンクなどを含む。コードセグメントは、インターネット、イントラネットなどのコンピュータネットワークによりダウンロードされることができる。
【0133】
なお、本願で言及した例示的な実施例は、一連の工程又は装置に基づいていくつかの方法又はシステムを説明した。しかし、本願は、上記工程の順序に限定されない。即ち、実施例に言及された順序に応じて工程は実行されてもよいし、実施形態と異なる順序で実行されてもよいし、いくつかの工程が同時に実行されてもよい。
【0134】
以上、本願の実施例に係る方法、装置、デバイス及び機器プログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して本願の各態様を説明した。理解すべきことは、フローチャート及び/又はブロック図における各ブロック及びフローチャート、及び/又はブロック図における各ブロックの組み合わせはプログラム又はコマンドにより実現できることである。これらのプログラム又はコマンドは共通コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに提供され、機器を生成することにより、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサにより実行されたこれらのプログラム又はコマンドによりフローチャート及び/又はブロック図の一つ又は複数のブロックに指定された機能/動作を実現する。このようなプロセッサは、共通プロセッサ、専用プロセッサ、特殊アプリケーションプロセッサ又はフィールドプログラマブルロジック回路であってもよいがそれらに限定されない。ブロック図及び/又はフローチャートにおける各ブロック及びブロック図及び/又はフローチャートにおけるブロックの組み合わせは、指定された機能又は動作を実行する専用ハードウェアで実現されてもよく、又は専用ハードウェアとコンピュータコマンドの組み合わせで実現されてもよいと理解してもよい。
【0135】
以上の説明は、本願の具体的な実施形態のみである。上記説明したシステム、モジュール及びユニットの具体的な動作過程は、前述の方法の実施例における対応するプロセスを参照することが当業者ならば理解できるので、説明の便宜上また簡潔させるために、ここでは説明しない。理解すべきことは、本願の保護範囲はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本願が開示した技術的範囲内に、様々な均等な修正又は置換を容易に想到でき、これらの修正又は置換はいずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。